JP2007239005A - 室温非時効性、成形性及び塗装焼付け硬化性に優れた6000系アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】常温非時効性、成形性及び塗装焼付け硬化性に優れた6000系アルミニウム合金板の製造方法において、生産性を向上させる。
【解決手段】質量%で、Mg:0.4〜1.0%、Si:0.5〜1.5%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなり、480〜580℃で溶体化処理を施し、該溶体化後に5℃/秒以上で60〜120℃に急冷し、該急冷後60〜120℃の温度域で5秒以上5分以内保持する低温予備時効処理を施し、その後150〜200℃の温度域で5秒以上5分以内保持する高温予備時効処理を施し、さらに、60〜120℃の温度域で1分以上1時間以内保持する最終時効処理を施すことを特徴とする常温非時効性、成形性及び塗装焼付け硬化性に優れた6000系アルミニウム合金板の製造方法である。さらに、Cu:0.1〜1.0%を含有させても良い。
【選択図】なし
【解決手段】質量%で、Mg:0.4〜1.0%、Si:0.5〜1.5%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなり、480〜580℃で溶体化処理を施し、該溶体化後に5℃/秒以上で60〜120℃に急冷し、該急冷後60〜120℃の温度域で5秒以上5分以内保持する低温予備時効処理を施し、その後150〜200℃の温度域で5秒以上5分以内保持する高温予備時効処理を施し、さらに、60〜120℃の温度域で1分以上1時間以内保持する最終時効処理を施すことを特徴とする常温非時効性、成形性及び塗装焼付け硬化性に優れた6000系アルミニウム合金板の製造方法である。さらに、Cu:0.1〜1.0%を含有させても良い。
【選択図】なし
Description
本発明は、塗装焼付け硬化性に優れた6000系アルミニウム合金板の製造方法に関し、特に、自動車ボディパネル等、成形加工ならびに塗装焼付け処理を施して用いられる、塗装焼付け硬化性に優れた6000系アルミニウム合金板及びその製造方法に関するものである。
近年、自動車の燃費向上を目的とした車体軽量化の要望が高まっており、軽量化手段の一つとして自動車ボディパネル等へのアルミニウム合金板が使用されている。熱処理型のAl−Mg−Si系合金(6000系アルミニウム合金といい、単に、6000系合金ともいう。)は、塗装焼付け工程の熱処理により降伏強度が上昇する性質(塗装焼付け硬化性という。)を有するため、板厚の薄肉化ひいては車体の軽量化に有利であり、ボディパネル材として使われることが多くなってきている。
従来、6000系合金の塗装焼付け硬化性については、溶体化・焼入れ後に熱処理を加えることによって降伏強度を上昇させる方法が種々開示されている。
例えば、特許文献1では、溶体化焼入れ処理後、72時間以内に40〜120℃の温度で8〜36時間の最終熱処理を行う発明が開示されている。
また、特許文献2では、溶体化処理後室温以上の50〜130℃に温度に焼入れて、その温度に1〜48時間の長時間熱処理を行った後、さらに140〜180℃の温度範囲で3〜10分間の低温加熱処理を行う発明が開示されている。
また、特許文献3でも、溶体化焼入れ後60分以内に40〜120℃の温度で50時間以上の熱処理を行う発明が開示されている。
また、本発明者の一部は、特許文献4に溶体化処理後に25℃以下まで5℃/秒以上で急冷し、急冷後5分以内保持し、その後60〜120℃で5秒〜120分保持する低温予備時効処理を施し、150〜240℃で30秒〜30分間保持する高温予備時効処理を施す発明を開示した。
また、特許文献5には、成形性及び塗装焼付時の強度上昇のため、溶体化処理後に80℃/min以上で50〜150℃まで冷却し、そのまま50〜150℃に0.5〜50時間保持し、その後80℃/min以上において180〜280℃で0〜170秒保持する発明が開示されている。
また、特許文献6に、板製造後の経時変化を抑制し、良好な成形加工性、十分な焼付き硬化性を得るために、保持処理、再加熱処理の後に、140℃以下まで冷却後、72時間以内に50〜140℃で0.5〜50時間保持する安定化処理を行うことが開示されている。
しかしながら、上記従来の特許文献1〜3に記載の発明は、自動車ボディパネル用材料として塗装焼付け時に大きな強度上昇を図り、かつ板製造後から成形加工までの室温放置中の自然時効による強度上昇を抑えるためには、いずれの場合も溶体化処理以降に長時間の熱処理を行う必要があり、生産性を犠牲にして製造しなければならないという問題がある。
