JP5402411B2 - リチウムイオン二次電池およびその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明において、リチウムイオン二次電池の構造および形態は、積層型(扁平型)、巻回型(円筒型)電池など特に制限されず、従来公知の多様な構造に適用されうる。好ましくは積層型(扁平型)の電池である。以下の説明では、代表的な実施形態として本発明の電池が積層型(扁平型)のリチウムイオン二次電池である場合を例に挙げて説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみに制限されない。
(集電体)
集電体(負極集電体11、正極集電体12)としては、いずれも電池用の集電体材料として従来用いられている部材が適宜採用されうる。一例を挙げると、正極集電体および負極集電体としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼(SUS)、チタンまたは銅が挙げられる。中でも、電子伝導性、電池作動電位という観点からは、正極集電体としてはアルミニウムが好ましく、負極集電体としては銅が好ましい。集電体の一般的な厚さは、10〜20μmである。ただし、この範囲を外れる厚さの集電体を用いてもよい。集電板についても、集電体と同様の材料で形成することができる。
負極活物質層は負極活物質を含み、必要に応じて電気伝導性を高めるための導電剤、バインダー、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)などをさらに含んで構成される。
負極活物質はリチウムを可逆的に吸蔵および放出できるものであれば特に制限されず、従来公知の負極活物質をいずれも使用できるが、炭素材料またはリチウムと合金化する材料を使用することが好ましい。炭素材料やリチウムと合金化する材料は、電池の充電時の体積膨張率が大きいため、本発明の効果を顕著に発揮しうる。
導電剤とは、導電性を向上させるために配合される添加物をいう。本発明に用いられうる導電剤は特に制限されず、従来公知のものを利用することができる。例えば、アセチレンブラック、デンカブラック等のカーボンブラック、グラファイト、炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。導電剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
負極活物質層はバインダーを含んでもよい。バインダーは、活物質同士または活物質と集電体とを結着させて電極構造を維持する目的で添加される。
電解質は、リチウムイオンのキャリアーとしての機能を有する。電解質としてはかような機能を発揮できるものであれば特に限定されないが、液体電解質またはポリマー電解質が用いられうる。
正極活物質層は正極活物質を含み、必要に応じて導電剤、バインダー、電解質、電解質支持塩などをさらに含んで構成される。正極活物質層の構成要素のうち、正極活物質以外は、上記で説明した内容と同様であるので、ここでは説明を省略する。正極活物質層中に含まれる成分の配合比および正極活物質層の厚さについても特に限定されず、リチウムイオン二次電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。
正極活物質は特にリチウムの吸蔵放出が可能な材料であれば限定されず、リチウムイオン二次電池に通常用いられる正極活物質を利用することができる。具体的には、リチウム−マンガン複合酸化物(LiMn2O4など)、リチウム−ニッケル複合酸化物(LiNiO2など)、リチウム−コバルト複合酸化物(LiCoO2など)、リチウム−鉄複合酸化物(LiFeO2など)、リチウム−ニッケル−マンガン複合酸化物(LiNi0.5Mn0.5O2など)、リチウム−ニッケル−コバルト複合酸化物(LiNi0.8Co0.2O2など)、リチウム−遷移金属リン酸化合物(LiFePO4など)、およびリチウム−遷移金属硫酸化合物(LixFe2(SO4)3)などが挙げられる。上記正極活物質は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
電解質層は、非水電解質を含む層である。電解質層に含まれる非水電解質(具体的には、リチウム塩)は、充放電時に正負極間を移動するリチウムイオンのキャリアーとしての機能を有する。非水電解質としてはかような機能を発揮できるものであれば特に限定されないが、(d)電解質の項で説明した液体電解質、ゲルポリマー電解質、および真性ポリマー電解質を特に制限なく用いることができる。液体電解質、ゲルポリマー電解質、および真性ポリマー電解質の具体的な形態については、上記の(d)電解質の項で説明しため、詳細はここでは省略する。
絶縁層(シール部)としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよい。例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴムなどが用いられうる。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点から、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。
