JP4164437B2 - 成形加工用アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents

成形加工用アルミニウム合金板の製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、自動車ボディシートやそのほか各種自動車部品、各種機械器具、家電製品やその部品等の素材として、成形加工および塗装焼付を施して使用されるAl−Mg−Si系のアルミニウム合金板およびその製造方法に関するものであり、成形性、特にヘム曲げ性が良好であるとともに、塗装焼付後の強度が高く、かつ室温での経時変化が少ない成形加工用アルミニウム合金板を製造する方法に関するものである。
従来自動車のボディシートとしては、主として冷延鋼板を使用することが多かったが、最近では車体軽量化等の観点から、アルミニウム合金圧延板を使用することが多くなっている。ところで自動車のボディシートはプレス加工を施して使用するところから、成形加工性が優れていること、また成形加工時におけるリューダースマークが発生しないことが要求され、また高強度を有することも必須であって、塗装焼付を施して使用するのが通常であるため、塗装焼付後に高強度が得られることが要求される。そしてまた成形性が良好であることが要求されるのはもちろんであるが、自動車用ボディシートとしては、接合のためにヘム曲げ加工を施して使用することが多いところから、成形性のうちでも特にヘム曲げ性が優れていることが強く要求される。
従来このような自動車用ボディシート向けのアルミニウム合金としては、Al−Mg系合金のほか、時効性を有するAl−Mg−Si系合金が主として使用されている。この時効性Al−Mg−Si系合金は、塗装焼付前の成形加工時においては比較的強度が低くて成形性が優れている一方、塗装焼付時の加熱によって時効されて塗装焼付後の強度が高くなる利点を有するほか、リューダースマークが発生しない等の利点を有する。
なお、曲げ加工性向上に関する従来技術としては、鋳塊均質化処理後の冷却速度を制御することにより化合物分散状態を制御する特許文献1の技術、結晶粒界の方位差が15°以下あるいは20°以下の結晶粒界の割合を規制する特許文献2、特許文献3等がある。また本発明者等も既に特願2002−181732、特願2002−066405の提案を行なっている。
特開2003−105471 特開2003−171726 特開2003−166029
前述のような自動車用ボディシート向けの時効性Al−Mg−Si系合金板についての従来の製造方法により得られた板では、最近の自動車用ボディシートに要求される特性を充分に満足させることは困難であった。
すなわち、最近ではコストの一層の低減や自動車車体の軽量化等のために、自動車用ボディシートについてさらに薄肉化することが強く要求されており、そのため薄肉でも充分な強度が得られるように、一層の高強度化が求められると同時に、成形性、特にヘム曲げ性の改善が強く要求されているが、これらの性能をバランスよく満足させる点について従来の一般的な製造方法によって得られたAl−Mg−Si系合金板では不充分であった。特にヘム曲げ加工は、曲げ内径が1mm以下の180°曲げという過酷な曲げ加工であるため、良好なヘム曲げ性と強度とを両立させることが困難であるという問題があった。
また塗装焼付については、省エネルギおよび生産性の向上、さらには高温に曝されることが好ましくない樹脂等の材料との併用などの点から、従来よりも焼付温度を低温化し、また焼付時間も短時間化する傾向が強まっている。しかしながら従来の一般的な製法により得られた時効性Al−Mg−Si系合金板の場合、低温・短時間の塗装焼付処理では、塗装焼付時の硬化(焼付硬化)が不足し、塗装焼付後に充分な高強度が得難くなる問題があった。
ここで、従来の一般的な製法により得られた時効性Al−Mg−Si系合金板では、塗装焼付後に高強度を得るために焼付硬化性を高めようとすれば、素材の延性と曲げ加工性(特にヘム曲げ性)が低下し、また板製造後に室温に放置した場合に自然時効により硬化が生じやすくなり、そのため成形性、特にヘム曲げ性が阻害されがちとなるという問題が生じている。
また前記各特許文献のうち、特許文献1では、化合物分散状態、特にMgSiの粒径と数を規制することにより曲げ加工性などを改善することが提案されているが、その効果は未だ充分ではなかった。
また特許文献2、特許文献3においては、結晶粒間の方位差が15°以下あるいは20°以下である結晶粒界の割合を規制することにより曲げ加工性などを改善することが提案されており、確かにこの方法では、曲げ加工性の一定の改善効果が図られるが、本発明者らが実験・検討を重ねた結果、結晶粒間の方位差が15°以下あるいは20°以下である結晶粒界の割合が20%を越えても、圧延板のあらゆる方向の曲げ性がすべて改善されるわけではないことが判明した。例えば、圧延方向に対し平行な方向、あるいは圧延方向に対し直交する方向の曲げ性の改善が図られても、圧延方向に対し45°をなす方向の曲げ性は改善されず、所謂、曲げ異方性という新たな問題が生じてしまうことが判明した。
