JP2004124175A - 成形性、焼付硬化性、スプリングバック性に優れた成形加工用6000系合金板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】成形加工性、塗装焼付時における強度上昇が高く焼付硬化性に優れ、T4材の強度が適当で成形後のスプリングバック性に優れた成形加工用6000系合金板の製造方法を提供する。
【解決手段】Mg:0.30〜0.90%、Si:0.50〜1.60%、Cu:0.50〜1.00を含有し、さらに、Mn、Cr、Zr、Ti、Feの1種または2種以上を含有するアルミニウム合金鋳塊に、均質化処理、熱間圧延及び冷間圧延を行い所要の板厚とし、所定条件で溶体化処理を行ってから冷却速度を変えた3段階の冷却を行って、耐力を110〜135MPaとする。さらに、熱圧延と冷間圧延の間あるいは冷間圧延途中に中間焼鈍を行っても良い。
【選択図】 図1
1
【解決手段】Mg:0.30〜0.90%、Si:0.50〜1.60%、Cu:0.50〜1.00を含有し、さらに、Mn、Cr、Zr、Ti、Feの1種または2種以上を含有するアルミニウム合金鋳塊に、均質化処理、熱間圧延及び冷間圧延を行い所要の板厚とし、所定条件で溶体化処理を行ってから冷却速度を変えた3段階の冷却を行って、耐力を110〜135MPaとする。さらに、熱圧延と冷間圧延の間あるいは冷間圧延途中に中間焼鈍を行っても良い。
【選択図】 図1
1
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
この発明は、自動車ボディシートや部品、各種機械器具、家電部品等の素材として、成形加工および塗装焼付を施して使用されるアルミニウム合金板の製造方法に関するものであり、特に成形性が良好であるとともに、成形時のスプリングバックが少なく、塗装焼付後の強度が高い成形加工用アルミニウム合金板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車のボディシートには、従来は主として冷延鋼板を使用することが多かったが、最近では車体軽量化の観点から、アルミニウム合金圧延板を使用する場合も多くなってきた。自動車のボディシートはプレス加工を行うため、成形加工性が優れていること、また成形加工時におけるリューダースマークが発生しないこと、組み立ての点からはスプリングバッグ小さいことが要求され、また高強度を有することも必須であって、特に塗装焼付を施すことから、塗装焼付後に高強度の得られることが要求される。
【0003】
従来このような自動車用ボディシート向けのアルミニウム合金としては、時効性を有するAl−Mg−Si系合金が主として使用されている。この時効性Al−Mg−Si系合金では、塗装焼付前の成形加工時においては比較的強度が低く、成形性が優れており、一方塗装焼付時の加熱によって時効されて塗装焼付後の強度が高くなる利点を有するほか、リューダースマークが発生しない等の利点を有する。
【0004】
ところで塗装焼付時における時効硬化を付与したAl−Mg−Si系合金板の製造方法としては、鋳塊を均質化熱処理した後、熱間圧延および冷間圧延を行なって所定の板厚とし、かつ必要に応じて熱間圧延と冷間圧延との間あるいは冷間圧延の中途において中間焼鈍を行ない、冷間圧延後に溶体化処理を行なって焼入れるのが通常である。しかしながらこのような従来の一般的な製造方法では、最近の自動車用ボディシートに要求される特性を充分に満足させることは困難である。また、エンジンフード以外にもトランクリッドやドア等のより複雑な部品に適用が検討されているが、現状のAl−Mg−Si系合金では成形性不足である。
【0005】
さらに、最近ではコストの一層の低減のためにさらに薄肉化することが強く要求されており、そのため薄肉でも充分な強度が得られるように、一層の高強度化が求められているが、この点でも従来の一般的な製造方法によって得られたAl−Mg−Si系合金板では不充分であった。
【0006】
上記の問題点を解決するため、溶体化処理後すぐ、あるいは制約された時間内に、改めて、ある特定の温度で保持を行う技術が提案されている。(特許文献1〜特許文献16等参照)
しかし、これらの提案は十分な塗装焼付硬化性を得られるとしても、工業的に実施するには時間的制約のため不便であり、また、特殊な設備対応が必要となるため、製造コストが高く問題である。
さらに溶体化処理後の冷却速度のコントロールで経済性の向上を図る技術も提案されている(例えば、特許文献17参照)が、必ずしも、冷却速度の制御範囲は最適であると言えない。特にAl−Si−Mg−Cu系の場合、T4材の強度が高くなり易く、成形後のスプリングバック量が多くなり易い。
【特許文献1】
特開昭62−089852号公報
【特許文献2】
特開昭62−177143号公報
【特許文献3】
特開平02−205660号公報
【特許文献4】
特開平03−294456号公報
【特許文献5】
特開平04−147951号公報
【特許文献6】
特開平04−210456号公報
【特許文献7】
