JP2009148822A - 高強度アルミニウム合金板の温間プレス成形方法 - Google Patents

高強度アルミニウム合金板の温間プレス成形方法 Download PDF

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誠 佐賀
Takeshi Takada
健 高田
Shinichi Omiya
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Osamu Noguchi
修 野口
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彰 田尻
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Abstract

【課題】特に自動車の外板などに適用した際に、軽量化に大きく寄与し得るレベルにまで強度を高めた6000系アルミニウム合金板の、成形性を向上させる温間プレス成形方法を提案する。
【解決手段】6000系アルミニウム合金板を溶体化処理後、更に、150〜300℃で0.5〜10時間保持する熱処理を施し、強度を著しく高めるとともに、ダイスのフランジ部分の温度を170℃以上とし、その温度よりもポンチの温度を低くすることにより、プレス成形性を向上させる。6000系アルミニウム合金板は、質量%で、Mg:0.2〜2.0%、Si:0.3〜2.0%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなることが好ましい。更に、ポンチの温度を、ダイスのフランジ部分の温度よりも170℃以上低くすることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、主要な添加元素としてMgとSiを含む、6000系アルミニウム合金を、加熱された金型を用いて温間成形する、温間プレス成形方法に関するものである。
近年、自動車の車体を軽量化する手段として、鋼板からアルミニウム合金板への材料の転換が進められている。しかし、アルミニウム合金板はプレス成形性が鋼板よりも劣っているため、複雑な形状の部品への適用は困難である。また、アルミニウム合金の強度及び成形性は、Mgの含有量の増加とともに向上することから、当初、自動車のパネル等の部材には、主要な元素として、Mgを含有する5000系アルミニウム合金が適用されていた。
一方、主要な元素として、MgとSiとを含む6000系アルミニウム合金は、5000系アルミニウム合金と比べて、プレス成形性は劣る。しかし、6000系アルミニウム合金は、MgとSiの微細な析出物の生成により、焼付硬化性(Bake Hardenability、BH性という。)を発現するという特徴がある。
自動車の製造工程である焼付塗装処理では、車体に約170℃で20分程度の熱処理が施される。したがって、析出強化によって、処理前に比べて強度が上昇する6000系アルミニウム合金は、自動車の車体に好適な材料である。そのため、室温でのプレス成形性とBH性を両立させた、6000系アルミニウム合金及びその製造方法が提案されている。
このような材料の開発と並行して、成形性に劣るアルミニウム合金板を利用するための、成形技術の開発も進められている。特に、成形性に優れる5000系アルミニウム合金を、加熱した金型で成形すると室温での成形に比べて深絞り性が向上し、複雑な形状への成形が可能になる。本発明者らの一部も、5000系アルミニウム合金板の温間成形方法を提案している(例えば、特許文献1)。
また、焼付硬化性を有するアルミニウム合金の温間成形方法も提案されている(例えば、特許文献2〜4)。このうち、特許文献2では、強度を低下させ、成形性を向上させるために、析出物を生成させ、成長させる技術が提案されている。また、特許文献3では、Fe及びMnの固溶量を制限し、200〜300℃の温度での延性を改善する技術が提案されている。しかし、これらは6000系アルミニウム合金の温間での成形性の向上を図ったものであり、BH性を利用するものではない。
これらに対して、特許文献4では、BH性を発現する6000系アルミニウム合金の温間成形方法が提案されている。これは、溶体化処理後、室温で時効させたものであるが、例えば、自動車の外板に適用するには、より高い強度が要求される。
