JP2003268475A - 成形加工用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents

成形加工用アルミニウム合金板およびその製造方法

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雄一 佐藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 自動車用ボディシート等として、ヘム曲げ性
が優れたAl−Mg−Si系成形加工用Al合金板を提供する。 【解決手段】 Mg0.3〜1.0%、Si0.3〜1.2%を含有し、
かつMn、Cr、Zr、V、Fe、Ti、Znの1種以上を少量含有
し、Cuが1.0%以下、残部がAlよりなり、かつ全厚板に
わたり、キューブ方位密度がランダム方位試料の2倍以
上、0°、90°耳率が0.1%以上、平均結晶粒径100μm
以下のAl合金板。さらに板表面から全板厚の1/4深さま
での領域のND回転キューブ方位密度がランダム方位試料
の2倍以上であるAl合金板。製造方法として、熱間圧延
を150〜80mmの段階で500〜320℃、80〜15mmの段階で450
〜270℃、上り板厚が1.5〜8mm、上り温度が350〜180℃
となるように行い、30%以上の冷間圧延を施した後、48
0℃以上で5分以内の溶体化処理後、100℃/min以上で50
℃〜150℃未満に冷却し、続いて同じ温度域で2時間以上
保持する安定化処理を行なう。またその後170〜280℃で
5分以内の最終熱処理を行なう。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】この発明は、自動車ボディシ
ートやそのほか各種自動車部品、各種機械器具、家電製
品やその部品等の素材として、成形加工および塗装焼付
を施して使用されるAl−Mg−Si系のアルミニウム
合金板およびその製造方法に関するものであり、成形
性、特にヘム曲げ性が良好であるとともに、塗装焼付後
の強度が高く、かつ室温での経時変化が少ない成形加工
用アルミニウム合金板およびその製造方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】従来自動車のボディシートとしては、主
として冷延鋼板を使用することが多かったが、最近では
車体軽量化等の観点から、アルミニウム合金圧延板を使
用することが多くなっている。ところで自動車のボディ
シートはプレス加工を施して使用するところから、成形
加工性が優れていること、また成形加工時におけるリュ
ーダースマークが発生しないことが要求され、また外板
としての接合のためにヘム曲げ加工を施して使用するこ
とが多いところから、成形性のうちでも特にヘム曲げ性
が優れていることが要求され、そのほか高強度を有する
ことも必須であり、特に塗装焼付を施すのが通常である
ため、塗装焼付後に高強度が得られることが要求され
る。
【0003】従来このような自動車用ボディシート向け
のアルミニウム合金としては、Al−Mg系合金のほ
か、時効性を有するAl−Mg−Si系合金が主として
使用されている。この時効性Al−Mg−Si系合金
は、塗装焼付前の成形加工時においては比較的強度が低
くて成形性が優れている一方、塗装焼付時の加熱によっ
て時効されて塗装焼付後の強度が高くなる利点を有する
ほか、リューダースマークが発生しない等の利点を有す
る。
【0004】なお上述のような塗装焼付時における時効
硬化を期待した時効性Al−Mg−Si系合金板の製造
方法としては、鋳塊を均質化熱処理した後、熱間圧延お
よび冷間圧延を行なって所定の板厚とし、かつ必要に応
じて熱間圧延と冷間圧延との間あるいは冷間圧延の中途
において中間焼鈍を行ない、冷間圧延後に溶体化処理を
行なって焼入れるのが通常である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前述のような自動車用
ボディシート向けの時効性Al−Mg−Si系合金板に
ついての従来の一般的な製造方法により得られた板で
は、最近の自動車用ボディシートに要求される特性を充
分に満足させることは困難であった。
【0006】すなわち、最近ではコストの一層の低減や
自動車車体の軽量化等のために、自動車用ボディシート
についてさらに薄肉化することが強く要求されており、
そのため薄肉でも充分な強度が得られるように、一層の
高強度化が求められると同時に、成形性、特にヘム曲げ
性の改善が強く要求されているが、これらの性能をバラ
ンスよく満足させる点について従来の一般的な製造方法
によって得られたAl−Mg−Si系合金板では不充分
であった。特にヘム曲げ加工は、曲げ内径が1mm以下
の180°曲げという過酷な曲げ加工であるため、良好
なヘム曲げ性と強度とを両立させることが困難であると
いう問題があった。
【0007】また塗装焼付については、省エネルギおよ
び生産性の向上、さらには高温に曝されることが好まし
くない樹脂等の材料との併用などの点から、従来よりも
焼付温度を低温化し、また焼付時間も短時間化する傾向
が強まっている。しかしながら従来の一般的な製法によ
り得られた時効性Al−Mg−Si系合金板の場合、低
温・短時間の塗装焼付処理では、塗装焼付時の硬化(焼
付硬化)が不足し、塗装焼付後に充分な高強度が得難く
