JP5330590B1 - バスバー用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents

バスバー用アルミニウム合金板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】導電性を保持しつつ、耐クリープ性および曲げ加工性にも優れるバスバー用アルミニウム合金板およびその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】Si:0.3〜1.5質量%、Mg:0.3〜1.0質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成され、導電率が45.0%IACS以上であり、結晶方位分布関数解析による板表面のCube方位分布密度がランダム方位に対して45以上、板表面における圧延方向の平均結晶粒径が150μm以下であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、電気自動車を始めとする電気を動力源とした各種電動輸送機器等に搭載されている電気機器(電池群、インバータ、モータ等)間または電気機器内部の部品間を、電気的に接続する接続部品に用いるバスバー用アルミニウム合金板およびその製造方法に関するものである。
電気自動車を始めとする電気を動力源とした各種電動輸送機器(ハイブリッド自動車、燃料電池自動車、電気機関車等)には、電池群、インバータ、モータ等の各種の電気機器が搭載されている。そして、これらの電気機器間または電気機器内部の部品間を電気的に接続するにあたり、バスバー(bus−bar)と呼ばれる接続部品が使用されている。
この接続部品は、電気を通さなければならないため、当然、導電性に優れる必要がある。
また、当該接続部品をボルト等の連結具により連結する場合、通電時の発熱により接続部品1の連結部1a(図1参照)の変形(クリープ変形)が生じることにより、連結具の締め付けトルクが低下して、連結具が緩んだり外れたりすることがないように、接続部品は高い耐クリープ性を備える必要がある。
さらに、電気機器の省スペース化(小型化)の要望を満たすため、接続部品は、曲げ半径(R)が小さな湾曲部分を有する形状に設計される場合が多い。したがって、接続部品は、曲げ加工性にも優れる必要がある。
これまで、上記のような条件を満たす接続部品について、銅を主体とした素材について検討されてきた。
しかしながら、近年、自動車の燃費を低減するために、自動車の軽量化、ひいては、自動車に搭載される電気機器の軽量化が求められている。
上記の事情を勘案し、銅よりも軽量であるアルミニウム合金からなる接続部品が提案されている。
例えば、特許文献1には、成分組成を特定するとともに、導電率および調質の条件を特定した接続部品用のアルミニウム合金が開示されている。そして、特許文献1には、当該アルミニウム合金は、導電性に優れるとともに、耐クリープ性にも優れると記載されている。
また、特許文献2には、成分組成が特定された鋳塊に、所定条件の均質化熱処理、熱間圧延、冷間圧延、最終焼鈍を施すアルミニウム合金板の製造方法が開示されている。そして、特許文献2には、当該製造方法で製造されたアルミニウム合金板は、プリント基板に要求される曲げ加工性を有すると記載されている。
さらに、特許文献3、4には、接続部品用ではなく自動車パネル用のアルミニウム合金板に関する技術ではあるが、Al−Mg−Si系合金(JIS6000系のAl合金)の曲げ加工性を向上させるために、集合組織を制御してCube方位分布密度を所定値とする技術(特許文献3)や、全ての結晶粒間の粒界長さの合計に対し、方位差が20°以下となる結晶粒間の粒界長さを特定する技術(特許文献4)が開示されている。
特許第3557116号公報 特開2009−242813号公報 特開2005−298922号公報 特許第3749687号公報
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、耐クリープ性の向上に着目した技術ではあるものの、曲げ加工性について全く考慮していない技術であることから(特許文献1の段落0010等参照)、当然、接続部品に要求される曲げ加工性を満足できなかった。したがって、特許文献1に開示された技術を接続部品に適用した場合、成形加工時に表面に曲げ割れが発生してしまう可能性がある。
また、特許文献2に開示された技術は、曲げ加工性の向上に着目した技術ではあるものの、耐クリープ性について全く考慮していない技術であることから(特許文献2の段落0001等参照)、当然、接続部品に要求される耐クリープ性を満足できなかった。したがって、特許文献2に開示された技術を接続部品に適用した場合、通電時の発熱により接続部品1の連結部1a(図1参照)が変形することで、当該接続部品を連結するボルト等の連結具が緩んだり外れたりしてしまう可能性がある。
