JP2011060520A - リチウムイオン二次電池およびその製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】負極が正極非対向部を有するリチウムイオン二次電池において、充放電時の活物質の膨張収縮に伴う負極の正極対向部と非対向部との境界における応力を低減し、負極のエッジ部における破損を防止しうる手段を提供する。
【解決手段】本発明のリチウムイオン二次電池は、正極と;集電体と、前記集電体の表面に形成され、リチウムイオンがドープされた負極活物質を含む負極活物質層とを有する負極と;前記正極と前記負極との間に介在する電解質層と;を有する。そして、前記負極活物質層が正極対向部および正極非対向部を有し、充電状態(SOC)が0%であるとき、前記負極活物質層において、前記正極非対向部のリチウムイオンドープ率が前記正極対向部のリチウムイオンドープ率に比べて大きい点に特徴を有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池およびこれを用いた電池に関する。より詳細には、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を向上させるための改良に関する。
近年、環境保護運動の高まりを背景として、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、および燃料電池車(FCV)の開発が進められている。これらのモータ駆動用電源としては繰り返し充放電可能な二次電池が適しており、特に高容量、高出力が期待できるリチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池が注目を集めている。
モータ駆動用二次電池としては、携帯電話やノートパソコン等に使用される民生用リチウムイオン二次電池と比較して極めて高い出力特性、及び高いエネルギーを有することが求められている。従って、全ての電池の中で比較的高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。
リチウムイオン二次電池は、一般に、バインダーを用いて正極活物質等を正極集電体の両面に塗布した正極と、バインダーを用いて負極活物質等を負極集電体の両面に塗布した負極とが、電解質層を介して接続され、電池ケースに収納される構成を有している。そして、リチウムイオンが電極活物質中に吸蔵・放出されることにより電池の充放電反応が起こる。
従来、リチウムイオン二次電池の負極には充放電サイクルの寿命やコスト面で有利な炭素、特に黒鉛系材料が用いられてきた。また、最近では、高容量の負極活物質として、リチウムと合金化しうる材料などが研究されている。例えば、Si材料は、充放電において1molあたり4.4molのリチウムイオンを吸蔵放出し、Li22Siにおいては4200mAh/g程度もの理論容量を有する。このようにリチウムと合金化しうる材料は電極のエネルギー密度を増加させることができるため、車両用途における負極材料として期待されている。
しかしながら、このような大容量を有する炭素材料やリチウムと合金化する材料などの負極活物質は、電池の充放電反応の際にリチウムイオンの吸蔵放出に伴い膨張収縮する。例えば、グラファイトのような炭素系負極活物質を用いた場合には約10%の、また、合金系活物質を用いた場合には200%近くの体積変化を伴う。この体積膨張が大きいと、充放電を繰り返した場合に当該活物質が崩壊して微細化し、集電体から活物質が脱離するおそれがある。また、薄膜状の活物質層の体積変化に伴って集電体に大きな応力が作用し、電極自体が大きくうねり変形する虞もある。これらの現象は、電池を構成した場合にサイクル特性の低下をもたらす可能性がある。
かかる問題に対処するための技術として、特許文献1に記載の技術が提案されている。当該特許文献1には、非水電解質二次電池の負極に金属発泡体を用い、当該発泡体に活物質であるシリコンを保持させる技術が開示されている。特許文献1によれば、かような構成とすることにより、充放電サイクルにおける活物質の脱離が抑制され、充放電サイクル特性が向上しうるとしている。
特開2004−259636号公報
リチウムイオン二次電池では、通常、負極におけるデンドライト析出を防止する目的で、正極に比べて負極を一回り大きい構成とし、正極に対する負極の対向面積を大きくすることが多い。かかる形態では、負極の正極が対向する部位(正極対向部)におけるリチウムイオンの吸蔵放出量と負極の正極が対向していない部位(正極非対向部)におけるリチウムイオンの吸蔵放出量とに差がある。このため、負極の正極対向部と正極非対向部とで負極活物質の膨張収縮率が異なり、正極対向部と非対向部との境界に応力が発生するおそれがある。
例えば、特許文献1に記載の技術においては、金属発泡体を用いて負極を構成することにより、応力緩和が図られるが、かかる応力緩和機構は負極全面に対して均一なものである。このため、依然として、活物質の膨張収縮により負極の正極対向部と正極非対向部との境界において発生する応力を緩和することは困難である。
このように正極対向部と正極非対向部との境界において応力が発生すると、負極のエッジ部における破損が生じる場合があり、その結果、当該負極を用いたリチウムイオン二次電池においてサイクル特性が劣化するおそれがある。
そこで本発明は、負極が正極非対向部を有する電池において、活物質の膨張収縮に伴う負極の正極対向部と正極非対向部との境界における応力を低減することで、負極のエッジ部における破損を防止し、サイクル特性が向上した電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行なった結果、負極活物質層の正極非対向部のリチウムイオンドープ率と正極対向部のリチウムイオンドープ率とを制御することにより、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明のリチウムイオン二次電池は、正極と;集電体と、前記集電体の表面に形成され、リチウムイオンがドープされた負極活物質を含む負極活物質層とを有する負極と;前記正極と前記負極との間に介在する電解質層と;を有する。そして、前記負極活物質層が正極対向部および正極非対向部を有し、充電状態(SOC)が0%であるときの前記正極非対向部のリチウムイオンドープ率が、前記正極対向部のリチウムイオンドープ率に比べて大きい点に特徴を有する。
本発明のリチウムイオン二次電池によれば、電池の充放電時の負極の正極対向部と正極非対向部との膨張率の差が小さくなるため、負極の正極対向部と非対向部との境界における応力が低減される。これにより、負極エッジ部での破損を効果的に防止することが可能となり、サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池が得られる。
本発明の代表的な一実施形態である扁平型(積層型)の非双極型リチウムイオン二次電池の基本構成を示す概略図である。 本発明の一実施形態に使用される負極活物質層の模式図であって、図2Aは充電状態(SOC)が0%であるときの負極活物質層の模式図であり、図2Bは充電状態(SOC)が100%であるときの負極活物質層の模式図である。 本発明の一実施形態に使用される負極前駆体および負極を示す模式断面図であって、図3Aは負極前駆体の模式断面図であって、図3Bは負極の模式断面図である。 本発明の一実施形態に使用される負極前駆体および負極を示す模式断面図であって、図4Aは負極前駆体の模式断面図であって、図4Bは負極の模式断面図である。 本発明の一実施形態に使用される負極前駆体および負極を示す模式断面図であって、図5Aは負極前駆体の模式断面図であって、図5Bは負極の模式断面図である。 本発明の一実施形態である積層型電池の外観を模式的に表した斜視図である。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。本発明は、以下の実施形態のみには制限されない。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
