JP2017128758A - 導電部材用アルミニウム合金板及びその製造方法並びに電気接続部品 - Google Patents

導電部材用アルミニウム合金板及びその製造方法並びに電気接続部品 Download PDF

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悠 松居
一成 坂井
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一成 坂井
章仁 後藤
Akihito Goto
章仁 後藤
鈴木 義和
Yoshikazu Suzuki
義和 鈴木
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Abstract

【課題】高い強度及び導電率を有し、レーザ溶接による割れの発生を低減できる導電部材用アルミニウム合金板及びその製造方法、並びに上記アルミニウム合金板からなる導電部材を備えた電気接続部品を提供する。【解決手段】導電部材用アルミニウム合金板は、Fe:1.2%(質量%、以下同じ)超え3.0%以下、Ti:0.0050%超え0.30%以下、B:0.00010%超え0.050%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有しており、Feの固溶量が0.12%以下である。また、圧延方向に平行な断面に存在する、円相当直径0.5μm以上2.0μm未満のAl−Fe系金属間化合物の数が8.0×104個/mm2以上であり、かつ、円相当直径2.0μm以上のAl−Fe系金属間化合物の数が1.0×104個/mm2以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、導電部材用アルミニウム合金板及び該アルミニウム合金板からなる導電部材を有する電気接続部品に関する。
電気自動車、ハイブリッド自動車、鉄道車両及び航空機等の移動体や、配電盤及び蓄電システム等の定置型の産業設備には、バスバーなどの導電部材が組みこまれている。従来、この種の導電部材は、導電率と強度とのバランスから銅や銅合金から構成されていた。しかし、コスト低減や軽量化のために、銅や銅合金から構成された導電部材をアルミニウムやアルミニウム合金から構成された導電部材に置き換える試みが活発に行われている。
導電部材は、ボルト等の締結部材による機械的な締結または溶接のいずれかの方法により形成される接続部を介して、バスバーや電気機器の端子等の相手方部材に接続される。溶接は、機械的な締結に比べて、締結部材の緩みによる接続部の電気抵抗の増加が起こらない、及び、導電部材と端子等とが金属接合するため接続部の電気抵抗が低い、等の利点を有している。近年では、導電部材と端子等とを接続する方法として、レーザ溶接が多用されている。
レーザ溶接用の導電部材に用いられるアルミニウム合金材として、FeやSiの含有量が比較的少ないアルミニウム合金材が提案されている。例えば、特許文献1には、Fe(鉄)を0.50質量%以下、Si(シリコン)を0.50質量%以下、Ti(チタン)とB(ホウ素)をそれぞれ0.01質量%以上0.10質量%以下、かつTiとBを合計で0.15質量%以下含有するアルミニウム合金材が記載されている。また、特許文献2には、Fe:0.20〜1.20質量%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金材が記載されている。
特開2011−171080号公報 特開2005−273005号公報
しかし、特許文献1のような添加元素の含有量が少ないアルミニウム合金材は、材料強度を高くすることが難しい。そのため、導電部材を電気機器等に組み付ける際のハンドリングや、電気機器等の使用中に加わる振動等により導電部材が変形するおそれがある。
アルミニウム合金材の材料強度を高くするためには、例えば特許文献2のように、Fe等の添加元素の含有量をより多くする方法が考えられる。しかし、添加元素の含有量を多くすると、アルミニウム合金材中の添加元素の固溶量も多くなりやすい。そのため、アルミニウム合金材の導電率の低下を招くおそれがある。
また、特許文献1や特許文献2のアルミニウム合金材は、液相線と固相線との温度差が大きいため、溶接割れ感受性が高い。それ故、レーザ溶接により割れが発生しやすいという問題がある。特に、上記アルミニウム合金材に接続される相手方部材が5000系または6000系のアルミニウム合金から構成されている場合には、レーザ溶接による割れの発生を防ぐことが難しい。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、高い強度及び導電率を有し、レーザ溶接による割れの発生を低減できる導電部材用アルミニウム合金板及びその製造方法、並びに上記アルミニウム合金板からなる導電部材を備えた電気接続部品を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、Fe(鉄):1.2%(質量%、以下同じ)超え3.0%以下、Ti(チタン):0.0050%超え0.30%以下、B(ホウ素):0.00010%超え0.050%以下を含有し、残部がAl(アルミニウム)及び不可避的不純物からなる化学成分を有しており、
Feの固溶量が0.12%以下であり、
圧延方向に平行な断面に存在する、円相当直径0.5μm以上2.0μm未満のAl−Fe系金属間化合物の数が8.0×104個/mm2以上であり、かつ、円相当直径2.0μm以上のAl−Fe系金属間化合物の数が1.0×104個/mm2以下である、導電部材用アルミニウム合金板にある。
