JPH07228957A - 成形性および焼付硬化性に優れたアルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents

成形性および焼付硬化性に優れたアルミニウム合金板の製造方法

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JPH07228957A
JPH07228957A JP6045252A JP4525294A JPH07228957A JP H07228957 A JPH07228957 A JP H07228957A JP 6045252 A JP6045252 A JP 6045252A JP 4525294 A JP4525294 A JP 4525294A JP H07228957 A JPH07228957 A JP H07228957A
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holding
sheet
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JP6045252A
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Iwao Shu
岩 朱
Mamoru Matsuo
守 松尾
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Sky Aluminium Co Ltd
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Sky Aluminium Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 自動車用ボディシート等に使用される成形加
工用Al合金板として、成形性、焼付硬化性に優れ、か
つ室温での経時変化の少ない板の製造方法を提供する。 【構成】 Mg0.3〜1.5%、Si0.5〜2.5
%を含有し、さらにCu,Zn,Mn,Cr,Zr,
V,Fe,Tiの1種以上を少量含有するAl合金鋳塊
を均質化処理、熱間圧延、冷間圧延した後、500℃以
上で溶体化処理して100℃/min以上の冷却速度で
380〜480℃に冷却し、その温度で1〜180秒保
持処理して100℃/min以上で150℃以下に冷却
する(請求項1)か、または前記と同じ溶体化処理後、
100℃以上の冷却速度で150℃以下に冷却してから
改めて380〜480℃に180秒以内再加熱した後、
150℃以下に100℃/min以上で冷却(請求項
2)し、その後96時間以内に、最終熱処理として50
〜150℃×0.5〜50時間の安定化処理を行なう。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、自動車のボディシー
トや部品、各種機械器具、家電部品等の素材として、成
形加工および塗装焼付を施して使用されるアルミニウム
合金板の製造方法に関するものであり、特に成形性が良
好であるとともに、塗装焼付後の強度が高く、かつ室温
での経時変化が少ない成形加工用アルミニウム合金板の
製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車のボディシートには、従来は主と
して冷延鋼板を使用することが多かったが、最近では車
体軽量化の観点から、アルミニウム合金圧延板を使用す
ることが進められている。自動車のボディシートはプレ
ス加工を施して使用するところから、成形加工性が優れ
ていること、また成形加工時におけるリューダースマー
クが発生しないことが要求され、また高強度を有するこ
とも必須であって、特に塗装焼付を施すことから、塗装
焼付後に高強度が得られることが要求される。
【0003】従来このような自動車用ボディシート向け
のアルミニウム合金としては、時効性を有するJIS
6000番系合金、すなわちAl−Mg−Si系合金が
主として使用されている。この時効性Al−Mg−Si
系合金では、塗装焼付前の成形加工時においては比較的
強度が低く、成形性が優れており、一方塗装焼付時の加
熱によって時効されて塗装焼付後の強度が高くなる利点
を有するほか、リューダースマークが発生しない等の利
点を有する。
【0004】ところで塗装焼付時における時効硬化を期
待したAl−Mg−Si合金板の製造方法としては、鋳
塊を均質化熱処理した後、熱間圧延および冷間圧延を行
なって所定の板厚とし、かつ必要に応じて熱間圧延と冷
