JP2626958B2 - 成形性および焼付硬化性に優れたアルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents
成形性および焼付硬化性に優れたアルミニウム合金板の製造方法Info
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Description
トや部品、各種機械器具、家電部品等の素材として、成
形加工および塗装焼付を施して使用されるアルミニウム
合金板の製造方法に関するものであり、特に成形性が良
好であるとともに、塗装焼付後の強度が高く、かつ室温
での経時変化が少ない成形加工用アルミニウム合金板の
製造方法に関するものである。
して冷延鋼板を使用することが多かったが、最近では車
体軽量化の観点から、アルミニウム合金圧延板を使用す
ることが進められている。自動車のボディシートはプレ
ス加工を施して使用するところから、成形加工性が優れ
ていること、また成形加工時におけるリューダースマー
クが発生しないことが要求され、また高強度を有するこ
とも必須であって、特に塗装焼付を施すことから、塗装
焼付後に高強度が得られることが要求される。
のアルミニウム合金としては、時効性を有するJIS
6000番系合金、すなわちAl−Mg−Si系合金が
主として使用されている。この時効性Al−Mg−Si
系合金では、塗装焼付前の成形加工時においては比較的
強度が低く、成形性が優れており、一方塗装焼付時の加
熱によって時効されて塗装焼付後の強度が高くなる利点
を有するほか、リューダースマークが発生しない等の利
点を有する。
期待したAl−Mg−Si系合金板の製造方法として
は、鋳塊を均質化熱処理した後、熱間圧延および冷間圧
延を行なって所定の板厚とし、かつ必要に応じて熱間圧
延と冷間圧延との間あるいは冷間圧延の中途において中
間焼鈍を行ない、冷間圧延後に溶体化処理を行なって焼
入れるのが通常である。しかしながらこのような従来の
一般的な製造方法では、最近の自動車用ボディシートに
要求される特性を充分に満足させることは困難である。
ためにさらに薄肉化することが強く要求されており、そ
のため薄肉でも充分な強度が得られるように、一層の高
強度化が求められているが、この点で従来の一般的な製
造方法によって得られたAl−Mg−Si系合金板では
不充分であった。
び生産性の向上、さらには高温に曝されることが好まし
くない樹脂等の材料との併用などの点から、従来よりも
焼付温度を低温化し、また焼付時間も短時間化する傾向
が強まっている。そのため従来の一般的な製法により得
られたAl−Mg−Si系合金板では、塗装焼付時の硬
化(焼付硬化)が不足し、塗装焼付後に充分な高強度が
得難くなる問題が生じていた。
ついて、板の製造方法に検討を加えて、前述のような問
題を解決することが試みられており、その代表的な例と
して、特開平4−210456号公報で提案されている
方法がある。この提案の方法は、溶体化処理後の焼入れ
のための冷却過程中途において50〜130℃の温度域
で1〜48時間の保持を行ない、さらにその後改めて1
40〜180℃の範囲内の温度で3〜10分間の低温加
熱処理を行なうものである。
456号の提案の方法によれば、従来の一般的なAl−
Mg−Si系合金板製造方法と比較すれば、素材の高強
度化および塗装焼付後の高強度化についてある程度有効
と考えられるが、満足できる程度には至っていないのが
実情である。
図るべく、時効硬化性を強めれば、板の製造後、長期間
放置してから成形加工、塗装焼付に供した場合、成形加
工前の放置期間中に自然時効(室温時効)が進行して板
が硬化し、成形性が悪化してしまう問題がある。前述の
提案の方法ではその点について充分な考慮がなされてい
ないのが実情である。
熱処理を140〜180℃×3〜10分としており、こ
の場合バッチ式の焼鈍を適用しようとすれば保持時間が
短過ぎ、一方連続方式の焼鈍を適用しようとすれば逆に
保持時間が長過ぎ、いずれの場合も生産しにくいという
問題もある。
れたもので、良好な成形加工性を有すると同時に、焼付
硬化性が優れていて、塗装焼付時における強度上昇が高
く、しかも板製造後の室温での経時的な変化が少なく、
長期間放置した場合でも自然時効による硬化に起因する
