JP4807484B2 - 成形加工用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents

成形加工用アルミニウム合金板およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
この発明は、自動車ボディシートやそのほか各種自動車部品、各種機械器具、家電製品やその部品等の素材として、成形加工および塗装焼付を施して使用されるAl−Mg−Si系のアルミニウム合金板およびその製造方法に関するものであり、成形性、特にヘム曲げ性が良好であるとともに、塗装焼付後の強度が高く、かつ室温での経時変化が少ない成形加工用アルミニウム合金板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来自動車のボディシートとしては、主として冷延鋼板を使用することが多かったが、最近では車体軽量化等の観点から、アルミニウム合金圧延板を使用することが多くなっている。ところで自動車のボディシートはプレス加工を施して使用するところから、成形加工性が優れていること、また成形加工時におけるリューダースマークが発生しないことが要求され、また高強度を有することも必須であって、塗装焼付を施して使用するのが通常であるため、塗装焼付後に高強度が得られることが要求される。そしてまた成形性が良好であることが要求されるのはもちろんであるが、自動車用ボディシートとしては、接合のためにヘム曲げ加工を施して使用することが多いところから、成形性のうちでも特にヘム曲げ性が優れていることが強く要求される。
【0003】
従来このような自動車用ボディシート向けのアルミニウム合金としては、Al−Mg系合金のほか、時効性を有するAl−Mg−Si系合金が主として使用されている。この時効性Al−Mg−Si系合金は、塗装焼付前の成形加工時においては比較的強度が低くて成形性が優れている一方、塗装焼付時の加熱によって時効されて塗装焼付後の強度が高くなる利点を有するほか、リューダースマークが発生しない等の利点を有する。
【0004】
なお上述のような塗装焼付時における時効硬化を期待した時効性Al−Mg−Si系合金板の製造方法としては、鋳塊を均質化熱処理した後、熱間圧延および冷間圧延を行なって所定の板厚とし、かつ必要に応じて熱間圧延と冷間圧延との間あるいは冷間圧延の中途において中間焼鈍を行ない、冷間圧延後に溶体化処理を行なって焼入れるのが通常である。
【0005】
なおまた、ヘム曲げ性向上に関する従来技術としては、加工硬化を制御する特許文献1の技術、晶出物の粒径および間隔を規制することによりヘム曲げ性の向上を図る特許文献2の技術、極限変形能を規制する特許文献3の技術等がある。また本発明者等も特願2002−181732、特願2002−066405の提案をしている。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−160274
【特許文献2】
特開2000−144294
【特許文献3】
特開2000−105573
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述のような自動車用ボディシート向けの時効性Al−Mg−Si系合金板についての従来の一般的な製造方法により得られた板では、最近の自動車用ボディシートに要求される特性を充分に満足させることは困難であった。
【0008】
すなわち、最近ではコストの一層の低減や自動車車体の軽量化等のために、自動車用ボディシートについてさらに薄肉化することが強く要求されており、そのため薄肉でも充分な強度が得られるように、一層の高強度化が求められると同時に、成形性、特にヘム曲げ性の改善が強く要求されているが、これらの性能をバランスよく満足させる点について従来の一般的な製造方法によって得られたAl−Mg−Si系合金板では不充分であった。特にヘム曲げ加工は、曲げ内径が1mm以下の180°曲げという過酷な曲げ加工であるため、良好なヘム曲げ性と強度とを両立させることが困難であるという問題があった。
【0009】
また塗装焼付については、省エネルギおよび生産性の向上、さらには高温に曝されることが好ましくない樹脂等の材料との併用などの点から、従来よりも焼付温度を低温化し、また焼付時間も短時間化する傾向が強まっている。しかしながら従来の一般的な製法により得られた時効性Al−Mg−Si系合金板の場合、低温・短時間の塗装焼付処理では、塗装焼付時の硬化(焼付硬化)が不足し、塗装焼付後に充分な高強度が得難くなる問題があった。
【0010】
ここで、従来の一般的な製法により得られた時効性Al−Mg−Si系合金板では、塗装焼付後に高強度を得るために焼付硬化性を高めようとすれば、素材の延性と曲げ加工性(特にヘム曲げ性)が低下し、また板製造後に室温に放置した場合に自然時効により硬化が生じやすくなり、そのため成形性、特にヘム曲げ性が阻害されがちとなるという問題が生じている。
