JP2010227954A - アルミニウム合金板のプレス成形方法 - Google Patents

アルミニウム合金板のプレス成形方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 汎用のプレス成形機を用いて温間成形に匹敵する高い成形性と形状凍結性を得ることができ、しかも通常の冷間プレスと同等の高い生産性を確保できるようにしたAl合金板のプレス成形法を提供する。
【解決手段】 加工硬化もしくは時効硬化された状態にあるAl合金板からなるブランクについて、予めある領域を加熱部と定め、その加熱部以外の領域を非加熱部と定めて、非加熱部を除き加熱部を加熱する部分的加熱処理を施すことにより、加熱部で回復・再結晶もしくは時効析出物の固溶を生起させて加熱部を軟化させた直後、加熱部が非加熱部と同等の温度となるまで冷却される以前の段階で、ブランクをプレス成形機にセットし、加熱部の温度が非加熱部の温度よりも高い状態のままプレス成形を行なう。特にブランク板面のうち、プレス成形時にパンチ肩部が接触することになる領域より外側の部分の全部または一部を、部分的加熱処理における加熱部と定める。
【選択図】図1

Description

この発明は、アルミニウム合金板のプレス成形方法に関し、より具体的には、自動車、船舶、航空機等の各種部材・部品、あるいは建築材料、構造材料、そのほか各種機械器具、家電製品やその部品等、特に自動車ボディシート、ボディパネルの成形加工として適用されるアルミニウム合金板のプレス成形方法についてのものである。
従来自動車のボディシート、ボディパネルとしては、主として冷延鋼板を使用することが多かったが、最近では、地球温暖化抑制の視点からCO排出量の削減が求められ、そのため車体軽量化の重要性が広く認識された結果、アルミニウム合金圧延板を使用することが多くなっている。ところでアルミニウム合金圧延板の成形加工性は、一般に冷延鋼板と比べて劣るため、アルミニウム合金圧延板の使用拡大の障害となっている。アルミニウム合金圧延板の成形加工性向上のためには、素材自身の成形性改善と成形加工方法の工夫が強く求められている。
ところで既に特許文献1、2では、アルミニウム合金板の成形性を向上させるために温間深絞り成形法を適用することが提案されている。確かに温間成形法は、アルミニウム合金板の深絞り成形性を向上させることが可能であるが、大規模な工業生産を前提にすれば、いくつかの問題点がある。
すなわち温間深絞り成形法の特徴として、フランジ部を加熱すると同時にパンチ部の冷却をした状態のままで深絞り成形を行なうことが求められ、そのため、
1.プレス機にセットしたアルミニウム合金ブランクを成形する最中においては、シワ押さえ部との接触による伝熱によってブランクのフランジ部を加熱し、一方パンチ部との接触による抜熱によってブランクのパンチ肩部を冷却するため、ブランクをプレス機にセットして、シワ押さえを行なった状態で一定の加熱時間が必要となると同時に、パンチによる冷却効果を確保するために成形時のパンチ速度を制限する必要があり、そのため総じて通常の冷間プレスと比較して一回当たりの成形に長時間を要し、生産効率が低くならざるを得ない。
2.プレス機に、ブランクに対する加熱と冷却の機能を付与することが必要であり、そのため成形コストが増加する。
3.プレス機の構成が複雑となり、高い設備コストを要する。
4.プレス機の複雑化に伴い、品質管理上に不安が生じる。
などの問題がある。
ところで温間深絞り成形法は、成形時にアルミニウム合金板ブランクに対して加工度の大きい部分を局部的に加熱してその温度による効果により軟化させ、成形するものであるから、成形時でとらえれば、アルミニウム合金板ブランクに部分的に強度差を付与して成形性の向上を図ろうとするもの、と言うことができる、一方、同様にアルミニウム合金板ブランクに強度差を付与して成形性の向上を図ろうとした他の方法として、ブランクにあらかじめ局部的な熱処理を施しておく方法が知られており、その一例として特許文献3において提案されている技術がある。
この特許文献3の提案の方法では、時効析出等により硬化したアルミニウム合金板ブランクの周辺部に対して、加熱した金属ブロックを接触させることにより、この加熱部の析出物を固溶させた後、一旦室温まで冷却することにより、アルミニウム合金板ブランクの周辺部の強度を中心部の強度に比べて低下させることによって、成形性の向上を図っている。そしてこの方法によれば、ブランク自体に予め強度差を付与しているため、プレス成形には汎用型の冷間プレス機をそのまま使用することができ、上述の温間成形技術における問題を解消することが可能である。
しかしながら特許文献3に示される方法の場合、プレス成形の前に、ブランクに対して強度差を付与するための工程として、部分的な加熱処理の工程が付加されることから、その部分的な加熱処理の工程分だけ、通常の冷間プレス成形と比べて生産効率が低下するという問題があった。また、部分的加熱処理を行なった後、一旦室温に冷却してしまってからプレス成形を行なうため、温間成形の如く温度それ自体による成形性向上効果、すなわち成形時において材料温度が高温で材料が軟化していることによる成形性向上効果は期待できず、そのため温間成形と比較すれば成形性が劣り、またプレス成形後のスプリングバックが大きく、形状凍結性が低いことも問題であった。
特開平4−351229号公報 特開2006−205244号公報 特開2004−124151号公報
前述のように、アルミニウム合金板の成形性を改善するための従来技術の一つである温間成形では、プレスの最中にプレス機に組み込んだ加熱および冷却機構によりブランクに温度差を付与する必要があるため、プレスに長時間を要し生産効率が低いこと、また、プレス成形機自体に加熱および冷却の機構を組み込んだ特殊な温間成形機を導入する必要があるため、設備コストが高くなることが問題であった。一方、プレス成形の前に、アルミニウム合金板ブランクに部分的な加熱処理を行ない、強度差を付与して成形性を高める従来の提案の技術では、通常の冷間プレスを使用できる反面、部分的な加熱処理が一工程余分に必要となり、生産効率が低下すると同時に、成形性や形状凍結性が温間成形と比べて低いという問題があった。
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、現在使用されている汎用のプレス成形機を用いて、温間成形に匹敵する高い成形性と形状凍結性を得ることができ、しかも現在行われている通常の冷間プレスと同等の高い生産性を確保できるようにしたアルミニウム合金板のプレス成形法を提供することを課題とするものである。
本発明者等は、前述の課題を解決するべく種々の実験・検討を重ねた結果、基本的には、アルミニウム合金板ブランクに対して、事前に部分的な加熱処理(以下、部分的加熱処理)を行なうことによりブランクに事前に強度差を付与した直後、すなわち加熱した部分の温度が非加熱部分と同等の温度(通常は室温)まで低下する以前の段階で、ブランクを直ちに部分的加熱処理装置からプレス成形機に移送して、加熱部の温度が非加熱部よりも高い状態でプレス成形を行なうことにより、前述のような課題を解決しうる事を見出した。
すなわち、加工硬化もしくは時効析出によって硬化した状態のアルミニウム合金板ブランクについて、絞り成形性や曲げ加工性等が向上するように部分的加熱処理における加熱部を最適に選択して部分的加熱処理を行ない、これにより部分的に加工組織の回復・再結晶や時効析出物の固溶を生ぜしめ、おなかつ加熱した部位の温度が、加熱していない部位(非加熱部)と同等の温度まで低下する以前に、速やかにプレス成形を行なうことによって、前者の冶金学的事由(回復・再結晶もしくは固溶)による軟化効果に加えて、温度という物理的事由による軟化効果をも重畳して活用することが、成形性においても、また生産効率においても、極めて有効であることを見出し、この発明をなすに至ったのである。