[電池の全体構造]
本発明において、リチウムイオン二次電池の構造および形態は、積層型(扁平型)、巻回型(円筒型)電池など特に制限されず、従来公知の多様な構造に適用されうる。好ましくは積層型(扁平型)の電池である。以下の説明では、代表的な実施形態として本発明の電池が積層型(扁平型)のリチウムイオン二次電池である場合を例に挙げて説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみに制限されない。
図1は、本発明の一実施形態である扁平型(積層型)の非双極型リチウムイオン二次電池(以下、単に「積層型電池」ともいう)の基本構成を示す概略図である。図1に示すように、本実施形態の積層型電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、外装体であるラミネートシート29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、負極集電体11の両面に負極活物質層13が配置された負極と、電解質層17と、正極集電体12の両面に正極活物質層15が配置された正極とを積層した構成を有している。具体的には、1つの負極活物質層13とこれに隣接する正極活物質層15とが、電解質層17を介して対向するようにして、負極、電解質層および正極がこの順に積層されている。これにより、隣接する負極、電解質層および正極は、1つの単電池層(単セル)19を構成する。したがって、本実施形態の積層型電池10は、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。
本実施形態において、負極活物質層13は正極対向部13aおよび正極非対向部13bを有する。ここで、正極対向部とは、負極活物質層13が電解質層17を介して隣接する正極活物質層15と対向する部分をいう。また、正極非対向部とは、負極活物質層13が電解質層17を介して隣接する正極活物質層15と対向しない部分をいう。本明細書では、「負極活物質層の正極(非)対向部」を単に「負極の正極(非)対向部」と称することもある。なお、負極活物質層13の形態は正極対向部13aおよび正極非対向部13bを有する限り特に制限されず、任意の形態が採用されうる。また、一つの負極活物質層13につき、正極非対向部13bの数は1つであってもよいし複数であってもよい。
なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層負極集電体には、いずれも片面のみに負極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、図1とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層正極集電体が位置するようにし、該最外層正極集電体の片面または両面に正極活物質層が配置されているようにしてもよい。
負極集電体11および正極集電体12は、各電極(負極および正極)と導通される負極集電板25および正極集電板27がそれぞれ取り付けられ、ラミネートシート29の端部に挟まれるようにしてラミネートシート29の外部に導出される構造を有している。負極集電板25および正極集電板27はそれぞれ、必要に応じて負極リードおよび正極リード(図示せず)を介して、各電極の負極集電体11および正極集電体12に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
以下、本実施形態の電池を構成する部材について、詳細に説明する。
[電極]
(集電体)
集電体(負極集電体11、正極集電体12)としては、いずれも電池用の集電体材料として従来用いられている部材が適宜採用されうる。一例を挙げると、正極集電体および負極集電体としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼(SUS)、チタンまたは銅が挙げられる。中でも、電子伝導性、電池作動電位という観点からは、正極集電体としてはアルミニウムが好ましく、負極集電体としては銅が好ましい。集電体の一般的な厚さは、10〜20μmである。ただし、この範囲を外れる厚さの集電体を用いてもよい。集電板についても、集電体と同様の材料で形成することができる。
(負極活物質層)
負極活物質層13は負極活物質を含み、必要に応じて電気伝導性を高めるための導電剤、バインダー、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)などをさらに含んで構成される。
負極活物質層中に含まれる成分の配合比は特に限定されず、リチウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。また、活物質層の厚さについても特に制限はなく、リチウムイオン二次電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、活物質層の厚さは、2〜100μm程度である。
負極活物質層13は、正極対向部13aおよび正極非対向部13bを有する。そして、充電状態(SOC)が0%であるときの前記正極非対向部13bのリチウムイオンドープ率が、前記正極対向部13aのリチウムイオンドープ率に比べて大きいことを特徴とする。図2Aに本発明の一実施形態に使用される負極活物質層の、充電状態(SOC)が0%であるとき、すなわち、負極収縮時の模式図を示す。当該負極活物質層13の模式図は、図1の負極活物質層13の断面を拡大して、模式的に示した図面である。図2Aに示すように、負極活物質層13は、リチウムイオン16がドープされた負極活物質を含む。そして、充電状態(SOC)が0%であるときの正極非対向部13bのリチウムイオンドープ率は、正極対向部13aのリチウムイオンドープ率に比べて大きい。すなわち、正極非対向部13bには、正極対向部13aに比べて多くの量のリチウムイオンがドープされている。ここで、「リチウムイオンドープ率」とは、負極活物質の容量に対する吸蔵されたリチウムイオンの容量の割合(%)をいい、吸蔵されたリチウムイオンの容量を負極活物質の容量で除して、100を乗ずることにより算出される。また、「正極(非)対向部のリチウムイオンドープ率」とは、正極(非)対向部中に存在する負極活物質の平均のリチウムイオンドープ率をいう。
なお、負極活物質層13が離隔して位置する正極非対向部13bを複数有する場合には、少なくとも1つの正極非対向部13bのリチウムイオンドープ率が正極対向部のリチウムイオンドープ率よりも大きければよい。好ましくは、すべての正極非対向部13bのリチウムイオンドープ率が正極対向部のリチウムイオンドープ率よりも大きい。また、図2Aに示す形態では、SOCが0%であるときにも、正極対向部13aにリチウムイオンがドープされているが、本発明はかかる形態に限定されるわけではなく、正極対向部13aにリチウムイオンがドープされていなくてもよい。この場合、SOCが0%であるときの正極対向部のリチウムイオンドープ率は0%となる。
本実施形態の負極によれば、充電時に負極活物質層がリチウムイオンを吸蔵して膨張した際に、正極対向部13aの膨張率と正極非対向部13bの膨張率との差を小さくすることができる。これにより負極活物質層の膨張・収縮によって生じる負極の正極対向部と非対向部との境界における応力が低減され、負極のエッジ部における破損が防止されうる。したがって、サイクル特性に優れた電池を提供することができる。