特開平05−112839号公報
【特許文献8】
特開平05−125505号公報
【特許文献9】
特開平05−279822号公報
【特許文献10】
特開平07−150282号公報
【特許文献11】
特開平07−166285号公報
【特許文献12】
特開平08−049052号公報
【特許文献13】
特開平08−060314号公報
【特許文献14】
特開平08−060315号公報
【特許文献15】
特開平08−074014号公報
【特許文献16】
特開平09−143644号公報
【特許文献17】
特開平06−017208号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、成形加工性、焼付硬化性が優れていて、塗装焼付時における強度上昇が高く、T4材の強度が適当で成形後のスプリングバック量の少ない(以下、「スプリングバック性に優れた」という)成形加工用アルミニウム合金板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前述のような課題を解決するべく本発明者等が実験・検討を重ねた結果、Al−Mg−Si系合金の成分組成を適切に選択すると同時に、板製造プロセス中において、溶体化処理後に適切な熱処理を行なうことによって、前述の課題を解決し得ることを見出し、この発明をなすに至った。
【0009】
すなわち請求項1の発明は、Mg:0.30〜0.90%、Si:0.50〜1.60%、Cu:0.50〜1.00を含有し、さらに、Mn:0.05〜0.30%、Cr:0.05〜0.30%、Zr:0.05〜0.30%、Ti:0.005〜0.15%、Fe:0.03〜0.40%の1種または2種以上を含有し、その他不可避不純物からなるアルミニウム合金鋳塊に均質化処理、熱間圧延及び冷間圧延を行い所要の板厚とし、480℃〜580℃の温度で5分以内の溶体化処理を行い、その温度から1℃/s以上の平均冷却速度で65℃〜120℃の温度範囲まで第1段の冷却を行い、その後、平均冷却速度0.05〜1℃/hで0.5h〜10hの第2段の冷却を行い、さらにその後、平均冷却速度2.5℃/h以上で45℃以下まで第3段の冷却を行って、耐力を110〜135MPaとすることを特徴とする成形性、焼付硬化性、スプリングバック性に優れた成形加工用6000系合金板の製造方法である。
【0010】
また、必要に応じて請求項2の発明の様に、熱間圧延と冷間圧延との間、あるいは冷間圧延途中において480〜580/℃の温度範囲で5分以内の中間焼鈍を施し1℃/s以上の冷却速度で冷却しても良い。
【0011】
【発明の実施の形態】
先ずこの発明の製造方法で用いる合金の成分組成限定理由について説明する。Mg:
Mgはこの発明で対象としている系の合金で基本となる合金元素であって、Siと共同して強度向上に寄与する。Mg量が0.30%未満ではT4強度が低く、塗装焼付時に析出硬化によって強度向上に寄与するMg2Siの生成量が少なくなるため、十分な焼付後強度も得られず、また成形性も低下する。一方0.90%を越えると。Mg2Si組成に対する過剰Si量が低下してくるのでやはりT4強度が低下し、焼付後強度も高くならず、成形性も低下する。このため、Mg量は0.30〜0.90%の範囲内とした。
【0012】
Si:
Siもこの発明の系の合金で基本となる合金元素であって、Mgと共同して強度向上に寄与する。またSiは、鋳造時に金属Siの晶出物として生成され、その金属Si粒子の周囲が加工によって変形されて、溶体化処理の際に再結晶核の生成サイトとなるため、再結晶組織の微細化にも寄与する。Siが0.50%未満では上記の効果が充分に得られず、高いT4強度や焼付後の強度が得られず、さらに成形性も向上しない。一方1.60%を越えれば粗大Siが生じて合金の靱性低下を招き、曲げ性や成形性も低下する。したがってSiは0.50〜1.60%の範囲内とした。
【0013】
Cu:
Cuは成形性向上に著しく有効な元素である。また強度向上および表面処理性の改善にも有効な元素である。0.50%未満では成形性向上や強度向上の効果が少ない。一方、1.00%を越えると曲げ性や耐糸錆性が劣化するため、Cuの含有量は0.50〜1.00%とする。
【0014】
Mn,Cr,Zr,Ti,Fe:
これらは強度向上と結晶粒微細化のために1種または2種以上添加される。
これらのうち、Mn,Cr,Zrはいずれも強度向上と結晶粒の微細化および組織の安定化に効果がある元素であり、いずれも含有量が0.05%未満では上記の効果が充分に得られず、一方それぞれ0.30%を越えれば上記の効果が飽和するばかりでなく、巨大金属間化合物が生成され伸び、曲げ性、成形性に悪影響を及ぼすおそれがあり、また溶体化処理後の焼き入れ感受性を高めるので、焼付後の強度向上が低下する。したがってMn,Cr,Zr,はいずれも0.05〜0.30%の範囲内とした。
またTiも強度向上と鋳塊組織の微細化に有効な元素であり、その含有量が0.005%未満では充分な効果が得られず、一方0.15%を越えればTi添加の効果が飽和するばかりでなく、巨大晶出物が生じるおそれがあるから、Tiは0.005〜0.15%の範囲内とした。
