JP4120771B2 - 非水系二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水系二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、省資源を目指したエネルギーの有効利用および地球環境保全の観点から、深夜電力貯蔵および太陽光発電の電力貯蔵を目的とした家庭用分散型蓄電システム、電気自動車のための蓄電システムなどが注目を集めている。例えば、特開平6-86463号公報は、エネルギー需要者に最適条件でエネルギーを供給できるシステムとして、発電所から供給される電気、ガスコージェネレーション、燃料電池、蓄電池などを組み合わせたトータルシステムを開示している。このような蓄電システムでは、エネルギー容量が10Wh以下の携帯機器用小型二次電池は使用できず、容量の大きな大型二次電池が必要とされる。このため、上記の蓄電システムでは、通常、複数の二次電池を直列に接続し、電圧50〜400V程度の組電池として用いている。また、殆どのシステムにおいて、鉛電池を用いている。
【0003】
一方、携帯機器用小型二次電池の分野では、小型化および高容量化という相反するニーズに応えるべく、ニッケル水素電池、リチウム二次電池などの開発が急速に進んでいる。現在、180Wh/l以上の体積エネルギー密度を有する電池が、市販されている。特に、リチウムイオン電池は、350Wh/lを超える体積エネルギー密度を達成する可能性を有すること;金属リチウムを負極に用いるリチウム二次電池に比べて、安全性、サイクル特性などの信頼性に優れることなどから、その市場は飛躍的に拡大しつつある。
【0004】
この様なリチウムイオン電池の正極活物質として、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物などの4Vを超える起電力を有する材料が用いられている。これらの中でも、電池特性に優れ、かつ合成も容易なリチウムコバルト複合酸化物が、現在最も多量に用いられている。
【0005】
しかしながら、原材料であるコバルトは、可採埋蔵量が少なく、かつ高価であるので、従来から、その代替物質としてリチウムニッケル複合酸化物の使用が検討されている。リチウムニッケル複合酸化物は、リチウムコバルト複合酸化物と同様に層状岩塩構造を有し、200mAh/gを超える高容量材料である。
【0006】
しかしながら、リチウムニッケル複合酸化物は、充電時に生成するNi4+が化学的に不安定であること、リチウムが構造中から多量に引き抜かれた高充電状態でのリチウムニッケル複合酸化物の構造が不安定であることなどに起因して、結晶格子からの酸素脱離開始温度が低いという問題点を有している。例えば、Solid State Ionics,69,No.3/4,265(1994)には、“充電状態のリチウムニッケル複合酸化物の酸素脱離開始温度は、従来のリチウムコバルト酸化物に比べて低い”ことが報告されている。
【0007】
この様な理由により、リチウムニッケル複合酸化物を単独で正極活物質に用いた電池は、高容量が得られるが、高充電状態での熱安定性に問題があり、電池としての安全性が十分に確保できていないので、現在まで実用化されていない。
【0008】
一方、リチウムマンガン複合酸化物は、スピネル型の結晶構造を有するので、層状岩塩構造を有するリチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物などとは、構造的に異なる。この構造の相違に起因して、リチウムマンガン複合酸化物の高充電状態での酸素脱離開始温度は、リチウムコバルト複合酸化物およびリチウムニッケル複合酸化物に比べて、高い。即ち、リチウムマンガン複合酸化物は、安全性の高い正極活物質である。
【0009】
しかしながら、リチウムマンガン複合酸化物を正極に用いたリチウム二次電池は、充放電を繰り返すことによって徐々に容量が低下していく所謂「容量劣化」を引き起こす。このため、その実用化は困難であった。
【0010】
この様な小型電池の負極活物質として、特開昭57-208079号公報および特開昭63-24555号公報は、可撓性に優れ、かつ充放電サイクル時にリチウムが樹枝状に析出する恐れのない材料として、黒鉛を開示している。天然黒鉛、人造黒鉛、酸処理により不純物を低減した黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、黒鉛化炭素繊維などの黒鉛系材料は、独特の層構造に基づいて層間化合物を形成するという性質を有している。現在、この性質を利用して、これらの黒鉛系材料は、二次電池用電極材料として、実用化されている。
