JP2009256722A - 成形加工用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents

成形加工用アルミニウム合金板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 成形加工用Al合金板として、プレス成形性と曲げ加工性のバランスが良好で、特に耐肌荒れ性と耐リジング性が優れ、さらには良好な焼付け硬化性、高いプレス成形性を付与でき、室温経時変化も小さいものを提供する。
【解決手段】 Al−Mg−Si系又はAl−Mg−Si−Cu系のAl合金を素材とし、キューブ方位密度をC、ND回転キューブ方位の密度をNとし、C<15、N<15、1/20<N/C<1を満たし、さらに耳率が7%以下、結晶粒度がASTMナンバーで5以上である成形加工用Al合金板。またRD回転キューブ方位密度をGとし、C<15、G<15、1/20<G/C<1を満たすものとした。さらには、C<15、N<15、1/20<N/C<1、G<15、1/20<G/C<1、の各条件を満たすものとした。またその製造方法として、特に均質化処理と熱間圧延の条件を厳密に規定した。
【選択図】 なし

Description

この発明は、自動車ボディシート、ボディパネルの如く各種自動車、船舶、航空機等の部材・部品、あるいは建築材料、構造材料、そのほか各種機械器具、家電製品やその部品等の素材として、成形加工および塗装焼付を施して使用されるAl−Mg−Si系もしくはAl−Mg−Si−Cu系のアルミニウム合金板およびその製造方法に関するものであり、プレス成形性と曲げ加工性のバランスが良好で、特に耐肌荒れ性と耐リジング性が優れ、さらには用途に応じて、良好な焼付け硬化性、高いプレス成形性を付与することができ、また室温経時変化も小さい成形加工用アルミニウム合金板およびその製造方法に関するものである。
従来自動車のボディシートとしては、主として冷延鋼板を使用することが多かったが、最近では車体軽量化等の観点から、アルミニウム合金圧延板を使用することが多くなっている。ところで自動車のボディシートはプレス加工を施して使用するところから、成形加工性が優れていること、アウターパネルとインナーパネルとを接合して一体化させるためなどにヘム曲げ加工を施して使用することが多いところから、成形性のうちでもヘム加工性が優れていることが要求される。また塗装焼付を施して使用するのが通常であることから、成形性と強度のバランスにおいて強度を重視する場合に、塗装焼付後に高強度が得られること、逆に成形性を重視する場合には、塗装焼付後に若干の強度を犠牲にする代わりに高いプレス成形性が得られることが要求される。さらに特に最近では、苛酷な成形加工が施されることが多くなっていること、また表面外観品質が重視されるようになっていることから、苛酷な成形加工時においてもリューダースマークが発生しないことはもちろん、肌荒れやリジングマークが発生しないことが、強く要求されている。
従来このような自動車用ボディシート向けのアルミニウム合金としては、Al−Mg系合金のほか、時効性を有するAl−Mg−Si系合金もしくはAl−Mg−Si−Cu系合金が主として使用されている。これらの時効性Al−Mg−Si系合金、時効性Al−Mg−Si−Cu系合金は、塗装焼付前の成形加工時においては比較的強度が低くて成形性が優れている一方、塗装焼付時の加熱によって時効されて塗装焼付後の強度が高くなる利点を有するほか、リューダースマークが発生しにくい等の長所を有する。
ところでリジングマークは、板の成形加工時に現れる圧延方向に沿う筋模様のことであり、リジングマークの発生は材料の再結晶挙動と深く関わっていることから、リジングマークの発生を抑制(以下、リジングマークが発生しにくい性質を「耐リジング性」と記す)するためには、板製造過程での再結晶の制御が不可欠である。このような耐リジング性に関して従来から以特許文献1、特許文献2に示すような提案がなされている。
特許第2823797号公報 特許第3590685号公報
前述のような自動車用ボディシート向けの時効性Al−Mg−Si系、Al−Mg−Si−Cu系合金板についての従来の製造方法により得られた板では、最近の自動車用ボディシートに要求される特性を充分に満足させることは困難であった。
すなわち、最近では生産性とデザインの意匠性などから材質の一層の向上が求められ、自動車用ボディシートについては、従来より成形性(特にプレス成形性、ヘム加工性)ならびに強度(焼付硬化性、すなわちBH性)、耐リジング性、常温経時変化の抑制性能、耐食性などの種々の要求性能を満足させる点については、従来の一般的な製造方法によって得られたAl−Mg−Si系、Al−Mg−Si−Cu系合金板では未だ不充分であった。
またここで、成形加工のうち、ヘム加工は、曲げ内径が1mm以下の180°曲げという苛酷な曲げ加工であるため、良好なヘム加工性とプレス成形性とを両立させることが困難であるという問題があり、またプレス加工量の大きい部分のような苛酷な成形加工部位においては、肌荒れとリジングマーク発生を抑制することが極めて困難であった。
また塗装焼付については、省エネルギおよび生産性の向上、さらには高温に曝されることが好ましくない樹脂等の材料との併用などの点から、従来よりも焼付温度を低温化し、また焼付時間も短時間化する傾向が強まっている。しかしながら従来の一般的な製法により得られた時効性Al−Mg−Si系、Al−Mg−Si−Cu系合金板の場合、低温・短時間の塗装焼付処理では、塗装焼付時の硬化(焼付硬化)が不足し、塗装焼付後に充分な高強度が得難くなる問題があった。
