JP2019178420A - 自動車構造部材用アルミニウム合金板、自動車構造部材および自動車構造部材用アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents

自動車構造部材用アルミニウム合金板、自動車構造部材および自動車構造部材用アルミニウム合金板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】強度、成形性、圧壊性および耐食性がバランスよく優れた自動車構造部材用アルミニウム合金板、自動車構造部材、および自動車構造部材用アルミニウム合金板の製造方法を提供する。【解決手段】自動車構造部材用アルミニウム合金板は、質量%で、Mg:0.4%以上1.0%以下、Si:0.6%以上1.2%以下、Cu:0.7%未満を含有し、残部がAlおよび不純物からなるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板であって、耳率が−10.0%〜−3.0%である。【選択図】なし

Description

本発明は、通常の圧延によって製造されるAl−Mg−Si系(6000系)アルミニウム合金板であって、特に圧壊性に優れた自動車構造部材用アルミニウム合金板に関する。
本発明で言うアルミニウム合金板とは、熱間圧延や冷間圧延を実施した圧延板であり、溶体化処理および焼入れ処理などの調質が施された後であって、使用される自動車構造部材に成形され、塗装焼付硬化処理などの人工時効硬化処理される前の、素材アルミニウム合金板を言う。また、以下の記載ではアルミニウムを「アルミ」や「Al」とも言う。
近年、地球環境などへの配慮から、自動車車体の軽量化の社会的要求はますます高まってきている。かかる要求に答えるべく、自動車車体のうち、パネル(フード、ドア、ルーフなどのアウタパネル、インナパネル)や、バンパリーンフォース(バンパーR/F)やドアビームなどの補強材などの部分に、それまでの鋼板等の鉄鋼材料に代えて、アルミニウム合金材料が適用されている。
また、自動車車体の更なる軽量化のためには、自動車部材のうちでも特に軽量化に寄与する、サイドメンバー等のメンバ、フレーム類や、ピラーなどの自動車構造部材にも、アルミニウム合金材を適用することが求められている。これらの自動車構造部材には、上記自動車パネル材と同様の素材板の強度や成形性を保ちつつ、乗員の安全性を目的として、車体衝突時の衝撃吸収性や、圧壊性(耐圧壊性または圧壊特性)が優れたアルミニウム合金材を使用することが必要である。
上記圧壊性を測定する試験としては、例えば、ドイツ自動車工業会(VDA)で規格化されている「VDA238−100 Plate bending test for metallic materials」(以後、「VDA曲げ試験」と言う)がある。近年、ヨーロッパなどでは、自動車の衝突安全基準のレベルアップ(厳格化)に対応するため、VDA曲げ試験による評価が実施されており、より優れた圧壊特性を有するフレーム、ピラーなどの自動車構造部材が求められている。
自動車構造部材用6000系アルミニウム合金の圧壊性を向上させる手段として、従来、結晶粒のサイズや形態、Cube方位の面積率を制御する方法が公知であり、例えば、結晶粒の板厚方向の粒径を規定するとともに、板厚方向の粒径と圧延方向の粒径との比を制御した6000系アルミニウム合金板が開示されている(特許文献1を参照)。
また、Mg、SiおよびCuの添加量を調整し、板断面のCube方位の平均面積率を22%以上とした6000系アルミニウム合金板も提案されている(特許文献2を参照)。なお、圧壊性向上を目的とした上記特許文献2には、板の圧壊性の評価試験としての前記VDA曲げ試験が、自動車衝突時の圧壊性と相関性があることが記載されている。VDA曲げ試験により得られる曲げ角度は、圧壊性の優劣を定量的に評価することができる。
特開2001−294965号公報 特開2017−88906号公報
しかしながら、アルミニウム合金板の成形性と圧壊性、および強度と圧壊性とは、いずれもトレードオフの関係にあり、例えば、製造方法の調整により、成形性を向上させようとすると、圧壊性が低下する。また、アルミニウム合金中の金属含有量の調整により、強度を高くすると圧壊性が低下するという問題点が生じる。上述のごとく、自動車等の安全性の基準は年々厳格化しており、より安全性が高くなるような特性を有するアルミニウム合金板が求められている。従って、強度および成形性を低下させることなく、より優れた圧壊性を有するアルミニウム合金板の開発が期待されている。