さらにFeも強度向上と結晶粒微細化に有効な元素であり、その含有量が0.03%未満では充分な効果が得られず、一方0.40%を越えれば曲げ性、成形性が低下するおそれがあり、したがってFeは0.03〜0.40%の範囲内とした。
なおこれらのMn,Cr,Zr,Ti,Feの範囲は、積極的な添加元素としてこれらの元素を含む場合について示したものであり、いずれも上記下限値よりも少ない量を不純物として含有していることは特に支障ない。
【0015】
以上の各元素のほかは、基本的にはAlおよび不可避的不純物とすれば良い。一般に結晶粒微細化のために前述のTiと同時にBを添加することもあり、この発明の場合もTiとともに500ppm以下のBを添加することは許容される。また、Znは1.0%以下なら特に性能に影響を及ぼさず、場合によれば表面処理性の改善に効果があるので含有させてもよい。
さらに高温時効促進元素あるいは室温時効抑制元素Ag,In,Cd,Be,Snの添加は0.3%以下なら、特に支障ない。
【0016】
次にこの発明の方法における製造プロセスについて説明する。
【0017】
均質化処理、熱間圧延、冷間圧延の工程は従来の一般的なJIS6000番系のAl−Mg−Si系合金と同様であれば良い。
すなわち、DC鋳造法等によって鋳造した後、常法により均質化処理を施し、熱間圧延および冷間圧延を行なって所要の板厚とすれば良い。
均質化処理と熱間圧延のための加熱処理を別々に行ってもよく、省コストのために均質化処理と熱間圧延のための加熱処理を兼ねてもよい。
具体的には、均質化処理は500℃以上でかつ鋳塊が溶融しない温度以下で行うのが好ましい。この処理温度が500℃未満では成形性が低下しやすい。
熱間圧延は500℃以上で開始するのが好ましい。500℃未満で熱間圧延を開始した場合は焼付硬化性が低下しやすい。
【0018】
請求項2の発明では、熱間圧延と冷間圧延との間、あるいは冷間圧延の中途において480〜580℃の温度範囲で5分以内の中間焼鈍を行なう。
この中間焼鈍を行うことにより成形性が向上する。また、この中間焼鈍を高温で行うことによりMgとSiの固溶量が、最終溶体化処理のみの場合に比べ多くなる。480℃未満では、上記の効果が不十分で、580℃越えると共晶融解、再結晶粒粗大化の恐れがあるから中間焼鈍温度は480〜580℃とする。中間焼鈍時間は5分越えると上記の効果が飽和し、経済性を損なうから、中間焼鈍の時間は5分以内とする。所定温度に到達したら保持無しで冷却しても勿論構わない。また、冷却速度が1℃/s未満では、冷却中に多量の析出物が生じて、固溶量の低下に繋がり、結果的に塗装焼付硬化性が低下する。したがって、冷却速度を1℃/s以上とする。
尚、加熱速度は速いほど結晶粒径が細かくなるので好ましい。通常の連続焼鈍炉では加熱速度は1〜30℃/s程度であり好適に使用できる。
【0019】
冷間圧延して所要の製品板厚とした後、480℃から580℃の温度で5分以内の溶体化処理を行なう。この溶体化処理は、Mg2Si、単体Si等をマトリックスに固溶させ、Mg,Siの固溶量を増加させ、焼付硬化性を向上させる。この工程はMg2Si、単体Si粒子等の固溶により、第二相粒子の分布密度が低下し、延性と曲げ性の向上にも寄与し、また、再結晶により良好な成形性を得るための工程でもある。溶体化処理温度が480℃未満では、Mg2Si、Siなどの固溶量が少なく、充分な焼付硬化性が得られないばかりではなく、延性と曲げ性も著しく悪化する。溶体化処理温度が580℃を越えると、共晶融解の発生のおそれや再結晶粒粗大化が発生し、成形性が低下する。また溶体化処理の時間は5分を越えると、溶体化効果が飽和し、経済性を損なうばかりではなく、結晶粒粗大化の恐れもあるから溶体化処理の時間は5分以内が好ましい。
【0020】
溶体化処理後には、1℃/s以上の平均冷却速度で、65〜120℃の温度域まで第1段の冷却を行う。ここで、溶体化処理後の平均冷却速度が1℃/s未満では、冷却中にMg2Siあるいは単体Siが粒界に析出してしまい、成形性が低下すると同時に、焼付硬化性が低下して塗装焼付時の充分な強度向上が望めなくなる。
また、第1段の冷却温度が65℃未満では室温経時変化の抑制と焼付硬化性が不十分となる。
また、120℃を越えた温度ではT4強度が高くなりすぎて、スプリングバック性が低下する。
【0021】
その後、平均冷却速度0.05〜1℃/hで0.5h〜10hの第2段の冷却をする。これはかなりの徐冷である。
省コストにするにはコイルに適当な断熱カバーをかけて、1℃/h以下の冷却速度を保てばよい。この平均冷却速度が0.05℃/h未満ではT4強度が高くなりすぎる。またこの平均冷却速度が1℃/hを越えると焼付硬化性が低下し、T4強度が低くなりすぎて成形性が低下する。
一方、第2段冷却の冷却時間が0.5h未満では、焼付硬化性が低下し、またT4強度が低くなりすぎて成形性が低下する。一方10hを越えて冷却するとT4強度が高くなりすぎてスプリングバック性が低下する。
【0022】