なる問題があった。
【0008】ここで、従来の一般的な製法により得られ
た時効性Al−Mg−Si系合金板では、塗装焼付後に
高強度を得るために焼付硬化性を高めようとすれば、素
材の延性と曲げ加工性(特にヘム曲げ性)が低下し、ま
た板製造後に室温に放置した場合に自然時効により硬化
が生じやすくなり、そのため成形性、特にヘム曲げ性が
阻害されがちとなるという問題が生じている。
【0009】この発明は以上の事情を背景としてなされ
たもので、良好な成形加工性、特に良好なヘム曲げ加工
性を有すると同時に、焼付硬化性が優れていて、塗装焼
付時における強度上昇が大きく、しかも板製造後の室温
での経時的な変化が少なく、長期間放置した場合でも自
然時効による硬化に起因する成形性の低下が少ない成形
加工用アルミニウム合金板とその製造方法を提供するこ
とを目的とするものである。
【0010】なおこの明細書において、ヘム曲げ性が良
好であるとは、圧延方向に対して一方向のみのヘム曲げ
性だけではなく、全方向のヘム曲げ性が良好であること
を意味する。
【0011】
【課題を解決するための手段】前述のような課題を解決
するべく本発明者等が実験・検討を重ねた結果、ヘム曲
げ性の向上には材料の結晶粒径制御などのほか、特に金
属組織における結晶方位の適切な制御が極めて重要であ
ることを見出した。そして板製造プロセス条件、特に熱
間圧延条件と、溶体化処理後の冷却条件および安定化処
理条件を適切に規制して、結晶方位条件等を適切に調整
することによって、前述の課題を一挙に解決し得ること
を見出し、この発明をなすに至ったのである。
【0012】具体的には、請求項1の発明の成形加工用
アルミニウム合金板は、Mg0.3〜1.0%、Si
0.3〜1.2%を含有し、かつMn0.03〜0.4
%、Cr0.03〜0.4%、Zr0.03〜0.3
%、V0.03〜0.3%、Fe0.03〜0.5%、
Ti0.005〜0.2%、Zn0.03〜2.5%、
Cu0.1〜1.0%のうちから選ばれた1種または2
種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物より
なるアルミニウム合金からなり、しかも全板厚にわたり
キューブ方位密度がランダム方位試料の2倍以上であ
り、かつ圧延方向に対し0°方向、90°方向の耳率が
0.1%以上で、平均結晶粒径が100μm以下である
ことを特徴とするものである。
【0013】また請求項2の発明の成形加工用アルミニ
ウム合金板は、Mg0.3〜1.0%、Si0.3〜
1.2%を含有し、かつMn0.03〜0.4%、Cr
0.03〜0.4%、Zr0.03〜0.3%、V0.
03〜0.3%、Fe0.03〜0.5%、Ti0.0
05〜0.2%、Zn0.03〜2.5%、Cu0.1
〜1.0%のうちから選ばれた1種または2種以上を含
有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミ
ニウム合金からなり、しかも全板厚にわたりキューブ方
位密度がランダム方位試料の2倍以上であり、かつ板の
表面から全板厚の1/4に相当する深さの位置までの領
域において板面法線を軸にキューブ方位と回転関係にあ
るND回転キューブ方位密度がランダム方位試料の2倍
以上であり、さらに圧延方向に対し0°方向、90°方
向の耳率が0.1%以上で、平均結晶粒径が100μm
以下であることを特徴とするものである。
【0014】さらに請求項3の発明の成形加工用アルミ
ニウム合金板の製造方法は、請求項1もしくは請求項2
に記載の成形加工用アルミニウム合金板を製造する方法
であって、前記成分組成のアルミニウム合金鋳塊に、均
質化処理、熱間圧延および冷間圧延を施した後、溶体化
処理を行なって成形加工用アルミニウム合金板を得るに
あたり、溶体化処理前の冷間圧延を30%以上の圧延率
で行なうことを特徴とするものである。
【0015】また請求項4の発明の成形加工用アルミニ
ウム合金板の製造方法は、請求項1もしくは請求項2に
記載の成形加工用アルミニウム合金板を製造する方法で
あって、前記成分組成のアルミニウム合金鋳塊に均質化
処理を施した後、熱間圧延を行なうにあたり、熱間圧延
過程のうち、150〜80mmの板厚の段階では、少な
くともある板厚で材料温度が500〜320℃の温度域
内となるように制御し、続いて80〜15mmの板厚の
段階では、少なくともある板厚で材料温度が450〜2
70℃の温度域内となるように制御し、さらに熱間圧延
上り温度を350〜180℃の温度域内に制御して、熱
間圧延上り板厚を1.5〜8mmとし、かつまた熱間圧
延過程における板厚150mm以下の各パスの圧延率を
10〜85%の範囲内、熱間圧延開始から終了までの所
要時間を20分以内に制御し、熱間圧延終了後、30%
以上の圧延率で冷間圧延を施して所要の板厚の圧延板と
し、その圧延板に対し480℃以上の温度で保持なしも
しくは5分以内の保持の溶体化処理を行ない、溶体化処
理後、100℃/min以上の冷却速度で50℃以上1
50℃未満の温度域まで冷却し、続いて50℃未満の温
度に冷却することなく、50℃以上150℃未満の温度
域で2時間以上保持する安定化処理を行なうことを特徴
とするものである。
【0016】そしてまた請求項5の発明の成形加工用ア
ルミニウム合金板の製造方法は、請求項4に記載の成形
