JP6148923B2 - アルミニウム合金製バスバー - Google Patents
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Description
本発明に係るバスバーは、必須元素としてFe:0.70〜2.00mass%(以下、単に「%」と記す)及びCu:0.06〜1.00%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。
Feは材料中にはほとんど固溶しないため、固溶による導電率低下への影響が小さく、Al−Fe系金属間化合物として存在して母材強度に寄与する元素である。また、溶接する際には溶接部にFeが存在することで溶接部強度が向上し、割れ防止の効果を発揮する。Feの含有量が0.70%未満では、金属間化合物の数が少なくレーザー溶接性が不安定になる。一方、2.00%を超えると、導電率が55.0%IACSを下回り、更に粗大な金属間化合物も形成し易くなるため、レーザー溶接性が不安定になったり、プレス加工が困難になるといった問題が生じる。
Cuは、強度を向上させるために有効な元素である。Cuの含有量は、0.06〜1.00%の範囲とする。Cu含有量が0.06%未満では、強度向上の効果が十分に得られない。一方、Cu含有量が多くなると導電率が低下して、溶接凝固時の固液共存温度域が広くなる。その結果、溶接割れが発生し易くなるため、Cu含有量は1.00%以下とする。Cu含有量は、好ましくは0.12〜1.00%である。
また、上記アルミニウム合金破、選択的添加元素として、Ti:0.005〜0.300%を単独で、或いは、これに、B:0.0001〜0.05%及びC:0.0001〜0.002%の少なくとも一方を更に含有していてもよい。Ti、B、Cは鋳塊組織の微細化剤として、一般的に添加される元素である。本発明では、選択的添加元素として、Ti:0.005〜0.300%を単独で、或いは、これに、B:0.0001〜0.05%及びC:0.0001〜0.002%の少なくとも一方を更に添加することができる。
バスバーには、電池や電気機器を電気的に接続するため高い導電性が要求される。使用する材料の導電率が55.0%IACSを下回ると電力損失が増大するなど、バスバーとしての特性が不十分となる。導電率の上限は特に規定するものではないが、本発明のAl合金の導電率は61.0%IACSが限界である。
本発明に係るバスバーに用いるアルミニウム合金材は、金属組織中に円相当径1〜3μmのAl−Fe系金属間化合物が14000個/mm2以上存在する。Al−Fe系金属間化合物はレーザーの吸収率を増大させるため、レーザーによるアルミニウム合金の溶け込み深さを深くする。上記面密度が14000個/mm2未満では、レーザー吸収率が低くアルミニウム合金の溶け込み深さが十分でなく、バスバーの接合が困難になる。また、上記面密度が14000個/mm2未満の場合にはFeの固溶量が多量となり、バスバー材として必要な導電率が55.0%IACS未満となる可能性が高くなる。金属間化合物の面密度の上限は特に規定するものではないが、組成と製造工程により自ずと上限は決まる。本発明では、上限を50000個/mm2、好ましくは40000個/mm2とする。なお、Al−Fe系金属間化合物とは、FeAl3、FeAl6、FeAlm、FeAlSiなどの金属間化合物をいう。なお、Al−Fe系の金属間化合物の中にCuが含まれていても構わない。
本発明に係るバスバーに用いるアルミニウム合金は、O材に調質された際に100MPa以上の引張強度を有する。母材の上記引張強度が100MPa未満では、組み付けの際のハンドリング時や、製品としての使用時における振動で変形する可能性があるため好ましくない。更に、ボルト締めする場合は締結部で緩みが生じて接触抵抗が増加する可能性がある。なお、調質はO材に限定する必要はなく、加工硬化によりH材として強度を増した材料を用いてもよい。母材の上記引張強度の上限は特に限定されるものではないが、組成と調質により自ずと決まる。本発明では、上限を240MPaとする。
本発明に係るバスバーに用いるアルミニウム合金材は、求められる板厚に応じて、熱間圧延板又は冷間圧延板のいずれを用いてもよい。具体的には、鋳造工程、均質化工程、面削工程、熱間圧延の予備加熱工程、熱間圧延工程、冷間圧延工程、焼鈍工程を経て製造される。以下、製造工程について説明する。