具体的には、請求項1の発明のアルミニウム合金板のプレス成形方法は、加工硬化された状態にあるアルミニウム合金板からなるアルミニウム合金板ブランクについて、予めある領域を加熱部と定めるとともに、その加熱部以外の領域を非加熱部と定めておき、非加熱部を除いて加熱部を加熱する部分的加熱処理を施すことにより、加熱部において回復・再結晶を生起させて加熱部を軟化させた直後、加熱部の温度が非加熱部の温度と同等となるまで冷却される以前の段階で、アルミニウム合金板ブランクをプレス成形機にセットし、加熱部の温度が非加熱部の温度よりも高い状態のままプレス成形を行なうことを特徴とするものである。
また請求項2の発明のアルミニウム合金板のプレス成形方法は、時効硬化された状態にあるアルミニウム合金板からなるアルミニウム合金板ブランクについて、予めある領域を加熱部と定めるとともに、その加熱部以外の領域を非加熱部と定めておき、非加熱部を除いて加熱部を加熱する部分的加熱処理を施すことにより、加熱部において時効析出物をアルミニウム母相中に固溶させて加熱部を軟化させた直後、加熱部の温度が非加熱部の温度と同等となるまで冷却される以前の段階で、アルミニウム合金板ブランクをプレス成形機にセットし、加熱部の温度が非加熱部の温度よりも高い状態のままプレス成形を行なうことを特徴とするものである。
さらに請求項3の発明は、請求項1もしくは請求項2に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法において、アルミニウム合金板ブランクのうち、プレス成形時においてパンチ肩部が接触することになる領域よりも外側の部分のうちの全部またはこれより小さい一部を、前記部分的加熱処理における加熱部と定め、その加熱部以外の部分を部分的加熱処理における非加熱部と定めておくことを特徴とするものである。
また請求項4の発明は、請求項3に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法において、アルミニウム合金板ブランクのうち、プレス成形時においてパンチ肩部が接触することになる領域よりも外側の部分のうち、成形時に曲げ加工されることになる部分を前記部分的加熱処理における加熱部に含めることを特徴とするものである。
そしてまた請求項5の発明は、請求項3に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法において、アルミニウム合金板ブランクのうち、プレス成形時においてパンチ肩部が接触することになる領域よりも内側の全ての領域またはこの領域の任意形状の一領域もしくは二領域以上を、前記部分的加熱処理における加熱部に含めることを特徴とするものである。
さらに請求項6の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法において、前記部分的加熱処理を行なったアルミニウム合金板ブランクを、部分的加熱処理終了後30秒以内にプレス成形機にセットして、プレス成形を行なう直前における加熱部と非加熱部の温度差が40℃以上ある状態でプレス成形を行なうことを特徴とするものである。
また請求項7の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法において、前記部分的加熱処理を行なったアルミニウム合金板ブランクをプレス成形機にセットしてプレス成形を行なうにあたり、プレス成形を行なう直前における加熱部と非加熱部の耐力差が20MPa以上である状態でプレス成形を行なうことを特徴とするものである。
そしてまた請求項8の発明は、請求項1に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法において、前記加工硬化された状態にあるアルミニウム合金板が、純アルミニウム系合金、Al−Mn系アルミニウム合金、およびAl−Mg系アルミニウム合金のうちから選ばれたいずれかからなることを特徴とするものである。
さらに請求項9の発明は、請求項2に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法において、前記時効硬化された状態にあるアルミニウム合金板が、Al−Cu系アルミニウム合金、Al−Mg−Si系アルミニウム合金、およびAl−Zn−Mg系アルミニウム合金のうちから選ばれたいずれかからなり、かつそのアルミニウム合金の時効状態が、自然時効または人工時効による亜時効状態、またはピーク時効状態、もしくは過時効状態にあることを特徴とするものである。
また請求項10の発明は、請求項1もしくは請求項8に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法において、前記加工硬化された状態のブランクに対する部分的加熱処理において、予め定められた加熱部を200〜600℃の範囲内の温度に加熱することを特徴とするものである。
そしてまた請求項11の発明は、請求項2もしくは請求項9に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法において、前記時効硬化された状態にあるアルミニウム合金の時効状態が、自然時効または人工時効による亜時効状態にあり、かつ前記部分的加熱処理において、予め定められた加熱部を150〜300℃の範囲内の温度に加熱することを特徴とするものである。
さらに請求項12の発明は、請求項2もしくは請求項9に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法において、前記時効硬化された状態にあるアルミニウム合金の時効状態が、ピーク時効状態または過時効状態にあり、かつ前記部分的加熱処理において、予め定められた加熱部を450〜580℃の範囲内の温度に加熱することを特徴とするものである。
また請求項13の発明は、請求項11もしくは請求項12に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法において、前記プレス成形の後に、成形品を50℃/min以上の冷却速度で室温まで冷却することを特徴とするものである。
この発明のプレス成形方法によれば、加工硬化または時効硬化した状態にある各種のアルミニウム合金板の一部、とりわけプレス成形時にパンチ肩部が接触することになる領域よりも外側の領域について部分的加熱処理を行うことにより、その部分で加工組織の回復・再結晶または時効析出物の固溶を生ぜしめて低強度化させ、これにより非加熱部であるパンチ肩部が接する部分との間で強度差を付与し、さらに部分的加熱処理による加熱部分の温度が非加熱部分と同等の温度まで低下する以前に、速やかにアルミニウム合金板をプレス成形機にセットして直ちにプレス成形を行うことにより、加熱部分の温度による軟化効果を活用して、温間成形に匹敵する高い成形性と形状凍結性を得ることができ、しかも部分的加熱処理とプレス成形とが連続して直ちに行われるため、従来の通常のプレス成形と同等の高い生産効率を確保することができる。ここで、仮に一回の部分的加熱処理に要する時間が、一回の冷間プレスに要する時間よりも長い場合であっても、1台の冷間プレス成形機に対して、2台または2台以上の複数の部分的加熱処理装置を設けておけば、それぞれの部分的加熱処理装置により部分的熱処理を行なったブランクを順次冷間プレス成形機に供給することにより、通常の冷間プレス成形の生産効率と同等の生産効率を得ることができる。さらにこの発明のプレス成形方法を実施するにあたっては、これまで使用してきた通常の冷間プレス成形機の使用が可能であり、そのため設備コストを低く抑えることができる。
図1は、この発明により部分的加熱処理を行なう際の加熱部と非加熱部とを説明するために、アルミニウム合金板ブランクのプレス成形時の状況を段階的に示す、模式的な断面図である。 図2は、実施例1における部分的加熱処理でのブランクの加熱部と非加熱部を示すための模式図である。 図3は、実施例1において用いた部分的加熱処理装置の模式的な斜視図である。 図4は、実施例1におけるプレス成形時の状態を示す模式的な断面図である。 図5は、実施例1において採取した引張試験片の形状、寸法を示す平面図である。 図6は、実施例1において、部分的加熱処理を行なったブランクの加熱部からの引張試験片採取位置を示す平面図である。 図7は、実施例2において用いた部分的加熱処理装置の模式的な斜視図である。 図8は、実施例2における部分的加熱処理でのブランクの加熱部と非加熱部を示すための平面図である。 図9は、実施例2におけるプレス成形時の状況を示す模式的な断面図である。 図10は、実施例2による成形品の変位角度を説明するための略解図である。 図11は、実施例3において用いたプレス機の2段形状のパンチおよびその場合のブランクにおける部分的加熱処理の加熱部、非加熱部の位置を示す模式的な断面図である。