また、自動車構造部材においては、強度、成形性および圧壊性に加え、構造部材としての信頼性の観点より、塩水などの腐食環境に対応する耐食性も必要となる。すなわち、アルミニウム合金を用いた構造部材においては、長期にわたり粒界腐食などが発生しないような優れた耐食性が求められる。
このような状況に鑑み、本発明の目的は、通常の圧延によって製造される6000系アルミニウム合金板であって、素材板の強度、成形性、圧壊性および耐食性がバランスよく優れている、自動車構造部材用アルミニウム合金板、自動車構造部材および自動車構造部材用アルミニウム合金板の製造方法を得ることである。
本発明者等が上記課題を解決するために検討を重ねた結果、アルミニウム合金の化学組成を適切に調整すると共に、アルミニウム合金の集合組織の異方性を耳率で規定し、この値を所定範囲に限定することにより、強度、成形性、圧壊性および耐食性がバランスよく優れたアルミニウム合金板を得ることができることを見出した。
すなわち、本発明に係る自動車構造部材用アルミニウム合金板は、質量%で、Mg:0.4%以上1.0%以下、Si:0.6%以上1.2%以下、Cu:0.7%未満を含有し、残部がAlおよび不純物からなるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板であって、耳率が−10.0%〜−3.0%であることを特徴とする。
本発明の好ましい実施形態に係る自動車構造部材用アルミニウム合金板は、前記Mgの含有量が、質量%で0.4%以上0.6%以下である。
本発明の好ましい実施形態に係る自動車構造部材用アルミニウム合金板は、前記Siの含有量が、質量%で0.6%以上0.8%以下である。
本発明の好ましい実施形態に係る自動車構造部材用アルミニウム合金板は、180℃の温度で20分間の人工時効処理を実施した後に、0.2%耐力が215MPa以上となるベークハード性を有する。
また、本発明に係る自動車構造部材は、上記いずれかの自動車構造部材用アルミニウム合金板を用いることを特徴とする。
また、本発明に係る自動車構造部材用アルミニウム合金板の製造方法は、質量%で、Mg:0.4%以上1.0%以下、Si:0.6%以上1.2%以下、Cu:0.7%未満を含有し、残部がAlおよび不純物からなるアルミニウム合金を鋳造する工程と、均質化熱処理する工程と、熱間圧延する工程と、冷間圧延する工程と、焼鈍する工程と、溶体化処理する工程と、焼入れする工程とを有するAl−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法であって、前記冷間圧延する工程における圧延率を40%以上に制御し、前記焼鈍する工程における熱処理温度を275℃以上に設定することを特徴とする。
本発明によれば、アルミニウム合金の化学組成を適切に調整すると共に、アルミニウム合金の集合組織の異方性を持たせることにより、強度、成形性、圧壊性および耐食性がバランスよく優れた自動車構造部材用アルミニウム合金板を提供することができる。
また、アルミニウム合金の化学組成を調整すると共に、その製造工程における冷間圧延率および焼鈍時の熱処理温度を調整することにより、強度、成形性、圧壊性および耐食性が優れた自動車構造部材用アルミニウム合金板および該アルミニウム合金板を用いた自動車構造部材を製造することができる。
圧壊性を評価するVDA曲げ試験の態様を示す斜視図である。 図1におけるポンチの正面図である。 図1におけるポンチの側面図である。
以下に、本発明の実施形態(本実施形態)に係る自動車構造部材用アルミニウム合金板の化学組成および耳率の限定理由、並びに自動車構造部材用アルミニウム合金板の製造方法における数値限定理由について詳細に説明する。
その前提として、本発明のAl−Mg−Si系(以下、「6000系」とも言う)アルミニウム合金板は、その用途が、従来の自動車パネル材ではなく、上述の自動車構造部材である。
このため、この自動車構造部材(以下、「構造部材」とも言う)は、上記の従来の自動車パネル材と同様の成形性に加え、自動車構造部材用途に特有の特性である優れた圧壊性、および人工時効後においても高い耐力を有することが要求される。これらの特性のどれが欠けても、本実施形態が目的とする構造部材としては不十分となる。
したがって、以下の本実施形態の要件の説明は、これら構造部材用とし、具体的な要求特性を満足および両立させるために意義づけられているものである。
なお、本実施形態において「〜」とは、その下限の値以上、その上限の値以下であることを意味する。
(アルミニウム合金板の化学組成)
上記構造部材の要求特性を化学組成の面から満たすようにするため、本実施形態に係るAl−Mg−Si系のアルミニウム合金板は、質量%で、Mg:0.4%以上1.0%以下、Si:0.6%以上1.2%以下、Cu:0.7%未満を含有し、残部がAlおよび不純物からなる。
