JP2011009203A - 電極構造、電池および電極構造の製造方法 - Google Patents

電極構造、電池および電極構造の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】電池の高容量化を図りつつも高出力を得ることが可能な電極構造を提供する。
【解決手段】集電体11と電解質層の間に電極部13が設けられる電極構造であり、前記電極部13は、前記電解質層と接して電解質を保持する第1電極部31と、前記電解質層から離れて配置されて、前記第1電極部31よりも体積当たりの電解質の保持量が多い第2電極部32と、を有する電極構造とする。さらに第1電極部31および第2電極部32は、前記電解質側および集電体11側に層状に重なって形成された第1電極層31及び第2電極層32とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、電極構造、電池および電極構造の製造方法に関する。
近年、自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)用の大型のリチウムイオン二次電池の開発が盛んに行われており、電池の高容量化が図られている。リチウムイオン二次電池は、一般に、正極活物質または負極活物質が集電体に塗布されて正極および負極が形成され、正極と負極が電解質を解して接続されて構成される。電池を高容量化するには、例えば、集電体に電極層を厚塗りする必要がある(例えば、特許文献1参照)。
特開2007−220454号公報
しかしながら、電極層が集電体に厚塗りされている場合、電極層を構成する活物質が、集電体と近い側においてリチウムイオンとの反応に寄与し難くなり、高出力を得ることが困難となる。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、電池の高容量化を図りつつも高出力を得ることが可能な電極構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明に係る電極構造は、集電体と電解質層の間に電極部が設けられる。前記電極部は、前記電解質層と接して電解質を保持する第1電極部と、前記電解質層から離れて配置されて、前記第1電極部よりも体積当たりの電解質の保持量が多い第2電極部と、を有している。
上記のように構成した電極構造によれば、電解質層と接する第1電極部と、電解質層から離れて第1電極部よりも体積当たりの電解質の保持量が多い第2電極部とを有するため、高容量化のために電極部の膜厚を増加させつつも、集電体側の活物質へリチウムイオンを十分に供給して高出力化が可能となる。
本発明の第1実施形態に係るリチウムイオン電池の電極構造を示す断面概略図である。 本発明の第1実施形態に係るリチウムイオン電池の代表的な一実施形態であるリチウムイオン二次電池の全体構造を模式的に表した断面概略図である。 本発明の第1実施形態に係るリチウムイオン電池の電極構造を示す拡大断面図である。 本発明の第1実施形態に係るリチウムイオン電池の電極構造の他の例を示す拡大断面図である。 正極活物質層における抵抗を、一例として5つの活物質反応抵抗が並ぶようにモデル化した回路図である。 本発明の第1実施形態に係るリチウムイオン電池の電極構造のさらに他の例を示す拡大断面図である。 本発明の第1実施形態に係るリチウムイオン電池の電極構造のさらに他の例を示す拡大断面図である。 本発明の第1実施形態に係るリチウムイオン電池の代表的な実施形態である積層型の扁平なリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。 本発明の第2実施形態に係るリチウムイオン電池の電極構造を示す側面概略図である。 本発明の第2実施形態に係るリチウムイオン電池の電極構造の製造方法を示すフローチャートである。 本発明の第3実施形態に係るリチウムイオン電池の電極構造を示す側面概略図である。 本発明の第3実施形態に係るリチウムイオン電池の電極構造の変形例を示す側面概略図である。 本発明の第3実施形態に係るリチウムイオン電池の電極構造の製造方法を示すフローチャートである。 本発明の第3実施形態に係るリチウムイオン電池の電極構造の他の変形例を示す側面概略図である。 本発明の第3実施形態に係るリチウムイオン電池の電極構造の更に他の変形例を示す側面概略図である。 実施例1の電極構造を示す概略断面図である。 実施例7〜10を用いてレート維持率を計測する際の概略側面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係るリチウムイオン電池は、例えば、形態・構造で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など、従来公知のいずれの形態・構造にも適用し得るものである。
また、リチウムイオン電池内の電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、双極型でない(内部並列接続タイプ)電池および双極型(内部直列接続タイプ)電池のいずれにも適用し得るものである。
リチウムイオン電池内の電解質の種類で区別した場合には、電解質に非水系の電解液等の溶液電解質を用いた溶液電解質型電池、電解質に高分子電解質を用いたポリマー電池など従来公知のいずれの電解質のタイプにも適用し得るものである。電解質に高分子電解質を用いたポリマー電池に好ましく適用される。該ポリマー電池は、更に高分子ゲル電解質(単にゲル電解質ともいう)を用いたゲル電解質型電池、高分子固体電解質(単にポリマー電解質ともいう)を用いた固体高分子(全固体)型電池に分けられる。
以下の説明では、本発明の双極型でない(内部並列接続タイプ)リチウムイオン電池につき図面を用いて説明するが、決してこれらに制限されるべきものではない。
図1は、本発明の第1実施形態に係るリチウムイオン電池の電極構造を示す断面概略図、図2は、本発明の第1実施形態に係るリチウムイオン電池の代表的な一実施形態である、双極型でない積層型のリチウムイオン二次電池(以下、単にリチウムイオン電池ともいう)の全体構造を模式的に表した断面概略図である。図3は、同リチウムイオン電池の電極構造を示す拡大断面図、図4は、同リチウムイオン電池の電極構造の他の例を示す拡大断面図である。
図2に示すように、本実施形態のリチウムイオン電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素(電池要素)21が、外装であるラミネートシート29の内部に封止された構造を有する。詳しくは、高分子−金属複合ラミネートシートを電池の外装として用いて、その周辺部の全部を熱融着にて接合することにより、発電要素21を収納し密封した構成を有している。
発電要素21は、正極集電体11の両面に正極活物質層13(電極部)が配置された正極と、電解質層17と、負極集電体12の両面に負極活物質層15(電極部)が配置された負極とを積層した構成を有している。具体的には、1つの正極活物質層13とこれに隣接する負極活物質層15とが、電解質層17を介して対向するようにして、正極、電解質層および負極がこの順に積層されている。これにより、隣接する正極、電解質層および負極は、1つの単電池層19を構成する。従って、本実施形態のリチウムイオン電池10は、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。また、単電池層19の外周には、隣接する正極集電体11と負極集電体12との間を絶縁するためのシール部(絶縁層)(図示せず)が設けられていてもよい。発電要素21の両最外層に位置する最外層正極集電体には、いずれも片面のみに正極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。なお、図2とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層負極集電体が位置するようにし、該最外層負極集電体の片面のみに負極活物質層が配置されているようにしてもよい。
正極集電体11および負極集電体12は、各電極(正極および負極)と導通される正極集電板25および負極集電板27がそれぞれ取り付けられ、ラミネートシート29の端部に挟まれるようにしてラミネートシート29の外部に導出される構造を有している。正極集電板25および負極集電板27はそれぞれ、必要に応じて正極リードおよび負極リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体11および負極集電体12に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
正極活物質層13は、図1に示すように、電解質層17側の第1電極層31(第1電極部)と、正極集電体11側の第2電極層32(第2電極部)とが層状に重なって形成されている。