加工用アルミニウム合金板の製造方法において、前記安
定化処理の後、さらに100℃/min以上の昇温速度
で170〜280℃の範囲内の温度に加熱し、その範囲
内の温度で5分以内の保持を行なった後、100℃/m
in以上の冷却速度で100℃以下の温度まで冷却する
ことを特徴とするものである。
【0017】
【発明の実施の形態】先ずこの発明の成形加工用アルミ
ニウム合金板における成分組成の限定理由について説明
する。
【0018】Mg:Mgはこの発明で対象としている系
の合金で基本となる合金元素であって、Siと共同して
強度向上に寄与する。Mg量が0.3%未満では塗装焼
付時に析出硬化によって強度向上に寄与するG.P.ゾ
ーンの生成量が少なくなるため、充分な強度向上が得ら
れず、一方1.0%を越えれば、粗大なMg−Si系の
金属間化合物が生成され、成形性、特に曲げ加工性が低
下するから、Mg量は0.3〜1.0%の範囲内とし
た。
【0019】Si:Siもこの発明の系の合金で基本と
なる合金元素であって、Mgと共同して強度向上に寄与
する。またSiは、鋳造時に金属Siの晶出物として生
成され、その金属Si粒子の周囲が加工によって変形さ
れて、溶体化処理の際に再結晶核の生成サイトとなるた
め、再結晶組織の微細化にも寄与する。Si量が0.3
%未満では上記の効果が充分に得られず、一方1.2%
を越えれば粗大なSi粒子や粗大なMg−Si系の金属
間化合物が生じて、曲げ加工性の低下を招く。したがっ
てSi量は0.3〜1.2%の範囲内とした。
【0020】Mn、Cr、Zr、V、Ti、Fe、Z
n、Cu:これらの元素は、強度向上や結晶粒微細化、
あるいは時効性の向上や表面処理性の向上に有効であ
り、いずれか1種または2種以上を添加する。これらの
うちMn、Cr、Zr、Vは強度向上と結晶粒の微細化
および組織の安定化に効果がある元素であり、いずれも
含有量が0.03%未満では上記の効果が充分に得られ
ず、一方Mn、Crの含有量がそれぞれ0.4%を越え
れば、あるいはZr、Vの含有量が0.3%を越えれ
ば、上記の効果が飽和するばかりでなく、多数の金属間
化合物が生成されて成形性、特にヘム曲げ性に悪影響を
及ぼすおそれがあり、したがってMn、Crはいずれも
0.03〜0.4%の範囲内、Zr、Vはいずれも0.
03〜0.3%の範囲内とした。またTiも強度向上と
鋳塊組織の微細化に有効な元素であり、その含有量が
0.005%未満では充分な効果が得られず、一方0.
2%を越えればTi添加の効果が飽和するばかりでな
く、粗大な晶出物が生じるおそれがあるから、Ti量は
0.005〜0.2%の範囲内とした。さらにFeも強
度向上と結晶粒微細化に有効な元素であり、その含有量
が0.03%未満では充分な効果が得られず、一方0.
5%を越えれば成形性が低下するおそれがあり、したが
ってFe量は0.03〜0.5%の範囲内とした。また
Znは時効性向上を通じて強度向上に寄与するとともに
表面処理性の向上に有効な元素であり、Znの添加量が
0.03%未満では上記の効果が充分に得られず、一方
2.5%を越えれば成形性が低下するから、Zn量は
0.03〜2.5%の範囲内とした。さらにCuは強度
向上および成形性向上に有効であるが、その量が0.1
%未満では上記の効果が不充分であり、一方1.0%を
越えれば耐食性(耐粒界腐食性、耐糸錆性)が劣化する
から、Cuの含有量は0.1〜1.0%の範囲内とし
た。
【0021】以上の各元素のほかは、基本的にはAlお
よび不可避的不純物とすれば良い。
【0022】なお上記のMn、Cr、Zr、V、Ti、
Fe、Znの含有量範囲は、それぞれ積極的に添加する
場合の範囲として示したものであり、いずれも下限値よ
り少ない量を不純物として含有する場合を排除するもの
ではない。特に0.03%未満のFeは、通常のアルミ
地金を用いれば不可避的に含有されるのが通常である。
【0023】また時効性Al−Mg−Si系合金におい
ては、高温時効促進元素あるいは室温時効抑制元素であ
るAg、In、Cd、Be、あるいはSnを微量添加す
ることがあるが、この発明の場合も微量添加であればこ
れらの元素の添加も許容され、それぞれ0.3%以下で
あれば特に所期の目的を損なうことはない。
【0024】なおまた、一般のAl合金においては、結
晶粒微細化のために前述のTiと同時にBを添加するこ
ともあり、この発明の場合もTiとともに500ppm
以下のBを添加することは許容される。
【0025】さらに請求項1、請求項2の発明の成形加
工用アルミニウム合金板においては、合金の成分組成を
前述のように調整するばかりではなく、金属組織条件と
して、結晶方位の条件が極めて重要である。
【0026】すなわち本発明者等は、ヘム曲げ性と結晶
方位との関係について詳細に実験・検討を重ねた結果、
特にキューブ(Cube)方位結晶粒の密度、すなわち
キューブ方位密度がヘム曲げ性と大きな相関関係を有す
ること、さらには板の比較的表面に近い部分における板
面に垂直な軸(法線;ND)回りにキューブ方位と回転
関係にある方位の結晶粒の密度(ND回転キューブ方位
密度)もヘム曲げ性に関係していることを見出した。す
なわち、(I) 全板厚にわたってキューブ方位密度が
ランダム結晶方位を有する試料の2倍以上であること、
がヘム曲げ性の向上に有効であり、そこでこの(I)の
条件を請求項1において規定した。さらに上記の(I)