充電状態(SOC)が0%のとき、正極対向部13aのリチウムイオンドープ率Aと正極非対向部13bのリチウムイオンドープ率Bとの比(A/B)は好ましくは0.7以下であり、より好ましくは0.6以下である。かような形態によれば、電池の充電時の正極対向部13aの膨張率と正極非対向部13bの膨張率との差を一層小さくすることができ、正極対向部と非対向部との境界における応力がより一層低減される。したがって、負極のエッジ部における破損を効果的に抑制または完全に防止することができる。正極対向部13aのリチウムイオンドープ率Aと正極非対向部13bのリチウムイオンドープ率Bとの比(A/B)の下限値は特に限定されず、0以上であればよい。
具体的には、SOCが0%のときの正極対向部13aの負極活物質のリチウムイオンドープ率Aは、負極活物質の種類にもよるが、初期充電時に生じる不可逆容量に相当する量とすることが好ましい。ここで、不可逆容量とは、リチウムイオン二次電池において、初期充電で負極中に吸蔵されたリチウムの全てを放電によって放出することはできず、放電後も負極中に残留するリチウム量のことを意味する。大容量を有する炭素材料やリチウムと合金化する材料を負極活物質として用いたリチウムイオン二次電池の多くは、初期充放電時の不可逆容量が大きい。例えば、合金系負極活物質であるSiOを用いた場合、不可逆容量は27%程度である。不可逆容量が大きい負極を使用した場合には、充填された正極の容量利用率が低下し、電池のエネルギー密度が低下するという問題がある。これに対して、本実施形態のように、初期充電時に生じる不可逆容量に相当する量のリチウムイオンを正極対向部13aに予めドープさせておくことにより、初回充放電時における不可逆容量を補償することができる。ただし、正極対向部13aの負極活物質は、電池の充放電反応を担うため、SOCが0%のときのリチウムイオンドープ率が大きすぎる場合には、充放電反応に寄与する負極活物質の量が減少するおそれがある。したがって、不可逆容量を補償しうるリチウムが含まれる限り、不要なリチウム量を最小限にできるため好ましい。なお、負極活物質層に含まれる負極活物質の不可逆容量は、予め使用する負極を用いた電池を別途作製して充放電を行い、充電前後における放電容量の差分から算出することができる。上記の観点から、SOCが0%のときの正極対向部13aの負極活物質のリチウムイオンドープ率Aは、好ましくは0〜90%であり、より好ましくは0〜40%であり、さらに好ましくは0〜27%である。かような範囲にある場合には、リチウムのプレドープによる不可逆容量の補償が可能となり、電池のエネルギー密度が向上しうる。
一方、SOCが0%のときの正極非対向部13bの負極活物質のリチウムイオンドープ率Bは、負極活物質の種類にもよるが、好ましくは30〜100%であり、より好ましくは40〜100%であり、さらに好ましくは50〜100%である。かような場合には、電池の充電時の正極対向部13aの膨張率と正極非対向部13bの膨張率との差を十分に減少させることができ、負極のエッジ部の破損が抑制されうる。
充電の際には、正極活物質層15から電解質層17を介して負極活物質層の正極対向部13bにリチウムイオンが移動し、正極対向部13aに吸蔵され、その結果、正極対向部13bが膨張する。一方、負極の正極非対向部13bではリチウムイオンの吸蔵がほとんど起こらないため、正極非対向部13aはほとんど膨張しない。図2Bに本発明の一実施形態に使用される負極活物質層の、充電状態(SOC)が100%であるとき、すなわち、負極膨張時の模式図を示す。図2Bに示すように、充電により、正極対向部13aが膨張する一方、正極非対向部13bはほとんど膨張しない。
放電の際には、正極対向部13aに吸蔵されたリチウムイオンが電解質層17を介して正極活物質層15に移動し、正極対向部13bが収縮する。そして、充電状態(SOC)が0%になると、図2Aに示される形態となる。
好ましい実施形態では、充電状態(SOC)が0%であるときの、正極非対向部13bの積層方向の厚みが、正極対向部13aの積層方向の厚みに比べて大きい。かような形態によれば、電池の充電時の正極対向部13aの膨張率と正極非対向部13bの膨張率との差を一層小さくすることができる。ここで、「正極(非)対向部の積層方向の厚み」とは、電極積層方向における負極活物質層の正極(非)対向部の平均の厚みをいい、正極非対向部の体積を正極(非)対向部の断面積で除することにより算出される。ただし、正極非対向部13bの積層方向の厚みを正極対向部13aの積層方向の厚みに比べて小さくしたり、両方の厚みを同一としてももちろんよい。
(a)負極活物質
負極活物質はリチウムを可逆的に吸蔵および放出できるものであれば特に制限されず、従来公知の負極活物質をいずれも使用できるが、炭素材料またはリチウムと合金化する材料を使用することが好ましい。炭素材料やリチウムと合金化する材料は、電池の充電時の体積膨張率が大きいため、本発明の効果を顕著に発揮しうる。
かようなリチウムと合金化する材料としては、リチウムと合金化する元素の単体、これらの元素を含む酸化物および炭化物等が挙げられる。リチウムと合金化する材料を用いることにより、炭素系材料に比して高いエネルギー密度を有する高容量の電池を得ることが可能となる。上記のリチウムと合金化する元素としては、以下に制限されることはないが、具体的には、Si、Ge、Sn、Pb、Al、In、Zn、H、Ca、Sr、Ba、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Au、Cd、Hg、Ga、Tl、C、N、Sb、Bi、O、S、Se、Te、Cl等が挙げられる。これらの中でも、容量およびエネルギー密度に優れた電池を構成できる観点から、負極活物質は、Si、Ge、Sn、Pb、Al、In、およびZnからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むことが好ましく、SiまたはSnの元素を含むことがより好ましく、Siを含むことが特に好ましい。酸化物としては、一酸化ケイ素(SiO)、SiO(0<x<2)、二酸化スズ(SnO)、SnO(0<x<2)、SnSiOなどを用いることができる。また、炭化物としては、炭化ケイ素(SiC)などを用いることができる。
炭素材料としては、高結晶性カーボンであるグラファイト(天然グラファイト、人造グラファイト等)、低結晶性カーボン(ソフトカーボン、ハードカーボン)、カーボンブラック(ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック等)、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンフィブリルなどが挙げられる。
この他、リチウム−チタン複合酸化物(チタン酸リチウム:LiTi12)等のリチウム−遷移金属複合酸化物、およびその他の従来公知の負極活物質が使用可能である。
負極活物質の平均粒子径は、特に制限されないが、負極活物質の高容量化、反応性、サイクル耐久性の観点からは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜20μmである。このような範囲であれば、高出力条件下での充放電時における電池の内部抵抗の増大が抑制され、充分な電流を取り出しうる。
なお、これら負極活物質は、単独で用いてもよく、場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。ただし、本発明の効果を顕著に発揮するためには、炭素材料および/またはリチウムと合金化する材料を活物質中に好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは100質量%を含む。