ここで、従来の一般的な製法により得られた時効性Al−Mg−Si系、Al−Mg−Si−Cu系合金板では、高いプレス成形性とヘム加工性のバランスが悪く、また苛酷な成形部位での肌荒れの発生(以下、肌荒れが発生しにくい性質「耐肌荒れ性」と記す)およびリジングマークの発生を抑制することが極めて困難であるという問題が生じている。
ところで前記各特許文献のうち、特許文献1に示されている方法では、熱間圧延の開始温度が350℃から450℃までの範囲とされており、この場合、熱間圧延中の粗大な結晶粒の形成はそれなりに抑制されるものの、未だその抑制が不充分であって、一部に粗大結晶粒が形成されてしまい、その結果、必ずしも充分な耐肌荒れ性が得られず、また耐リジング性も低下してしまうことがあることが本発明者等の実験により判明した。一方特許文献2の方法の場合、熱間圧延の開始温度を450℃以下としながらも、好ましくは350℃以上としており、しかも中間焼鈍は昇温速度の遅い(約30℃/h)バッチ方式との組み合わせを前提としており、そのため実際には結晶粒が粗くなり易く、特許文献1に記載の方法と同様に、耐肌荒れ性が充分に得られず、また耐リジング性も低下することが判明した。また、後に改めて詳細に説明するように、本発明者等は板の結晶方位を適切かつ厳密に制御することが耐肌荒れ性の確実な向上と耐リジング性の充分な向上に有効であることを見出したが、これらの特許文献1、2では、結晶方位制御を充分に行なっておらず、最近の耐肌荒れ性向上と耐リジング性向上の強い要求に対しては未だ不充分であった。
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、適切な強度を有するとともに、r値や機械的特性などの異方性が小さく、かつプレス成形性と曲げ加工性のバランスが良好で、特に材料の再結晶挙動を制御することにより耐肌荒れ性と耐リジング性が優れており、しかも用途に応じて、良好な焼付け硬化性およびより高いプレス成形性を付与することができ、なおかつ室温経時変化も小さい成形加工用アルミニウム合金板と、このような優れた性能を有する板を、量産的規模で確実かつ安定して低コストで製造し得る方法を提供することを目的とするものである。
前述のような課題を解決するべく本発明者等が種々実験・検討を重ねた結果、Al−Mg−Si系もしくはAl−Mg−Si−Cu系合金の最終板の組織として、特定の方位、特にキューブ方位(立方体方位)の結晶方位密度を適切に抑えると同時に、キューブ方位の分散を図るべく、ND回転キューブ方位密度、RD回転方位密度をも、キューブ方位密度との関係のもとに適切なレベルに制御することによって、異方性を原因に生じるプレス加工性、ヘム加工性の劣化を防止することができ、また良好な焼付硬化性、耐室温経時変化性を損なうことなく、耐肌荒れ性と耐リジング性を確実かつ顕著に向上させ得ることを見出した。そしてまたこのような優れた性能を有する成形加工用アルミニウム合金板を、量産的規模で確実かつ安定して低コストで製造し得るプロセス条件を見出し、この発明をなすに至ったのである。
具体的には、請求項1の発明のアルミニウム合金板は、Al−Mg−Si系もしくはAl−Mg−Si−Cu系合金からなるアルミニウム合金が素材とされ、板に存在する結晶粒のキューブ方位密度をC、板面法線(以下「ND」と記す)を軸にキューブ方位から回転した方位(以下「ND回転キューブ方位」と記す)の密度をNとして、次の(1)〜(3)式(各方位密度C、Nの数値はすべてランダム結晶方位密度に対する倍数で表す)
C<15 ・・・(1)
N<15 ・・・(2)
1/20<N/C<1 ・・・(3)
を満たし、さらに耳率が7%以下、結晶粒度がASTMナンバーで5以上であることを特徴とするものである。
また請求項2の発明のアルミニウム合金板は、Al−Mg−Si系もしくはAl−Mg−Si−Cu系合金からなるアルミニウム合金が素材とされ、板に存在する結晶粒のキューブ方位密度をC、圧延方向(以下「RD」と記す)を軸にキューブ方位から回転した方位(以下「RD回転キューブ方位」と記す)の密度をGとして、次の(1)式、(4)式、(5)式(各方位密度C、Gの数値はすべてランダム結晶方位密度に対する倍数で表す)
C<15 ・・・(1)
G<15 ・・・(4)
1/20<G/C<1 ・・・(5)
を満たし、さらに耳率が7%以下、結晶粒度がASTMナンバーで5以上であることを特徴とするものである。
さらに請求項3の発明のアルミニウム合金板は、Al−Mg−Si系もしくはAl−Mg−Si−Cu系合金からなるアルミニウム合金が素材とされ、板に存在する結晶粒のキューブ方位密度をC、板面法線(以下「ND」と記す)を軸にキューブ方位から回転した方位(以下「ND回転キューブ方位」と記す)の密度をNとして、圧延方向(以下「RD」と記す)を軸にキューブ方位から回転した方位(以下「RD回転キューブ方位」と記す)の密度をGとして、次の(1)〜(5)式(各方位密度C、N、Gの数値はすべてランダム結晶方位密度に対する倍数で表す)
C<15 ・・・(1)
N<15 ・・・(2)
1/20<N/C<1 ・・・(3)
G<15 ・・・(4)
1/20<G/C<1 ・・・(5)
を満たし、さらに耳率が7%以下、結晶粒度がASTMナンバーで5以上であることを特徴とするものである。