の条件に併せて、(II) 板の表面から板厚の1/4に
相当する深さまでの領域において、板面法線(ND)を
軸にキューブ方位と回転関係にあるND回転キュ−ブ方
位密度がランダム結晶方位を有する試料の2倍以上であ
ること、もヘム曲げ性の向上に有効であり、そこで
(I)および(II)の条件を請求項2において規定し
た。
【0027】これらの(I)、(II)の条件を規定した
理由は次の通りである。
【0028】すなわち、本発明者等の実験により、板の
全厚みにわたってキューブ方位密度がランダム結晶方位
を有する試料の方位密度と比べて2倍以上でなければ、
ヘム曲げ加工時において曲げ部位にすべり線が発達して
曲げ歪みが集中しやすく、その歪みが集中した箇所から
割れが発生しやすくなって、ヘム曲げ性を低下させるこ
とが判明し、そこで前記(I)の条件を規定した。ま
た、板表面から板厚の1/4に相当する深さまでの領域
において、板面法線を軸としてキューブ方位と回転関係
にあるND回転キューブ方位密度がランダム方位試料の
2倍以上でなければ、ヘム曲げの方向による曲げ性能の
異方性が顕著となりやすく、均一なヘム曲げ性を得るこ
とが困難となることが判明し、そこで前記(II)の条件
を規定した。
【0029】なお、前記(I)の条件において、より一
層良好なヘム曲げ性を確保するためには、板の全厚みに
わたってキューブ方位密度をランダム方位試料の4倍以
上とすることが望ましい。
【0030】さらに安定してヘム曲げ性を向上させるた
めには、上述のような結晶方位条件のほか、深絞り耳の
耳率のうち、特に圧延方向に対し0°方向、90°方向
の耳率を0.1%以上とする必要がある。すなわち、前
述の結晶方位条件(I)、(II)においては、キューブ
方位およびそれとND軸廻りの回転方向にある方位の方
位密度を規定しているが、それ以外の方位の結晶粒の方
位密度もヘム曲げ性にある程度関係する。しかしながら
キューブ方位およびND回転キューブ方位以外の方位の
結晶粒の密度をすべて細かく規定することは、現実には
困難である。しかるに、本発明者等の実験によれば、板
の深絞り試験(カッピング試験)で絞ったカップの耳率
のうち、0°耳、90°耳によって材料の結晶方位をマ
クロ的に評価し得ることを見出し、さらに実験を進めた
ところ、0°耳、90°耳の耳率を0.1%以上とする
ことによって、キューブ方位およびND回転キューブ方
位以外の方位の結晶粒がヘム曲げ性に悪影響を与えるこ
とを最小限に抑制し得ることを見出し、前述のように0
°、90°の耳率を0.1%以上と規定した。なお0
°、90°耳率の上限は特に限定しないが、通常は50
%程度以下が好ましい。
【0031】さらに、上述のような結晶方位条件および
耳率条件のほか、結晶粒径もヘム曲げ性に影響を与え
る。そこで平均結晶粒径を100μm以下と規定した。
平均結晶粒径が100μmを越えれば、成形時に肌荒れ
が生じやすくなり、ヘム曲げ性も悪くなってしまう。
【0032】次にこの発明の成形加工用アルミニウム合
金板の製造方法について説明する。
【0033】先ず請求項3の発明の製造方法は、請求項
1、請求項2に係る成形加工用アルミニウム合金板を得
るための方法を規定している。この場合は、前述のよう
な成分組成のアルミニウム合金鋳塊について、通常は均
質化処理を行なってから熱間圧延、冷間圧延を行なって
所定の板厚の圧延板とし、その圧延板に対して溶体化処
理を行なうにあたって、溶体化処理前の冷間圧延の圧延
率を30%以上とする。このように溶体化処理前の冷間
圧延率を30%以上とすることによって、材料に歪みエ
ネルギが蓄積され、溶体化処理−焼入れによって材料の
結晶粒が微細化されるだけではなく、前述のようなキュ
ーブ方位密度、ND回転キューブ方位密度を高めること
ができる。溶体化処理前の冷間圧延率が30%未満で
は、結晶方位密度に関しての前記(I)、(II)の条件
を確実かつ安定して満たさせ、ヘム曲げ性を安定して向
上させることが困難となる。
【0034】なお請求項3の発明の製造方法の場合、溶
体化処理前の冷間圧延率以外の条件については特に限定
せず、常法に従えば良いが、望ましくは後述する請求項
4の発明の製造方法に準じたプロセスを適用することが
適当である。
【0035】次に請求項4、請求項5の発明の製造方法
は、請求項1、請求項2に係る成形加工用アルミニウム
合金板を製造するための方法として、前述の結晶方位条
件(I)、(II)等の条件を満たす板を、より確実かつ
安定して得る方法を規定している。
【0036】この場合も、先ず前述のような成分組成の
合金を常法に従って溶製し、DC鋳造法等により鋳造す
る。得られた鋳塊については、通常は均質化処理を行な
ってから熱間圧延を行なう。
【0037】均質化処理の加熱温度、加熱保持時間は特
に限定しないが、通常は480℃以上で1〜24時間程
度の保持とすることが好ましい。また、均質化処理後、
冷却せずにそのまま熱間圧延を開始しても良い。
【0038】次に熱間圧延は、結晶方位の制御に大きな
影響を与えるから、最終板の結晶方位条件を前述のよう
に調整して、良好なヘム曲げ性を得るためには、熱間圧
延過程の温度条件を各板厚段階に分けて厳密に規制し、
さらに熱間圧延過程の後半における各圧延パス圧延率
と、圧延所要時間を厳密に規制する必要がある。すなわ
ち、熱間圧延過程においては、鋳塊厚み(200〜80