上記Al−Mg−Si系アルミニウム合金における各元素の含有量の範囲と意義、あるいは許容量について以下に説明する。なお、各元素の含有量の%表示は、全て質量%の意味である。
<Mg:0.4%以上1.0%以下>
MgはSiとともに、焼付け塗装処理などの人工時効処理時に、MgSiなどの化合物相を形成して析出するため、Mgの含有量を適切に調整することにより、アルミニウム合金板の強度を高めることができる。
Mgの含有量が0.4%未満であると、構造部材としての十分な強度を得ることが困難になる。
一方、Mgの含有量が1.0%を超えると、鋳造時および溶体化焼入れ処理時に、MgSi等の化合物相が粗大な粒子として晶出又は析出し、これらが微小な破壊の起点として働くため、圧壊性が低下する。上記Mgの含有量は、好ましくは0.8%以下、より好ましくは0.6%以下である。
なお、本明細書において「アルミニウム合金板の強度」とは、溶体化処理および焼入れ処理されたアルミニウム合金板(人工時効前)の0.2%耐力の測定値(MPa)によって評価することができる。
また、このアルミニウム合金板に対して、2%以上の予ひずみを付加するとともに、180℃の温度で20分間の人工時効処理した後のアルミニウム合金板(人工時効後)の0.2%耐力の測定値によって評価することができる。
そして、これら0.2%耐力が高いほど強度が高く、高いベークハード性(BH性)を有することを意味する。
<Si:0.6%以上1.2%以下>
SiもMgとともに、焼付け塗装処理などの人工時効処理時に、MgSiなどの化合物相を形成して析出するため、Siの含有量を適切に調整することにより、アルミニウム合金板の強度を高めることができる。
Siの含有量が0.6%未満であると、構造部材としての十分な強度を得ることが困難になる。上記Siの含有量は、好ましくは0.7%以上、より好ましくは0.8%以上である。
一方、Siの含有量が1.2%を超えると、鋳造時および溶体化焼入れ処理時に、MgSi等の化合物相が粗大な粒子として晶出又は析出し、これらが微小な破壊の起点として働くため、圧壊性が低下する。上記Siの含有量は、好ましくは1.1%以下、より好ましくは1.0%以下、更に好ましくは0.8%以下である。
<Cu:0.7%未満>
Cuは0.7%以上に過剰に含有させると、時効析出とともに粒界近傍にCuの溶質欠乏層(precipitation free zoneまたはPFZとも言う)が形成され、腐食環境にて、粒内より電位的に卑なその層が選択的に溶解し、耐粒界腐食性(耐食性)が劣化する。
従って、Cuの含有量は0.7%未満とする。上記Cuの含有量は、好ましくは0.5%以下であり、より好ましくは0.3%以下である。なお、Cuの含有量の下限はなく、0%の場合を含む。
<その他の元素>
上記以外のその他の元素(以下に示す元素など)は、本実施形態では基本的に不純物である。スクラップなど、鋳塊の溶解原料などから含有される場合の許容量として、それぞれ以下の含有量を上限とする。なお、各含有量の下限はなく、0%の場合を含む。
Mn:1.0%以下、Fe:0.5%以下、Cr:0.3%以下、Zr:0.2%以下、V:0.2%以下、Ti:0.1%以下、Zn:0.5%以下、Ag:0.1%以下、Sn:0.15%以下
そして、この範囲内であれば、不可避的不純物として含有される場合だけでなく、積極的に添加された場合であっても本発明の効果を妨げない。
(アルミニウム合金板の板厚:1.5mm以上)
本実施形態のAl−Mg−Si系アルミニウム合金板の板厚の下限については特に限定されないが、自動車構造部材としての必要な強度、剛性を有するためには、板厚は、例えば1.5mm以上である。また、板厚の上限についても特に限定されないが、プレス成形などの成形加工の限界や、比較材としての鋼板からの軽量化効果を損ねない重量増加の範囲を考慮すると、例えば4.0mm以下である。この板厚の範囲から熱延板とするか、冷延板とするかが適宜選択される。
(耳率:−10.0%〜−3.0%)
アルミニウム合金板の耳率は集合組織の異方性を示し、特にCube方位の集積度と強い相関を持つ。耳率が−3.0%を超える場合、Al合金板のCube方位の集積度が弱く、圧壊中の曲げ変形におけるせん断帯の抑制がされないため、圧壊性が低下する。
一方、耳率が−10.0%未満の場合、Al合金板のCube方位の集積度が強過ぎ、Cube方位へひずみが集中する結果、破断伸びが低下、すなわち成形性が低下する。
<耳率の測定方法>