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、焼付硬化性が優れていて、塗装焼付時における強度上昇が大きく、しかも板製造後の室温での経時的な変化が少なくて、長期間放置した場合でも自然時効による硬化に起因する成形性の低下も少なく、さらには良好な成形加工性、特に良好な曲げ加工性を有すると同時に、曲げ異方性も少ない成形加工用アルミニウム合金板を、量産的規模で確実かつ安定して製造し得る方法を提供することを目的とするものである。
前述のような課題を解決するべく本発明者等が種々実験・検討を重ねた結果、Al−Mg−Si系合金の成分組成を適切に調整するばかりでなく、結晶組織として、特定の方位、特にキューブ方位(立方体方位)の結晶方位密度を高め、しかもそのキューブ方位周辺の結晶方位、特に圧延方向軸(RD軸)、板面法線軸(ND軸)を基準に小角度回転させた方位の結晶方位密度を適切に規制して、塑性異方性の指標となるランクフォード値(r値)を適切な範囲内に規制することによって、曲げ加工性、特にヘム曲げ性を向上させ得ると同時に、その異方性を小さくすることができ、また良好な焼付硬化性、室温での経時変化性を得ることができることを見出した。さらには、曲げ加工時に生じる加工硬化、特に圧延方向に対する3方向の加工硬化量の相互間の関係を適切に制御することによって、曲げ異方性をより確実かつ安定して小さくし得ることを見出した。そしてこのような優れた性能を有する成形加工用アルミニウム合金板を量産的規模で安定して製造し得るプロセス条件を見出し、この発明をなすに至ったのである。
具体的には、請求項1の発明の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法は、Mg0.3〜1.5%、Si0.3〜2.0%を含有し、かつMn0.03〜0.4%、Cr0.01〜0.4%、Fe0.03〜0.5%、Ti0.005〜0.2%、Zn0.03〜2.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、さらにCuが1%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金を素材とし、DC鋳造法によりスラブに鋳造するにあたり、凝固後の冷却過程においてスラブ表面の600℃から400℃までの温度降下速度が30℃/min以上でかつスラブ厚中央部の600℃から400℃までの温度降下速度が5℃/min以上となるように鋳造し、その後300〜450℃の範囲内の温度に加熱して熱間圧延を開始し、かつその熱間圧延過程において熱間圧延開始板厚から100mmの中間板厚までの間における材料温度の降下量が150℃以内となるように制御するとともに、熱間圧延終了温度を200〜330℃の範囲内に制御し、熱間圧延終了後圧延率30%で冷間圧延を施した後、480℃以上の温度で溶体化処理を行ない、直ちに100℃/min以上の平均冷却速度で50℃以上150℃未満の温度域まで冷却し、続いてその温度域内で1時間以上の安定化処理を行ない、これによりキューブ方位密度がランダム結晶方位を有する試料の30〜250倍の範囲内にあり、かつ圧延方向軸RDを基準としてキューブ理想方位を10°回転させた結晶方位の方位密度が、板面法線軸NDを基準としてキューブ理想方位を10°回転させた方位の方位密度より高く、さらに0°、90°耳率が5%以上で、しかも圧延方向と平行な方向のランクフォード値rが0.50〜1.50の範囲内、板面内において圧延方向に対し45°をなす方向のランクフォード値r45が0.01〜0.45の範囲内、板面内において圧延方向に対し直交する方向のランクフォード値r90が0.60〜3.50の範囲内にあり、さらに導電率が54%IACS以下であるアルミニウム合金板を得ることを特徴とするものである。
また請求項2の発明の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法は、請求項1に記載の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法において、圧延方向に対し板面内で0°、45°、90°の3方向にそれぞれ圧延率80%の冷間圧延を加えたときに、45°方向の0.2%耐力値の上昇分が0°方向の0.2%耐力値の上昇分および90°方向の0.2%耐力値上昇分よりも大きく、かつその45°方向0.2%耐力値上昇分と、0°方向耐力値上昇分および90°方向0.2%耐力値上昇分との差がそれぞれ5〜70MPaの範囲内にあるアルミニウム合金板を得ることを特徴とするものである。