本発明の他の態様は、薄板連続鋳造により、Fe:1.2%(質量%、以下同じ)超え3.0%以下、Ti:0.0050%超え0.30%以下、B:0.00010%超え0.050%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有する板材を作製し、
該板材を400〜550℃で1〜10時間加熱して均質化処理を行い、
その後、上記板材に冷間圧延を行う、導電部材用アルミニウム合金板の製造方法にある。
本発明の更に他の態様は、薄板連続鋳造により、Fe:1.2%(質量%、以下同じ)超え3.0%以下、Ti:0.0050%超え0.30%以下、B:0.00010%超え0.050%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有する板材を作製し、
該板材を圧延率20〜80%で冷間圧延し、
上記板材を450〜550℃で1〜10時間加熱して焼鈍する、導電部材用アルミニウム合金板の製造方法にある。
本発明の更に他の態様は、上記の態様の導電部材用アルミニウム合金板からなる導電部材と、
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる相手方部材とを有しており、
上記導電部材と上記相手方部材とが、レーザ溶接部を介して接続されている、電気接続部品にある。
上記導電部材用アルミニウム合金板(以下、「アルミニウム板」という。)は、上記特定の範囲の化学成分を有しており、かつ、圧延方向に平行な断面に存在するAl−Fe系金属間化合物の数が上記特定の範囲に制御されている。それ故、上記アルミニウム板は、導電部材用として好適な強度及び導電率を有している。また、上記アルミニウム板は、圧延方向に平行な断面に存在するAl−Fe系金属間化合物の数が上記特定の範囲に制御されているため、レーザ溶接による割れの発生を低減することができる。
上記アルミニウム板は、例えば、上記のいずれかの態様の製造方法により製造することができる。これらの製造方法においては、薄板連続鋳造により溶湯から上記板材を作製している。そのため、スラブ等の鋳塊に熱間圧延を行って板材を作製する従来の製造方法において必要であった、スラブの面削、予備加熱及び熱間圧延等の工程を省略することができる。また、薄板連続鋳造を行うことにより、鋳造時の上記板材の板厚を、上記アルミニウム板の板厚に容易に近づけることができる。それ故、上記製造方法は、従来の製造方法に比べて上記冷間圧延のパス数を削減することができる。
このように、上記板材の鋳造に薄板連続鋳造を適用することにより、従来の製造方法に比べて製造工程を短縮することができる。
また、薄板連続鋳造により作製された上記板材中には、Feが過飽和に固溶している。このような上記板材に、上記冷間圧延と、上記均質化処理や上記焼鈍等の熱処理とを行うことにより、上記板材中のFeを上記Al−Fe系金属間化合物として微細に析出させることができる。その結果、上記アルミニウム板を容易に作製することができる。
実施例における、導電部材の説明図である。
[アルミニウム板]
上記アルミニウム板における化学成分、Feの固溶量及びAl−Fe系金属間化合物の限定理由を以下に説明する。
<化学成分>
・Fe(鉄):1.2%超え3.0%以下
Feの大部分は、上記アルミニウム板中にAl−Fe系金属間化合物として存在している。Al−Fe系金属間化合物は、上記アルミニウム板の強度を高くする作用を有する。また、Feは、レーザ溶接部の強度を高くし、レーザ溶接後の割れの発生を低減する作用を有する。
Feの含有量を上記特定の範囲とすることにより、上記アルミニウム板に上記特定の範囲のAl−Fe系金属間化合物を形成することができる。また、この場合には、板材の鋳造時に、レーザ溶接に有利なAl3Feを微細に晶出させることができる。その結果、レーザ溶接による割れの発生を低減することができる。Feの含有量が1.2%以下の場合には、Al3Fe等のAl−Fe系金属間化合物の数が少ないため、レーザ溶接による割れの発生を低減することが難しい。一方、Feの含有量が3.0%を超える場合には、板材の鋳造時に粗大な金属間化合物が形成されやすくなる。粗大な金属間化合物は、レーザ溶接における溶け込み深さやビード幅の急激な増大や、プレス加工における加工性の低下などを招くため好ましくない。
Feの含有量は、1.5〜2.1%であることが好ましい。Al−Fe二元系合金の場合、共晶組成におけるFeの含有量は1.8%である。そのため、Feの含有量を1.8%に近づけることにより、液相線と固相線との温度差を小さくすることができる。その結果、レーザ溶接における割れ感受性をより低くすることができる。それ故、Feの含有量を1.5〜2.1%とすることにより、割れの発生をより低減するとともに、レーザ溶接時の溶け込み量やビード幅の急激な増大をより効果的に抑制することができる。
・Ti(チタン):0.0050%超え0.30%以下
Tiは、鋳造組織の結晶粒を微細化する作用を有している。Tiの含有量を上記特定の範囲とすることにより、板材の結晶粒や鋳造時に最後に凝固する共晶相を微細化することができる。その結果、板材の鋳造割れを抑制することができる。
Tiの含有量が0.0050%以下の場合には、上述の作用が不十分となるため、板材の鋳造割れを抑制することが難しい。一方、Tiの含有量が0.30%を超える場合には、上記アルミニウム板中に粗大なAl−Ti系金属間化合物が形成されるおそれがある。粗大なAl−Ti系金属間化合物は、上記アルミニウム板の導電率の低下や、レーザ溶接時の溶け込み深さ等の急激な増大等を招くため、好ましくない。これらの問題を回避する観点から、Tiの含有量は0.0050%超え0.30%以下とする。同様の観点から、Tiの含有量は0.010%以上0.10%以下とすることが好ましい。
・B(ホウ素):0.00010%超え0.050%以下