所定の組成に調整したアルミニウム合金の溶湯を用いて、鋳造工程により鋳塊を作製する。鋳造方法としては、一般的な半連続鋳造法(DC法)を用いることができる。また、連続鋳造法(CC法)で実施しても良い。
鋳造工程で作製された鋳塊は、均質化処理工程にかけられる。均質化処理条件は、520〜620℃の温度で4〜10時間加熱し、次いで、500℃から400℃への冷却速度を50℃/時間以下、好ましくは30℃/時間以下とする。これにより、円相当径が1〜3μmのAl−Fe系金属間化合物の面密度を14000個/mm2以上とすることができる。均質化処理温度を520℃未満としたり、加熱時間を4時間未満とした場合には、Al−Fe系金属間化合物を十分析出させることができない。一方、均質化処理温度が620℃を超えると、鋳塊が溶融する虞があるため好ましくない。また、加熱時間が10時間を超える場合、材料特性は問題ないが、生産性が損なわれる。また、上記冷却速度が50℃/時間を超える場合は、Al−Fe系金属間化合物の面密度は14000個/mm2を下回る可能性がある。
均質化処理工程の前又は後に鋳塊を面削工程にかけて、表面部分を除去する面削を行う。均質化処理工程前に面削工程にかける場合は、均質化処理工程が熱間圧延のための予備加熱工程を兼ねることができる。この場合には、面削した鋳塊を均質化処理温度で所定時間保持後に所定温度まで冷却した後に、熱間圧延のための予備加熱工程を経ずに直ちに熱間圧延工程を開始してもよく、或いは、熱間圧延工程の開始温度とそれより40℃高い温度との範囲内で、0.5〜4時間の熱間圧延のための予備加熱工程にかけてから熱間圧延工程を開始してもよい。
熱間圧延工程の開始時における鋳塊温度は特に限定されるものではないが、効率的な熱間圧延を行うためには350〜520℃とするのが好ましい。この温度が350℃未満では安定した熱間圧延が困難となり、520℃を超えると熱間圧延における再結晶粒が粗大化し、外観不良の原因となる場合がある。また、板厚が2mm以上のアルミニウム合金板をバスバーとして用いる場合には、後述の冷間圧延工程を経ないで、熱間圧延工程後のアルミニウム合金板をバスバー材として用いるのが好ましい。
熱間圧延工程後に圧延材を冷間圧延工程にかけることによって、所定の板厚まで圧延することができる。特に、製品板厚が2mmを下回る場合は冷間圧延工程にかけるのが好ましい。また、冷間圧延工程の途中又は冷間圧延工程後に焼鈍工程を設けてもよい。これに代わって、熱間圧延工程後に冷間圧延工程を設けずに焼鈍工程を設けてもよい。冷間圧延条件と焼鈍条件は特に限定されるものではなく、製品の要求強度と成形性に応じて、両者のバランスを考慮することによって適宜決定すればよい。中間焼鈍やO材とするための最終焼鈍では、均一な再結晶組織を得るために、バッチ焼鈍炉を用いて350〜500℃で0.5〜8時間保持する条件が好適である。この焼鈍は、場合により急速に加熱冷却する連続焼鈍ラインを用いて実施してもかまわないが、その場合、370〜520℃の好適範囲で設定された所定焼鈍温度に材料温度が到達した後の保持時間を0秒(保持無しで直ちに冷却)〜60秒とするのが好ましい。また、H2X材とするための最終焼鈍は、必要とする回復度を達成するために条件を適宜選択して実施すればよいが、バッチ焼鈍炉を用いて150〜280℃で0.5〜8時間保持する条件範囲が好適である。ただし、中間焼鈍を行わない場合の冷間圧延のトータル圧下率、或いは、中間焼鈍を行う場合の中間焼鈍後の冷間圧延の圧下率が70%以上になると硬化し過ぎて曲げ性が悪化するため、70%未満とすることが好ましい。
本発明に係るバスバーは、通常、断面が矩形の棒状をなす。棒状の厚さは、0.5〜10mmとするのが好ましい。厚さが0.5mm未満では、十分な通電性を確保することができない場合がある。一方、10mmを超えると、実用上必要なプレス成形性や曲げ加工性が得られない場合がある。なお、本発明に係るバスバーでは、図2〜6に示すような、曲げ加工(図4、5)、プレス打ち抜き加工(図6)、ボルト用の穴開け加工(図2〜6)を行うこともある。また、耐食性向上、接触抵抗低下を目的にバスバー表面にメッキ処理を適宜施しても良い。
本発明に係るバスバーと他部材とを接合することによって、接合体が得られる。このような接合には、レーザー溶接が好適に用いられる。他部材としては、アルミニウム製バスバーや各種電気機器が用いられ、その材質としては、本発明で用いるアルミニウム合金材、他のアルミニウム材(1000系、5000系、6000系など)、銅及び銅合金などが適用できる。接合体の態様としては、本発明に係るバスバー同士、本発明に係るバスバーと他のバスバー、或いは、本発明に係るバスバーと各種電気機器の接合体が挙げられる。