この発明の方法では、基本的には、加工硬化されたアルミニウム合金の圧延板、もしくは時効硬化されたアルミニウム合金の圧延板を素材として用いて、これらのアルミニウム合金板からなるブランクについて、部分的加熱処理を行ない、それに引続いて直ちにプレス成形を施す。そこで以下にこの発明の方法について、主要な項目ごとに項を分けて詳細に説明する。
<素材アルミニウム合金>
この発明で使用するアルミニウム合金の種類、成分組成は、特に限定されるものではなく、要は、部分的加熱処理に供される段階で、加熱硬化された状態、もしくは時効硬化された状態となり得るアルミニウム合金であれば、全て使用可能である。
ここで、加工硬化された状態で部分的加熱処理に供するブランクに使用されるアルミニウム合金として代表的なものとしては、純アルミニウム系のアルミニウム合金(1000番系合金)、Al−Mn系のアルミニウム合金(3000番系合金)、Al−Mg系のアルミニウム合金(5000番系合金)がある。これらのいずれの合金も、特にその成分組成は限定されないが、純アルミニウム系合金の場合は、例えばFe0.01〜0.4%、Si0.01〜0.4%、残部Alおよび不可避的不純物よりなり、そのほか必要に応じて、Mg0.01〜0.05%、Cu0.01〜0.2%、Mn0.01〜0.05%、Cr0.01〜0.05%、Zn0.01〜0.5%、Ti0.01〜0.05%の1種以上を含んでいるものが代表的である。またAl−Mn系合金の場合、例えばMn0.5〜1.5%、Fe0.01〜0.7%、Si0.01〜0.7%、残部Alおよび不可避的不純物よりなり、そのほか必要に応じて、Mg0.05〜1.5%、Cu0.01〜0.4%、Cr0.01〜0.5%、Zn0.01〜0.5%、Ti0.01〜0.1%の1種以上を含有するものが代表的である。さらに、Al−Mg系合金の場合、例えばMg1.0〜6.0%、Fe0.01〜0.4%、Si0.01〜0.4%、残部Alおよび不可避的不純物よりなり、そのほか必要に応じて、Cu0.05〜0.5%、Mn0.01〜1.5%、Cr0.01〜0.40%、Zn0.01〜0.5%、Ti0.01〜0.1%の1種以上を含有するものが代表的である。
一方、時効硬化された状態で部分的加熱処理に供されるブランクに用いるアルミニウム合金として代表的なものとしては、Al−Cu系のアルミニウム合金(2000番系合金)、Al−Mg−Si系のアルミニウム合金(6000番系合金)、Al−Zn−Mg系のアルミニウム合金(7000番系合金)など、いわゆる時効硬化型のアルミニウム合金がある。これらの合金も、特にその成分組成は限定されないが、Al−Cu系合金としては、例えばCu1.0〜6.0%、Fe0.01〜0.4%、Si0.01〜0.4%、残部Alおよび不可避的不純物よりなり、さらに必要に応じて、Mg0.2〜2.0%、Mn0.01〜1.5%、Cr0.01〜0.40%、Zn0.01〜0.5%、Ti0.01〜0.1%の1種以上を含有するものが代表的である。またAl−Mg−Si系合金としては、例えばMg0.4〜1.2%、Si0.4〜1.5%、Fe0.01〜0.4%、残部Alおよび不可避的不純物よりなり、さらに必要に応じて、Cu0.05〜0.5%、Mn0.01〜1.5%、Cr0.01〜0.40%、Zn0.01〜0.5%、Ti0.01〜0.1%の1種以上を含有するものが代表的である。さらにAl−Zn−Mg系合金としては、例えばZn2.0〜7.0%、Mg0.5〜3.0%、Fe0.01〜0.4%、Si0.01〜0.4%を含有し、残部Alおよび不可避的不純物よりなり、さらに必要に応じて、Cu0.05〜2.0%、Mn0.01〜1.5%、Cr0.01〜0.40%、Zr0.01〜0.2、Ti0.01〜0.1%の1種以上を含有するものが代表的である。
<アルミニウム合金板素材の製造方法>
次にこの発明のプレス成形方法に供されるアルミニウム合金板素材(圧延板)の製造方法について説明する。このアルミニウム合金板素材は、基本的には、アルミニウム合金製造業で一般に採用されている方法により製造することが可能である。
すなわち、所定の成分に溶解調整されたアルミニウム合金溶湯を、通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。ここで通常の溶解鋳造法としては、例えば半連続鋳造法(DC鋳造法)や薄板連続鋳造法(ロールキャスト法等)などを含む。次いでこのアルミニウム合金鋳塊に450℃以上の温度で均質化処理を施す。この均質化処理工程の前もしくは後に適宜面削を施した後、300〜590℃程度の範囲内の温度で熱間圧延を開始する。ここで、熱間圧延によって最終板厚(ブランク板厚)まで圧延しても良く、またその後冷間圧延を施して、所定の板厚の冷間圧延板としても良い。熱間圧延の途中、あるいは熱間圧延と冷間圧延の間、もしくは冷間圧延の中途において、必要に応じて中間焼鈍を行っても良く、その場合の中間焼鈍の条件も従来と同様であれば良い。
このようにして所定の板厚まで圧延された圧延板は、そのまま加工硬化した合金板として、本発明の素材として適用することが可能である。すなわち、冷間圧延により最終板厚に仕上げた場合には、最終の冷間圧延によって導入される歪により、加工硬化した状態となる。また冷間圧延板を、板全面について、完全に加工硬化が消滅する以前の中間の状態まで焼鈍した合金板(JIS規格でH24などと表記される状態)についても、ある程度加工組織が残存していることから、加工硬化した状態にあると言うことができ、この発明の方法の素材に適用することができる。さらに、熱間圧延により製品板厚まで仕上た場合であっても、熱間圧延の終了温度を低めに設定した場合には、熱間圧延後半で導入された歪によって熱間圧延上り板にある程度加工組織が残存した状態となり、このような熱間圧延板についても、加工硬化した状態にあると言うことができるから、この発明の方法の素材として適用することができる。このように加工硬化した合金板としてこの発明の方法に供する素材の合金としては、前述のように純アルミニウム系のアルミニウム合金、Al−Mn系のアルミニウム合金、Al−Mg系のアルミニウム合金などがある。
一方、この発明の方法に供するアルミニウム合金板が、Al−Cu系アルミニウム合金、Al−Mg−Si系アルミニウム合金、Al−Zn−Mg系アルミニウム合金板などの如く時効硬化型アルミニウム合金の場合、熱間圧延板または冷間圧延板に対し、最終的に板全面に対して溶体化処理を施す。この溶体化処理は、例えばAl−Mg−Si系のアルミニウム合金の場合、合金元素であるMgとSiをマトリックス中に室温で強制的に固溶させるための工程であり、一旦480℃以上の高温に加熱した後、室温近くまで急冷する工程である。そしてこの溶体化処理後の合金板を、室温で長時間保持する自然時効を行なうか、あるいは室温より高い温度(通常70〜200℃の温度範囲)で保持する人工時効を短時間行なって、亜時効状態とするか、または、人工時効を所定時間行い、その合金板における最高強度を示すピーク時効状態とするか、人工時効をさらに長時間行なって過時効状態とした合金板を、前述のように時効硬化された素材としてこの発明のプレス成形方法に適用する。
<部分的加熱処理>
この発明における重要な特徴の一つは、加工もしくは時効析出により硬化した状態にあるアルミニウム合金板からなるブランクについて、プレス成形を行なう前に部分的加熱処理(ここで部分的とは、2次元的な面内の場所として部分的という意味であり、加熱の程度の意味ではない)を行ない、加熱部と非加熱部との間に強度差を付与することにある。