【0011】
一方、曲げ加工性、特にヘム曲げ性を従来の材料よりも格段に向上させようとした場合、異方性の大きい材料となりがちであるという問題があった。具体的には、圧延方向と平行な方向の伸びが従来と比べて格段に低下したり、また圧延方向に対し45°の方向の曲げ性が著しく低下したりする問題があった。
【0012】
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、良好な成形加工性、特に良好な曲げ加工性を有すると同時に、異方性(ヘム曲げ性の異方性、機械的特性の異方性)も少なく、さらには焼付硬化性が優れていて、塗装焼付時における強度上昇が大きく、しかも板製造後の室温での経時的な変化が少なくて、長期間放置した場合でも自然時効による硬化に起因する成形性の低下も少ない成形加工用アルミニウム合金板およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前述のような課題を解決するべく本発明者等が種々実験・検討を重ねた結果、Al−Mg−Si系合金の成分組成を適切に調整するばかりでなく、板の結晶方位、特に板厚方向の各部位における結晶方位を適切に制御すると同時に、板の小角粒界の長さの和を適切に規制することによって、曲げ加工性、特にヘム曲げ性を向上させると同時に、曲げ異方性、その他機械的異方性を小さくし得ることを見出した。さらに、板製造プロセスにおける熱間圧延、冷間圧延、熱処理における合金の組織変化を解析して、前述のような良好な特性を示し得る組織を有する成形加工用アルミニウム合金板を得るために必要な製造プロセス条件を見出し、この発明をなすに至ったのである。
【0014】
具体的には、請求項1の発明の成形加工用アルミニウム合金板は、Mg0.3〜1.0%、Si0.3〜1.5%を含有し、かつMn0.03〜0.4%、Cr0.03〜0.4%、Fe0.03〜0.5%、Ti0.005〜0.2%、Zn0.03〜2.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、さらにCuが1%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金を素材とし、板表面から全板厚の2/5の深さの位置までの領域を板表面側領域とするとともに、板表面から全板厚の2/5の深さの位置よりも板厚方向中央部側の領域を板中央部側領域とし、板表面側領域における平均キューブ方位密度がランダム結晶方位を有する試料の8〜250倍の範囲内にあり、かつ板中央部側領域における平均キューブ方位密度がランダム結晶方位を有する試料の200倍以下であり、しかも板表面側領域の平均キューブ方位密度が板中央部側領域の平均キューブ方位密度よりも高く、さらに板全体の粒界のうち、粒界における結晶回転角が5°以上15°以下の小角粒界の粒界長さの和が、粒界における結晶回転角が5°以上の全粒界の長さの総和に対して2〜90%の範囲内となっており、さらに板の0°方向の耳率、90°方向の耳率がいずれも5%以上であり、導電率が54%IACS以下であることを特徴とするものである。
【0015】
また請求項2の発明の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法は、Mg0.3〜1.0%、Si0.3〜1.5%を含有し、かつMn0.03〜0.4%、Cr0.03〜0.4%、Fe0.03〜0.5%、Ti0.005〜0.2%、Zn0.03〜2.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、さらにCuが1%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金鋳塊を熱間圧延するにあたり、
(1)熱間圧延途中の板厚250〜100mmの段階における板温度を500〜320℃の範囲内とし、
(2)熱間圧延途中の板厚100〜15mmの段階における板温度を450〜270℃の範囲内とし、
(3)熱間圧延の上がり板厚を1.5〜8mmとし、
(4)熱間圧延上がり温度を180〜350℃の範囲内とし、
(5)熱間圧延中における板厚250mm以降の段階の各圧延パスにおける歪み速度を0.2/秒〜350/秒の範囲内とし、
(6)熱間圧延中における板厚250mm以降の段階の各圧延パス間の滞留時間を10分未満とし、
(7)熱間圧延中の板厚50mm以降の段階における圧延ロールと板との接触部分のロール表面の平均温度を350℃以下とし、
以上(1)〜(7)が満たされるように制御して熱間圧延を終了させ、さらに中間焼鈍を施すことなく圧延率30%以上で冷間圧延を施して製品板厚とした後、その圧延板に対し、480℃以上の温度での5分以内の溶体化処理を行なってから100℃/min以上の平均冷却速度で50℃以上150℃未満の温度域まで冷却し、続いてその温度域内において2時間以上で保持もしくは徐冷する安定化処理を行なうことを特徴とするものである。
【0016】