(1)DC鋳造→均質化処理→面削→熱間圧延
(2)DC鋳造→均質化処理→面削→熱間圧延→最終焼鈍
(3)DC鋳造→均質化処理→面削→熱間圧延→冷間圧延
(4)DC鋳造→均質化処理→面削→熱間圧延→冷間圧延→最終焼鈍
シグマテスターを用いて、渦電流法により導電率(%IACS)を測定した。
引張強度はJIS Z 2201で規定されるJIS5号試験片を試料から切り出し、JIS Z 2241準拠による引張試験により測定した。
試料の金属組織中に存在するAl−Fe系金属間化合物分布の観察は、試料の板表面を研磨、ケラーエッチング後、500倍で光学顕微鏡にて25000μm2の面積を10視野観察して、合計250000μm2の観察結果から、画像解析ソフトによって金属間化合物の大きさを面積が同一の円としたときの円の直径に換算した円相当径1〜3μmの個数を解析して求めた後、1mm2当たりの個数に換算した。
レーザー溶接性については、溶接部溶け込み深さの値とばらつきで評価した。
試料表面において、長さ200mmにわたってレーザー照射を連続的に移動させ、照射部における溶け込み深さを測定した。レーザー照射の条件は、レーザー出力を2000W、溶接速度を15m/分、集光径を0.3mmφ、連続波(CW:Continuous Wave)とし、終端部において出力を段階的に低下させる終端処理は行わなかった。全照射長さのうちの5箇所(間隔は15mm)についてその断面を光学顕微鏡によって観察し、各断面における溶け込み深さの最大値を測定した。そして、これらの算術平均値と標準偏差を求めた。
また、相手材となるバスバーのアルミニウム合金を変えてレーザー溶接したときの溶接性を評価した。評価サンプルとしては、図7に示すサンプルを用いた。すなわち、バスバーを幅30mm×長さ100mmの短冊形状に加工し、重ね合わせて幅方向の全長にわたってレーザー溶接を行った。相手材としては、一般的なアルミニウムのJIS合金である1070、3003、3004、6101を用いた。レーザー照射の条件は、レーザー出力を2000W、溶接速度を15m/分、集光径を0.3mmφ、連続波(CW:Continuous Wave)とし、終端部において出力を段階的に低下させる終端処理は行わなかった。
ボルト締めした際の耐ボルト緩み性の評価は、次のようにして行なった。20mm×20mmの板に直径8mmの貫通孔を開けて、M8のボルトを締め付けトルク12N・mで締め付け、この状態で加熱して120℃で3時間保持した。次に、これを室温まで冷却してボルトの解放トルクを測定して、締め付けトルクと解放トルクの変化率を求めた。評価は、変化率が10%以下を合格「○」、変化率が10%よりも大きいものを不合格「×」と判定した。
2・・・接続部(ボルト締め、又はレーザー溶接)
3・・・レーザー溶接部
4・・・電気ユニット
5・・・ユニット内部導体
Ccu・・・Cuの含有量(%)
Cfe・・・Feの含有量(%)
Claims (4)
- Fe:0.70〜2.00mass%、Cu:0.06〜1.00mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、55.0%IACS以上の導電率を有し、金属組織中に円相当直径1〜3μmのAl−Fe系の金属間化合物が14000個/mm2以上存在し、Fe含有量をCfe(mass%)及びCu含有量をCcu(mass%)として、1.9×Cfe+6×Ccuが7以下であることを特徴とするアルミニウム合金製バスバー。
- 前記アルミニウム合金が、Ti:0.005〜0.300mass%を単独で、或いは、これに、B:0.0001〜0.05mass%及びC:0.0001〜0.002mass%の少なくとも一方を更に含有する、請求項1に記載のアルミニウム合金製バスバー。
- 前記アルミニウム合金がO材に調質された際に100MPa以上の引張強度を有する、請求項1又は2に記載のアルミニウム合金製バスバー。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルミニウム合金製バスバーと他部材とのレーザー溶接体。
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