間圧延との間あるいは冷間圧延の中途において中間焼鈍
を行ない、冷間圧延後に溶体化処理を行なって焼入れる
のが通常である。しかしながらこのような従来の一般的
な製造方法では、最近の自動車用ボディシートに要求さ
れる特性を充分に満足させることは困難である。
【0005】すなわち、最近ではコストの一層の低減の
ためにさらに薄肉化することが強く要求されており、そ
のため薄肉でも充分な強度が得られるように、一層の高
強度化が求められているが、この点で従来の一般的な製
造方法によって得られたAl−Mg−Si系合金板では
不充分であった。
【0006】また塗装焼付については、省エネルギおよ
び生産性の向上、さらには高温に曝されることが好まし
くない樹脂等の材料との併用などの点から、従来よりも
焼付温度を低温化し、また焼付時間も短時間化する傾向
が強まっている。そのため従来の一般的な製法により得
られたAl−Mg−Si系合金板では、塗装焼付時の硬
化(焼付硬化)が不足し、塗装焼付後に充分な高強度が
得難くなる問題が生じていた。
【0007】そこで最近ではAl−Mg−Si系合金に
ついて、板の製造方法に検討を加えて、前述のような問
題を解決することが試みられており、その代表的な例と
して、特開平4−210456号公報で提案されている
方法がある。この提案の方法は、溶体化処理後の焼入れ
のための冷却過程中途において50〜130℃の温度域
で1〜48時間の保持を行ない、さらにその後改めて1
40〜180℃の範囲内の温度で3〜10分間の低温加
熱処理を行なうものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】前述の特開平4−210
456号の提案の方法によれば、従来の一般的なAl−
Mg−Si系合金板製造方法と比較すれば、素材の高強
度化および塗装焼付後の高強度化についてある程度有効
と考えられるが、満足できる程度には至っていないのが
実情である。
【0009】また塗装焼付時において大きな強度上昇を
図るべく、時効硬化性を強めれば、板の製造後、長期間
放置してから成形加工、塗装焼付に供した場合、成形加
工前の放置期間中に自然時効(室温時効)が進行して板
が硬化し、成形性が悪化してしまう問題がある。前述の
提案の方法ではその点について充分な考慮がなされてい
ないのが実情である。
【0010】さらに前述の提案の方法では、最終低温加
熱処理を140〜180℃×3〜10分としており、こ
の場合バッチ式の焼鈍を適用しようとすれば保持時間が
短過ぎ、一方連続方式の焼鈍を適用しようとすれば逆に
保持時間が長過ぎ、いずれの場合も生産しにくいという
問題もある。
【0011】この発明は以上の事情を背景としてなされ
たもので、良好な成形加工性を有すると同時に、焼付硬
化性が優れていて、塗装焼付時における強度上昇が高
く、しかも板製造後の室温での経時的な変化が少なく、
長期間放置した場合でも自然時効による硬化に起因する
成形性の低下が少ない成形加工用アルミニウム合金板の
製造方法を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】前述のような課題を解決
するべく本発明者等が実験・検討を重ねた結果、Al−
Mg−Si系合金についてその成分組成を適切に選択す
ると同時に、板製造プロセス中において、溶体化処理後
に適切な熱処理を行なうことによって、前述の課題を解
決し得ることを見出し、この発明をなすに至った。
【0013】具体的には、請求項1の発明の成形加工用
アルミニウム合金板の製造方法は、Mg0.3〜1.5
%、Si0.5〜2.5%を含有し、かつCu0.05
〜1.2%、Zn0.05〜1.5%、Mn0.03〜
0.4%、Cr0.03〜0.4%、Zr0.03〜
0.4%、V0.03〜0.4%、Fe0.05〜0.
6%、Ti0.005〜0.2%のうちから選ばれた1
種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的
不純物よりなる合金を素材とし、鋳塊に均質化処理を施
した後、熱間圧延および冷間圧延を行なって所要の板厚
の圧延板とし、その圧延板に対し、500℃以上の温度
で溶体化処理を行なってから100℃/min以上の冷
却速度で380〜480℃の範囲内の温度まで冷却し、
続いてその380〜480℃の範囲内の温度で1〜18
0秒保持する熱処理を行なった後、100℃/min以
上の冷却速度で150℃以下の温度まで冷却し、その後
96時間以内に、50〜150℃の範囲内の温度で0.