またさらに請求項3の発明の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法は、請求項2に記載の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法において、前記安定化処理の後、さらに100℃/min以上の加熱速度で170〜280℃の範囲内の温度に加熱してその範囲内の温度で5分以下保持した後、100℃/min以上の冷却速度で冷却する最終熱処理を施すことを特徴とするものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
先ずこの発明の成形加工用アルミニウム合金板における成分組成の限定理由について説明する。
【0018】
Mg:
Mgはこの発明で対象としている系の合金で基本となる合金元素であって、Siと共同して強度向上に寄与する。Mg量が0.3%未満では塗装焼付時に析出硬化によって強度向上に寄与するG.P.ゾーンの生成量が少なくなるため、充分な強度向上が得られず、一方1.0%を越えれば、粗大なMg−Si系の金属間化合物が生成され、成形性、特に曲げ加工性が低下するから、Mg量は0.3〜1.0%の範囲内とした。
【0019】
Si:
Siもこの発明の系の合金で基本となる合金元素であって、Mgと共同して強度向上に寄与する。またSiは、鋳造時に金属Siの晶出物として生成され、その金属Si粒子の周囲が加工によって変形されて、溶体化処理の際に再結晶核の生成サイトとなるため、再結晶組織の微細化にも寄与する。Si量が0.3%未満では上記の効果が充分に得られず、一方1.5%を越えれば粗大なSi粒子や粗大なMg−Si系の金属間化合物が生じて、曲げ加工性の低下を招く。したがってSi量は0.3〜1.5%の範囲内とした。
【0020】
Mn、Cr、Fe、Ti、Zn:
これらの元素は、強度向上や結晶粒微細化、あるいは時効性の向上や表面処理性の向上に有効であり、いずれか1種または2種以上を添加する。これらのうちMn、Crは強度向上と結晶粒の微細化および組織の安定化に効果がある元素であり、いずれも含有量が0.03%未満では上記の効果が充分に得られず、一方Mn、Crの含有量がそれぞれ0.4%を越えれば、上記の効果が飽和するばかりでなく、多数の金属間化合物が生成されて成形性、特にヘム曲げ性に悪影響を及ぼすおそれがあり、したがってMn、Crはいずれも0.03〜0.4%の範囲内とした。またFeも強度向上と結晶粒微細化に有効な元素であり、その含有量が0.03%未満では充分な効果が得られず、一方0.5%を越えれば成形性が低下するおそれがあり、したがってFe量は0.03〜0.5%の範囲内とした。さらにTiも強度向上と鋳塊組織の微細化に有効な元素であり、その含有量が0.005%未満では充分な効果が得られず、一方0.2%を越えればTi添加の効果が飽和するばかりでなく、粗大な晶出物が生じるおそれがあるから、Ti量は0.005〜0.2%の範囲内とした。またZnは時効性向上を通じて強度向上に寄与するとともに表面処理性の向上に有効な元素であり、Znの添加量が0.03%未満では上記の効果が充分に得られず、一方2.5%を越えれば成形性が低下するから、Zn量は0.03〜2.5%の範囲内とした。
【0021】
Cu:
Cuは強度向上および成形性向上のために添加されることがある元素であるが、その量が1.0%を越えれば耐食性(耐粒界腐食性、耐糸錆性)が劣化するから、Cuの含有量は1.0%以下に規制することとした。なお特に耐食性を重視する場合は、Cu量は0.05%以下に規制することが望ましい。
【0022】
以上の各元素のほかは、基本的にはAlおよび不可避的不純物とすれば良い。
【0023】
なお上記のMn、Cr、Fe、Ti、Znの含有量範囲は、それぞれ積極的に添加する場合の範囲として示したものであり、いずれも下限値より少ない量を不純物として含有する場合を排除するものではない。特に0.03%未満のFeは、通常のアルミ地金を用いれば不可避的に含有されるのが通常である。
【0024】
また時効性Al−Mg−Si系合金においては、高温時効促進元素あるいは室温時効抑制元素であるAg、In、Cd、Be、あるいはSnを微量添加することがあるが、この発明の場合も微量添加であればこれらの元素の添加も許容され、それぞれ0.3%以下であれば特に所期の目的を損なうことはない。
【0025】
なおまた、一般のAl合金においては、結晶粒微細化のために前述のTiと同時にBを添加することもあり、この発明の場合もTiとともに500ppm以下のBを添加することは許容される。
【0026】
さらにこの発明の成形加工用アルミニウム合金板において、良好な曲げ加工性、特に良好なヘム曲げ性を得ると同時に異方性の増大を避けるためには、合金の成分組成を前述のように調整するばかりではなく、板の金属組織、特に結晶方位密度を、板厚方向の各領域に応じて適切に制御する必要がある。すなわち、板の表面から板厚方向に全板厚の2/5に相当する深さの位置までの領域を板表面側領域とし、かつそれよりも板厚方向内側の領域(板の表面から板厚方向に全板厚の2/5の深さに相当する位置よりも板厚方向中央部寄りの領域)を板中央部側領域とすれば、