供試板から、外径66mmの円板状の試験片(ブランク)を打ち抜き、この試験片に対して直径40mmのポンチを用いてカッピングを施して、カップ径40mmの絞りカップを作製する。この絞りカップの耳高さを測定することにより、下記式(1)に基づき、耳率(%)を算出することができる。
下記式(1)において、hXは絞りカップの耳高さを表す。そして、hの添数字Xはカップ高さの測定位置を示し、Al合金板の圧延方向に対してX°の角度をなす位置を意味する。
耳率(%)=[{(h45+h135+h225+h315)−(h0+h90+h180+h270)}/{1/2(h0+h90+h180+h270+h45+h135+h225+h315)}]×100・・・(1)
なお、上記式(1)の意義を説明するものとして、以下の式(2)のように示すこともできる。
耳率(%)={(円筒容器の底面(圧延方向)を基準とした、45°方向4箇所の高さの平均値−円筒容器の底面を基準とした、0°、90°方向4箇所の高さの平均値)/(円筒容器の底面を基準とした0°、45°、90°方向8箇所の高さの平均値)}×100・・・(2)
(圧壊性)
圧壊性とは、自動車の衝突等の衝撃的な荷重が加わったときに、変形初期や途上で構造部材に割れや圧壊が発生せずに(あるいは発生しても)、最後まで変形する特性であり、圧壊性が良好な部材は、割れや圧壊が生じることなく(あるいは発生しても)、蛇腹状に曲げ変形する。
上述の通り、アルミニウム合金中のMg含有量およびSi含有量が本実施形態の範囲の上限を超えると、圧壊性が低下する。圧壊性は以下に示すVDA曲げ試験にて評価することができ、93°以上の曲げ角度となることが好ましく、100°以上であることがより好ましく、105°以上が更に好ましく、110°以上がより更に好ましい。
本実施形態においては、93°以上の曲げ角度となる圧壊性を有しているものを自動車構造部材用として合格と評価する。一方、この曲げ角度が93°未満の圧壊性では、自動車構造部材用として不十分である。
この圧壊性を評価する曲げ試験は、ドイツ自動車工業会(VDA)の規格であるVDA曲げ試験に従って実施する。
この試験方法を、図1において斜視図で示し、図2Aおよび図2Bにおいて、板状の押し曲げ治具であるポンチ3の正面図および側面図をそれぞれ示す。
まず、ロールギャップLが設けられ、互いに平行に配置された2個のロール2上に、図1に点線で示すように、ロール2に対して左右均等となる位置に板状試験片1を水平に載置する。
次に、板状試験片1の上方に、試験片1に対して垂直に立てるように板状の押し曲げ治具であるポンチ3を載置する。具体的には、ポンチ3の先端の辺がロールギャップLの中央に位置するように載置するとともに、板状試験片1の圧延方向と板状のポンチ3の延在方向とが、互いに直交する方向となるように、ロール2、試験片1、およびポンチ3を載置する。
そして、上方からポンチ3を板状試験片1の中央部に押し当てて荷重Fを印加し、この板状試験片1を前記狭いロールギャップLに向けて押し曲げ(突き曲げ)て、曲げ変形した板状試験片中央部を前記狭いロールギャップ内に押し込む。
この際に、上方からのポンチ3からの荷重Fが最大となる時の板状試験片1の中央部の曲げ外側の角度を曲げ角度(°)として測定して、その曲げ角度の大きさで圧壊性を評価する。すなわち、曲げ角度が大きいほど、板状試験片は途中で圧壊せずに曲げ変形が持続しており、圧壊性が高いと判断することができる。
このVDA曲げ試験の試験条件としては、板状試験片1は、板厚が2.0mmであって、一辺の長さb:60mm×他片の長さl:60mmの正方形形状とし、2個のロール2の直径Dは各々30mm、ロールギャップLは板状試験片1の板厚の2.0倍の4.0mmとした。Sは荷重Fが最大となる時の板状試験片中央部のロールギャップ内への押し込み深さである。
なお、図2Bに示すように、ポンチ3は、試験片1に接触する辺の長さが90mmであり、板状試験片1の中央部に接触する下端側(尖部)は、その正面図で示すように、半径rが0.2mmφとなるように尖ったテーパ状となっている。
ポンチ3の尖部と反対側には、幅が9mm、深さが12mmである凹部が2か所に形成されており、この凹部が過重負荷装置(図示せず)に嵌合されることにより、ポンチ3が試験片1に荷重を印加するように構成されている。
(強度)
本実施形態に係るアルミニウム合金板は、溶体化処理および焼入れ処理されたアルミニウム合金板に対して、2%以上の予ひずみを付加するとともに、180℃の温度で20分間の人工時効処理した後に、0.2%耐力(ベークハード性またはBH性)が215MPa以上であることが好ましい。
上記0.2%耐力が215MPa以上であると、自動車構造部材用途の合金板として必要な強度を確保することができる。なお、0.2%耐力は、上記したアルミニウム合金の含有量で制御するとともに、後記する製造方法の工程の中でも、特に各工程の熱履歴および圧下率によって制御することができる。