第1電極層31には、図3に示すように、粒子内に空孔のない粒状活物質33が含まれ、第2電極層32には、粒子内に空孔を有する粒状活物質である多孔体活物質34が含まれている。粒状活物質33および多孔体活物質34は、粒子径が略同一となっている。このような第1電極層31および第2電極層32に電解質が含浸されると、多孔体活物質34の空孔内にも電解質を保持できるため、第2電極層32における単位体積当たりの電解質保持量が、第1電極層31における電解質保持量よりも多くなる。したがって、正極活物質層13の正極集電体11側の活物質へリチウムイオンを十分に供給することができ、電池の高出力化を図ることができる。
すなわち、高容量化のために、膜厚の厚い活物質層を設けると、例えば1C程度までの低レートでは、活物質へのリチウムイオンの受け取り要求速度が遅いため、活物質の形状にかかわらず容量維持率(レート特性)を高く確保できる。しかし、例えば1C以上の高レートでは、活物質へのリチウムイオンの受け取り要求速度が速いために、電解質層17側では対極(負極)からリチウムイオンが十分に供給されるために問題ないが、正極集電体11側では、活物質の反応できる表面積が小さいと、電解質からのリチウムイオンの供給が追いつかなくなり、電池抵抗の増加に繋がって容量維持率が低下する。したがって、正極集電体11側に、表面積の大きい多孔体活物質34や小粒径体等を用いることで、高レートでも容量維持率(レート特性)を高く確保できる。
このように、高レートでは、低電解質層17側と正極集電体11側で反応に偏りが生じ、特に正極集電体11側では、電解質の拡散性の低下から要求出力に応じたリチウムイオンの供給が追いつかない場合がある。これに対し、本実施形態では、第1電極層31よりも多く電解質を保持する第2電極層32が電解質層17から離れて設けられるため、正極活物質層13の正極集電体11側の活物質へリチウムイオンを十分に供給することができ、高出力化が可能となる。
また、活物質層を構成する導電助剤の量やバインダの量、粒間の空隙率を一定にした場合、体積あたりのエネルギー量は、活物質層の内部の空間が多いほど(空隙率が高いほど)減少してしまう。したがって、上述したレート特性の観点から電解質層17側の第1電極層を多孔体とする必要はなく、むしろ正極集電体13側の第2電極層の活物質に表面積の大きい小粒径体や、空間の大きい二次焼結体を使用することが好ましい。
第1電極層31の厚さD1と第2電極層32の厚さD2は、特に制限されないが、第1電極層31の厚さD1が、正極活物質層13の全体の50%以上であって80%未満であることが好ましい。電解質層17側の第1電極層31の割合が大きくなると、エネルギー密度を稼ぐことはできるが、正極集電体11側のリチウムイオンが不足して反応量が低下することで、出力が低下しやすくなる。したがって、第1電極層31の厚さD1の、正極活物質層13の全体厚さに対して占める割合を規定することで、エネルギー密度の向上と出力の向上をバランスよく最適化することができる。
また、図4に示すように、第1電極層31および第2電極層32に、導電性を補助するための導電助剤35を混入させることができるが、第2電極層32に使用する導電助剤35を、第1電極層31に使用する導電助剤35よりも多くすることができる。このようにして正極集電体11側の導電性を高めることで、正極集電体11側にある活物質(多孔体活物質34)にかかる抵抗値を下げることができる。図5は、電解質層17と正極集電体11の間の正極活物質層13における抵抗を、一例として5つの活物質反応抵抗が並ぶようにモデル化した回路図である。抵抗rL1〜rL4は、電解質の拡散抵抗rL1〜rL4(リチウムイオンの移動抵抗)、抵抗rE1〜rE4は、電子抵抗rE1〜rE4、抵抗rR1〜rR4は、活物質反応抵抗rR1〜rR4である。
本実施形態では、第2電極層32の空隙率を高めることで、電解質の拡散抵抗rL1〜rL4(リチウムイオンの移動抵抗)のうち、正極集電体11に近い側の拡散抵抗(例えば、拡散抵抗rL3,rL4)を低減させて、経路Aにおける抵抗を極力低減させている。拡散抵抗rL1〜rL4を抑えずとも、正極活物質層13における電子抵抗rE1〜rE4を通る経路Bによれば、電流を流れやすくできるが、この場合、正極集電体側の活物質反応抵抗(例えば、活物質反応抵抗rR4,rR5)へ電流が流れ難くなり、正極活物質における反応が電解質層17側に偏ってしまう。しかし、第2電極層32に使用する導電助剤35を、第1電極層31に使用する導電助剤35よりも多くすることで、正極活物質層13側の電子抵抗(例えば、電子抵抗rE1,rE2)の抵抗を正極集電体側の電子抵抗(例えば、電子抵抗rE3,rE4)の抵抗よりも高くすることができる。これにより、各層の抵抗を均一化して活物質の反応の偏りを抑制することができ、さらには、電極の劣化を抑制できる。
多孔体活物質34は、多孔体活物質34よりも小さな1次粒子を凝集させることで、内部に空孔を有する2次粒子として製造できる。第2電極層32の多孔体活物質34の大きさと第1電極層31の粒状活物質33の大きさは、異なってもよいが、同程度の大きさであることがより好ましい。第2電極層32を構成する多孔体活物質34と、第1電極層31を構成する粒状活物質33の大きさが異なる場合には、第1電極層31および第2電極層32を一度のプレスで同時に形成することが困難であるが、同程度である場合には、一度のプレスで、第1電極層31および第2電極層32の狙いの設計膜厚を確保でき、空孔率を変化させる膜厚作成においても簡略化が可能である。これにより、加工効率を向上させて、コストを低減できる。
なお、第2電極部は、かならずしも層状に形成されなくともよい。例えば、図6は、本発明に係る実施形態の正極活物質層36(電極部)のさらに他の例を示す断面図であるが、第1電極層37(第1電極部)の正極集電体11側に、第2電極部38が、複数に点在する構成とすることもできる。
また、第2電極部は、かならずしも正極集電体側で正極集電体と接して設けられる必要はなく、電解質層から離れて設けられていればよい。また、正極活物質層が、第1電極部と第2電極部の他に、更に他の電極部を有してもよい。また、第1電極層31の粒状活物質33にも空孔が形成されてもよいが、第2電極層32における粒状活物質内の空孔率が、第1電極層31における粒状活物質33内の空孔率よりも大きいことが望ましい。なお、第1電極部および第2電極部における空隙率および活物質内空孔率の両方を考慮した上で、第2電極層32における単位体積当たりの電解質保持量が、第1電極層31における電解質保持量よりも多くなればよい。ここでいう空隙率は、粒子(活物質だけでなく、導電助剤、バインダ等を含む)間の空隙の体積比率を表し、粒子内(活物質内)の空孔の体積を含んでいない。
また、本実施形態では、正極活物質層13が、第1電極層31および第2電極層32を備える構造となっているが、負極活物質層15が、第1電極部および第2電極部を備える構造とすることも可能である。
図7は、本発明に係る実施形態の電極構造のさらに他の例を示す断面図である。正極活物質層13は、図7に示すように、電解質層17側の第1電極層41(第1電極部)と、正極集電体11側の第2電極層42(第2電極部)とが層状に重なって形成されている。第1電極層41および第2電極層42は、同一の粒状活物質43を有するが、異なる導電助剤45,46を含むことで、単位体積当たりの電解質保持量が異なっている。一例として、第1電極層41は、粒子状導電助剤45を含み、第2電極層42は、繊維状導電助剤46を含んでいる。これにより、第1電極層41よりも第2電極層42において空隙率が大きくなり、第2電極層42における単位体積当たりの電解質保持量が、第1電極層41よりも多くなっている。なお、導電助剤は、かならずしも第1電極層41にて粒子状導電助剤45とし、第2電極層42にて繊維状導電助剤46とする必要はなく、第2電極層42において空隙率が大きくなればよい。例えば、第2電極層42および第1電極層41に用いられる導電助剤の形状の種類は同一とし、第2電極層42における導電助剤の大きさを大きくしてもよい。
本明細書において、「電解質」とは、溶媒中に溶解した際に、陽イオンと陰イオンに電離する物質を意味する。なお、下記に詳述するが、電解質が全固体電解質である場合には、「電解質(1)」または「電解質(2)」は、全固体型電解質のみを意味する。また、電解質がゲル電解質である場合には、「電解質(1)」または「電解質(2)」は、マトリックスポリマー中に電解液を保持させたゲル電解質(高分子ゲル電解質)を意味する。
<正極/負極活物質層>
本発明において、負極活物質層および正極活物質層で使用される電解質の形態は特に制限されず、電解質は、液体、ゲル、または固体のいずれの形態であってもよい。ここで、「固体高分子電解質」とは、詳しくは、後述するが、高分子ゲル電解質、固体高分子型電解質、無機固体型電解質すべてを含めるものとする。