(1)板表面側領域における平均キューブ方位密度がランダム結晶方位を有する試料の8〜250倍の範囲内にあること、
(2)板中央部側領域における平均キューブ方位密度がランダム結晶方位を有する試料の200倍以下であること、
(3)板表面側領域における平均キューブ方位密度が板中央部側領域における平均キューブ方位密度よりも高いこと、
以上(1)〜(3)の条件が満たされる必要がある。このように結晶方位密度を板厚方向の各領域に応じて制御することとした理由は次の通りである。
【0027】
先ず(1)の条件に関して、板表面側領域でキューブ方位の平均密度がランダム結晶方位を有する試料のものに比べて8倍未満の場合、ヘム曲げ時に曲げ部位にせん断帯などの滑り線が発達し、曲げ歪みが集中しやすく、このように歪みが集中した箇所に割れが発生するおそれがある。またこの場合、圧延方向と平行な方向、あるいは圧延方向に対して垂直な方向に比べて、圧延方向に対して45°方向の曲げ性の低下が大きく、曲げ異方性が強くなってしまう。一方、板表面側領域でキューブ方位の平均密度がランダム結晶方位を有する試料の250倍を越えれば、結晶方位による曲げ性向上効果が飽和するばかりでなく、加工時の肌荒れ欠陥が発生するおそれがある。そのため、前記(1)のように板表面側領域におけるキューブ方位の平均密度をランダム結晶方位を有する試料の8倍以上250倍以下と規定した。
【0028】
次に(2)の条件に関して、板中央部側領域でキューブ方位の平均密度がランダム方位を有する試料の200倍を超えれば、機械的性能の異方性が顕著になりやすく、特に圧延方向と平行な方向での引張試験片の伸びが著しく低下する。そこで前記(2)のように板中央部側領域のキューブ方位の平均密度をランダム方位を有する試料の200倍以下と規定した。
【0029】
さらに(3)の条件に関して、板中央部側領域におけるキューブ方位の平均密度が板表面側領域におけるキューブ方位の平均密度よりも高くなれば、機械的性能の異方性が強くなるから、前記(3)のように、板表面側領域の平均キューブ方位密度を板中央部側領域の平均キューブ方位密度より高くすることを規定した。
【0030】
ここで、上記(1)〜(3)の条件は、板厚方向での各領域のキューブ方位密度を規定しているが、キューブ方位以外の結晶方位の方位密度も曲げ性に対してある程度は影響を与える。しかしながらキューブ方位以外の結晶方位の方位密度をすべて細かく規定することは現実には極めて困難である。
【0031】
一方、板のカッピング試験で絞ったカップの耳率によれば、材料の結晶方位をマクロ的に評価することができる。そこでこの発明では、キューブ方位以外の結晶方位の方位密度の影響を、0°耳率、90°耳率で規定している。すなわち、圧延方向を基準にカップの0°耳率、90°耳率が5%未満では、前記(1)〜(3)のキューブ方位密度の条件を満足しても、良好な曲げ性が得られないおそれがあるから、圧延方向に対し0°、90°の耳率を5%以上に制御することとした。
【0032】
さらにこの発明では、結晶組織における小角粒界の長さの和、すなわち回転角が5〜15°の範囲内にある粒界の長さの和が、回転角5°以上の全ての粒界の長さの総和に対し〜90%の範囲内にある必要がある。すなわち、5°以上15°以下の小角粒界の長さの和が、5°以上の全ての粒界長さの総和に対して一定の範囲内であることによって、粒界に沿うような曲げ割れを緩和する効果が得られる。そしてこの割合が2%未満では、良好な曲げ性が得られなくなるおそれがあり、一方90%を越えれば、成形加工時に肌荒れが生じて、板表面品質の低下を招くおそれがある。そこででこの発明では、良好な曲げ性を得ると同時に良好な板表面品質を得るため、上述のように小角粒界の割合を規定した。
【0033】
また以上のほか、この発明では板の導電率を54%IACS以下と規定している。すなわち、一般に導電率は固溶元素の固溶量の指標となるが、導電率が54%IACSを越える場合、固溶しているMgとSiの量が少ないため、時効析出硬化量が充分に得られず、塗装焼付後に充分な高強度が得難くなる。そこで塗装焼付後に高強度を得るためには、板の導電率が54%IACS以下である必要がある。なお導電率の下限は特に規制しないが、通常この系の合金は、導電率を40%IACS以下としても、塗装焼付硬化性の効果が飽和し、また工業的にこれを実現することは困難である。
【0034】
次にこの発明の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法について説明する。
【0035】
