JP6768568B2 - プレス成形性、リジングマーク性、bh性に優れたアルミニウム合金板 - Google Patents
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これらの組織制御の手段の中で、r値を制御して自動車のアウタパネルなどへのプレス成形性を向上させるために、集合組織を制御することも、従来から種々提案されている。
([Cube]+[CR]+[RW]+[Goss]+[Brass]+[S]+[Cu]+[PP])/8≦1.0(%) ・・・ (1)
(式中、[x]は、板幅方向500μm毎の板断面における方位xの面積率の標準偏差(%)を示す。)
前記特許文献4では、冷延前焼鈍および中間焼鈍を比較的低温で行うことで、このような集合組織を得て、リジングマークを抑制する方法が提案されている。
ただ、この手法ではCube方位の面積率自体が比較的高くなり、r値の異方性が高く、r45が低くなり、プレス成形性が低下することが懸念される。
このため、本発明では、板の主要な集合組織を制御し、r値の異方性を制御してプレス成形性を向上させる。一方、Cube方位については、板表面における結晶方位集合組織を適正に制御してCube方位面積率の標準偏差を低くし、リジングマーク性を向上させる。
これによって、本発明によれば、強度水準を高く維持したまま、比較的低くなりやすい45°方向のr値を0.45以上で、かつr値の異方性Δrを0.20以下としてプレス成形性を向上させることができる。また、合わせてリジングマークの発生が抑制された優れた表面性状に制御することができ、プレス成形性、リジングマーク性、BH性に優れた6000系アルミニウム合金板が得られる。
先ず、本発明のAl−Mg−Si系(以下、6000系とも言う)アルミニウム合金板の化学成分組成について、以下に説明する。
本発明では、前記自動車の外装材(アウタパネル材)などの素材板として必要な、プレス成形性、リジングマーク性、BH性、そして、好ましくは溶接性、耐食性などの諸要求特性を、6000系アルミニウム合金板の組成の面から満たすようにする。但し、この場合でも、従来の組成や製造条件を大きくは変えないことを前提とする。
ここで、前記アルミニウム合金板のプレス成形性とは、具体的には、前記板の圧延方向に対して各々、0°方向のr値をr0 、45°方向のr値をr45、90°方向のr値をr90とした時の、前記r45が0.45以上であるとともに、r値の異方性を示す指標である、1/4×(r0−2×r45+r90)と規定されるΔrが0.20以下であることが好ましい。
また、前記アルミニウム合金板のリジングマーク性とは、具体的には、リジングマークの発生が抑制された表面性状に優れたものであることが好ましい。
また、前記アルミニウム合金板のBH性とは、具体的には、前記板を185℃×20分の人工時効硬化処理した際の0.2%耐力が210MPa以上で、かつ耐力増加量が100MPa以上であることが好ましい。
この組成に加えて、前記アルミニウム合金板が、更に、質量%で、Fe:0.05〜0.5%、Zr:0.04〜0.1%、Cr:0.04〜0.3%、V:0.02〜0.1%、Ag:0.01〜0.1%、Sn:0.001〜0.1%、Zn:0.01〜0.3%のうちの一種または二種以上を選択的に含んだ組成としてもよい。
Siは、Mgとともに、固溶強化と、塗装焼き付けなどの低温での人工時効処理において、強度上昇に寄与するMg−Si系析出粒子を形成して、人工時効硬化能(BH性)を発揮し、アウタパネルなど自動車パネル材としての必要な強度(耐力)を得るための必須な元素である。
Mgは、Siとともに、固溶強化と塗装焼き付けなどの人工時効処理時において、強度上昇に寄与するMg−Si系析出粒子を形成して、人工時効硬化能(BH性)を発揮し、自動車パネル材としての必要な耐力を得るための必須な元素である。
Mg含有量が少なすぎると、Mg−Si系析出物の生成量が不足するため、BH性が低下して、焼付け塗装処理後の強度が低下する。一方、Mg含有量が多すぎると、粗大な晶出物および析出物が形成されて、熱間圧延中に大幅な板割れが生じる。したがって、Mgの含有量は0.3〜1.5%の範囲とする。
ここで、板に含有するSi、Mgの存在形態として、製造方法や製造条件などにより、添加したSiおよびMgが粗大な第2相粒子として多く分散、析出し、板の溶体化処理後の固溶Si量および固溶Mg量が少なくなると、最終調質処理後の時効硬化処理(塗装焼付け硬化処理など)における、0.2%耐力の上昇量が小さく、BH性が低下して、外装材としての強度が不足する可能性がある。