0mm程度)から通常は480℃以上の温度で熱間圧延
を開始した後、板厚が150〜80mmの段階では、少
なくともある板厚で材料温度が500℃から320℃の
温度域内となるように制御し、次いで板厚が80〜15
mmの段階では、少なくともある板厚で材料温度が45
0℃から270℃の温度域内となるように制御する必要
がある。さらに熱間圧延上り板厚は、1.5〜8mmと
して、上り温度が350〜180℃の温度範囲内となる
ように制御する必要がある。そしてさらにこのような熱
間圧延過程において、板厚が150mm以下の段階(熱
間圧延終了まで)における各圧延パスの圧延率を10〜
85%の範囲内とし、かつ熱間圧延開始から熱間圧延終
了までの圧延所要時間を20分以内に制御する必要があ
る。このように熱間圧延過程の各条件を細かく規定した
理由は次の通りである。
【0039】すなわち、熱間圧延中において材料は常に
回復・再結晶を繰返すため、各板厚段階での温度や各圧
延パスの圧延率、圧延時間が結晶方位にそれぞれ大きな
影響を与え、前述のように各板厚段階での温度や各圧延
パスの圧延率、時間を前述の条件を満たすように制御す
ることが、結晶方位条件を前述の(I)、(II)の条件
を充足させるために必要であることを本発明者等の実験
により新たに見出したのである。ここで、前述の各圧延
条件のうち、1つでも外れてしまえば、前述の(I)、
(II)の結晶粒方位条件を安定して充足することが困難
となってしまう。
【0040】上述のようにして熱間圧延を行なった後に
は、冷間圧延を行なって所要の板厚とし、その後溶体化
処理を行なう。ここで、冷間圧延の圧延率は30%以上
とする必要がある。すなわち、既に請求項3で規定する
製造方法に関して述べたように、溶体化処理前の冷間圧
延率も結晶方位に大きな影響を与え、前述の(I)、(I
I)の結晶方位条件を満たさせて良好なヘム曲げ性を得
るためには、30%以上の圧延率で溶体化処理前の冷間
圧延を行なう必要がある。なお溶体化処理前の冷間圧延
における冷間圧延率の上限は特に限定されるものではな
いが、通常は90%程度以下とすれば良い。
【0041】前述のようにして所要の板厚まで冷間圧延
した後には、溶体化処理を行なう。この溶体化処理は、
480℃以上の温度で5分以内の条件とする。この溶体
化処理は、MgSi、単体Si等をマトリックスに固
溶させ、これにより焼付硬化性を付与して塗装焼付後の
強度向上を図るために必要な工程である。またこの溶体
化処理工程は、MgSi、単体Si粒子等の固溶によ
り、第2相粒子の分布密度を低下させ、ひいては延性と
曲げ性の向上にも寄与し、さらには、再結晶により全般
的に良好な成形性を得るために必要な工程でもある。さ
らにまたこの溶体化処理工程は、再結晶により再結晶集
合組織を形成して、既に述べたような結晶方位密度条件
を満たす最終板を得るためにも不可欠である。
【0042】ここで溶体化処理温度が480℃未満で
は、室温の経時変化の抑制には有利となるとも思われる
が、MgSi、Siなどの固溶量が少なく、そのため
充分な焼付硬化性が得られなくなるばかりでなく、延性
と曲げ性も著しく悪化する。一方溶体化処理温度の上限
は特に規定しないが、共晶融解の発生のおそれや再結晶
粒粗大化等を考慮して、通常は580℃以下とすること
が望ましい。また溶体化処理の保持時間が5分を越えれ
ば、溶体化効果が飽和し、経済性を損なうばかりではな
く、結晶粒の粗大化のおそれもあるから、溶体化処理の
保持時間は5分以内とする。
【0043】溶体化処理後には、100℃/min以上
の冷却速度で、50〜150℃の温度域まで冷却(焼入
れ)する。ここで、溶体化処理後の冷却速度が100℃
/min未満では、冷却中にMgSiあるいは単体S
iが粒界に多量に析出してしまい、成形性、特にヘム曲
げ性が低下すると同時に、焼付硬化性が低下して塗装焼
付時の充分な強度向上が望めなくなる。
【0044】上述のように、480℃以上の温度で溶体
化処理を行なって、100℃/min以上の冷却速度で
50〜150℃未満の温度域内まで冷却(焼入)した後
には、50℃より低い温度域まで温度降下しないうちに
引続いてその温度域(50〜150℃未満)内で2時間
以上保持する安定化処理を行なう。ここで、溶体化処理
後の冷却を50〜150℃未満の温度域までとし、さら
に50℃より低い温度域まで温度降下しないうちに引続
いて溶体化処理を行なう理由は次の通りである。すなわ
ち、溶体化処理後に100℃/min以上の冷却速度で
50℃未満の温度域(室温)に冷却した場合には、室温
クラスターが生成される。この室温クラスターは強度に
寄与するG.P.ゾーンに移行しにくいため、塗装焼付
硬化性に不利となる。一方、溶体化処理後に150℃以
上の温度域まで冷却してそのまま保持した場合には、高
温クラスターあるいはG.P.ゾーンが生成され、塗装
焼付硬化性については有利となるが、ヘム曲げ性が劣化
するとともに、室温での経時変化が生じやすくなる。し
たがってヘム曲げ性、室温経時変化と塗装焼付硬化性と
のバランスの観点から、上記の条件を満たす必要があ
る。
【0045】安定化処理は、前述のように溶体化処理後
に50〜150℃未満の温度域まで冷却してから、50
℃未満の温度域(室温)まで冷却することなく、50〜
150℃未満の範囲内の温度に保持して行なう。この安
