JP6429519B2 - Al−Mg−Si系合金圧延板の温間成形方法 - Google Patents

Al−Mg−Si系合金圧延板の温間成形方法 Download PDF

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本発明は、Al−Mg−Si系合金圧延板の温間プレス成形(以下、「温間成形」と記す)方法に関するものであり、具体的には、自動車、船舶、航空機等の各種部材・部品、あるいは建築材料、構造材料、そのほか各種機械器具、家電製品やその部品等に用いられ、特に自動車用のボディパネル・構造部材として、高強度であることが求められるAl−Mg−Si系合金圧延板成形品を温間成形によって製造する技術に関するものである。
従来、自動車のボディパネルや構造部材には、主として冷延鋼板を使用することが多かったが、最近では、地球温暖化抑制の視点からCO排出量の削減が求められ、そのため車体軽量化の重要性が広く認識された結果、アルミニウム合金圧延板を使用することが多くなってきている。しかし、アルミニウム合金圧延板の成形加工性は、一般に冷延鋼板と比べて劣るため、その適用拡大の障害となっている。アルミニウム合金圧延板の成形加工性向上のためには、素材自体の特性改善が必要であるが、これには限界があるために、成形方法の工夫による成形加工性の改善が必要になっている。
自動車のボディパネルや構造部材用のアルミニウム合金としては、成形性と耐食性のバランスに比較的優れているAl−Mg系合金かAl−Mg−Si系合金が用いられている。特に最近では、自動車の製造工程のうちの塗装焼付処理時の加熱によって時効硬化することにより、部材としての強度を高めることができる時効硬化型のアルミニウム合金であるAl−Mg−Si系合金が用いられることが増加している。また、自動車のリサイクルのしやすさの理由からも、自動車に用いられるアルミニウム合金種がAl−Mg−Si系合金に統一される動きもある。
このAl−Mg−Si系合金圧延板のプレス成形加工は、通常の冷延鋼板のプレス成形加工と同様に、冷間プレス成形によって行われる。以下の特許文献1〜6には、成形時の温度を高めることによって、材料の高温での延性増加を利用するなどして成形性を高める温間成形に関する技術が開示されている。なお、明確な定義はなされていないが、アルミニウム合金一般の融点が500℃後半〜600℃台であることによって、一般的には、これより若干低い400℃台から500℃台の温度域で行われる成形は熱間成形と呼ばれ、これよりさらに低い100℃台から300℃台の温度域で行われる成形は温間成形と呼ばれことが多い。
特許文献1は、Al−Mg−Si系合金圧延板の温間成形技術に関するものである。この文献には、温間成形時にしわ押さえによって挟持されるフランジ部が加熱される温度、時間条件および成形に用いるパンチの温度条件とそのパンチを用いて行う成形の時間条件を規定して、成形性を高めると同時に優れた塗装焼付硬化(ベークハード)性を付与することにより、高い強度の成形部材を得ることが可能な技術が開示されている。
また、特許文献2〜4は、同じくAl−Mg−Si系合金圧延板の温間成形に関するものである。これらの特許文献には、素材の合金成分を最適化することや、素材の製造プロセスを最適化することにより、材料のミクロ組織や集合組織を最適化して、素材自体の温間成形性を高めることによって、複雑形状の部材を温間成形により製造できる技術が開示されている。さらに、特許文献5、6には、温間成形用素材のAl−Mg−Si系合金の製造プロセスの最終工程である溶体化処理後の予備時効処理条件を最適化し、かつ温間成形時のフランジ部分の温度とパンチの温度を異なる温度域に最適化して、高強度の温間成形品を得ることができる技術が開示されている。
特開2006−205244号公報 特開2008−19483号公報 特開2008−266684号公報 特開2009−7617号公報 特開2009−148822号公報 特開2009−149981号公報
以上のように、従来のAl−Mg−Si系合金圧延板の温間成形技術によれば、成形性を高めると同時に、Al−Mg−Si系合金が有する塗装焼付硬化性を活用して、特に自動車の製造プロセスの一工程である塗装焼付処理後に人工時効することにより、高強度の成形部材を得ることが可能であった。しかしながら、これらの従来技術では、いずれの場合も、温間成形による絞り性向上を目的として、ブランクのうちのフランジ部を、パンチがあたる領域に比べて高温に制御している。このため、成形品内での強度分布を評価すると、フランジ部とそれ以外の領域で強度が異なり、必ずしも成形品全体において高強度を保証することができなかった。よって、成形品内で強度の低い部分の材料強度をその部材の代表値として保証した場合、成形品は十分に高い強度を有しているとはいえないという課題があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、全体として高い強度を有する成形品、または最適な強度分布を有する成形品を得ることができるAl−Mg−Si系合金圧延板の温間成形方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前述の課題を解決するべく種々の実験、検討を重ねた結果、温間成形後の塗装焼付処理工程において、成形品全体で効果的に人工時効が進み、結果として成形品全体にわたって高強度の部材を得るためには、次の(1)、(2)が重要であることを見出した。