5〜50時間保持する安定化処理を行なうことを特徴と
するものである。
【0014】また請求項2の発明の成形加工用アルミニ
ウム合金板の製造方法は、請求項1と同様な成分組成の
合金を素材とし、500℃以上の温度での溶体化処理ま
でを請求項1と同様なプロセスで行ない、溶体化処理後
100℃/min以上の冷却速度で150℃以下の温度
域まで冷却し、その後380〜480℃の範囲内の温度
に加熱して保持なしもしくは180秒以内の保持の熱処
理を行なった後、100℃/min以上の冷却速度で1
50℃以下の温度まで冷却し、その後96時間以内に、
請求項1の発明と同様な安定化処理を行なうものであ
る。
【0015】
【作用】先ずこの発明の製造方法で用いる合金の成分組
成限定理由について説明する。
【0016】Mg:Mgはこの発明で対象としている系
の合金で基本となる合金元素であって、Siと共同して
強度向上に寄与する。Mg量が0.3%未満では塗装焼
付時に析出硬化によって強度向上に寄与するMg2 Si
の生成量が少なくなるため、充分な強度が得られず、一
方1.5%を越えれば成形性が低下するから、Mg量は
0.3〜1.5%の範囲内とした。
【0017】Si:Siもこの発明の系の合金で基本と
なる合金元素であって、Mgと共同して強度向上に寄与
する。またSiは、鋳造時に金属Siの晶出物として生
成され、その金属Si粒子の周囲が加工によって変形さ
れて、溶体化処理の際に再結晶核の生成サイトとなるた
め、結晶粒の微細化にも寄与する。Siが0.5%未満
では上記の効果が充分に得られず、一方2.5%を越え
れば粗大Siが生じて合金の靭性低下を招く。したがっ
てSiは0.5〜2.5%の範囲内とした。
【0018】Cu,Zn,Mn,Cr,Zr,V,T
i,Fe:これらは強度向上のために1種または2種以
上が添加される。これらのうち、Cuは固溶によって強
度向上に寄与する元素であるが、Cu量が0.05%未
満ではその効果が充分に得られず、一方1.2%を越え
れば耐食性が低下するから、Cuを添加する場合のCu
量は0.05〜1.2%の範囲内とした。またZnは合
金の時効性の向上を通じて強度向上に寄与する元素であ
り、その含有量が0.05%未満では上記の効果が不充
分であり、一方1.5%を越えれば成形性および耐食性
が低下するから、Znを添加する場合のZn量は0.0
5〜1.5%の範囲内とした。さらにMn,Cr,Z
r,Vはいずれも結晶粒の微細化および組織の安定化を
通じて強度向上に効果がある元素であり、いずれも含有
量が0.03%未満では上記の効果が充分に得られず、
一方それぞれ0.4%を越えれば、上記の効果が飽和す
るばかりでなく、巨大金属間化合物が生成されて成形性
に悪影響を及ぼすおそれがあり、したがってMn,C
r,Zr,Vはいずれも0.03〜0.4%の範囲内と
した。またTiも鋳塊組織の微細化を通しで強度向上に
有効な元素であり、その含有量が0.005%未満では
充分な効果が得られず、一方0.2%を越えればTi添
加の効果が飽和するばかりでなく、巨大晶出物が生じる
おそれがあるから、Tiは0.005〜0.2%の範囲
内とした。そしてまたFeも結晶粒微細化を通じて強度
向上に有効な元素であり、その含有量が0.05%未満
では充分な効果が得られず、一方0.6%を越えれば成
形性が低下するおそれがあり、したがってFeは0.0
5〜0.6%の範囲内とした。なお0.05%未満のF
eは、通常のアルミ地金を用いれば不可避的に含有され
る。なおこれらのCu,Zn,Mn,Cr,Zr,V,
Ti,Feの範囲は、積極的な添加元素としてこれらの
元素を含む場合について示したものであり、いずれもそ
の下限値よりも少ない量を不純物として含有しているこ
とは特に支障ない。
【0019】以上の各元素のほかは、基本的にはAlお
よび不可避的不純物とすれば良い。但し、一般にMgを
含有する系の合金においては溶湯の酸化防止のために微
量のBeを添加することがあり、この発明の合金の場合
も0.0001〜0.01%程度のBeの添加は許容さ
れる。また一般に鋳塊組織の結晶粒微細化のために前述
のTiと同時にBを添加することもあり、この発明の場
合もTiとともに500ppm以下のBを添加すること
は許容される。
【0020】次にこの発明の方法における製造プロセス
について説明する。
【0021】溶体化処理前までの工程すなわち所要の製
品板厚の圧延板とするまでの工程は、従来の一般的なJ
IS 6000番系のAl−Mg−Si系合金と同様で
あれば良い。すなわち、DC鋳造法等によって鋳造した
後、常法に従って均質化処理(均熱処理)を施し、さら
に熱間圧延および冷間圧延を行なって所要の板厚とすれ