なおこの発明においてキューブ方位密度とは、キューブ理想方位である(100)<001>方位の結晶方位密度を意味する。すなわち、一般の工業用材料では、上記のキューブ理想方位を中心に15°まで回転させた範囲内の結晶方位密度をキューブ方位密度と称することが多いが、この発明では上述のようにキューブ理想方位の方位密度と、そのキューブ理想方位の周辺方位の方位密度(圧延方向軸RDを基準としてキューブ理想方位を10°回転させた結晶方位の方位密度、および板面法線軸NDを基準としてキューブ理想方位を10°回転させた結晶方位の方位密度)とを明確に区別するため、キューブ理想方位の方位密度をもってキューブ方位密度と称することとしている。
この発明によれば、成形性、特にヘム曲げ性が優れていると同時に、曲げ異方性も少なく、さらには塗装焼付硬化性が良好で塗装焼付後の強度が高く、また室温での経時変化も少ない成形加工用アルミニウム合金板を、量産的規模で確実かつ安定して得ることができる。
先ずこの発明で製造対象となる成形加工用アルミニウム合金板における成分組成の限定理由について説明する。
Mg:
Mgはこの発明で対象としている系の合金で基本となる合金元素であって、Siと共同して強度向上に寄与する。Mg量が0.3%未満では塗装焼付時に析出硬化によって強度向上に寄与するG.P.ゾーンの生成量が少なくなるため、充分な強度向上が得られず、一方1.5%を越えれば、粗大なMg−Si系の金属間化合物が生成され、キューブ方位密度を高めるために不利となり、成形性、特に曲げ加工性が低下するから、Mg量は0.3〜1.5%の範囲内とした。
Si:
Siもこの発明の系の合金で基本となる合金元素であって、Mgと共同して強度向上に寄与する。またSiは、鋳造時に金属Siの晶出物として生成され、その金属Si粒子の周囲が加工によって変形されて、溶体化処理の際に再結晶核の生成サイトとなるため、再結晶組織の微細化にも寄与する。Si量が0.3%未満では上記の効果が充分に得られず、一方2.0%を越えれば粗大なSi粒子や粗大なMg−Si系の金属間化合物が生じてキューブ方位密度を高めるために不利となり、成形性、特に曲げ加工性の低下を招く。したがってSi量は0.3〜2.0%の範囲内とした。
Mn、Cr、Fe、Ti、Zn:
これらの元素は、強度向上や結晶粒微細化、あるいは時効性の向上や表面処理性の向上に有効であり、いずれか1種または2種以上を添加する。これらのうちMn、Crは強度向上と結晶粒の微細化および組織の安定化に効果がある元素であるが、Mnの含有量が0.03%未満、もしくはCrの含有量が0.01%未満では、上記の効果が充分に得られず、一方Mn、Crの含有量がそれぞれ0.4%を越えれば、上記の効果が飽和するばかりでなく、多数の金属間化合物が生成されて成形性、特にヘム曲げ性に悪影響を及ぼすおそれがあり、したがってMnは0.03〜0.4%の範囲内、Crは0.01〜0.4%の範囲内とした。またFeも強度向上と結晶粒微細化に有効な元素であるが、その含有量が0.03%未満では充分な効果が得られず、一方0.5%を越えれば、キューブ方位密度を高める上において不利となって、成形性、特に曲げ加工性が低下するおそれがあり、したがってFe量は0.03〜0.5%の範囲内とした。さらにTiも強度向上と鋳塊組織の微細化に有効な元素であるが、その含有量が0.005%未満では充分な効果が得られず、一方0.2%を越えればTi添加の効果が飽和するばかりでなく、粗大な晶出物が生じるおそれがあるから、Ti量は0.005〜0.2%の範囲内とした。またZnは時効性向上を通じて強度向上に寄与するとともに表面処理性の向上に有効な元素であるが、Znの添加量が0.03%未満では上記の効果が充分に得られず、一方2.5%を越えれば成形性が低下するから、Zn量は0.03〜2.5%の範囲内とした。
Cu:
Cuは強度向上および成形性向上のために添加されることがある元素であるが、その量が1.0%を越えれば耐食性(耐粒界腐食性、耐糸錆性)が劣化するから、Cuの含有量は1.0%以下に規制することとした。なお特に耐食性を重視する場合は、Cu量は0.05%以下に規制することが望ましい。
以上の各元素のほかは、基本的にはAlおよび不可避的不純物とすれば良い。
なお上記のMn、Cr、Fe、Ti、Znの含有量範囲は、それぞれ積極的に添加する場合の範囲として示したものであり、いずれも下限値より少ない量を不純物として含有する場合を排除するものではない。特に0.03%未満のFeは、通常のアルミ地金を用いれば不可避的に含有されるのが通常である。
また時効性Al−Mg−Si系合金においては、高温時効促進元素あるいは室温時効抑制元素であるAg、In、Cd、Be、あるいはSnを微量添加することがあるが、この発明の場合も微量添加であればこれらの元素の添加も許容され、それぞれ0.3%以下であれば特に所期の目的を損なうことはない。
なおまた、一般のAl合金においては、結晶粒微細化のために前述のTiと同時にBを添加することもあり、この発明の場合もTiとともに500ppm以下のBを添加することは許容される。
さらにこの発明の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法において、良好な曲げ加工性、特に良好なヘム曲げ性を得ると同時に、曲げ異方性を小さく抑制するためには、合金の成分組成を前述のように調整するばかりではなく、板の金属組織、特に結晶方位を適切に制御することが極めて重要である。