特開2007−125601号公報 特開平02−190456号公報 特開2002−348625号公報 特開2006−205244号公報
本発明は、強度を高めた6000系アルミニウム合金板の成形性を向上させ、特に、自動車の外板などに適用した際に、軽量化に大きく寄与し得るレベルにまで強度と成形性を向上させることが可能な、高強度アルミニウム合金板の温間プレス成形方法を提案するものである。
本発明者らは、高強度を有する6000系アルミニウム合金板の温間でのプレス成形方法を検討した。その結果、溶体化処理後、150〜300℃で熱処理を施した6000系アルミニウム合金板は高強度を有し、予想を超えて、高い成形性を有していることが判明した。本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1) 溶体化処理後、更に、150〜300℃で0.5〜10時間保持する熱処理を施した6000系アルミニウム合金板を、フランジ部分の温度が170℃以上であるダイスと、該ダイスのフランジ部分よりも低温であるポンチを用いて成形することを特徴とする高強度アルミニウム合金板の温間プレス成形方法。
(2) 6000系アルミニウム合金板が、質量%で、Mg:0.20〜2.00%、Si:0.30〜2.00%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とする上記(1)に記載の高強度アルミニウム合金板の温間プレス成形方法。
(3) 6000系アルミニウム合金板が、更に、質量%で、Cu:0.10〜1.30%を含有することを特徴とする上記(2)に記載の高強度アルミニウム合金板の温間プレス成形方法。
(4) 6000系アルミニウム合金板が、更に、質量%で、Ti:0.005〜0.150%、B:0.0001〜0.0500%、Mn:0.03〜0.60%、Cr:0.02〜0.30%、Fe:0.02〜0.50%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記(2)又は(3)に記載の高強度アルミニウム合金板の温間プレス成形方法。
(5) 6000系アルミニウム合金板が、更に、質量%で、Zn:0.03〜1.00%を含有することを特徴とする上記(2)〜(4)の何れか1項に記載の高強度アルミニウム合金板の温間プレス成形方法。
(6) 溶体化処理を480〜590℃で行うことを特徴とする上記(1)〜(5)の何れか1項に記載の高強度アルミニウム合金板の温間プレス成形方法。
(7) 溶体化処理を480〜590℃で行い、150℃以下に冷却することなく、150〜300℃で0.5〜10時間保持する熱処理を施すことを特徴とする上記(6)に記載の高強度アルミニウム合金板の温間プレス成形方法。
(8) ポンチの温度が、ダイスのフランジ部分の温度よりも170℃以上低いことを特徴とする上記(1)〜(7)の何れか1項に記載の高強度アルミニウム合金板の温間プレス成形方法。
本発明により、高い強度を有する6000系アルミニウム合金であっても、プレス成形性が格段に向上し、特に、自動車の外板等に適用する場合は、優れたデント性が得られ、板厚の削減にも貢献し得る可能性があり、更には、成形時に金型温度を上昇させることで延性が増大し、穴広げ性が向上するなど、産業上の貢献が極めて顕著である。
本発明の高強度アルミニウム合金板の温間プレス成形方法では、プレス成形性の目標を従来の高強度鋼板以上、具体的には限界絞り比(LDR)で2.0以上、好ましくは2.2以上とし、強度の目標を自動車の外板に適用する際のレベル、具体的には、150MPa以上、好ましくは200MPa以上とする。
従来、6000系アルミニウム合金を温間でプレス成形する場合、強度が低いほど成形性が良好であり、T6処理による高強度化は好ましくないと考えられていた。そのため、6000系アルミニウム合金を、溶体化処理後、成形性を損なわないように自然時効させ、温間成形時の金型による加熱を利用して、BH性を付与する方法などが提案されている。これは、温間プレス成形後の塗装焼付処理を利用して強度を高めるものであるが、強度の上昇は不十分であった。