第2段の冷却に続く第3段の冷却は平均冷却速度2.5℃/h以上で45℃以下まで冷却する。
この平均冷却速度が45℃まで2.5℃/h未満ではT4強度が高くなりスプリングバック性が低下する。このため2.5℃/h以上で行う。
第3段の冷却を45℃を超える温度で止めると、その温度以下の冷却速度によりT4強度が変化してしまい、ユーザーとの取り決めによるある範囲にはいる安定なT4強度を維持できない。このため45℃以下まで2.5℃/h以上で冷却する。
このようにして製造したT4材の耐力は110〜135MPaとする。この耐力が110MPa未満では焼付硬化性が低下し、また成形性が低下する。一方135MPaを超えるとスプリングバック性や曲げ性が低下するため好ましくない。
【0023】
以上のようにこの発明の製造方法によれば、合金の成分組成を適切に調整するとともに、製造プロセス中において、溶体化処理後の冷却条件および熱処理条件を限定することにより、成形性、焼付硬化性、スプリングバック性に優れた成形加工用6000系合金板が得られる。
【0024】
【実施例】
表1に示す化学組成を持つ合金A1からA18合金について、それぞれ常法に従ってDC鋳造法により鋳造し、得られた鋳塊に種々の均質化処理を施してから、熱間圧延を開始し、続いて冷間圧延を行なった。冷間圧延途中に場合により中間焼鈍を行った。最終的に厚さ1mmの冷間圧延板とし、溶体化処理を行なってから、各種冷却条件および熱処理を行なった。
詳細な製造条件を表2に示す。
なお、中間焼鈍後の冷却速度は表には示さないが中間焼鈍はCALで行ったので、100℃までの平均冷却速度で10℃/sである。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
以上のような処理を行なって得られた板を、さらに室温に7日放置した各板について、それぞれ170℃×20分の加熱の塗装焼付処理を施し、その焼付前の機械的特性および成形性と、焼付後の機械的特性を調べた。その結果を表3に示す。
【0028】
【表3】
【0029】
サンプル番号1〜8は、合金の成分組成がこの発明で規定する範囲内でかつ製造条件もこの発明で規定する条件を満たしたものである。この場合は、塗装焼付前の伸びおよびエリクセン値が充分に高く、曲げ性もよい。またT4強度も高すぎずスプリングバック性も良好である。さらに焼付硬化性も高い。
【0030】
サンプル番号9〜18は、製造条件はこの発明の範囲内であるが合金の成分組成がこの発明で規定する範囲外である。
番号9はMgの量が少ないため、T4強度が低く、伸び、成形性も劣り、焼付後の強度も低い。
番号10はSiの量が少ないため、T4強度が低く、伸び、成形性も劣り、焼付後の強度も低い。
番号11はCu量が少ないため、伸びや成形性が劣る。
番号12はMg量が多すぎるため、T4強度が低く、伸び、成形性が劣り、焼付後の強度も低い。
番号13はSi量が多すぎるため成形性が低下し、曲げ性が低下する。
番号14はCu量が多すぎるため曲げ性が低下する。ここに示していないが耐食性も低下する。
番号15はMn量が多すぎるため、伸び、成形性が低下し、また曲げ性も低下する、さらに焼付後の強度も低下する。
番号16はCr量が多すぎるため、伸び、成形性が低下し、さらに焼付後の強度も低下する。
番号17はZr量が多すぎるため、伸び、成形性が低下し、また曲げ性も低下する。
番号18はFe量が多すぎるため、曲げ性が低下する。
【0031】
サンプル番号19〜26は合金の成分組成はこの発明の範囲内であるが製造条件はこの発明で規定する範囲外である。
番号19は第1段の冷却終了温度が低いため、T4強度が低く、伸び、成形性が低下し、焼付後の強度も低い。
番号20は第1段冷却終了温度が高いため、T4強度が高くなりスプリングバック性が劣り、また曲げ性も劣る。
番号21は1mm厚さでの溶体化処理温度が低いため、伸び、成形性が低下し、焼付後の強度も低い。
番号22は第1段冷却速度が遅いため、曲げ性が低下する。
番号23は第2段冷却速度が速いため、焼付後の強度が低い。
番号24は第2段冷却時間が長いため、T4強度が高くなりスプリングバック性が劣り、また曲げ性も劣る。
番号25は第3段冷却速度が遅いため、T4強度が高くなりスプリングバック性が劣り、また曲げ性も劣る。
番号26は第2段の冷却の代わりに80℃で5時間の保持(冷却速度0℃/h)を行ったため、その後、第3段冷却速度を早くしたが、T4強度が高くなりスプリングバック性が劣り、また曲げ性も劣る。
【0032】
【発明の効果】
この発明の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法によれば、低温での安定化処理を省略でき、できるだけ冷却しないような断熱を行う処理なので低コストで、高い成形加工性、焼付硬化性、スプリングバック性を確保できる。
そのため、自動車用ボディシート、家電部品、各種機械器具部品、そのほか成形加工および塗装焼付を施して用いる用途のアルミニウム合金の製造に最適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶体化処理後の冷却の模様を示す線図である。