Bは、Tiと同様に、鋳造組織の結晶粒を微細化する作用を有している。Bの含有量を上記特定の範囲とすることにより、板材の結晶粒や鋳造時に最後に凝固する共晶相を微細化することができる。その結果、板材の鋳造割れを抑制することができる。
Bの含有量が0.00010%以下の場合には、上述の作用が不十分となるため、板材の鋳造割れを抑制することが難しい。一方、Bの含有量が0.050%を超える場合には、上記アルミニウム板中に、例えばTiB2などのTi−B系化合物の粗大な凝集物が形成されるおそれがある。粗大なTi−B系化合物は、レーザ光の吸収率を過度に高め、レーザ溶接時の溶け込み深さやビード幅の急激な増大等を招くため、好ましくない。これらの問題を回避する観点から、Bの含有量は0.00010%超え0.050%以下とする。同様の観点から、Bの含有量は0.00050%以上0.0050%以下とすることが好ましい。
Ti及びBは、例えば、Al−10Ti合金や、Al−5Ti−1B合金等としてアルミニウム合金の溶湯中に添加することができる。また、Ti及びBをTiB2として溶湯中に添加してもよい。TiB2は、アルミニウム合金の溶湯との濡れ性が高いため、TiとBとを別々に添加する場合に比べて、結晶粒を微細化する効果を飛躍的に向上させることができる。
Ti及びBの添加は、例えば、上述した合金等を溶解炉や溶湯保持炉中に直接投入する方法や、溶湯保持炉と給湯ノズル直前にあるヘッドボックスとの間を連結する樋を流れる溶湯に投入する方法により行うことができる。後者の方法を採用する場合には、上述した合金等からなるワイヤーを準備し、一定速度でワイヤーを溶湯中に送り出すことにより、TiやBの偏析をより容易に抑制することができる。
・Si(シリコン):0.30%以下、Mn(マンガン):0.050%以下、Cu(銅):0.050%以下、Mg(マグネシウム):0.050%以下
上記アルミニウム板は、更に、Si、Mn、Cu及びMgを含んでいてもよい。Siの含有量は0.30%以下であることが好ましく、0.10%以下であることがより好ましい。Siの含有量を0.30%以下とすることにより、Feとの化合物や、粗大晶出物の生成を抑制することができる。その結果、上記アルミニウム板の加工性をより向上させることができる。また、Siの含有量を0.30%以下とすることにより、上記アルミニウム板のレーザ溶接性をより向上させることができる。
Mnの含有量は0.050%以下であることが好ましく、0.010%以下であることがより好ましい。Mnの含有量を0.050%以下とすることにより、Mnの固溶量をより低減することができる。その結果、上記アルミニウム板の導電率をより向上させることができる。
Cuの含有量は0.050%以下であることが好ましく、0.010%以下であることがより好ましい。Cuの含有量を0.050%以下とすることにより、上記アルミニウム板の耐食性をより向上させることができる。また、Cuの含有量を0.050%以下とすることにより、Cuの固溶量をより低減することができる。その結果、上記アルミニウム板の導電率をより向上させることができる。
Mgの含有量は0.050%以下であることが好ましく、0.010%以下であることがより好ましい。Mgの含有量を0.050%以下とすることにより、上記アルミニウム板のレーザ溶接性をより向上させることができる。また、Mgの含有量を0.050%以下とすることにより、Mgの固溶量をより低減することができる。その結果、上記アルミニウム板の導電率をより向上させることができる。
・Zn(亜鉛)、Cr(クロム)
Zn及びCrは、それぞれの含有量を0.010%以下とし、かつ、ZnとCrとの総量を0.015%以下にすることが好ましい。Crの含有量を0.010%以下とすることにより、上記アルミニウム板の耐食性をより向上させることができる。また、ZnとCrとの総量を0.015%以下とすることにより、上記アルミニウム板のレーザ溶接性をより向上させることができる。
<Feの固溶量>
上記アルミニウム板中のFeの固溶量は、0.12%以下とする。Feの固溶量を0.12%以下とすることにより、上記アルミニウム板の導電率を高くすることができる。その結果、導電部材用として好適な範囲の導電率を有する上記アルミニウム板を得ることができる。Feの固溶量が0.12%を超える場合には、上記アルミニウム板の導電率が導電部材に要求される水準よりも低くなるおそれがある。
<Al−Fe系金属間化合物>
上記アルミニウム板は、上記特定の範囲のAl−Fe系金属間化合物を有している。Al−Fe系金属間化合物としては、例えば、AlFeやAlFe等の、AlとFeとの2元系金属間化合物や、AlとFeとを含む3元系金属間化合物等が存在している。3元系金属間化合物としては、例えばAlFeSi等の、Al−Fe−Si金属間化合物が存在している。
・円相当直径0.5μm以上2.0μm未満のAl−Fe系金属間化合物
上記アルミニウム板における圧延方向に平行な断面(L−ST面)には、円相当直径0.5μm以上2.0μm未満のAl−Fe系金属間化合物が8.0×104個/mm2以上存在している。上記アルミニウム板は、上述した微細なAl−Fe系金属間化合物を多数含有しているため、レーザ光の吸収率を高くすることができる。その結果、レーザ溶接時の溶け込み深さを深くし、相手方部材との接続を容易に行うことができる。
上記Al−Fe系金属間化合物の数が8.0×104個/mm2未満の場合には、レーザ光の吸収率が低いため、レーザ溶接時の溶け込み深さが浅くなり易い。そのため、この場合には、上記アルミニウム板と相手方部材とを接続することが難しい。また、この場合には、Feの固溶量が多いため、上記アルミニウム板の導電率の低下を招くおそれがある。
上記の作用効果をより高める観点からは、円相当直径0.5μm以上2.0μm未満のAl−Fe系金属間化合物の数が多い方が好ましい。なお、上記の製造方法により上記アルミニウム板を作成した場合、上記金属間化合物は、自ずと4.0×105個/mm2以下となる。