すなわちこの発明において、結晶方位密度を規制しているのは、粒界の性質(小角か大角か)を制御するためだけではなく、アルミニウム合金の塑性変形に伴う結晶のすべり変形全体を制御することを主目的としている。そして特に曲げ加工中に交差すべりが生じやすいような結晶方位の集積度を高めることが極めて重要であり、そのようにすることによって、加工による転位密度の増加を抑えて、加工硬化を抑制することが可能となるのである。さらにその結果、ヘム曲げ加工の際において、加工硬化の抑制により割れ限界強度に達するまで材料の大歪変形が可能となる。ここで、すべり変形挙動を、比較的ランダムな結晶方位を有する従来の材料、言い換えれば比較的交差すべりが生じ難い従来材料と大きく異ならしめるためには、結晶方位の集積が必要である。一方実際の材料では、種々の結晶方位が存在するが、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、種々の結晶方位のうちでも特にキューブ方位の方位密度、すなわちキューブ方位の理想方位である(001)<100>方位の方位密度を、ランダムな結晶方位を有する試料の方位密度の30倍から250倍までの範囲内に高めることによって、すべり変形挙動を、従来材料とは大きく異ならしめることができることを見出した。すなわち、このようにキューブ方位密度をランダム方位試料の30〜250倍の範囲内とすることによって、加工変形中における交差すべりが活発となり、加工硬化が抑制され、曲げ加工性が改善されるのである。ここで、キューブ方位密度がランダム方位試料の30倍未満では、上記の効果が不充分であり、一方250倍を越えれば、引張強度、伸びなどの異方性が強くなりすぎ、成形性の低下が懸念される。そこでこの発明ではキューブ方位密度をランダム方位試料の30〜250倍の範囲内と規定した。
さらに、単に曲げ加工性を改善するばかりでなく、曲げ加工性の異方性、すなわち曲げ異方性を改善するためには、圧延方向と平行な方向(0°方向)、板面内において圧延方向に対し直交する方向(90°方向)の曲げ加工性を低下させることなく、特に圧延方向に対して板面内で45°の方向の曲げ性を向上させることが必要であり、そのためには、キューブ理想方位(001)<100>から圧延方向軸(RD軸)を基準として10°回転させた方位(以下“RD10方位”と記す)の方位密度が、同じくキューブ理想方位から板面法線軸(ND軸)を基準として10°回転させた方位(以下“ND10方位”と記す)の方位密度よりも高いこと、すなわち、
RD10方位密度>ND10方位密度
となることが必要である。
すなわち、既に述べたように一般的に実用的な工業材料においてある結晶方位の方位密度を表わす場合、理想方位に対して15°回転した方位まで含めてその方位の方位密度と称することが多く、キューブ方位の方位密度の場合も、キューブ理想方位(001)<100>から15°までずれる方位を含ませることが多いが、本発明者らはこのようなキューブ理想方位から15°以内の範囲内でずれた方位について、曲げ性に及ぼす影響を詳細に検討した結果、RD10方位密度をND10方位密度より高くすることによって、圧延方向と平行な方向(0°方向)、あるいは圧延方向に対し直交する方向(90°方向)の曲げ性を低下させることなく、圧延方向に対し45°をなす方向(45°方向)の曲げ性を改善し得ることを見出し、上記の条件を規定した。
さらにこの発明による成形加工用アルミニウム合金板では、板全体にわたって0°耳、90°耳の耳率が5%以上であることも重要である。すなわち、前述のようにこの発明では良好な曲げ加工性を確保しかつ曲げ異方性を抑制するためにキューブ方位密度およびその周辺方位密度(RD10方位密度、ND10方位密度)を規定しているが、それ以外の結晶方位の方位密度もある程度は曲げ加工性に影響を与える。しかしながら実際上は、これらの方位以外のすべての結晶方位の方位密度を厳密に規定することは困難である。一方、板のカッピング試験で絞ったカップの耳率によれば、材料の結晶方位をマクロ的に評価することができる。そこでこの発明では、キューブ方位やその周辺方位以外の結晶方位の方位密度の影響を、0°耳、90°耳で評価、規制することとした。具体的には、圧延方向を基準にカップの0°、90°耳率が5%未満では、たとえ前述のキューブ方位密度およびその周辺方位密度の条件が満足されていても、良好な曲げ加工性、曲げ異方性が得られないおそれがある。そこでこの発明では耳率に関して前述のように規制することとした。なお0°、90°耳率は、上記の範囲内でも特に10%以上が望ましい。
そしてまたこの発明の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法においては、製品板の3方向のランクフォード値(r値)を規定している。すなわち圧延方向と平行な方向のランクフォード値(以下“r0”と記す)が0.50〜1.50の範囲内、好ましくは0.65〜1.50の範囲内、また圧延方向に対し板面内で45°の角度をなす方向のr値(以下“r45”と記す)が0.01〜0.45の範囲内、圧延方向に対し板面内で直交する方向のr値(以下“r90”と記す)が0.60〜3.50の範囲内、好ましくは0.95〜3.50の範囲内であることを規定している。このように3方向のr値を定めた理由は次の通りである。