【発明が属する技術分野】
この発明は、自動車ボディシートや部品、各種機械器具、家電部品等の素材として、成形加工および塗装焼付を施して使用されるアルミニウム合金板の製造方法に関するものであり、特に成形性が良好であるとともに、成形時のスプリングバックが少なく、塗装焼付後の強度が高い成形加工用アルミニウム合金板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車のボディシートには、従来は主として冷延鋼板を使用することが多かったが、最近では車体軽量化の観点から、アルミニウム合金圧延板を使用する場合も多くなってきた。自動車のボディシートはプレス加工を行うため、成形加工性が優れていること、また成形加工時におけるリューダースマークが発生しないこと、組み立ての点からはスプリングバッグ小さいことが要求され、また高強度を有することも必須であって、特に塗装焼付を施すことから、塗装焼付後に高強度の得られることが要求される。
【0003】
従来このような自動車用ボディシート向けのアルミニウム合金としては、時効性を有するAl−Mg−Si系合金が主として使用されている。この時効性Al−Mg−Si系合金では、塗装焼付前の成形加工時においては比較的強度が低く、成形性が優れており、一方塗装焼付時の加熱によって時効されて塗装焼付後の強度が高くなる利点を有するほか、リューダースマークが発生しない等の利点を有する。
【0004】
ところで塗装焼付時における時効硬化を付与したAl−Mg−Si系合金板の製造方法としては、鋳塊を均質化熱処理した後、熱間圧延および冷間圧延を行なって所定の板厚とし、かつ必要に応じて熱間圧延と冷間圧延との間あるいは冷間圧延の中途において中間焼鈍を行ない、冷間圧延後に溶体化処理を行なって焼入れるのが通常である。しかしながらこのような従来の一般的な製造方法では、最近の自動車用ボディシートに要求される特性を充分に満足させることは困難である。また、エンジンフード以外にもトランクリッドやドア等のより複雑な部品に適用が検討されているが、現状のAl−Mg−Si系合金では成形性不足である。
【0005】
さらに、最近ではコストの一層の低減のためにさらに薄肉化することが強く要求されており、そのため薄肉でも充分な強度が得られるように、一層の高強度化が求められているが、この点でも従来の一般的な製造方法によって得られたAl−Mg−Si系合金板では不充分であった。
【0006】
上記の問題点を解決するため、溶体化処理後すぐ、あるいは制約された時間内に、改めて、ある特定の温度で保持を行う技術が提案されている。(特許文献1〜特許文献16等参照)
しかし、これらの提案は十分な塗装焼付硬化性を得られるとしても、工業的に実施するには時間的制約のため不便であり、また、特殊な設備対応が必要となるため、製造コストが高く問題である。
さらに溶体化処理後の冷却速度のコントロールで経済性の向上を図る技術も提案されている(例えば、特許文献17参照)が、必ずしも、冷却速度の制御範囲は最適であると言えない。特にAl−Si−Mg−Cu系の場合、T4材の強度が高くなり易く、成形後のスプリングバック量が多くなり易い。
【特許文献1】
特開昭62−089852号公報
【特許文献2】
特開昭62−177143号公報
【特許文献3】
特開平02−205660号公報
【特許文献4】
特開平03−294456号公報
【特許文献5】
特開平04−147951号公報
【特許文献6】
特開平04−210456号公報
【特許文献7】
特開平05−112839号公報
【特許文献8】
特開平05−125505号公報
【特許文献9】
特開平05−279822号公報
【特許文献10】
特開平07−150282号公報
【特許文献11】
特開平07−166285号公報
【特許文献12】
特開平08−049052号公報
【特許文献13】
特開平08−060314号公報
【特許文献14】
特開平08−060315号公報
【特許文献15】
特開平08−074014号公報
【特許文献16】
特開平09−143644号公報
【特許文献17】
特開平06−017208号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、成形加工性、焼付硬化性が優れていて、塗装焼付時における強度上昇が高く、T4材の強度が適当で成形後のスプリングバック量の少ない(以下、「スプリングバック性に優れた」という)成形加工用アルミニウム合金板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前述のような課題を解決するべく本発明者等が実験・検討を重ねた結果、Al−Mg−Si系合金の成分組成を適切に選択すると同時に、板製造プロセス中において、溶体化処理後に適切な熱処理を行なうことによって、前述の課題を解決し得ることを見出し、この発明をなすに至った。
【0009】