したがって、前記アルミニウム合金板のBH性確保のためには、前記アルミニウム合金板の溶体化処理後あるいは最終調質処理後の固溶Mg量および固溶Si量を確保する必要がある。具体的には、この固溶Mg量および固溶Si量の目安として、最終調質処理後の前記アルミニウム合金板を、20〜30℃で90日放置した後の、導電率が47IACS%以下であることが必要である。
ここで、前記アルミニウム合金板の導電率測定のタイミングを、圧延板製造の際の最終調質処理後20〜30℃で90日放置した後と、あえて規定したのは、最終調質処理後の室温時効の経過時間にて変化する、前記アルミニウム合金板の導電率測定の再現性を図るためである。
また、ここで言う最終調質処理とは、圧延板の溶体化および焼入れ処理の後に、更に、予備時効処理などの低温での熱処理が施されて最終とする場合には、この低温での熱処理を最終調質処理とし、前記溶体化および焼入れ処理が最終の熱処理の場合には、この溶体化および焼入れ処理を最終調質処理とする。
Mnは、鋳造時や均質化熱処理時に、第2相粒子を形成し、これらが再結晶後の結晶粒界移動の障害として作用する効果があるため、微細な結晶粒を得ることができる効果がある。Mnの含有量が0.5%超であると、粗大な第2相粒子が形成され、プレス成形性や溶接性が低下する。したがって、Mnの含有量は0.01〜0.5%、好ましくは0.1〜0.3%とする。
Cuは、比較的低温かつ短時間の人工時効処理条件において、時効析出粒子の形成を促進させる効果を有しており、また固溶したCuは、成形性を向上させることができる元素である。Cuの含有量が1.0%超であると、耐応力腐食割れ性、糸錆性および溶接性が低下する。したがって、Cuの含有量は0.001〜1.0%、好ましくは0.1〜0.8%とする。
これらの元素は、共通して板を高強度化させる効果があるので、本発明では同効元素と見なせ、必要により選択的に含有させるが、その具体的な機構には、共通する部分も、異なる部分も勿論ある。
これら記載した以外の、Ti、Bなどのその他の元素は不可避的な不純物である。Tiは、Bとともに、粗大な化合物を形成して機械的特性を劣化させる。ただ、微量の含有によって、アルミニウム合金鋳塊の結晶粒を微細化する効果もあるので、6000系合金としてJIS規格などで規定する範囲での各々の含有を許容する。この許容量の例として、Tiは0.1%以下、好ましくは0.05%以下とする。また、Bは0.03%以下とする。
本発明では、強度水準を高く維持したまま、比較的低くなりやすい45°方向のr値を0.45以上で、かつr値の異方性Δrを0.20以下とr値を制御して、プレス成形性を向上させ、かつr値の制御とリジングマーク抑制を両立させるために、板における各結晶方位集合組織成分の見直しを行った。
その結果、前記のようにr値を制御するためには、SEM−EBSD法により評価した、圧延方向に平行な方向の縦断面における集合組織の中で、相対的に低くなりやすい45°方向のr値(r45)を高める、結晶方位の集積度を積極的に制御することが重要であることを見出した。
その一方で、板をプレス成形した後のパネル表面のリジングマークを抑制して、外装材としての優れた表面性状(リジングマークが無い塗膜外観、鮮鋭性、光沢性)を有するためには、板表面のEBSD測定で評価した集合組織の中で、Cube方位の分布を制御することが重要であることを見出した。
ここで、前記板の圧延方向に平行な方向の断面とは、前記板の任意の部位を圧延方向に平行な方向に、前記板の平面方向(水平方向)に対して、垂直方向(縦方向)に切断した断面(縦断面)を言う。
これによって、前記アルミニウム合金板のプレス成形性として、前記板のr45を0.45以上とでき、前記板のr値の異方性を示す指標である前記Δrを0.20以下とすることができる。
ここで、前記矩形領域は、板表面の圧延方向に直角な方向(板の幅方向)に300μmの長さ×圧延方向に平行な方向(板の長手方向)に2000μmの長さの矩形領域であり、この矩形領域にて測定されるCube方位面積率をWとする。そして、この矩形領域を前記板の圧延方向に直角な方向(板の幅方向)に亙って10個並列した、これら各矩形領域における各々のCube方位面積率Wの、前記10個の領域における標準偏差を求める。
前記Cube方位面積率の標準偏差が3.0%よりも大きいと、Cube方位が筋状に分布しやすく、リジングマークが発生しやすい。このため、前記Cube方位面積率の標準偏差が3.0%以下であることが必要で、より好ましくは2.5%以下である。