ここで、成形性の指標の一つである深絞り成形限界は、プレス成形時にパンチ肩部が接する部分の破断強度とシワ押さえ部分に挟まれる部分(フランジ部)の材料流入抵抗との大小関係によって決まることが知られている。すなわち、ブランクにおけるパンチ肩部が接する部分の強度が高く、その一方シワ押さえ部分に挟まれる部分が軟質で材料流入抵抗が小さいほど、深絞り成形性が良好であると言うことができる。そしてこの発明では、部分的加熱処理によるブランクの部分的な軟化を利用して、部分的加熱処理により強度低下(軟化)した加熱部をシワ押さえ部分に、一方部分的加熱処理を行なわなかった高強度のままの非加熱部をパンチ肩部に当てて、冷間プレス成形することにより、プレス成形性を大幅に向上させることができるのである。
<部分的加熱処理を行う部位についての詳細>
次に部分的加熱処理において加熱する部位、加熱しない部位について、より詳細に説明する。
基本的には、前述のように強度の低い加熱部がシワ押さえ部分に、強度の高い非加熱部がパンチ肩部に当たるように、加熱部位を選択するのであるが、深絞りのためのプレス成形の進行状況を図1に模式的に示し、この図1を参照して部分的加熱処理を行なう部位について説明する。なお図1において、符号1はダイ、2はパンチ、3はパンチ2の肩部、4はシワ押さえ、5はアルミニウム合金板ブランクである。
図1において、部分的加熱処理においては、プレス成形の際にアルミニウム合金板ブランク5のうち、パンチ肩部3が接触することになる領域Bよりも外側の部分である領域A(シワ押さえ4の側の領域)のうちの全部またはこれより小さい一部を加熱部として軟化させることが効果的である。また特殊な場合として、パンチ肩部3が接触することになる領域Bよりも内側の領域Cの中に、部分的にさらに深く絞った形状が一つまたは二つ以上存在する場合(例えば後述する実施例3、および図11参照)は、請求項5で規定しているように、その領域C内の形状に対応して最適化した任意形状の一領域または二領域以上を加熱部として加えることが、プレス成形で良好な成形品を得るために効果的である。
またこの発明の成形方法では、加工硬化または時効硬化したアルミニウム合金板ブランクについて、部分的な加熱処理を適用して成形性向上を図った従来技術で問題となっていた成形品の曲げ加工性が低いという点についても同時に解決することができる。すなわちこれは、成形後に曲げ加工が必要となるボディパネル等の製造において問題となることであるが、プレス成形後の曲げ加工は、多くの場合、パンチ肩部が接触することになる領域Bよりも外側の部分である領域Aのうちの一部に施されることから、この発明の場合、プレス成形後に曲げ加工される部位をも選択的に加熱部として加えておくことにより、解決可能となるのであり、これを請求項4において規定している。ここで、部分的加熱処理による材料軟化は、圧延加工や自然時効、人工時効に伴う硬化により劣化した曲げ加工性を大幅に向上させる効果も合わせ持つため、上述の曲げ加工性向上効果を成形性向上と併せて得ることができるのである。
<部分的加熱処理の詳細な条件>
部分的加熱処理の最適な具体的条件は、素材合金板が加工硬化された状態にあるものであるか、または時効硬化された状態にあるものであるかによって異なり、さらに時効硬化されたもののうちでも、自然時効または人工時効により亜時効状態にあるものであるか、またはピーク時効もしくは過時効状態にあるものであるかによっても異なる。そこでこれらの各素材の状態ごとに分けて、部分的熱処理の最適な条件について説明する。
先ず加工硬化した状態にあるアルミニウム合金板ブランクについては、請求項9において規定しているように、200℃以上、600℃未満の範囲内の温度で、ブランクの一部(加熱部)を加熱する。加工硬化した状態にあるアルミニウム合金板ブランクの加熱部は、この温度範囲での加熱により、直ちに回復・再結晶を生じ、材料強度が低下する。しかしながら、加熱温度が600℃より高い場合には、局部溶融を生じて、材料の延性が大幅に低下し、その後のプレス成形性が大幅に低下してしまう。一方加熱温度が200℃未満の場合には、回復・再結晶の進行に長時間を要し、部分的加熱処理における加熱部で有効に軟化させるための処理時間が長くなり、生産性が大幅に低下してしまう。なおこの場合のより好ましい加熱温度の範囲は、400℃以上、500℃未満である。
一方、時効硬化されたアルミニウム合金板ブランクのうち、自然時効または人工時効により亜時効状態にあるアルミニウム合金板ブランクについては、請求項10において規定しているように、150℃以上、300℃未満の範囲内の温度でブランクの一部(加熱部)を加熱する。アルミニウム合金板ブランクにおける加熱部のマトリクス中に自然時効または人工時効中に形成された強度向上に寄与する極めて微細な析出物は、上述の範囲内の温度での加熱によってマトリクス中に固溶し、材料が軟化する。このような中間的な温度での加熱による極めて微細な析出物の固溶による軟化は、通常復元と称されており、自然時効もしくは室温より若干高めの温度での人工時効により形成される極微細な析出物のみが固溶し、材料が軟化することが特徴である。しかしながら加熱温度が300℃以上の場合は、このような極めて微細な析出物の固溶と同時に、結晶粒界上に粗大な析出物が多数析出して、材料の延性が大幅に低下してしまい、その後に直ちに行われるプレス成形において割れが発生しやすくなり、プレス成形性が大幅に低下してしまう。また加熱温度が150℃未満の場合、このような微細な析出物の再固溶に比較的長時間を要し、部分的加熱処理の時間が長くなり、生産効率が大幅に低下してしまう。なおこの場合のより好ましい部分的加熱処理の温度範囲は200℃以上、270℃未満である。
さらに、時効硬化されたアルミニウム合金板ブランクのうちでも、ピーク時効または過時効状態にあるアルミニウム合金板ブランクについては、請求項11で規定するように、450℃以上580℃未満の範囲内の温度でブランクの一部(加熱部)を加熱する。この温度範囲内での加熱により、アルミニウム合金板のマトリクス中に人工時効中に形成された強度向上に寄与する析出物がマトリクス中に固溶する。このように高温で析出物を固溶させる処理は、一般に溶体化処理と称されるものであり、人工時効で形成される比較的大きな析出物も短時間で固溶し、材料が軟化することが特徴である。ここで、加熱温度が580℃以上の場合は、材料の一部で局部溶融が生じて、材料の延性が大幅に低下し、その後のプレス成形性が大幅に低下してしまう。また加熱温度が450℃未満の場合には、その加熱温度での合金元素の固溶量が少なく、析出物が効果的に固溶せず、かえって粒界に粗大な析出物が析出して、材料の延性が低下し、その後のプレス成形性が大幅に低下してしまう。なお当然のことながら、ここで言う溶体化処理は、ピーク時効もしくは過時効状態にあるアルミニウム合金板ブランクに対して部分的に行なうものであり、既に述べた素材アルミニウム合金板の板全体に対して施す溶体化処理とは別のものである。
以上のような加工硬化もしくは時効硬化された状態にあるアルミニウム合金板ブランクに対して部分的加熱処理として施す三つのケースのいずれについても、部分的加熱処理の処理時間は特に規定しないが、部分的加熱処理に連続して行なわれるプレス成形は、通常毎分3回以上の速度で行なわれるため、部分的加熱処理の時間は、ブランクのセット、加熱、成形品取り出しを含めて20秒以内で行なわれることが好ましい。ここで、これらの部分的加熱処理におけるそれぞれの範囲内の温度での保持時間も、上述の観点から、10秒以内とすることが好ましく、またそれぞれの範囲内の温度への昇温速度も特に限定しないが、通常は20〜100℃/sec程度とすることが好ましい。さらに、それぞれの温度範囲内に加熱した後は、次に説明するように、直ちにプレス成形に供することがこの発明の方法では重要であり、したがってそれぞれの範囲内の温度に加熱した後には、積極的な冷却は行なわず、自然冷却にまかせることが望ましい。
<部分的加熱処理工程からプレス工程への搬送>