・円相当直径2.0μm以上のAl−Fe系金属間化合物
上記アルミニウム板における圧延方向に平行な断面には、円相当直径2.0μm以上のAl−Fe系金属間化合物が1.0×104個/mm2以下存在している。このように、比較的円相当直径の大きなAl−Fe系金属間化合物の数を上記特定の範囲に規制することにより、円相当直径0.5μm以上2.0μm未満のAl−Fe系金属間化合物の数をより多くすることができる。また、上述したAl−Fe系金属間化合物の数を上記特定の範囲に規制することにより、レーザ溶接時の溶け込み深さやビード幅の急激な増大を抑制することができる。
円相当直径2.0μm以上のAl−Fe系金属間化合物の数が1.0×104個/mm2を超える場合には、円相当直径0.5μm以上2.0μm未満のAl−Fe系金属間化合物の数が少なくなるため、レーザ溶接時の溶け込み深さが浅くなり易い。また、この場合には、Feの固溶量が多くなるため、上記アルミニウム板の導電率が著しく低下する。これは、円相当直径2.0μm以上のAl−Fe系金属間化合物の数が1.0×104個/mm2以下の場合に比べてFeの析出サイトであるAl−Fe系金属間化合物が疎らに分散しているために、固溶しているFeが上記アルミニウム板中に析出しにくくなることが原因と考えられる。
・円相当直径0.5μm未満のAl−Fe系金属間化合物
上記アルミニウム板は、圧延方向に平行な断面に円相当直径0.5μm未満のAl−Fe系金属間化合物を多数含有していてもよい。このように極めて微細なAl−Fe系金属間化合物は、円相当直径0.5μm以上2.0μm未満のAl−Fe系金属間化合物と共存することにより、レーザ溶接時の溶け込み深さをより深くする作用を有している。円相当直径0.5μm未満のAl−Fe系金属間化合物を多数形成するためには、薄板連続鋳造により板材を鋳造することが好ましい。
<導電率>
上記アルミニウム板の導電率は、55.0%IACS以上であることが好ましい。この場合には、導電部材による電力損失をより低減することができる。上記アルミニウム板は、化学成分及びFeの固溶量を上記特定の範囲とすることにより、55.0%IACS以上の導電率を容易に実現することができる。電力損失をより低減する観点からは、上記アルミニウム板の導電率が高いほうが好ましい。なお、上記アルミニウム板の導電率は、化学成分及びFeの固溶量が上記特定の範囲であるため、自ずと59%IACS以下となる。
<引張強さ>
上記アルミニウム板の引張強さは100MPa以上であることが好ましい。この場合には、導電部材を電気機器等に組み付ける際のハンドリングや、電気機器等の使用中に加わる振動等による導電部材の変形をより効果的に抑制することができる。また、導電部材をボルトにより相手方部材に締結する場合に、ボルトの緩みを抑制することができる。
<調質>
上記アルミニウム板は、用途等に応じた調質が施されていてもよい。例えば、上記アルミニウム板は、O材やH材とすることができる。
[製造方法]
上記アルミニウム板は、例えば、薄板連続鋳造により作製した板材に均質化処理及び冷間圧延を順次行う態様、または、薄板連続鋳造により作製した板材に冷間圧延及び焼鈍を順次行う態様のいずれかの態様により製造することができる。以下、各態様について説明する。
<第1の態様>
第1の態様においては、薄板連続鋳造により作製した板材に均質化処理及び冷間圧延が順次行われる。第1の態様においては、均質化処理によりAl−Fe系金属間化合物を析出させることができる。その結果、第2の態様に比べてFe等の固溶量を容易に低減することができ、得られるアルミニウム板の導電率を高くすることができる。第1の態様においては、冷間圧延の後に焼鈍を行ってもよい。また、焼鈍の後にさらに冷間圧延を行うこともできる。
・板材の鋳造
板材は、薄板連続鋳造、即ち溶湯から直接板材を鋳造する方法により作製される。薄板連続鋳造としては、単ロール式、双ロール式、双ベルト式及びブロック式等の公知の方法を採用することができる。薄板連続鋳造の冷却速度は、DC鋳造法に比べて数倍〜数百倍高い。例えば、DC鋳造法の場合の冷却速度が0.1〜20℃/秒程度であるのに対し、双ロール式薄板連続鋳造法の場合の冷却速度は200〜500℃/秒程度である。そのため、鋳造時に生成する晶出物を、DC鋳造法に比べて微細かつ高密度に分布させることができる。
また、薄板連続鋳造における冷却速度は極めて高いため、Fe等の添加元素を過飽和に固溶させることができる。そのため、均質化処理等の熱処理や冷間圧延によってAl−Fe系金属間化合物を微細かつ高密度に析出させることができる。その結果、析出強化により材料強度を向上させることができる。さらに、Fe等の固溶量を低減することができるため、上記アルミニウム板の導電率を高くすることができる。
板材の板厚は、2〜20mmとすることが好ましく、4〜15mmとすることがより好ましい。この場合には、板厚方向における中央部の凝固速度を高くすることができる。その結果、板厚方向の全範囲に亘って比較的均一な鋳造組織を得ることができる。板厚が2mm未満の場合には、単位時間当たりに鋳造機を通過する溶湯量が少ないため、板幅方向の全体に亘って溶湯を供給することが難しくなるおそれがある。一方、板厚が20mmを超える場合には、板の表面近傍における凝固速度と板厚方向の中央部における凝固速度との差が大きくなるおそれがある。その結果、板厚方向において均一な鋳造組織を得ることが難しくなるおそれがある。
・均質化処理