なお、特許文献3、4に開示された技術は、特許文献2と同様、曲げ加工性については考慮しているが、耐クリープ性について全く考慮していない技術であるとともに、接続部品用ではなく自動車パネル用の技術である。したがって、特許文献3、4に開示された技術は、接続部品に要求される耐クリープ性を満足できるものではない。さらに、板厚1mm程度の自動車パネルに要求される曲げ加工性を有するとしても、接続部品は通常、板厚2mm程度であるため、接続部品に要求されるような高い曲げ加工性を有するとは考え難い。
前記特許文献1〜4の記載からわかるように、アルミニウム合金板について、接続部品として必須の特性である導電性を保持しつつ、接続部品に要求される耐クリープ性と曲げ加工性とを両立させた技術は存在しないと思われる。
なお、この実情は、技術常識(金属から構成される板材の耐クリープ性を向上させるには強度を向上させる必要があるが、強度を向上させると板材の曲げ加工性が低下してしまう、つまり、耐クリープ性と曲げ加工性とはトレードオフの関係にある)に合致するものであり、当然のことであると考えられてきた。
そこで、本発明は、導電性を保持しつつ、耐クリープ性および曲げ加工性にも優れるバスバー用アルミニウム合金板およびその製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明の発明者らは、バスバー用アルミニウム合金板の板表面におけるCube方位分布密度や、成分組成等が、耐クリープ性と曲げ加工性とに大きな影響を与えることを見出し、本発明を創出した。
すなわち、本発明に係るバスバー用アルミニウム合金板は、Si:0.3〜1.5質量%、Mg:0.3〜1.0質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成され、導電率が45.0%IACS以上であり、結晶方位分布関数解析による板表面のCube方位分布密度がランダム方位に対して45以上、板表面における圧延方向の平均結晶粒径が150μm以下であることを特徴とする。
このバスバー用アルミニウム合金板によれば、板表面のCube方位分布密度を所定以上に特定していることから、耐クリープ性を向上させるとともに、曲げ加工性を向上させることができる。つまり、このバスバー用アルミニウム合金板によれば、バスバーに要求される耐クリープ性と曲げ加工性とを両立させることができる。さらに、結晶粒径を微細化することで、曲げ表面品質を向上させることができる。
また、このバスバー用アルミニウム合金板によれば、SiおよびMgの含有量を所定範囲に特定していることから、耐クリープ性の向上という効果を確実なものとすることができる。
さらに、このバスバー用アルミニウム合金板によれば、導電率を45.0%IACS以上に特定していることから、バスバーに要求される導電率を確保することができる。
また、本発明に係るバスバー用アルミニウム合金板は、前記不可避的不純物のうち、Fe:0.5質量%未満、Zn:0.5質量%未満であることが好ましい。
このバスバー用アルミニウム合金板によれば、不可避的不純物のうち、Fe、Znの含有量を所定値未満に特定していることから、曲げ加工性の向上という効果を確実なものとすることができる。
また、本発明に係るバスバー用アルミニウム合金板は、前記アルミニウム合金が、Cu:1.0質量%未満、Mn:1.0質量%未満、Cr:0.5質量%未満、Zr:0.3質量%未満、Ti:0.1質量%未満、から選択される1種以上をさらに含有することが好ましい。
このバスバー用アルミニウム合金板によれば、所定値未満のCu、Mn、Cr、Zr、Tiから選択される1種以上をさらに含有することから、曲げ加工性の向上という効果を確保しつつ、耐クリープ性の向上という効果をさらに確実なものとすることができる。
本発明に係るバスバー用アルミニウム合金板の製造方法は、前記アルミニウム合金からなる鋳塊に、500〜570℃、1〜24時間の均質化熱処理を施す均質加熱処理工程と、前記均質化熱処理を施した鋳塊に圧延開始温度を350〜450℃とした複数のパスからなる圧延を施して熱間圧延板を製造する熱間圧延工程と、前記熱間圧延板に冷間圧延を施さずに、500〜570℃、100秒以下保持する溶体化熱処理を施す溶体化熱処理工程と、前記溶体化熱処理を施した熱間圧延板に人工時効処理を施す人工時効処理工程と、を含むことを特徴とする。
このバスバー用アルミニウム合金板の製造方法によれば、使用するアルミニウム合金の成分組成を特定し、均質化熱処理、熱間圧延および溶体化熱処理の条件を特定するとともに、冷間圧延を施さないことにより、当該製造方法により製造されるバスバー用アルミニウム合金板の導電率、板表面のCube方位分布密度および耐力を所定値以上、結晶粒径を所定値以下とすることができる。
本発明に係るバスバー用アルミニウム合金板によれば、導電率、板表面のCube方位分布密度を所定値以上と特定するとともに、SiおよびMgの含有量を所定範囲に特定していることから、導電性を保持しつつ、耐クリープ性および曲げ加工性にも優れるので、バスバーとして好適に使用することができる。
また、本発明に係るバスバー用アルミニウム合金板の製造方法によれば、使用するアルミニウム合金の組成を特定し、均質化熱処理および溶体化熱処理の条件を特定するとともに、冷間圧延を施さないことにより、導電性を保持しつつ、耐クリープ性および曲げ加工性にも優れるバスバー用アルミニウム合金板を製造することができる。