即ち、(1)まず温間成形の素材となるAl−Mg−Si系合金圧延板の製造プロセスの最終段階である溶体化処理後に予備時効処理を所定の温度、時間条件範囲内で行って、まず素材の状態で、高い塗装焼付硬化性を付与しておくこと、(2)さらにこの予備時効処理に加えて、これを素材として引き続き行う一連の温間成形プロセスにおいて、ブランク全体として最適化された温度、時間条件での加熱を行うことにより、温間成形に引き続いて行われる塗装焼付処理によって成形品全体で効果的に人工時効硬化が進み、結果として成形品全体として高強度の部材を得ることができ、また結果として達しうる強度レベルも従来の温間成形および冷間成形を超えることを見出した。
また、予め成形品の最適な強度設計を行い、成形品のうち高い強度が必要な部分を特定しておく場合には、一連の温間成形プロセスにおいて、ブランク内の特定の部分について、最適化された温度、時間条件で加熱を行うことにより、結果として最適な強度分布の成形品が得られることを見出した。
本発明はこれらの知見に基づいてなされたものである。即ち、本発明のAl−Mg−Si系合金圧延板の温間成形方法は、Mass%で、Mg0.4〜0.8%、Si0.6〜1.2%を含有し、かつFe0.03〜0.3%、Mn0.03〜0.3%、Cr0.01〜0.1%、Ti0.005〜0.3%、Zn0.03〜0.3%のうち選ばれた1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金鋳塊に対して所定の板厚まで圧延加工を施した後、溶体化処理を行い、さらに急冷した後に、60〜130℃の温度範囲で0.5〜12時間保持する予備時効処理を施したアルミニウム合金圧延板を素材とし、該アルミニウム合金圧延板に温間成形を施すAl−Mg−Si系合金圧延板の温間成形方法であって、前記温間成形を施す一連の工程の間のいずれかのタイミングにおいて前記素材を230〜300℃の温度範囲に5分間以下保持し、前記温間成形終了後に塗装焼付処理を170〜185℃の温度範囲で保持する条件で行い、得られるAl−Mg−Si系合金圧延板の耐力値を250Mpa以上とすることを特徴とする。
本発明のAl−Mg−Si系合金圧延板の温間成形方法によれば、成形品全体として高い強度を有するか、または最適な強度分布を有する成形品を得ることができる。
本発明の実施形態における製造方法の一例を示すフローチャート。 実施例で使用するサンプルの概略図であり、(a)はブランクシートの形状、(b)は金型形状。 実施例で使用する予備加熱処理装置の模式図。 実施例で使用する温間成形機の断面模式図。 実施例で作成した温間成形品の斜視図。
以下、本発明に係るAl−Mg−Si系合金圧延板の温間成形方法について詳細に説明する。
本発明で素材として使用する温間成形に用いるアルミニウム合金板は、基本的には、Al−Mg−Si系合金圧延板である。そこでまず、本発明で使用するAl−Mg−Si系合金圧延板の合金組成について説明する。
[アルミニウム合金圧延板の合金組成]
アルミニウム合金圧延板としては、以下の範囲の化学成分の合金とする。すなわち、Mg0.4〜0.8%、Si0.6〜1.2%を含有し、かつFe0.03〜0.3%、Mn0.03〜0.3%、Cr0.01〜0.1%、Ti0.005〜0.3%、Zn0.03〜0.3%のうち選ばれた1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金を素材とする。
以下に素材合金の成分組成の限定理由について説明する。
(Mg)
Mgは本発明で対象としているAl−Mg−Si系合金において基本となる合金元素であって、塗装焼付処理時にSiとともにβ”析出相を形成することにより強度向上に寄与する。Mg量が0.4%未満では塗装焼付処理時に析出硬化によって強度向上に寄与するβ”相の生成密度が極端に低下するため、充分な強度向上が得られない。一方、0.8%を超えれば、粗大なMg−Si系の金属間化合物が生成され、成形性が大幅に低下してしまう。よってMg量は0.4〜0.8%の範囲内とした。
(Si)
Siも本発明で対象としているAl−Mg−Si系合金において基本となる合金元素であって、塗装焼付処理時にMgとともにβ’析出相を形成することにより強度向上に寄与する。Si量が0.6%未満では上記の効果が充分に得られない。一方、1.2%を超えれば粗大なSi粒子や粗大なMg−Si系の金属間化合物が生じて、成形性が大幅に低下してしまう。したがってSi量は0.6〜1.2%の範囲内とした。
以上のMgおよびSiが、Al−Mg−Si系アルミニウム合金として基本となる合金元素であるが、それ以外にFe0.03〜0.3%、Mn0.03〜0.3%、Cr0.01〜0.1%、Ti0.005〜0.3%、Zn0.03〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有させることとする。これらの添加理由およびその添加量限定理由はつぎの通りである。
