JP2678404B2 - 成形加工用アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents

成形加工用アルミニウム合金板の製造方法

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JP2678404B2
JP2678404B2 JP3799991A JP3799991A JP2678404B2 JP 2678404 B2 JP2678404 B2 JP 2678404B2 JP 3799991 A JP3799991 A JP 3799991A JP 3799991 A JP3799991 A JP 3799991A JP 2678404 B2 JP2678404 B2 JP 2678404B2
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俊雄 小松原
守 松尾
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スカイアルミニウム株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は各種陸運車両や電気機
械器具、部品等に使用される成形加工用のアルミニウム
合金板の製造方法に関し、特に成形加工性に優れるとと
もに塗装焼付後の強度が高く、しかも室温での経時変化
の少ない成形加工用アルミニウム合金板の製造方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車等の各種陸運車両の部品や電気機
械器具の部品に使用される高強度成形素材としては、最
近では軽量性や耐食性の点からアルミニウム合金板が使
用されることが多くなっている。
【0003】ところで従来の成形加工用のアルミニウム
合金としては、Al−Mg系のJIS 5182合金O
材や5052合金O材、あるいはAl−Mg−Si(−
Cu)系のAA6009合金T4材、6010合金T4
材などが広く使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前述のような各種の成
形加工の用途のうち、自動車のパネル類等においては外
観特性が良好であること、また耐デント性(耐へこみ
性)が良好であることが要求されるが、従来の5182
合金O材や5082合金O材などのAl−Mg系合金軟
質材は、リューダースマークが発生しやすいため外観品
質を損ないやすく、また焼付塗装後の強度が低くて耐デ
ント性にも劣る問題があり、したがってこれらのAl−
Mg系合金軟質材は自動車のパネル類等には好ましくな
いとされている。
【0005】一方、6009合金T4材、6010合金
T4材などの従来のAl−Mg−Si(−Cu)系合金
はリューダースマークの発生はなく、また鋼板と同等の
強度を得ることは可能であるが、塗装焼付後の強度とし
て鋼板と同等の強度を得ようとすれば、必然的に素材強
度が高くなるため成形性が劣り、とりわけ成形加工によ
る形状凍結性が悪くなる問題がある。しかもこれらのA
l−Mg−Si(−Cu)系合金のT4材では、溶体化
処理後の室温時効性が強いため、溶体化処理後の時間の
経過に伴なって材料強度が次第に上昇し、成形性は逆に
次第に劣化する傾向がある。ところが、一般に素材メー
カーで材料を製造した後に別のプレスメーカーで成形す
る場合には、材料を製造してからプレス加工に至るまで
の期間が種々異なるのが通常であり、そのため上述のよ
うな経時変化によって成形時の強度、成形性がばらつい
てしまうという大きな問題がある。
【0006】この発明は以上の事情を背景としてなされ
たもので、陸運車両や電気機械部品等の用途に供される
成形加工用アルミニウム合金板として、従来合金板と比
較し、成形加工時は低強度で成形性、特に形状凍結性が
優れ、かつ塗装焼付処理後は高強度を有して耐デント性
が優れ、しかも材料製造後、プレス加工が施されるまで
の期間における材料特性の経時変化が少ないアルミニウ