本発明の実施形態に係る接続部品(バスバー)の斜視図である。 本発明に係るバスバー用アルミニウム合金板の製造方法のフローチャートである。 本発明の実施例における曲げ試験の方法を説明する模式図である。
以下、本発明に係るバスバー用アルミニウム合金板およびその製造方法を実施するための形態について、詳細に説明する(適宜、「バスバー用アルミニウム合金板」を「接続部品用アルミニウム合金板」として説明する)
[接続部品用アルミニウム合金板]
本発明に係る接続部品用アルミニウム合金板(以下、適宜、アルミニウム合金板という)は、所定量のSiおよびMgを含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成され、導電率、および板表面のCube方位分布密度が所定値以上、結晶粒径が所定値以下であることを特徴とする。
また、本発明に係る接続部品用アルミニウム合金板は、不可避的不純物のうちFe、Znが所定値未満であることが好ましく、所定値未満のCu、Mn、Cr、Zr、Tiから選択される1種以上を含有することがさらに好ましい。
以下、本発明に係る接続部品用アルミニウム合金板の各合金成分、導電率、板表面のCube方位分布密度、および結晶粒径について数値限定した理由を説明する。
(Si:0.3〜1.5質量%)
Siは、Mgとともに溶体化熱処理後の人工時効処理時に時効析出物を形成する。Siが高温環境下での転位の移動を阻害することで、耐クリープ性を向上させるため、Siは、本発明に係る接続部品用アルミニウム合金板に必須の元素である。
Siの含有量が0.3質量%未満では、所望の耐クリープ性を得られない。一方、Siの含有量が1.5質量%を超えると粗大な晶出物、析出物が形成されて、特に曲げ加工性を劣化させる。
したがって、Siの含有量は0.3〜1.5質量%である。
なお、曲げ加工性と耐クリープ性の向上という効果をより確実なものとするため、Siの含有量は0.4〜1.5質量%であることが好ましく、0.5〜1.3質量%であることがさらに好ましい。
(Mg:0.3〜1.0質量%)
Mgは、Siとともに溶体化熱処理後の人工時効処理時に時効析出物を形成する。Mgが高温環境下での転位の移動を阻害することで、耐クリープ性を向上させるため、Mgは、本発明に係る接続部品用アルミニウム合金板に必須の元素である。
Mgの含有量が0.3質量%未満では、所望の耐クリープ性を得られない。一方、Mgの含有量が1.0質量%を超えると粗大な晶出物、析出物が形成されて、特に曲げ加工性を劣化させる。
したがって、Mgの含有量は0.3〜1.0質量%である。
なお、曲げ加工性と耐クリープ性の向上という効果をより確実なものとするため、Mgの含有量は0.5〜0.8質量%であることが好ましい。
(不可避的不純物)
不可避的不純物として、Fe、Zn等が本発明の効果を妨げない範囲で含有されていてもよい。詳細には、FeとZnは、それぞれ、0.50質量%未満であること(0.50質量%未満に制限されていること)が好ましい。Feの含有量またはZnの含有量が0.50質量%以上となると曲げ加工性または耐蝕性が低下してしまうからである。
なお、Fe、Znは、スクラップや再生地金(例えば、ブレージングシート等のクラッド材用のアルミニウム合金材の屑等)にある程度含有していることから、製造(溶解)時にスクラップや再生地金を、アルミニウム合金板におけるFe、Znの含有量が前記範囲未満となる程度で配合することができ、原料コストを低減することができる。
また、不可避的不純物として、本発明の効果を妨げない程度に、Fe、Zn以外の元素が含まれていてもよい。
(Cu:1.00質量%未満)
Cuは、溶体化熱処理後の人工時効処理における時効析出物形成を促進する。Cuが高温環境下での転位の移動を阻害することで、耐クリープ性を向上させる。
当該効果を得るためには、Cuを0.05質量%以上含有させるのが好ましい。
一方、Cuの含有量が1.00質量%以上であると耐応力腐食割れ性や溶接性、曲げ加工性を著しく劣化させる。
したがって、Cuをアルミニウム合金板に含有させる場合、Cuの含有量は、1.00質量%未満である。
(Mn:1.00質量%未満)
Mnは、均質化熱処理時に分散粒子(分散相)を生成し、これらの分散粒子は再結晶後の粒界移動を妨げる。よって、Mnは、結晶粒を微細化させる効果がある元素である。なお、本発明に係る接続部品用アルミニウム合金板の曲げ加工性は、アルミニウム合金組織の結晶粒が微細なほど向上する。
当該効果を得るためには、Mnを0.01質量%以上含有させるのが好ましい。
一方、Mnの含有量が1.00質量%以上であると溶解、鋳造時に粗大なAl−Fe−Si−Mn系の晶出物を生成しやすく、かえって曲げ加工性を低下させる原因となる。
したがって、Mnをアルミニウム合金板に含有させる場合、Mnの含有量は、1.00質量%未満である。
(Cr:0.50質量%未満)
Crは、Mnと同様に均質化熱処理時に分散粒子(分散相)を生成し、これらの分散粒子は再結晶後の粒界移動を妨げる。よって、Crは、結晶粒を微細化させる効果がある元素である。
当該効果を得るためには、Crを0.01質量%以上含有させるのが好ましい。