この発明における最も重要な特徴は、部分的加熱処理により、成形性を向上させることを目的として選択した加熱部において、回復・再結晶または時効析出物の固溶を生ぜしめ、このような冶金的な材質の変化により、加熱部の強度を低下させることに加えて、処理したアルミニウム合金板ブランクを直ちにプレス成形機にセットすることにより、加熱部の温度が非加熱部の温度に比べて高い状態でプレス成形を行なうことにより、温度差に起因する材料の強度差を併せて利用することにより、高いプレス成形性と高い生産効率を両立することにある。
ここでこの発明の方法では、部分的加熱処理後、できるだけ速やかにブランクをプレス成形機に搬送して、プレス成形機にセットすることが望ましい。具体的には請求項6中において規定しているように、部分的加熱処理終了後、30秒以内にブランクをプレス成形機にセットすることが望ましい。部分加熱処理後30秒以上経過すれば、自然冷却により加熱部の温度が低下して、非加熱部との温度差が小さくなり、その結果、成形性および形状凍結性が低下してしまう。上述のように部分加熱処理終了後に速やかにブランクをプレス成形機にセットするための各装置の配置の代表的な例としては、アルミニウム合金板ブランクを処理するための部分的加熱処理装置とプレス成形機とを隣接して設置すれば良い。またより一層生産効率を高めたい場合には、プレス成形機にブランクをセットするための搬送装置自体に部分的加熱処理機構を組み込んだ装置を使用することが望ましい。このような装置を用いれば、プレス成形機にブランクをセットするための搬送途中において部分的加熱処理を完了させて、より効果的に部分的加熱処理後の温度差をプレス成形時まで保持することができ、その結果成形性が高まるとともに、より高い生産効率が得られる。なおこの場合には、プレス成形の前にプレス成形機の所定の部分に潤滑油を吹き付けておくことが好ましい。
<プレス成形>
この発明の方法では、部分的加熱処理を行ったアルミニウム合金板ブランクをプレス成形機にセットしてプレス成形を行なう際に、部分的加熱処理時における加熱部の温度が非加熱部に比べて高い状態であることが必要である。具体的には、請求項6中において規定しているように、プレス成形を行う直前における加熱部と非加熱部の温度差が40℃以上であることが望ましい。この温度差が40℃未満の場合、温度差に起因する加熱部と非加熱部の強度差が小さくなって、成形性を向上させる効果および成形後の形状凍結性の向上効果が小さくなってしまう。またここで、プレス成形を行う直前におけるブランクについては、請求項7で規定しているように、加熱部と非加熱部の耐力差が20MPa以上であることが望ましい。この耐力差が20MPa未満の場合は、充分な成形性改善効果および高い形状凍結性を得ることが困難となる。
この発明の重要な効果としては、プレス成形用の成形機として、従来から汎用的に使用されている通常の冷間プレス成形機を用いることができる点がある。但し、部分的加熱処理における加熱部を、プレス成形時にパンチ肩部が接触することなる領域よりも外側の部分のうちの全部またはこれより小さい一部として選択した場合、この加熱部は、通常はプレス成形の際にシワ押さえにより挟まれるべき部位となり、そのため、加熱した領域が室温のシワ押さえで挟まれた瞬間に直ちにこの領域の温度が低下してしまうおそれがある。その場合、プレス成形が開始される直前、すなわちブランクにパンチが接触する直前において、部分的加熱処理における加熱部の温度が、非加熱部の温度と同等まで低下してしまうおそれがある。このような事態が予想される場合は、予め高温に加熱した鉄板などの予熱部材をプレス成形機にセットしてシワ押さえで挟むなどして、プレス成形機のダイスやシワ押さえを予め加熱しておくことが、ブランクの加熱部と非加熱部の温度差をプレス成形開始直前まで保持するために有効である。なお、設備コストは高くなるが、プレス成形機のダイス部およびシワ押さえ部にヒータを組み込んだタイプの温間成形機をも用いることもできる。
プレス成形自体は、通常の冷間プレスと同様に、毎分3回以上の速さで行なうことが好ましい。ブランクには、部分的加熱処理により回復・再結晶や析出物の固溶などの冶金的な理由による部分的な軟化効果と、温度差による物理的な理由による部分的な軟化効果とが重畳しており、このうち温度差による軟化効果は、自然冷却による加熱部の温度の低下につれて、経時的に減少する。そのため、プレス成形は部分的加熱処理を行ったブランクをセットした後、できるだけ速やかに行なうほど、成形性や形状凍結性などのプレス成形性の向上の面でも、また生産効率の面でも効果的となる。
ここで、部分的加熱処理に要する時間が1回のプレス成形に要する時間よりも長い場合には、1台のプレス成形機に対し2台または2台以上の複数台の部分的加熱処理装置を設置して、各部分的加熱処理装置で部分的加熱処理を行なったブランクを、順次1台のプレス成形機に供給することによって、容易に通常の冷間プレスと同等の生産効率を維持することができる。ここで、部分的加熱処理装置は、加熱部と冷却部とを有する金属プレートでブランクを挟む単純な構造とすることができるから、装置に要するコストは通常のプレス機のコストに比べて大幅に低くて済み、したがって上述のように1台のプレス成形機に対し複数台の部分的熱処理装置を設けても、コスト的に見合う場合が多いと言うことができる。
プレス成形後の成形品は、金型から取り外して室温まで冷却する。ここで、アルミニウム合金板ブランクが、Al−Cu系のアルミニウム合金、Al−Mg−Si系のアルミニウム合金またはAl−Zn−Mg系のアルミニウム合金のような時効硬化型のアルミニウム合金の場合には、請求項13で規定しているように、プレス成形後の成形品の室温までの冷却速度を50℃/min以上とすることが好ましい。このような50℃/min以上
の冷却は、室温付近または室温以下の水に成形品を浸漬して行ってもよく、あるいはミスト吹き付け、ファンによる強制空冷等の方法で行ってもよい。成形品の冷却速度が50℃/min未満の場合は、冷却途中に成形品の結晶粒界上に粗大な析出物が析出して、成形品の延性が低下し、成形後に成形品に対して行われる曲げ加工時に割れが発生しやすくなり、曲げ加工性が低下してしまう。なおアルミニウム合金板ブランクが時効硬化型の合金でない場合、すなわち加工硬化した状態のものである場合は、成形後の成形品の冷却速度は特に限定されず、空気中で自然冷却すればよい。
以下にこの発明の実施例を比較例とともに記す。なお以下の実施例は、この発明の効果を説明するためのものであり、実施例記載のプロセスおよび条件がこの発明の技術的範囲を制限するものではない。
[実施例1]
成形性評価試験に用いたアルミニウム合金板を表1に示す。いずれもAA規格のアルミニウム合金圧延板であり、板厚は1mmである。このうち、純アルミニウム系としてのAA1050合金、Al−Mn系としてのAA3003合金、Al−Mg系合金としてのAA5182合金は、いずれも加工硬化した状態にあるアルミニウム合金板であり、一方Al−Cu系合金としての2024合金、Al−Mg−Si系合金としての6016合金、Al−Zn−Mg系合金としての7075合金は、いずれも時効硬化した状態にあるアルミニウム合金板である。それぞれの合金板の最終的な加工または時効条件を表1に示す。なお、加工硬化した合金について示した冷間圧延率は、冷間圧延の程度を示すものであって、以下の式で表される。
冷間圧延率=(冷間圧延前の板厚−冷間圧延後の板厚)/(冷間圧延前の板厚)×100
なおここで冷間圧延前の板厚とは、通常は熱間圧延後の板厚であるが、冷間圧延の途中で中間焼鈍を行った場合はその中間焼鈍後の板厚を示す。
これらの合金板を、以下に述べる方法による部分的加熱処理および成形性評価試験に供した。
すなわち、各合金板より所定サイズの成形性評価用の円板ブランクを作製した。図2に示すように、この円板サンプル5の中心部55.7mmφの領域を非加熱部Qとして、その周囲の領域を加熱部Pとして部分的加熱処理を行なった。この加熱部Pは、プレス成形時にパンチ2の肩部3が接触することになる領域より外側の部分の全てである。部分的加熱処理の具体的な方法としては、図3に模式的に示す形状の部分的加熱処理装置の上盤6および下盤7の間に円板ブランク5を挟み込むことにより行なった。図3において、上盤6および下盤7は、それぞれ中央部を水冷により冷却した非加熱部8とし、その周囲の部分を、ヒーターを組込んだ加熱部9とした。このときの加熱部での加熱温度を表2中に示す。なお、いずれの場合も、表2に示した加熱温度まで10秒以内で到達し、その温度での保持時間は1秒間とした。