ム合金板を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】前述のような課題を解決
するため、本発明者等が鋭意実験・検討を重ねた結果、
合金としては6000番系のAl−Mg−Si(−C
u)系合金を用い、その圧延後の溶体化処理の条件を適
切に設定するだけではなく、溶体化処理後に1段または
2段以上の適切な加熱処理を施すことによって、室温経
時変化が少なくかつ成形性(特に形状凍結性)および塗
装焼付後の強度が高い(したがって耐デント性が優れ
た)アルミニウム合金板が得られることを見出し、この
発明をなすに至った。
【0008】具体的には、請求項1の発明の方法は、J
IS 6000番系に属するAl−Mg−Si系のアル
ミニウム合金圧延板に対して、450〜580℃の範囲
内の温度で溶体化処理して5℃/sec 以上の冷却速度で
冷却し、その後150〜320℃の範囲内の温度での1
分以内の加熱処理を1回もしくは2回以上行なって、最
終の加熱処理後の導電率を1回目の加熱処理直前の導電
率よりも1%IACS以上低下させることを特徴とするもの
である。
【0009】また請求項2の発明の方法は、JIS 6
000番系に属するAl−Mg−Si系のアルミニウム
合金圧延板に対して、450〜580℃の範囲内の温度
で溶体化処理して5℃/sec 以上の冷却速度で冷却し、
その後、横軸の時間軸を対数目盛とし縦軸の温度軸を等
間隔目盛とした図1に示す時間−温度座標上におけるA
点( 0.5時間、180℃)、B点( 0.5時間、100
℃)、C点(4時間、60℃)、D点(24時間、60
℃)、E点(24時間、100℃)、F点(4時間、1
80℃)の各点を順次結ぶ各線分AB,BC,CD,D
E,EF,FAによって取囲まれる領域内(但し各線分
上の点を含む)の時間−温度条件で安定化処理を行な
い、さらにその後150〜320℃の範囲内の温度での
1分以内の加熱処理を1回もしくは2回以上行なって、
最終の加熱処理後の導電率を1回目の加熱処理直前の導
電率よりも1%IACS以上低下させることを特徴とするも
のである。
【0010】
【作用】この発明の製造方法で用いられる合金は、要は
JIS 6000番系に属するAl−Mg−Si(−C
u)系のアルミニウム合金であればよく、その具体的成
分量は特に限定しないが、一般にはMg 0.1〜 2.0wt
%、Si 0.5〜 2.5wt%を必須合金成分として含有し、
その他必要に応じてCu 1.5wt%以下、Zn 2.0wt%以
下のうち1種または2種を含有し、さらに必要に応じて
Mn 0.6wt%以下、Cr 0.3wt%以下、Zr 0.3wt%以
下を含有し、残部Alおよび不可避的不純物とすれば良
い。
【0011】このような望ましい成分について以下に説
明する。
【0012】Mg:MgはJIS 6000番系のアル
ミニウム合金において基本となる合金成分であり、Si
と共存してMg2 Siを生成して、析出硬化により強度
の向上に寄与する。Mgが 0.1wt%未満では強度向上効
果が不充分であり、一方 2.0wt%を越えれば伸び、成形
性が低下する。したがってMgは 0.1〜 2.0wt%の範囲
内とすることが望ましい。
【0013】Si:Siも6000番系のアルミニウム
合金において基本となる合金成分であり、Mgと共存し
てMg2 Siを生成し、析出硬化により強度の向上に寄
与する。また添加されたSiの一部を金属Si粒子とし
てAl合金マトリックス中に存在させれば、成形加工
性、特に伸びおよび曲げ性を向上させることができる。
ここで、Si添加量は、Mg2 Si化学量論組成よりS
iが充分に過剰となり、さらには金属Siを生成する状
態となることが強度向上のために望ましく、そこで、S
i(wt%)> 0.6×Mg(wt%)+ 0.4(wt%)を満た
すことが望ましい。。なおSiの絶対量が 0.5wt%未満
では、強度向上、成形加工性向上の効果が充分に得られ
ず、一方Si量が 2.5wt%を越えれば伸びおよび成形性
が劣化するから、Siの絶対量は 0.5〜 2.5wt%の範囲
内とすることが好ましい。