一方、Crの含有量が0.50質量%以上であると溶解、鋳造時に粗大な金属間化合物を生成しやすく、かえって曲げ加工性を劣化させる。
したがって、Crをアルミニウム合金板に含有させる場合、Crの含有量は、0.50質量%未満である。
(Zr:0.30質量%未満)
Zrは、Mnと同様に均質化熱処理時に分散粒子(分散相)を生成し、これらの分散粒子は再結晶後の粒界移動を妨げる。よって、Zrは、結晶粒を微細化させる効果がある元素である。
当該効果を得るためには、Zrを0.01質量%以上含有させるのが好ましい。
一方、Zrの含有量が0.30質量%以上であると溶解、鋳造時に粗大な金属間化合物を生成しやすく、かえって曲げ加工性を劣化させる。
したがって、Zrをアルミニウム合金板に含有させる場合、Zrの含有量は、0.30質量%未満である。
(Ti:0.10質量%未満)
Tiは、微量含有させることで、鋳塊の結晶粒を微細化し、曲げ加工性を向上させる効果がある元素である。
当該効果を得るためには、Tiを0.01質量%以上含有させるのが好ましい。
一方、Tiの含有量が0.10質量%以上であると粗大な化合物を形成して曲げ加工性を劣化させる。
したがって、Tiをアルミニウム合金板に含有させる場合、Tiの含有量は、0.10質量%未満である。
(導電率:45.0%IACS以上)
本発明に係る接続部品用アルミニウム合金板の導電率は、45.0%IACS以上とする。
導電率が45.0%IACS以上であると、接続機器としての導電性能を確保することができる。一方、電気抵抗が高い、すなわち導電率が45.0%IACS未満であると、所望の電流を流すために接続部品の断面積を増加させる必要が生じ、部品重量の増加に繋がってしまう。
なお、導電率については、高ければ高いほどよく、好ましくは47.0%IACS以上、さらに好ましくは50.0%IACS以上である。
なお、導電率の調整は、アルミニウム合金板におけるSiの含有量、Mgの含有量、アルミニウム合金板の製造工程における均質化熱処理条件、溶体化熱処理条件、人工時効処理条件を制御することによって達成される。
なお、導電率を高くしすぎると、すなわち過度な固溶量減少および析出物粗大化が生じることにより耐クリープ性が低下する傾向にあるため、導電率は60%IACS以下であるのが好ましい。
(Cube方位分布密度:20以上)
本発明に係る接続部品用アルミニウム合金板の板表面におけるCube方位分布密度は20以上とする。
板表面におけるCube方位分布密度が20以上であることにより、接続部品に要求される耐クリープ性と曲げ加工性とを両立させることができる。一方、板表面におけるCube方位分布密度が20未満であると、曲げ加工性が低下してしまう。
なお、耐クリープ性および曲げ加工性の向上という効果をより確実なものとするため、Cube方位分布密度は、好ましくは30以上、さらに好ましくは50以上である。
なお、一般的な製造方法によれば、Cube方位分布密度は20未満となるが、これは板表面の結晶方位が比較的ランダムであることを示す。
一方、本発明が規定するように、Cube方位分布密度を20以上とすると、つまり、Cube方位が一定量以上集積すると、隣り合う結晶粒との方位差の小さい小角粒界の割合が大きくなり、変形時の粒界段差を小さく、あるいは生じなくさせる。
また、Cube方位においては、他の方位と比較して均一なすべり変形が可能になることからせん断帯の形成が抑制される。
この結果、曲げ加工の際に割れの起点あるいは伝播経路となる粒界段差や結晶粒内でのせん断帯形成が抑制されるため、Cube方位分布密度を20以上とすることにより、曲げ加工性を改善(向上)できる。
なお、過度にCube方位分布密度を高めようとすると、製造条件が厳しくなり生産性の低下を招くため、Cube方位分布密度は100以下であるのが好ましい。
また、Cube方位分布密度を20以上とすることで、同一レベルの耐力で比較した場合にも、接続部品に要求される耐クリープ性を良好にすることができる。この理由については必ずしも明確とはなっていないが、Cube方位はテイラー因子が小さく、転位の運動量が少ないことが知られており(崔祺ほか:軽金属,49(1999), P.583)、高温保持中の回復が抑制されることによるものと推定される。
本発明では、Cube方位分布密度を規定するに際し、結晶集合組織の測定精度がより正確な、結晶方位分布関数解析(以下、適宜、ODF解析という)によるCube方位分布密度で規定する。
ODF解析によるCube方位分布密度は、Cube方位をランダム方位(標準サンプルの無配向性のAl粉末試料)からの比(無次元)で表すため、広い範囲を定量的に表現できる。これに対し、積分強度による測定では、面内(100面)の回転方位を分離できないため、純粋なCube方位だけを抽出できない。
このアルミニウム合金板の板表面におけるODF解析によるCube方位分布密度の測定は、例えば、株式会社リガク製のX線回折装置[型式「リガクRAD−rX」(Ru−200B)]を用い、板表面を計測することで行なう。上記X線回折装置は不完全極点図によるODF解析が可能である。即ち、schluzの反射法により、{100}面、{111}面の不完全極点図を作成し、Bungeの反復級数展開法(positivity法)を適用してODF解析を実施し、Cube方位分布密度を求めることができる。