ば良く、また熱間圧延と冷間圧延との間、あるいは冷間
圧延の中途において必要に応じて中間焼鈍を行なっても
良い。
【0022】溶体化処理は、Mg2 Si等をマトリック
スに固溶させ、これにより焼付硬化性を付与して塗装焼
付後の強度向上を図るために必要な工程であり、また再
結晶させて良好な成形性を得るための工程でもある。溶
体化処理温度が500℃未満ではMg2 Siの固溶量が
少なく、充分な焼付硬化性が得られないから、溶体化処
理温度は500℃以上に限定した。溶体化処理温度の上
限は特に規定しないが、共晶融解の発生のおそれや再結
晶粒粗大化等を考慮して、通常は580℃以下とするこ
とが望ましい。また溶体化処理の時間も特に限定しない
が、0秒〜240分以内が適当である。
【0023】溶体化処理後には、100℃/min以上
の冷却速度で、請求項1の発明の方法の場合は380〜
480℃の範囲内の温度まで、請求項2の発明の方法の
場合は150℃以下の温度域まで冷却(焼入れ)する。
ここで、溶体化処理後の冷却速度が100℃/min未
満では、冷却中にMg2 Siが多量に析出してしまい、
成形性が低下すると同時に、焼付硬化性が低下して塗装
焼付時の充分な強度向上が望めなくなる。
【0024】溶体化処理後、最終の安定化処理までのプ
ロセスは、請求項1の発明の方法と請求項2の発明の方
法とで異なる。
【0025】すなわち請求項1の発明の方法の場合は、
図1に示すように、500℃以上の温度での溶体化処理
の後、100℃/min以上の冷却速度で380〜48
0℃の範囲内の温度に冷却し、続いてその380〜48
0℃の範囲内の温度で1〜180秒保持する熱処理(以
下この熱処理を便宜上、保持処理と記す)を行ない、そ
の後100℃/min以上の冷却速度で150℃以下の
温度まで冷却する。
【0026】一方請求項2の発明の方法の場合は、図2
に示すように、500℃以上の温度での溶体化処理の
後、100℃/min以上の冷却速度で150℃以下の
温度まで冷却し、その後改めて380〜480℃の範囲
内の温度に加熱して保持なしもしくは180秒以内保持
する熱処理(以下この熱処理を便宜上、再加熱処理と記
す)を施し、その後100℃/min以上の冷却速度で
150℃以下の温度まで冷却する。
【0027】上述のような請求項1の発明の方法におけ
る保持処理あるいは請求項2の発明の方法における再加
熱処理は、材料中の空孔濃度を低くして、板製造後の自
然時効(室温時効)による経時変化を少なくするため
に、その後の安定化処理とともに必要な処理である。
【0028】すなわち、請求項1の発明の方法の場合、
500℃以上での高温溶体化処理後に100℃/min
以上の冷却速度での冷却途中で380〜480℃×1〜
180secの保持処理を行なうことによって、その前
の高温溶体化処理温度で平衡していた空孔濃度が低下
し、その後100℃/sec以上の冷却速度で150℃
以下に冷却することによって、低下した空孔濃度のまま
空孔が凍結される結果、板製造後の室温時効による経時
変化が少なくなる。また請求項2の発明の方法の場合、
500℃以上での高温溶体化処理後に100℃/min
以上の冷却速度で150℃以下に冷却することによって
材料中の空孔濃度は高温溶体化処理温度での平衡濃度で
一旦は凍結されるが、その後380〜480℃での0〜
180secの再加熱処理を行なうことによって空孔濃
度が低下し、その後再び100℃/sec以上の冷却速
度で150℃以下に冷却することによって、低下した空
孔濃度のまま空孔が凍結される結果、前記同様に板製造
後の室温時効による経時変化が少なくなる。
【0029】ここで、請求項1の発明の方法における保
持処理もしくは請求項2の発明の方法における再加熱処
理の温度が480℃より高ければ上述の効果が充分に得
られず、一方380℃未満となれば粒界析出が生じるお
それがあり、成形性および焼付硬化性に悪影響を及ぼ
す。また請求項1の発明の方法における保持処理の時間
が1秒未満では上述の効果が充分に得られず、一方18
0秒を越えれば時効によって成形性が低下してしまう。
また請求項2の発明の方法における再加熱処理は、38
0〜480℃の範囲内の温度に到達すれば保持なしで直
ちに冷却しても前述の効果が得られるが、180秒を越
えれば前記同様に時効によって成形性が低下してしま
う。さらに上記の保持処理もしくは再加熱処理後の15
0℃以下の温度への冷却速度が100℃/min未満で
は、冷却中にMg2 Siが多量に析出してしまい、成形
性が低下すると同時に、焼付硬化性が低下して塗装焼付
時の充分な強度向上が期待できなくなる。
【0030】以上のように保持処理もしくは再加熱処理