定化処理は、最終的にクラスターあるいはG.P.ゾー
ンの安定性を向上させ、板製造後の経時変化を抑制し
て、充分な焼付硬化性を確保するとともに、良好な成形
加工性を得るために必要な工程であり、この安定化処理
は、50〜150℃未満の範囲内の温度に2時間以上保
持の条件とする必要がある。安定化処理の温度が50℃
未満では上記の効果が充分に得られず、一方150℃を
越えれば高温時効によって粒界析出の傾向が強くなり、
成形性、特にヘム曲げ性が低下してしまう。また安定化
処理における50〜150℃未満の範囲内の温度に保た
れる時間が2時間未満では、その後の室温での経時変化
が速くなって成形性と焼付硬化性が悪くなる。なお安定
化処理の加熱保持時間の上限は特に限定しないが、通常
は経済性の観点から48時間以下とすることが好まし
い。なおまた、上述のような50〜150℃未満の温度
域での2時間以上の安定化処理は、必ずしも一定温度で
2時間以上保持する必要はない。すなわち、要は50℃
以上150℃未満の範囲内の温度に2時間以上維持され
れば良いから、例えば徐冷などによって50〜150℃
未満の温度域内で2時間以上経過させるようにしても良
い。
【0046】以上のように安定化処理を行なった後に
は、室温まで冷却して、そのまま成形加工や塗装焼付の
用途に供しても良いが、最終熱処理として、請求項5に
おいて規定しているように、100℃/min以上の昇
温速度で170〜280℃の範囲内の温度に加熱し、そ
の範囲内の温度で5分以内の保持を行なった後、100
℃/min以上の冷却速度で100℃以下の温度に冷却
しても良い。
【0047】このような最終熱処理を行なえば、塗装焼
付硬化性およびヘム曲げ性をより一層向上させることが
できる。ここで、最終熱処理における加熱温度が170
℃未満では上記の効果が得られず、一方280℃を越え
る高温では室温での経時変化が生じやすくなるとともに
プレス成形性が悪くなる。また加熱保持時間が5分を越
えれば、最終熱処理の効果が飽和するばかりでなく、場
合によっては長時間の時効によって成形前の素材の強度
が高くなり過ぎて成形性が悪くなってしまう。さらに加
熱昇温速度が100℃/min未満では時効が進んで成
形性が悪くなり、一方冷却速度が100℃/min未満
でも時効が進み、粒界析出が生じて成形性、特にヘム曲
げ性が低下してしまう。したがって最終熱処理前の条件
は前述のように規制する必要がある。
【0048】なお安定化処理後、最終熱処理までの間の
条件は特に規定しないが、通常は安定化処理後、最終熱
処理まで材料を室温に放置することが多く、この場合の
放置時間は、材料の室温経時変化などを考慮して、1ケ
月以内とすることが望ましい。
【0049】以上のように、熱間圧延過程における諸条
件を厳密に規制し、さらに溶体化処理−冷却−安定化処
理の条件、さらには最終熱処理の条件を厳密に規制する
ことによって、既に述べたような結晶方位条件および耳
率条件、結晶粒径条件を満たし、成形性、特にヘム曲げ
性が優れ、かつ塗装焼付硬化性が良好でしかも室温時効
による経時変化が生じにくい時効性Al−Mg−Si系
アルミニウム合金板を得ることができる。
【0050】
【実施例】表1に示すこの発明成分組成範囲内の合金記
号A1〜A5の合金、およびこの発明の成分組成範囲外
の合金記号B1の合金について、それぞれ常法に従って
DC鋳造法により鋳造し、得られた550mm厚の鋳塊
に530℃×2時間の条件で均質化処理を施した後、5
10℃の温度で熱間圧延を開始し、熱間圧延終了後冷間
圧延を施して、最終的に厚さ1mmの圧延板とした。な
お熱間圧延においては、板厚150mm以下の各パスの圧
延率を10〜85%の範囲内とした。その他の熱間圧
延、冷間圧延の諸条件を表2に示す。
【0051】なお表2においては、熱間圧延過程におけ
る板厚150〜80mmの段階、および板厚80〜15
mmの段階のそれぞれについて、各段階内の代表的な板
厚での温度を示している。そして製造番号1〜4,6の
場合は、150〜80mmの板厚段階内の代表板厚で材
料温度が500〜320℃の温度域内となっており、ま
た80〜15mmの板厚段階内の代表板厚で材料温度が
450〜270℃の温度域内となっており、さらに熱間
圧延上り温度も350〜180℃の温度域となってい
る。一方また製造番号5の場合は、熱間圧延上り温度が
109℃であって、この発明で規定する範囲を下廻り、
また上り板厚、熱間圧延所要時間もこの発明で規定する
範囲を外れている。
【0052】前述のようにして得られた各圧延板に対
し、種々の溶体化処理を行なってから、100℃/mi
n以上の冷却速度で所定の温度域まで冷却(焼入れ)し
て、引続き種々の安定化処理を行なった。また一部のも
のについては、安定化処理後、100℃/min以上の
加熱速度、冷却速度で最終熱処理を行なった。溶体化処
理以降の具体的なプロセス条件を表3に示す。
【0053】以上のようにして得られた板について、そ
の金属組織状態、特に平均結晶粒径と、結晶方位密度
(キューブ方位密度)およびND回転キューブ方位密度
を調べるとともに、0°方向、90°方向の耳率を調べ
た。
【0054】なお結晶方位密度の測定は、厚さ1mm板
をNaOH水溶液で表面から100μmエッチングした
ものを測定サンプルとし、リガク(株)製のX線回折装
置(商品名:ガイガーフレックスRAD−RB)を用