電解質としては、具体的には、従来公知の材料として、(a)ゲル電解質(高分子ゲル電解質)、(b)全固体高分子電解質(高分子固体電解質、無機固体型電解質)、(c)液体電解質(電解液)などが好ましく挙げられる。以下、これらの電解質について詳述する。
(a)ゲル電解質(高分子ゲル電解質)
ゲル電解質(高分子ゲル電解質)とは、マトリックスポリマー(ホストポリマー)中に電解液を保持させたものをいう。電解質としてゲル電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、集電体への電解質の流出をおさえ、各層間のイオン伝導性を遮断することが容易になる点で優れている。
上記ゲル電解質(高分子ゲル電解質)は、下記に詳述するように、PEO、PPOなどの全固体型高分子電解質に、通常リチウムイオン電池で用いられる電解液を含ませることにより作製される。また、PVDF、PAN、PMMAなど、リチウムイオン伝導性をもたない高分子の骨格中に、電解液を保持させたものも、ゲル電解質(高分子ゲル電解質)に含まれる。ゲル電解質を構成するポリマーと電解液との比率は、特に限定されない。ポリマー100%を全固体高分子電解質、電解液100%を液体電解質とすると、その中間体はすべてゲル電解質(高分子ゲル電解質)の概念に含まれる。また、セラミックなどの無機固体などイオン伝導性を持つ無機固体型電解質も全固体型電解質にあたる。よって、上記高分子ゲル電解質、固体高分子型電解質、無機固体型電解質すべてを含めて固体電解質とする。
ゲル電解質として用いるマトリックスポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシドを主鎖または側鎖に持つポリマー(PEO)、ポリプロピレンオキシドを主鎖または側鎖に持つポリマー(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリル酸エステル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(PVDF−HFP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(メチルアクリレート)(PMA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などが挙げられる。また、上記のポリマー等の混合物、変成体、誘導体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体なども使用できる。これらのうち、PEO、PPOおよびそれらの共重合体、PVDF、PVDF−HFPを用いることが望ましい。
また、電解液(可塑剤)としては通常リチウムイオン電池に用いられる電解液を用いることが可能である。かかる電解液とは、電解質塩を溶媒に溶かしたものであり、電解質塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiSbF、LiAlCl、Li10Cl10、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF、LiSCN等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、Li(CFSON、LiBOB(リチウムビスオキサイドボレート)、LiBETI(リチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニルイミド);Li(CSONとも記載)等の有機酸陰イオン塩などが挙げられる。これらの電解質塩は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(GBL)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、スルホラン、アセトニトリルなどが挙げられる。これらのうち、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートが好ましい。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、電解液中のリチウム塩の濃度は、特に制限されないが、通常、0.5〜2.5モル/リットル程度が好ましい。
本発明におけるゲル電解質中の電解液の割合としては、特に制限されるべきものではない。通常、マトリックスポリマーの含量は、マトリックスポリマーと電解液との合計に対して、0.1〜50質量%であり、より好ましくは1〜30質量%である。特に、PVDFをマトリックスポリマーとして使用する場合には、PVDFの含量は、マトリックスポリマーと電解液との合計に対して、1〜20質量%であり、より好ましくは1〜15質量%である。
ここで、電解質(1)または(2)がゲル電解質である場合に、ゲル電解質を含む活物質層の形成方法は、特に制限されず、従来公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾して適用できる。例えば、(ア)冷却によってゲル化可能なポリマーが含有された電解液を加温状態で使用して常温までポリマーを冷却する方法、(イ)モノマーが含有された電解液を使用してモノマーを重合させる方法などを採用することができる。
上記方法のうち、(ア)の方法では、通常、活物質層表面に電解液を塗付して適度の時間放置するだけで十分であるが、活物質層の空隙に電解液が含浸する速度を高めるため、圧入や真空含浸などの操作を行ってもよい。ゲル電解質は、活物質層内の空隙を完全に充填して形成されることが好ましいが、ある程度の空隙が残留しても電池特性に大きな支障はない。電池特性が低下する程の空隙が生じる場合は、上述の様な含浸速度を高める方法を採用するのが好ましい。なお、上記(ア)で使用されるゲル化可能なポリマーは、上記マトリックスポリマーから適宜選択される。具体的には、PMMA、PEMA、PMA、PEA、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、PVDF、PVDF−HFP、PANなどが挙げられる。
また、上記(イ)の方法は、電解液の粘度が低いため、活物質層の空隙中に電解液を含浸させるのが容易である。活物質層の厚さは通常1mm以下であるため、電解液の含浸は速やかに完了する。また、いずれの方法による場合も塗膜にカレンダー処理を加えることにより、塗膜を圧密し活物質の充填量を高めることができる。なお、上記(イ)で使用されるモノマーは、所望のゲル電解質の種類によって適宜選択される。重合の制御が容易で且つ重合時に副生成物が発生しない付加重合により生成される高分子が好適である。特に、反応性不飽和基含有モノマーの付加重合により生成される高分子は、その生産性にも優れる。具体的には、反応性不飽和基含有モノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、エトキシエチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエトキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロニトリル等が挙げられる。また、上記モノマーの重合方法としては、熱、紫外線、電子線などによる公知の方法が適用できる。生産性の観点から紫外線による方法が好ましい。この場合、反応を効果的に進行させるため、電解液に紫外線に反応する重合開始剤を配合することも出来る。紫外線重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンジル、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ビアセチル、ベンゾイルパーオキザイド等が挙げられる。
より具体的には、溶媒に電解質塩を溶解させて、電解液を調製する。この電解液に、マトリクスポリマーおよび重合開始剤を添加して、電解質前駆体溶液を調製する。次に、活物質層を上記電解質前駆体溶液に浸漬した後、余分な電解質前駆体溶液を除去することにより、含浸活物質層を得る。さらに、含浸活物質層の電解質を重合する。ここで、活物質層の電解質前駆体溶液への浸漬条件は、活物質層に電解質前駆体溶液が十分染み込むような条件であれば特に制限されない。具体的には、活物質層を、電解質前駆体溶液中に、15〜60℃、より好ましくは20〜50℃の温度で、1〜120分間、より好ましくは5〜60分間、浸漬することが好ましい。また、所定条件で浸漬した後は、余分な電解質前駆体溶液を除去するが、この際に使用できる方法としては、特に制限されず、公知の方法が使用できる。例えば、電解質前駆体溶液が染み込んだ活物質層を、履形フィルムで挟んだ後、ロールなどで軽くしごく方法;電解質前駆体溶液が染み込んだセパレータ基材を軽く絞る方法などが好ましく使用できる。