また、特許文献4及び特許文献5に開示された発明は、溶体化処理後に低温予備時効処理、高温予備時効処理を施すという点では類似している。しかし、この2段時効処理ではアルミ合金中の過飽和元素が大量に残存するため、本発明ではさらに60〜120℃で1分以上1時間以内の最終予備時効処理を施している点で相違する。本発明のように2段時効処理の後、さらに時効処理を行って過飽和元素を低減すると、アルミ板製造後の室温時効によるクラスター発生を抑えることができ、自然時効による強度上昇を抑制する効果が極めて大きい。
また、特許文献6に開示された発明は、請求項2に溶体化処理後に150℃以下に冷却している。しかしこれは溶体化後の冷却が目的であり保持時間は特に明記されておらず、72時間以内と記載されているのは次工程の処理までの時間で保持温度は記載されていない。それに対し本発明は溶体化後60〜120℃で5秒〜120保持する低温予備時効処理を施すのは高密度低成長のβ”を生成することを目的としている点で本発明と相違する。
自動車ボディパネル向けの6000系アルミニウム合金の需要は近年増加しつつあり、今後のさらなる需要増加に対応していくためには生産性に優れた製造方法が必要とされるようになってきた。
そこで、本発明は、上記従来技術の生産性の問題を有利に解決できる、特に自動車ボディパネルの外板等に好適な、板製造後から成形加工までの室温放置中の自然時効による強度上昇が抑制され、すなわち室温非時効性に優れ、成形性及び塗装焼付け硬化性に優れた6000系アルミニウム合金板の製造方法を提供することを目的とするものである。
6000系合金における時効硬化性は、微細な析出物が高密度に形成されることによって生じる。そこで、本発明者らは、塗装焼付けという170〜180℃程度で20〜30分の短時間の熱処理によって大きな強度上昇量を得るためには、塗装焼付け処理前の材料はどのような状態にあるべきかについて鋭意検討を行った。
塗装焼付け処理のような温度で形成される析出物は、6000系合金の場合MgとSiから構成される金属間化合物(β”相と呼ばれる)である。このβ”相を板の製造段階で微細かつ高密度に形成させておくことができれば、塗装焼付け処理段階でこのβ”相を成長させて大きな強度上昇を得ることができるだけでなく、板製造後の室温放置中の経時変化をも抑制することができる。
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)質量%で、Mg:0.4〜1.0%、Si:0.5〜1.5%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金板に480〜580℃で溶体化処理を施し、該溶体化後に5℃/秒以上で60〜120℃に急冷し、該急冷後60〜120℃の温度域に5秒以上5分以内保持する低温予備時効処理を施し、その後150〜200℃の温度域に5秒以上5分以内保持する高温予備時効処理を施し、さらに60〜120℃の温度域に1分以上1時間以内保持する最終予備時効処理を施すことを特徴とする室温非時効性、成形性及び塗装焼付け硬化性に優れた6000系アルミニウム合金板の製造方法。
(2)質量%で、さらに、Cu:0.1〜1.0%を含有することを特徴とする上記(1)記載の室温非時効性、成形性及び塗装焼付け硬化性に優れた6000系アルミニウム合金板の製造方法。
(1)質量%で、Mg:0.4〜1.0%、Si:0.5〜1.5%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金板に480〜580℃で溶体化処理を施し、該溶体化後に5℃/秒以上で60〜120℃に急冷し、該急冷後60〜120℃の温度域に5秒以上5分以内保持する低温予備時効処理を施し、その後150〜200℃の温度域に5秒以上5分以内保持する高温予備時効処理を施し、さらに60〜120℃の温度域に1分以上1時間以内保持する最終予備時効処理を施すことを特徴とする室温非時効性、成形性及び塗装焼付け硬化性に優れた6000系アルミニウム合金板の製造方法。
(2)質量%で、さらに、Cu:0.1〜1.0%を含有することを特徴とする上記(1)記載の室温非時効性、成形性及び塗装焼付け硬化性に優れた6000系アルミニウム合金板の製造方法。
本発明により、自動車のエンジンフード、トランクリッド等のパネル材として好適な、高い塗装焼付け硬化性を有する6000系アルミニウム合金板を高生産性にて製造することが可能になり、産業上の貢献が極めて顕著である。