鋳造後の板材を400〜550℃で1〜10時間加熱することにより、均質化処理を行う。この均質化処理により、板材中のミクロ偏析を解消し、粗大なAl−Fe系金属間化合物を微細に分散させることができる。また、均質化処理においては、板材中に過飽和に固溶しているFeがAl−Fe系金属間化合物として微細に析出したり、既に存在しているAl−Fe系金属間化合物中に取り込まれたりするため、Feの固溶量を低減することができる。これにより、板材の導電率を高くすることができる。
均質化処理の加熱時間は、加熱温度が高いほど短縮することができる。処理効率の観点からは、加熱温度を480〜520℃、加熱時間を2〜4時間とすることが好ましい。
また、板材に予め歪みが付与されている場合には、均質化処理において、歪みを起点としてAl−Fe系金属間化合物を微細かつ高密度に析出させることができる。それ故、均質化処理においてより多くのAl−Fe系金属間化合物を析出させるためには、鋳造時に板材に歪みを付与することができる手法を用いて薄板連続鋳造を行うことが好ましい。このような手法としては、例えば、双ロール式薄板連続鋳造等を採用することができる。
加熱温度が400℃未満の場合には、Fe原子の拡散が十分に進行しないため、円相当直径2.0μm以上のAl−Fe系金属間化合物の数を低減することが難しい。一方、加熱温度が550℃を超える場合には、AlとAl3Feとの共晶相におけるAl相が局所的に溶融するおそれがある。Al相が局所的に溶融すると、薄板連続鋳造により形成された微細な急冷凝固組織を消失し、その代わりに粗大なAl−Fe系金属間化合物が晶出するおそれがある。その結果、レーザ溶接時に溶け込み深さやビード幅が急激に変化するおそれがある。
加熱時間が1時間未満の場合には、Fe原子の拡散が十分に進行しないため、円相当直径2.0μm以上のAl−Fe系金属間化合物の数を低減することが難しい。一方、上記の温度範囲においては、10時間程度で均質化が完了するため、10時間を越えて均質化処理を継続する必要はない。
・冷間圧延
均質化処理後の板材に冷間圧延を行うことにより、得られる上記アルミニウム板の強度や成形性を所望の範囲に調整することができる。冷間圧延における圧延率は、例えば、5〜95%の範囲とすることができる。なお、冷間圧延後に得られる上記アルミニウム板の調質はO材である。
また、冷間圧延の後に、Al−Fe系金属間化合物を更に析出させることを目的として焼鈍を行ってもよい。この場合には、冷間圧延の圧延率を20〜80%とすることが好ましい。圧延率を上記特定の範囲とすることにより、板材に導入される歪み量を適正な範囲にすることができる。その結果、焼鈍時に効率よくAl−Fe系金属間化合物を析出させることができる。
・焼鈍
焼鈍においては、冷間圧延後の板材が300〜450℃で1〜10時間加熱される。これにより、Al−Fe系金属間化合物を効率よく析出させることができる。焼鈍時の加熱時間は、加熱温度が高いほど短縮することができる。なお、焼鈍後に得られる上記アルミニウム板の調質はH2n材である。
加熱温度が300℃未満の場合には、Fe原子の拡散が十分に進行しないため、円相当直径2.0μm以上のAl−Fe系金属間化合物の数を低減することが難しい。一方、加熱温度が450℃を超える場合には、板材中のAlとAl3Feとの共晶相におけるAl相が局所的に溶融するおそれがある。Al相が局所的に溶融すると、薄板連続鋳造により形成された微細な急冷凝固組織が消失し、その代わりに粗大なAl−Fe系金属間化合物が晶出するおそれがある。それ故、この場合には、レーザ溶接時に溶け込み深さやビード幅が急激に増大するおそれがある。
加熱時間が1時間未満の場合には、焼鈍によるAl−Fe系金属間化合物の析出量が少なくなるおそれがある。一方、上記の温度範囲においては、10時間程度でAl−Fe系金属間化合物の析出が完了するため、10時間を越えて焼鈍を継続する必要はない。
・最終冷間圧延
焼鈍後の板材に最終冷間圧延を行うことにより、得られる上記アルミニウム板の強度や成形性を所望の範囲に調整することができる。最終冷間圧延における圧延率は、例えば、圧延率5〜95%の範囲とすることができる。なお、最終冷間圧延後に得られる上記アルミニウム板の調質はH1n材である。
<第2の態様>
第2の態様においては、薄板連続鋳造により作製した板材に冷間圧延及び焼鈍が順次行われる。この場合には、第1の態様において行っていた均質化処理を省略することができるため、第1の態様に比べて製造コストを低減することができる。第2の態様においては、焼鈍の後にさらに冷間圧延を行うこともできる。
・冷間圧延
第2の態様においては、第1の態様と同様の方法により作製した板材に、圧延率20〜80%で冷間圧延が行われる。これにより、板材に導入される歪み量を適正な範囲にすることができる。その結果、焼鈍時に効率よくAl−Fe系金属間化合物を析出させることができる。
圧延率が20%未満の場合には、板材に導入される歪み量が小さいため、焼鈍によるAl−Fe系金属間化合物の析出量が少なくなるおそれがある。一方、圧延率が80%を超える場合には、加工硬化が大きくなるため、焼鈍を複数回行う必要が生じるおそれがある。
・焼鈍
焼鈍においては、冷間圧延後の板材が450〜550℃で1〜10時間加熱される。これにより、Al−Fe系金属間化合物を効率よく析出させることができる。加熱温度が高いほど、焼鈍時の加熱時間を短縮することができる。なお、焼鈍後に得られる上記アルミニウム板の調質はO材またはH2n材である。
加熱温度が450℃未満の場合には、焼鈍によるAl−Fe系金属間化合物の析出量が少なくなるおそれがある。一方、加熱温度が550℃を超える場合には、板材中のAlとAl3Feとの共晶相におけるAl相が局所的に溶融するおそれがある。Al相が局所的に溶融すると、薄板連続鋳造により形成された微細な急冷凝固組織が消失し、その代わりに粗大なAl−Fe系金属間化合物が晶出するおそれがある。それ故、この場合には、レーザ溶接時に溶け込み深さやビード幅が急激に増大するおそれがある。