リチウムイオン二次電池では、使用時の外部からの衝撃や環境劣化を防止するために、発電要素全体を外装体に収容するのが望ましい。外装体としては、従来公知の金属缶ケースを用いることができほか、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた発電要素を覆うことができる袋状のケースを用いることができる。ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。
本実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法としては、特に制限されるものではなく、従来公知の方法を適用して作製することができる。
(1)集電体上に、前記正極活物質の容量の1.1倍超の容量に相当する量の負極活物質を含む負極活物質層を形成する工程(負極活物質層の形成工程)
(2)前記負極活物質層の表面に、リチウムイオン非ドープ時における前記負極活物質の不可逆容量を超える容量に相当する量の金属リチウムを含むリチウムプレドープ層を形成することにより負極前駆体を作製する工程(リチウムプレドープ層の形成工程)
(3)前記負極前駆体と正極とを電解質層を介して積層する工程(積層体の作製工程)
(4)前記金属リチウムを負極活物質層にドープすることにより負極前駆体を負極に変換する工程(リチウムドープ工程)。
負極活物質層の形成方法は、特に限定されず、リチウムイオン二次電池について公知の方法を好ましく使用することができる。具体的には、まず、負極活物質ならびに必要に応じて結着剤、導電剤および電解質などを含む電極材料をスラリー粘度調整溶媒に分散して、負極活物質スラリーを調製する。
続いて、負極活物質層の表面にリチウムを含むリチウムプレドープ層が形成された負極前駆体を作製する。負極前駆体は、後述するリチウムドープ工程においてリチウムプレドープ層中のリチウムが負極活物質層にドープされることにより、負極となる。
上記で得られた負極前駆体と正極とを電解質層を介して積層させ、積層体を作製する。
続いて、リチウムプレドープ層の金属リチウムを負極活物質にドープすることにより負極前駆体を負極に変換する。具体的には、電解液の注液により、リチウムプレドープ層内のリチウムが負極活物質にドープされる。なお、リチウムプレドープ層が金属リチウムから構成される場合、すなわち、リチウムプレドープ層がリチウム元素のみから構成される場合には、リチウムのドープ後にはリチウムプレドープ層が消失し、負極前駆体は負極へと変換される。一方、リチウムプレドープ層がリチウム合金のようにリチウム元素以外の材料を含んで構成される場合には、リチウムのドープ後においてもリチウムプレドープ層(例えば、リチウム合金の場合にはリチウムと合金化する元素)が残存する。これにより、リチウムイオンがドープされた負極活物質を含む負極活物質層を有するリチウムイオン二次電池が得られる。
上記工程により得られた電池(発電要素)は、好ましくは所定の時間エージング(静置)される。当該処理は1回のみ行われてもよいし、複数回行われてもよい。エージング工程を実施することにより、活物質層における単位面積当たりのリチウム量を均一化することができ、信頼性の向上した電池が得られる。
図4は、本発明の一実施形態である積層型電池の外観を模式的に表した斜視図である。図4に示すように、積層型電池10は、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための負極集電板25、正極集電板27が引き出されている。発電要素21は、電池10の外装体29によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素21は負極集電板25および正極集電板27を引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素21は、図1に示す積層型電池10の発電要素21に相当し、負極(負極活物質層)13、電解質層17および正極(正極活物質層)15で構成される単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。
上述した実施形態の積層型電池10を、複数個接続して組電池を構成してもよい。詳しくは、少なくとも2つの電池が、直列化あるいは並列化あるいはその両方で接続されることにより、組電池が構成されうる。この際、直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
上述した実施形態の積層型電池10または組電池は、車両の駆動用電源として用いられうる。これらの二次電池または組電池は、例えば、自動車ならばハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いられうる。これにより、高寿命で信頼性の高い自動車が提供されうる。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両であれば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
(1)負極活物質層の形成工程
負極活物質としてSiO(50質量%、平均粒子径:10μm)およびグラファイト(MAG−D、40質量%)、バインダーとしてポリイミド前駆体であるポリアミック酸(宇部興産(株)製のU−ワニス−A)(ポリイミドとして10質量%)を混合した。この混合物をスラリー粘度調整溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン溶液の適量に分散させ、負極活物質スラリーを調製した。