(成形性)
後述するように、本実施形態に係るアルミニウム合金板の製造方法における冷間圧延の圧延率が本実施形態の範囲の下限を下回ると、成形性が低下する。成形性は、後述する実施例において示される破断伸びによって評価することができ、25%以上の破断伸びとなることが好ましい。
本実施形態においては、25%以上の破断伸びとなる成形性を有しているものを自動車構造部材用として合格と評価する。一方、この破断伸びが25%未満の成形性では、自動車構造部材用として不十分である。
(自動車構造部材用アルミニウム合金板の製造方法)
次に、本実施形態のアルミニウム合金板の製造方法について以下に説明する。
本実施形態に係る自動車構造部材用アルミニウム合金板の製造方法は、上記化学組成を有するアルミニウム合金を鋳造する工程と、均質化熱処理する工程と、熱間圧延する工程と、冷間圧延する工程と、焼鈍する工程と、溶体化処理する工程と、焼入れする工程とを有するAl−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法であって、冷間圧延する工程における圧延率を40%以上に制御し、焼鈍する工程における熱処理温度を275℃以上に設定する。
これらの製造工程中で、冷間圧延の圧延率および焼鈍処理の温度を上記数値範囲で適切に調整することにより、本実施形態で規定する耳率を得ることができる。以下、各工程について更に詳細に説明する。
<溶解、鋳造>
まず、溶解、鋳造工程では、上記6000系の化学組成の範囲内に溶解調整されたアルミニウム合金溶湯を、連続鋳造法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。
<均質化熱処理>
次いで、上記鋳造されたアルミニウム合金鋳塊に、熱間圧延に先立って、均質化熱処理を施す。この均質化熱処理(均熱処理)は、通常の目的である、組織の均質化(鋳塊組織中の結晶粒内の偏析をなくす)の他に、SiやMgを充分に固溶させるために重要である。この目的を達成する条件であれば、特に限定されるものではなく、通常の1回または1段の処理でも良い。
均質化熱処理温度は、500℃以上で、560℃以下、均質(保持)時間は1時間以上の範囲から適宜選択することが好ましい。この均質化温度が低いと、結晶粒内の偏析を十分に無くすことができず、これが破壊の起点として作用するために、圧壊性が低下することがある。
<熱間圧延>
均質化熱処理を行った鋳塊の熱間圧延は、圧延する板厚に応じて、鋳塊(スラブ)の粗圧延工程と、仕上げ圧延工程とから構成される。これら粗圧延工程や仕上げ圧延工程では、リバース式あるいはタンデム式などの圧延機が適宜用いられる。
≪粗圧延工程≫
熱間粗圧延工程において、熱延開始温度が固相線温度を超える圧延温度では、バーニングが起こるため熱延自体が困難となるおそれがある。また、熱延開始温度が350℃未満ではいずれの均熱工程材でも熱延時の荷重が高くなりすぎ、熱延自体が困難となるおそれがある。したがって、熱延開始温度は350℃〜固相線温度の範囲から選択して熱間圧延し、2〜8mm程度の板厚の熱延板とする。この熱延板の冷間圧延前の焼鈍(荒鈍)は必ずしも必要ではないが実施しても良い。
≪熱間仕上圧延≫
上記熱間粗圧延後に、好ましくは、終了温度を250〜350℃の範囲とした熱間仕上圧延を行う。この熱間仕上圧延の終了温度が250℃未満と低すぎる場合には、圧延荷重が高くなって生産性が低下するおそれがある。一方、加工組織を多く残さず再結晶組織とするために、熱間仕上圧延の終了温度を高くした場合、この温度が350℃を超えると、MgSiが粗大に析出し、圧壊性が低下する可能性が高くなるおそれがある。
この熱延板の冷間圧延前の焼鈍(荒鈍)は必要ではないが、実施しても良い。
<冷間圧延>
上記熱延板を冷間圧延して所望の板厚とする工程において、冷間圧延率を高くすると、板厚方向で均一な歪が導入でき、溶体化熱処理時に均一微細で等軸結晶粒が得られる。すなわち、冷間圧延率を40%以上とすることにより、圧壊性と成形性を両立できる集合組織の異方性を持たせることができる。これにより、耳率が−10.0%以上となるアルミニウム合金板を得ることができる。
一方、冷間圧延の圧延率を40%未満とすると、冷間圧延によってほとんど歪が導入されず、熱間圧延の加工組織を残留させ、耳率が−10.0%未満となる。その結果、得られたアルミニウム合金板の圧壊性は向上するが、成形性が著しく劣化する。従って、冷間圧延の圧延率は40%以上とする。
なお、冷間圧延の圧延率は、好ましくは60%以上である。
<焼鈍処理>