(b)導電剤
導電剤とは、導電性を向上させるために配合される添加物をいう。本発明に用いられうる導電剤は特に制限されず、従来公知のものを利用することができる。例えば、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。導電剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
(c)バインダー
負極活物質層はバインダーを含んでもよい。バインダーは、活物質同士または活物質と集電体とを結着させて電極構造を維持する目的で添加される。
バインダーとしては、以下に制限されることはないが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ酢酸ビニル、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびポリアクリロニトリル(PAN)などの熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、およびユリア樹脂などの熱硬化性樹脂;ならびにスチレンブタジエンゴム(SBR)などのゴム系材料が挙げられる。
(d)電解質
電解質は、リチウムイオンのキャリアーとしての機能を有する。電解質としてはかような機能を発揮できるものであれば特に限定されないが、液体電解質またはポリマー電解質が用いられうる。
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。可塑剤として用いられうる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等のカーボネート類が例示される。また、支持塩(リチウム塩)としては、Li(CFSON、Li(CSON、LiPF、LiBF、LiAsF、LiTaF、LiClO、LiCFSO等の電極の合剤層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲルポリマー電解質(ゲル電解質)と、電解液を含まない真性ポリマー電解質に分類される。
ゲルポリマー電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマー(ホストポリマー)に、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。電解質としてゲルポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、各層間のイオン伝導性を遮断することが容易になる点で優れている。マトリックスポリマー(ホストポリマー)として用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、特に限定されない。例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(PVDF−HFP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)およびこれらの共重合体等が挙げられる。ここで、上記のイオン伝導性ポリマーは、正極合剤層および負極合剤層において電解質として用いられるイオン伝導性ポリマーと同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。電解液(電解質塩および可塑剤)の種類は特に制限されず、上記で例示したリチウム塩などの電解質塩およびカーボネート類などの可塑剤が用いられうる。
真性ポリマー電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤である有機溶媒を含まない。従って、電解質として真性ポリマー電解質を用いることで電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
ゲルポリマー電解質や真性ポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
これらの電解質は1種単独であってもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(正極活物質層)
正極活物質層は正極活物質を含み、必要に応じて導電剤、バインダー、電解質、電解質支持塩などをさらに含んで構成される。正極活物質層の構成要素のうち、正極活物質以外は、上記で説明した内容と同様であるので、ここでは説明を省略する。正極活物質層中に含まれる成分の配合比および正極活物質層の厚さについても特に限定されず、リチウムイオン二次電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。
(正極活物質)
正極活物質は特にリチウムの吸蔵放出が可能な材料であれば限定されず、リチウムイオン二次電池に通常用いられる正極活物質を利用することができる。具体的には、リチウム−マンガン複合酸化物(LiMnなど)、リチウム−ニッケル複合酸化物(LiNiOなど)、リチウム−コバルト複合酸化物(LiCoOなど)、リチウム−鉄複合酸化物(LiFeOなど)、リチウム−ニッケル−マンガン複合酸化物(LiNi0.5Mn0.5など)、リチウム−ニッケル−コバルト複合酸化物(LiNi0.8Co0.2など)、リチウム−遷移金属リン酸化合物(LiFePOなど)、およびリチウム−遷移金属硫酸化合物(LiFe(SO)などが挙げられる。上記正極活物質は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
正極活物質の平均粒子径は、特に制限されないが、正極活物質の高容量化、反応性、サイクル耐久性の観点からは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜20μmである。このような範囲であれば、高出力条件下での充放電時における電池の内部抵抗の増大が抑制され、充分な電流を取り出しうる。
[電解質層]
電解質層は、非水電解質を含む層である。電解質層に含まれる非水電解質(具体的には、リチウム塩)は、充放電時に正負極間を移動するリチウムイオンのキャリアーとしての機能を有する。非水電解質としてはかような機能を発揮できるものであれば特に限定されないが、(d)電解質の項で説明した液体電解質、ゲルポリマー電解質、および真性ポリマー電解質を特に制限なく用いることができる。液体電解質、ゲルポリマー電解質、および真性ポリマー電解質の具体的な形態については、上記の(d)電解質の項で説明しため、詳細はここでは省略する。
これらの電解質層に含まれる非水電解質は、1種単独であってもよいし、2種以上であってもよい。また、上述した活物質層に用いた電解質と異なる電解質を用いてもよいし、同一の電解質を用いてもよい。
なお、電解質層が液体電解質やゲルポリマー電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータを用いる。セパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなる微多孔膜が挙げられる。
電解質層の厚さは、内部抵抗を低減させるには薄ければ薄いほどよいといえる。電解質層の厚さは、1〜100μm、好ましくは5〜50μm、とするのがよい。
[絶縁層]