既に述べたように曲げ加工性、曲げ異方性は結晶方位密度の影響を強く受けるが、あらゆる結晶方位密度をすべて細かく規定することは現実には極めて困難である。一方、r値は塑性異方性を表わす指標であって、結晶方位と密接な関係があるから、r値を適切な範囲に制御することによって、曲げ加工性、曲げ異方性をより確実に制御することができる。すなわち、3方向のr値(r10、r45、r90)が上記の範囲から外れれば、たとえキューブ方位密度条件や周辺方位密度(RD10方位密度、ND10方位密度)の条件を満足していても、良好な曲げ加工性、曲げ異方性が得られないおそれがある。そこで3方向のr値、すなわちr10、r45、r90を前述のように規定した。
以上の各条件のほか、請求項2の発明の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法においては、最終製品板の3方向、すなわち圧延方向と平行な方向(0°方向)、板面内において圧延方向に対し直交する方向(90°方向)、板面内において圧延方向に対し45°の角度をなす方向(45°方向)に、それぞれ圧延率80%の冷間圧延を加えたときの加工硬化による各方向の0.2%耐力値の上昇分(冷間圧延前の0.2%耐力値に対する冷間圧延後の0.2%耐力値の増加分)を規定している。すなわち、45°方向の耐力値上昇分Δσ45が、0°方向の耐力値上昇分Δσおよび90°方向の耐力値上昇分Δσ90と比べて大きく、しかも45°方向耐力値上昇分Δσ45と90°方向耐力値上昇分Δσ90との差および45°方向耐力値上昇分Δσ45と0°方向耐力値上昇分Δσとの差が、いずれも5〜70MPaの範囲内にあることを規定している。
換言すれば、次の4式、
Δσ45>Δσ
Δσ45>Δσ90
70MPa≧Δσ45−Δσ≧5MPa
70MPa≧Δσ45−Δσ90≧5MPa
を満たすことを規定している。
このような3方向の加工硬化の条件を請求項2において規定した理由は次の通りである。
材料の加工硬化性は、曲げ加工性を支配する重要な因子であり、一般的に材料の加工硬化性には、材料の化学成分、溶質濃度、分散粒子、加工度が大きな影響を及ぼすことが知られているが、本発明者らはそれら以外に集合組織(結晶方位)との関係を詳細に検討した結果、結晶方位の集積度が高ければ、加工硬化の異方性も顕著に表れることを突き止めめ、これが最終的に曲げ加工の異方性に反映されることを見出した。すなわち、材料のキューブ方位密度が高くなるにつれて、既に述べたように圧延方向と平行な方向あるいは圧延方向に対し直交する方向の曲げ加工性は著しく改善されるが、その反面、圧延方向に対し45°をなす方向の曲げ加工性の改善度合いは、他の2方向と比べて小さくなり、曲げ加工性の異方性は大きくなってしまう。そこでこの発明では、キューブ理想方位の周辺方位であるRD10方位密度とND10方位密度を、RD10方位密度>ND10方位密度の関係を満たすよう規制することが曲げ異方性の改善に有効であることを見出し、この条件を請求項1において規定している。しかるに、実際にはRD10方位密度、ND10方位密度以外の結晶方位の方位密度も曲げ異方性にある程度影響を与える。しかしながら、あらゆる方位密度をすべて細かく規定することは現実には極めて困難であり、そこでトータル的な曲げ異方性の評価として、45°方向と、0°方向、90°方向の加工硬化の度合を相対的に規制することによって、曲げ異方性が確実かつ安定して小さい材料が得られるようにした。
ここで、圧延率80%の冷間圧延を加えたときに、45°方向の耐力値上昇分Δσ45が、0°、90°方向の耐力値上昇分Δσ、Δσ90と比べてその差が5MPa未満では、従来材と比べて全方向曲げ加工性の改善度合いが低い。一方その差が70MPaを越えれば、0°方向および90°方向の曲げ加工性は著しく改善されるが、45°方向の曲げ加工性の改善度合いが極端に小さくなる。したがって板全体の曲げ加工バランスを考慮して、その差を5〜70MPaの範囲内に規制することとした。
また以上のほか、この発明による成形加工用アルミニウム合金板では、導電率が54%IACS以下であることも必要である。すなわち、導電率は固溶元素の固溶量の指標となり、したがって導電率は焼付硬化性に影響を与える。ここで導電率が54%IACSを越えれば、固溶しているMgとSiの量が少なくないため、時効析出硬化量が充分に得られず、塗装焼付後に充分な高強度が得難くなるから、導電率が54%IACS以下であることを規定した。なお導電率の下限は特に規制しないが、通常この系の合金では、導電率を40%IACS以下としても、塗装焼付硬化性の効果が飽和し、また工業的にこれを実現するには困難となる。
次にこの発明の成形加工用アルミニウム合金板を製造するプロセスについて説明する。