275℃以上の温度の焼鈍処理を行うことによって、冷間圧延後に残存したCube方位の核を粗大化させることなく優先成長させることができ、耳率が−3.0%以下となるアルミニウム合金板を得ることができる。その結果、従来同等の優れた成形性に加え、高い圧壊性を得ることができる。焼鈍温度が275℃より低いと、再結晶温度以下であるため焼鈍時に再結晶が生じず、耳率が−3.0%超となり、成形性は良好であるが、圧壊性が著しく低下する。
なお、焼鈍温度は、好ましくは300℃以上である。
焼鈍処理の昇温速度は、1〜500℃/hが好ましい。昇温速度が1℃/hより小さいと、結晶粒径が粗大化し、圧壊性が低下しやすい。昇温速度が500℃/hより大きいと、Cubeの核が少なく、溶体化処理後にCube方位の面積率が低くなり、圧壊性が低下しやすい。
<溶体化処理および焼入れ処理>
冷間圧延後、溶体化処理と、これに続く、室温までの焼入れ処理を行う。この溶体化焼入れ処理については、通常の連続熱処理ラインを用いてよい。ただ、Mg、Siなどの各元素の十分な固溶量を得るためには、500℃以上、溶融温度以下の温度で溶体化処理した後、室温までの平均冷却速度を20℃/秒以上とすることが好ましい。500℃より低い温度では、溶体化処理前に生成していたMg−Si系などの化合物の再固溶が不十分になって、固溶Mg量と固溶Si量が低下する。
また、平均冷却速度が20℃/秒未満の場合、冷却中に主にMg−Si系の析出物が生成して固溶Mg量と固溶Si量が低下し、やはりSiやMgの固溶量が確保できない可能性が高くなる。この冷却速度を確保するために、焼入れ処理は、ファンなどの空冷、ミスト、スプレー、浸漬等の水冷手段や条件を各々選択して用いる。このような溶体化処理後に、予備時効処理を適宜行ってもよい。
(自動車構造部材)
本実施形態は、上述したアルミニウム合金板を用いた自動車構造部材にも関する。本実施形態よるアルミニウム合金板は、素材板の強度、成形性および圧壊性がバランスよく優れているため、自動車構造部材として用いたときにより優れた安全性を有するものとなる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
表1に示す各化学組成の6000系アルミニウム合金鋳塊を準備し、表2に示す種々の製造条件で自動車構造部材用アルミニウム合金板を製造し、耳率を測定した。
また、得られたアルミニウム合金板に対して、人工時効処理前後の0.2%耐力(MPa)、破断伸び(%)、人工時効後のVDA曲げ角度(°)を測定することにより、それぞれ、アルミニウム合金板の強度、成形性および圧壊性を評価した。これらの結果についても表2に示す。
<アルミニウム合金板の作製>
まず、製造条件について詳細に説明する。表1に示す化学組成を有するアルミニウム合金を溶解鋳造し、得られた鋳塊を540℃の温度で4時間保持する条件で均質化処理した。続いて、終了温度が250℃〜350℃となるように熱間圧延を行った。更に、最終板厚が2.0mmとなるように、表2に示す各圧延率で冷間圧延を行い、冷延板とした。
この冷延板に対し、空気炉にて30℃/hで昇温し、表2に示す各焼鈍温度で4時間保持した後、40℃/hで降温させる焼鈍処理を行った。ただし、比較例1については、焼鈍処理を行わなかった。
この後、以下の共通の条件にて、熱処理設備で調質処理(T4処理)した。具体的には、溶体化処理温度までの平均加熱速度を5℃/秒として上記焼鈍後の板を加熱し、525℃の温度で28秒間保持することにより溶体化処理を行った後、平均冷却速度を20℃/秒としたファン空冷を行うことで室温まで冷却した。また、この冷却直後に、直ちに80℃で5時間保持する条件で予備時効処理を行い、予備時効処理後は徐冷(放冷)しアルミニウム合金板(T4材)を得た。
<耳率の測定>
得られたアルミニウム合金板から供試板を採取し、以下に示す方法で耳率を測定した。供試板から、外径66mmの円板状の試験片を打ち抜き、この試験片に対して直径40mmのポンチを用いてカッピングを施して、カップ径40mmの絞りカップを作製した。この絞りカップの耳高さを測定し、上記式(1)により耳率(%)を算出した。
<強度の評価:0.2%耐力の測定>
上記各供試板からJIS13Aの引張試験片(20mm×80mmGL×2.0mm)を採取し、下記条件で室温にて引張試験を行うことにより。0.2%耐力を測定した。まず、予備時効処理後の供試材を2組準備し、一方は追加熱処理を行わないものを0.2%耐力の測定に供した。また、他方は2%以上の予ひずみを付加すると共に、180℃の温度で20分間の人工時効処理を行った後、0.2%耐力を測定した。