そのため、本発明者らは、次のように考え、T6処理に相当する、溶体化処理後、150〜300℃で熱処理を施した高強度アルミニウム合金を温間プレス成形する方法を志向した。まず、温間プレス成形では、ダイスのフランジ部分を加熱し、これに接触する材料を軟化させる。次に、ポンチの温度をダイスのフランジ部分の温度よりも低くし、ポンチに接触する材料の強度を、ダイスのフランジ部分に接触する材料の強度よりも高める。このような状態で絞り成形を行うと、フランジ部分に接触している材料の強度は低くなり、特に、ポンチ肩部に接触している材料の強度はフランジ部に比べて高くなる。
本発明の温間プレス成形は、このような、部位による強度差を利用して、絞り成形性を高める方法である。したがって、成形前の強度を低下させることよりも、加熱された材料の高温での軟化が重要である。このように考えると、室温での強度が高く、温間成形に好適な温度域、例えば、150〜300℃という温度での強度が低下し易い材料は、温間プレス成形に適した材料であるということができる。
このような考え方に基づいて、更に、本発明者らは、強度を高める熱処理の条件や、温間プレス成形の条件について検討を行った。その結果、6000系アルミニウム合金板の、溶体化処理後の熱処理の温度は150〜300℃が好適であり、ダイスのフランジ部分の加熱温度は170℃以上が好適であり、これにより、高い強度と優れたプレス成形性との両立が可能であることを見出した。なお、本発明では、ダイスのうち、しわ押さえ金型と相対する部分をダイスのフランジ部分という。
更に、深絞り成形性は、加熱されたダイスのフランジ部分に接触する材料の強度と、ポンチに接触する部分の材料の強度との差の拡大にしたがって向上するため、特に、ポンチの肩部は加熱せず、冷却することが好ましい。また、深絞り成形性の向上には、フランジ部分の材料の流入抵抗を低下させることも有効である。そのため、温間成形では、ダイスのフランジ部分の温度を高める必要があり、本発明では170℃以上とする。一方、ダイスのフランジ部分の温度の上限は、潤滑剤の使用温度の制限により、300℃以上とすることは難しく、270℃以下とすることが好ましい。
また、6000系アルミニウム合金は析出強化型であり、高強度を得るために、MgとSiの析出物を形成させる。本発明の高強度アルミニウム合金では、若干、成形性を低下させるものの、特に、析出強化への寄与が大きいベータ・ダブル・プライム(β”)を利用する。そのため、本発明では、6000系アルミニウム合金板を溶体化処理した後、150〜300℃での熱処理を施して、β”を形成させる。この熱処理の温度の上限は、成形性を確保するため、210℃とすることが好ましい。なお、本発明では、β”を形成させる熱処理を人工時効処理という。
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の高強度アルミニウム合金の成分組成について説明する。本発明の温間プレス成形方法には、自動車用の材料に好適な、MgとSiとを必須成分として含有する6000系アルミニウム合金を採用することが必要である。これは、析出強化により、優れた強度が得られるためである。なお、溶体化処理後の人工時効処理によるβ”の析出を促進させるには、MgよりもSiを多く含有させることが好ましい。
Mg及びSiの含有量は、それぞれ、Mgは0.20〜2.00%、Siは0.30〜2.00%とすることが好ましい。これにより、β”の析出が促進され、強度の向上が顕著になる。また、β”の生成を促進させるには、この範囲内で、MgよりもSiの添加量を多くすることが好ましく、強度と成形性の両立に効果的である。一方、Mg及びSiの添加量がそれぞれ0.20%及び0.30%よりも少ないと、人工時効処理の温度が低い場合や、時間が短い場合に、強度が不十分になることがある。これに対して、Mg及びSiの添加量が2.0%を超えると、溶体化処理の温度が低い場合には、平衡相であるMg2Siが残留して、人工時効処理後の強度がやや低下する可能性がある。人工時効処理後の強度を高めるためには、Mg及びSiの下限を、それぞれ、0.25%以上及び0.50%以上とすることが好ましい。また、Mgは成形性の向上にも寄与する元素であるため、0.30%以上を添加することが更に好ましい。
Cuは、強度への寄与が大きい元素であり、0.10%以上を添加することが好ましい。一方、Cu量が、1.30%を超えると、耐食性が劣化することがある。したがって、Cuの含有量の好ましい範囲は0.10〜1.30%である。Cu量の、更に好ましい上限は、0.90%以下である。
更に、結晶粒径を微細化させるため、必要に応じて、Ti、B、Mn、Cr、Feのうち1種又は2種以上を含有させてもよい。