(b)全固体型電解質(高分子固体電解質、無機固体型電解質)
電解質として全固体型電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、集電体層への電解質の流出がなくなり各層間のイオン伝導性を遮断することが可能になる点で優れている。
全固体型電解質としては、例えば、PEO、PPO、これらの共重合体などの公知の高分子固体電解質、セラミックなどのイオン伝導性を持つ無機固体型電解質が挙げられる。高分子固体電解質中には、イオン伝導性を確保するためにリチウム塩が含まれる。リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiSbF、LiAlCl、Li10Cl10、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF、LiSCN等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、Li(CFSON、LiBOB(リチウムビスオキサイドボレート)、LiBETI(リチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニルイミド);Li(CSONとも記載)等の有機酸陰イオン塩などが挙げられる。好ましくは、LiBF、LiPF、LiN(SOCF、LiN(SOが使用できる。なお、上記リチウム塩は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
(c)液体電解質(電解液)
電解液とは、電解質塩を溶媒に溶かしたものが挙げられる。ここで、電解質塩としては、特に制限されない。具体的には、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiSbF、LiAlCl、Li10Cl10、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF、LiSCN等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、Li(CFSON、LiBOB(リチウムビスオキサイドボレート)、LiBETI(リチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニルイミド);Li(CSONとも記載)等の有機酸陰イオン塩などが挙げられる。これらの電解質塩は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、溶媒もまた、特に制限されない。具体的には、溶媒としては、EC、PC、GBL、DMC、DECなどが挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
上述したように、活物質層は、集電体上に形成され、充放電反応の中心を担う活物質を含む層である。
ここで、正極活物質は、放電時にイオンを吸蔵し、充電時にイオンを放出する組成を有する。好ましい一例としては、遷移金属とリチウムとの複合酸化物であるリチウム−遷移金属複合酸化物が挙げられる。具体的には、LiCoOなどのLi・Co系複合酸化物、LiNiOなどのLi・Ni系複合酸化物、スピネルLiMnなどのLi・Mn系複合酸化物、LiFeOなどのLi・Fe系複合酸化物およびこれらの遷移金属の一部を他の元素により置換したものなどが使用できる。これらリチウム−遷移金属複合酸化物は、反応性、サイクル特性に優れ、低コストな材料である。そのためこれらの材料を電極に用いることにより、出力特性に優れた電池を形成することが可能である。この他、前記正極活物質としては、LiFePOなどの遷移金属とリチウムのリン酸化合物や硫酸化合物;V、MnO、TiS、MoS、MoOなどの遷移金属酸化物や硫化物;PbO、AgO、NiOOHなど、を用いることもできる。上記正極活物質は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。正極活物質の平均粒子径は、特に制限されないが、正極活物質の高容量化、反応性、サイクル耐久性の観点からは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜20μmである。このような範囲であれば、二次電池は、高出力条件下での充放電時における電池の内部抵抗の増大が抑制され、充分な電流を取り出しうる。なお、正極活物質が2次粒子である場合には該2次粒子を構成する1次粒子の平均粒子径が10nm〜1μmの範囲であるのが望ましいといえるが、本発明では、必ずしも上記範囲に制限されるものではない。ただし、製造方法にもよるが、正極活物質が凝集、塊状などにより2次粒子化したものでなくても良いことはいうまでもない。かかる正極活物質の粒径および1次粒子の粒径は、レーザー回折法を用いて得られたメディアン径を使用できる。なお、正極活物質の形状は、その種類や製造方法等によって取り得る形状が異なり、例えば、球状(粉末状)、板状、針状、柱状、角状などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、いずれの形状であれ問題なく使用できる。好ましくは、充放電特性などの電池特性を向上し得る最適の形状を適宜選択するのが望ましい。
また、負極活物質は、放電時にイオンを放出し、充電時にイオンを吸蔵できる組成を有する。負極活物質は、リチウムを可逆的に吸蔵および放出できるものであれば特に制限されないが、負極活物質の例としては、SiやSnなどの金属、或いはTiO、Ti、TiO、もしくはSiO、SiO、SnOなどの金属酸化物、Li4/3Ti5/3もしくはLiMnNなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物、Li−Pb系合金、Li−Al系合金、Li、または天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、もしくはハードカーボンなどの炭素材料などが好ましく挙げられる。また、負極活物質は、リチウムと合金化する元素を含むことが好ましい。リチウムと合金化する元素を用いることにより、従来の炭素系材料に比べて高いエネルギー密度を有する高容量及び優れた出力特性の電池を得ることが可能となる。上記負極活物質は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
上記のリチウムと合金化する元素としては、以下に制限されることはないが、具体的には、Si、Ge、Sn、Pb、Al、In、Zn、H、Ca、Sr、Ba、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Au、Cd、Hg、Ga、Tl、C、N、Sb、Bi、O、S、Se、Te、Cl等が挙げられる。これらの中でも、容量およびエネルギー密度に優れた電池を構成できる観点から、炭素材料、ならびに/またはSi、Ge、Sn、Pb、Al、In、およびZnからなる群より選択される少なくとも1種以上の元素を含むことが好ましく、炭素材料、Si、またはSnの元素を含むことが特に好ましい。これらは1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。
負極活物質の平均粒子径は、特に制限されないが、負極活物質の高容量化、反応性、サイクル耐久性の観点からは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜20μmである。このような範囲であれば、二次電池は、高出力条件下での充放電時における電池の内部抵抗の増大が抑制され、充分な電流を取り出しうる。なお、負極活物質が2次粒子である場合には該2次粒子を構成する1次粒子の平均粒子径が10nm〜1μmの範囲であるのが望ましいといえるが、本発明では、必ずしも上記範囲に制限されるものではない。ただし、製造方法にもよるが、負極活物質が凝集、塊状などにより2次粒子化したものでなくても良いことはいうまでもない。かかる負極活物質の粒径および1次粒子の粒径は、レーザー回折法を用いて得られたメディアン径を使用できる。なお、負極活物質の形状は、その種類や製造方法等によって取り得る形状が異なり、例えば、球状(粉末状)、板状、針状、柱状、角状などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、いずれの形状であれ問題なく使用できる。好ましくは、充放電特性などの電池特性を向上し得る最適の形状を適宜選択するのが望ましい。
活物質層には、必要であれば、その他の物質が含まれてもよい。例えば、導電助剤、バインダ等が含まれうる。また、イオン伝導性ポリマーが含まれる場合には、前記ポリマーを重合させるための重合開始剤が含まれてもよい。