引張試験は、試験片の引張方向を圧延方向に対して直交する方向とした。引張速度は、0.2%耐力までは5mm/分、耐力以降は20mm/分とした。また、測定回数は5回とし、各々平均値を算出した。なお、人工時効処理後の0.2%耐力の測定結果が215MPa以上であれば、自動車構造部材用として十分な強度があるものと判断し、合格と評価した。
<成形性の評価:破断伸びの測定>
上記各供試板からJIS13Aの引張試験片(20mm×80mmGL×2.0mm)を採取し、下記条件で室温にて引張試験を行った。引張試験は、引張試験機を用いて速度5mm/分の速さで試験片を引っ張り、試験片が切断(破断)したときの伸びを測定した。
試験片の引張方向は圧延方向に対して0°方向,45°方向,90°方向の3方向とし、測定回数は5回として、以下の式(3)によって算出した値の平均値を破断伸びとした。なお、下記式(3)において、Loは引張試験前の標点間の距離であり、Lは破断時の標点間の距離である。
破断伸び(%)=100×(L−Lo)/Lo・・・(3)
なお、破断伸びは25%以上であれば、自動車構造部材用として十分な成形性を有するものであると判断し、合格と評価した。
<圧壊性の評価:VDA曲げ角度の測定>
上記予備処理後の供試板に、2%以上の予ひずみを付加するとともに、180℃の温度で20分間の人工時処理を行ったものから、板厚が2.0mm、幅bが60mm、長さlが60mmである正方形の試験片を採取し、VDA曲げ試験による圧壊性を評価した。
VDA曲げ試験は、VDA238−100に準拠し、曲げ線が圧延方向と平行となる3点曲げ試験とした。荷重が30Nに達するまでの試験速度を10mm/分とし、それ以降の試験速度を20mm/分とした。クラック発生、もしくは、板厚減少により、最大荷重から60N減少したとき、曲げ加工がストップする設定とした。
上記曲げ試験は3枚の試験片について測定し、これらの平均値を曲げ角度(°)として採用した。
なお、曲げ角度は93°以上であれば、自動車構造部材用として十分な圧壊性を有するものであると判断し、合格と評価した。
強度、成形性および圧壊性の各評価結果を表2に示す。なお、表2中、各成分の含有量、アルミニウム合金板の製造条件および材料組織において、本発明の範囲を満たさないものには、数値に下線を引いて示している。
また同様に、強度、成形性および圧壊性の評価結果において、自動車構造部材用として合格と評価できなかったものには、数値に下線を引いて示している。
Figure 2019178420
Figure 2019178420
表2から明らかなように、実施例1〜9は、アルミニウム合金の化学組成が本発明の範囲内であると共に、本発明に規定する条件で製造されたものである。
すなわち、実施例1〜9は、アルミニウム合金の化学組成が質量%で、Mg:0.4%以上1.0%以下、Si:0.6%以上1.2%以下および耳率が−10.0%〜−3.0%であるので、強度、成形性、および圧壊性がバランスよく優れたアルミニウム合金板を得ることができた。
なお、Mgの含有量以外の条件が共通する、実施例2(Mg:0.4%)、実施例8(Mg:0.6%)および実施例9(Mg:1.0%)で比較した場合、Mgの含有量が0.4%以上0.6%の場合に、特に圧壊性に優れることが読み取れる。
また、Siの含有量以外の条件が共通する、実施例5(Si:0.6%)、実施例6(Si:0.8%)、実施例2(Si:1.0%)および実施例7(Si:1.2%)で比較した場合、Siの含有量が0.6%以上0.8%の場合に、特に圧壊性に優れることが読み取れる。
これに対して、比較例1〜10は、アルミニウム合金の化学組成が本発明範囲から外れるか、化学組成は本発明の範囲内であるものの、冷間圧延の圧延率又は焼鈍温度が本発明の範囲から外れている。その結果、人工時効処理後の0.2%耐力および圧壊性のいずれかが劣ったものとなった。
詳述すると、比較例1は焼鈍処理を行わなかったため、耳率が本発明の範囲から外れ、圧壊性が低下した。また、比較例2および3は、焼鈍温度が本発明で規定する範囲未満であるため、耳率が本発明の範囲から外れ、圧壊性が低下した。
比較例4〜6は冷間圧延時の圧延率が本発明で規定する範囲未満であるため、耳率が本発明の範囲から外れ、成形性が低下した。
比較例7は、アルミニウム合金中のSi含有量が、本発明で規定する範囲未満であるため、強度が低いものとなった。
比較例8は、アルミニウム合金中のSi含有量が、本発明で規定する範囲を超えているため、圧壊性が低いものとなった。
比較例9は、アルミニウム合金中のMg含有量が、本発明で規定する範囲未満であるため、強度が低いものとなった。
比較例10は、アルミニウム合金中のMg含有量が、本発明で規定する範囲を超えているため、圧壊性が低いものとなった。