先ず前述のような成分組成の合金を常法に従って溶製し、DC鋳造法などの通常の鋳造法によって鋳造する。得られた鋳塊について、通常は均質化処理を施してから熱間圧延を行なう。この熱間圧延は、最終製品板の結晶方位に大きな影響を与える重要な工程であり、前述のような結晶方位条件を満たした最終製品板を得るためには、熱間圧延の条件、特に熱間圧延中の各段階での条件を次の(1)〜(7)によって規制する必要がある。
(1) 熱間圧延過程中の板厚250〜100mmの段階における板温度を500〜320℃の範囲内とすること。
(2) 熱間圧延過程中の板厚100〜15mmの段階における板温度を450〜270℃の範囲内とすること。
(3) 熱間圧延の上がり板厚を1.5〜8mmとすること。
(4) 熱間圧延上がり温度を180〜350℃の範囲内とすること。
(5) 熱間圧延過程中の板厚250mm以降の段階の各圧延パスにおける歪み速度を0.2/秒〜350/秒の範囲内とすること。
(6) 熱間圧延過程中の板厚250mm以降の段階の各圧延パス間の滞留時間を10分未満とすること。
(7) 熱間圧延過程中の板厚50mm以降の段階における圧延ロールと板との接触部分のロール表面の平均温度を350℃以下とすること。
【0036】
すなわち、熱間圧延中においては、材料は常に回復・再結晶が繰返されるため、各板厚段階において、温度、各圧延パスの歪み速度、各圧延パス間の滞留時間、さらに圧延ロールの表面温度を、上記の(1)〜(7)のように厳密に制御することが、結晶方位の制御にとって極めて重要である。そして上記の(1)〜(7)の条件を外せば、最終製品板として既に述べたような結晶方位密度条件を満たしたものが得られないおそれがある。またここで、板厚が100〜15mmの段階の板温度を270℃以上とすること、また熱延上がりの温度を180℃以上とすること、また板厚250mm以下の段階での各圧延パスにおける歪み速度を350/秒以下とすること、さらに板厚50mm以降の段階でのロール表面の平均温度を350℃以下に保つことは、いずれも結晶方位の制御のみならず、板の表面品質の確保のためにも必要な条件である。なお圧延ロールと板との接触部分におけるロール表面の平均温度は、ロールと圧延板との接触部分における長さ方向の両端と中央の3個所について、放射温度計によって温度を測定し、その平均値をロール表面温度とする。またその平均温度を350℃以下に規制することは、冷却用クーラント噴射の制御などによって可能である。
【0037】
上述のように熱間圧延条件を厳密に規制して熱間圧延を終了させた後には、中間焼鈍を行なわずに直接圧延率30%以上で冷間圧延を施して所要の板厚(製品板厚)とする。この条件が満たされなければ、既に述べたような結晶方位密度条件を有する製品板が得られない。またここで、冷間圧延率を30%以上にすることによって、材料に高い歪みエネルギーが蓄積され、熱間圧延後の溶体化処理−焼入れ時に形成された結晶粒が細かくなって、成形加工後に良好な表面外観品質を得ることが可能となる。冷間圧延率が30%未満では、成形時に肌荒れ等の表面欠陥が発生するおそれがある。
【0038】
上述のようにして所要の製品板厚とした後には、480℃以上の温度で5分以内の溶体化処理を行なう。この溶体化処理は、MgSi、単体Si等をマトリックスに固溶させ、これにより焼付硬化性を付与して塗装焼付後の強度向上を図るために重要な工程である。この工程は、MgSi、単体Si粒子等の固溶により第二相粒子の分布密度を低下させて、延性と曲げ性を向上させるためにも寄与し、さらには再結晶により全般的に良好な成形性を得るためにも必要な工程である。
【0039】
溶体化処理温度が480℃未満の場合、室温での経時変化の抑制に対しては有利と思われるが、MgSi、Siなどの固溶量が少なくなって、充分な焼付硬化性が得られないばかりではなく、延性と曲げ性も著しく悪化するから、溶体化処理温度の下限は480℃とした。一方溶体化処理温度の上限は特に規定しないが、共晶融解の発生のおそれや再結晶粒粗大化等を考慮して、通常は580℃以下とすることが望ましい。また溶体化処理の時間が5分を越えれば溶体化効果が飽和し、経済性を損なうばかりではなく、結晶粒の粗大化のおそれもあるから、溶体化処理の時間は5分以内とした。
【0040】
溶体化処理後には、100℃/min以上の冷却速度で、50℃以上、150℃未満の温度域まで冷却(焼入れ)する。ここで、溶体化処理後の冷却速度が100℃/min未満では、冷却中にMgSiあるいは単体Siが粒界に多量に析出してしまい、成形性、特にヘム曲げ性が低下すると同時に、焼付硬化性が低下して塗装焼付時の充分な強度向上が望めなくなる。
【0041】
上述のように480℃以上の温度での溶体化処理を行なって100℃/min以上の冷却速度で50〜150℃未満の温度域内で冷却(焼入れ)した後には、50℃未満の温度域まで温度降下しないうちに、この温度範囲内(50〜150℃未満)で、2時間以上保持あるいはこの温度範囲で2時間以上冷却(徐冷)する安定化処理を行なう。
【0042】