導電助剤とは、活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト等のカーボン粉末や、気相成長炭素繊維(VGCF;登録商標)等の種々の炭素繊維、膨張黒鉛などが挙げられる。しかし、導電助剤がこれらに限定されないことは言うまでもない。
バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリイミド、PTFE、SBR、合成ゴム系バインダ等が挙げられる。しかし、バインダがこれらに限定されないことはいうまでもない。また、バインダとゲル電解質として用いるマトリックスポリマーとが同じ場合には、バインダを使用する必要はない。
活物質層に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、リチウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
<集電体>
本発明において、集電体の材質は、特に限定されないが、具体的な例としては、例えば、鉄、クロム、ニッケル、マンガン、チタン、モリブデン、バナジウム、ニオブ、アルミニウム、銅、銀、金、白金およびカーボンよりなる群から選ばれてなる少なくとも1種類の集電体材料、より好ましくはアルミニウム、チタン、銅、ニッケル、銀、またはステンレス(SUS)よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種類の集電体材料などが好ましく挙げられ、これらは単層構造(例えば、箔の形態)で用いてもよいし、異なる種類の層で構成された多層構造で用いてもよいし、これらで被覆されたクラッド材(例えば、ニッケルとアルミニウムのクラッド材、銅とアルミニウムのクラッド材)を用いてもよい。あるいは、これらの集電体材料の組み合わせのめっき材なども好ましく使える。また、上記集電体材料である金属(アルミニウムを除く)表面に、他の集電体材料であるアルミニウムを被覆させた集電体であってもよい。また、場合によっては、2つ以上の上記集電体材料である金属箔を張り合わせた集電体を用いてもよい。上述の材質は、耐食性、導電性、または加工性などに優れる。集電体の一般的な厚さは、5〜50μmである。ただし、この範囲を外れる厚さの集電体を用いてもよい。
集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。大型の電池に用いられる大型の電極を作製するのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。小型の電極を作製するのであれば、面積の小さな集電体が用いられる。
集電体表面上への正極層(または負極層)の形成方法は、特に制限されず、公知の方法が同様にして使用できる。例えば、上記したように、正極活物質(または負極活物質)、ならびに必要であれば、イオン伝導性を高めるための電解質塩、電子伝導性を高めるための導電助剤、および結着剤を、適当な溶剤に分散、溶解などして、正極活物質液(または負極活物質液)を調製する。これを集電体上に塗布、乾燥して溶剤を除去した後、プレスすることによって、正極層(または負極層)が集電体上に形成される。この際、溶剤としては、特に制限されないが、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、シクロヘキサン、ヘキサンなどが用いられうる。結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を採用する場合には、NMPを溶媒として用いるとよい。
上記方法において、正極活物質液(または負極活物質液)を集電体上に塗布・乾燥した後、プレスする。この際、プレス条件を調節することにより、正極層(または負極層)の空隙率が制御されうる。
プレス処理の具体的な手段やプレス条件は特に制限されず、プレス処理後の正極層(または負極層)の空隙率が所望の値となるように、適宜調節されうる。プレス処理の具体的な形態としては、例えば、ホットプレス機やカレンダーロールプレス機などが挙げられる。また、プレス条件(温度、圧力など)も特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。
正極層および負極層の厚さは、特に制限されないが、10〜200μm、特に50〜150μmとするのがよい。この際、正極層および負極層の厚さは、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
<電解質層>
本発明の非水電解質二次電池においては、正極と負極との間に電解質層が設けられる。ここで、電解質層は、セパレータを有することが好ましい。
また、セパレータの構造は特に制限されず、1層のみ(セパレータ自体が電解質層を構成する)であっても、あるいは2層以上の積層体であってもよい。
ここで、セパレータとしては、特に制限されず、公知のセパレータ基材が使用できる。例えば、微孔性ポリエチレンフィルム、微孔性ポリプロピレンフィルム、微孔性エチレン−プロピレンコポリマーフィルムなどのポリオレフィン系樹脂、ならびにアラミド、ポリイミド、セルロースなどの多孔膜または不織布、これらの積層体などが挙げられる。これらは、電解質(電解液)との反応性を低く抑えることができるという優れた効果を有する。他に、ポリオレフィン系樹脂不織布またはポリオレフィン系樹脂多孔膜を補強材層に用い、前記補強材層中にフッ化ビニリデン樹脂化合物を充填した複合樹脂膜なども挙げられる。
セパレータ基材の厚さは、使用用途に応じて適宜決定すればよいが、自動車等のモータ駆動用二次電池などの用途においては、1〜100μm程度とすればよい。また、セパレータ基材の多孔度、大きさなどは、得られる二次電池の特性を考慮して、適宜決定すればよい。例えば、セパレータ基材の空孔率は、好ましくは30〜80%、より好ましくは40〜70%である。また、セパレータ基材の曲路率は、好ましくは1.2〜2.8である。このような多孔度を有するセパレータ基材であれば、電解液及びセパレータ層の電解質を十分量導入することができ、かつセパレータ層の強度も十分維持できる。
また、セパレータに含浸する電解質は、特に制限されず、公知の電解質が使用できる。具体的な電解質としては、上記負極/正極活物質層で記載したのと同様のものが使用できるため、ここでは説明を省略する。
<リチウムイオン二次電池の外観構成>
図8は、本発明に係るリチウムイオン電池の代表的な実施形態である積層型の扁平なリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
図8に示すように、積層型の扁平なリチウムイオン二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素(電池要素)57は、リチウムイオン二次電池50の電池外装材52によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素(電池要素)57は、正極タブ58及び負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素(電池要素)57は、先に説明した図2に示すリチウムイオン二次電池10の発電要素(電池要素)21に相当するものであり、正極(正極活物質層)13、電解質層17および負極(負極活物質層)15で構成される単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。
なお、本発明のリチウムイオン電池は、図2に示すような積層型の扁平な形状のものに制限されるものではなく、巻回型のリチウムイオン電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素(電池要素)がアルミニウムラミネートフィルムで外装される。当該形態により、軽量化が達成されうる。
また、図8に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではなく、正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ58と負極タブ59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図8に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
本発明のリチウムイオン電池は、電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
本実施形態によれば、電解質層17と接する第1電極部と、電解質層17から離れて第1電極部よりも体積当たりの電解質の保持量が多い第2電極部とを有するため、高容量化のために電極部の膜厚を増加させつつも、集電体側の活物質へリチウムイオンを十分に供給して高出力化が可能となる。