通常のアルミニウム合金においては、下記の結晶方位集合組織の存在が知られており、これら結晶方位の体積分率に応じて、等しく引張変形が加わった場合でも、結晶方位によって、それぞれ変形状態が異なる。
Goss方位:{011}<100>
Cupper方位:{112}<111>
Brass方位:{011}<211>
S方位:{123}<634>
P方位:{011}<211>
Q方位:{130}<312>
以上の本発明で規定する各結晶方位集合組織は、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)または電界放出型走査電子顕微鏡(Field Emission-Scanning Electron Microscope:FE−SEM)を使用し、SEM−EBSD法によって評価する。測定に供する試料は、最終調質処理を実施した冷延板に対し、その冷延板表面を機械研磨、バフ研磨した後、電解研磨を行い、表面の酸化皮膜を除去するなど、板の表面を調製する。
SEM−EBSD法は、前記FE−SEMの鏡筒内にセットしたAl合金板の試料に、電子線を照射して、その後方散乱電子の回折パターンをEBSD装置(例えば、TSL社製のEBSD測定・解析システム:OIM(Orientation Imaging Macrograph) Data & Analysis)に取り込み、結晶方位解析をしながら試料表面を1μmおきに走査する。これにより、各点でのEBSP(Electron Back Scatter Diffraction Pattern)を得てその指数付けを行い、電子線照射部位の結晶方位を求める。得られた結晶方位測定データを圧延方向軸周りに90°回転、さらに、圧延面法線方向に90°回転操作し、測定領域全域においてEBSDによる結晶方位測定を行った際の、結晶方位分布関数(ODF)や面積率を計算し求める。これらFE−SEMにEBSDシステムを搭載した結晶方位解析法の詳細は、神戸製鋼技報/Vol. 52 No.2(Sep. 2002)P66−70などに詳細に記載されている。
前記板の圧延方向の平行な方向での縦断面での結晶方位集合組織の分布状態は、前記SEM−EBSD法を用い、Cupper方位、Brass方位、S方位、P方位、Q方位の各ピーク強度を、結晶方位分布関数(ODF)を用いて求める。
試料は、前記表面を調製した板の圧延方向に平行な方向の断面として、前記板の任意の部位を圧延方向に平行な方向に、板の平面方向(水平方向)に対して垂直方向(縦方向)に切断して、測定対象である断面(縦断面)を出して調整する。そして、この試料の断面の板厚方向全体と、圧延方向1000μmの範囲で囲まれる領域を測定し、測定視野は2視野として、測定値はその平均とする。
その際、各方位の3つのオイラー角は以下の通りとする。
φ1:0°かつΦ:0°かつφ2:0°はCube方位。
φ1:0°かつΦ:45°かつφ2:0°はGoss方位。
φ1:35°かつΦ:45°かつφ2:0°はBrass方位。
φ1:0°かつΦ:30°かつφ2:45°はCupper方位。
φ1:58°かつΦ:29°かつφ2:63°はS方位。
φ1:70°かつΦ:45°かつφ2:0°はP方位。
φ1:45°かつΦ:15°かつφ2:10°はQ方位。
板表面(板の酸化皮膜を除いた圧延面)の集合組織を測定する場合には、前記表面を調製した板の表面における結晶方位集合組織の分布状態を、前記SEM−EBSD法を用い、まず、圧延幅方向300μm×圧延長手方向2000μmに亙る矩形領域における、Cube方位の面積率Wを測定する。
そして、この測定を、前記矩形領域に圧延幅方向に亙って隣接する同一面積の矩形領域10個分で測定し、これら合計10個の矩形領域におけるCube方位の面積率Wの標準偏差を求め、評価する。
次に、本発明のアルミニウム合金板の製造方法について、以下に説明する。本発明に係る製造方法は、合金鋳塊を比較的高温で均質化熱処理し、冷間圧延中に中間焼鈍を実施し、かつ熱間圧延から中間焼鈍を経て最終板厚までの冷間圧延における総圧延率(総板厚減少率)を80%以上とすることで、板材内の集合組織成分の制御および板表面における筋状のCube方位を減少させるところに大きな特徴を有するものである。
前記した組成を有するアルミニウム合金を溶解した溶湯から、所定形状の鋳塊を作製する。アルミニウム合金を溶解、鋳造する方法は、特に限定されず、常法あるいは公知の方法を用いればよい。