本発明者らは、6000系アルミニウム合金板の塗装焼付け硬化性を支配するβ”相形成挙動について鋭意検討を行い、その結果として見出された知見に基づき、溶体化処理後の熱処理パターン及び合金成分を適切に規定し、良好な塗装焼付け硬化性を有するアルミニウム合金板を、短時間の予備時効処理によって得ることが可能な本発明を成すに至った。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のアルミニウム合金板は、従来の一般的な方法にしたがって溶解、鋳造、熱間圧延、冷間圧延によって製造された板に対して、本発明で規定した溶体化処理及び低温予備時効処理、高温予備時効処理、さらに、最終予備時効処理(以下、低温予備時効処理、高温予備時効処理及び最終予備時効処理を総称して予備時効処理という。)を施すことによって製造される。ただし、鋳片に均質化焼鈍を施しても良く、また冷間圧延の途中に中間焼鈍を行っても構わない。
先ず、溶体化処理について説明を行う。従来の一般的な方法に従って得られた冷間圧延板に対して溶体化処理を施すが、溶体化処理温度は480℃未満ではMg2SiやSi相の固溶が不十分であり、塗装焼付け硬化性が低下するだけでなく、成形性も劣化する。一方、溶体化処理温度が580℃超では、共晶融解が起きる場合があり成形性の低下を招く恐れがあり、また、結晶粒の粗大化による肌荒れが生じやすくなり好ましくない。溶体化処理温度に到達後、保持時間は特に限定はしない。よって保持せずに直ちに冷却しても良いが、30分以内の所定時間保持することによりMg2SiやSi相の固溶が促進され、塗装焼付け硬化性、成形性が向上するため、30分以内の所定時間の保持が好ましい。しかし、溶体化処理温度での保持時間が30分を超えても効果があまり大きくなく、工業的にも時間を要し好ましくない。
溶体化処理後の冷却速度は、5℃/秒未満では冷却過程で結晶粒界にMg2Si相やSi相等が析出し、成形性、塗装焼付け硬化性が劣化するため、下限を5℃/秒とした。粒界析出を抑制し、溶質原子の過飽和度を十分に確保する点で好ましい下限は10℃/秒以上である。冷却速度の上限は特に規定はしない。
溶体化処理後の急冷温度及び低温予備時効処理条件の限定理由は以下の通りである。急冷温度及び低温予備時効処理温度が60℃未満では、クラスター(6000系アルミニウム合金において常温近傍で形成される溶質原子の集合体で、この相が形成されると塗装焼付け硬化性が阻害される。)が形成されてしまい、引き続き行う高温予備時効処理でのβ”相の析出促進ならびに析出組織の微細化効果が不十分となってしまう。一方、急冷温度及び低温予備時効処理温度を120℃超とするとβ”相の成長のため析出促進が大きくなりすぎて相自体が大きくなり微細化効果が十分に得られない。また、急冷温度を60〜120℃にすると、大きな規模な装置を必要とせず、アルミニウム合金板の変形を防止することができ、比較的簡単に冷却できる。
低温予備時効処理の保持時間については、5秒未満では上述の効果が確保できず、一方、5分超の保持を行っても高温予備時効処理によって初期強度が高くなり過ぎて、成形性が劣化してしまう。上記の理由により、溶体化処理後の急冷温度及び低温予備時効処理の温度範囲は60〜120℃とし、低温予備時効処理の保持時間は5秒〜5分間とした。
次に高温予備時効処理の説明を行う。高温予備時効処理温度は150℃未満では十分な塗装焼付け硬化性が確保できるようなβ”相を短時間に形成させることができない。また、200℃超では初期強度が高くなり過ぎて、成形性が劣化してしまう。また、保持時間については30秒未満では十分な塗装焼付け硬化性が確保できない。一方、5分超の保持を行うと強度が高くなり過ぎ、成形性が劣化してしまうばかりでなく、本発明が目的とする生産性を損なう。上記の理由により、高温予備時効処理条件は、150〜200℃の温度範囲において30秒〜5分間保持することを条件とした。
上記の低温予備時効処理及び高温時効処理を行ってもSiやMgはまだ過飽和状態で残っている。そのため、室温時効を行うとクラスターが多く発生し、塗装焼付け硬化性が劣化する。そこで、本発明では、低温予備時効処理及び高温時効処理を施した後、再度60〜120℃以下で1分以上1時間以内保持する最終予備時効処理を施す。これにより、過飽和状態のSi及びMgによるβ”の核を高密度に生成し、かつ高温で処理しないため成長を抑えるため初期強度も低く、過飽和元素が少なくなるため室温時効においてクラスターの発生が抑えられ、室温非時効性が向上し、かつ、β”の核が多いため塗装焼付け硬化性向上の効果が大きくなる。保持時間が1分未満では室温非時効性及び塗装焼付け硬化性の向上という効果が小さくなり、1時間超ではβ”が成長するため初期強度が高くなり塗装焼付け硬化性の効果が減少する。