すなわち請求項1の発明は、Mg:0.30〜0.90%、Si:0.50〜1.60%、Cu:0.50〜1.00を含有し、さらに、Mn:0.05〜0.30%、Cr:0.05〜0.30%、Zr:0.05〜0.30%、Ti:0.005〜0.15%、Fe:0.03〜0.40%の1種または2種以上を含有し、その他不可避不純物からなるアルミニウム合金鋳塊に均質化処理、熱間圧延及び冷間圧延を行い所要の板厚とし、480℃〜580℃の温度で5分以内の溶体化処理を行い、その温度から1℃/s以上の平均冷却速度で65℃〜120℃の温度範囲まで第1段の冷却を行い、その後、平均冷却速度0.05〜1℃/hで0.5h〜10hの第2段の冷却を行い、さらにその後、平均冷却速度2.5℃/h以上で45℃以下まで第3段の冷却を行って、耐力を110〜135MPaとすることを特徴とする成形性、焼付硬化性、スプリングバック性に優れた成形加工用6000系合金板の製造方法である。
【0010】
また、必要に応じて請求項2の発明の様に、熱間圧延と冷間圧延との間、あるいは冷間圧延途中において480〜580/℃の温度範囲で5分以内の中間焼鈍を施し1℃/s以上の冷却速度で冷却しても良い。
【0011】
【発明の実施の形態】
先ずこの発明の製造方法で用いる合金の成分組成限定理由について説明する。Mg:
Mgはこの発明で対象としている系の合金で基本となる合金元素であって、Siと共同して強度向上に寄与する。Mg量が0.30%未満ではT4強度が低く、塗装焼付時に析出硬化によって強度向上に寄与するMg2Siの生成量が少なくなるため、十分な焼付後強度も得られず、また成形性も低下する。一方0.90%を越えると。Mg2Si組成に対する過剰Si量が低下してくるのでやはりT4強度が低下し、焼付後強度も高くならず、成形性も低下する。このため、Mg量は0.30〜0.90%の範囲内とした。
【0012】
Si:
Siもこの発明の系の合金で基本となる合金元素であって、Mgと共同して強度向上に寄与する。またSiは、鋳造時に金属Siの晶出物として生成され、その金属Si粒子の周囲が加工によって変形されて、溶体化処理の際に再結晶核の生成サイトとなるため、再結晶組織の微細化にも寄与する。Siが0.50%未満では上記の効果が充分に得られず、高いT4強度や焼付後の強度が得られず、さらに成形性も向上しない。一方1.60%を越えれば粗大Siが生じて合金の靱性低下を招き、曲げ性や成形性も低下する。したがってSiは0.50〜1.60%の範囲内とした。
【0013】
Cu:
Cuは成形性向上に著しく有効な元素である。また強度向上および表面処理性の改善にも有効な元素である。0.50%未満では成形性向上や強度向上の効果が少ない。一方、1.00%を越えると曲げ性や耐糸錆性が劣化するため、Cuの含有量は0.50〜1.00%とする。
【0014】
Mn,Cr,Zr,Ti,Fe:
これらは強度向上と結晶粒微細化のために1種または2種以上添加される。
これらのうち、Mn,Cr,Zrはいずれも強度向上と結晶粒の微細化および組織の安定化に効果がある元素であり、いずれも含有量が0.05%未満では上記の効果が充分に得られず、一方それぞれ0.30%を越えれば上記の効果が飽和するばかりでなく、巨大金属間化合物が生成され伸び、曲げ性、成形性に悪影響を及ぼすおそれがあり、また溶体化処理後の焼き入れ感受性を高めるので、焼付後の強度向上が低下する。したがってMn,Cr,Zr,はいずれも0.05〜0.30%の範囲内とした。
またTiも強度向上と鋳塊組織の微細化に有効な元素であり、その含有量が0.005%未満では充分な効果が得られず、一方0.15%を越えればTi添加の効果が飽和するばかりでなく、巨大晶出物が生じるおそれがあるから、Tiは0.005〜0.15%の範囲内とした。
さらにFeも強度向上と結晶粒微細化に有効な元素であり、その含有量が0.03%未満では充分な効果が得られず、一方0.40%を越えれば曲げ性、成形性が低下するおそれがあり、したがってFeは0.03〜0.40%の範囲内とした。
なおこれらのMn,Cr,Zr,Ti,Feの範囲は、積極的な添加元素としてこれらの元素を含む場合について示したものであり、いずれも上記下限値よりも少ない量を不純物として含有していることは特に支障ない。
【0015】
以上の各元素のほかは、基本的にはAlおよび不可避的不純物とすれば良い。一般に結晶粒微細化のために前述のTiと同時にBを添加することもあり、この発明の場合もTiとともに500ppm以下のBを添加することは許容される。また、Znは1.0%以下なら特に性能に影響を及ぼさず、場合によれば表面処理性の改善に効果があるので含有させてもよい。
さらに高温時効促進元素あるいは室温時効抑制元素Ag,In,Cd,Be,Snの添加は0.3%以下なら、特に支障ない。
【0016】
次にこの発明の方法における製造プロセスについて説明する。
【0017】
均質化処理、熱間圧延、冷間圧延の工程は従来の一般的なJIS6000番系のAl−Mg−Si系合金と同様であれば良い。
すなわち、DC鋳造法等によって鋳造した後、常法により均質化処理を施し、熱間圧延および冷間圧延を行なって所要の板厚とすれば良い。