(Ti)
Tiは鋳塊組織の微細化による強度向上や防食に有効な元素である。Tiの含有量が0.005%未満では充分な効果が得られない。一方、0.3%を超えればTi添加による鋳塊組織微細化と防食の効果が飽和する。したがってTiは0.005〜0.3%の範囲内とした。
(Mn、Cr)
これらの元素は、強度向上や結晶粒微細化に有効である。Mnの含有量が0.03%未満、もしくはCrの含有量がそれぞれ0.01%未満では、上記の効果が充分に得られない。一方、Mnの含有量が0.3%を越えるか、あるいはCrの含有量がそれぞれ0.1%を超えれば、上記の効果が飽和するばかりでなく、多数の金属間化合物が生成されて成形性に悪影響を及ぼすおそれがある。したがってMnは0.03〜0.3%の範囲内、Cr、は0.01〜0.1%の範囲内とした。
(Fe)
Feは、一般のアルミニウム合金において通常は0.03%未満は不可避的不純物として含有される。一方、Feは強度向上と結晶粒微細化に有効な元素であり、これらの効果を発揮させるためにFeを0.03%以上積極的に添加しても良い。但し、その含有量が0.03%未満では充分な効果が得られない。一方0.3%を超えれば、成形性が低下するおそれがある。したがってFeを積極的に添加する場合のFe量は0.03〜0.3%の範囲内とした。
(Zn)
Znは、時効性向上を通じて強度向上に寄与するとともに表面処理性の向上に有効な元素である。Znの添加量が0.03%未満では上記の効果が充分に得られない。一方0.3%を超えれば成形性と耐食性が低下する。したがってZn量は0.03〜0.3%の範囲内とした。
また、一般のAl合金においては、鋳塊組織の微細化のために前述のTiと同時にBを添加することもあり、BをTiとともに添加することによって、鋳塊組織の微細化と安定化の効果が一層顕著となる。そして本発明の場合、Tiとともに500ppm以下のBを添加することは許容される。
(不可避的不純物)
以上の各元素のほか、地金や中間合金に含まれているものは基本的にはAlおよび不可避的不純物であり、本発明の効果を妨げるものではないため、このような不可避的不純物の含有も許容される。
[温間成形用アルミニウム合金圧延板素材の製造方法]
次に、温間成形用アルミニウム合金圧延板素材の製造方法について説明すれば、基本的には、アルミニウム合金製造業で通常一般に採用されている方法により製造することが可能である。
図1に、本実施形態の製造方法の一例を示す。温間成形用アルミニウム合金圧延板素材は、鋳造工程(S11)、均質化処理工程(S12)、熱間圧延工程(S13)、冷間圧延工程(S14)、溶体化処理工程(S15)、予備時効処理工程(S16)を経て製造される。以下、項目毎に分けて説明する。
(鋳造工程:S11)
所定の成分に溶解調整されたアルミニウム合金溶湯を、通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。ここで通常の溶解鋳造法としては、例えば半連続鋳造法(DC鋳造法)や薄板連続鋳造法(ロールキャスト法等)などを含む。
(均質化処理工程:S12)
次いで、このアルミニウム合金鋳塊に480℃以上の温度で均質化処理を施す。均質化処理は、溶湯凝固時の合金元素のミクロ偏析を緩和し、併せてMn、Crをはじめとする各種の遷移元素を含む場合には、これらを主成分とする金属間化合物の分散粒子を、マトリクス中に均一かつ高密度に析出させるために必要な工程である。均質化処理の加熱時間は、通常は1時間以上とし、また経済的な理由から48時間以内に終了させるのが通常である。但し、この均質化処理における加熱温度は、熱延前に熱延開始温度まで加熱する加熱処理温度に近いことから、熱延前加熱処理を兼ねて均質化処理を行なうことも可能である。
(熱間圧延工程:S13、冷間圧延工程:S14)
この均質化処理工程の前もしくは後に適宜面削を施した後、300〜590℃程度の温度範囲内で熱間圧延を開始し、その後冷間圧延を施すことにより、所定の板厚のアルミニウム合金板を製造する。熱間圧延の途中、熱間圧延と冷間圧延の途中または冷間圧延の途中において、必要に応じて中間焼鈍や溶体化処理を行っても良い。
このようにして所定の板厚まで圧延された冷間圧延板には、最終的に溶体化処理を行い、その後予備時効処理を行う。各工程は、具体的には以下のようにして行う。
(溶体化処理工程:S15)
溶体化処理は、冷間圧延板に存在するMgSi、単体Si等をマトリックスに固溶させるための工程であり、通常は冷延板を480℃以上の高温に加熱して行う。溶体化処理温度が590℃を超えると共晶融解が生じる恐れがあるため通常は590℃以下とし、加熱温度に到達後、保持なしもしくは5分以下の短時間保持の後、130℃以下の温度まで急冷する。このような溶体化処理は、コイル状に巻き取った冷間圧延板を、加熱帯と冷却帯を有する連続焼鈍炉に連続的に通過させることによって、効率的に行うことができる。