加熱時間が1時間未満の場合には、焼鈍によるAl−Fe系金属間化合物の析出量が少なくなるおそれがある。一方、上記の温度範囲においては、10時間程度でAl−Fe系金属間化合物の析出が完了するため、10時間を越えて焼鈍を継続する必要はない。
・最終冷間圧延
焼鈍後の板材に最終冷間圧延を行うことにより、得られる上記アルミニウム板の強度や成形性を所望の範囲に調整することができる。最終冷間圧延における圧延率は、例えば、5〜95%の範囲内とすることができる。なお、最終冷間圧延後に得られる上記アルミニウム板の調質はH1n材である。
[導電部材]
上記製造方法により得られる上記アルミニウム板は、例えば、バスバーや電池ケース等の導電部材として使用することができる。
[電気接続部品]
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる相手方部材に上記導電部材を接続することにより、電気接続部品を構成することができる。電気接続部品は、上記アルミニウム板からなる導電部材と上記相手方部材とをレーザ溶接し、レーザ溶接部を介して両者を接続することにより作製することができる。
上記相手方部材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されていることが好ましい。例えば、相手方部材の材質としては、1000系アルミニウム、3000系アルミニウム合金、5000系アルミニウム合金及び6000系アルミニウム合金を好適に用いることができる。また、銅または銅合金からなる相手方部材を導電部材に接続することもできる。
(実験例)
上記アルミニウム板及びその製造方法の例を、以下に説明する。本例においては、表1〜表5に示すように、種々の化学成分を有するアルミニウム合金を用い、製造条件を種々変更してアルミニウム板を作製した。そして、得られた試験材1〜69(表3〜表5参照)を用いて各種特性の評価を行った。
<アルミニウム合金>
本例において用いた合金の化学成分を表1に示す。なお、表1中の記号「Bal.」は、残部であることを示す。また、表には示さないが、合金A1〜A7には不可避的不純物が含まれている。
Figure 2017128758
<製造条件>
本例において用いた製造条件を表2に示す。製造条件B1〜B9においては、薄板連続鋳造により板材を作製した後、該板材に均質化処理及び冷間圧延を行うことにより試験材を作製した。製造条件C1〜C20においては、薄板連続鋳造により板材を作製した後、該板材に均質化処理、冷間圧延及び焼鈍をこの順に行うことにより、試験材を作製した。製造条件D1においては、薄板連続鋳造により板材を作製した後、該板材に均質化処理、冷間圧延、焼鈍及び最終冷間圧延をこの順に行うことにより、試験材を作製した。
製造条件E1〜E14においては、薄板連続鋳造により板材を作製した後、該板材に冷間圧延及び焼鈍を行うことにより、試験材を作製した。製造条件F1においては、薄板連続鋳造により板材を作製した後、該板材に冷間圧延、焼鈍及び最終冷間圧延をこの順に行うことにより、試験材を作製した。
製造条件G1においては、薄板連続鋳造により作製した板材を試験材とした。製造条件H1においては、薄板連続鋳造により板材を作製した後、該板材に均質化処理を行うことにより、試験材を作製した。製造条件I1においては、薄板連続鋳造により板材を作製した後、該板材に冷間圧延を行うことにより、試験材を作製した。製造条件J1においては、DC鋳造による鋳塊の作製、鋳塊の面削及び熱間圧延を順次行って板材を作製した後、該板材に均質化処理、冷間圧延、焼鈍及び最終冷間圧延をこの順に行うことにより、試験材を作製した。
Figure 2017128758
得られた試験材の特性評価は、以下の方法により行った。
<導電率>
導電率計(日本フェルスター株式会社製「シグマテスト2.069」)を用い、渦電流法により各試験材の導電率(%IACS)を測定した。各試験材の導電率は、表3〜表5に示した通りであった。なお、導電率の測定は、25℃の環境下で行った。
<引張強さ>
各試験材からJIS Z2201に規定される5号試験片を採取した。この試験片を用いてJIS Z2241に準拠した方法により引張試験を行い、引張強さを測定した。各試験材の引張強さは、表3〜表5に示した通りであった。なお、試験片は、長手方向が圧延方向と平行になるように採取した。
<Al−Fe系金属間化合物の数>
各試験材の圧延方向に平行な断面(L−ST面)を研磨し、次いでケラーエッチングを行った。光学顕微鏡によりエッチング後の断面を倍率500倍で観察し、1視野当たり25000μm2の面積を有する顕微鏡像を10視野分取得した。次に、得られた顕微鏡像を画像解析ソフトにより解析し、これらの顕微鏡像中に存在する個々の金属間化合物の円相当直径、即ち金属間化合物の面積と同一の面積を有する円の直径を算出した。そして、これらの顕微鏡像中に存在する円相当直径0.5μm以上2.0μm未満の金属間化合物の数及び円相当直径2.0μm以上の金属間化合物の数をカウントした。表3〜表5に、上述した方法によりカウントした金属間化合物の数を面積1mm2当たりの個数に換算した値を示した。
<レーザ溶接性>
まず、各試験材にレーザ光を照射した時の溶け込み深さを測定した。具体的には、試験材の表面に出力2000W、集光径0.3mmφの連続波(Continuous Wave)レーザ光を長さ200mmに亘って照射した。レーザ光の移動速度は15m/分とした。また、レーザ光の出力は全長に亘って一定とし、照射終端部においてレーザ光の出力を段階的に低下させる、いわゆる終端処理は行わなかった。
そして、レーザ溶接部から選択した5箇所の断面を光学顕微鏡により観察し、各断面における溶け込み深さの最大値を測定した。そして、これら5箇所の溶け込み深さの算術平均及び標準偏差を算出した。その結果を表3〜表5に示した。なお、断面間の間隔は15mmとした。