そしてまた請求項4の発明のアルミニウム合金板は、請求項1〜請求項3のいずれかの請求項に記載された成形加工用アルミニウム合金において、前記素材として、Mg0.2〜1.5%、Si0.3〜2.0%を含有し、かつMn0.03〜0.6%、Cr0.01〜0.4%、Zr0.01〜0.4%、V0.01〜0.4%、Fe0.03〜1.0%、Ti0.005〜0.3%、Zn0.03〜2.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、さらにCuが1.5%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金を用いることを特徴とするものである。
またさらに請求項5の発明のアルミニウム合金板の製造方法は、請求項1〜請求項4のいずれかの請求項に記載の成形加工用アルミニウム合金板を製造するにあたり、アルミニウム合金の鋳塊に480℃以上の温度で均質化処理を行ない、均質化処理後450℃未満の温度域に50℃/h以上の冷却速度で冷却し、続いて350℃未満の温度域で熱間圧延を開始し、その熱間圧延過程において、板厚200mmの段階から熱間圧延終了板厚の段階までの間で少なくとも1回は1パスの圧延率が40%以上の高圧下を施して、350℃未満の温度で熱間圧延を終了し、その後、冷間圧延を挟んで、もしくは冷間圧延を挟まずに、昇温速度が100℃/min以上でかつ材料到達温度が430℃以上の中間焼鈍を行ない、冷却後、さらに30%以上の圧延率で最終冷間圧延を施して所定の板厚とし、その後、480℃以上の温度での溶体化処理を行なってから、100℃/min以上の平均冷却速度で150℃未満の温度域まで冷却することを特徴とするものである。
この発明による成形加工用アルミニウム合金板は、機械的性質の異方性によるプレス成形性の低下を防ぐことができるとともに、プレス成形性と曲げ加工性のバランスが良好で、しかも中間焼鈍を施すことにより、従来より格段に耐肌荒れ性と耐リジング性の向上を図ることができ、さらには用途に応じて良好な塗装焼付硬化性、より高いプレス成形性を付与することができ、そしてまた室温での経時変化も少なく、したがってプレス加工やヘム加工を施して塗装焼付け後に使用される自動車用ボディシート等に最適である。またこの発明の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法によれば、上述のように優れた性能を有する成形加工用アルミニウム合金板を、量産的規模で確実かつ安定して製造することができる。
この発明の成形加工用アルミニウム合金板は、基本的にはAl−Mg−Si系合金もしくはAl−Mg−Si−Cu系合金であれば良く、その具体的な成分組成は特に制約されるものではないが、通常は請求項4で規定するような成分組成の合金を素材とすることが好ましい。
上述のような請求項4で規定している素材合金の成分組成の限定理由について説明する。
Mg:
Mgはこの発明で対象としている系の合金で基本となる合金元素であって、Siと共同して強度向上に寄与する。Mg量が0.2%未満では塗装焼付時に析出硬化によって強度向上に寄与するG.P.ゾーンの生成量が少なくなるため、充分な強度向上が得られず、一方1.5%を越えれば、粗大なMg−Si系の金属間化合物が生成され、プレス成形性、特に曲げ加工性が低下するから、Mg量は0.2〜1.5%の範囲内とした。なお最終板のプレス成形性、特に曲げ加工性をより良好にするためには、Mg量は0.3〜0.9%の範囲内が好ましい。
Si:
Siもこの発明の系の合金で基本となる合金元素であって、Mgと共同して強度向上に寄与する。またSiは、鋳造時に金属Siの晶出物として生成され、その金属Si粒子の周囲が加工によって変形されて、溶体化処理の際に再結晶核の生成サイトとなるため、再結晶組織の微細化にも寄与する。Si量が0.3%未満では上記の効果が充分に得られず、一方2.0%を越えれば粗大なSi粒子や粗大なMg−Si系の金属間化合物が生じて、プレス成形性、特に曲げ加工性の低下を招く。したがってSi量は0.3〜2.0%の範囲内とした。プレス成形性と曲げ加工性とのより良好なバランスを得るためには、Si量は0.5〜1.3%の範囲内が好ましい。
Mn、Cr、Zr、V、Fe、Zn、Ti:
これらの元素は、強度向上や結晶粒微細化、あるいは時効性(焼付硬化性)の向上や表面処理性の向上に有効であり、いずれか1種または2種以上を添加する。これらのうちMn、Cr、Zr、Vは強度向上と結晶粒の微細化および組織の安定化に効果がある元素であるが、Mnの含有量が0.03%未満、もしくはCr、Zr、Vの含有量がそれぞれ0.01%未満では、上記の効果が充分に得られず、一方Mnの含有量が0.6%を越えるか、あるいはCr、Zr、Vの含有量がそれぞれ0.4%を越えれば、上記の効果が飽和するばかりでなく、多数の金属間化合物が生成されて成形性、特にヘム曲げ性に悪影響を及ぼすおそれがあり、したがってMnは0.03〜0.6%の範囲内、Cr、Zr、Vはそれぞれ0.01〜0.4%の範囲内とした。またFeも強度向上と結晶粒微細化に有効な元素であるが、その含有量が0.03%未満では充分な効果が得られず、一方1.0%を越えれば、多数の金属間化合物が生成されて、プレス成形性、曲げ加工性が低下するおそれがあり、したがってFe量は0.03〜1.0%の範囲内とした。なお、曲げ加工性の低下を最小限に抑えたい場合、Fe量は0.03〜0.5%の範囲で好ましい。またZnは時効性向上を通じて強度向上に寄与するとともに表面処理性の向上に有効な元素であるが、Znの添加量が0.03%未満では上記の効果が充分に得られず、一方2.5%を越えれば成形性が低下するから、Zn量は0.03〜2.5%の範囲内とした。さらにTiは、鋳塊組織の微細化を通じて最終板の強度向上、肌荒れ防止、耐リジング性向上に効果があることから、鋳塊組織の微細化のために添加するが、その含有量が0.005%未満では充分な効果が得られず、一方0.3%を越えればTi添加の効果が飽和するばかりでなく、粗大な晶出物が生じるおそれがあるから、Ti量は0.005〜0.3%の範囲内とした。なおTiと同時にBを添加することもあり、BをTiとともに添加することによって、鋳塊組織の微細化と安定化の効果が一層顕著となるが、この発明の場合も、Tiとともに500ppm以下のBを添加することは許容される。