【0014】Cu,Zn:Cu,Znはいずれも強度向
上に寄与する元素であり、必要に応じていずれか一方ま
たは双方が添加される。なおこれらのうちZnは耐食性
向上にも効果があり、マトリックスの電位を下げること
によって孔食を防止するのに寄与する。但しCuが 1.5
wt%を越えれば成形性および耐食性が劣化し、またZn
が 2.0wt%を越えれば耐食性が劣化するとともに、室温
での経時変化により成形性を低下させる。したがってC
uは 1.5wt%以下、Znは 2.0wt%以下の範囲内とする
ことが好ましい。
【0015】Mn,Cr,Zr:これらの元素はいずれ
も結晶粒を微細化し、成形加工時のフローラインの発生
を低減するに寄与する元素であって、必要に応じて1種
または2種以上が添加される。但しMnが 0.6wt%、C
rが0.3wt%、Zrが 0.3wt%を越えれば粗大な金属間
化合物が生成されて成形性が劣化する。したがってMn
は 0.6wt%以下、Crは 0.3wt%以下、Zrは 0.3wt%
以下とすることが好ましい。
【0016】以上の各成分の残部は、基本的にはAlお
よび不可避的不純物とすれば良いが、そのほか微量のB
eを添加したり、微量のTi、もしくはTiおよびBを
添加しても良い。Beは緻密な酸化皮膜を形成して、素
材アルミニウム表面でのAlやMgの酸化を防止し、ひ
いては耐糸錆性の著しい向上に寄与する。但しBe添加
量が0.01wt%を越えればその効果は飽和し、コスト上昇
を招くだけであるから、Beの添加量は0.01wt%以下と
することが望ましい。またTiは従来から鋳塊組織の結
晶粒微細化剤としてBとともに添加されることがあった
が、Tiの添加は結晶粒微細化のみならず、耐食性の向
上にも有効である。但しTiの添加量が1.0wt%を越え
れば粗大な金属間化合物を生成して、圧延性、成形性を
劣化させるから、Tiの添加量は 1.0wt%以下とするこ
とが好ましい。またTiとともに添加されることのある
Bは、0.01wt%を越えれば逆に耐食性が損なわれてしま
うから、0.01wt%未満とすることが好ましい。
【0017】次にこの発明の製造方法における各プロセ
スについて説明する。
【0018】この発明の製造方法においては、溶体化処
理前までの工程については特に限定されるものではない
が、一般的には次のようなプセスが適用される。
【0019】先ず前述のような成分組成の合金溶湯を鋳
造する。ここで鋳造方法としては、DC鋳造法(半連続
鋳造法)を適用しても、連続鋳造圧延法(薄板連続鋳造
法)を適用しても良い。
【0020】DC鋳造によって得られたアルミニウム合
金鋳塊に対しては 450℃〜 570℃の範囲内の温度で均質
化処理を施す。このような均質化処理を行なうことによ
って、成形加工性を向上させるとともに再結晶粒の安定
化を図ることができる。均質化処理の温度が 450℃未満
では上述の効果が得られず、一方 570℃を越えれば共晶
融解が生じるおそれがある。なお均質化処理の時間は1
〜48時間が望ましい。1時間未満では上述の効果が充
分に得られず、一方48時間を越える長時間の処理は経
済的でない。このような均質化処理後には、常法に従っ
て熱間圧延を施して、所要の板厚の熱間圧延板とする。
その後、必要に応じて冷間圧延を施して最終板厚とす
る。
【0021】一方連続鋳造圧延法によって得た連続鋳造
薄板の場合は、特に熱間圧延を行なう必要はないが、前
述のDC鋳造による鋳塊の場合と同様な均質化処理を施
しても良い。またこの場合も必要に応じて冷間圧延を施
して最終板厚とすれば良い。
【0022】また前述のように冷間圧延を行なう場合、
冷間圧延前または冷間圧延中途において必要に応じて中
間焼鈍を施しても良い。この中間焼鈍は、圧延性改善お
よび組織制御を目的として行なわれるものであって、バ
ッチ焼鈍、連続焼鈍のいずれを適用しても良く、その条
件は特に限定しないが、一般にはバッチ焼鈍では250
〜450℃の範囲内の温度に 0.5〜24時間加熱すれば
良く、また連続焼鈍では300〜580℃の範囲内の温