Ti及びBは、微量の添加によって鋳塊の結晶粒を微細化し、成形性等の改善に有効な元素である。この効果を得るには、Tiの含有量を0.005%以上、Bの含有量を0.0001%以上とすることが好ましい。一方、Tiの含有量が0.150%超、Bの含有量が0.0500%超になると、晶出物の形成によって、成形性が劣化することがある。したがって、Tiの含有量の好ましい範囲は0.005〜0.150%であり、Bの含有量の好ましい範囲は0.0001〜0.050%である。
Mn、Cr、Feは、結晶粒の微細化によって成形性を向上させる元素であり、また、強度の向上にも寄与する。この効果を得るには、Mnは0.03%以上、Crは0.02%以上、Feは0.02%以上を含有することが好ましい。一方、Mnが0.60%、Crが0.30%、Feが0.50%を超えると、晶出物の生成により、成形性を損なうことがある。したがって、Mnは0.03〜0.60%、Crは0.02〜0.30%、Feは0.02〜0.50%の範囲とすることが好ましい。Mn量の更に好ましい上限は、0.40%以下であり、Cr量の、更に好ましい上限は、0.15%以下である。
更に、強度を向上させるため、必要に応じて、Znを含有させてもよい。
Znは、強度を向上させる元素であり、効果を得るには、含有量を0.03%以上とすることが好ましい。一方、Znの含有量が、1.00%を超えると強度の上昇により、成形性を損なうことがある。したがって、Znの添加量は、0.03〜1.00%とすることが好ましい。
また、鋳塊組織の微細化に効果的であるScを含有させても良い。Scは、0.01〜0.20%の範囲とすることが好ましい。
本発明のアルミニウム合金は、主要な元素としてMg及びSiを含有する6000系アルミニウム合金、好ましくは上述の成分からなる6000系アルミニウム合金の冷延板を溶体化処理した後、更に、150〜300℃で0.5〜10時間保持する熱処理(人工時効処理)を施して製造される。なお、本発明のアルミニウム合金の冷延板は、常法により、溶解、鋳造し、熱間圧延後、冷間圧延によって製造される。冷間圧延の途中に、中間焼鈍を施しても良い。
溶体化処理の温度は、冷延板に生じている析出物、特に、平衡相であるMg2Siを溶解させて、MgとSiを固溶させるために、480℃以上で行うことが好ましく、500℃以上で行うことが更に好ましい。一方、Mg、Si、Cuの含有量によっては、溶体化処理が高すぎると結晶粒界が溶融することがあるため、上限を590℃以下とすることが好ましい。
溶体化処理では、最高温度に到達後、保持せずに冷却しても良いが、0.1〜5分の保持を行うことが好ましい。保持時間の下限を0.1分以上にすると、Mg2Siの溶解が促進され、Mg及びSiの固溶量が増加する。その結果、人工時効後の強度を向上させることができる。なお、生産性を高めるためには、加熱炉内を通板させる連続加熱処理設備を用いることが好ましい。しかし、溶体化処理の保持時間を長くするには、加熱炉を長くするか、通板速度を遅くする必要があり、生産性を損なうため、5分以下とすることが好ましい。
溶体化処理後の冷却は空冷で良いが、人工時効処理後の強度を向上させるために、送風手段等を用いて強制冷却することが好ましい。特に、溶体化処理後、250℃までは、10℃/s以上で冷却することが好ましい。これにより、250℃以上での析出物の形成が防止され、人工時効処理におけるβ”の形成に必要な固溶Mg及び固溶Siを確保することができる。なお、冷却速度を制御するために、ミスト冷却や水冷を行っても良い。
本発明では、上述のように、β”の形成の促進によって6000系アルミニウム合金板を高強度化するため、溶体化処理後の熱処理(人工時効処理)を150〜300℃で施す。より高い成形性を確保するためには人工時効処理の温度の上限を、210℃以下とすることが好ましい。また、本発明では、強度の向上を重視することから、人工時効処理の保持時間を、0.5h以上にすることが好ましい。一方、人工時効処理の保持時間が10hを超えると、β”の成長により、強度が低下し始めるため、上限を10hとすることが好ましい。
人工時効処理は、溶体化処理後、150℃未満、例えば、室温まで冷却して、再度、加熱して行っても良い。また、生産性の観点からは、冷却と再加熱の時間を削減するため、溶体化処理後、150℃未満に冷却することなく、人工時効処理を施すことが好ましい。