このような連続焼鈍炉による処理では、アルミニウム合金板は加熱帯を通過する際に480℃以上、590℃以下の高温に昇温され、その後冷却帯を通過する際に急冷される。このような一連の処理により、本発明で対象とする合金の主要合金元素であるMgとSiは、高温で一旦マトリクス中に固溶し、続いて130℃以下の温度範囲に急冷することによって、MgとSiがマトリクス中に過飽和に固溶した状態とすることが出来る。
溶体化処理の加熱温度が480℃未満の場合は、MgとSiの固溶が十分に進まず、結果として最終的な温間成形品において十分な高強度を得ることが出来ない。また、溶体化処理後の急冷時の冷却速度は、50℃/min以上が好ましい。冷却速度が50℃/min未満の場合は、溶体化処理時に一旦固溶していたMg、Siの一部が、冷却途中に再度析出してしまい、Mg、Siの固溶量が減少し、結果として最終的な温間成形品において十分な高強度を得ることが出来ない。
(予備時効処理工程:S16)
以上のように溶体化処理後に130℃以下の温度まで急冷した後、引き続いて予備時効処理を行う。予備時効処理は、アルミニウム合金圧延板を60〜130℃の温度範囲で、0.5〜24hr保持する条件で行う。この予備時効処理によって、前述の溶体化処理後の急冷時に、マトリクス中に過飽和に固溶されたMgとSi原子が、高温クラスタと呼ばれる原子の集合体をマトリクス中に形成する。この高温クラスタは、引き続き行われる温間成形時の加熱および塗装焼付処理時の加熱の際に、時効硬化に寄与するβ”と呼ばれる析出相に効率的に遷移する性質を有するため、塗装焼付処理後の成形品の強度を高める役割を果たす。
予備時効処理温度が、60℃未満では、このような高温クラスタが形成されず、代わりに低温クラスタと呼ばれる異なるクラスタが形成される。この低温クラスタは、塗装焼付処理時の加熱の際に、時効硬化に寄与するβ”析出相に遷移せず、結果として塗装焼付処理後の成形品で高い強度が得られない。予備時効処理温度が130℃を超えると、予備時効処理中にβ”析出相が生成して、材料の延性が大幅に低下して、温間成形時にプレス割れが生じてしまう。また、予備時効処理時間が0.5時間未満の場合は、形成される高温クラスタの数密度が不十分であり、結果として塗装焼付処理後の成形品で高い強度が得られない。予備時効処理時間が24時間を超える場合は、長時間の処理中に高温クラスタの一部がβ”に遷移してしまい、材料の延性が大幅に低下して、温間成形時にプレス割れが生じてしまう。
[温間成形方法]
次に、本発明における最も重要な特徴部分である温間成形方法について説明する。この温間成形方法は、図1のフローチャートでは、温間成形工程(S17)が該当する。
(温間成形工程:S17)
本発明における最も重要な特徴は、上記のような適切な条件で予備時効処理を行ったAl−Mg−Si系合金圧延板を素材とするブランクを用いて行う温間成形の一連の工程において、ブランク全体、または特定された部分を230〜300℃の温度範囲に5分間以下の時間保持されるように、ブランクの温度条件を制御することである。これにより、温間成形終了後に塗装焼付処理を行うことによって、温間成形品全体の強度、または高強度が必要な特定の部位における強度を高めることができる。
温間成形時にブランクをこの温度条件で制御する理由を以下に示す。通常上記の素材の予備時効処理は、素材の製造工程の最終段階の工程として、アルミニウム合金圧延板製造メーカーで行われ、その後素材が自動車メーカーに出荷されて、自動車メーカーで素材からブランクを切出して、温間成形が行われる。素材がアルミニウム合金圧延板製造メーカーから出荷され、自動車メーカーで温間成形が行われるまでには、通常1ヶ月以上の期間を要するが、その期間中において、Al−Mg−Si系合金圧延板は常温時効を生じて、素材の強度が徐々に若干であるが高くなるという変化が生じる。
その常温時効中において、Al−Mg−Si系合金板素材のマトリクス中では、前述の低温クラスタが生成している。この低温クラスタは、温間成形後に行われる塗装焼付処理の温度(通常、170〜185℃であり、本発明では180℃を代表的な温度条件とした)では、変化せずに安定な状態を保つ。
低温クラスタの形成は、強度上昇に寄与するものの、その寄与の効率は、同量のMg、Siよりなるβ”析出相に比べて大幅に低い。このため、Al−Mg−Si系合金圧延板の常温時効中に低温クラスタが生成して、そのまま残存した状態で温間成形品に塗装焼付処理を行っても、十分に高い強度が得られない。これに対して、本発明で規定するように、温間成形の一連の工程においてブランクが230〜300℃の温度範囲に5分以間以下保持された場合は、この温度範囲での加熱によって、素材の常温時効中に形成されていた低温クラスタが直ちに溶解して、マトリクス中に再固溶するとともに、その後直ちに高温クラスタが追加的に形成される。このような場合、温間成形後に塗装焼付処理を行うと、素材の製造工程の最終段階の予備時効処理で形成された高温クラスタがβ”に遷移する際に、低温クラスタが再固溶したマトリクス中のMg、Si原子が、効率的にβ”の遷移・成長に消費され、効率的に時効硬化が進み、結果として塗装焼付処理後の温間成形品の強度が大幅に向上すると推察される。