度に加熱して保持なしもしくは5分以下の保持の条件を
適用すれば良い。
【0023】ここで、中間焼鈍としてバッチ焼鈍を適用
する場合、その温度が250℃未満では圧延性が改善さ
れず、無意味であり、一方450℃を越えれば再結晶粒
が粗大化するとともに、表面酸化層の厚さが増大し、耐
糸錆性が低下する。また保持時間が 0.5時間未満でも圧
延性が充分に改善されず、一方24時間を越えれば不経
済となるばかりでなく、表面酸化層の厚みが増し、耐糸
錆性が低下する。
【0024】また中間焼鈍として連続焼鈍を適用する場
合、その加熱温度が300℃未満では圧延性が改善され
ず、無意味であり、一方580℃を越えれば共晶融解の
おそれがあり、また再結晶粒が粗大化するとともに、表
面酸化層の厚みが増大して耐糸錆性が低下する。また保
持時間が5分を越えれば再結晶粒が粗大化するととも
に、表面酸化層の厚みが増大して耐糸錆性が低下する。
【0025】前述のようにして最終板厚とした圧延板に
対しては、溶体化処理を施す。この溶体化処理は、60
00番系合金における強化元素であるMg,Si,C
u,Znをマトリックス中に固溶させ、その後の塗装焼
付処理後に充分な強度が得られるようにすると同時に、
再結晶させて結晶粒を微細化、安定化させ、成形性を向
上させるために必要な工程である。
【0026】この溶体化処理の条件としては、450〜
580℃の範囲内の温度に120分以下保持することが
必要である。溶体化処理の温度が450℃未満では溶体
化の効果が不充分であり、また完全には再結晶されず、
成形性が低下してしまう。一方580℃を越えれば共晶
融解発生のおそれがあり、また再結晶粒が粗大化して肌
荒れが発生し、外観不良を招くとともに成形性も低下
し、さらには表面酸化層の厚さが増大して耐糸錆性が低
下するおそれがある。なおここで再結晶粒粗大化防止の
目安としては、再結晶粒径が150μm以下となる程度
を目安にすれば良い。さらに溶体化処理の時間が120
分を越えれば、溶体化効果が飽和するばかりでなく、表
面酸化層の厚さが増大して、耐食性、耐糸錆性が低下す
るおそれがある。なおこの溶体化処理としては、バッチ
式、連続式のいずれの熱処理炉を適用しても良い。また
溶体化処理後は急速冷却するが、この冷却速度は強制空
冷以上の冷却速度であれば充分である。具体的には、5
℃/sec 以上の冷却速度が適当である。
【0027】なお溶体化処理後に強制空冷あるいは水焼
入を行なえば板に反りが発生しやすい。これを除去する
ために、冷却後に歪強制加工としてスキンパス、レベリ
ング、ストレッチ等の軽い冷間加工を行なっても良い。
【0028】以上のようにして溶体化処理を施した圧延
板、あるいは溶体化処理後、矯正のための軽い冷間加工
を施した圧延板に対しては、この発明の方法では次のよ
うな熱処理を施す。すなわち、その圧延板に対して15
0〜320℃の範囲内の温度で1分以内の加熱処理を1
回または2回以上施す(請求項1の発明)か、または図
1に示す範囲内の条件での安定化処理を施した後、前記
同様に150〜320℃の範囲内の温度での1分以内の
加熱処理を1回または2回以上施す。
【0029】このような溶体化処理後の熱処理は、この
発明の方法で基本的に重要な部分であり、従来の通常の
熱処理型合金では一般に溶体化処理後の熱処理は特に行
なわないのが通常であった。このような溶体化処理後の
熱処理のプロセスパターンの4つの代表例を図2に示
す。図2において、A,Bは請求項1の発明による熱処
理のプロセスパターン、C,Dは請求項2の発明による
熱処理のプロセスパターンである。図2のA,Bのプロ
セスパターンが図2のC,Dのプロセスパターンと異な
る点は、安定化処理12を行なっていない点であるが、
A,Bのプロセスパターンの場合も、工業的な製造ライ
ンでは溶体化処理後、次の加熱処理21が行なわれるま
での間に室温で放置されてある程度の時間が経過するか
ら、図2中に括弧書きで記したように、室温時効11が
行なわれていると言うことができる。
【0030】ここで、上述のような溶体化処理後の熱処
理の全体的な作用について説明する。