を行なって100℃/min以上の冷却速度で150℃
以下に冷却した後には、請求項1、請求項2の発明の方
法のいずれの方法の場合も、96時間以内に安定化処理
を行なう。このような安定化処理までの150℃以下で
の時間(放置時間)が96時間を越えれば、室温時効あ
るいは150℃以下での人工時効により成形加工前の素
材の強度が高くなり、成形性が低下してしまう。
【0031】安定化処理は、最終的に塗装焼付時に強度
向上に寄与する針状G.P.ゾーンの核となるクラスタ
ーの安定性を向上させ、板製造後の経時変化を抑制し
て、良好な成形加工性を確保するために必要な工程であ
り、この安定化処理は、50〜150℃の範囲内の温度
に0.5〜50時間保持の条件とする必要がある。安定
化処理の温度が50℃未満では上記の効果が充分に得ら
れず、一方150℃を越えれば経時変化が助長され、成
形性が低下してしまう。また安定化処理における50〜
150℃の範囲内の温度での保持時間が0.5時間未満
では、その後の室温での経時変化が速くなって成形性と
焼付硬化性が悪くなり、一方50時間を越えれば、時効
によって素材強度が高くなり、成形性が低下してしまう
とともに、生産性も阻害される。
【0032】以上のようにこの発明の製造方法では、合
金の成分組成を適切に調整するとともに、製造プロセス
中において、500℃以上の温度での高温溶体化処理後
の冷却(焼入れ)過程で特定の条件での保持処理を行な
う(請求項1の発明の方法)か、または溶体化処理後の
冷却の後に改めて特定の条件での再加熱処理を施し(請
求項2の発明の方法)、その後96時間以内に特定の条
件の安定化処理を施すことにより、板製造後の室温での
経時変化、すなわち室温での自然時効の進行を阻止する
ことが可能となり、その結果、板製造後に長期間放置さ
れてから成形加工、塗装焼付を施す場合でも、良好な成
形性、優れた焼付硬化性を充分に確保することが可能と
なったのである。
【0033】
【実施例】表1に示す本発明成分組成範囲内のA1〜A
6の合金、および本発明成分範囲外のB1〜B3の合金
について、それぞれ常法に従ってDC鋳造法により鋳造
し、得られた鋳塊に530℃×10hrの均質化処理を
施してから、常法に従って熱間圧延および冷間圧延を行
なって厚さ1mmの圧延板とした。次いで各圧延板に対
し、540℃×20secの溶体化処理を行なってか
ら、100℃/min以上の冷却速度で冷却し、請求項
1の発明の方法にしたがって冷却途中で保持処理を行な
うか、または請求項2の発明の方法にしたがって150
℃以下に冷却してから再加熱処理を行ない、さらに安定
化処理を行なった。詳細な条件を表2中に示す。なお表
2において、製造番号1〜3;31はいずれも請求項1
の発明の方法にしたがって冷却途中で保持処理を行なっ
た例、また製造番号4〜6;32;33はいずれも請求
項2の発明の方法にしたがって再加熱処理を行なった例
を示す。一方製造番号21,23は、請求項1の発明の
方法に対する比較例、製造番号22は請求項2の発明の
方法に対する比較例である。なおまた、保持処理もしく
は再加熱処理後の冷却は、いずれも冷却速度300℃/
minで行なった。
【0034】以上のようにして安定化処理まで行なって
得られた板を、さらに室温に1日もしくは60日放置し
た各板について、それぞれ185℃×30分の加熱の塗
装焼付処理を施し、かつその焼付前の機械的特性および
成形性と、焼付後の機械的特性を調べた。その結果を表
3に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】製造番号1〜6は、いずれも合金の成分組
成がこの発明で規定する範囲内でかつ製造条件もこの発
明で規定する条件を満たしたものであるが、これらの場
合は、いずれも塗装焼付前の伸びおよびエリクセン値が
充分に高くて成形性が優れ、かつ焼付硬化性が高くて塗
装焼付時に大きな強度上昇が生じており、特に板製造後
60日室温に放置した場合においても、伸びおよびエリ
クセン値の低下が少なくて成形性が低下せず、かつ充分
な焼付硬化性を示した。
【0039】これに対し製造番号21〜23は、合金の
成分組成はこの発明で規定する範囲内であるが、製造条
件がこの発明で規定する条件を満たさなかったものであ
る。そして特に製造番号21(合金記号A2)は、最終
の安定化処理の時間がこの発明で規定する時間より短か
ったものであるが、この場合には同じ合金(A2)を用
いた本発明例(製造番号2)と比較して、焼付硬化性が
劣り、特に60日放置後の成形性、焼付硬化性が劣って
いた。また製造番号22(合金記号A3)は、溶体化処
理−冷却後の再加熱処理後の放置時間が長過ぎたもので