このように溶体化処理して50〜150℃未満に焼入れ後、50℃未満の温度域まで冷却することなくそのまま50〜150℃未満の温度で安定化処理を行なう理由は次の通りである。すなわち、溶体化処理後、特に100℃/min以上の平均冷却速度で50℃未満の室温に冷却した場合には、室温クラスターが生成される。この室温クラスターは強度に寄与するG.P.ゾーンに移行しにくいため、塗装焼付硬化性に不利となる。一方、溶体化処理後に150℃以上の温度範囲に冷却してそのまま保持した場合には、G.P.ゾーンあるいは安定相が生成され、成形前の素材強度が高くなり過ぎて、ヘム曲げ性とその他の成形性が劣化する。したがってヘム曲げ性、成形性と塗装焼付硬化性とのバランスの観点から、溶体化処理−焼入れ−安定化処理の条件を上述のように定めた。
【0043】
前述のように安定化処理を行なった後には、これをそのまま製品板として、自動車ボディーシート等のための成形加工に供しても良いが、塗装焼付硬化性とヘム曲げ性をさらに向上させるためには、さらに最終熱処理を行なっても良い。この最終熱処理は、170〜280℃の温度範囲内に100℃以上の加熱速度で加熱して5分以下保持し、100℃/min以上の冷却速度で冷却する条件とする必要がある。
【0044】
最終熱処理の加熱温度が170℃未満では、上述のような最終熱処理の効果が得られず、一方280℃を越えれば、室温経時変化が生じ、プレス成形性が劣化する。また最終熱処理の加熱時間が5分を越えれば、最終熱処理の効果が飽和するばかりではなく、場合によっては長時間の時効によって成形前の素材強度が高くなり過ぎて、成形性が劣化する。さらに170〜280℃の温度への加熱速度が100℃/min未満では、時効が進んで成形性が劣化し、一方加熱後の冷却速度が100℃/min未満でも、時効が進んで粒界析出が生じ、成形性、特にヘム曲げ性が低下する。したがって最終熱処理の条件は上述の範囲内とした。
【0045】
なお安定化処理後に最終熱処理を行なう場合における安定化処理と最終熱処理との間の条件については特に規制しないが、安定化処理後は最終熱処理まで材料を室温に放置するのが通常である。そしてその場合の室温放置時間については、材料の室温経時変化などの要素を考慮して、1ケ月以内とすることが好ましい。
【0046】
以上のように、熱間圧延の条件を厳密に規制し、さらに冷間圧延から溶体化処理−冷却−安定化処理の条件、さらには最終熱処理の条件を規制することによって、既に述べたような結晶方位密度条件や耳率条件、導電率条件を満たし、成形性、特にヘム曲げ性が優れると同時に、材料の異方性が小さく、かつ塗装焼付硬化性が良好でしかも室温時効による経時変化が生じにくい時効性Al−Mg−Si系アルミニウム合金板を得ることができる。
【0047】
【実施例】
表1に示すこの発明成分組成範囲内の合金記号A1〜A5の合金、およびこの発明の成分組成範囲外の合金記号B1の合金について、それぞれ常法に従ってDC鋳造法により鋳造し、得られた鋳塊に530℃×2時間の均質化処理を施した後、冷却して面削し、再び530℃の温度に加熱して熱間圧延を開始した。熱間圧延は、その中途の板厚250mmの段階から上りまでの条件を種々変化させて実施した。これらの詳細な熱間圧延条件を表2〜表4に示す。得られた熱間圧延板に対して冷間圧延を施して、最終的に厚さ1mmの圧延板とした。なお製造番号5については、熱間圧延板を2mm厚まで冷間圧延した段階で中間焼鈍を施し、その後最終冷間圧延によって1mm厚とした。得られた各冷間圧延板に対し、種々の溶体化処理を行なってから、100℃/min以上の冷却速度で所定の温度域まで冷却(焼入れ)して、引続き種々の安定化処理を行なった。また一部のものについては、安定化処理後、100℃/min以上の加熱速度、冷却速度で最終熱処理を行なった。熱間圧延後の具体的なプロセス条件を表5に示す。
【0048】
以上のようにして得られた各板について、その板厚方向各領域における平均キューブ方位密度を調べるとともに、5〜15°の範囲内の小角結晶粒界の比率、耳率、導電率を測定した。これらの測定結果を表6に示す。なおこれらの測定条件は次の通りである。
【0049】
各領域の平均キューブ方位密度の測定:
厚さ1mmの板について、10%NaOH水溶液で表面から板厚中央まで50μmずつエッチングしたものを測定サンプルとした。そして板表面側領域(板表面から板厚2/5の深さの位置までの領域)の平均キューブ方位密度は、表面から板厚方向にそれぞれ50μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μmの各位置でそれぞれ測定したキューブ方位密度の平均値で求めた。また板中央部側領域(表面から板厚2/5の深さの位置よりも内側の領域)の平均キューブ方位密度は、表面から板厚方向にそれぞれ450μmと500μmの位置で測定したキューブ方位密度の平均値で求めた。またここで測定装置としては、リガク(株)のガイガーフレックスRAD−RBなるX線回折装置を用い、X線回折のシェルツ反射法により、{200}、{220}、{111}の不完全極点図を測定し、これらを元に三次元結晶方位解析(ODF)を行なって調べた。