6000系アルミニウム合金を製造後、温間プレス成形を施す。本発明のアルミニウム合金の温間プレス成形方法では、ダイスのフランジ部分の温度とポンチの温度が極めて重要である。上述のように、温間プレス成形性は、ダイスのフランジ部分に接触する材料の軟化と、特にポンチ肩部に接触する材料の強度の確保によって向上する。そのため、ポンチの温度、特に、ポンチ肩部の温度は、ダイスのフランジ部分の温度よりも低下させることが必要である。
ダイスのフランジ部分に接する材料の流入抵抗を減少させるためには、ダイスのフランジ部分の温度を170℃以上にすることが必要である。これは、6000系アルミニウム合金が170℃以上になると、強度の低下に伴う流入抵抗の低下が顕著になるためである。なお、深絞り性を向上させるには、ダイスのフランジ部分の温度を200℃以上にすることが好ましい。これにより、スプリングバックによる成形品の形状不良の防止も可能になる。また、材料の温度が高い状態で穴広げ加工を施しても良い。アルミニウム合金の延性は、温度の上昇によって向上するため、温間での成形は、穴広げ性の向上にも有効である。
ダイスの加熱を行う具体的な手段としては、ダイス、特に、ダイスのフランジ部分にヒーターを埋め込み、加熱すれば良い。しわ押さえ金型にヒーターを埋め込んで加熱しても良い。また、ダイスのフランジ部分の温度をポンチの温度よりも高くしていても、アルミニウム合金板がダイスのみと接触していては、熱伝導によってポンチ肩部の温度が、ダイスのフランジ部分の温度と同等に上昇し、軟化することがある。そのため、プレス成形を行う際には、しわ押さえ金型とダイスで材料を挟持する際に、同時に、ポンチを材料に接触させることが好ましい。
更に、深絞り性を向上させるためには、ダイスのフランジ部分の温度とポンチの温度との差を170℃以上とすることが好ましい。このような温度差を付与するには、ポンチ、特に、ポンチ肩部の内部に冷媒を循環させることが好ましい。冷媒は水でも良いが、0℃以下に冷却する場合は、アルコール、グリセリン等を用いることが好ましい。
表1に示した成分を有する6000系アルミニウム合金を、実験室で溶解、鋳造し、熱間圧延及び冷間圧延を施して、厚みが1mmの冷延板とした。これらの冷延板から、後述する温間プレス成形試験成形及び引張試験に供する試験片を採取した。温間プレス成形に供する試験片は円盤状であり、引張試験片は、圧延方向を長手方向とする、JIS Z 2201の5号試験片である。なお、表1の空欄は、成分を意図的に添加していないことを意味する。
これらの試験片を、溶体化処理のため表2に示す温度のソルトバス中に1分間保持し(No.8は2分間保持した。No.9、17は最高温度到達後すぐ冷却した。)、一部の試験片(No.13、14以外)は水中に焼入れ、冷却し、また一部の試験片(No.13,14)は、直接、150℃以上のオイルバス中に焼入れ、そのまま保持した。水中に焼入れた試験片については、冷却後、室温での保持を避けるため、直ちに、液体窒素中に保管した。溶体化処理後の室温での保持時間は、1〜2分程度であり、溶体化処理後の室温での時効の影響を無視することができる。
その後、表2に示したように、一部の試験片(No.6,7、13、14以外)は、人工時効前に室温で保持した。また一部の試験片(No.6,7)は、液体窒素から取出した後、室温で保持することなく、すぐオイルバスに浸漬した。更に、表2に示したように、これら試験片に人工時効処理を模擬する熱処理を施した。
なお、表2の人工時効前の保持温度及び保持時間が空欄であるもの(No.13、14)は、室温で保持せず、直接、オイルバス中での人工時効処理を施したことを意味する。これらは、溶体化処理後、そのまま人工時効処理を施す製造方法を模擬している。即ち、150℃未満に冷却することなく人工時効処理を施す製造方法を模擬した例である。
人工時効処理後、温間プレス成形試験及び引張試験を行った。引張試験は、JIS Z 2241に準拠して行った。温間プレス成形試験は、フランジ部分にヒーターを埋め込んだダイスを有する深絞り試験装置を用いて行った。ポンチは円筒状で、外径は78mmであり、ダイスの内径は80mmである。ポンチの内部には水を循環させて、肩部の表面の温度を30℃とした。
温間プレス成形性は、限界絞り比(LDR)で評価した。LDRは、破断させずに絞り抜くことのできる試験片の最大の直径を、ポンチの直径で除して求められる値である。なお、温間プレス成形試験には二硫化モリブデンに水を加えた潤滑剤を用いた。また、しわ押さえ圧は1ton以下とした。