Cu:
Cuは強度向上および成形性向上のために添加されることがある元素であるが、その量が1.5%を越えれば耐食性(耐粒界腐食性、耐糸錆性)が劣化するから、Cuの含有量は1.5%以下に規制することとした。なお、より耐食性の改善を図りたい場合はCu量は1.0%以下が好ましく、さらに特に耐食性を重視する場合は、Cu量は0.05%以下に規制することが望ましい。
以上の各元素のほかは、基本的にはAlおよび不可避的不純物とすれば良い。
また時効性Al−Mg−Si系合金、時効性Al−Mg−Si−Cu系合金においては、高温時効促進元素あるいは室温時効抑制元素であるAg、In、Cd、Be、あるいはSnを微量添加することがあるが、この発明の場合も微量添加であればこれらの元素の添加も許容され、それぞれ0.3%以下であれば特に所期の目的を損なうことはない。
さらに、鋳塊組織の微細化にはScの添加も効果があるとされており、この発明の場合も微量のScを添加しても良く、Sc0.01〜0.2%の範囲内であれば特に支障はない。
さらにこの発明の成形加工用アルミニウム合金板において、プレス成形性と曲げ加工性のバランスを最適にするためには、異方性を小さく抑制する必要があり、また、耐肌荒れ性と耐リジング性の向上に対しても、合金の成分組成を前述のように調整するばかりでなく、最終板であるアルミニウム合金板の集合組織、特に結晶方位密度を適切に制御することが極めて重要である。
実際の材料では、種々の結晶方位が存在するが、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、種々の結晶方位のうちでも特にキューブ方位の方位密度、すなわちキューブ方位の理想方位である{001}<100>方位の方位密度を適切に抑制することが異方性の抑制に効果的であり、さらにキューブ方位の適切な分散を図るべく、キューブ方位密度とND回転キューブ方位密度もしくはRD回転方位密度との比率を適切に制御することによって、高レベルの耐肌荒れ性と耐リジング性を実現することができた。
すなわち、請求項1で規定しているように、板に存在する結晶粒のキューブ方位密度をC、板面法線NDを軸にキューブ方位から回転した方位ND回転キューブ方位の密度をNとして、(1)〜(3)式
C<15 ・・・(1)
N<15 ・・・(2)
1/20<N/C<1 ・・・(3)
を満たすか、あるいは請求項2で規定しているように、板に存在する結晶粒のキューブ方位密度をC、圧延方向RDを軸にキューブ方位から回転した方位RD回転キューブ方位の密度をGとして、(1)式、(4)式、(5)式
C<15 ・・・(1)
G<15 ・・・(4)
1/20<G/C<1 ・・・(5)
を満たすか、もしくは請求項3で規定しているように、板に存在する結晶粒のキューブ方位密度をC、板面法線NDを軸にキューブ方位から回転した方位ND回転キューブ方位の密度をNとして、圧延方向RDを軸にキューブ方位から回転した方位RD回転キューブ方位の密度をGとして、(1)〜(5)式
C<15 ・・・(1)
N<15 ・・・(2)
1/20<N/C<1 ・・・(3)
G<15 ・・・(4)
1/20<G/C<1 ・・・(5)
を満たすように制御することによって、苛酷な成形加工が施される部位でも、肌荒れの発生を確実に防止できるとともに、リジングマークの発生を確実に防止することが可能となった。
なおここで、ND回転キューブ方位は、{001}<410>方位を理想方位(代表方位)とするものであり、またRD回転キューブ方位は、{027}<100>方位を理想方位とするものであり、上記各式における方位密度は、すべて理想方位の密度をもって測定したものである。またここで、(1)〜(5)式における各方位密度の数値は、すべてランダム結晶方位密度に対する倍数で表わす。
ここで、(1)式はキューブ方位密度Cそのものの値を低く規制していることを意味し、このキューブ方位密度Cはヘム加工性、プレス成形性、異方性、耐リジング性などに影響を与える。Cの値が15以上となれば、ヘム加工性には最も有利となるが、異方性が強くなってプレス成形性が低下するおそれがあり、さらにこのような特定の方位密度が高くなれば、耐リジング性も低下してしまう。一方、(2)式、(4)式は、板面法線NDもしくは圧延方向RDを軸にキューブ方位から回転した方位の密度N、Gを低い値に規制していることを意味し、これらのN、Gの各方位は、いずれもヘム加工性、プレス成形性、異方性、耐リジング性などに影響を与える。NもしくはGの値が15以上となれば、Cほどではないが、ヘム加工性に有利となるが、異方性が強くなってプレス成形性が低下するおそれがあり、さらにこのような特定の方位密度が高くなれば、耐リジング性も低下してしまう。さらに(3)式、(5)式は、キューブ方位の分散について規定したものであり、これらのN/CもしくはG/Cの値が1以上となれば、プレス成形性とヘム加工性のバランスが悪く、また1/20以下となれば、Cの比率が相対的に高くなり、耐リジング性が低下する。なおN、Gが方位分散や耐リジング性の向上に与える影響はほぼ同程度であり、一方のみを規制してもある程度の効果は得られる。もちろん、NおよびGの両者を規制すれば、その規制による効果をより確実かつ顕著に得ることが可能となる。そこで請求項1の発明ではNについて規制する一方、請求項2の発明ではGについて規制し、さらに請求項3の発明ではN、Gの両者について規制することとした。