またこれらの解析においては、アルミニウム粉末から作られたランダム結晶方位を有する試料を測定して得たデータを{200}、{220}、{111}極点図の解析の際に使う規格化ファイルとし、これによりランダム方位を有する試料に対する倍数としてキューブ方位密度を求めた。なおこの発明においては、結晶方位密度は全て三次元結晶方位解析(ODF)に基づくものである。なおまた、一般にキューブ方位は、{100}<001>が理想方位であるが、工業用材料のキューブ方位としては、上記の理想方位を中心に15°までずれる結晶方位も含ませるの通常であり、そこでこの発明でも理想方位を中心に15°の範囲内の結晶方位も含ませている。
【0050】
小角粒界の比率:
粒界回転角5°以上15°以下の小角粒界の長さの和と粒界回転角5°以上の全ての粒界長さの総和との比率を次のように測定した。すなわち、テクセムラボラトリーズ社製のOIM装置(EBSP法)を用いて測定された結晶方位のデータをもとに解析して、ミスオリエンテーション・アングル(misorientation angle)とその数の割合(number fraction)によって調べた。なお測定エリアは、圧延方向と平行な断面において板表層から板厚中央部をカバーする幅400μm、縦500μmの領域とした。
【0051】
耳率:
板に潤滑油を塗布した後、ポンチ径φ32mm、ブランク径φ62mm、しわ押さえ20kgの条件でカップに絞り、そのカップの耳率を調べた。なおここで耳率の方向は、圧延方向を基準にした角度を示す。
【0052】
導電率(%IACS):
渦電流式導電率測定装置を用いて銅、黄銅を基準試料として測定を行なった。
【0053】
さらに前述のように得られた各板について、板製造後室温に1ケ月間放置し、各板について、それぞれ2%ストレッチ後、170℃×20分の塗装焼付処理を施した。塗装焼付前の各板について引張試験を行なって機械的特性(耐力、伸び)を調べるとともにヘム曲げ性を調べ、さらに塗装焼付後の各板についても引張試験を行なってその機械的特性(耐力)を調べた。その結果を表7に示す。これらの試験条件、評価方法は次の通りである。
【0054】
引張試験:
材料の圧延方向に対して0°、45°、90°の三方向でJIS Z2201のJIS5号引張試験片を採取して、JIS Z2241に準拠して引張試験を行なった。
【0055】
ヘム曲げ試験:
材料の圧延方向に対して0°、45°、90°の三方向に曲げ試験片を採取し、15%ストレッチして、突き曲げを行ない、突き曲げ後、中板なしで180°に密着曲げを行なった。評価としては、目視で割れが認められなかった場合を合格(○印)とし、目視で割れが認められた場合を不合格(×印)とした。
【0056】
【表1】
Figure 0004807484
【0057】
【表2】
Figure 0004807484
【0058】
【表3】
Figure 0004807484
【0059】
【表4】
Figure 0004807484
【0060】
【表5】
Figure 0004807484
【0061】
【表6】
Figure 0004807484
【0062】
【表7】
Figure 0004807484
【0063】
表1〜表7において、製造番号1、2は、合金の成分組成がこの発明で規定する範囲内でかつ製造条件もこの発明で規定する条件を満たしたものであるが、これらの場合は、ヘム曲げ性が優れ、かつ塗装焼付前の伸び異方性、曲げ異方性も小さく、さらには焼付硬化性が高く、塗装焼付時に充分な焼付硬化性を示した。
【0064】
一方製造番号3〜5は、いずれも合金の成分組成はこの発明で規定する範囲内であるが、製造条件がこの発明で規定する条件を満たさなかったものであり、また製造番号6は、製造条件はこの発明で規定する範囲内であるが、合金の成分組成がこの発明で規定する範囲を外れた比較例である。
【0065】
これらの比較例のうち、製造番号3は、0°、90°耳率が低くて、導電率も高く、その結果曲げ異方性が強く、塗装焼付後の強度も充分に得られなかった。また製造番号4は、板中央部側領域の平均キューブ方位密度が高過ぎて、伸びと曲げ異方性が強く、塗装焼付後の強度も充分に得られなかった。さらに製造番号5は、異方性は小さいが、ヘム曲げ性自体が劣っており、また塗装焼付け後の強度も充分に得られなかった。そしてまた製造番号6は、塗装焼付後の強度が高くかつ伸びと曲げの異方性も小さいが、ヘム曲げ性自体が劣っていた。
【0066】
【発明の効果】
この発明によれば、成形性、特にヘム曲げ性が優れていると同時に、ヘム曲げ性の異方性や機械的性能の異方性等の材料異方性が小さく、しかも塗装焼付硬化性が良好で塗装焼付後の強度が高く、さらに室温での経時変化も少ない成形加工用アルミニウム合金板を得ることができ、したがって自動車用ボディシートなど、成形加工特にヘム曲げ加工と塗装焼付を施して使用されるアルミニウム合金板に最適である。

Claims (3)