なお、アルミニウム合金板に曲げ加工を施す際における曲げ方向とCube方位(配向方向)との関係について、板のCube方位が板の曲げ方向と平行になるように(板の曲げ加工方向を素材板の圧延方向と平行あるいは直角にして)曲げ加工した場合には、変形中のCube方位が安定となり、良好な曲げ加工性が得られる。板のCube方位は90度回転しても同一の構造であるため、0度、90度の区別が無い。このため、板の曲げ加工方向を素材板の圧延方向と平行あるいは直角としても、Cube方位は同じ構造となり、良好な曲げ加工性が得られる。
ただし、板の圧延方向が板の曲げ方向と45度の方向になるなど、上記二つの方向以外の板の曲げ方向と板のCube方位(配行方向)との関係では、Cube方位は変形中に回転し、結晶方位がランダム化して、曲げ加工性が劣る可能性があるため、曲げ加工を施す際における板の曲げ方向は、上記二つの方向とすることが好ましい。
なお、板表面におけるCube方位分布密度の調整は、アルミニウム合金板におけるSiの含有量、Mgの含有量、アルミニウム合金板の製造工程における熱間圧延条件、および冷間圧延の不実施によって達成される。
(圧延方向の平均結晶粒径:150μm以下)
本発明に係る接続部品用アルミニウム合金板は、板表面における圧延方向の平均結晶粒径が、150μm以下とする。
圧延方向の平均結晶粒径が150μm以下であると、曲げ加工時における表面の品質を向上させることができる。一方、圧延方向の平均結晶粒径が150μmを超えると曲げ加工時における表面に肌荒れや亀裂が発生する可能性が高くなる。
なお、圧延方向の平均結晶粒径については、曲げ加工時の表面品質の向上という効果をより確実なものとするため、好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。また、圧延方向の平均結晶粒径については、過度に小さくしようとすると、製造条件が厳しくなり生産性の低下を招くため、10μm以上が好ましい。
圧延方向の平均粒径は、アルミニウム合金板から測定片を切り出して、板表面を研磨し、電解液にてエッチングした後、光学顕微鏡にて100倍程度で観察することにより測定することができる。
なお、圧延方向の平均結晶粒径は、アルミニウム合金板の製造工程における熱間圧延開始温度、圧延終了温度を制御することによって達成される。
(耐力:180MPa以上)
本発明に係る接続部品用アルミニウム合金板の耐力(0.2%耐力)は、180MPa以上であることが好ましい。
耐力が180MPa以上であると、接続部品に要求される耐クリープ性を確保することができる。一方、耐力が180MPa未満であると、耐クリープ性が低下してしまう。
なお、耐クリープ性の確保という効果をより確実なものとするため、耐力は、好ましくは190MPa以上、さらに好ましくは195MPa以上である。
なお、耐力の調整は、アルミニウム合金板におけるSiの含有量、Mgの含有量、アルミニウム合金板の製造工程における均質化熱処理条件、溶体化処理条件および人工時効処理条件によって達成される。
(接続部品)
接続部品とは、複数の部材を電気的に接続する部品である。具体的には、電気を動力源とした各種電動輸送機器等に搭載されている、電池群、インバータ、モータ等の各種の電気機器間または電気機器内部の部品間を電気的に接続するバスバーである。
そして、バスバーは、形状について特に限定されないが、所定の厚さを有するとともに、板状や角材状を呈する部品である。例えば、バスバーは、図1に示すような形状を呈する部品である。
ここで、アルミニウムは銅よりも導電率が低いことから、導電性能を確保するために、アルミニウム合金製のバスバーは、銅製のバスバーと比較して断面積を大きくしなければならない。部品の設置面積を考慮した場合には部品の幅寸法の増加は困難な場合が多く、板厚が増加することとなる。一般的に板厚が増加した場合には、曲げ表面での変形量が大きくなることから、アルミニウム合金から構成されるバスバーには、曲げ加工時における曲げ割れの発生という問題が生じる、つまり、曲げ加工性を向上させなければならないという課題が明確に現れることとなる。
言い換えると、本発明に係る接続部品用アルミニウム合金板は、接続部品の中でも、厚さが1.5mm以上、特に、1.8〜5.0mmのバスバーに適用するのが好ましく、顕著な効果(耐クリープ性および曲げ加工性の両立という効果)を発揮することとなる。
次に、本発明に係る接続部品用アルミニウム合金板の製造方法について図2を参照しながら説明する。
[接続部品用アルミニウム合金板の製造方法]
本発明に係る接続部品用アルミニウム合金板の製造方法は、均質化熱処理工程S2と、熱間圧延工程S3と、溶体化熱処理工程S4と、人工時効処理工程S5と、を含むことを特徴とする。
以下、前記各工程を中心に説明する。
(鋳造工程)
鋳造工程S1では、前記の成分組成であるアルミニウム合金を溶解し、DC鍛造法等の公知の鋳造法により鋳造し、アルミニウム合金の固相線温度未満まで冷却して厚さ400〜600mm程度の鋳塊とし、必要に応じて面削を行う。