先ず前述のような成分組成の合金を常法に従って溶製し、DC鋳造法によってスラブに鋳造する。この鋳造時においては、スラブの凝固後、600℃から400℃までのスラブ表面の温度降下速度が30℃/min以上、600℃から400℃までのスラブの厚み方向中央部(スラブ厚中央部)の温度降下速度が5℃/min以上に維持されるように鋳造する。このような凝固後の条件を適用することにより、鋳造したスラブのままの状態でMg、Si等の元素を充分に固溶させることができ、その結果、従来の一般的な製造方法で適用されている鋳塊均質化処理を行なわなくても、最終製品板の段階で充分な塗装焼付硬化性を確保することが可能となる。そしてまたこのように均質化処理を行なわなかったスラブは、均質化処理を行なったスラブとは第2相粒子の分布状態が異なり、その後の熱間圧延以降の工程条件としてこの発明で規定している条件を適用することによって、最終的に前述の集合組織条件を満たす製品板を容易かつ確実に得ることができる。また均質化処理を省くことによって、製造コストの面でも有利となることはもちろんである。
鋳造−凝固後には、上述のように均質化処理を施すことなく、必要に応じて面削してから熱間圧延を行なう。この熱間圧延は、面削後のスラブを、300〜450℃の範囲に加熱(加熱速度は特に規制しないが、2℃/h以上が好ましい)して保持なし、あるいは24h以内に保持してから行なうことが望ましい。ここで、熱間圧延前の加熱温度(熱間圧延開始温度)が300℃未満では熱間圧延が困難となり、一方450℃を越える高温に加熱して熱間圧延を開始すれば、最終製品板にリジングマークが発生して外観を損ないやすい。
さらに熱間圧延過程では、熱間圧延開始時のスラブ厚(通常は面削後の状態で250mm以上)から熱延中間板厚100mmまでの温度降下量が150℃以内となるように制御し、さらに熱延終了温度が200〜330℃となるように制御する。熱間圧延過程においてこれらの条件を適用することは、所要の結晶方位の組織を得るために重要であり、特にRD10方位密度>ND10方位密度の条件を満たす組織を得るために重要である。これらの条件を外れれば、請求項1で規定する方位密度条件が満たされなくなるおそれがある。
上述のようにして熱間圧延を行なってコイルに巻取った後には、中間焼鈍を行なわずに圧延率30%以上で冷間圧延を施して所要の板厚(製品板厚)とする。このように30%以上の圧延率で冷間圧延することにより、既に述べたような結晶方位密度条件を有する製品板を得ることができる。またここで、冷間圧延率を30%以上にすることによって、材料に高い歪みエネルギーが蓄積され、熱間圧延後の溶体化処理−焼入れ時に形成された結晶粒が細かくなって、成形加工後に良好な表面外観品質を得ることが可能となる。冷間圧延率が30%未満では、成形時に肌荒れ等の表面欠陥が発生するおそれがある。
上述のようにして所要の製品板厚とした後には、480℃以上の温度で溶体化処理を行なう。この溶体化処理は、MgSi、単体Si等をマトリックスに固溶させ、これにより焼付硬化性を付与して塗装焼付後の強度向上を図るために重要な工程である。またこの工程は、MgSi、単体Si粒子等の固溶により第二相粒子の分布密度を低下させて、延性と曲げ性を向上させるためにも寄与し、さらには再結晶により最終的に所要の結晶方位を得て、良好な成形性を得るためにも重要な工程である。
溶体化処理温度が480℃未満の場合、室温での経時変化の抑制に対しては有利と考えられるが、その場合MgSi、Siなどの固溶量が少なくなって、充分な焼付硬化性が得られなくなるばかりでなく、延性と曲げ性も著しく悪化するから、溶体化処理温度は480℃以上とする必要がある。一方溶体化処理温度の上限は特に規定しないが、共晶融解の発生のおそれや再結晶粒粗大化等を考慮して、通常は580℃以下とすることが望ましい。また溶体化処理の時間は特に規制しないが、通常は5分を越えれば溶体化効果が飽和し、経済性を損なうばかりではなく、結晶粒の粗大化のおそれもあるから、溶体化処理の時間は5分以内が望ましい。
溶体化処理後には、100℃/min以上の冷却速度で、50℃以上150℃未満の温度域まで冷却(焼入れ)する。ここで、溶体化処理後の冷却速度が100℃/min未満では、冷却中にMgSiあるいは単体Siが粒界に多量に析出してしまい、成形性、特にヘム曲げ性が低下すると同時に、焼付硬化性が低下して塗装焼付時の充分な強度向上が望めなくなる。
上述のように480℃以上の温度での溶体化処理を行なって100℃/min以上の冷却速度で50℃以上150℃未満の温度域内まで冷却(焼入れ)した後には、50℃未満の温度域(室温)まで温度降下しないうちに、この温度範囲内(50〜150℃未満)で2時間以上の安定化処理を行なう。この安定化処理は、50〜150℃未満の温度範囲内の一定温度で1時間以上保持しても、あるいはその温度範囲内で1時間以上かけて冷却(徐冷)しても良い。