あるが、この場合には同じ合金(A3)を用いた本発明
例(製造番号3)と比較して、素材強度が高過ぎて成形
性に劣り、特に60日放置後において成形性が劣るとと
もに焼付硬化性も充分ではなかった。さらに製造番号2
3(合金記号A4)は、溶体化処理後冷却途中での保持
処理における保持時間が長過ぎたものであり、この場合
には同じ合金(A4)を用いた本発明例(製造番号4)
と比較して、成形性が劣るとともに、充分な焼付硬化性
が得られなかった。
【0040】一方製造番号31〜33はいずれも成分組
成がこの発明で規定する範囲を外れた合金について、こ
の発明で規定する範囲内の条件のプロセスを適用したも
のであるが、この場合にはいずれも素材強度が低いばか
りでなく、焼付硬化性も低く、塗装焼付後の強度も充分
に得られなかった。
【0041】
【発明の効果】この発明の成形加工用アルミニウム合金
板の製造方法によれば、成形性が優れるとともに素材強
度が高いばかりでなく、焼付硬化性が優れていて、塗装
焼付後の強度が著しく高く、しかも室温での経時変化が
少なくて、板製造後に室温で長期間放置した場合にも成
形性の低下が少ないとともに焼付硬化性の低下も少な
い、安定な成形加工用アルミニウム合金板を得ることが
でき、したがって自動車用ボディシート、家電部品、各
種機械器具部品、そのほか成形加工および塗装焼付を施
して用いる用途のアルミニウム合金板の製造に最適であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1の発明の方法における溶体化処理後の
プロセスを説明するための線図である。
【図2】請求項2の発明の方法における溶体化処理後の
プロセスを説明するための線図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mg0.3〜1.5%(重量%、以下同
    じ)、Si0.5〜2.5%を含有し、かつCu0.0
    5〜1.2%、Zn0.05〜1.5%、Mn0.03
    〜0.4%、Cr0.03〜0.4%、Zr0.03〜
    0.4%、V0.03〜0.4%、Fe0.05〜0.
    6%、Ti0.005〜0.2%のうちから選ばれた1
    種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的
    不純物よりなる合金を素材とし、鋳塊に均質化処理を施
    した後、熱間圧延および冷間圧延を行なって所要の板厚
    の圧延板とし、その圧延板に対し、500℃以上の温度
    で溶体化処理を行なってから100℃/min以上の冷
    却速度で380〜480℃の範囲内の温度まで冷却し、
    続いてその380〜480℃の範囲内の温度で1〜18
    0秒保持する熱処理を行なった後、100℃/min以
    上の冷却速度で150℃以下の温度まで冷却し、その後
    96時間以内に、50〜150℃の範囲内の温度で0.
    5〜50時間保持する安定化処理を行なうことを特徴と
    する、室温での経時変化が少なくかつ成形性および焼付
    硬化性に優れたアルミニウム合金板の製造方法。
  2. 【請求項2】 Mg0.3〜1.5%、Si0.5〜
    2.5%を含有し、かつCu0.05〜1.2%、Zn
    0.05〜1.5%、Mn0.03〜0.4%、Cr
    0.03〜0.4%、Zr0.03〜0.4%、V0.
    03〜0.4%、Fe0.05〜0.6%、Ti0.0
    05〜0.2%のうちから選ばれた1種または2種以上
    を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合
    金を素材とし、鋳塊に均質化処理を施した後、熱間圧延
    および冷間圧延を行なって所要の板厚の圧延板とし、そ
    の圧延板に対し、500℃以上の温度で溶体化処理を行
    なってから100℃/min以上の冷却速度で150℃
    以下の温度域まで冷却し、その後380〜480℃の範
    囲内の温度に加熱して保持なしもしくは180秒以内の
    保持の熱処理を行なった後、100℃/min以上の冷
    却速度で150℃以下の温度まで冷却し、その後96時
    間以内に、50〜150℃の範囲内の温度で0.5〜5
    0時間保持する安定化処理を行なうことを特徴とする、
    室温での経時変化が少なくかつ成形性および焼付硬化性
    に優れたアルミニウム合金板の製造方法。
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