均質化処理と熱間圧延のための加熱処理を別々に行ってもよく、省コストのために均質化処理と熱間圧延のための加熱処理を兼ねてもよい。
具体的には、均質化処理は500℃以上でかつ鋳塊が溶融しない温度以下で行うのが好ましい。この処理温度が500℃未満では成形性が低下しやすい。
熱間圧延は500℃以上で開始するのが好ましい。500℃未満で熱間圧延を開始した場合は焼付硬化性が低下しやすい。
【0018】
請求項2の発明では、熱間圧延と冷間圧延との間、あるいは冷間圧延の中途において480〜580℃の温度範囲で5分以内の中間焼鈍を行なう。
この中間焼鈍を行うことにより成形性が向上する。また、この中間焼鈍を高温で行うことによりMgとSiの固溶量が、最終溶体化処理のみの場合に比べ多くなる。480℃未満では、上記の効果が不十分で、580℃越えると共晶融解、再結晶粒粗大化の恐れがあるから中間焼鈍温度は480〜580℃とする。中間焼鈍時間は5分越えると上記の効果が飽和し、経済性を損なうから、中間焼鈍の時間は5分以内とする。所定温度に到達したら保持無しで冷却しても勿論構わない。また、冷却速度が1℃/s未満では、冷却中に多量の析出物が生じて、固溶量の低下に繋がり、結果的に塗装焼付硬化性が低下する。したがって、冷却速度を1℃/s以上とする。
尚、加熱速度は速いほど結晶粒径が細かくなるので好ましい。通常の連続焼鈍炉では加熱速度は1〜30℃/s程度であり好適に使用できる。
【0019】
冷間圧延して所要の製品板厚とした後、480℃から580℃の温度で5分以内の溶体化処理を行なう。この溶体化処理は、Mg2Si、単体Si等をマトリックスに固溶させ、Mg,Siの固溶量を増加させ、焼付硬化性を向上させる。この工程はMg2Si、単体Si粒子等の固溶により、第二相粒子の分布密度が低下し、延性と曲げ性の向上にも寄与し、また、再結晶により良好な成形性を得るための工程でもある。溶体化処理温度が480℃未満では、Mg2Si、Siなどの固溶量が少なく、充分な焼付硬化性が得られないばかりではなく、延性と曲げ性も著しく悪化する。溶体化処理温度が580℃を越えると、共晶融解の発生のおそれや再結晶粒粗大化が発生し、成形性が低下する。また溶体化処理の時間は5分を越えると、溶体化効果が飽和し、経済性を損なうばかりではなく、結晶粒粗大化の恐れもあるから溶体化処理の時間は5分以内が好ましい。
【0020】
溶体化処理後には、1℃/s以上の平均冷却速度で、65〜120℃の温度域まで第1段の冷却を行う。ここで、溶体化処理後の平均冷却速度が1℃/s未満では、冷却中にMg2Siあるいは単体Siが粒界に析出してしまい、成形性が低下すると同時に、焼付硬化性が低下して塗装焼付時の充分な強度向上が望めなくなる。
また、第1段の冷却温度が65℃未満では室温経時変化の抑制と焼付硬化性が不十分となる。
また、120℃を越えた温度ではT4強度が高くなりすぎて、スプリングバック性が低下する。
【0021】
その後、平均冷却速度0.05〜1℃/hで0.5h〜10hの第2段の冷却をする。これはかなりの徐冷である。
省コストにするにはコイルに適当な断熱カバーをかけて、1℃/h以下の冷却速度を保てばよい。この平均冷却速度が0.05℃/h未満ではT4強度が高くなりすぎる。またこの平均冷却速度が1℃/hを越えると焼付硬化性が低下し、T4強度が低くなりすぎて成形性が低下する。
一方、第2段冷却の冷却時間が0.5h未満では、焼付硬化性が低下し、またT4強度が低くなりすぎて成形性が低下する。一方10hを越えて冷却するとT4強度が高くなりすぎてスプリングバック性が低下する。
【0022】
第2段の冷却に続く第3段の冷却は平均冷却速度2.5℃/h以上で45℃以下まで冷却する。
この平均冷却速度が45℃まで2.5℃/h未満ではT4強度が高くなりスプリングバック性が低下する。このため2.5℃/h以上で行う。
第3段の冷却を45℃を超える温度で止めると、その温度以下の冷却速度によりT4強度が変化してしまい、ユーザーとの取り決めによるある範囲にはいる安定なT4強度を維持できない。このため45℃以下まで2.5℃/h以上で冷却する。
このようにして製造したT4材の耐力は110〜135MPaとする。この耐力が110MPa未満では焼付硬化性が低下し、また成形性が低下する。一方135MPaを超えるとスプリングバック性や曲げ性が低下するため好ましくない。
【0023】
以上のようにこの発明の製造方法によれば、合金の成分組成を適切に調整するとともに、製造プロセス中において、溶体化処理後の冷却条件および熱処理条件を限定することにより、成形性、焼付硬化性、スプリングバック性に優れた成形加工用6000系合金板が得られる。
【0024】
【実施例】
表1に示す化学組成を持つ合金A1からA18合金について、それぞれ常法に従ってDC鋳造法により鋳造し、得られた鋳塊に種々の均質化処理を施してから、熱間圧延を開始し、続いて冷間圧延を行なった。冷間圧延途中に場合により中間焼鈍を行った。最終的に厚さ1mmの冷間圧延板とし、溶体化処理を行なってから、各種冷却条件および熱処理を行なった。
詳細な製造条件を表2に示す。