温間成形の一連の工程におけるブランクの加熱が、230℃未満の場合は、前述のように、この処理による低温クラスタの再溶解が生じずに、温間成形後も低温クラスタが残存するため、結果として塗装焼付処理後の成形品で十分に高い強度が得られない。また、温間成形の一連の工程におけるブランク全体の加熱が300℃を超える場合は、この処理によって低温クラスタの溶解は生じるが、処理温度が高いために高温クラスタからβ’析出相の形成が生じる。β’析出相は、β”析出相に比較して、粗大でかつ分布密度が小さいために、析出による硬化効率が大幅に低い。このため、結果として塗装焼付処理後の成形品で十分に高い強度が得られない。
温間成形の一連の工程におけるブランク全体の加熱の時間の下限については、実質的に保持時間を取らない0秒以上であれば良い。これは、Al−Mg−Si系合金圧延板の常温時効で生じる低温クラスタであれば、230℃以上の加熱によって、ほぼ瞬時に溶解して再固溶するためである。一方で、加熱時間の上限は5分間以下とする必要がある。これは、230℃以上300℃以下の温度範囲において、5分間を超えて加熱を行うと、高温クラスタがβ”に遷移して、さらにβ”が過度に成長することにより素材の延性が大幅に低下することによって、温間成形時にプレス割れが発生するためである。
上記の温間成形の一連の工程におけるブランク全体の具体的な実施形態については、温間成形の前の予備加熱として実施することと、温間成形の最中に実施することの、大別して2つのパターンが考えられる。基本的には温間成形の一連の工程のどのタイミングであっても、ブランク全体が所定の温度、時間条件にて加熱処理が行われていれば、温間成形終了後の塗装焼付処理によって、成形品全体にわたって高い強度を得ることが出来る。以下にこの2パターンのブランクの加熱方法について述べる。
(温間成形前の予備加熱として実施する方法)
まず、ブランクの加熱を温間成形前の予備加熱として実施する方法について述べる。この方法では、温間成形機とは別のブランク予備加熱装置を用いて、この予備加熱装置で、ブランク全体を所定の温度、時間条件で加熱した後、ブランクを温間成形機にセットして、温間成形を行う。予備加熱装置のブランク加熱の方式は、加熱した2組の金型でブランクを挟持して加熱する接触方式であっても良いし、熱風吹きつけや赤外線加熱照射等の非接触の方式であっても良い。また、加熱温度が所定の温度範囲であれば、例えばその後の温間成形においてシワ押さえに挟持されるべき領域を比較的高温に設定し、温間成形においてパンチが当たるべき領域を比較的低温に設定しても良い。
このように、予備加熱としてブランク全体において所定の条件で加熱を行った後、ブランクを温間成形機にセットして温間成形を行うが、この温間成形時におけるブランクの温度条件については、特に制約を設けるものでないが、温間成形での絞り成形性向上を図る目的で、しわ押さえに挟持される領域は比較的高温とし、パンチが接触する領域は比較的低温とすることが好ましい。但し、予備加熱での温度時間条件での上限の設定理由と同様に、温間成形において300℃を超える加熱であったり、230〜300℃の温度範囲での5分間を超える加熱であったりすると、素材の延性が大幅に低下して温間成形時にプレス割れを生じるので、これらの条件での温間成形は避けるべきである。
(温間成形の最中に実施する方法)
次に、ブランクの加熱を、温間成形の最中に実施する方法について述べる。この場合、予備加熱されていない室温のブランクを温間成形機にセットした後、温間成形機での温間成形の最中にブランク全体を所定の温度、時間条件で加熱する必要があるので、用いる温間成形機は、そのしわ押さえ部とパンチ部の両方またはいずれかに加熱機構を具備していなければならない。具体的には、そのしわ押さえ部とパンチ部の金型を加熱するためのヒーターを据え付けるなどして、加熱機構を付与する。
このような温間成形機を用いてブランクを温間成形する最中において、ブランク全体が所定の温度条件に加熱されるように、しわ押さえ部とパンチ部の温度条件およびしわ押さえによりブランクを保持する時間、パンチによりブランクを成形する際のパンチとブランクが接触する時間を適宜設定して行う。ここで、ブランクのうちしわ押さえに接触する領域の温度と、ブランクのうちパンチと接触する領域の温度は、各々が230〜300℃の温度範囲内であれば良く、両者で異なっていても良い。特に、温間成形によって絞り成形性を高めることを目的とする場合には、しわ押さえによって挟持される領域の温度を比較的高く設定し、パンチが接触する領域の温度を比較的低温に設定しておくことが好ましいが、異なる目的によって、これと逆の温度設定とした場合も、塗装焼付処理後の成形品全体の強度を高めるという本発明が目的とする効果は達せられる。
(塗装焼付処理工程:S18)
上述のように温間成形を行った後、塗装焼付処理を行う。温間成形後に塗装焼付処理を行うまでの期間については、自動車の生産プロセスでは通常、2週間以内に行われる。本発明ではこの期間について特に規定を設けるわけではないが、温間成形時の加熱処理によって低温クラスタを一旦溶解させたが、その後の室温保持中に再度徐々に生成するので、なるべく1ヶ月以内に行うのが好ましい。塗装焼付処理の条件は、通常170〜185℃の温度範囲で数十分保持する条件で行なわれる。前述の通り、Al−Mg−Si系合金圧延板をこの塗装焼付処理の温度条件範囲で保持すると、高温クラスタがβ”に遷移して、強度が上昇する時効硬化を示す。