最終予備時効処理後は、室温まで冷却する。この際の冷却速度は特に規定しないが、通常、最終予備時効処理後のアルミニウム合金板はコイル状であるため、徐冷される。
表1の成分組成を有する6000系アルミニウム合金を溶解し、DC鋳造法により鋳造した。得られた鋳塊に530℃で10時間の均質化焼鈍を施した後、510℃で熱間圧延を開始し、250℃で板厚を5mmとして熱間圧延を終了した。その後1mmまで冷間圧延を行い、表2に示すように、溶体化処理条件を変化させて、溶体化処理並びに低温予備時効処理、高温予備時効処理及び最終予備時効処理を施した。これらのアルミニウム合金板を、熱処理直後及び室温で90日間放置した後、引張特性、塗装焼付け硬化性を評価した。
引張特性は、板圧延方向(L方向)、圧延方向から45°の方向(D方向)、圧延方向に直角な方向(C方向)を長手とする、JIS Z 2201に準拠した5号試験片を採取して、JIS Z 2241に準拠して引張試験を行い、3方向の面内異方性を考慮した平均値で評価した。尚、耐力は成形性の観点より140MPa以下のものを良好として評価した。塗装焼付け硬化性は、C方向を長手として、引張試験機で2%の塑性歪を与えた後、170℃で20分の熱処理を行い、再び引張試験を行い、2%耐力を測定し、熱処理後の耐力が190MPa以上のものを良好として評価した。この結果を表3に示す。
実施例1と同様にして製造した、表1の成分組成を有するアルミニウム合金板に、表4に示すように、低温予備時効処理条件を変化させて、溶体化処理及び予備時効処理を施した。これらのアルミニウム合金板を、熱処理直後及び室温で90日間放置した後、引張特性、塗装焼付け硬化性を実施例1と同様にして評価した。結果を表5に示す。
実施例1及び2と同様にして製造した、表1の成分組成を有するアルミニウム合金板に、表6に示すように、高温予備時効理条件を変化させて、溶体化処理及び予備時効処理を施した。これらのアルミニウム合金板を、熱処理直後及び室温で90日間放置した後、引張特性、塗装焼付け硬化性を実施例1及び2と同様にして評価した。結果を表7に示す。
実施例1、2及び3と同様にして製造した、表1の成分組成を有するアルミニウム合金板に、表8に示すように、最終予備時効処理条件を変化させて、溶体化処理及び予備時効処理を施した。これらのアルミニウム合金板を、熱処理直後及び室温で処理直後及び90日間放置した後、引張特性、塗装焼付け硬化性を実施例1、2及び3と同様にして評価した。結果を表9に示す。
Claims (2)
- 質量%で、
Mg:0.4〜1.0%、
Si:0.5〜1.5%
を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金板に480〜580℃で溶体化処理を施し、該溶体化後に5℃/秒以上で60〜120℃に急冷し、該急冷後60〜120℃の温度域に5秒以上5分以内保持する低温予備時効処理を施し、その後150〜200℃の温度域に5秒以上5分以内保持する高温予備時効処理を施し、さらに60〜120℃の温度域に1分以上1時間以内保持する最終予備時効処理を施すことを特徴とする室温非時効性、成形性及び塗装焼付け硬化性に優れた6000系アルミニウム合金板の製造方法。 - 質量%で、さらに、
Cu:0.1〜1.0%
を含有することを特徴とする請求項1記載の室温非時効性、成形性及び塗装焼付け硬化性に優れた6000系アルミニウム合金板の製造方法。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2009135244A1 (de) * | 2008-05-09 | 2009-11-12 | Amag Rolling Gmbh | Verfahren zur wärmebehandlung eines walzguts aus einer aushärtbaren aluminiumlegierung |
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CN112048684A (zh) * | 2020-07-28 | 2020-12-08 | 佛山市三水凤铝铝业有限公司 | 一种提高铝合金冷成型尺寸精度稳定性的热处理方法 |
-
2006
- 2006-03-07 JP JP2006061533A patent/JP2007239005A/ja not_active Withdrawn
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