絶縁層(シール部)としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよい。例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴムなどが用いられうる。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点から、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。
[外装体]
リチウムイオン二次電池では、使用時の外部からの衝撃や環境劣化を防止するために、発電要素全体を外装体に収容するのが望ましい。外装体としては、従来公知の金属缶ケースを用いることができほか、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた発電要素を覆うことができる袋状のケースを用いることができる。ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。
[電池の製造方法]
本実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法としては、特に制限されるものではなく、従来公知の方法を適用して作製することができる。
本発明の他の一形態によれば、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在する電解質層と、を有するリチウムイオン二次電池の製造方法が提供される。本形態の製造方法は、(1)集電体上に負極活物質を含む負極活物質層を形成する工程(負極活物質層の形成工程)と、(2)前記負極活物質層の正極非対向部の表面にリチウムを含む第1リチウムプレドープ層を形成することにより負極前駆体を作製する工程(リチウムプレドープ層の形成工程)と、(3)前記負極前駆体と正極とを電解質層を介して積層させる工程(積層体の作製工程)と、(4)前記第1リチウムプレドープ層のリチウムを前記負極活物質にドープすることにより負極前駆体を負極に変換する工程(リチウムドープ工程)と、を含む。本形態によれば、簡便な方法で正極非対向部の負極活物質にリチウムイオンをドープすることができ、正極非対向部および正極非対向部のリチウムイオンドープ率が制御された負極活物質層を有するリチウムイオン二次電池が得られる。これにより、電池の充放電時の負極の正極対向部と非対向部との境界における応力を低減し、サイクル特性に優れた電池が得られる。
(1)負極活物質層の形成工程
負極活物質層の形成方法は、特に限定されず、リチウムイオン二次電池について公知の方法を好ましく使用することができる。具体的には、まず、負極活物質ならびに必要に応じて結着剤、導電剤および電解質などを含む電極材料をスラリー粘度調整溶媒に分散して、負極活物質スラリーを調製する。
スラリー粘度調整溶媒としては、特に制限されることはないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミドなどが挙げられる。スラリーはホモジナイザーまたは混練装置などを用いて溶媒および固形分よりインク化される。活物質ならびに必要に応じて結着剤、導電剤および電解質などの電極材料を混合・分散する順序は特に制限されない。これらの電極材料を同時に混合・分散してもよいし、原料成分の種類毎に段階的に混合・分散するようにしてもよい。
次いで、負極活物質層を形成するための集電体を準備し、上記で調製したスラリーを、集電体の表面(片面または両面)に塗布し、塗膜を形成する。スラリーを集電体に塗布するための塗布手段は特に限定されないが、例えば、自走型コーター、ドクターブレード法、スプレー法、インクジェット法などの一般に用いられる手段が採用されうる。
続いて、集電体の表面(片面または両面)に形成された塗膜を乾燥させる。これにより、塗膜中の溶媒が除去される。塗膜を乾燥させるための乾燥手段も特に制限されず、電極製造について従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、加熱処理が例示される。乾燥条件(乾燥時間、乾燥温度など)は、スラリーの塗布量やスラリー粘度調整溶媒の揮発速度に応じて適宜設定されうる。得られた乾燥物をプレスすることにより、集電体の表面(片面または両面)に負極活物質層が形成される。プレス手段については、特に限定されず、従来公知の手段が適宜採用されうる。プレス手段の一例を挙げると、カレンダーロール、平板プレスなどが挙げられる。
(2)リチウムプレドープ層の形成工程
続いて、負極活物質層の表面にリチウムを含むリチウムプレドープ層が形成された負極前駆体を作製する。負極前駆体は、後述するリチウムドープ工程においてリチウムプレドープ層中のリチウムが負極活物質層にドープされることにより、負極となる。
リチウムプレドープ層は少なくとも負極活物質層の正極非対向部の表面に形成すればよい。図3Aは本発明の一実施形態に使用される負極前駆体を示す模式断面図である。図3Aに示す実施形態において、負極前駆体32は負極集電体11上に形成された負極活物質層13の正極非対向部13bの表面にリチウムを含む第1リチウムプレドープ層33bが形成された構造を有する。本実施形態では、後述するリチウムドープ工程において第1リチウムプレドープ層33b中のリチウム16が負極活物質層の正極非対向部13bにドープされ、図3Bに示す負極が得られる。
好ましくは、負極活物質層の正極非対向部および正極対向部の双方の表面にリチウムプレドープ層を形成する。すなわち、本発明の一実施形態に係る製造方法においては、前記負極前駆体を作成する際に、前記負極活物質層の正極非対向部の表面にリチウムを含む第1リチウムプレドープ層を形成し、かつ、前記正極非対向部のリチウムイオンドープ率が正極対向部のリチウムイオンドープ率に比べて大きくなるように、前記負極活物質層の正極対向部の表面にリチウムを含む第2リチウムプレドープ層を形成し;かつ、負極前駆体を負極に変換する際に、前記第1リチウムプレドープ層のリチウムおよび前記第2リチウムプレドープ層のリチウムを前記負極活物質にドープする。
図4Aは本発明の一実施形態に使用される負極前駆体を示す模式断面図である。図4Aに示す実施形態において、負極前駆体32は負極集電体11上に形成された負極活物質層13の正極非対向部13bの表面にリチウム16を含む第1リチウムプレドープ層33bが形成され、かつ、負極活物質層13の正極対向部13aの表面にリチウム16を含む第2リチウムプレドープ層33aが形成された構造を有する。本実施形態では、後述するリチウムドープ工程において第1リチウムプレドープ層33b中のリチウム16が負極活物質層の正極非対向部13bに、第2リチウムプレドープ層33a中のリチウム16が負極活物質層の正極対向部13aにドープされる。これにより、図4Bに示す負極が得られる。かような形態においては、正極対向部13aに予め吸蔵されたリチウムイオンが存在するため、初期充電時に生じる不可逆容量を補償することが可能となり、電池のエネルギー密度が向上しうる。なお、本実施形態のように正極対向部13aに第2リチウムプレドープ層を形成する場合には、正極非対向部のリチウムイオンドープ率が正極対向部のリチウムイオンドープ率に比べて大きくなるようにする必要がある。具体的には、リチウムプレドープ層中のリチウムの量を調整することにより、正極非対向部のリチウムイオンドープ率と正極対向部のリチウムイオンドープ率とを所望の範囲に調整することができる。