(均質化熱処理工程)
均質化熱処理工程S2では、鋳造工程S1で鋳造した鋳塊を圧延する前に、所定温度で均質化熱処理(均熱処理)を施す。鋳塊に均質化熱処理を施すことによって、内部応力が除去され、鋳造時に偏析した溶質元素が均質化され、また、鋳造冷却時やそれ以降に析出した金属間化合物が成長する。
均質化熱処理工程S2における熱処理温度(鋳塊温度)は500〜570℃である。熱処理温度が500℃未満では、鋳造時に晶出したSiあるいはMgが未固溶のまま残存し、溶体化熱処理および人工時効処理後に適度な析出物分布を得ることができず、耐力および耐クリープ性が低下する。一方、570℃を超えると、鋳塊の表面で局部的な溶融(バーニング)が生じてしまう。さらに好ましくは、560℃以下である。
均質化熱処理工程S2における熱処理時間(保持時間)は、均質化を完了させるためには1時間以上であればよく、製造効率の点から24時間以内であればよい。
(熱間圧延工程)
熱間圧延工程S3では、均質化された鋳塊を熱間圧延する。このときの圧延開始温度を350〜450℃とする。複数のパスからなる熱間圧延を施すことで、所望の板厚の熱間圧延板(ホットコイル)とする。
(均質化熱処理後の冷却の態様)
ここで、均質化熱処理後に、熱間圧延を開始する350〜450℃の温度範囲まで冷却する際の態様は、この温度範囲まで直接冷却し、この温度範囲で熱間圧延を開始しても良い(以下、2段均熱とも言う)。また、350℃以下の温度範囲まで冷却し、その後更に、熱間圧延を開始する350〜450℃の温度範囲まで再加熱して、この温度範囲で熱間圧延を開始しても良い(以下、2回均熱とも言う)。
熱間圧延開始温度が450℃を超えた場合、曲げ加工時の肌荒れの原因となる。また、熱間圧延開始温度が350℃未満では、熱間圧延自体が困難となる。
後述するように、本発明では熱間圧延後に冷間圧延工程を施さないことを特徴とするため、熱間圧延板の組織制御が非常に重要である。特に、熱間圧延中に生じた再結晶粒は粗大となりやすく、この組織が溶体化熱処理後にも維持されるため、曲げ加工時の肌荒れの原因となることを見出した。熱間圧延開始温度を450℃以下とすることで、熱間圧延中の再結晶を抑制でき、その後の溶体化熱処理後の結晶粒径を所定値以下とすることができる。加えて、均質化熱処理後、熱間圧延開始温度までの冷却中に、鋳塊内にはMgSi化合物が形成され、このMgSi化合物が溶体化熱処理時の再結晶粒の核生成サイトとして働くため、結晶粒径を微細化することができる。
均質化熱処理後、熱間圧延開始温度範囲までの冷却速度は特に規定しないが、望ましくは20〜200℃/hの範囲である。冷却速度が20℃/h以下となると、MgSi化合物が粗大となるため、所望の強度を得るためにこれを再固溶させようとすると、溶体化熱処理が長時間必要となり、生産性が低下する。
一方、冷却速度が200℃/hと速くなりすぎると、鋳塊内での温度分布が不均一となり、熱収縮による変形やソリなどの異常が生じる新たな問題が発生する可能性もある。
また、冷却速度が速すぎると、均質化熱処理後、熱間圧延開始温度範囲まで冷却する間に形成されるMgSi化合物の平均サイズが小さくなりすぎ、再結晶粒の核生成サイトとしての必要な、直径が2μm以上の比較的粗大なMgSi化合物を、適当な数だけ分布させることができなくなるおそれがある。
(均質化熱処理後の冷却手段)
鋳塊を冷却する方法としては、例えば均熱炉内または炉外での強制ファン空冷、接触冷却、ミストやスプレーによる冷却がある。
熱間圧延終了温度は特に規定しない。ただし、熱間圧延終了温度を特に300℃以下に低温化することで、熱間圧延中の蓄積歪みを増加させ、その後の溶体化熱処理における再結晶駆動力を増加させることができるため、表面におけるCube方位分布密度を高めると同時に、再結晶粒径を更に微細化することができる。
(溶体化熱処理工程)
溶体化熱処理工程S4では、熱間圧延工程S3で製造した熱間圧延板を溶体化熱処理する。ここで、溶体化熱処理工程S4における熱処理温度(鋳塊温度)は500〜570℃である。熱処理温度が500℃未満では、未固溶のSiあるいはMgが残存するため、溶体化熱処理および人工時効処理後に適度な析出物分布を得ることができず、所望の耐力および耐クリープ性を得ることができない。一方、570℃を超えると、板表面で局部的な溶融(バーニング)が生じてしまう。さらに好ましくは、520〜550℃である。
溶体化熱処理工程S4における前記熱処理温度での保持時間については、100秒以内(0秒でもよい)である。100秒を超えると、その効果が飽和するとともに生産性が低下してしまうからである。
なお、熱間圧延工程S3の後に冷間圧延を施さないとともに、溶体化熱処理工程S4における熱処理温度を上記範囲とすることにより、Cube方位が適切に発達することとなり、板表面におけるCube方位分布密度が所定値以上となる。
溶体化熱処理工程S4において、200℃から前記熱処理温度までの昇温速度は5℃/s以上であることが好ましく、前記熱処理温度から200℃までの降温速度は10℃/s以上であることが好ましい。