結果を表3に示す。No.1〜15は、本発明の例であり、LDRが2.0以上、好ましくは2.2以上、YSが150MPa以上である。このうち、No.6〜7は、Si、Mg量がやや少なめであり、LDRは2.0を維持しているが、他の試験片に比べて強度及びLDRがやや低下している。No.9は、溶体化処理の温度が若干低いため、LDRは2.1を維持しているが、強度及びLDRが、他の試験片に比べてやや低下している。No.11は、人工時効処理の温度がやや高めであり、LDRは2.0を維持しているが、強度及びLDRが、他の試験片に比べて少し低下している。一方、No.16は比較例であり、温間プレス成形のダイス温度が低いため、LDRが2.0に届かず、成形性が十分ではない。
Figure 2009148822
Figure 2009148822
Figure 2009148822
表4に示した成分を有する6000系アルミニウム合金を、実施例1と同様にして、厚みが1mmの冷延板とした。なお、表4の空欄は、成分を意図的に添加していないことを意味する。これらの冷延板から、実施例1と同様にして、温間プレス成形試験及び引張試験に供する試験片を採取し、表5に示す温度のソルトバス中に1分間保持し、水中に焼入れ、冷却した。また、実施例1と同様に、溶体化処理後の室温での保持時間が1〜2分程度になるように、液体窒素中に保管した。
その後、表5に示したように、室温で保持し、人工時効処理を模擬する熱処理を施した。人工時効処理後、実施例1と同様にして、温間プレス成形試験及び引張試験を行った。結果を表6に示す。製造No.18〜22は本発明例であり、YS150MPa以上を有し、LDRは2.2以上と良好な値が得られている。
Figure 2009148822
Figure 2009148822
Figure 2009148822

Claims (8)

  1. 溶体化処理後、更に、150〜300℃で0.5〜10時間保持する熱処理を施した6000系アルミニウム合金板を、フランジ部分の温度が170℃以上であるダイスと、該ダイスのフランジ部分よりも低温であるポンチを用いて成形することを特徴とする高強度アルミニウム合金板の温間プレス成形方法。
  2. 6000系アルミニウム合金板が、質量%で、Mg:0.20〜2.00%、Si:0.30〜2.00%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1に記載の高強度アルミニウム合金板の温間プレス成形方法。
  3. 6000系アルミニウム合金板が、更に、質量%で、Cu:0.10〜1.30%を含有することを特徴とする請求項2に記載の高強度アルミニウム合金板の温間プレス成形方法。
  4. 6000系アルミニウム合金板が、更に、質量%で、Ti:0.005〜0.150%、B:0.0001〜0.0500%、Mn:0.03〜0.60%、Cr:0.02〜0.30%、Fe:0.02〜0.50%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項2又は3に記載の高強度アルミニウム合金板の温間プレス成形方法。
  5. 6000系アルミニウム合金板が、更に、質量%で、Zn:0.03〜1.00%を含有することを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載の高強度アルミニウム合金板の温間プレス成形方法。
  6. 溶体化処理を480〜590℃で行うことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の高強度アルミニウム合金板の温間プレス成形方法。
  7. 溶体化処理を480〜590℃で行い、150℃以下に冷却することなく、150〜300℃で0.5〜10時間保持する熱処理を施すことを特徴とする請求項6に記載の高強度アルミニウム合金板の温間プレス成形方法。
  8. ポンチの温度が、ダイスのフランジ部分の温度よりも170℃以上低いことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の高強度アルミニウム合金板の温間プレス成形方法。
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