上述のように、リチウムプレドープ層は、リチウムを含んで構成され、後述するリチウムドープ工程において負極活物質層にドープするためのリチウム(イオン)の吸蔵層として機能する。リチウムプレドープ層を構成するリチウム(リチウム源)としては、負極活物質層へのドープが可能であれば特に制限されないが、金属リチウムまたはリチウム合金であることが好ましい。リチウム合金としては、「負極活物質」の項で説明したリチウムと合金化する元素の単体、これらの元素を含む酸化物および炭化物等のリチウム合金を好ましく使用することができる。リチウムプレドープ層の形態も特に制限されず、リチウム金属箔をそのまま使用してもよいし、リチウム粒子やリチウム合金粒子の集合体を使用してもよい。リチウム粒子とは、金属リチウムが微細に粉砕されたリチウムの粉末を意味する。なお、リチウム粒子の形状は特に制限されず、球状、棒状、針状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状など任意の構造をとりうる。
リチウムプレドープ層の形成方法は特に制限されない。例えば、リチウム箔を負極活物質層の表面に配置する(貼り付ける)方法、リチウム粒子を負極活物質層の表面に塗布する方法、リチウム蒸着膜を負極活物質層の表面に転写する方法、電気化学的手法により負極活物質層の表面にリチウム膜を形成する方法、などが挙げられる。これらの方法を用いて、負極活物質の正極非対向部の表面、および、必要に応じて正極対向部の表面にリチウムプレドープ層を形成する。正極非対向部の表面および正極対向部の表面に第1リチウムプレドープ層および第2リチウムプレドープ層をそれぞれ形成する場合、第1リチウムプレドープ層および第2リチウムプレドープ層の形成の順序は特に制限されない。両方のリチウムプレドープ層を同時に形成してもよいし、どちらか一方を先に形成した後にもう一方を形成してもよい。また、両方のリチウムプレドープ層の形成方法として同一の方法を使用してもよいし、異なる方法を使用してもよい。
リチウムプレドープ層の厚さやサイズ(面内方向の大きさ)は、高エネルギー密度化の観点から、負極活物質層にドープするために必要なリチウムを吸蔵できる限り薄い方が好ましい。具体的には、所望のリチウムイオンドープ率が達成できるように、第1リチウムプレドープ層および必要に応じて第2リチウムプレドープ層を形成すればよい。一例を挙げると、リチウムプレドープ層の厚さは1〜100μm程度である。
なお、図4Aに示す実施形態においては、第1リチウムプレドープ層33bの厚みが第2リチウムプレドープ層33aの厚みよりも大きく形成されている。かような形態によれば、正極非対向部および正極対向部のリチウムイオンドープ率の調節が容易である。特に、同一濃度のリチウムを含む材料(金属箔や粒子集合体など)を用いてリチウムプレドープ層を形成する場合、プレドープ層が厚く形成された正極非対向部のリチウムイオンドープ率は正極対向部のリチウムイオンドープ率よりも大きくなる。したがって、第1リチウムプレドープ層の厚みを第2リチウムプレドープ層の厚みよりも大きくすることで、簡便に正極非対向部のリチウムイオンドープ率を正極対向部のリチウムイオンドープ率に比べて大きくすることができるのである。
ただし、本発明はかような形態に制限されるわけでなく、リチウムイオンドープ率を所望の範囲に調整することができる限り、第1リチウムプレドープ層の厚みを第2リチウムプレドープ層の厚みよりも小さくてもよいし、両層の厚みを同じにしてもよい。図5Aは本発明の一実施形態に使用される負極前駆体を示す模式断面図である。図5Aに示す実施形態において、負極前駆体32は負極集電体11上に形成された負極活物質層13の正極非対向部13bの表面にリチウム16を含む第1リチウムプレドープ層33bが形成され、かつ、負極活物質層13の正極対向部13aの表面にリチウム16を含む第2リチウムプレドープ層33aが形成された構造を有する。そして、第1リチウムプレドープ層33bと第2リチウムプレドープ層33aとが同一の厚みで形成されている。本実施形態では、後述するリチウムドープ工程により、図5Bに示す負極が得られる。
上記工程により、負極活物質層の表面にリチウムを含むリチウムプレドープ層が形成された負極前駆体が得られる。
(3)積層体の作製工程
上記で得られた負極前駆体と正極とを電解質層を介して積層させ、積層体を作製する。
まず、正極を作製する。正極の作製方法は特に限定されず、リチウムイオン二次電池について公知の方法を好ましく使用することができる。具体的には、負極活物質層の形成と同様にして、正極活物質ならびに必要に応じて結着剤、導電剤および電解質などを含む電極材料をスラリー粘度調整溶媒に分散して、正極活物質スラリーを調製する。そして、負極活物質層の形成と同様にして、正極活物質スラリーを集電体上に塗布して乾燥させた後にプレスすることにより、集電体の表面(片面または両面)に正極活物質層が形成された正極が得られる。
次いで、正極または負極前駆体を、セパレータ(電解質層に相当)を介して正極活物質層とリチウムプレドープ層または負極活物質層とが対向するように積層させることにより積層体を作製することができる。
そして、正極、負極前駆体のそれぞれに集電板および/またはリードを接続し、集電板またはリードが導出するように、積層体をアルミニウムのラミネートフィルムバッグに収容する。その後、注液機により電解液を注液して、減圧下で端部をシールして電池とする。
(4)リチウムドープ工程
続いて、リチウムプレドープ層のリチウムを負極活物質にドープすることにより負極前駆体を負極に変換する。具体的には、電解液の注液により、リチウムプレドープ層内のリチウムが負極活物質にドープされる。例えば、図3Aに示す形態では、第1リチウムプレドープ層33b中のリチウム16が正極非対向部13bの負極活物質にドープされる。また、図4Aおよび図5Aに示す形態では、第1リチウムプレドープ層33b中のリチウム16が正極非対向部13bの負極活物質に、第2リチウムプレドープ層33a中のリチウム16が正極対向部13aの負極活物質層にドープされる。なお、リチウムプレドープ層が金属リチウムから構成される場合、すなわち、リチウムプレドープ層がリチウム元素のみから構成される場合には、リチウムのドープ後にはリチウムプレドープ層が消失し、負極前駆体は負極へと変換される(図3B、図4B、図5B)。一方、リチウムプレドープ層がリチウム合金のようにリチウム元素以外の材料を含んで構成される場合には、リチウムのドープ後においてもリチウムプレドープ層(例えば、リチウム合金の場合にはリチウムと合金化する元素)が残存する。これにより、リチウムイオンがドープされた負極活物質を含む負極活物質層を有するリチウムイオン二次電池が得られる。
(エージング工程)
上記工程により得られた電池(発電要素)は、好ましくは所定の時間エージング(静置)される。当該処理は1回のみ行われてもよいし、複数回行われてもよい。エージング工程を実施することにより、活物質層における単位面積当たりのリチウム量を均一化することができ、信頼性の向上した電池が得られる。
エージングの温度は、リチウム量の均一化のために必要な時間(エージング時間)を短縮する点で好ましくは20〜80℃、より好ましくは40〜60℃である。また、エージング時間は、フッ化黒鉛の量とリチウムのドープ量により異なるが、通常24〜120時間程度である。
エージングは電池の組み立てや予備充電の後に行なってもよい。予備充電の条件は特に制限されない。例えば、20〜60℃の雰囲気下、定電流方式(電流:0.5C)で10分間充電する方法を用いてもよい。
上記では電解質が液体電解質である場合の積層型電池を例に挙げて説明したが、ゲル電解質や真性ポリマー電解質を用いた場合についても、公知の技術を参照して実施可能であり、ここでは省略する。
なお、正極対向部の膨張率と正極非対向部の膨張率との差を低減するための手段として、負極や正極の構造を変更する、例えば、負極の正極非対向部の厚みを正極対向部に比べて厚く形成するという方法も考えられる。しかしながら、電極の構造を任意に変更するには塗布コーターでの制御が必要となり、塗布工程の改造する必要が生じる。また、厚みの制御範囲も数μmレベルの制御を要するため、精密さが求められ、非常に煩雑な工程となってしまう。このような煩雑な工程は、大規模生産においては、特に不利である。