昇温速度を前記速度以上とすることにより、Cube方位が適切に発達するのをより確実なものとすることができる。また降温速度を前記速度以上とすることにより、所望の強度を確実に得ることができる。
(人工時効処理工程)
人工時効処理工程S5では、溶体化熱処理工程S4で溶体化熱処理を施した熱間圧延板に、所定温度・所定時間で人工時効処理を施す。
人工時効処理工程S5における熱処理温度については、特に限定されないが150〜250℃であることが好ましい。150℃未満であると所望の耐力、耐クリープ性を得ることができず、250℃を超えると析出物が粗大化して耐力、耐クリープ性が低下するからである。また、熱処理時間についても、特に限定されないが1〜30時間であることが好ましい。1時間未満であると特に量産時を想定した場合にはコイルあるいはシート内での不均一な温度分布を生じ、材料特性が不安定となりやすい。生産性を考慮して30時間を上限とする。
本発明に係る接続部品用アルミニウム合金板の製造方法は、以上説明したとおりであるが、本発明を行うにあたり、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間あるいは前後に、他の工程を含めてもよい。例えば、人工時効処理工程S5の後に、所定の大きさに裁断する裁断工程や、図1に示すような所定の形状に加工(曲げ加工、穴抜き加工等)する加工工程を含めてもよい。
また、前記各工程において、明示していない条件については、従来公知の条件を用いればよく、前記各工程での処理によって得られる効果を奏する限りにおいて、その条件を適宜変更できることは言うまでもない。
次に、本発明に係る接続部品用アルミニウム合金板およびその製造方法について、本発明の要件を満たす実施例と本発明の要件を満たさない比較例とを比較して具体的に説明する。
[供試材の作製]
表1に示す組成のアルミニウム合金(合金1〜17)を、溶解し、半連続鋳造にて鋳塊を作製し、面削処理をした。この鋳塊に、表2に示す条件で均質化熱処理を行ったのち、冷却することなく連続して、圧延率99%の熱間圧延を施して(熱間圧延終了温度は表2)、熱間圧延板とした。その後、冷間圧延を施さず(供試材24、25は冷間圧延を施し)、表2に示す条件で溶体化熱処理を行った。そして、溶体化熱処理後、200℃、2時間保持する人工時効処理を施す(供試材24は施さない)ことで、供試材(厚さ2mm)を作製した。
なお、供試材1〜4については、熱間圧延を2段均熱で行い、供試材5〜18、20、23については、熱間圧延を2回均熱で行った。
[評価]
(引張試験)
供試材から引張方向が圧延方向と平行になるようにJIS5号の試験片を切り出した。この試験片を用いて、JIS Z 2241に準拠して引張試験を実施し、引張強さ、耐力(0.2%耐力)、および伸びを測定した。
なお、クロスヘッド速度は5mm/分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。
(Cube方位分布密度)
作製した供試材の表面を、株式会社リガク製のX線回折装置[型式「リガクRAD−rX」(Ru−200B)]を用いて計測することで、Cube方位分布密度を求めた。当該X線回折装置を用いて不完全極点図によるODF解析を行った。詳細には、schluzの反射法により、{100}面、{111}面の不完全極点図を作成し、Bungeの反復級数展開法(positivity法)を適用してODF解析を実施し、Cube方位分布密度を求めた。
(導電率)
導電率の測定は、日本フェルスター株式会社製の渦流導電率測定装置[型式「シグマテストD2.068」]によって測定した。また、導電率の測定は、供試材表面の互いに間隔を100mm以上開けた任意の5箇所で行った。そして、本発明における導電率は、測定された各導電率を平均化したものとした。
(平均結晶粒径の測定)
供試材表面を研磨し、この研磨した面を電解液にてエッチングして、光学顕微鏡にて100倍で写真撮影した。この顕微鏡写真で、切片法により圧延方向の結晶粒径を測定した。結晶粒径は5箇所で測定し、平均値を表2に示す。
(曲げ加工性)
供試材から試験片長手方向が圧延方向と一致するようにJIS3号(JIS Z 2204)の試験片を切り出した。この試験片を、JIS Z 2248に準拠してVブロック法により曲げ試験を実施し(図3参照)、曲げ加工性を評価した。なお、曲げ試験は、θ(曲げ角度):90°、r(内側曲げ半径):0mm、t(供試材板厚):2mmという条件で実施した。
曲げ試験後の曲げ部(湾曲部、幅:30mm)の割れの発生状況を観察し、5枚の試験片のうち、全ての試験片において肌荒れおよび割れとも発生しなかったものを極めて良好(○)、いずれか1枚以上に許容レベルのわずかな肌荒れが生じたものを良好(△)、顕著な肌荒れが発生したもの(×)、または亀裂長さ2mm以上の割れが生じたもの(××)を不良と評価した。
(残留応力比)
残留応力比は、日本電子材料工業会標準規格EMAS−3003に記載の片持ち梁方式により測定した。