また、第1電極層31および第2電極層32が、電解質層17側および集電体側に層状に重なって形成されれば、電極構造をプレス等により容易に作製でき、かつ面内で均一な出力を得ることが可能となって電極の劣化を抑制できる。
また、第2電極部に含まれる多孔体活物質34(粒状活物質)内の空孔率が、第1電極部に含まれる粒状活物質33内の空孔率よりも大きければ、第2電極部において電解質をより多く保持することができる。
また、第1電極部に設けられる粒状活物質33と、前記第2電極部に設けられる多孔体活物質34(粒状活物質)の大きさが等しければ、第1電極部および第2電極部を、一度のプレスで同時に形成することができ、加工効率を向上させてコストを低減できる。
また、第1電極部に含まれる導電助剤の形状が、第2電極部に含まれる導電助剤の形状よりも大きければ、第2電極部において空隙率が大きくなり、第2電極部において電解質を多く保持することができる。
また、第1電極部の厚さを、正極活物質層13の全体厚さの50%以上であって80%未満とし、第1電極層31の厚さD1の、正極活物質層13の全体厚さに対して占める割合を規定することで、エネルギー密度の向上と出力の向上をバランスよく最適化することができる。
また、第1電極部に含まれる導電助剤の量を、第2電極部に含まれる導電助剤の量よりも多くして正極活物質層13の正極集電体11側での導電性を高めることで、正極集電体11側にある活物質(多孔体活物質34)にかかる抵抗値を下げることができる。同時に、正極活物質層13の電解質層17側での導電性を下げることで、各層の抵抗を均一化して活物質の反応の偏りを抑制することができ、さらには、電極の劣化を抑制できる。
また、上述した電極構造を電池に適用することで、電極部の膜厚を増加させつつも集電体側の活物質へリチウムイオンを十分に供給することができ、電池の高容量化および高出力化が可能となる。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係るリチウムイオン電池は、電極構造のみが、第1実施形態と異なる。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する部位については同一の符号を使用し、重複を避けるため、その説明を省略する。
第2実施形態に係るリチウムイオン電池の正極活物質層70は、図9に示すように、多孔質体である不織布71に、粒状活物質72が保持されて形成されている。不織布71は、活物質層の3次元的な骨格として機能しつつ、粒状活物質72を保持している。そして、正極活物質層70に保持される粒状活物質72は、正極集電体11側よりも電解質層17側に相対的に多くなっている。これにより、正極活物質層70は、正極集電体11側の空隙率が、電解質層17側の空隙率よりも大きい。
不織布71には、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポエチレンテレフタレート、セルロース、ナイロン等の非導電性材料を使用できるが、多孔質体であれば材料は限定されず、導電性を備えたり、または電解液ぬれ性機能を付与してもよい。また、不織布71以外の多孔質体であってもよい。
このような電極構造を製造するには、まず、図10に示すように、粒状活物質、支持塩、必要に応じて導電助剤、および溶媒を含む電極スラリーを、不織布71の一方面側から注入して含浸させる(工程S1)。次に、溶媒を取り除き、所定の厚さにプレスして活物質層前駆体73を形成する(工程S2)。このように形成された活物質層前駆体73は、電極スラリーを注入した面側に、粒状活物質72が多く保持されるため、電極スラリーを注入した面側と反対側の空隙率が大きくなる。この後、活物質層前駆体73の空隙率が大きい側に正極集電体11を配置し(工程S3)、空隙率が調整された電極部を備える電極構成を得ることができる。
第2実施形態における製造方法によれば、電極スラリーを多孔質体(不織布71)に注入して活物質層前駆体73を形成した後、活物質層前駆体73の空隙率が大きい側に集電体(正極集電体11)を配置するため、集電体側の空隙率が高い電極部を有する電極構造を容易に製造できる。
また、電極スラリーが注入された多孔質体(不織布71)をプレスして活物質層前駆体73を形成するため、加圧するだけで電極部における空隙率を容易に調整することができる。
また、第2実施形態における電極構造によれば、正極活物質層70の電解質層側の部分(第1電極部)および集電体側の部分(第2電極部)が、不織布71および複数の粒状活物質72を備え、集電体側の空隙率が電解質層側の空隙率よりも大きい。したがって、不織布71により活物質を保持するため、第1実施形態のように、内部に空孔を有する多孔体活物質34を用いる必要がなく、活物質を選ぶことなしに、不織布71によって電解質を保持する空間を確保できる。また、不織布71が骨格として機能するため、空隙率が高い集電体側においても、空間保持性を向上させることができる。また、多孔体活物質34を用いないため、例えばグラファイト等を粉砕して造粒することで多孔体活物質34とする際に、皮膜のない面が形成されて電解液の分解が促進される可能性を抑制できる。
また、多孔質体が不織布71であるため、電極構造の製造が容易となり、かつプレスによって電極部の空隙率を容易に調整できる。
また、上述した電極構造を電池に適用することで、電極部の膜厚を増加させつつも集電体側の活物質へリチウムイオンを十分に供給することができ、電池の高容量化および高出力化が可能となる。
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係るリチウムイオン電池は、電極構造が、多孔質体(不織布)に粒状活物質を保持する点で第2実施形態と共通するが、2つの多孔質体(不織布)を有している点で、第2実施形態と異なる。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する部位については同一の符号を使用し、重複を避けるため、その説明を省略する。
第3実施形態に係るリチウムイオン電池の正極活物質層80は、図11に示すように、電解質層17側の第1電極層81(第1電極部)と、正極集電体11側の第2電極層82(第2電極部)とが層状に重なって形成されている。
第1電極層81および第2電極層82は、各々が、異なる不織布83,84に同一の粒状活物質85を保持して形成されており、第2電極層82の空隙率が、第1電極層81の空隙率よりも大きい。このような第1電極層81および第2電極層82が重なることで、正極活物質層80は、正極集電体11側の空隙率が、電解質層17側の空隙率よりも大きくなっている。
このような電極構造は、図11に示すように、空隙率の異なる不織布83,84を適用することで、容易に製造することができる。
または、図12に示す他の例のように、第1電極層91および第2電極層92に同程度の空隙率の不織布93,94を適用し、同様の電極スラリー(粒状活物質95)を、第2電極層92の不織布94よりも第1電極層91の不織布83の方へ多く含浸させることで、第2電極層92の空隙率を大きくすることもできる。
または、図13に示すように、同様の不織布に同程度の電極スラリーを含浸させ(工程S4)、各々を異なる条件(クリアランスや加圧力)でプレスすることで空隙率の異なる活物質層前駆体を作製し(工程S5)、空隙率の高い活物質層前駆体を正極集電体11側に配置する(工程S6)ことでも製造できる。
または、図14に示す電極構造の他の例のように、第1電極層101、第2電極層102および第3電極層103を設けてもよい。各々の電極層には同程度の空隙率の不織布104,105,106を適用し、正極集電体11側の電極層ほど空隙率が大きくなるように、粒状活物質107が保持されている。また、電極部を4層以上で構成することも可能である。
また、図15に示す電極構造の更に他の例のように、正極集電体11側の第2電極層112の多孔質体116に保持される粒状活物質114の径を、第1電極層111の多孔質体115に保持される粒状活物質113の径よりも小さくすることもできる。すなわち、第1実施形態のように多孔質体(不織布)が存在しない場合、粒径の小さい粒状活物質を凝集するためにプレスすると、隙間が詰まり十分な反応領域を保つことが困難であるが、多孔質体115,116が存在することで、集電体側の第2電極層112に粒径が小さい粒状活物質114を適用できる。粒径が小さい粒状活物質114は、反応面積が大きいため、集電体側に適用することで、反応面積を高く保ちつつ空隙を維持することができ、電池の高出力化を図ることができる。