成形性の低下が少ない成形加工用アルミニウム合金板の
製造方法を提供することを目的とするものである。
するべく本発明者等が実験・検討を重ねた結果、Al−
Mg−Si系合金についてその成分組成を適切に選択す
ると同時に、板製造プロセス中において、溶体化処理後
に適切な熱処理を行なうことによって、前述の課題を解
決し得ることを見出し、この発明をなすに至った。
アルミニウム合金板の製造方法は、Mg0.3〜1.5
%、Si0.5〜2.5%を含有し、さらに必要に応じ
てCu0.03〜1.2%、Zn0.03〜1.5%、
Mn0.03〜0.4%、Cr0.03〜0.4%、Z
r0.03〜0.4%、V0.03〜0.4%、Fe
0.03〜0.5%、Ti0.005〜0.2%のうち
から選ばれた1種または2種以上を含有し、残部がAl
および不可避的不純物よりなる合金を素材とし、鋳塊に
均質化処理を施した後、熱間圧延および冷間圧延を行な
って所要の板厚の圧延板とし、その圧延板に対し、48
0℃以上の温度で溶体化処理を行なってから100℃/
min 以上の冷却速度で150〜300℃の範囲内の温度
まで冷却し、続いてその150〜300℃の範囲内の温
度で1〜600秒保持する熱処理を行なった後、100
℃/min 以上の冷却速度で140℃以下の温度まで冷却
し、その後72時間以内に、50〜140℃の範囲内の
温度で0.5〜50時間保持する安定化処理を行なうこ
とを特徴とするものである。
成限定理由について説明する。
の合金で基本となる合金元素であって、Siと共同して
強度向上に寄与する。Mg量が0.3%未満では塗装焼
付時に析出硬化によって強度向上に寄与するMg2 Si
の生成量が少なくなるため、充分な強度が得られず、一
方1.5%を越えれば成形性が低下するから、Mg量は
0.3〜1.5%の範囲内とした。
なる合金元素であって、Mgと共同して強度向上に寄与
する。またSiは、鋳造時に金属Siの晶出物として生
成され、その金属Si粒子の周囲が加工によって変形さ
れて、溶体化処理の際に再結晶核の生成サイトとなるた
め、結晶粒の微細化にも寄与する。Siが0.5%未満
では上記の効果が充分に得られず、一方2.5%を越え
れば粗大Siが生じて合金の靭性低下を招く。したがっ
てSiは0.5〜2.5%の範囲内とした。
i,Fe:これらは絶対的な必須元素ではないが、強度
向上や結晶粒微細化のために必要に応じて1種または2
種以上添加される。これらのうち、Cuは強度向上に有
効な元素であるが、Cu量が0.03%未満ではその効
果が充分に得られず、一方1.2%を越えれば耐食性が
低下するから、Cuを添加する場合のCu量は0.03
〜1.2%の範囲内とした。またZnは合金の時効性の
向上を通じて強度向上に寄与する元素であり、その含有
量が0.03%未満では上記の効果が不充分であり、一
方1.5%を越えれば成形性および耐食性が低下するか
ら、Znを添加する場合のZn量は0.03〜1.5%
の範囲内とした。さらにMn,Cr,Zr,Vはいずれ
も強度向上と結晶粒の微細化および組織の安定化に効果
がある元素であり、いずれも含有量が0.03%未満で
は上記の効果が充分に得られず、一方それぞれ0.4%
を越えれば、上記の効果が飽和するばかりでなく、巨大
金属間化合物が生成されて成形性に悪影響を及ぼすおそ
れがあり、したがってMn,Cr,Zr,Vはいずれも
0.03〜0.4%の範囲内とした。またTiも強度向
上と鋳塊組織の微細化に有効な元素であり、その含有量
が0.005%未満では充分な効果が得られず、一方
0.2%を越えればTi添加の効果が飽和するばかりで
なく、巨大晶出物が生じるおそれがあるから、Tiは
0.005〜0.2%の範囲内とした。そしてまたFe
も強度向上と結晶粒微細化に有効な元素であり、その含
有量が0.03%未満では充分な効果が得られず、一方
0.5%を越えれば成形性が低下するおそれがあり、し
たがってFeは0.03〜0.5%の範囲内とした。な
お0.03%未満のFeは、通常のアルミ地金を用いれ
ば不可避的に含有される。なおこれらのCu,Zn,M
n,Cr,Zr,V,Ti,Feの範囲は、積極的な添
加元素としてこれらの元素を含む場合について示したも
のであり、いずれもその下限値よりも少ない量を不純物
として含有していることは特に支障ない。