い、シュルツ(Schulz)反射法により、{20
0}、{220}、{111}の不完全極点図を測定
し、これらをもとに三次元結晶方位解析(ODF)を行
なった。なおこの明細書において言及している結晶方位
密度は、すべて三次元結晶方位解析(ODF)によるも
のである。ここで、{100}<001>の方位をキュ
ーブ方位あるいは立方体方位の理想方位とするが、工業
用材料のキューブ方位としては上記の理想方位を中心に
15°までずれた結晶方位も含ませるのが通常であり、
この実施例の場合もそれに従った。またND回転キュー
ブ方位の理想方位は{100}<013>であるが、工
業用材料ではこの理想方位を中心に15°までずれる結
晶方位も含ませるのが通常であり、この実施例の場合も
それに従った。さらに耳率の測定については、潤滑油を
塗布した後、ポンチ径φ32mm、ブランク径φ62m
m、しわ押さえ200kgの条件でカッピング絞り試験
を行ない、圧延方向に対し0°方向、90°方向の耳率
を評価した。なお耳率は、次式によって算出した。 耳率={(山高さの平均値)−(谷高さの平均値)}/
[{(山高さの平均値)+(谷高さの平均値)}/2]
×100(%)
【0055】これらの結果を表4に示す。
【0056】さらに前述のように得られた板を、室温に
6ケ月間放置し、各板について、それぞれ2%ストレッ
チ後、170℃×20分の塗装焼付処理を施した。塗装
焼付前の各板の機械的特性(耐力、伸び)および成形性
と、塗装焼付後の機械的特性(耐力)を調べた。その結
果を表5に示す。
【0057】なお成形性評価としては、ヘム曲げ試験、
球頭張出試験、絞り試験を行なったが、これらの試験条
件、評価方法は次の通りである。
【0058】ヘム曲げ試験:圧延方向に対し0°、45
°、90°の3方向に曲げ試験片を採取し、図1に示す
ようにそれぞれ15%ストレッチして、突き曲げを行
い、突き曲げ後、中板なしで180°に密着曲げを行な
い、目視による割れ観察を行なって、全方向で割れの発
生のないものを合格(○印)、1方向でも割れの発生の
あるものを不合格(×印)とした。
【0059】張出試験:板両面に成形フィルムを貼り付
け、さらに潤滑油を塗布した後、100mmφの球頭ポ
ンチを使って張出試験を実施し、球頭張出高さを調べ
た。
【0060】絞り試験:潤滑油を塗布した後、50mm
ポンチ径を使って絞り試験を行ない、限界絞り比LDR
を調べた。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】製造番号1〜4は、いずれも合金の成分組
成がこの発明で規定する範囲内でかつ製造条件もこの発
明で規定する条件を満たしたものであるが、これらの場
合は、塗装焼付前の伸びおよび球頭張出高さが充分に高
く、かつ絞り成形性を表すLDRも充分に高くて、ヘム
曲げ性が優れ、しかも焼付硬化性が高くて塗装焼付時に
充分な焼付硬化性を示した。
【0067】これに対し製造番号5は、合金の成分組成
はこの発明範囲内であるが、製造条件がこの発明で規定
する条件を満たさなかったものであり、一方製造番号6
は、成分組成がこの発明で規定する範囲を外れた合金を
用いかつ製造条件もこの発明で規定する条件を満たさな
かったものである。これらの場合には成形性、特にヘム
曲げ性が劣り、また塗装焼付後の強度も充分に得られな
かった。
【0068】
【発明の効果】この発明によれば、成形性、特にヘム曲
げ性が優れており、しかも塗装焼付硬化性が良好で塗装
焼付後の強度が高く、さらに室温での経時変化も少ない
成形加工用アルミニウム合金板を得ることができ、した
がって自動車用ボディシートなど、成形加工特にヘム曲
げ加工と塗装焼付を施して使用されるアルミニウム合金
板に最適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例において実施したヘム曲げ試
験を説明するための略解図である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C22F 1/00 604 C22F 1/00 604 623 623 630 630K 682 682 683 683 685 685Z 686 686B 691 691A 691B 691C 692 692A 692B 693 693A 693B 694 694A (72)発明者 村松 俊樹 東京都墨田区錦糸1丁目2番1号 スカイ アルミニウム株式会社内 (72)発明者 佐賀 誠 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 (72)発明者 佐藤 雄一 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 (72)発明者 高田 健 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 Fターム(参考) 4E002 AA08 AD01 BC05 BC07 CB10

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mg0.3〜1.0%(mass%、以
    下同じ)、Si0.3〜1.2%を含有し、かつMn
    0.03〜0.4%、Cr0.03〜0.4%、Zr
    0.03〜0.3%、V0.03〜0.3%、Fe0.