これに対して、本実施形態の製造方法によれば、リチウムプレドープ層の形成という、従来の負極活物質の不可逆容量低減を目的とした必須作業に組み込ませられる簡易な工程で正極対向部の膨張率と正極非対向部の膨張率との差を低減することが可能となる。また、リチウムプレドープ層の形成においては、スプレー塗布など、任意の部位に所望の量を精密に塗布することができる。本実施形態では、煩雑な構造制御を行うことなく、簡易で安価な方法で充放電時の活物質の膨張収縮に伴う負極の正極対向部と非対向部との境界における応力を低減することが可能となったのである。
[電池の外観]
図6は、本発明の一実施形態である積層型電池の外観を模式的に表した斜視図である。図6に示すように、積層型電池10は、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための負極集電板25、正極集電板27が引き出されている。発電要素21は、電池10の外装体29によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素21は負極集電板25および正極集電板27を引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素21は、図1に示す積層型電池10の発電要素21に相当し、負極(負極活物質層)13、電解質層17および正極(正極活物質層)15で構成される単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。
なお、本発明のリチウムイオン二次電池は、図1に示すような扁平な形状(積層型)のものに制限されるわけではない。例えば、巻回型のリチウムイオン電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよい。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートシートを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよく、特に制限はない。
また、図6に示す集電板25、27の取り出しに関しても、特に制限されず、負極集電板25と正極集電板27とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし負極集電板25と正極集電板27をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出すようにしてもよい。また、巻回型の双極型二次電池では、集電板に代えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
本実施形態によれば、充放電サイクルに優れるリチウムイオン二次電池が提供されうる。本実施形態のリチウムイオン二次電池は、電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
[実施例1]
(1)負極活物質層の形成工程
負極活物質としてSiO(80質量%、平均粒子径:10μm)、導電剤としてアセチレンブラック(10質量%)、およびバインダーとしてポリイミド前駆体であるポリアミック酸溶液(宇部興産(株)製のU−ワニス−A)(ポリイミドとして10質量%に相当)を混合した。この混合物をスラリー粘度調整溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン溶液の適量に分散させ、負極活物質スラリーを調製した。
この負極活物質スラリーを、負極集電体としての銅箔(厚さ:10μm)の片面上に塗布し、乾燥させた。これにより、ポリアミック酸溶液はイミド化された。その後プレスすることで、負極集電体上に活物質層厚みが30μmである負極活物質層を形成した。
これを電極部サイズが225mm×200mmとなるように、溶接するタブ部を残して打ち抜いた。
(2)リチウムプレドープ層の形成工程
続いて、負極活物質層表面の正極対向部に相当する部分に負極活物質層の正極対向部中の負極活物質の容量の27%に相当する量のリチウム金属(平均粒子径:50μm)を塗布し、第2リチウムプレドープ層(厚み:3.7μm)を形成した。その後、負極活物質層表面の正極非対向部に相当する部分に負極活物質層の正極非対向部中の負極活物質の容量の75%に相当する量のリチウム金属(平均粒子径:50μm)を塗布し、第1リチウムプレドープ層(厚み:5.4μm)を形成した。すなわち、正極対向部のリチウムイオンドープ率が27%に、正極非対向部のリチウムイオンドープ率が75%になるようにした。これにより、負極活物質層の正極非対向部の表面にリチウムを含む第1リチウムプレドープ層が、負極活物質層の正極対向部の表面にリチウムを含む第2リチウムプレドープ層が、それぞれ形成された負極前駆体を得た。これにより、積層用の負極前駆体を得た。
(3)積層体の作製工程
正極活物質としてのニッケル酸リチウム(93質量%)、導電剤としてアセチレンブラック(3質量%)、およびバインダーとしてポリイミド前駆体であるポリアミック酸溶液(宇部興産(株)製のU−ワニス−A)(ポリイミドとして4質量%に相当)を混合した。この混合物を負極活物質層の形成工程と同様にして、正極集電体としてのアルミニウム箔(厚さ:20μm)の片面上に塗布し、乾燥させた後にプレスすることで、正極集電体上に活物質層厚みが100μmである正極活物質層が形成された正極を得た。得られた正極を、電極部サイズが220mm×196mmとなるように、溶接するタブ部を残して打ち抜き、積層用の正極を作製した。
上記で作製した積層用の正極1枚と、積層用の負極前駆体1枚とをセパレータを介して積層させることにより、積層体を作製した。この積層体の正極にアルミニウム製タブリードを、負極前駆体にニッケル製タブリードを、超音波溶接にて接続させた。次いで、当該積層体を、積層体のサイズに成形されたアルミラミネートフィルムの外装の内部に入れ、電解液を注液する1辺を残し、残り3辺を熱融着して袋状にした。
(4)リチウムドープ工程
アルミラミネートフィルムの内部に、所定量の電解液を注入して含浸させた後、残りの1辺を真空封止して評価用セルを作製した。電解液の含浸により、負極活物質層にリチウムがドープされ、負極前駆体が負極へと変換される。なお、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)との等体積混合液(EC:DMC=1:1(体積比))にリチウム塩であるLiPFが1.0Mの濃度となるように溶解した溶液を用いた。
(エージング)
上記の方法で作製した評価用セルについて、60℃雰囲気下で3日間エージング(静置)した。
リチウムのドープにより(エージング後)、負極活物質層の正極対向部の厚みはリチウムドープ工程前の正極対向部の厚みに比べて1.2倍に膨張し、負極活物質層の正極非対向部の厚みはリチウムドープ工程前の正極非対向部の厚みに比べて1.3倍に膨張した。
[実施例2]
(2)リチウムプレドープ層の形成工程において、負極活物質層表面の正極非対向部に相当する部分に塗布するリチウム金属の量を、負極活物質層の正極非対向部中の負極活物質の容量の50%に相当する量とした。すなわち、正極対向部のリチウムイオンドープ率が27%に、正極非対向部のリチウムイオンドープ率が50%になるように、第2リチウムプレドープ層(厚み:3.7μm)および第1リチウムプレドープ層(厚み:6.8μm)を形成した。このこと以外は実施例1と同様にして評価用セルを作製し、評価用セルのエージングを行った。