続いて、負極活物質層表面にリチウム金属箔を貼り付けた。なお、リチウム金属箔は、下記表1に示すリチウムのプレドープ容量に相当するサイズとした。これにより、負極前駆体を得た。
正極活物質としてのLiFePO4(84質量%)、導電剤としてデンカブラック(HS100、10質量%)、およびバインダーとしてPVDF(10質量%)を混合した。この混合物を負極活物質層の形成工程と同様にして、正極集電体としてのアルミニウム箔の片面上に塗布し、乾燥させた後にプレスすることで、正極集電体上に正極活物質層が形成した。これを直径14mmの円盤形状に打ち抜くことにより、正極を得た。
この積層体をコインセル容器内に入れ、電解液を注入し、上蓋をすることにより評価用セルを作製した。電解液の含浸により、負極活物質層にリチウムがドープされ、負極前駆体が負極へと変換される。
上記の方法で作製した評価用セルについて、60℃雰囲気下で3日間エージング(静置)した。
負極活物質層の塗布厚みおよび正極活物質層の塗布厚みを変更して、負極活物質層の容量Aと正極活物質層の容量Cとの比(A/C)が表1に記載される量となるようにした。また、(2)リチウムプレドープ層の形成工程におけるリチウム金属箔の貼り付け量を変更して、負極活物質へのリチウムのドープ量が表1に記載される量となるようにした。これら以外は、実施例1と同様にして評価用セルを作製し、評価用セルのエージングを行った。
負極活物質層の塗布厚みおよび正極活物質層の塗布厚みを変更して、負極活物質層の容量Aと正極活物質層の容量Cとの比(A/C)が表1に記載される量となるようにした。また、(2)リチウムプレドープ層の形成工程を行わず、負極集電体上に負極活物質層が形成された電極をそのまま負極として使用した。すなわち、リチウムのプレドープを行わなかった。これら以外は、実施例1と同様にして評価用セルを作製し、評価用セルのエージングを行った。
(2)リチウムプレドープ層の形成工程におけるリチウム金属箔の貼り付け量を変更して、負極活物質へのリチウムのドープ量が表1に記載される量となるようにした。このこと以外は、比較例1と同様にして評価用セルを作製し、評価用セルのエージングを行った。
上記の方法で作製した各評価用セルについて、25℃の雰囲気下、定電流定電圧方式(CCCV、電流密度:0.5mA/cm2、電圧:4V)で10時間充電し、10分間休止させた。その後、定電流(CC、電流:電流密度:0.5mA/cm2)でセル電圧2Vまで放電させ、放電後10分間休止させた。この充放電過程を1サイクルとし、100サイクルの充放電サイクル試験を実施した。1サイクル目の放電容量(初期容量)および100サイクル目の放電容量ならびに100サイクルにおける放電容量の1サイクル目の放電容量に対する割合(=容量維持率[%])を求めた。結果を表1に示す。
11 負極集電体、
12 正極集電体、
13 負極活物質層(負極)、
15 正極活物質層(正極)、
16 リチウムイオン、
17 電解質層、
19 単電池層(単セル)、
21 発電要素、
25 負極集電板、
27 正極集電板、
29 外装体(ラミネートシート)、
33 リチウムプレドープ層。
Claims (5)
- 集電体と;前記集電体上に形成され、リチウムイオンがドープされた負極活物質を含む負極活物質層と;を有する負極と、
正極と、
前記正極と前記負極との間に介在する電解質層と、
を有し、
前記負極の容量Aと前記正極の容量Cとの比(A/C)が1.1を超え、かつ
充電状態(SOC)が0%であるときのリチウムイオンのドープ容量Xとリチウムイオン非ドープ時における前記負極活物質の不可逆容量Yとの比(X/Y)が1.3以上である、リチウムイオン二次電池。 - 前記ドープ容量Xとリチウムイオン非ドープ時における前記負極活物質の不可逆容量Yとの比(X/Y)が1.73以上である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
- 満充電した際の負極の充電状態(SOC)が90%以上である、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
- 満充電した際の負極の充電状態(SOC)が95%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
- 正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極との間に介在する電解質層と、を有するリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
集電体上に、前記正極活物質の容量の1.1倍超の容量に相当する量の負極活物質を含む負極活物質層を形成する工程と、
前記負極活物質層の表面に、リチウムイオン非ドープ時における前記負極活物質の不可逆容量の1.3倍以上の容量に相当する量の金属リチウムを含むリチウムプレドープ層を形成することにより負極前駆体を作製する工程と、
前記負極前駆体と正極とを電解質層を介して積層する工程と、
前記金属リチウムを負極活物質層にドープすることにより負極前駆体を負極に変換する工程と、
を含む、リチウムイオン二次電池の製造方法。
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