    03〜0.5%、Ti0.005〜0.2%、Zn0.
    03〜2.5%、Cu0.1〜1.0%のうちから選ば
    れた1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不
    可避的不純物よりなるアルミニウム合金からなり、しか
    も全板厚にわたりキューブ方位密度がランダム方位試料
    の2倍以上であり、かつ圧延方向に対し0°方向、90
    °方向の耳率が0.1%以上で、平均結晶粒径が100
    μm以下であることを特徴とする、ヘム曲げ性および焼
    付硬化性に優れかつ室温経時変化の少ない成形加工用ア
    ルミニウム合金板。
  2. 【請求項2】 Mg0.3〜1.0%、Si0.3〜
    1.2%を含有し、かつMn0.03〜0.4%、Cr
    0.03〜0.4%、Zr0.03〜0.3%、V0.
    03〜0.3%、Fe0.03〜0.5%、Ti0.0
    05〜0.2%、Zn0.03〜2.5%、Cu0.1
    〜1.0%のうちから選ばれた1種または2種以上を含
    有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミ
    ニウム合金からなり、しかも全板厚にわたりキューブ方
    位密度がランダム方位試料の2倍以上であり、かつ板の
    表面から全板厚の1/4に相当する深さの位置までの領
    域において板面法線を軸にキューブ方位と回転関係にあ
    るND回転キューブ方位密度がランダム方位試料の2倍
    以上であり、さらに圧延方向に対し0°方向、90°方
    向の耳率が0.1%以上で、平均結晶粒径が100μm
    以下であることを特徴とする、ヘム曲げ性および焼付硬
    化性に優れかつ室温経時変化の少ない成形加工用アルミ
    ニウム合金板。
  3. 【請求項3】 請求項1もしくは請求項2に記載の成形
    加工用アルミニウム合金板を製造する方法であって;前
    記成分組成のアルミニウム合金鋳塊に、均質化処理、熱
    間圧延および冷間圧延を施した後、溶体化処理を行なっ
    て成形加工用アルミニウム合金板を得るにあたり、溶体
    化処理前の冷間圧延を30%以上の圧延率で行なうこと
    を特徴とする、ヘム曲げ性および焼付硬化性に優れかつ
    室温経時変化の少ない成形加工用アルミニウム合金板の
    製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1もしくは請求項2に記載の成形
    加工用アルミニウム合金板を製造する方法であって;前
    記成分組成のアルミニウム合金鋳塊に均質化処理を施し
    た後、熱間圧延を行なうにあたり、熱間圧延過程のう
    ち、150〜80mmの板厚の段階では、少なくともあ
    る板厚で材料温度が500〜320℃の温度域内となる
    ように制御し、続いて80〜15mmの板厚の段階で
    は、少なくともある板厚で材料温度が450〜270℃
    の温度域内となるように制御し、さらに熱間圧延上り温
    度を350〜180℃の温度域内に制御して、熱間圧延
    上り板厚を1.5〜8mmとし、かつまた熱間圧延過程
    における板厚150mm以下の各パスの圧延率を10〜
    85%の範囲内、熱間圧延開始から終了までの所要時間
    を20分以内に制御し、熱間圧延終了後、30%以上の
    圧延率で冷間圧延を施して所要の板厚の圧延板とし、そ
    の圧延板に対し480℃以上の温度で保持なしもしくは
    5分以内の保持の溶体化処理を行ない、溶体化処理後、
    100℃/min以上の冷却速度で50℃以上150℃
    未満の温度域まで冷却し、続いて50℃未満の温度に冷
    却することなく、50℃以上150℃未満の温度域で2
    時間以上保持する安定化処理を行なうことを特徴とす
    る、ヘム曲げ性および焼付硬化性に優れかつ室温経時変
    化の少ない成形加工用アルミニウム合金板の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の成形加工用アルミニウ
    ム合金板の製造方法において、 前記安定化処理の後、さらに100℃/min以上の昇
    温速度で170〜280℃の範囲内の温度に加熱し、そ
    の範囲内の温度で5分以内の保持を行なった後、100
    ℃/min以上の冷却速度で100℃以下の温度まで冷
    却することを特徴とする、ヘム曲げ性および焼付硬化性
    に優れかつ室温経時変化の少ない成形加工用アルミニウ
    ム合金板の製造方法。
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