続いて、表1に示す合金番号1および11のアルミニウム合金鋳塊をそれぞれ準備し、冷間圧延率の圧延率および焼鈍温度については表3に示す製造条件により、また、その他製造条件については上記<アルミニウム合金板の作製>に記載の条件により、自動車構造部材用アルミニウム合金板を製造し、耐粒界腐食性(耐食性)の評価を行った。
<耐粒界腐食性の評価>
耐粒界腐食性の評価試験は、ISO11846 Method Bに準拠した。供試材は、溶体化後の各供試材板とし、表面皮膜を除去するため、5%NaOH(60℃)に1分浸漬後、水洗を行い、70%HNOに1分浸漬後、再び水洗し、室温乾燥を行った。
腐食液として、HClおよびNaClを含む水溶液(NaClを30g/Lおよび36%の濃塩酸を10±1mL/L含有する)を準備し、25℃で24時間、材料の表面積1cmあたり5mlの腐食液に上記供試材を浸漬させた。次いで、70%HNOへの浸漬およびプラスチックブラシを用いたブラッシングにより腐食生成物を除去し、水洗後、室温乾燥させた。
続いて、焦点深度法により、上記供試材における腐食が深いと判断される部位を任意で3箇所(各々30mm×50mm)選択し、それぞれの部位を断面埋め込みし、光学顕微鏡にて各断面で最も深い粒界腐食の深さを測定した。本試験例では、最大の粒界腐食深さが300μm以下であるものを合格と評価した。
耐粒界腐食性の評価結果を表3に示す。なお、表3中、各成分の含有量において、本発明の範囲を満たさないものには、数値に下線を引いて示している。
また同様に、耐粒界腐食性の評価結果において、合格と評価できなかったものには、数値に下線を引いて示している。
Figure 2019178420
表3に示すように、実施例1は、アルミニウム合金中のCu含有量が、本発明で規定する範囲内であるため、耐粒界腐食性において優れていた。
一方、比較例11は、アルミニウム合金中のCu含有量が、本発明で規定する範囲を超えているため、耐粒界腐食性に劣っていた。
以上の実施例および比較例の結果から、本発明で規定する化学組成や組織を全て満たすアルミニウム合金板は、自動車構造部材用として好適であることがわかる。
本発明によれば、通常の圧延によって製造される6000系アルミニウム合金板に、自動車構造部材用途に特有の特性である優れた圧壊性および強度に加え、成形性および耐食性も兼備させることができる。このため、自動車構造部材として、6000系アルミニウム合金板の適用を拡大することができる。
1 板状試験片
2 ロール
3 ポンチ

Claims (6)

  1. 質量%で、Mg:0.4%以上1.0%以下、Si:0.6%以上1.2%以下、Cu:0.7%未満を含有し、残部がAlおよび不純物からなるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板であって、
    耳率が−10.0%〜−3.0%であることを特徴とする自動車構造部材用アルミニウム合金板。
  2. 前記Mgの含有量が、質量%で0.4%以上0.6%以下であることを特徴とする請求項1に記載の自動車構造部材用アルミニウム合金板。
  3. 前記Siの含有量が、質量%で0.6%以上0.8%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車構造部材用アルミニウム合金板。
  4. 180℃の温度で20分間の人工時効処理を実施した後に、0.2%耐力が215MPa以上となるベークハード性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動車構造部材用アルミニウム合金板。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車構造部材用アルミニウム合金板を用いた自動車構造部材。
  6. 質量%で、Mg:0.4%以上1.0%以下、Si:0.6%以上1.2%以下、Cu:0.7%未満を含有し、残部がAlおよび不純物からなるアルミニウム合金を鋳造する工程と、均質化熱処理する工程と、熱間圧延する工程と、冷間圧延する工程と、焼鈍する工程と、溶体化処理する工程と、焼入れする工程とを有するAl−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法であって、
    前記冷間圧延する工程における圧延率を40%以上に制御し、
    前記焼鈍する工程における熱処理温度を275℃以上に設定することを特徴とする自動車構造部材用アルミニウム合金板の製造方法。
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