本発明の範囲で規定する条件で予備時効処理を行い、高温クラスタを適切に生成させた素材をブランクとし、なおかつ温間成形時にブランクを適切な条件で加熱することによって、低温クラスタを溶解させた後に、塗装焼付処理を行うことにより、非常に効率的にβ”をマトリクス中に高密度に生成させることができ、その結果、成形として非常に高い強度を得ることが出来るのである。本発明では、上述した合金成分のAl−Mg−Si系合金を素材とした場合に、塗装焼付処理として180℃にて60分間保持する条件を代表として選択すると、塗装焼付処理後に温間成形品全体にわたって耐力値で250MPa以上の高強度が得られる。
(本実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、温間成形の素材とするAl−Mg−Si系合金圧延板の製造工程の最終段階における予備時効処理条件を最適化して、まず素材自体の塗装焼付硬化性を高めておき、かつ引き続きこのAl−Mg−Si系合金圧延板をブランク素材として行う一連の温間成形プロセスにおいて、このブランク全体または特定された部分について、最適化した加熱温度、時間条件で保持する。これにより、その後に行なわれる塗装焼付処理によって、時効硬化が進んで、結果として成形品全体として高い強度を有する成形品を得ることができるか、または最適な強度分布を有する成形品を得ることができる。
より具体的には、このような最適化された条件で温間成形を行った後に、塗装焼付処理を180℃で60分間保持する条件で行った場合に、処理後の成形品の強度が、全体にわたって耐力値で250MPa以上であるか、または高強度が必要な特定の部位における強度が耐力値で250MPa以上の成形品を得ることができる。
以下にこの発明の実施例を比較例とともに記す。なお以下の実施例は、本発明の効果を説明するためのものであり、実施例記載のプロセスおよび条件がこの発明の技術的範囲を制限するものではない。
[実施例1]
アルミニウム合金を溶解して成分調整を行なった後、DC鋳造法により鋳造することにより、表1の合金No.1〜No.9に示す化学成分のアルミニウム合金鋳塊を作製した。各鋳塊について、面削を行った後、530℃で10時間保持する均熱処理を兼ねた加熱処理を行った後、熱間圧延を行って厚さ4mmの熱間圧延板を作製した。その後さらに冷間圧延を行って、厚さ1mmの冷間圧延板を作製した。これらの冷間圧延板について、530℃にて30秒間保持する溶体化処理を行った後、150℃/minの冷却速度で100℃まで冷却した後、引き続き表2に示す条件で予備時効処理を行った。
Figure 0006429519
(*)は、本発明で規定する範囲外であることを示す
Figure 0006429519
(*)は、本発明で規定する範囲外であることを示す
以上のように作製したAl−Mg−Si系合金圧延板素材について、アルミニウム合金圧延材製造メーカーから出荷して、自動車製造メーカーで使用されるまでの通常の期間を想定して、60日間常温で保持した後、以下で詳細を示す一連の温間成形の工程(温間成形前予備加熱処理後に温間成形)にて温間成形を行った。
まず、Al−Mg−Si系合金圧延板素材より、図2(a)に形状を示すような1mm(厚)×300mm×420mmサイズのブランクを作製した。このブランクについて、まず図3に示すような温間成形前の予備加熱処理装置により、ブランク全体の予備加熱処理を行った。予備加熱処理装置は、加熱ヒーターを内蔵する上下の金型から成り、ブランクをこの金型の間にセットした後、上下の金型で挟んで接触加圧することによって、ブランクを所定の温度、時間条件で加熱できる機構となっている。ブランク全体の予備加熱処理を行った後、直ちに温間成形機にブランクをセットして、温間成形を行った。温間成形では、図2(b)に模式図を示すような金型形状(上面図)を用いて、高さ45mmの角筒成形品を作製した。用いた温間成形機は、図4に示すように、そのしわ押さえ部とパンチ部の金型内に金型を加熱するためのヒーターが内蔵されており、各部の温度を制御することができるように構成されている。また、しわ押さえ部とパンチ部には、接触式温度計を具備しており、温間成形時のブランクの各部の温度を測定することができるようになっている。
この予備加熱処理装置を用いて行った予備加熱処理の条件を表2に示した。また、表2に、温間成形を行った際に、パンチが下死点に達した際のブランク各部の測定温度を示した。さらに、パンチを下死点で保持した時間についても表2に示した。温間成形後、直ちに温間成形機より成形品を取り出して、ファン空冷により室温まで冷却して、予備加熱から始まった一連の温間成形を終了した。
その後温間成形品を室温で10日間保持後に、温間成形品に対して、塗装焼付処理を模擬して180℃で60分間保持する熱処理を行った後、ファン空冷により室温まで冷却した。次に、図5に示すような温間成形品のしわ押さえで挟持されていた領域およびパンチ頭部が接触していた領域の各々から引張試験片(JIS5号試験片形状)を採取して引張試験を行い、機械的特性(引張強さ、耐力、伸び)を調べて結果を表3に示した。