【0031】溶体化処理後の室温時効11もしくは安定
化処理12によって、その後の塗装焼付時の析出サイト
として有効な析出物が生成される。すなわち、この室温
時効11もしくは安定化処理12によって生じた析出物
は、その一部が後の塗装焼付時に形成される強度への寄
与の大きい析出物の析出サイトとなる。ところがこのよ
うな室温時効11もしくは安定化処理12においては、
同時に不要な微細析出物、すなわち塗装焼付時の析出サ
イトとならないような微細な析出物も生じてしまい、こ
のような微細析出物によって材料強度も上昇して成形性
が低下してしまう。そこで室温時効11もしくは安定化
処理12の後、加熱処理21を行なって不要な微細析出
物を再固溶させ、低強度化すなわち成形性向上を図る。
そしてB,Dのプロセスパターンの場合には、1回目の
加熱処理21の後、さらに2回目の加熱処理22を行な
って、その後の室温時効性をより低減させる。すなわ
ち、単に1回目の加熱処理21で不要な微細析出物を再
固溶させるだけではなく、2回目の加熱処理22よっ
て、溶体化処理時における焼入れ(急速冷却)により導
入された見掛け上の過剰空孔を減らし、Mg,Si,C
uなどの添加元素の拡散速度を低下させ、室温時効性を
より低下させるのである。
【0032】以上のような溶体化処理後の熱処理におけ
る各条件について次に説明する。
【0033】図2のA,Bのプロセスパターンでは単に
室温に放置させて室温時効させ、これにより後の塗装焼
付時における析出核生成サイトとして有効な析出物を生
成させているが、この塗装焼付時における析出サイトを
より安定化するため、C,Dのプロセスパターンでは、
図1の各線分AB,BC,CD,DE,EF,FAによ
って囲まれる領域内(但し各線分上の点を含む)の時間
−温度条件で積極的に安定化処理12を行なっている。
【0034】この安定化処理12における温度が60℃
未満(線分CDの下側)では析出速度が遅く、充分に析
出物が得られない。また180℃を越え(線分FAの上
側)れば析出硬化が大き過ぎ、強度が高くなって成形性
が低下してしまい、また粗大な析出物が形成されるため
に塗装焼付性も劣化する。一方、処理時間が図1におけ
る線分AB,BCの左側では、処理時間が短か過ぎて、
塗装焼付時に必要な析出サイトが充分に生成されず、ま
た処理時間が図1の線分DE,EFの右側では、処理時
間が長過ぎて、析出硬化が大き過ぎ、強度が高くなって
成形性が低下するとともに、粗大な析出物が形成されて
塗装焼付性も劣化してしまう。したがって安定化処理の
条件は、図2の線分AB,BC,CD,DE,EF,F
Aによって囲まれる領域内(但し各線分上の点を含む)
の時間−温度条件とする必要がある。
【0035】上述のような室温時効11もしくは安定化
処理12は、一種の予備時効と言うことができる。この
ような予備時効の後、固溶、析出を適切にコントロール
するために加熱処理を1回または2回以上行なう。
【0036】1回目の加熱処理21は、既に述べたよう
に予備時効中に形成された析出物のうち、塗装焼付時の
析出サイトとならないような微細な析出物をマトリック
ス中に再固溶させるためのものであるが、その温度が1
50℃未満では再固溶させる効果が充分に得られず、一
方320℃を越えれば過時効により粗大析出物が形成さ
れ、塗装焼付後の強度が低下する。また熱処理時間が1
分を越えれば時効硬化により材料強度が高くなって成形
性が低下する。したがってこの1回目の加熱処理21の
条件は、150〜320℃の範囲内の温度に1分以下の
保持とする必要がある。なおこの加熱処理には、本質的
には急速加熱が必要であり、1℃/sec 以上の加熱速度
とすることが望ましい。また塗装焼付時の析出サイトと
ならないような小さな析出物は溶解速度が極めて速いか
ら、保持時間は零でも良い。
【0037】図2のプロセスパターンB,Dにおいて
は、上述のような1回目の加熱処理21の後、さらに室
温時効性を低下させるために2回目の加熱処理22を行
なう。この2回目の加熱処理22の条件も1回目の加熱
処理21と同様に150〜320℃の範囲内の温度で1