第3実施形態における製造方法によれば、電極スラリーが含浸された複数の多孔質体を異なる圧力でプレスし、形成された活物質層前駆体を空隙率が大きい順に正極集電体11に配置できるため、空隙率の異なる活物質層前駆体を積層するだけで、集電体側の空隙率が高い電極部を有する電極構造を容易に製造できる。
また、図15に示すように、粒径の小さい粒状活物質114を含む活物質層前駆体を正極集電体11に近い側に配置することで、反応面積が大きい粒状活物質114により、集電体側の反応面積を高く保ちつつ空隙を維持することができ、電池の高出力化を図ることができる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
図11は、実施例1の電極構造を示す概略断面図である。実施例1では、図15に示すように、正極活物質層61を、第1電極層62、第2電極63および第3電極層64の3層構造とした。第1電極層62は、電解質層側に配置し、第3電極層64は、正極集電体側に配置した。第1電極層62、第2電極層63および第3電極層64の活物質には、粒子径D50(50%累積粒子径)が10μmの粒状活物質であるマンガン酸リチウムLiMnを用いた。
第1電極層62には、粒状活物質65であるマンガン酸リチウムLiMnを80wt%、導電助剤としてHS−100(登録商標、電気化学工業社製)を10wt%、バインダとしてPVDFを10wt%配合した。第1電極層62の厚さは、33μmとした。
第2電極層63には、粒状活物質65であるマンガン酸リチウムLiMnを80wt%、導電助剤としてHS−100を5wt%とVGCF(登録商標、昭和電工株式会社製)を5wt%、バインダとしてPVDFを10wt配合した。第2電極層63の厚さは、34μmとした。
第3電極層64には、粒状活物質65であるマンガン酸リチウムLiMnを80wt%、導電助剤としてVGCFを10wt%、バインダとしてPVDFを10wt%配合した。第3電極層64の厚さは、33μmとした。
HS−100は、粒状のアセチレンブラックであり(図11中の符号66参照)、VGCFは炭素繊維である(図11中の符号67参照)。したがって、導電助剤としてHS−100のみを含む第1電極層62よりも、HS−100とVGCFの両方を含む第2電極層63の方が空隙率が大きい。さらに、導電助剤としてHS−100とVGCFの両方を含む第2電極層63よりも、VGCFのみを含む第3電極層64の方が空隙率が大きい。したがって、電解質を活物質層に含浸させると、第1電極層62よりも第2電極層63においてより多くの電解質が保持され、第2電極層63よりも第3電極層64においてより多くの電解質が保持される。したがって、第2電極層63および第3電極層64が、単位体積当たりに第1電極層62(第1電極部)よりも多くの電解質を含む第2電極部として機能している。
対極となる負極にはリチウムメタルを用い、電解質には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)を、2:3の体積比で混合して用いた。
比較例1は、正極として1層のみの電極層を備え、この電極層には、粒子径D50が10μmの粒子状活物質であるマンガン酸リチウムLiMnを80wt%、導電助剤としてHS−100を10wt%、バインダとしてPVDFを10wt%配合した。電極層の厚さは、100μmとした。
対極となる負極にはリチウムメタルを用い、電解質には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)を、2:3の体積比で混合して用いた。
実施例1および比較例1におけるレート特性およびエネルギー密度を下記表1に示す。実施例1および比較例1の電極層の膜厚を表2に示す。なお、レート特性は、実施例1および比較例1の電池を0.2Cで充放電し、10C/0.2C放電容量におけるレート特性を相対値(%)で示した。結果として、実施例1において、正極集電体の近傍において空隙率を高くして電解質の保持率を高くすることで、比較例1よりも高いレート特性を得られることが確認できた。
Figure 2011009203
Figure 2011009203
次に、実施例2〜6および比較例2,3について説明する。実施例2〜6では、図3に示す正極活物質層13の構造と同様に、正極活物質層を第1電極層および第2電極層の2層構造とした。第1電極層は、電解質層側に配置し、第2電極層は、正極集電体側に配置した。第1電極層には、粒子内に空孔のない粒子内空孔率0%の粒状活物質であるマンガン酸リチウムLiMnを配合した。この粒状活物質の粒子径D50は、10μmとした。第2電極層には、粒子内に空孔を有する粒子内空孔率25%の多孔体活物質であるマンガン酸リチウムLiMnを配合した。この多孔体活物質の粒子径D50は、10μmとした。対極となる負極にはリチウムメタルを用いて、電池とした。
多孔体活物質は、マンガン酸リチウムを一旦粉砕して一次粒子とした後、焼成して凝集させて、粒内に空孔を持つ二次粒子として作成した。空孔は、粉砕した際の一次粒子の大きさと焼成時間で制御可能であり、空孔率が25%程度になるように、粒子径D50が1μmのマンガン酸リチウム片(一次粒子)を大気雰囲気炉で850℃で7時間焼成して作成した。空孔率は、水銀ポロシメータより水銀の圧入する量から判断した。
実施例2〜5および比較例2〜4における第1電極層および第2電極層には、活物質であるマンガン酸リチウムLiMnを80wt%、導電助剤としてHS−100を10wt%、バインダとしてPVDFを10wt%配合した。
実施例6における第1電極層には、活物質であるマンガン酸リチウムLiMnを85wt%、導電助剤としてHS−100を5wt%、バインダとしてPVDFを10wt%配合した。実施例6における第2電極層には、活物質であるマンガン酸リチウムLiMnを75wt%、導電助剤としてHS−100を15wt%、バインダとしてPVDFを10wt%配合した。
実施例2では、電解質層の全厚を100μmとし、第1電極層の厚さを45μm、第2電極層の厚さを55μmとした。第1電極層と第2電極層の質量比を50:50、第1電極層の空隙率を30%、第2電極層の空隙率を30%とした。なお第2電極層の多孔体活物質は、粒子内に空孔を有するが、ここでいう空隙率には、多孔体活物質内の空孔の体積は含まれない。
実施例3では、電解質層の全厚を100μmとし、第1電極層の厚さを66μm、第2電極層の厚さを34μmとした。第1電極層と第2電極層の質量比を70:30、第1電極層の空隙率を30%、第2電極層の空隙率を30%とした。
実施例4では、電解質層の全厚を100μmとし、第1電極層の厚さを77μm、第2電極層の厚さを23μmとした。第1電極層と第2電極層の質量比を80:20、第1電極層の空隙率を30%、第2電極層の空隙率を30%とした。
実施例5では、電解質層の全厚を100μmとし、第1電極層の厚さを50μm、第2電極層の厚さを50μmとした。第1電極層と第2電極層の質量比を50:50、第1電極層の空隙率を30%、第2電極層の空隙率を10%とした。
実施例6では、電解質層の全厚を100μmとし、第1電極層の厚さを45μm、第2電極層の厚さを55μmとした。第1電極層と第2電極層の質量比を50:50、第1電極層の空隙率を30%、第2電極層の空隙率を30%とした。
比較例2では、第1電極層のみからなる活物質層の全厚を100μmとし、第1電極層の空隙率を30%とした。
比較例3では、第2電極層のみからなる活物質層の全厚を100μmとし、第2電極層の空隙率を30%とした。
実施例2〜6および比較例2〜4におけるレート特性およびエネルギー密度を下記表3に示す。実施例1および比較例1の電極層の膜厚を表4に示す。レート特性は、電池を0.2Cで充放電し、2C/0.2C放電容量におけるレート特性を相対値(%)で示した。
活物質の粒子内に空孔のない第1電極層のみの電極構造を有する比較例2では、エネルギー密度が56mAh/cmと高いが、リチウムイオンの供給が不足していると考えられ、レート特性が60%と他に比べて低くなった。さらに、空孔のある多孔体活物質を含む第2電極層のみの電極構造を有する比較例2では、リチウムイオンの供給が十分であると考えられてレート特性は80%と高いが、エネルギー密度が40mAh/cmと低くなった。
これに対し、実施例2〜6では、第1電極層および、第1電極層よりも電解質を多く保持する第2電極層を備えることで、レート特性が高く、かつエネルギー密度も高く維持できることが確認できた。
Figure 2011009203
Figure 2011009203
次に、第2、第3実施形態に対応する実施例7〜10について説明する。
(a)正極材インク1の作成
活物質であるマンガン酸リチウム(LiMn、粒子径D50=10μm)と、導電助剤(HS−100)と、バインダとしてPVDFを、重量比90:5:5で配合し、固形分比が65wt%となるようにNMP(N−メチル−ピロリドン)で希釈して、正極インク1とした。
(b)正極材インク2の作成