詳細には、試験片長手方向が圧延方向に対して直角となるように幅10mm、長さ250mmの短冊状の試験片(供試材板厚:2mm)を切り出した。その試験片の一端を剛体試験台に固定した。試験片に、スパン150mm、初期変形量(δ0=10mm)を付与し、その状態のまま120℃で100時間保持した後、応力を除去して試験片の変形量(ε)を測定した。残留応力比は、「残留応力比=(δ0−ε)÷δ0×100」で求めた。この残留応力比の値が75%以上のものを、高温時の持続的な応力により変形する現象(クリープ)に対して耐える性能を有する、つまり、接続部品に要求される耐クリープ性を有すると評価した。
詳細なアルミニウム合金の成分、供試材の製造条件、および材料特性(試験結果)を表1または表2に示す。なお、表1、2において、本発明の構成を満たさないものについては、数値に下線を引いて示す。
Figure 0005330590
Figure 0005330590
[結果の検討]
供試材1〜9については、本発明の規定する要件を全て満たしていることから、内曲げR=0mmと非常に厳しい曲げ加工条件とした場合にも、曲げ加工性が極めて良好(○)または良好(△)という評価となるとともに、接続部品に要求される耐クリープ性を有するという評価となった。
供試材10(合金9)は、Siの含有量が本発明で規定する数値範囲の下限値未満であるとともに、Mgの含有量が本発明で規定する数値範囲の上限値を超えていたため、耐力が所定値以上とならず、その結果、曲げ加工性および耐クリープ性に優れないという評価となった。
供試材11(合金10)は、Siの含有量が本発明で規定する数値範囲の上限値を超えるとともに、Mgの含有量が本発明で規定する数値範囲の下限値未満であったため、耐力が所定値以上とならないとともに、曲げ加工性および耐クリープ性に優れないという評価となった。
供試材12〜18(合金11〜17)は、Fe、Zn、Cu、Mn、Cr、Zr、Tiのうち、いずれか一つが本発明で規定する数値以上となっていたため、曲げ加工性が不良という評価となった。
供試材19は、均質化熱処理の熱処理温度が本発明で規定する数値範囲の上限値を超えてしまったため、バーニングが発生してしまい、以降の製造および試験を行うことができなくなった。
供試材20は、溶体化熱処理の熱処理温度が本発明で規定する数値範囲の上限値を超えてしまったため、バーニングが発生してしまい、以降の製造および試験を行うことができなくなった。
供試材21、22は、熱間圧延の開始温度が本発明で規定する数値範囲の上限値を超えてしまったため、圧延方向の平均結晶粒径が所定値を超えてしまい、その結果、曲げ加工性が不良という結果となった。一方、供試材23は、熱間圧延の開始温度が本発明で規定する数値範囲の下限値未満であったため、熱間圧延が困難となり、以降の製造および試験を行うことができなくなった。
供試材24、25は、冷間圧延を行ったため、Cube方位分布密度が所定値未満となってしまい、その結果、曲げ加工性が不良という結果となった。さらに、供試材24については、溶体化熱処理としてバッチ炉焼鈍(240℃×5時間(昇温速度:50℃/時間、降温速度:50℃/時間))を行ったために、耐クリープ性に優れないという評価となった。
なお、供試材24は、特許文献2に記載されたアルミニウム合金板を想定したものであり、供試材25は、特許文献1に記載されたアルミニウム合金板を想定したものである。
1 接続部品(バスバー)
1a 連結部

Claims (4)

  1. Si:0.3〜1.5質量%、Mg:0.3〜1.0質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成され、
    導電率が45.0%IACS以上であり、結晶方位分布関数解析による板表面のCube方位分布密度がランダム方位に対して45以上、板表面における圧延方向の平均結晶粒径が150μm以下であることを特徴とするバスバー用アルミニウム合金板。
  2. 前記不可避的不純物のうち、Fe:0.5質量%未満、Zn:0.5質量%未満であることを特徴とする請求項1に記載のバスバー用アルミニウム合金板。
  3. 前記アルミニウム合金が、Cu:1.0質量%未満、Mn:1.0質量%未満、Cr:0.5質量%未満、Zr:0.3質量%未満、Ti:0.1質量%未満、から選択される1種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバスバー用アルミニウム合金板。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の前記アルミニウム合金からなる鋳塊に500〜570℃、1〜24時間の均質化熱処理を施す均質化熱処理工程と、
    前記均質化熱処理を施した鋳塊に圧延開始温度を350〜450℃とした複数のパスからなる圧延を施して熱間圧延板を製造する熱間圧延工程と、
    前記熱間圧延板に冷間圧延を施さずに、500〜570℃、100秒以下保持する溶体化熱処理を施す溶体化熱処理工程と、
    前記溶体化熱処理を施した熱間圧延板に人工時効処理を施す人工時効処理工程と、
    を含むことを特徴とするバスバー用アルミニウム合金板の製造方法。
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