次いで、前記鋳造されたアルミニウム合金鋳塊に、熱間圧延に先立ち均質化熱処理(均熱処理)を施す。この均質化熱処理は、鋳造時の不均一な組織を均一にするために行う。均質化熱処理温度は、500℃以上で融点未満が好ましい。500℃未満では、第2相粒子の分散が多くなり、人工時効後の強度が低下しやすくなる。このため、均質化熱処理温度は500℃以上が好ましく、より好ましくは520℃以上である。
なお、均質化熱処理は、上記条件で、通常の1回だけ行えば良く、一度500℃以上で熱処理し、室温まで冷却した後に、500℃以下の温度に再度加熱するような2回の均質化熱処理、あるいは室温まで冷却せずに500℃以下の温度に再度加熱するような2段の均質化熱処理は行う必要は無い。これら2回あるいは2段均質化熱処理を行うと、添加したMgおよびSiが粗大な第2相粒子として多く分散し、溶体化処理後の固溶MgおよびSi量が少なくなる。このため、最終調質処理後の人工時効硬化処理(塗装焼付け処理)における0.2%耐力の上昇量が小さく、BH性が低下し、強度が不足する可能性がある。
前記均質化熱処理の後に、所定の厚みとするために熱間圧延を行う。熱間圧延は、圧延する板厚に応じて、粗圧延工程と仕上げ圧延工程に分けられる。これら粗圧延工程と仕上げ圧延工程では、リバース式またはタンデム式などの圧延機が適宜用いられる。
前記熱間圧延にて得られた板材は、熱間圧延から中間焼鈍までの板厚減少率60%以上が好ましく、より好ましくは65%以上である。また、熱間圧延から溶体化処理までの総板厚減少率は80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上である。熱間圧延から中間焼鈍までの冷間圧延における板厚減少率が60%未満、または熱間圧延から溶体化処理までの総板厚減少率が80%未満であると、歪量が不足し、Brass方位、Cupper方位、S方位、P方位、Q方位の形成量が減少するため、r45が低くなりやすい。
中間焼鈍は、400℃以上の温度で、5℃/s以上の昇温速度にて行う。中間焼鈍温度が400℃未満の場合、再結晶が促進されず、かつCube方位が筋状に形成しやすい。そのため、中間焼鈍温度は400℃以上が好ましく、より好ましくは450℃以上である。また、中間焼鈍における昇温速度が5℃/s未満の場合、Cube方位が筋状に形成し、その標準偏差が4.0%以上となりやすく、リジングマークが発生しやすい。そのため、中間焼鈍における昇温速度は5℃/s以上が望ましく、より好ましくは10℃/s以上である。
冷間圧延後、溶体化焼入れ処理を行う。溶体化処理は、500℃〜570℃で0〜20s保持する条件で行い、その後10℃/s以上の冷却速度で焼入れ処理を行うことが望ましい。焼入れ処理の冷却速度が遅いと、結晶粒界上にSi、Mg−Si系析出物が形成しやすくなり、プレス成形や曲げ加工における割れの起点となりやすく、成形性が低下する。この冷却速度を確保するために、焼入れ処理はファンなどの空冷、ミスト、スプレー、浸漬などの水冷手段や条件を各種選択して用い、冷却速度を10℃/s以上とする。
機械的性質の測定に供する引張試験片は、前記供試板から引張方向が圧延方向に平行、45°方向および垂直となるように、JIS2201の13A号試験片(20mm×80mmGL×板厚1mm)を採取および作製し、室温にて引張試験を行った。引張試験は、0.2%耐力測定までは5mm/min、耐力以降を30mm/minとし、0.2%耐力、塑性歪10%付加時の、前記圧延方向に対して平行方向のr値r0、45°方向のr値r45、垂直方向のr値r90を各々測定した。そして、Δrを、1/4×(r0−2×r45+r90)から算出した。これらの結果を表3に示す。なお、引張試験の測定数は2回とし、各種特性は平均値で求めた。
ここで、自動車外装材として、アルミニウム合金板のプレス成形性は、前記r45が0.45以上であるとともに、前記Δrが0.20以下で合格とした。
BH性(ベークハード性)は、前記大型パネルへの成形を模擬して、前記供試板に、この板の圧延方向に2%のひずみの引張変形を予め付与した後で、前記大型パネルの時効硬化処理(塗装焼き付け処理)を模擬して、185℃×20分の人工時効硬化処理(BH)後の板から、圧延方向に対して直角方向となる、前記引張試験片を採取し、前記要領にて引張試験を行って、0.2%耐力を各々測定した。そして、前記時効硬化処理前における0.2%耐力値を引くことにより、時効硬化処理による耐力上昇量を算出した。
ここで、自動車外装材として、アルミニウム合金板のBH性は、BH後の0.2%耐力が210MPa以上で、かつBHによる耐力増加量が100MPa以上で合格である、