Figure 0006429519
条件1〜4は、この発明で規定する成分組成範囲内の合金1について、表2に示すようなこの発明の範囲内のプロセス条件にて、素材の溶体化処理、急冷後の予備時効処理、および温間成形前予備加熱処理を行ったものである。そのためいずれの場合も、温間成形を問題なく行うことができ、また、温間成形の後に塗装焼付処理模擬熱処理を行った後の材料強度が十分に高く、耐力値では250MPaを超えている。
これに対し条件5は、同様に合金1についてのものであるが、素材の溶体化処理、急冷後の予備時効処理の温度条件が、本発明の範囲よりも低い。このため、温間成形の後に塗装焼付処理模擬熱処理を行った後の材料強度が、本発明の範囲の条件1〜4の場合に比べて明瞭に低く、また耐力値では、温間成形品のいずれの部分でも250MPa未満である。
条件6は、同様に合金1についてのものであるが、素材の溶体化処理、急冷後の予備時効処理の温度条件が、本発明の範囲よりも高い。このため材料の延性が大幅に低下して、温間成形時にプレス割れが生じて、温間成形が不可であった。またこのため、温間成形品の強度評価も実施できなかった。
条件7は、同様に合金1についてものであるが、素材の溶体化処理、急冷後の予備事項処理の時間が、本発明の範囲よりも短い。このため、温間成形の後に塗装焼付処理模擬熱処理を行った後の材料強度が、本発明の範囲の条件1〜4の場合に比べて明瞭に低く、また耐力値では、温間成形品のいずれの部分でも250MPa未満である。
条件8は、同様に合金1についてのものであるが、素材の溶体化処理、急冷後の予備時効処理の時間が、本発明の範囲よりも長い。このため、材料の延性が大幅に低下して、温間成形時にプレス割れが生じて、温間成形が不可であった。またこのため、温間成形品の強度評価も実施できなかった。
条件9は、温間成形前予備加熱処理条件の温度条件が、本発明の範囲よりも低い。このため、温間成形の後に塗装焼付処理模擬熱処理を行った後の材料強度が、本発明の範囲の条件1〜4の場合に比べて明瞭に低く、また耐力値では、温間成形品のいずれの部分でも250MPa未満である。
条件10は、温間成形前予備加熱処理の温度条件が、本発明の範囲よりも高い。このため、温間成形の後に塗装焼付処理模擬熱処理を行った後の材料強度が、本発明の範囲の条件1〜4の場合に比べて明瞭に低く、また耐力値では、温間成形品のいずれの部分でも250MPa未満である。
条件11は、温間成形前予備加熱処理の時間条件が、本発明の範囲よりも長い。このため、材料の延性が大幅に低下して、温間成形時にプレス割れが生じて、温間成形が不可であった。またこのため、温間成形品の強度評価も実施できなかった。
条件12〜16は、本発明で規定する範囲の合金2〜5について、本発明で規定した範囲内のプロセス条件にて、素材の溶体化処理、急冷後の予備時効処理、および温間成形前予備加熱処理を行ったものである。そのためいずれの場合も、温間成形を問題なく行うことができ、また、温間成形の後に塗装焼付処理模擬熱処理を行った後の材料強度が十分に高く、耐力値では250MPaを超えている。
条件17〜20は、本発明で規定する範囲外の合金6〜9について、本発明で規定した範囲内のプロセス条件にて、素材の溶体化処理、急冷後の予備時効処理、および温間成形前予備加熱処理を行ったものである。そのため、条件17、18では温間成形の後に塗装焼付処理模擬熱処理を行った後の材料強度が、本発明の範囲の条件1〜4に比べて低めであり、また耐力値では、温間成形品のいずれの部分でも250MPa未満であった。また、条件19、20では、材料の延性が大幅に低いために、温間成形時にプレス割れが生じて温間成形が不可であり、またこのため温間成形品の強度評価も実施できなかった。
[実施例2]
表1に合金成分を示す合金No.3の鋳塊について、実施例1と同じ条件で、加熱処理、熱間圧延、冷間圧延、溶体化処理、急冷を行った後、予備時効処理を本発明の条件の範囲内である90℃の温度で4時間保持する条件で行って作製した板厚1mmのAl−Mg−Si系合金圧延板を素材として、以下で詳述する条件で温間成形および温間成形品の評価を行った。
即ち、以上のように作製したAl−Mg−Si系合金圧延板素材について、アルミニウム合金圧材製造メーカーから出荷して、自動車製造メーカーで使用されるまでの通常の期間を想定して、45日間常温で保持した後、まずAl−Mg−Si系合金圧延板素材より、図2(a)に形状を示すような1mm(厚)×300mm×420mmサイズのブランクを作製した。このブランクについて、図3に示すような温間成形前の予備加熱処理装置により予備加熱をおこなってからか、若しくは、このような予備加熱を行わずに直接、図4に示す温間成形機にブランクをセットして、温間成形を行った。
温間成形では、図2(b)に模式図を示すような金型形状(上面図)を用いて、高さ45mmの角筒成形品を作製した。また、温間成形機は、上述したように、図4に示す構造のものを用いた。