さらにこの発明による成形加工用アルミニウム合金板では、板全体にわたって耳率(0°耳、90°耳)が7%以下であることも重要である。すなわち、前述のようにこの発明では、式(1)〜(5)で結晶方位密度を規定しているが、それ以外の結晶方位の方位密度もある程度は異方性と耐肌荒れ性、耐リジング性に影響を与える。しかしながら実際上は、これらの方位以外のすべての結晶方位の方位密度を厳密に規定することは困難である。一方、板のカッピング試験で絞ったカップの耳率によれば、材料の結晶方位をマクロ的に評価することができる。そこでこの発明では、式(1)〜(5)で規定した結晶方位以外の方位の密度の影響を耳率で評価、規制することとした。具体的には、圧延方向を基準にカップの0°、90°耳の耳率が7%以上では、たとえ前述の各式の条件が満足されていても、所要の異方性、良好な耐肌荒れ性と耐リジング性が得られないおそれがある。そこでこの発明では耳率に関して前述のように規制することとした。なお耳率は下限を限定していないが、通常は0〜7%の範囲が好ましい。
曲げ加工性の向上、プレス成形時の外観欠陥である肌荒れを防止するためには、結晶粒度を細かくする必要がある。そして本発明者等が実験・検討を重ねた結果、結晶粒度を、ASTMナンバーで5以上にすれば、曲げ加工性の向上や肌荒れ(外観欠陥)を防止する効果があることを見出し、その条件を規定したのである。さらに外観を重視する場合には、ASTMナンバーで6.0以上が好ましい。
次にこの発明の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法について説明する。
先ず前述のような成分組成の合金を常法に従って溶製し、DC鋳造法等の通常の鋳造法によって鋳造する。
得られた鋳塊に対しては、480℃以上の温度で均質化処理を行なった後、450℃未満の温度域に50℃/h以上の冷却速度で冷却する。このように均質化処理および冷却の条件を規定した理由は次の通りである。
すなわち均質化処理は、鋳塊の添加元素の偏析を除去したり、鋳塊のセル・結晶粒の境界に存在する粗大な第2相粒子、晶出物などを母相に固溶させたりすることに効果があり、製品板性能のばらつきの低減、さらには熱間圧延工程、溶体化工程と有機的に結合して所要の結晶方位を得るにも重要な工程である。この均質化処理の温度が480℃未満では、上述の効果が不充分である。なお均質化処理温度の上限は特に規制しないが、共晶融解を避けるために、通常は590℃以下での処理とすることが好ましい。
また均質化処理後の冷却に関しては、一般に高い焼付け硬化性を得るためには冷却過程で形成される析出物の粗大化を避けるべきであり、そこで450℃未満の温度域まで50℃/h以上の冷却速度で冷却することとした。ここで言う『冷却速度』は、すべて平均冷却速度を意味するものとする。なお析出物の大きさと分布は、材料の再結晶挙動にも影響を与えることから、この発明の効果を確実に得るためには、均質化処理後、450℃以下の温度域まで150℃/h以上の冷却速度で冷却することが好ましい。
上述のようにして均質化処理後、450℃未満の温度域に冷却した後には熱間圧延を施すが、熱間圧延の開始温度が350℃未満であることから、熱間圧延開始までの過程においては、必要に応じて以下のいずれかの処理方法を適用することができる。すなわち、均質化処理後の冷却過程で常温もしくは常温近くまで冷却してしまい、再び熱間圧延の開始温度まで加熱して熱間圧延を開始するか、あるいは均質化処理後の冷却過程で熱間圧延の開始温度まで冷却し、そのまま熱間圧延を開始するか、さらには均質化処理後の冷却過程で450℃未満、350℃超の温度範囲内に一旦滞留、保持させた後、降温させて、350℃未満の温度域で熱間圧延を開始しても良い。
これらの各処理方法は、いずれを適用してもこの発明の効果を損なうことはない。なお生産性などの観点から、冷却、滞留、保持過程は48時間以内とすることが好ましい。
均質化処理、冷却後の熱間圧延は、次の(1)、(2)の条件を満たすように行なう必要がある。
(1)熱間圧延開始温度を350℃未満の温度範囲とする。
(2)熱間圧延過程において板厚が200mm以降の段階で少なくとも1回は1パスの圧延率が40%以上の高圧下のパスを施す。
これらの条件のうち、(1)の条件、すなわち熱間圧延開始温度を350℃未満とすることは、熱間圧延中の材料の再結晶を完全に抑制して、所要の結晶方位密度を得ると同時に、耐肌荒れ性と耐リジング性の改善を図るために不可欠な条件である。350℃以上の高温で熱間圧延を開始すれば、部分的に粗大な再結晶粒が形成し、充分な耐肌荒れ性と耐リジング性が得られなくなるおそれがある。なお熱間圧延開始温度の下限は特に規制しないが、200℃以下では熱間圧延自体が困難となるのが通常であるから、好ましくは250〜350℃未満の範囲内とする。