  1. Mg0.3〜1.0%(mass%、以下同じ)、Si0.3〜1.5%を含有し、かつMn0.03〜0.4%、Cr0.03〜0.4%、Fe0.03〜0.5%、Ti0.005〜0.2%、Zn0.03〜2.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、さらにCuが1%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金を素材とし、板表面から全板厚の2/5の深さの位置までの領域を板表面側領域とするとともに、板表面から全板厚の2/5の深さの位置よりも板厚方向中央部側の領域を板中央部側領域とし、板表面側領域における平均キューブ方位密度がランダム結晶方位を有する試料の8〜250倍の範囲内にあり、かつ板中央部側領域における平均キューブ方位密度がランダム結晶方位を有する試料の200倍以下であり、しかも板表面側領域の平均キューブ方位密度が板中央部側領域の平均キューブ方位密度よりも高く、さらに板全体の粒界のうち、粒界における結晶回転角が5°以上15°以下の小角粒界の粒界長さの和が、粒界における結晶回転角が5°以上の全粒界の長さの総和に対して2〜90%の範囲内となっており、さらに板の0°方向の耳率、90°方向の耳率がいずれも5%以上であり、導電率が54%IACS以下であることを特徴とする、曲げ加工その他の成形性および焼付硬化性に優れかつ伸びと曲げ異方性の少ない成形加工用アルミニウム合金板。
  2. Mg0.3〜1.0%、Si0.3〜1.5%を含有し、かつMn0.03〜0.4%、Cr0.03〜0.4%、Fe0.03〜0.5%、Ti0.005〜0.2%、Zn0.03〜2.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、さらにCuが1%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金鋳塊を熱間圧延するにあたり、
    (1)熱間圧延途中の板厚250〜100mmの段階における板温度を500〜320℃の範囲内とし、
    (2)熱間圧延途中の板厚100〜15mmの段階における板温度を450〜270℃の範囲内とし、
    (3)熱間圧延の上がり板厚を1.5〜8mmとし、
    (4)熱間圧延上がり温度を180〜350℃の範囲内とし、
    (5)熱間圧延中における板厚250mm以降の段階の各圧延パスにおける歪み速度を0.2/秒〜350/秒の範囲内とし、
    (6)熱間圧延中における板厚250mm以降の段階の各圧延パス間の滞留時間を10分未満とし、
    (7)熱間圧延中の板厚50mm以降の段階における圧延ロールと板との接触部分のロール表面の平均温度を350℃以下とし、
    以上(1)〜(7)が満たされるように制御して熱間圧延を終了させ、
    さらに中間焼鈍を施すことなく圧延率30%以上で冷間圧延を施して製品板厚とした後、その圧延板に対し、480℃以上の温度での5分以内の溶体化処理を行なってから100℃/min以上の平均冷却速度で50℃以上150℃未満の温度域まで冷却し、続いてその温度域内において2時間以上で保持もしくは徐冷する安定化処理を行ない、
    これによって板表面から全板厚の2/5の深さの位置までの領域を板表面側領域とするとともに、板表面から全板厚の2/5の深さの位置よりも板厚方向中央部側の領域を板中央部側領域とし、板表面側領域における平均キューブ方位密度がランダム結晶方位を有する試料の8〜250倍の範囲内にあり、かつ板中央部側領域における平均キューブ方位密度がランダム結晶方位を有する試料の200倍以下であり、しかも板表面側領域の平均キューブ方位密度が板中央部側領域の平均キューブ方位密度よりも高く、さらに板全体の粒界のうち、粒界における結晶回転角が5°以上15°以下の小角粒界の粒界長さの和が、粒界における結晶回転角が5°以上の全粒界の長さの総和に対して2〜90%の範囲内となっており、さらに板の0°方向の耳率、90°方向の耳率がいずれも5%以上であり、導電率が54%IACS以下であるアルミニウム合金板を得ることを特徴とする、曲げ加工その他の成形性および焼付硬化性に優れかつ伸びと曲げ異方性の少ない成形加工用アルミニウム合金板の製造方法。
  3. 請求項2に記載の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法において、
    前記安定化処理の後、さらに100℃/min以上の加熱速度で170〜280℃の範囲内の温度に加熱してその範囲内の温度で5分以下保持した後、100℃/min以上の冷却速度で冷却する最終熱処理を施すことを特徴とする、曲げ加工その他の成形性および焼付硬化性に優れかつ伸びと曲げ異方性の少ない成形加工用アルミニウム合金板の製造方法。
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