前記供試板から切り出した各試験片に対し、圧延方向に垂直方向に15%の塑性歪みを加えた後、ED塗装を施してリジングマークの有無を目視評価した。自動車外装材として、リジングマークの評価は、発生していないものを○、明瞭なリジングマークが発生しているものを×とした。
前記供試板の集合組織は、前記したSEM−EBSD法にて、日本電子社製のFE−SEM(JSM−7100F)を用い、加速電圧20kVの条件の下、株式会社TSLソリューション社製の測定ソフト(TSL−OIM Data Collection Ver. 5)にて、前記した所定の観察面および前記所定の測定矩形領域における結晶方位を測定した。続いて、株式会社TSLソリューション社製の測定ソフト(TSL−OIM Data Collection Ver. 6. 2)にて、各結晶方位集合組織を解析し、集積度および標準偏差を求めた。なお、本解析における電子線の間隔(ステップ)は2μmとした。その結果を表3に併記する。
前記供試板の導電率は、日本フェルスター株式会社製の導電率測定計(SIGMATEST D 2.068)にて、板表面を20℃に保持した状態で5点測定し、それらの平均値をその試料の導電率とした。
このため、表3に示す通り、各実施例は、本発明で規定する、Si、Mgの固溶量と結晶方位集合組織とを有する。即ち、r値の制御とリジングマーク抑制を両立するために、板の比較的広域な領域における結晶方位の分布状態を、本発明の規定範囲内に制御することができている。また、BH性を確保するために十分なSi、Mgの固溶量が確保されている。
この結果、各発明例は、r値の制御(プレス成形性)、リジングマーク抑制、BH性が互いに両立されている。
すなわち、各実施例は、前記アルミニウム合金板のプレス成形性が、前記r45が0.45以上であるとともに、前記Δrが0.20以下であり、リジングマークの発生が無い表面性状に優れたものである。また、前記アルミニウム合金板のBH後の0.2%耐力が210MPa以上で、かつ耐力増加量が100MPa以上を満足する。したがって、各実施例は自動車外装材の要求特性を満足している。
Claims (3)
- 質量%で、Si:0.4〜1.5%、Mg:0.3〜1.5%、Mn:0.01〜0.5%、Cu:0.001〜1.0%を含み、残部がAlおよび不可逆的不純物からなり、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板であって、前記板の圧延方向に平行な方向の断面における集合組織として、前記板の断面の板厚方向全域に亙ってSEM−EBSD法により測定した結晶方位分布関数により求められる、Cupper方位、Brass方位、S方位、P方位、Q方位の合計ピーク強度が、7.0≦[Cupper]+[Brass]+[S]+[P]+[Q]≦15.0を満たし、前記板の表面における集合組織として、前記板表面の圧延方向に直角な方向300μm×圧延方向に平行な方向2000μmの矩形領域をSEM−EBSD法により測定した際のCube方位面積率をWとしたとき、前記矩形領域を前記板の圧延方向に直角な方向に亙って10個並列した領域における前記Cube方位面積率Wの標準偏差が3.0%以下であって、さらに、前記アルミニウム合金板の、最終調質後に20〜30℃で90日放置した後の導電率が47IACS%以下であることを特徴とする、プレス成形性、リジングマーク性、BH性に優れたアルミニウム合金板。
- 前記アルミニウム合金板が、更に、質量%で、Fe:0.05〜0.5%、Zr:0.04〜0.1%、Cr:0.04〜0.3%、V:0.02〜0.1%、Ag:0.01〜0.1%、Sn:0.001〜0.1%、Zn:0.01〜0.3%の範囲で、一種または二種以上を含有する請求項1に記載のプレス成形性、リジングマーク性、BH性に優れたアルミニウム合金板。
- 前記アルミニウム合金板のプレス成形性が、前記板の圧延方向に対して各々、0 °方向のr値をr0 、45°方向のr値をr45、90°方向のr値をr90とした時の、前記r45が0.45以上であるとともに、r値の異方性を示す指標として、1/4×(r0−2×r45+r90)と規定されるΔrが0.20以下であり、前記アルミニウム合金板のBH性が、前記板を185℃×20分の人工時効硬化処理した際の0.2%耐力が210MPa以上で、かつ耐力増加量が100MPa以上である、請求項1または2に記載のプレス成形性、リジングマーク性、BH性に優れたアルミニウム合金板。
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