活物質であるマンガン酸リチウム(LiMn、粒子径D50=2μm)と、導電助剤(HS−100)と、バインダとしてPVDFを、重量比90:5:5で配合し、固形分比が65wt%となるようにNMP(N−メチル−ピロリドン)で希釈して、正極インク2とした。
(c)不織布F1〜F3の準備
PP(ポリプロピレン)繊維を材料源とし、不規則に編みこんだ不織布F1〜F3を、以下の寸法で準備した。
Figure 2011009203
ポリプロピレンの比重0.91g/cmを用いて算出すると、上記不織布F1〜F3の空隙率は、いずれも90.1%であった。
(d)比較例4の電極の作成
正極材インク1を集電体である電解アルミ箔(厚さ=15um)へ、電極目付量40mg/cmとなるように、アプリケーターを使って塗工して予備体とした。この予備体を、35tロールプレス機を用いてクリアランスを調整してプレスし、比較例4の電極層とした。比較例4の電極膜厚を測定すると、183umであった。
(e)実施例7の電極の作成
ドクターブレードの刃が不織布1の上面(電解質層側となる面)に接触するように設置し、正極インク1を不織布F1の上面(一方面)から押し込みながら含浸させた。正極材インク1が含浸された不織布F1の目付量は41.8mg/cm,厚さは220umであった。これを、35tロールプレス機を用いてクリアランスを調整してプレスし、実施例7の電極層とした。実施例7の電極膜厚を測定すると、183umであった。
(f)実施例8の電極の作成
正極インク1を溜めた容器内で不織布F2に正極インク1を含浸させた後、ロールでインクを不織布F2の上下面から圧入させて予備体とした。この予備体の目付量は20.9mg/cm,厚さは110umであった。上記予備体の2枚を、35tロールプレス機を用いてクリアランスを調整してプレスし、電極層8−1、電極層8−2とした。電極層8−1および電極層8−2の電極膜厚を測定すると、電極層8−1は85um,電極層8−2は98umであった。集電体に、電極層8−2、電極層8−1の順番で重ね、実施例8の電極構造とした。
(g)実施例9の電極の作成
正極インク1を溜めた容器内で不織布F3に正極インク1を含浸させた後、ロールでインクを不織布F3の上下面から圧入させて予備体とした。この予備体の目付量は13.9mg/cm,厚さは76umであった。上記予備体の3枚を、35tロールプレス機を用いてクリアランスを調整してプレスし、電極層9−1、電極層9−2、電極層9−3とした。電極層9−1、電極層9−2および電極層9−3の電極膜厚を測定すると、電極層9−1は57um,電極層9−2は61um,電極層9−3は67umであった。集電体に、電極層9−3、電極層9−2、電極層9−1の順番で重ね、実施例9の電極構造とした。
(h)実施例10の電極の作成
正極インク1を溜めた容器内で不織布F2に正極インク1を含浸させた後、ロールでインクを不織布F2の上下面から圧入させて予備体とした。この予備体の目付量は20.9mg/cm,厚さは110umであった。上記予備体を、35tロールプレス機を用いてクリアランスを調整してプレスし、電極層10−1とした。電極層10−1の電極膜厚を測定すると、85umであった。
次に、正極インク2を溜めた容器内で不織布F2に正極インク2を含浸させた後、ロールでインクを不織布F2の上下面から圧入させて予備体とした。この予備体の目付量は20.9mg/cm,厚さは110umであった。上記予備体を、35tロールプレス機を用いてクリアランスを調整してプレスし、電極層10−2とした。電極層10−2の電極膜厚を測定すると、98umであった。集電体に、電極層10−2、電極層10−1の順番で重ね、実施例10の電極構造とした。
(i)空隙率の算出
水銀圧入法を用いて、各電極層の空隙率を求めた。なお、比較例4の電極層と実施例7の電極層は、上面(電解質層側となる面)と下面(集電体側となる面)の断面方向2点につて、電極層を積層水平方向に分割して測定した。結果を表6,7に示す。なお空隙率は、3箇所の平均値を示した。
Figure 2011009203
Figure 2011009203
(j)コインセルの作成
各電極層を直径14mmで打ち抜き、図16に示すように、正極集電体201に比較例4または実施例7〜10のいずれかの電極部(図中の電極部202)を配置し、電解質層となるセパレータ203を介して、負極204である直径16mmの対極Liメタルと対向させて、コイン電池を作成した。電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)を重量比2:3で混合した液を0.1cc使用した。
(k)レート試験結果
上限電圧を4.3V、下限電圧を2.5V、0.05C充放電で容量を確認後、2Cで放電してレート特性を、表8に相対値(%)で示した。結果として、実施例7〜10の電極構造は集電箔近傍の電解液保持性が高く、集電箔近傍のリチウムイオン濃度の低下率が抑制されて反応抵抗が下がったと見られ、高レート時でも放電特性に優れていることが確認できた。
Figure 2011009203
10,50 リチウムイオン二次電池、
11 正極集電体(集電体)、
12 負極集電体、
13,36,70,80,90 正極活物質層(電極部)、
15 負極活物質層、
17 電解質層、
31,41,81,91,101,111 第1電極層(第1電極部)、
32,42,82,92,102,112 第2電極層(第2電極部)、
103 第3電極層(第3電極部)、
33,43,72,85,95,107,113,114 粒状活物質、
34 多孔体活物質(粒状活物質)、
35 導電助剤、
37 第1電極層(第1電極部)、
38 第2電極部、
45 粒子状導電助剤、
46 繊維状導電助剤、
73 活物質層前駆体、
D1 第1電極層の厚さ、
D2 第2電極層の厚さ。

Claims (14)

  1. 集電体と電解質層の間に電極部が設けられる電極構造であって、
    前記電極部が、前記電解質層と接して電解質を保持する第1電極部と、前記電解質層から離れて配置されて、前記第1電極部よりも体積当たりの電解質の保持量が多い第2電極部と、を有する電極構造。
  2. 前記第1電極部および第2電極部は、前記電解質層側および集電体側に層状に重なって形成された第1電極層および第2電極層である、請求項1に記載の電極構造。
  3. 前記第1電極部および第2電極部は、複数の粒状活物質を有し、前記第2電極部に含まれる粒状活物質内の空孔率が、前記第1電極部に含まれる粒状活物質内の空孔率よりも大きい、請求項1または2に記載の電極構造。
  4. 前記第1電極部に設けられる粒状活物質と、前記第2電極部に設けられる粒状活物質の大きさが等しい、請求項1〜3に記載の電極構造。
  5. 前記第1電極部に含まれる導電助剤の形状が、前記第2電極部に含まれる導電助剤の形状よりも大きい、請求項1〜4に記載の電極構造。
  6. 第1電極部の厚さが、前記電極部の全体厚さの50%以上であって80%未満である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極構造。
  7. 前記第1電極部に含まれる導電助剤の量は、前記第2電極部に含まれる導電助剤の量よりも多い、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電極構造。
  8. 前記第1電極部および第2電極部は、多孔質体および当該多孔質体に保持される複数の粒状活物質を有し、前記第2電極部の空隙率が前記第1電極部の空隙率よりも大きい、請求項1に記載の電極構造。
  9. 前記多孔質体は不織布である、請求項8に記載の電極構造。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の電極構造を用いた電池。
  11. 電極スラリーを多孔質体に注入して活物質層前駆体を形成する工程と、
    前記活物質層前駆体の空隙率が大きい側に集電体を配置する工程と、を有する電極の製造方法。
  12. 前記電極スラリーが注入された多孔質体をプレスして前記活物質層前駆体を形成する、請求項11に記載の電極の製造方法。
  13. 前記電極スラリーを複数の多孔質体に塗布して含浸される工程と、
    前記電極スラリーが含浸された複数の多孔質体を異なる圧力でプレスして空隙率の異なる複数の活物質層前駆体を形成する工程と、
    前記活物質層前駆体を空隙率が大きい順に前記集電体に配置する工程と、を有する電極の製造方法。
  14. 前記電極スラリーに含まれる活物質の粒径を、含浸させる前記複数の多孔質体によって異ならせて前記活物質層前駆体を形成し、粒径の小さい活物質を含む活物質層前駆体を前記集電体に近い側に配置する、請求項13に記載の電極の製造方法。
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