分以内とすれば良い。この温度が150℃未満では室温
時効硬化を少なくする効果が得られず、320℃を越え
れば過時効により粗大析出物が生成され、成形性が低下
するとともに、塗装焼付後の強度が低下する。また処理
時間が1分を越えても、時効硬化により材料強度が高く
なり、成形性が低下する。
【0038】なお図2には示していないが、以上のよう
な加熱処理を3回以上行なっても良いことは勿論であ
る。また、2回以上の加熱処理を行なう場合、1回目の
加熱処理と2回目以降の加熱処理には、2回目以降の加
熱処理の温度が1回目の加熱処理の温度よりも20℃以
上低くなるような温度差を与えることが望ましい。
【0039】さらにこの発明の方法においては、前述の
ような加熱処理21,22における有効性を判定するた
め、最終の加熱処理後の導電率(すなわち1回のみ加熱
処理を行なう場合はその1回目の加熱処理の後の導電
率、2回以上加熱処理を行なう場合は最終の加熱処理後
の導電率)が、1回目の加熱処理の直前の導電率よりも
1%IACS以上低下することと規定した。すなわち、材料
の導電率は、合金元素の固溶量、析出量を判断する上で
有効な指標となり、特にこの発明で対象としているAl
−Mg−Si(−Cu)系合金のような熱処理型合金で
は、熱処理の前後の導電率の変化がその熱処理工程での
固溶・析出の評価を行なう上で有効な指標となる。そし
てこの発明の方法では、前述のように最終の加熱処理の
後の導電率が1回目の加熱処理直前の導電率よりも1%
IACS以上低下していなければ、加熱処理の効果が充分に
得られず、塗装焼付後の強度が低くなるとともに、加熱
処理後の室温経時変化が大きくなる。
【0040】
【実施例】表1に示すように、JIS 6061合金に
相当する符号Aの合金およびAA6010合金に相当す
るBの合金について、常法に従ってDC鋳造し、得られ
た鋳塊を500℃で均質化処理した後、常法に従って熱
間圧延して厚さ4mmの熱延板とし、さらに板厚1mmまで
冷間圧延した。その後、535℃で40分溶体化処理し
て水焼入れした。その後、表2の熱処理番号1〜7に示
すような種々の条件で熱処理を行なった。ここで、溶体
化処理は電気炉で行ない、また表2に示す各熱処理には
赤外線ヒータを用いて急速加熱し、水焼入れした。
【0041】表2に示す各熱処理を行なった後、1週間
室温に放置した後の機械的性質および成形性を調べた。
また同じく1週間室温に放置した後、塗装焼付相当処理
として177℃×1hrの加熱を行ない、塗装焼付後強度
を調べた。さらに表2中に示す1回目の加熱処理直前の
導電率に対する最終の加熱処理後の導電率の低下量を調
べた。これらの結果を表3に示す。
【0042】なおここで、成形性評価のうち、エリクセ
ン試験はグラファイトグリース潤滑によりJIS−B法
にて行なった。また張出試験はφ100mmの球頭ポンチ
を用い、塩ビフィルムを貼った状態で行なった。さらに
LDR(限界絞り比)は、600kgのしわ抑えを加えた
状態でジョンソンワックス潤滑にてφ50mmのポンチで
絞り試験を行なって調べた。また曲げ性は、180°曲
げ試験における最小曲げ半径で評価した。さらに、加熱
処理前後の導電率測定は、渦電流式のシグマテスターを
用いた。また表3中の塗装焼付後の強度の欄中のΔYS
は、塗装焼付相当処理前の母材のYSに対する塗装焼付
相当処理後のYS上昇量を示した。
【0043】一方、表2に示した加熱処理の後の室温で
の経時変化、特に機械的性質(TS,YS,EL)およ
び成形性(エリクセン値)の経時変化を調べた結果を表
4に示す。ここで経時変化は、加熱処理後、1日、1週
間、1ケ月、および3ケ月の各経過時点での特性を調べ
た。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】表2に示した各熱処理のうち熱処理番号4
は安定化処理の時間が長過ぎた比較例、熱処理番号5は
1回目の加熱処理の温度が高過ぎた比較例、熱処理番号
6は1回目の加熱処理の時間が長過ぎた比較例であり、
これらの場合は塗装焼付前の強度が高過ぎて成形性が劣