これらの条件で部分的加熱処理を行なった円板ブランクを速やかに取り外し、直ちに図4に模式的に示すプレス成形試験機にセットして、シワ押さえ4により挟んだ後にパンチ2により深絞り成形して、成形性を評価した。このときに、部分加熱処理終了後からプレス成形機にセットするのに要した時間を表2中に示す。この成形性評価試験についてさらに詳細に以下に示す。
成形試験で用いたパンチの形状は、パンチの直径50mmおよびパンチ角半径5.0mmであり、ダイス形状はダイス内径53.64mm、ダイス肩半径13.0mmであった。深絞り試験の条件としては、パンチ速度は180mm/minとし、シワ押さえ力150kgとし、潤滑剤としてジョンソンワックス(商標)を試験機の所定部位に予め塗布しておいた。部分的加熱処理を行った合金板ブランクについて直ちにこのような成形性評価試験を行い、5枚のうち3枚以上絞り成形が可能であった場合は円板の直径を0.5mm増して、再度深絞り試験を行った。これを繰り返して、絞り成形が可能である最大の円板の直径を求め、この数値をパンチ径50mmで割り算して、限界絞り比LDRを求めた。なおこのプレス成形機には、図4に模式的に示すようにシワ押さえ部4にブランク5の加熱部の温度を測定するための熱電対11を設けておき、シワ押さえ4によりブランク5を挟んだ後、パンチ2により成形する直前の加熱部の温度を測定した。このときの加熱部温度測定位置を図4中においてP1で示す。また接触式の温度計により、ブランク5の非加熱部の温度を、前記同様にパンチ2により成形する直前に測定した。このときの非加熱部温度測定位置を図4中においてP2で示す。これらの2箇所P1、P2の温度測定結果を表3中に示す。なお本試験では、部分的加熱処理を行ったブランクの加熱部の温度が、成形試験機にセットしてシワ押さえで挟んだ際に、過度に低下しないよう、予め成形試験機のシワ押さえ部に高温に加熱した鉄板を挟むことにより、成形試験機のシワ押さえ部を150℃に加熱しておいた。
また比較のため、部分的加熱処理を行なわない供試合金板についても、予加熱していない成形試験機で深絞り成形を行なってLDRを求めたので、その結果を表3中に示す。さらに比較のため、部分的加熱処理を行った後、一旦室温まで100℃/minの速度で冷却してから、予加熱をしていない成形試験機にセットして、前記と同様に深絞り成形を行なってLDRを求めた結果についても、表3中に示す。ここで、部分加熱処理を行わない場合のLDRよりも、部分加熱処理後に直ちに成形性評価試験を行った場合のLDRが0.2以上向上し、かつ部分加熱処理を行った後冷却して室温で成形性評価試験を行なった場合のLDRよりも、部分加熱処理後に直ちに成形性評価試験を行った場合のLDRが0.1以上向上した場合に、この発明で目標とする成形性向上効果が得られたと判断した。
また、ブランクに対し部分的加熱処理を行なってから、成形試験機にセットして、成形を行う直前における加熱部と非加熱の耐力差を調べるために、以下の試験を行った。すなわち加熱部については、各合金板より作製した図5に示す形状の小型の引張試験片10を、図3に模式図を示したものと同様の部分加熱処理装置(図6参照)の加熱部9に図6に示すようにセットして、表2に示す条件と同じ条件で加熱処理を行なった後、試験片10を直ちに取り外し、表3に示す成形直前の加熱部の温度に保持した高温引張試験機に取り付けて、直ちに10mm/minのクロスヘッド速度で引張試験を行なった。これにより求めた耐力を成形直前における加熱部の耐力値とみなした。また非加熱部については、その部分の温度が、部分的加熱処理中もその後の成形中も常にほぼ室温とみなせることから、前記と同じ形状の試験片に対して特別な加熱処理を行なわずに、そのまま室温にて10mm/minのクロスヘッド速度で引張試験を行なって、求めた耐力を成形直前における非加熱部の耐力値とみなした。これらの耐力値を表3中に示す。
さらに、部分的加熱処理での加熱部のプレス成形後の曲げ加工性を評価するため、以下で説明する方法で曲げ性評価試験を行った。すなわち、表2に示す条件で部分的加熱処理を行った円板ブランクを、前記と同様に予加熱した成形試験機にセットして、シワ押さえで挟んだ後、成形は行わずにブランクを取り外し、表2に示している成形後の成形品冷却速度と同じ冷却速度でブランクを室温まで冷却した。このブランクの加熱部から図5に示す形状の引張試験片を作成し、5%の引張変形を加えた後に試験片平行部を切り出し、以下の方法により曲げ性評価試験を行なった。先ず、試験片平行部の中央部に位置する引張方向と直角方向の線を折り曲げ線として、90°の角度となるまで曲げ半径0.8mmで折り曲げ、さらに135°の角度まで折り曲げた後、内側にインナーパネル挿入することを想定して板厚1.0mmの板を挿入し、この板を挟み込むように180°の角度まで折り曲げて密着させた。このような曲げ加工部の外側をルーペで確認して、割れが発生していない場合に曲げ加工性が良好と判断し、割れが発生している場合に曲げ加工性が不良であると判断した。このようにして曲げ性を評価した結果を表3中に示す。
Figure 2010227954
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条件1、条件2、条件4は、それぞれ加工硬化したAA1050合金、AA3003合金、AA5182合金について、この発明の各請求項1、3、4、6、7、10、13で規定する範囲の条件にて、部分的加熱処理とプレス成形試験を行なったものであり、これらの場合は、いずれも部分的加熱処理の直後に成形試験を行なった場合のLDRが、部分的加熱処理を行わない場合のLDRに比べて0.2以上高く、また部分的加熱処理を行った後室温まで冷却して室温で測定したLDRに比べても0.1以上高く、成形性の向上効果が充分に認められた。またいずれの場合も、部分的加熱処理における加熱部の曲げ加工性が良好であった。
一方、条件7、条件10、条件12は、それぞれ時効硬化したAA6016合金、AA2024合金、AA7075合金について、この発明の各請求項2、3、4、6、7、11(もしくは12)、13で規定する範囲内の条件にて、部分的加熱処理とプレス成形試験を行なったものであり、これらの場合は、いずれも部分的加熱処理の直後にプレス成形試験を行なった場合のLDRが、部分的加熱処理を行わない場合のLDRに比べて0.2以上高く、また、部分的加熱処理を行った後室温まで冷却して室温で測定したLDRに比べても0.1以上高く、成形性の向上効果が充分に認められた。またいずれの場合も、部分的加熱処理における加熱部の曲げ加工性が良好であった。
これに対し条件3は、加工硬化したAA3003合金について行なった部分的加熱処理の加熱温度が150℃であり、この発明の請求項10において規定する温度範囲より低い例である。そのため、この加熱部での回復・再結晶が不充分であり、成形直前における加熱部と非加熱部の耐力差が20MPa未満となり、そのため部分的加熱処理の直後に成形試験を行った場合のLDRが、部分的加熱処理を行わない場合のLDRに比べて0.2以上向上しておらず、また部分的加熱処理を行った後室温まで冷却して室温で測定したLDRに比べても0.1以上向上しておらず、充分な成形性向上効果が認められなかった。またこの場合、部分的加熱処理における加熱部の曲げ性も不良であった。
また条件5は、加工硬化したAA5182合金について行なった部分加熱処理終了後からブランクを成形機にセットするまでの時間がこの発明の請求項6において規定する範囲を越えており、これに伴い、成形直前の加熱部の温度と非加熱部の温度差が40℃未満となり、そのため部分的加熱処理の直後に成形試験を行なった場合のLDRが、部分的加熱処理を行なわない場合に比べて0.2以上向上しておらず、また部分的加熱処理を行なった後に室温まで冷却して室温で測定したLDRに比べても0.1以上向上しておらず、充分な成形性向上効果が認められなかった。