次に(2)の条件は、(1)の条件と合わせて熱間圧延中の材料の再結晶を抑制し、所要の結晶方位密度を得るために不可欠な条件である。すなわち、熱間圧延工程における板厚200mm以降の段階のほぼ未再結晶の繊維上組織に、1パスの圧下で大変形を加えることによって、目的とする結晶回転を達成することができ、そのため、板厚200mm以降の段階で圧延率40%以上の高圧下のパスを適用することが必要である。なお好ましくは圧延率50%以上の高圧下のパスを適用することが望ましい。前述のように40%以上、好ましくは50%以上の高圧下のパスを適用することにより、中間焼鈍および溶体化処理と合わせて2回以上の再結晶を生起させることにより、最終板におけるキューブ方位の発達を抑制して、キューブ方位の分散を図ることにより異方性の低減を図ることができ、前記各式(1)〜(5)を満足するような方位分散による耐肌荒れ性と耐リジング性の改善に有効となる。
なお熱間圧延の終了温度が350℃以上では、粗大な再結晶が発生して、耐肌荒れ性が低下するから、熱間圧延終了温度は350℃未満に規制することとした。なお積極的に粗大再結晶粒の発生を防止するためには、熱間圧延終了温度を150℃〜300℃の範囲内とすることが好ましい。
ここで、上述のような熱間圧延条件のうち、いずれか一つの条件でも外れれば、所要の結晶方位密度条件を満たす最終板が得難くなり、最終板の諸特性が低下するおそれがある。
以上のようにして熱間圧延を終了した後には、冷間圧延(一次冷間圧延)を挟んで、あるいは冷間圧延を挟まずに直ちに、中間焼鈍を施す。この中間焼鈍は、材料を再結晶させ、熱間圧延で形成された組織を分解・細分化する効果があり、また固溶度を高める効果もある。昇温速度が100℃/min以上、材料到達温度が430℃以上の条件で行なう。昇温速度が100℃/min未満では、粗大な結晶粒が形成されやすく、耐肌荒れと耐リジング性の劣化を招くおそれがある。材料到達温度が430℃未満では、固溶度を高める効果が少なく、成形性、焼付け硬化性が低下する。なお430℃上の材料到達温度での保持は特に限定しないが、保持なし、もしくは5分以下の保持とするのが通常である。さらに中間焼鈍後の冷却速度も特に限定しないが、通常は生産性などの視点から昇温速度と同様に100℃/min以上とすることが望ましい。
熱間圧延後に冷間圧延(一次冷間圧延)を挟んで中間焼鈍を施す場合の一次冷間圧延の圧延率は特に限定しないが、通常は5〜85%程度が望ましい。
以上のようにして、熱間圧延後、冷間圧延を挟んでもしくは挟まずに中間焼鈍を施した後、さらに30%以上の圧延率で最終冷間圧延を施して所定の板厚とする。この最終冷間圧延は、板に歪みを蓄積させ、その後の溶体化処理における結晶粒の微細化に効果があるだけではなく、最終板の結晶方位の形成にも一定の影響を及ぼす。最終冷間の圧延率が30%未満では、この発明で規定する結晶粒度と結晶粒方位密度が得られないおそれがある。最終冷間圧延の圧下率上限は特に定めないが通常は50%程度である。
冷間圧延後には、溶体化処理を行なうが、この発明で対象とするAl−Mg−Si系もしくはAl−Mg−Si−Cu系合金では、480℃以上の温度での溶体化処理が必要である。この溶体化処理は、MgSi、単体Si等をマトリックスに固溶させ、これにより焼付硬化性を付与して塗装焼付後の強度向上を図るために重要な工程である。またこの工程は、MgSi、単体Si粒子等の固溶により第2相粒子の分布密度を低下させて、延性と曲げ性を向上させるためにも寄与し、さらには再結晶により最終的に所要の結晶方位を得て、良好な成形性、良好な耐肌荒れ性、良好な耐リジング性を得るためにも重要な工程である。
なお特に溶体化効果を重視する場合は、溶体化処理温度は500℃以上とすることが好ましい。一方溶体化処理温度の上限は特に規定しないが、共晶融解の発生のおそれや再結晶粒粗大化等を考慮して、通常は590℃以下とすることが望ましい。また溶体化処理の時間は特に規制しないが、通常は5分を越えれば溶体化効果が飽和し、経済性を損なうばかりではなく、結晶粒の粗大化のおそれもあるから、溶体化処理の時間は5分以内が望ましい。
溶体化処理後の冷却については、冷却中にMg2Siあるいは単体Siなどが粒界に多量に析出することを防止するため、100℃/min以上の冷却速度で、150℃以下の温度域まで冷却(焼入れ)する必要がある。ここで、溶体化処理後の冷却速度が100℃/min未満では、プレス成形性、特に曲げ加工性が低下すると同時に、焼付硬化性が低下して塗装焼付時の充分な強度向上が望めなくなる。
溶体化処理後、必要に応じて安定化処理を行なっても良い。すなわち、成形性よりも焼付け硬化性(BH性)を重視する場合には、溶体化処理後、100℃/min以上の冷却速度で50℃以上150℃未満の温度域内まで冷却(焼入れ)した後、50℃未満の温度域(室温)まで温度降下しないうちに、この温度範囲内(50〜150℃未満)で安定化処理を行なうことが好ましい。この安定化処理における50〜150℃未満の温度域での保持時間は特に限定しないが、通常は1時間以上保持することが望ましく、またその温度範囲内で1時間以上かけて冷却(徐冷)しても良い。
一方、焼付け硬化性よりも成形性、特にプレス成形性を重視する場合には、安定化処理を行なうことなく、溶体化処理後の冷却過程で50℃未満の温度域まで冷却し、0〜50℃の温度域で放置することが好ましい。