リチウムのドープにより(エージング後)、負極活物質層の正極対向部の厚みはリチウムドープ工程前の正極対向部の厚みに比べて1.2倍に膨張し、負極活物質層の正極非対向部の厚みはリチウムドープ工程前の正極非対向部の厚みに比べて1.46倍に膨張した。
[実施例3]
(2)リチウムプレドープ層の形成工程において、負極活物質層表面の正極非対向部に相当する部分に塗布するリチウム金属の量を、負極活物質層の正極非対向部中の負極活物質の容量の40%に相当する量とした。すなわち、正極対向部のリチウムイオンドープ率が27%に、正極非対向部のリチウムイオンドープ率が40%になるように、第2リチウムプレドープ層(厚み:3.7μm)および第1リチウムプレドープ層(厚み:10.2μm)を形成した。このこと以外は実施例1と同様にして評価用セルを作製し、評価用セルのエージングを行った。
リチウムのドープにより(エージング後)、負極活物質層の正極対向部の厚みはリチウムドープ工程前の正極対向部の厚みに比べて1.2倍に膨張し、負極活物質層の正極非対向部の厚みはリチウムドープ工程前の正極非対向部の厚みに比べて1.84倍に膨張した。
[比較例1]
(2)リチウムプレドープ層の形成工程を行わず、負極集電体上に負極活物質層が形成された電極をそのまま負極として使用した。すなわち、正極対向部のリチウムイオンドープ率および正極非対向部のリチウムイオンドープ率が共に0%になるようにした。このこと以外は、実施例1と同様にして評価用セルを作製し、評価用セルのエージングを行った。
当該評価用セルにおいては、電解液の注液によりリチウムのドープが生じないため、エージング工程後において負極活物質層の正極非対向部および正極対向部はいずれも膨張しなかった。
[比較例2]
(2)リチウムプレドープ層の形成工程において、負極活物質層表面の正極非対向部に相当する部分に塗布するリチウム金属の量を、負極活物質層の正極非対向部中の負極活物質の容量の27%に相当する量とした。すなわち、正極対向部のリチウムイオンドープ率および正極非対向部のリチウムイオンドープ率が共に27%になるように、第2リチウムプレドープ層(厚み:3.7μm)および第1リチウムプレドープ層(厚み:3.7μm)を形成した。このこと以外は実施例1と同様にして評価用セルを作製し、評価用セルのエージングを行った。
リチウムのドープにより(エージング後)、負極活物質層の正極対向部の厚みおよび正極非対向部の厚みは、それぞれリチウムドープ工程前の正極対向部の厚みおよび正極非対向部の厚みに比べて1.2倍に膨張した。
[評価:充放電サイクル試験]
上記の方法で作製した各評価用セルについて、25℃の雰囲気下、定電流定電圧方式(CCCV、電流:0.5C、電圧:4.2V)で3時間充電し、5分間休止させた。その後、定電流(CC、電流:0.5C)でセル電圧2.7Vまで放電させ、放電後5分間休止させた。この充放電過程を1サイクルとし、100サイクルの充放電サイクル試験を実施した。また、100サイクル目の満充電時(SOC=100%)の負極活物質層の正極対向部および正極非対向部の厚みを計測し、リチウムドープ工程前の正極対向部の厚みおよび正極非対向部の厚みに対する膨張率(倍)を算出した。
その後、各評価用セルを解体し、負極のエッジ切れ点の数を計測した。結果を下記の表1に示す。
Figure 2011060520
表1より、充電状態(SOC)が0%であるときの前記正極非対向部のリチウムイオンドープ率が前記正極対向部のリチウムイオンドープ率に比べて大きい実施例1〜3のセルは、エッジ切れ点数が小さく、負極エッジ部での破損を抑制できることが確認された。これに対して、リチウムのプレドープを行っていない、すなわち、正極非対向部および正極対向部のリチウムイオンドープ率が共に0%である比較例1のセルや27%である比較例2のセルではエッジ切れ数が大きくなった。これらのセルでは、電池の充放電時に、負極の正極対向部の膨張率と非対向部の膨張率との差が大きいため、正極対向部と非対向部との境界において応力が発生し、負極のエッジ部に多数の破損が生じたと考えられる。
以上から、負極活物質層の正極非対向部のリチウムイオンドープ率および正極対向部のリチウムイオンドープ率が制御された本発明のリチウムイオン二次電池においては、サイクル特性が向上することが確認された。
10 積層型電池、
11 負極集電体、
12 正極集電体、
13 負極活物質層(負極)、
13a 正極対向部、
13b 正極非対向部、
15 正極活物質層(正極)、
16 リチウムイオン、
17 電解質層、
19 単電池層(単セル)、
21 発電要素、
25 負極集電板、
27 正極集電板、
29 外装体(ラミネートシート)、
32 負極前駆体、
33a 第2リチウムプレドープ層、
33b 第1リチウムプレドープ層。

Claims (6)

  1. 正極と;
    集電体と、前記集電体の表面に形成され、リチウムイオンがドープされた負極活物質を含む負極活物質層とを有する負極と;
    前記正極と前記負極との間に介在する電解質層と;
    を有するリチウムイオン二次電池であって、
    前記負極活物質層が正極対向部および正極非対向部を有し、かつ
    充電状態(SOC)が0%であるときの前記正極非対向部のリチウムイオンドープ率が、前記正極対向部のリチウムイオンドープ率に比べて大きい、リチウムイオン二次電池。
  2. 前記負極活物質がリチウムと合金化する材料または炭素材料を含む、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 充電状態(SOC)が0%のとき、前記正極対向部のリチウムイオンドープ率Aと前記正極非対向部のリチウムイオンドープ率Bとの比(A/B)は0.7以下である、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
  4. 正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在する電解質層と、を有するリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
    集電体上に負極活物質を含む負極活物質層を形成する工程と、
    前記負極活物質層の正極非対向部の表面にリチウムを含む第1リチウムプレドープ層を形成することにより負極前駆体を作製する工程と、
    前記負極前駆体と正極とを電解質層を介して積層させる工程と、
    前記第1リチウムプレドープ層のリチウムを前記負極活物質にドープすることにより負極前駆体を負極に変換する工程と、
    を含む、リチウムイオン二次電池の製造方法。
  5. 前記負極前駆体を作成する際に、前記負極活物質層の正極非対向部の表面にリチウムを含む第1リチウムプレドープ層を形成し、かつ、前記正極非対向部のリチウムイオンドープ率が正極対向部のリチウムイオンドープ率に比べて大きくなるように、前記負極活物質層の正極対向部の表面にリチウムを含む第2リチウムプレドープ層を形成し、かつ、
    負極前駆体を負極に変換する際に、前記第1リチウムプレドープ層のリチウムおよび前記第2リチウムプレドープ層のリチウムを前記負極活物質にドープする、請求項4に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  6. 前記第1リチウムプレドープ層の厚みを前記第2リチウムプレドープ層の厚みよりも大きく形成する、請求項5に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
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