なお、中間焼鈍後の冷却速度は表には示さないが中間焼鈍はCALで行ったので、100℃までの平均冷却速度で10℃/sである。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
以上のような処理を行なって得られた板を、さらに室温に7日放置した各板について、それぞれ170℃×20分の加熱の塗装焼付処理を施し、その焼付前の機械的特性および成形性と、焼付後の機械的特性を調べた。その結果を表3に示す。
【0028】
【表3】
【0029】
サンプル番号1〜8は、合金の成分組成がこの発明で規定する範囲内でかつ製造条件もこの発明で規定する条件を満たしたものである。この場合は、塗装焼付前の伸びおよびエリクセン値が充分に高く、曲げ性もよい。またT4強度も高すぎずスプリングバック性も良好である。さらに焼付硬化性も高い。
【0030】
サンプル番号9〜18は、製造条件はこの発明の範囲内であるが合金の成分組成がこの発明で規定する範囲外である。
番号9はMgの量が少ないため、T4強度が低く、伸び、成形性も劣り、焼付後の強度も低い。
番号10はSiの量が少ないため、T4強度が低く、伸び、成形性も劣り、焼付後の強度も低い。
番号11はCu量が少ないため、伸びや成形性が劣る。
番号12はMg量が多すぎるため、T4強度が低く、伸び、成形性が劣り、焼付後の強度も低い。
番号13はSi量が多すぎるため成形性が低下し、曲げ性が低下する。
番号14はCu量が多すぎるため曲げ性が低下する。ここに示していないが耐食性も低下する。
番号15はMn量が多すぎるため、伸び、成形性が低下し、また曲げ性も低下する、さらに焼付後の強度も低下する。
番号16はCr量が多すぎるため、伸び、成形性が低下し、さらに焼付後の強度も低下する。
番号17はZr量が多すぎるため、伸び、成形性が低下し、また曲げ性も低下する。
番号18はFe量が多すぎるため、曲げ性が低下する。
【0031】
サンプル番号19〜26は合金の成分組成はこの発明の範囲内であるが製造条件はこの発明で規定する範囲外である。
番号19は第1段の冷却終了温度が低いため、T4強度が低く、伸び、成形性が低下し、焼付後の強度も低い。
番号20は第1段冷却終了温度が高いため、T4強度が高くなりスプリングバック性が劣り、また曲げ性も劣る。
番号21は1mm厚さでの溶体化処理温度が低いため、伸び、成形性が低下し、焼付後の強度も低い。
番号22は第1段冷却速度が遅いため、曲げ性が低下する。
番号23は第2段冷却速度が速いため、焼付後の強度が低い。
番号24は第2段冷却時間が長いため、T4強度が高くなりスプリングバック性が劣り、また曲げ性も劣る。
番号25は第3段冷却速度が遅いため、T4強度が高くなりスプリングバック性が劣り、また曲げ性も劣る。
番号26は第2段の冷却の代わりに80℃で5時間の保持(冷却速度0℃/h)を行ったため、その後、第3段冷却速度を早くしたが、T4強度が高くなりスプリングバック性が劣り、また曲げ性も劣る。
【0032】
【発明の効果】
この発明の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法によれば、低温での安定化処理を省略でき、できるだけ冷却しないような断熱を行う処理なので低コストで、高い成形加工性、焼付硬化性、スプリングバック性を確保できる。
そのため、自動車用ボディシート、家電部品、各種機械器具部品、そのほか成形加工および塗装焼付を施して用いる用途のアルミニウム合金の製造に最適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶体化処理後の冷却の模様を示す線図である。
Claims (2)
- Mg:0.30〜0.90%(mass%、以下同じ)、Si:0.50〜1.60%、Cu:0.50〜1.00を含有し、さらに、Mn:0.05〜0.30%、Cr:0.05〜0.30%、Zr:0.05〜0.30%、Ti:0.005〜0.15%、Fe:0.03〜0.40%の1種または2種以上を含有し、その他不可避不純物からなるアルミニウム合金鋳塊に均質化処理、熱間圧延及び冷間圧延を行い所要の板厚とし、480℃〜580℃の温度で5分以内の溶体化処理を行い、その温度から1℃/s以上の平均冷却速度で65℃〜120℃の温度範囲まで第1段の冷却を行い、その後、平均冷却速度0.05〜1℃/hで0.5h〜10hの第2段の冷却を行い、さらにその後、平均冷却速度2.5℃/h以上で45℃以下まで第3段の冷却を行って、耐力を110〜135MPaとすることを特徴とする成形性、焼付硬化性、スプリングバック性に優れた成形加工用6000系合金板の製造方法。
- 熱間圧延と冷間圧延との間、あるいは冷間圧延途中において480〜580℃の温度範囲で5分以内の中間焼鈍を施し1℃/s以上の冷却速度で冷却することを特徴とする請求項1に記載の成形性、焼付硬化性、スプリングバック性に優れた成形加工用6000系合金板の製造方法。
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