溶け込み深さの評価においては、溶け込み深さが深いほど、レーザ溶接を行うために必要な投入エネルギーを少なくすることができる。本評価においては、溶け込み深さの算術平均が1mm以上の場合を好ましい結果と判断した。また、溶け込み深さの標準偏差が小さいほど、レーザ溶接部の強度のばらつきを低減することができる。本評価においては、溶け込み深さの標準偏差が0.2mm未満の場合を好ましい結果と判断した。
次に、各試験材から幅30mm、長さ100mmの角棒状を呈する試験片を採取し、この試験片と、種々の材質からなる相手方部材とのレーザ溶接の可否を評価した。相手方部材の材質としては、バスバーや電気機器の端子等として一般的な、JIS A1070、A3003、A3004及びA6101を用いた。これらの相手方部材を上記試験片と同一の形状に成形した後、長手方向の端部同士を重ね合わせた。そして、出力2000W、集光径0.3mmφの連続波レーザ光を試験片の幅方向の全長に亘って照射し、レーザ溶接を行った。レーザ光の移動速度は15m/分とした。また、レーザ光の出力は全長に亘って一定とし、照射終端部においてレーザ光の出力を段階的に低下させる、いわゆる終端処理は行わなかった。
レーザ溶接が完了した後、目視によりレーザ溶接部の表面を観察した。また、レーザ溶接部から選択した5箇所の断面を光学顕微鏡により観察した。そして、表面及び断面のいずれにも割れが発生していない場合に「溶接可」、表面または断面のいずれかに割れが発生した場合に「溶接不可」と判断した。表3〜表5にその結果を示した。
Figure 2017128758
Figure 2017128758
Figure 2017128758
表3〜表5に示すように、試験材1〜36における化学成分、Feの固溶量及びAl−Fe系金属間化合物は上記特定の範囲内であった。そのため、これらの試験材は、レーザ溶接部の溶け込み深さが十分に深く、溶け込み深さのばらつきも小さかった。また、これらの試験材は、相手方部材として一般的に用いられるJIS A1070、A3003、A3004及びA6101のいずれに対しても溶接を行うことができた。
試験材37は、均質化処理における加熱時間が短かったため、円相当直径2.0μm以上のAl−Fe系金属間化合物の数を十分に低減することができなかった。そのため、試験材37は、A3004材及びA6101材との溶接ができなかった。
試験材38及び41は、均質化処理における加熱温度が低かったため、円相当直径2.0μm以上のAl−Fe系金属間化合物の数を十分に低減することができなかった。そのため、これらの試験材は、A3004材及びA6101材との溶接ができなかった。
試験材39及び42は、均質化処理における加熱温度が高かったため、試験材の表面に部分溶融が発生した。また、試験材46及び51は、焼鈍における加熱温度が高かったため、試験材の表面に部分溶融が発生した。そのため、これらの試験材に関するAl−Fe系金属間化合物の数の測定及びレーザ溶接性の評価を行わなかった。
試験材40は、均質化処理における加熱時間が短かったため、円相当直径2.0μm以上のAl−Fe系金属間化合物の数を十分に低減することができなかった。そのため、試験材40は、溶け込み深さのばらつきが大きかった。また、試験材40は、A6101材との溶接ができなかった。
試験材43、48、53及び54は、薄板連続鋳造の後に冷間圧延を行っていない、または、冷間圧延における圧延率が低かったため、試験材中のAl−Fe系金属間化合物が分散しておらず、互いに繋がっていた。そのため、これらの試験材は、溶け込み深さのばらつきが大きかった。また、これらの試験材は、全ての相手方部材との溶接ができなかった。
試験材44及び49は、冷間圧延における圧延率が高かったため、焼鈍の際にAl−Fe系金属間化合物が異常成長し、円相当直径2.0μm以上のAl−Fe系金属間化合物が多くなった。そのため、これらの試験材は、溶け込み深さのばらつきが大きかった。また、これらの試験材は、A3004材及びA6101材との溶接ができなかった。
試験材45は、焼鈍における加熱温度が低かったため、円相当直径2.0μm以上のAl−Fe系金属間化合物の数を十分に低減することができなかった。そのため、試験材45は、A3004材及びA6101材との溶接ができなかった。
試験材47及び52は、焼鈍における加熱時間が短かったため、Feの析出が十分に行われず、円相当直径0.5μm以上2.0μm未満のAl−Fe系金属間化合物が少なかった。そのため、これらの試験材は、A6101材との溶接ができなかった。
試験材50は、焼鈍における加熱温度が低かったため、Feの析出が十分に行われず、円相当直径0.5μm以上2.0μm未満のAl−Fe系金属間化合物が少なかった。そのため、試験材50は、A6101材との溶接ができなかった。また、試験材50は、円相当直径2.0μm以上のAl−Fe系金属間化合物が多かったため、溶け込み深さのばらつきが大きかった。
試験材55は、薄板連続鋳造の後に均質化処理及び焼鈍を行っていないため、円相当直径2.0μm以上のAl−Fe系金属間化合物の数を十分に低減することができなかった。そのため、試験材55は、Feの固溶量が多く、溶け込み深さのばらつきが大きかった。また、試験材55は、A3004材及びA6101材との溶接ができなかった。
試験材56は、DC鋳造を含む従来の製造方法により板材を作製したため、円相当直径2.0μm以上のAl−Fe系金属間化合物の数を十分に低減することができなかった。そのため、これらの試験材は、溶け込み深さのばらつきが大きかった。また、試験材55は、A3003材、A3004材及びA6101材との溶接ができなかった。