さらに条件6は、加工硬化したAA5182合金について行った部分的加熱処理の加熱温度が610℃であって、この発明の請求項10で規定する温度範囲よりも高い例である。この場合、加熱部の一部で局部溶融が生じ、伸びが低下し、成形性が大幅に低下し、そのため部分的加熱処理の直後に成形試験を行なった場合のLDRが、部分的加熱処理を行わない場合のLDRに比べて0.2以上向上しておらず、また部分的加熱処理を行った後室温まで冷却して室温で測定したLDRに比べても0.1以上向上しておらず、充分な成形性向上効果が認められなかった。またこの場合、部分的加熱処理における加熱部の曲げ性も不良であった。
また条件8は、自然時効により硬化したAA6016合金について行なった部分的加熱処理の加熱温度が130℃であって、この発明の請求項11で規定する温度範囲より低い例であり、この場合、加熱部において復元による軟化が充分に生じず、成形直前における加熱部と非加熱部の耐力差が20MPa未満となり、そのため部分的加熱処理の直後に成形試験を行なった場合のLDRが、部分的加熱処理を行なわない場合のLDRに比べて0.2以上向上しておらず、また部分的加熱処理を行なった後室温まで冷却して、室温で測定したLDRに比べても0.1以上向上しておらず、充分な成形性向上効果が認められなかった。またこの場合、部分的加熱処理における加熱部の曲げ性も不良であった。
さらに条件9は、自然時効により硬化して亜時効の状態となったAA6016合金について行なった部分的加熱処理の加熱温度が370℃であって、この発明の請求項11で規定する温度範囲より高い例であり、この場合、加熱部において、復元と同時に結晶粒界上に粗大な析出物が多数析出して、材料の延性が低下してしまい、プレス成形性が大幅に低下し、そのため部分的加熱処理の直後に成形試験を行なった場合のLDRが、部分的加熱処理を行なわない場合のLDRに比べて0.2以上向上しておらず、また部分的加熱処理を行った後室温まで冷却して、室温で測定したLDRに比べても0.1以上向上しておらず、充分な成形性向上効果が認められなかった。またこの場合、部分的加熱処理における加熱部の曲げ性も不良であった。
また条件11は、人工時効により硬化してピーク時効状態となったAA2024合金について行なった部分的加熱処理の加熱温度が590℃であり、この発明の請求項12で規定する温度範囲より高い例であり、この場合は、加熱部の一部で局部溶融が生じ、伸びが低下して、成形性が大幅に低下し、そのため部分的加熱処理の直後に成形試験を行なった場合のLDRが、部分的加熱処理を行なわない場合のLDRに比べて0.2以上向上しておらず、また部分的加熱処理を行なった後室温まで冷却して、室温で測定したLDRに比べても0.1以上向上しておらず、充分な成形性向上効果が認められなかった。またこの場合、部分的加熱処理における加熱部の曲げ性も不良である。
さらに条件13は、人工時効により硬化して過時効状態となったAA7075合金について行なった部分的加熱処理の加熱温度が430℃であって、この発明の請求項12で規定する温度範囲より低い例であり、この場合は、加熱部において時効析出物として析出している合金元素の固溶が不充分となるばかりでなく、かえって粒界に粗大な析出物が析出して、材料の延性が低下し、プレス成形性が低下した。そのため、部分的加熱処理の直後に成形試験を行なった場合のLDRが、部分的加熱処理を行なわない場合のLDRに比べて0.2以上向上しておらず、また部分的加熱処理を行なった後室温まで冷却して、室温で測定したLDRに比べても0.1以上向上しておらず、充分な成形性向上効果が認められなかった。またこの場合、部分的加熱処理における加熱部の曲げ性も不良であった。
また条件14は、人工時効により硬化して過時効状態となったAA7075合金について行なった部分的加熱処理の加熱温度は490℃でこの発明の請求項12で規定する温度範囲内であが、成形後の成形品の冷却速度が40℃/minであって、この発明の請求項13で規定する冷却速度範囲よりも低い例であり、この場合、冷却途中に成形品の結晶粒界上に粗大な析出物が析出して、成形品の延性が低下し、成形品に行われる曲げ加工時に割れが発生しやすくなって、曲げ加工性が低下してしまい、そのため部分的加熱処理の直後にプレス成形試験を行なった場合のLDRが、部分的加熱処理を行なわない場合のLDRに比べて0.2以上高く、また、部分的加熱処理を行った後室温まで冷却して室温で測定したLDRに比べても0.1以上高く、成形性の向上効果は認められるものの、部分的加熱処理における加熱部の曲げ性が不良となった。
[実施例2]
表1に示す合金板を供試材として、以下に述べる方法により成形品の形状凍結性を評価した。すなわち、各合金板より図8に示すような30mm×160mmの短冊状のブランク12を作製して、図7に模式的に示す部分的加熱処理装置により挟むことにより、図8中に示すように、パンチ2の肩部3が当接する部分の外側の領域を加熱部Pとし、それより内側を非加熱部Qとして部分的加熱処理を行なった。加熱処理の条件を表4に示す。その後ブランク12を直ちに取り出して、図9に示す形状のプレス成形試験機にセットしてプレス成形によるハット曲げを行なった。なお図9中の各符号は、図1、図4と同様である。ここで、パンチ速度は180mm/s、シワ押さえ力は500kgとし、潤滑油はジョンソンワックス(商標)をプレス成形試験機の所定の部位に塗布しておいた。また、プレス成形機のシワ押さえを予熱するために、高温に加熱した鉄板を事前にプレス成形試験機のシワ押さえ部に挟んで、シワ押さえ部を150℃に加熱しておいた。成形後のサンプル(成形品13)を取り出し、100℃/minの冷却速度で室温まで冷却した後、図10に示すように成形品13のフランジ部分14の角度を測定して、金型の形状(金型面を符号15で示す)からの変位角度θを表5に示した。
比較のため、各合金板について、部分的加熱処理を行なわずに、予加熱していないプレス成形試験機により前記と同じ条件で成形試験を行ない、同様に金型からの変位角度θを測定して表5に示した。さらに比較のため、各合金板について、部分的加熱処理を表4に示す条件で行なった後、一旦室温まで冷却して、予加熱していないプレス成形試験により前記と同じ条件で成形試験を行ない、同様に金型からの変位角度θを測定して表5に示した。また、図9中に示すように、成形試験機のシワ押さえ部4に予め熱電対11を取り付けておき、シワ押さえした後の成形直前におけるブランク12の加熱部Pの温度を測定した。また、ブランク12の非加熱部Qの温度については、接触式の温度計により成形直前の温度を測定した。これらの温度測定結果を表5に示す。
いずれの場合も部分的加熱処理の加熱温度は、この発明の各請求項10、11、12のいずれかで規定している範囲内であり、また成形直前における加熱部の温度は非加熱の部位の温度よりも高かった。このため、成形品の所定部位の変位角度が、部分的加熱処理を行なわないブランクを予加熱していない成形試験機により成形した場合の変位角度より小さく、また、部分的加熱処理を行なった後一旦室温まで冷却したブランクを予加熱していない成形機により成形した場合の変位角度よりも小さく、本発明の方法でプレス成形した成形品の形状凍結性が優れていると判断することができた。
Figure 2010227954
Figure 2010227954
[実施例3]
実施例1で用いた表1の合金板のうち、AA6016合金板を供試材とした。この実施例3では、プレス成形に用いるパンチとして、図11に模式的に示すような2段のパンチ肩部3A、3Bを有する2段の円筒パンチ2を用いることとした。ここで、パンチ2の一段目は、φ50mmの大きさで5mmRのパンチ肩部3Aを有し、パンチ2の二段目は、φ25mmの大きさで5mmRのパンチ肩部3Bを有するものとした。さらにダイ(図示せず)としては、この2段パンチ2の形状に対応するものとし、円板ブランク5について、上述のような2段形状のパンチ2とダイでプレス成形することとした。