表4に、温間成形前の予備加熱処理の条件、および温間成形を行った際に、パンチが下死点に達した際のブランク各部の測定温度を示した。また、パンチを下死点で保持することにより、各部の所定温度での保持時間を制御し、その際の保持時間を同じく表4に示した。温間成形後、直ちに温間成形機より成形品を取り出して、ファン空冷により室温まで冷却することにより、温間成形を終了した。
Figure 0006429519
その後温間成形品を室温で7日間保持後に、温間成形品に対して、塗装焼付処理を模擬して180℃で60分間保持する熱処理を行った後、ファン空冷により室温まで冷却した。図5に示すように、この温間成形品のしわ押さえで挟持されていた領域およびパンチ頭部が接触していた領域の各々から引張試験片(JIS5号試験片形状)を採取して、引張試験を行って、機械的特性(引張強さ、耐力、伸び)を調べて結果を表5に示した。
Figure 0006429519
条件21〜24は、この発明で規定する成分組成範囲内の合金3について、表4に示すように、温間成形前の予備加熱処理は行わずに、この発明の範囲内のプロセス条件にて温間成形の最中におけるブランクの熱処理を行っている。そのためいずれの場合も、温間成形の後に塗装焼付処理模擬熱処理を行った後の材料強度が十分に高く、耐力値では250MPaを超えている。また、条件25は、温間成形前の予備加熱処理は、本発明の範囲外の条件で行っているが、その後の温間成形の最中におけるブランクの熱処理については、本発明の範囲内の条件で行っている。このため、温間成形の後に塗装焼付処理模擬熱処理を行った後の強度が十分に高く、耐力値では250MPaを超えている。
これに対して条件26、27は、温間成形前の予備加熱処理は行わずに、この発明の範囲外のプロセス条件にて、温間成形の最中におけるブランクの熱処理を行っている。そのため、いずれの場合も温間成形の後に塗装焼付処理模擬熱処理を行った後の材料強度が、本発明の範囲の条件21〜24に比べて明瞭に低く、また耐力値では、温間成形品のいずれの部分でも250MPa未満である。
一方、条件28、29は、温間成形前の予備加熱処理は行わずに、温間成形の最中におけるブランクの熱処理について、パンチ部については230〜300℃の温度範囲における5分間以下の保持条件となっており、しわ押さえ部についてはこの範囲外の保持条件となっている。従って、温間成形後の塗装焼付処理模擬熱処理後の材料強度は、パンチが接触した領域では耐力値が250MPa以上の高い値となっているのに対して、しわ押さえで挟持されていた領域では耐力値が250MPa未満の低い値となっている。ある用途においては、成形品のうちパンチが接触する領域は、しわ押さえで挟持されていた領域に比較して、高い耐力値が必要となる設計もあり(例えば、成形品の平頭部では、周辺の部分に比較して高い耐デント性が必要となる設計の場合)、ここで得られた成形品は、成形品全体として必要な強度条件を満たしている発明例となる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。

Claims (6)

  1. Mass%で、Mg0.4〜0.8%、Si0.6〜1.2%を含有し、かつFe0.03〜0.3%、Mn0.03〜0.3%、Cr0.01〜0.1%、Ti0.005〜0.3%、Zn0.03〜0.3%のうち選ばれた1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金鋳塊に対して所定の板厚まで圧延加工を施した後、溶体化処理を行い、さらに急冷した後に、60〜130℃の温度範囲で0.5〜12時間保持する予備時効処理を施したアルミニウム合金圧延板を素材とし、該アルミニウム合金圧延板に温間成形を施すAl−Mg−Si系合金圧延板の温間成形方法であって、
    前記温間成形を施す一連の工程の間のいずれかのタイミングにおいて前記素材を230〜300℃の温度範囲に5分間以下保持し、前記温間成形終了後に塗装焼付処理を170〜185℃の温度範囲で保持する条件で行い、得られるAl−Mg−Si系合金圧延板の耐力値を250Mpa以上とすることを特徴とするAl−Mg−Si系合金圧延板の温間成形方法。
  2. 前記素材の230〜300℃の温度範囲における5分間以下の保持は、前記温間成形前の予備加熱として行うことを特徴とする請求項1記載のAl−Mg−Si系合金圧延板の温間成形方法。
  3. 前記素材の230〜300℃の温度範囲における5分間以下の保持は、前記温間成形の最中に行うことを特徴とする請求項1記載のAl−Mg−Si系合金圧延板の温間成形方法。
  4. 前記素材の全体を230〜300℃の温度範囲に5分以下保持することを特徴とする請求項1記載のAl−Mg−Si系合金圧延板の温間成形方法。
  5. 前記素材の一部分を230〜300℃の温度範囲に5分以下保持することを特徴とする請求項1記載のAl−Mg−Si系合金圧延板の温間成形方法。
  6. 前記塗装焼付処理を180℃にて60分間保持した条件で行なった場合に、前記温間成形時に230〜300℃の温度範囲に5分以下保持した部分の耐力値が250MPa以上であることを特徴とする請求項1記載のAl−Mg−Si系合金圧延板の温間成形方法。
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