ここで、溶体化処理後、100℃/min以上の高い平均冷却速度で50℃未満の室温に冷却した場合には、室温クラスターが生成されるが、この室温クラスターは強度に寄与するG.P.ゾーンに移行しにくいため、塗装焼付硬化性には不利となるが、延性の低下が小さくなるため、プレス成形性には有利となる。一方、溶体化処理後に150℃以上の温度範囲に冷却してそのまま保持した場合には、G.P.ゾーンあるいは安定相が生成され、成形前の素材強度が高くなり過ぎて、ヘム加工性やプレス成形性が劣化し、また耐室温経時変化性も劣化するおそれがある。したがってヘム加工性、プレス成形性と塗装焼付硬化性、および耐室温経時変化性のバランスの観点から、前記条件の溶体化処理−焼入れ、溶体化処理−焼入れ−安定化処理を選択する。
さらに、溶体化処理を施して50℃未満の温度域に焼入れ、0〜50℃温度域で放置した後には、改めて180〜280℃で復元処理を行なっても良い。すなわち、50℃未満の室温に冷却して形成される室温クラスターは、強度に寄与するG.P.ゾーンに移行しにくいため、塗装焼付硬化性には不利となるが、180〜280℃の短時間(望ましくは5分以内)の熱処理(復元処理)を施すことにより、塗装焼付硬化性を回復させて、曲げ加工性を向上させる効果が得られる。
以下にこの発明の実施例を比較例とともに記す。なお以下の実施例は、この発明の効果を説明するためのものであり、実施例記載のプロセスおよび条件がこの発明の技術的範囲を制限するものではない。
表1に示すこの発明成分組成範囲内の合金記号A1〜A4の合金について、それぞれ常法に従って溶製し、DC鋳造法によりスラブに鋳造した。
得られた各スラブに対して530℃、5hの条件で均質化処理を施した。均質化処理後、5℃/minの平均冷却速度でスラブを200℃以下に冷却した。その後、熱間圧延工程に供し、表2に示す条件で熱間圧延を行なった後、一次冷間圧延を行なってから、もしくは一次冷間圧延を行なわずに中間焼鈍を施し、さらに最終冷間圧延を行なってから、溶体化処理を行ない、800℃/minの平均冷却速度で冷却(焼入れ)した。その後、一部のものは安定化処理を施し、されに一部については復元処理を施した。
最終的に得られたアルミニウム合金板(製品板)については、次のようにして集合組織(結晶方位密度)を調べた。
すなわち、厚さ1mmの板を用いて、表面から板厚1/4深さの位置をX線の測定面とし、X線回折装置を用いて、X線回折のシェルツ反射法により、{100}、{110}、{111}の不完全極点図を測定し、これらを元に三次元結晶方位解析(ODF)を行なって調べた。またこれらの解析においては、アルミニウム粉末から作られたランダム結晶方位を有する試料を測定して得たデータを{100}、{110}、{111}極点図の解析の際に使う規格化ファイルとし、これによりランダム方位を有する試料に対する倍数として各種方位密度を求めた。なおこの発明において、結晶方位密度は全て三次元結晶方位解析(ODF)に基づくものである。またここで、キューブ(Cube)方位は、{001}<100>を代表方位とし、N方位は、{001}<410>を代表方位とし、さらにG方位は、{027}<100>を代表方位とした。
なお、通常は上記方位を中心に一定角度を持つ方位分散が存在するため、この発明では、上記方位まわり5°回転範囲の中にある最大方位密度を取ってそれぞれ上記方位密度の代表値とした。
このような各結晶方位密度測定結果を表4に示す。
また最終板については、その結晶粒度を次のようにして調べた。
すなわち、板の圧延方向RDと板面法線NDで構成するRD−ND断面においてEBSP(EBSD)法によってマッピングした画像をもとに切断法でASTMナンバーを算出した。ここで、ミスオリエンテーション5°以上の結晶境界線を結晶粒界とみなした。その結果を表4中に示す。
さらに前述のようにして得られた各板について、室温経時変化を考慮して室温(25℃)に1ヶ月放置した後、塗装焼付前の板について、引張試験による強度評価、カップ絞り試験による耳率、リジングマーク評価、曲げ試験によるヘム加工性評価を行なった。さらにそれぞれ2%ストレッチ後、170℃×20分の塗装焼付(ベーク)処理を施し、引張試験を行なって、機械的強度として0.2%耐力値を測定した。これらの結果を表4、表5中に示す。なお各測定方法、評価方法は次の通りである。
耳率測定:
板に潤滑油を塗布した後、ポンチ径φ32mm、ブランク径φ62mm、しわ押さえ100kgの条件でカップに絞り、そのカップの耳率を調べた。なおここで耳率の方向は、圧延方向を基準にした0°方向、90°方向で示す。
ヘム加工性の評価:
材料の圧延方向に対して板面内0°、45°、90°三方向に曲げ試験片を採取し、5%ストレッチしてから、曲げ半径R0.5mm、180°曲げを行ない、目視により割れの発生の有無を評価した。ここで○印は割れ無しを、また×印は割れ有りを示す。
リジング・マークと肌荒れの発生評価:
圧延方向に対して45°をなす方向に沿ってJIS5号引張試験を採取し、10%ストレッチを行ない、表面に形成される圧延方向に沿う筋(凹凸)と肌荒れを目視で判定した。○印は筋なし、肌荒れなし、△印は中程度の筋と肌荒れ状態を示し、×印は筋と肌荒れが強い状態を示す。ここで筋と肌荒れが中程度でも、自動車用外板の外観として不適となるおそれがある。
Figure 2009256722
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製造番号1〜4は、いずれも合金の成分組成がこの発明で規定する範囲内であって、かつ製造プロセス条件もこの発明で規定する範囲内であり、最終板の結晶方位密度条件等もすべてこの発明で規定する条件を満たしたものであるが、これらの場合は、強度、伸び異方性が小さく、ヘム加工性が優れ、耐肌荒れ性と耐リジング性が良好である。またこれらのうち、製造番号1、3、4では、いずれも焼付硬化性が高く、塗装焼付時に充分な焼付硬化性を示し、一方製造番号2では、焼付け硬化性が低いものの、成形性の指標である伸びが優れていた。なお、製造番号1は安定化処理を施す代わりに焼入れ温度100℃から50℃までの温度範囲を平均冷却速度5.5℃/h(すなわち100℃から50℃の間の滞留時間9.1時間)で冷却したものである。