よび不可避的不純物とすれば良い。但し、一般にMgを
含有する系の合金においては溶湯の酸化防止のために微
量のBeを添加することがあり、この発明の合金の場合
も0.0001〜0.01%程度のBeの添加は許容さ
れる。また一般に結晶粒微細化のために前述のTiと同
時にBを添加することもあり、この発明の場合もTiと
ともに500ppm 以下のBを添加することは許容され
る。
について説明する。
品板厚の圧延板とするまでの工程は、従来の一般的なJ
IS 6000番系のAl−Mg−Si系合金と同様で
あれば良い。すなわち、DC鋳造法等によって鋳造した
後、常法に従って均質化処理(均熱処理)を施し、さら
に熱間圧延および冷間圧延を行なって所要の板厚とすれ
ば良く、また熱間圧延と冷間圧延との間、あるいは冷間
圧延の中途において必要に応じて中間焼鈍を行なっても
良い。
クスに固溶させ、これにより焼付硬化性を付与して塗装
焼付後の強度向上を図るために必要な工程であり、また
再結晶させて良好な成形性を得るための工程でもある。
溶体化処理温度が480℃未満ではMg2Siの固溶量
が少なく、充分な焼付硬化性が得られない。溶体化処理
温度の上限は特に規定しないが、共晶融解の発生のおそ
れや再結晶粒粗大化等を考慮して、通常は580℃以下
とすることが望ましい。また溶体化処理の時間も特に限
定しないが、通常は120分以内とする。溶体化処理後
には、図1に示すように100℃/min以上の冷却速
度で、150〜300℃の範囲内の温度まで冷却(焼入
れ)する。ここで、溶体化処理後の冷却速度が100℃
/min未満では、冷却中にMg2Siが多量に析出し
てしまい、成形性が低下すると同時に、焼付硬化性が低
下して塗装焼付時の充分な強度向上が望めなくなる。
体化処理の後、100℃/min以上の冷却速度で15
0〜300℃の範囲内の温度に冷却した後には、続いて
その150〜300℃の範囲内の温度で1〜600秒保
持する熱処理(以下この熱処理を便宜上、保持処理と記
す)を行ない、その後100℃/min以上の冷却速度
で140℃以下の温度まで冷却する。
化処理とともに、板製造後の自然時効による経時変化を
少なくすると同時に焼付硬化性を良好にするために必要
な処理である。すなわち、保持処理によって安定なクラ
スターが形成されやすくなり、そのため板製造後の室温
での経時変化が少なくなるとともに、塗装焼付でのG.
P.ゾーンが細かくなり、焼付硬化性が向上する。
低ければ上述の効果が得られず、一方300℃を越えれ
ばクラスターの安定性が低下し、逆に板製造後の室温で
の経時変化が生じやすくなるとともに、焼付硬化性が低
下する。また保持処理の時間が1秒未満では上述の効果
が充分に得られず、一方600秒を越えれば時効によっ
て成形性が低下してしまう。さらに上記の保持処理後の
140℃以下の温度への冷却速度が100℃/min未
満では、冷却中に時効によって成形性が低下してしま
う。
℃/min以上の冷却速度で140℃以下に冷却した後
には、72時間以内に安定化処理を行なう。このような
安定化処理までの時間(放置時間)が72時間を越えれ
ば、自然時効により成形加工前の素材の強度が高くな
り、成形性が低下してしまう。
性を向上させ、板製造後の経時変化を抑制して、良好な
成形加工性を確保するとともに充分な焼付硬化性を得る
ために必要な工程であり、この安定化処理は、50〜1
40℃の範囲内の温度に0.5〜50時間保持の条件と
する必要がある。安定化処理の温度が50℃未満では上
記の効果が充分に得られず、一方140℃を越えれば時
効によって素材強度が高くなり、成形性が低下してしま
う。また安定化処理における50〜140℃の範囲内の
温度での保持時間が0.5時間未満では、その後の室温
での経時変化が速くなって成形性と焼付硬化性が悪くな
り、一方50時間を越えれば、時効によって素材強度が
高くなり、成形性が低下してしまうとともに、生産性も
阻害される。
合金の成分組成を適切に調整するとともに、製造プロセ
ス中において、480℃以上の温度での溶体化処理後の
冷却(焼入れ)過程で特定の条件での保持処理を行な
い、その後72時間以内に特定の条件の安定化処理を施
すことにより、板製造後の室温での経時変化、すなわち
室温での自然時効の進行を阻止することが可能となり、
その結果、板製造後に長期間放置されてから成形加工、