このように溶体化処理して50〜150℃未満の温度域に焼入れた後、50℃未満の温度域まで冷却することなくそのまま50〜150℃未満の温度で安定化処理を行なう理由は次の通りである。すなわち、溶体化処理後、特に100℃/min以上の平均冷却速度で50℃未満の室温に冷却した場合には、室温クラスターが生成される。この室温クラスターは強度に寄与するG.P.ゾーンに移行しにくいため、塗装焼付硬化性に不利となる。一方、溶体化処理後に150℃以上の温度範囲に冷却してそのまま保持した場合には、G.P.ゾーンあるいは安定相が生成され、成形前の素材強度が高くなり過ぎて、ヘム曲げ性とその他の成形性が劣化する。したがってヘム曲げ性、成形性と塗装焼付硬化性とのバランスの観点からは、溶体化処理−焼入れ−安定化処理が上記の条件を満たすことが好ましい。
表1に示すこの発明成分組成範囲内の合金記号A1〜A5の合金について、それぞれ常法に従って溶製し、DC鋳造法によりスラブに鋳造した。
この鋳造過程においては、凝固終了後、スラブ表面およびスラブ厚中央部の600℃から400℃までの温度降下速度が表2中に示すように種々の値となるように制御した。鋳造後、面削してから、熱間圧延前加熱として、2℃/hr以上の加熱速度で種々の温度に加熱して、その温度で熱間圧延を開始した。なお本発明例としては、スラブ面削後、熱間圧延前には均質化処理を行なわず、比較例の一部としては均質化処理を行なった。熱間圧延過程では、スラブ厚(面削後の厚みで250mm以上)から熱延中間板厚100mmまでの温度降下量を制御し、さらに熱延終了温度を制御して、コイルに巻取った。その後、冷間圧延途中に中間焼鈍を施すことなく、圧延率67%で1mmの板厚まで冷間圧延し、さらに種々の温度、時間で溶体化処理を行ない、100℃/min以上の冷却速度で種々の温度まで冷却(焼入れ)して、引き続き種々の安定化処理を行なった。これらの製造プロセスの詳細な条件を表2の製造番号1〜9に示す。
なお表2において、製造番号1〜3,8,9は、安定化処理を一定温度保持で行なったもの、また製造番号4〜7は、安定化処理として、一定温度の保持を行なう代りに80℃から60℃までの間を冷却速度3〜10℃/hの範囲で徐冷したものである。
以上のようにして得られた各板について、室温に1ヶ月放置したのち、それぞれ2%ストレッチ後、170℃×20分の塗装焼付(ベーク)処理を施し、かつその焼付前の板について引張試験を行なって、圧延方向(RD)に対し、0°、45°、90°の3方向のランクフォード値(r値)を調べるとともに、3方向の0.2%耐力値を測定した。また同じく焼付前の板について、集合組織(結晶方位密度)を調べ、さらにカップ絞り試験による耳率と、導電率を調べるとともに、ヘム曲げ試験によるヘム曲げ加工性評価と、ポンチ張出し試験によるリジングマーク発生評価を行なった。また塗装焼付後の板についても、引張試験を行なって、3方向の0.2%耐力を調べた。さらに、焼付前の板について、3方向それぞれの方向に圧延率80%の冷間圧延を施して、3方向の耐力値上昇分を測定した。これらの結果を表3および表4に示す。
各測定、試験の具体的手法を次に示す。
引張試験(r値、耐力):
板の圧延方向に対し板面内0°、45°、90°の3方向にJIS5号引張試験片を採取し、それぞれについて引張試験に供した。そして各方向の0.2%耐力値を調べるとともに、ランクフォード値(r値)として、各方向とも伸びが7.5%となるときのr値を求めた。
集合組織(結晶方位密度)の測定:
厚さ1mmの板について、10%NaOH水溶液で表面から板厚中央に向けて100μmずつエッチングしたものを測定サンプルとした。そして表面から板厚方向にそれぞれ100μm、200μm、300μmの各位置でそれぞれ測定したキューブ方位密度の平均値を求めた。測定装置としては、リガク(株)のX線回折装置を用い、X線回折のシェルツ反射法により、{200}、{220}、{111}の不完全極点図を測定し、これらを元に三次元結晶方位解析(ODF)を行なって調べた。またこれらの解析においては、アルミニウム粉末から作られたランダム結晶方位を有する試料を測定して得たデータを{200}、{220}、{111}極点図の解析の際に使う規格化ファイルとし、これによりランダム方位を有する試料に対する倍数としてキューブ方位密度を求めた。なおこの発明において、結晶方位密度は全て三次元結晶方位解析(ODF)に基づくものである。なおまた、キューブ方位密度は、理想方位である{100}<001>方位の方位密度を求めた。またキューブ理想方位の周辺方位密度として、RD10方位密度およびND10方位密度を測定した。ここでRD10方位密度、ND10方位密度は、それぞれキューブ理想方位からRD軸で10°、ND軸で10°回転した方位を示す。
耳率:
板に潤滑油を塗布した後、ポンチ径φ32mm、ブランク径φ62mm、しわ押さえ200kgの条件でカップに絞り、そのカップの耳率を調べた。なおここで耳率の方向は、圧延方向を基準にした0°方向、90°方向で示す
導電率(%IACS):
渦電流式導電率測定装置を用いて銅、黄銅を基準試料として測定を行なった。
加工硬化性(80%冷間加工後の耐力上昇分):
