JP5148896B2 - プレス成形に優れたアルミニウム合金板ブランク - Google Patents
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Description
本発明アルミニウム合金板ブランク(:成形素材、以下単にブランクとも言う)は、同じ一枚のブランク中に、0.2%耐力が150MPa以上、250MPa未満である硬質部と、プレス成形前に予め部分的に加熱された、0.2%耐力が60MPa以上、150MPa未満である軟質部とを有している。
上記ブランク硬質部は、常法によって製造され、調質された、元の素材板(圧延板)のままの部分であることが好ましい。言い換えると、上記ブランク硬質部の0.2%耐力は、常法によって製造され、調質された、元の素材板(圧延板)のままの0.2%耐力であることが好ましい。例えば、上記軟質部の側を、元の素材板(圧延板)の耐力のままの部分とすると、上記硬質部(硬質部の耐力)にするために、上記軟質部の低耐力から耐力を上昇させること(処理)は非常に難しく、実質的にはできない。
上記ブランク軟質部は、前記元の素材板(圧延板)の耐力のままの硬質部分を、プレス成形前に予め部分的に加熱して軟質させた部分(部分加熱部、局部加熱部)であることが好ましい。言い換えると、前記元の素材板(圧延板)の硬質部分の耐力を、プレス成形前に予め部分的に加熱して、耐力を低下させた軟質部とすることが好ましい。
ここで、前記硬質部と前記軟質部との0.2%耐力の差が50MPa以上、150MPa未満であることが好ましい。前記硬質部と前記軟質部との0.2%耐力の差が小さいと、硬質部か軟質部かのいずれかの単一の性質を有する、従来の均一な特性のブランクと大差なく、前記成形が困難なパネル部位の成形性が向上できない。一方、前記硬質部と前記軟質部との各々の0.2%耐力を前記した最適範囲内に納めるために、両者の0.2%耐力の差を必要以上に大きくする必要はない。
以上説明した0.2%耐力の他に、更に、伸びの観点から、前記硬質部と前記軟質部とに、特定量の伸びの差を設けることが好ましい。前記硬質部と前記軟質部とに0.2%耐力の差を設ければ、前記硬質部が比較的低く、前記軟質部が比較的高い、伸びの差を必然的に設けることになる。しかし、前記硬質部と前記軟質部との伸びの差(軟質部伸び−硬質部伸び)を特定量である、5%以上、25%未満とすることによって、よりプレス成形の向上を保証することができる。
本発明では、プレス成形用のブランクとして、常法で製造された、JISに規格化された、あるいはJIS規格に相当する乃至近似する、1000系、3000系、5000系、6000系などのアルミニウム合金板(圧延板)が使用できる。但し、前記したドア、トランクリッド、バックドア等の成形が困難な自動車パネルとして必要な、基本的な強度、成形性、耐食性などの諸特性を有するためには、Al−Mg−Si系である6000系あるいはAl−Mg系である5000系アルミニウム合金板とすることが好ましい。これら6000系あるいは5000系アルミニウム合金板の好ましい組成を以下に示す。
6000系Al合金板の成分組成は、自動車パネルとしての必要な上記基本的な諸特性を確保するために、質量%で、Mg:0.2〜2.5%、Si:0.3〜2.0%、Mn:0.01〜1.0%、Cu:0.001〜1.0%を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものとすることが好ましい。なお、本発明での化学成分組成の%表示は、前記請求項の%表示も含めて、全て質量%の意味である。
5000系Al合金板の成分組成は、自動車パネルとしての必要な上記基本的な諸特性を確保するために、質量%で、Mg:2.0〜6.0%を含み、更に、Fe、Mn、Cr、Zr及びCuの内から選ばれる一種また二種以上を合計で0.03〜2.5質量%含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなる化学成分組成とする。
これら記載元素以外の元素は基本的には不純物である。ただ、Al合金板のリサイクルの観点から、溶解材として、高純度Al地金だけではなく、5000系合金やその他のAl合金スクラップ材、低純度Al地金などを溶解原料として使用した場合には、これらの元素が混入される。そして、これら元素を例えば検出限界以下などに低減すること自体がコストアップとなり、ある程度の含有の許容が必要となる。したがって、本発明では、本発明の目的や効果を阻害しない範囲での記載元素以外の元素の含有を許容する。例えば、Si:0.5%以下、V:0.3%以下、Ti:0.5%以下、B:0.05%以下、Zn:0.5%以下の含有を各々許容する。
本発明では、ブランク用のアルミニウム合金板は、溶解・鋳造−均質化熱処理−熱間圧延−(中間焼鈍)−冷間圧延の工程を経て、自動車パネルとしての0.5mm〜2.0mm程度の板厚の板として製造される。この板は、次いでバッチ式あるいは連続式の焼鈍炉により、溶体化あるいは焼鈍などの熱処理(調質)を行い、アルミニウム合金板のコイルあるいはシートの状態とされる。自動車パネルにプレス成形されるブランクは、これらコイルあるいはシートの状態から、プレス製品(パネル)に適正な大きさのブランクにカットされて得られる。
そして、このブランクを、絞り成形(ドロー)、リストライク、ピアシング等の3〜4回のプレス工程を経て、前記したボンネット、ドア、トランクリッド、バックドア等の自動車パネルとして製品化(パネル化)する。
Claims (4)
- 深絞り成形によって自動車パネルとして製品化するプレス成形により成形されるアルミニウム合金ブランクであって、同じ一枚のアルミニウム合金板ブランク中に、0.2%耐力が150MPa以上、250MPa未満である硬質部と、プレス成形前に予め部分的にヒータにより加熱した後に水に焼入れする加熱を行った、0.2%耐力が60MPa以上、150MPa未満である軟質部とを有し、前記硬質部と前記軟質部との0.2%耐力の差が50MPa以上、150MPa未満であることを特徴とする、プレス成形に優れたアルミニウム合金板ブランク。
- 前記アルミニウム合金板ブランクにおいて、中央部を前記硬質部とし、周辺部を前記軟質部とした請求項1に記載のアルミニウム合金板ブランク。
- 前記硬質部と前記軟質部との伸びの差が5%以上、25%未満である請求項1または2に記載のアルミニウム合金板ブランク。
- 前記アルミニウム合金板ブランクが6000系か5000系アルミニウム合金組成からなる請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板ブランク。
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