り、また塗装焼付による強度向上も充分ではなかった。
また熱処理番号7は溶体化処理後に熱処理を行なわなか
った従来例であり、この場合、塗装焼付前(最終熱処理
後1週間経過時)の強度が高過ぎて成形性が劣るばかり
でなく、最終熱処理後の機械的性質、成形性の経時変化
が著しかった。
【0049】これに対しこの発明の方法による熱処理番
号1〜3の場合は、いずれも塗装焼付前の強度が低くて
成形性に優れると同時に、塗装焼付による強度向上が充
分で塗装焼付後に高強度が得られ、しかも最終熱処理後
の機械的性質、成形性の室温経時変化が極めて少ないこ
とが確認された。
【0050】
【発明の効果】前述の実施例からも明らかなように、こ
の発明の方法によれば、JIS 6000番系の合金か
らなるアルミニウム合金板を製造するにあたって、塗装
焼付前の成形加工時においては低強度で成形性に優れる
と同時に、塗装焼付後においては充分な高強度を有し、
しかも最終熱処理後の室温での放置による機械的性質、
成形性の経時変化の少ない板を得ることができ、特に成
形加工時の形状凍結性および塗装焼付後の耐デント性が
優れている室温経時変化の少ない板を実際に量産的規模
で製造することができる。したがってこの発明の方法
は、自動車車体などの陸運車両の部品や電気機械用部品
等、成形加工および塗装焼付を施して使用される用途の
アルミニウム合金板の製造に最適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の方法における安定化処理の時間−温
度条件を規定する時間−温度座標を示す座標図である。
【図2】この発明の方法における溶体化処理後の熱処理
の代表的な4種のプロセスパターンを示すフローチャー
トである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22F 1/00 691 8719−4K C22F 1/00 691C 692 8719−4K 692A

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 JIS 6000番系に属するAl−M
    g−Si系のアルミニウム合金圧延板に対して、450
    〜580℃の範囲内の温度で溶体化処理して5℃/sec
    以上の冷却速度で冷却し、その後150〜320℃の範
    囲内の温度での1分以内の加熱処理を1回もしくは2回
    以上行なって、最終の加熱処理後の導電率を1回目の加
    熱処理直前の導電率よりも1%IACS以上低下させること
    を特徴とする、室温経時変化が少なくかつ成形性と塗装
    焼付後の強度の優れた成形加工用アルミニウム合金板の
    製造方法。
  2. 【請求項2】 JIS 6000番系に属するAl−M
    g−Si系のアルミニウム合金圧延板に対して、450
    〜580℃の範囲内の温度で溶体化処理して5℃/sec
    以上の冷却速度で冷却し、その後、横軸の時間軸を対数
    目盛とし縦軸の温度軸を等間隔目盛とした図1に示す時
    間−温度座標上におけるA点(0.5時間、180℃)、
    B点( 0.5時間、100℃)、C点(4時間、60
    ℃)、D点(24時間、60℃)、E点(24時間、1
    00℃)、F点(4時間、180℃)の各点を順次結ぶ
    各線分AB,BC,CD,DE,EF,FAによって取
    囲まれる領域内(但し各線分上の点を含む)の時間−温
    度条件で安定化処理を行ない、さらにその後150〜3
    20℃の範囲内の温度での1分以内の加熱処理を1回も
    しくは2回以上行なって、最終の加熱処理後の導電率を
    1回目の加熱処理直前の導電率よりも1%IACS以上低下
    させることを特徴とする、室温経時変化が少なくかつ成
    形性と塗装焼付後の強度の優れた成形加工用アルミニウ
    ム合金板の製造方法。
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