板の圧延方向に対し0°方向、45°方向、90°方向の各方向に沿って試験片を採取して、それぞれの方向に80%の冷間圧延を加えた後、その試験片冷間圧延方向に引張試験片を切出して、それぞれ0.2%耐力値の上昇分を調べ、これにより各方向の加工硬化性を評価した。ちなみに耐力値上昇分=(80%冷間加工後の耐力値)−(冷間加工前の耐力値)である。
ヘム加工性の評価:
材料の圧延方向に対して板面内0°、45°、90°三方向に曲げ試験片を採取し、10%ストレッチしてから、180°に密着曲げを行ない、目視により割れの発生の有無を観察した。ここで○印は割れ無しを、また×印は割れ有りを示す。
リジング・マークの発生評価:
直径100mmの球頭ポンチで高さ30mmまで張出成形を行ない、表面に形成される圧延方向に沿う筋(凹凸)を目視で判定した。○印は筋なしあるいは筋が弱い状態を示し、×印は筋が強い状態を示す。ここで筋が強ければ、自動車用外板の外観として不適当となる。
Figure 0004164437
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製造番号1〜5は、いずれも合金の成分組成がこの発明で規定する範囲内で製造プロセス条件もこの発明で規定する範囲内であって、最終板の結晶方位密度条件等もすべてこの発明で規定する条件を満たしたものであるが、これらの場合は、ヘム加工性が優れ、また焼付硬化性が高く、塗装焼付時に充分な焼付硬化性を示した。
これに対し製造番号6〜9は、合金の成分組成はこの発明で規定する範囲内であるが、製造プロセス条件のいずれかがこの発明の範囲外であって、結晶方位密度条件等のいずれかがこの発明で規定する条件を満たさなかったものである。これらのうち、製造番号6の場合はヘム曲げ性が劣り、製造番号7の場合はヘム曲げ性とリジング性が劣り、また製造番号8の場合は45°方向のヘム加工性が劣り、さらに製造番号9の場合は導電率が高く、塗装焼付け硬化性が劣った。
なお以上の実施例は、この発明の効果を説明するためのものであり、実施例記載のプロセスおよび条件がこの発明の技術的範囲を制限するものではない。

Claims (2)

  1. Mg0.3〜1.5%(mass%、以下同じ)、Si0.3〜2.0%を含有し、かつMn0.03〜0.4%、Cr0.01〜0.4%、Fe0.03〜0.5%、Ti0.005〜0.2%、Zn0.03〜2.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、さらにCuが1%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金を素材とし、DC鋳造法によりスラブに鋳造するにあたり、凝固後の冷却過程においてスラブ表面の600℃から400℃までの温度降下速度が30℃/min以上でかつスラブ厚中央部の600℃から400℃までの温度降下速度が5℃/min以上となるように鋳造し、その後300〜450℃の範囲内の温度に加熱して熱間圧延を開始し、かつその熱間圧延過程において熱間圧延開始板厚から100mmの中間板厚までの間における材料温度の降下量が150℃以内となるように制御するとともに、熱間圧延終了温度を200〜330℃の範囲内に制御し、熱間圧延終了後圧延率30%で冷間圧延を施した後、480℃以上の温度で溶体化処理を行ない、直ちに100℃/min以上の平均冷却速度で50℃以上150℃未満の温度域まで冷却し、続いてその温度域内で1時間以上の安定化処理を行ない、これによりキューブ方位密度がランダム結晶方位を有する試料の30〜250倍の範囲内にあり、かつ圧延方向軸RDを基準としてキューブ理想方位を10°回転させた結晶方位の方位密度が、板面法線軸NDを基準としてキューブ理想方位を10°回転させた方位の方位密度より高く、さらに0°、90°耳率が5%以上で、しかも圧延方向と平行な方向のランクフォード値rが0.50〜1.50の範囲内、板面内において圧延方向に対し45°をなす方向のランクフォード値r45が0.01〜0.45の範囲内、板面内において圧延方向に対し直交する方向のランクフォード値r90が0.60〜3.50の範囲内にあり、さらに導電率が54%IACS以下であるアルミニウム合金板を得ることを特徴とする、成形加工用アルミニウム合金板の製造方法。
  2. 請求項1に記載の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法において、
    圧延方向に対し板面内で0°、45°、90°の3方向にそれぞれ圧延率80%の冷間圧延を加えたときに、45°方向の0.2%耐力値の上昇分が0°方向の0.2%耐力値の上昇分および90°方向の0.2%耐力値上昇分よりも大きく、かつその45°方向0.2%耐力値上昇分と、0°方向耐力値上昇分および90°方向0.2%耐力値上昇分との差がそれぞれ5〜70MPaの範囲内にあるアルミニウム合金板を得ることを特徴とする、成形加工用アルミニウム合金板の製造方法。
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