この際、本発明例としては、図11中に示しているように、成形時に一段面のパンチ肩部3Aに接触することになる領域Bの外側の領域Aを部分的加熱処理における加熱部Pとし、さらに領域Bの内側の領域Cのうち、パンチ肩部3Bに接触することになる領域B’の外側領域A’も加熱部として加えて部分的加熱処理を行なった。一方、比較例としては、成形時に一段面のパンチ肩部3Aに接触することになる領域Bの外側の領域Aのみを部分的加熱処理における加熱部として、部分的加熱処理を行なった。いずれの場合も、加熱部の加熱温度は250℃とし、加熱開始から10秒以内にこの加熱温度に到達させ、その後、この温度で1秒間保持する条件とした。これらの本発明例と比較例の2種の部分的加熱処理を施したブランクについて、部分的加熱処理後速やかにブランクを取り外し、これらのパンチとダイを具備した成形試験にセットして、直ちにプレス成形をおこなった。プレス成形機のシワ押さえ部には、予め加熱した鉄板を挟んで150℃に加熱しており、いずれの場合も、プレス成形直前における加熱部の温度は160℃であって、非加熱部の温度(30℃)よりも高いことを確認してからプレス成形を行なった。その結果、本発明例では、途中で破断することなく2段の円筒形状の成形品を作製することができたが、比較例では成形品のパンチ肩部3Bに相当する部位で破断が生じてしまった。
1 ダイ
2 パンチ
3、3A、3B パンチ肩部
4 シワ押さえ
5 ブランク
P 加熱部
Q 非加熱部

Claims (13)

  1. 加工硬化された状態にあるアルミニウム合金板からなるアルミニウム合金板ブランクについて、予めある領域を加熱部と定めるとともに、その加熱部以外の領域を非加熱部と定めておき、非加熱部を除いて加熱部を加熱する部分的加熱処理を施すことにより、加熱部において回復・再結晶を生起させて加熱部を軟化させた直後、加熱部の温度が非加熱部の温度と同等となるまで冷却される以前の段階で、アルミニウム合金板ブランクをプレス成形機にセットし、加熱部の温度が非加熱部の温度よりも高い状態のままプレス成形を行なうことを特徴とする、アルミニウム合金板のプレス成形方法。
  2. 時効硬化された状態にあるアルミニウム合金板からなるアルミニウム合金板ブランクについて、予めある領域を加熱部と定めるとともに、その加熱部以外の領域を非加熱部と定めておき、非加熱部を除いて加熱部を加熱する部分的加熱処理を施すことにより、加熱部において時効析出物をアルミニウム母相中に固溶させて加熱部を軟化させた直後、加熱部の温度が非加熱部の温度と同等となるまで冷却される以前の段階で、アルミニウム合金板ブランクをプレス成形機にセットし、加熱部の温度が非加熱部の温度よりも高い状態のままプレス成形を行なうことを特徴とする、アルミニウム合金板のプレス成形方法。
  3. 請求項1もしくは請求項2に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法において、
    アルミニウム合金板ブランクのうち、プレス成形時においてパンチ肩部が接触することになる領域よりも外側の部分のうちの全部またはこれより小さい一部を、前記部分的加熱処理における加熱部と定め、その加熱部以外の部分を部分的加熱処理における非加熱部と定めておくことを特徴とする、アルミニウム合金板のプレス成形方法。
  4. 請求項3に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法において、
    アルミニウム合金板ブランクのうち、プレス成形時においてパンチ肩部が接触することになる領域よりも外側の部分のうち、成形時に曲げ加工されることになる部分を前記部分的加熱処理における加熱部に含めることを特徴とする、アルミニウム合金板のプレス成形方法。
  5. 請求項3に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法において、
    アルミニウム合金板ブランクのうち、プレス成形時においてパンチ肩部が接触することになる領域よりも内側の全ての領域またはこの領域の任意形状の一領域もしくは二領域以上を、前記部分的加熱処理における加熱部に含めることを特徴とする、アルミニウム合金板のプレス成形方法。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれかに記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法において、
    前記部分的加熱処理を行なったアルミニウム合金板ブランクを、部分的加熱処理終了後30秒以内にプレス成形機にセットして、プレス成形を行なう直前における加熱部と非加熱部の温度差が40℃以上ある状態でプレス成形を行なうことを特徴とする、アルミニウム合金板のプレス成形方法。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれかに記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法において、
    前記部分的加熱処理を行なったアルミニウム合金板ブランクをプレス成形機にセットしてプレス成形を行なうにあたり、プレス成形を行なう直前における加熱部と非加熱部の耐力差が20MPa以上である状態でプレス成形を行なうことを特徴とする、アルミニウム合金板のプレス成形方法。
  8. 請求項1に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法において、
    前記加工硬化された状態にあるアルミニウム合金板が、純アルミニウム系合金、Al−Mn系アルミニウム合金、およびAl−Mg系アルミニウム合金のうちから選ばれたいずれかからなることを特徴とする、アルミニウム合金板のプレス成形方法。
  9. 請求項2に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法において、
    前記時効硬化された状態にあるアルミニウム合金板が、Al−Cu系アルミニウム合金、Al−Mg−Si系アルミニウム合金、およびAl−Zn−Mg系アルミニウム合金のうちから選ばれたいずれかからなり、かつそのアルミニウム合金の時効状態が、自然時効または人工時効による亜時効状態、またはピーク時効状態、もしくは過時効状態にあることを特徴とする、アルミニウム合金板のプレス成形方法。
  10. 請求項1もしくは請求項8に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法において、
    前記加工硬化された状態のブランクに対する部分的加熱処理において、予め定められた加熱部を200〜600℃の範囲内の温度に加熱することを特徴とする、アルミニウム合金板のプレス成形方法。
  11. 請求項2もしくは請求項9に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法において、
    前記時効硬化された状態にあるアルミニウム合金の時効状態が、自然時効または人工時効による亜時効状態にあり、かつ前記部分的加熱処理において、予め定められた加熱部を150〜300℃の範囲内の温度に加熱することを特徴とする、アルミニウム合金板のプレス成形方法。
  12. 請求項2もしくは請求項9に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法において、
    前記時効硬化された状態にあるアルミニウム合金の時効状態が、ピーク時効状態または過時効状態にあり、かつ前記部分的加熱処理において、予め定められた加熱部を450〜580℃の範囲内の温度に加熱することを特徴とする、アルミニウム合金板のプレス成形方法。
  13. 請求項11もしくは請求項12に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法において、
    前記プレス成形の後に、成形品を50℃/min以上の冷却速度で室温まで冷却することを特徴とする、アルミニウム合金板のプレス成形方法。
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