試験材57〜60は、Feの含有量が少ないため、固相線と液相線との温度差が大きくなった。また、これらの試験材は、Feの含有量が少ないため、円相当直径0.5μm以上2.0μm未満のAl−Fe系金属間化合物が少なかった。そのため、これらの試験材は、A3004材及びA6101材との溶接ができなかった。また、試験材57及び58は、十分な溶け込み深さを確保できなかった。
試験材61〜63は、Feの含有量が多いため、固相線と液相線との温度差が大きくなった。そのため、これらの試験材は、全ての相手方部材との溶接ができなかった。
試験材64及び66は、Ti及びBの含有量が少ないため、Al−Fe系金属間化合物が微細に分散されておらず、互いに繋がっていた。そのため、これらの試験材は、溶け込み深さのばらつきが大きかった。また、これらの試験材は、A3003材、A3004材及びA6101材との溶接ができなかった。
試験材65は、Ti及びBの含有量が少ないことに加え、試験材64及び66に比べて均質化処理の加熱温度が低く、加熱時間が短かった。そのため、Al−Fe系金属間化合物が微細に分散されておらず、互いに繋がっていた。また、薄板連続鋳造により鋳造した板材の凝固組織は、異方性の高い柱状晶であった。これらの結果、試験材65は、冷間圧延中に割れが発生した。したがって、試験材65のレーザ溶接性の評価は行わなかった。
試験材67〜69は、Ti及びBの含有量が多いため、Ti−B系化合物の粗大凝集物が生じた。そのため、これらの試験材は、溶け込み深さのばらつきが大きかった。また、これらの試験材は、A3003材、A3004材及びA6101材との溶接ができなかった。
(実施例)
本例は、上記アルミニウム板からなる導電部材10の例である。図1に示すように、本例の導電部材10は、バスバーとして構成されている。導電部材10は、上記アルミニウム板から構成されている。
導電部材10の厚さは、例えば0.5〜10mmの範囲から適宜選択することができる。厚さが0.5mm未満の場合には、通電性が不十分となるおそれがある。一方、厚さが10mmを超える場合には、プレス加工や曲げ加工等の曲げ加工性が低くなるおそれがある。
本例の導電部材10は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる相手方部材2とレーザ溶接部3を介して接続されることにより、電気接続部品1を構成していてもよい。導電部材10は、例えば図1に示すように、電池や電力変換装置等の電気機器4の内部に収容された内部導体等を相手方部材2とすることができる。
図1に示す導電部材10は、棒状を呈しており、その長手方向の一端が相手方部材2とレーザ溶接により接続されるように構成されている。また、導電部材10の他端は、他のバスバー5とボルト51を介して締結されるように構成されている。
なお、上記アルミニウム板、上記電気接続部品及び上記アルミニウム板の製造方法は、上述した実施例及び実験例の態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜その構成を変更することができる。
1 電気接続部品
10 導電部材
2 相手方部材
3 レーザ溶接部

Claims (7)

  1. Fe:1.2%(質量%、以下同じ)超え3.0%以下、Ti:0.0050%超え0.30%以下、B:0.00010%超え0.050%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有しており、
    Feの固溶量が0.12%以下であり、
    圧延方向に平行な断面に存在する、円相当直径0.5μm以上2.0μm未満のAl−Fe系金属間化合物の数が8.0×104個/mm2以上であり、かつ、円相当直径2.0μm以上のAl−Fe系金属間化合物の数が1.0×104個/mm2以下である、導電部材用アルミニウム合金板。
  2. 薄板連続鋳造により、Fe:1.2%(質量%、以下同じ)超え3.0%以下、Ti:0.0050%超え0.30%以下、B:0.00010%超え0.050%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有する板材を作製し、
    該板材を400〜550℃で1〜10時間加熱して均質化処理を行い、
    その後、上記板材に冷間圧延を行う、導電部材用アルミニウム合金板の製造方法。
  3. 上記冷間圧延における圧延率を20〜80%とし、上記冷間圧延の後、上記板材を300〜450℃で1〜10時間加熱して焼鈍する、請求項2に記載の導電部材用アルミニウム合金板の製造方法。
  4. 上記焼鈍の後に、上記板材に最終冷間圧延を行う、請求項3に記載の導電部材用アルミニウム合金板の製造方法。
  5. 薄板連続鋳造により、Fe:1.2%(質量%、以下同じ)超え3.0%以下、Ti:0.0050%超え0.30%以下、B:0.00010%超え0.050%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有する板材を作製し、
    該板材を圧延率20〜80%で冷間圧延し、
    その後、上記板材を450〜550℃で1〜10時間加熱して焼鈍する、導電部材用アルミニウム合金板の製造方法。
  6. 上記焼鈍の後に、上記板材に最終冷間圧延を行う、請求項5に記載の導電部材用アルミニウム合金板の製造方法。
  7. 請求項1に記載の導電部材用アルミニウム合金板からなる導電部材と、
    アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる相手方部材とを有しており、
    上記導電部材と上記相手方部材とが、レーザ溶接部を介して接続されている、電気接続部品。
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