これに対し製造番号5〜8は、いずれも合金の成分組成はこの発明で規定する範囲内であるが、製造プロセス条件のいずれかがこの発明の範囲外であったものである。そしてこれらのうち、製造番号5では、結晶方位密度、耳率がこの発明で規定する条件を満たさず、また肌荒れ不良、強度と伸びの異方性も認められた。また製造番号6、7の場合は、強度と伸びの異方性が小さいが、ヘム加工性が劣り、耐肌荒れ性と耐リジング特性が若干不良となった。さらに製造番号8の場合は、熱間圧延時の最大圧下が小さく、最終の冷間圧延率も低かったため、結晶粒が粗く、耐肌荒れ性が著しく劣化し、またヘム加工性も劣るとともに、耐リジング性もさほど良好ではなかった。

Claims (5)

  1. Al−Mg−Si系もしくはAl−Mg−Si−Cu系合金からなるアルミニウム合金が素材とされ、板に存在する結晶粒のキューブ方位密度をC、板面法線(以下「ND」と記す)を軸にキューブ方位から回転した方位(以下「ND回転キューブ方位」と記す)の密度をNとして、次の(1)〜(3)式(各方位密度C、Nの数値はすべてランダム結晶方位密度に対する倍数で表す)
    C<15 ・・・(1)
    N<15 ・・・(2)
    1/20<N/C<1 ・・・(3)
    を満たし、さらに耳率が7%以下、結晶粒度がASTMナンバーで5以上であることを特徴とする、耐肌荒れ性と耐リジング性に優れた成形加工用アルミニウム合金板。
  2. Al−Mg−Si系もしくはAl−Mg−Si−Cu系合金からなるアルミニウム合金が素材とされ、板に存在する結晶粒のキューブ方位密度をC、圧延方向(以下「RD」と記す)を軸にキューブ方位から回転した方位(以下「RD回転キューブ方位」と記す)の密度をGとして、次の(1)式、(4)式、(5)式(各方位密度C、Gの数値はすべてランダム結晶方位密度に対する倍数で表す)
    C<15 ・・・(1)
    G<15 ・・・(4)
    1/20<G/C<1 ・・・(5)
    を満たし、さらに耳率が7%以下、結晶粒度がASTMナンバーで5以上であることを特徴とする、耐肌荒れ性と耐リジング性に優れた成形加工用アルミニウム合金板。
  3. Al−Mg−Si系もしくはAl−Mg−Si−Cu系合金からなるアルミニウム合金が素材とされ、板に存在する結晶粒のキューブ方位密度をC、板面法線(以下「ND」と記す)を軸にキューブ方位から回転した方位(以下「ND回転キューブ方位」と記す)の密度をNとして、圧延方向(以下「RD」と記す)を軸にキューブ方位から回転した方位(以下「RD回転キューブ方位」と記す)の密度をGとして、次の(1)〜(5)式(各方位密度C、N、Gの数値はすべてランダム結晶方位密度に対する倍数で表す)
    C<15 ・・・(1)
    N<15 ・・・(2)
    1/20<N/C<1 ・・・(3)
    G<15 ・・・(4)
    1/20<G/C<1 ・・・(5)
    を満たし、さらに耳率が7%以下、結晶粒度がASTMナンバーで5以上であることを特徴とする、耐肌荒れ性と耐リジング性に優れた成形加工用アルミニウム合金板。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかの請求項に記載された成形加工用アルミニウム合金において、前記素材として、Mg0.2〜1.5%(mass%、以下同じ)、Si0.3〜2.0%を含有し、かつMn0.03〜0.6%、Cr0.01〜0.4%、Zr0.01〜0.4%、V0.01〜0.4%、Fe0.03〜1.0%、Ti0.005〜0.3%、Zn0.03〜2.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、さらにCuが1.5%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金を用いることを特徴とする、耐肌荒れ性と耐リジング性に優れた成形加工用アルミニウム合金板。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれかの請求項に記載の成形加工用アルミニウム合金板を製造するにあたり、
    アルミニウム合金の鋳塊に480℃以上の温度で均質化処理を行ない、均質化処理後450℃未満の温度域に50℃/h以上の冷却速度で冷却し、続いて350℃未満の温度域で熱間圧延を開始し、その熱間圧延過程において、板厚200mmの段階から熱間圧延終了板厚の段階までの間で少なくとも1回は1パスの圧延率が40%以上の高圧下を施して、350℃未満の温度で熱間圧延を終了し、その後、冷間圧延を挟んで、もしくは冷間圧延を挟まずに、昇温速度が100℃/min以上でかつ材料到達温度が430℃以上の中間焼鈍を行ない、冷却後、さらに30%以上の圧延率で最終冷間圧延を施して所定の板厚とし、その後、480℃以上の温度での溶体化処理を行なってから、100℃/min以上の平均冷却速度で150℃未満の温度域まで冷却することを特徴とする、耐肌荒れ性と耐リジング性に優れた成形加工用アルミニウム合金板の製造方法。
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