塗装焼付を施す場合でも、良好な成形性、優れた焼付硬
化性を充分に確保することが可能となったのである。
4の合金、および本発明成分範囲外のB1の合金につい
て、それぞれ常法に従ってDC鋳造法により鋳造し、得
られた鋳塊に530℃×10hrの均質化処理を施して
から、常法に従って熱間圧延および冷間圧延を行なって
厚さ1mmの圧延板とした。次いで各圧延板に対し、5
40℃×10secの溶体化処理を行なってから、10
0℃/min以上の冷却速度で冷却し、かつその冷却途
中で保持処理を行なった。詳細な条件を表2中に示す。
なお、保持処理後の冷却は、いずれも100℃/min
以上の冷却速度で室温まで行ない、また安定化処理まで
の放置も室温とした。
られた板を、さらに室温に1日もしくは60日放置した
各板について、それぞれ175℃×30分の加熱の塗装
焼付処理を施し、かつその焼付前の機械的特性および成
形性と、焼付後の機械的特性を調べた。その結果を表3
に示す。
組成がこの発明で規定する範囲内でかつ製造条件もこの
発明で規定する条件を満たしたものであるが、これらの
場合は、いずれも塗装焼付前の伸びおよびエリクセン値
が充分に高くて成形性が優れ、かつ焼付硬化性が高くて
塗装焼付時に大きな強度上昇が生じており、特に板製造
後60日室温に放置した場合においても、伸びおよびエ
リクセン値の低下が少なくて成形性が低下せず、かつ充
分な焼付硬化性を示した。
分組成はこの発明で規定する範囲内であるが、製造条件
がこの発明で規定する条件を満たさなかったものであ
る。そして特に製造番号4(合金記号A2)は、最終の
安定化処理の時間がこの発明で規定する時間より短かっ
たものであるが、この場合には同じ合金(A2)を用い
た本発明例(製造番号2)と比較して、焼付硬化性が劣
り、特に60日放置後の成形性、焼付硬化性が劣ってい
た。また製造番号5(合金記号A4)は、溶体化処理後
冷却途中での保持処理における保持温度が低過ぎるとと
もに保持時間が長過ぎたものであり、この場合には充分
な焼付硬化性が得られなかった。
規定する範囲を外れた合金について、この発明で規定す
る範囲内の条件のプロセスを適用したものであるが、こ
の場合には素材強度が低いばかりでなく、焼付硬化性も
低く、塗装焼付後の強度も充分に得られなかった。
板の製造方法によれば、成形性が優れるとともに素材強
度が高いばかりでなく、焼付硬化性が優れていて、塗装
焼付後の強度が著しく高く、しかも室温での経時変化が
少なくて、板製造後に室温で長期間放置した場合にも成
形性の低下が少ないとともに焼付硬化性の低下も少な
い、安定な成形加工用アルミニウム合金板を得ることが
でき、したがって自動車用ボディシート、家電部品、各
種機械器具部品、そのほか成形加工および塗装焼付を施
して用いる用途のアルミニウム合金板の製造に最適であ
る。
プロセスを説明するための線図である。ロ
Claims (1)
- 【請求項1】 Mg0.3〜1.5%(重量%、以下同
じ)、Si0.5〜2.5%を含有し、さらに必要に応
じてCu0.03〜1.2%、Zn0.03〜1.5
%、Mn0.03〜0.4%、Cr0.03〜0.4
%、Zr0.03〜0.4%、V0.03〜0.4%、
Fe0.03〜0.5%、Ti0.005〜0.2%の
うちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部が
Alおよび不可避的不純物よりなる合金を素材とし、鋳
塊に均質化処理を施した後、熱間圧延および冷間圧延を
行なって所要の板厚の圧延板とし、その圧延板に対し、
480℃以上の温度で溶体化処理を行なってから100
℃/min以上の冷却速度で150〜300℃の範囲内
の温度まで冷却し、続いてその150〜300℃の範囲
内の温度で1〜600秒保持する熱処理を行なった後、
100℃/min以上の冷却速度で140℃以下の温度
まで冷却し、その後72時間以内に、50〜140℃の
範囲内の温度で0.5〜50時間保持する安定化処理を
行なうことを特徴とする、室温での経時変化が少なくか
つ成形性および焼付硬化性に優れたアルミニウム合金板
の製造方法。
Priority Applications (1)
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