【0011】
さらに、結晶性の低い材料の使用も、提案されている。例えば、特開昭63-24555号公報は、電解液の分解を抑制するために、炭化水素を気相で熱分解して得られる乱層構造と選択配向性とを有する種々の炭素材料を開示している。
【0012】
しかしながら、これらの高結晶性材料および低結晶性材料は、それぞれ長所と短所とを持ち合わせている。
【0013】
黒鉛を代表とする結晶性の高い炭素材料を負極材料として使用する場合には、理論的にはリチウムの吸蔵・放出に伴う電位の変化が小さくなり、電池として利用できる容量が大きくなることが知られている。
【0014】
しかしながら、炭素材料の結晶性が高くなるとともに、電解液の分解に伴うものと思われる充放電効率の低下が生じ、さらに充放電の繰り返しに伴う結晶の膨張/収縮により、炭素材料が破壊されるに至る。
【0015】
これに対して、結晶性の低い炭素材料を負極として使用する場合には、充放電に関連する問題点はあまり生じないが、リチウムイオンの吸蔵/放出に伴う電位の変化が大きくなるので、電池として利用できる容量が小さくなり、高容量電池の作製が困難となる。
【0016】
特開平4-368778号公報は、結晶性の高い炭素粒子に結晶性の低い炭素を被覆した二重構造を形成させることにより、充放電の繰り返しによる炭素材料の破壊を防止できることを開示している。すなわち、この方法で調製した二重構造の炭素材料を活物質として用いる場合には、理論的には電解液の分解を防止して、電位の平滑性に優れた高容量の電極を得ることができる。また、この炭素材料は、安価であるという利点をも有している。
【0017】
しかしながら、この二重構造活物質粒子を負極材料として用いる電池は、高容量ではあるが、サイクル経過による劣化が大きい。また、この材料粉体は、非常に嵩高いので、集電体である銅箔との接着性を高めるためには、負極構成材料中に占めるバインダーを多量に(10重量%以上)使用する必要がある。
【0018】
これらの材料を正極に用いる蓄電システム用大型電池の分野においても、高エネルギー密度電池の一つの有力な選択肢として、リチウムイオン電池の開発が、リチウム電池電力貯蔵技術研究組合(LIEBES)などにより精力的に進められている。
【0019】
この様な大型リチウムイオン電池のエネルギー容量は、100〜400Wh程度であり、体積エネルギー密度は、200〜400Wh/lと携帯機器用小型二次電池と同等のレベルに達している。その寸法および形状は、直径50〜70mm×長さ250〜450mm程度の円筒形、厚さ35〜50mm程度の角形或いは長円角形などの扁平角柱形が代表的なものである。
【0020】
しかしながら、これらの大型リチウムイオン電池においては、高エネルギー密度は得られるものの、その電池設計が携帯機器用小型電池の延長線上にあることから、直径或いは厚さが携帯機器用小型電池の3倍以上である円筒型或いは角型等の電池形状に形成されている。この場合には、充放電時の電池の内部抵抗によるジュール発熱、或いはリチウムイオンの出入りに伴って活物質のエントロピーが変化することによる電池の内部発熱により、電池内部に熱が蓄積されやすい。このため、電池内部の温度と電池表面付近の温度差が大きくなり、これに伴って内部抵抗が異なってくるので、充電量、電圧などのバラツキを生じ易い。また、この種の電池は、複数個を組電池にして用いるため、システム内での電池の設置箇所によっても、蓄熱されやすさが異なって各電池間のバラツキを生じて、組電池全体の正確な制御が困難になる。更には、高率充放電時等に際して放熱が不十分であるため、電池温度が上昇し、電池にとって好ましくない状態におかれることから、電解液の分解などによる寿命の低下、さらには電池の熱暴走などの点で、信頼性、特に安全性が十分に確保されているとは、言い難い。
【0021】
上記の問題を解決するために、WO99/60652号、公開2000-251940号、2000-251941号、2000-260478号、2000-260477号などの公報類には、正極、負極、セパレータおよびリチウム塩を含む非水系電解質を電池容器内に収容した扁平形状の非水系二次電池であって、前記非水系二次電池は、その厚さが12mm未満の扁平形状であり、そのエネルギー容量が30Wh以上且つ体積エネルギー密度が180Wh/l以上の非水系二次電池が開示されている。これらの公報類に記載された技術は、電池を独特の形状(扁平形状)とすることにより、上記蓄熱に起因する信頼性および安全性に関わる問題点を解決し、実用化への障害を解消しようとしている。
【0022】
一般に、蓄電システム用電池などの大型電池には、高い安全性と1000サイクル以上の優れたサイクル寿命が求められている。
【0023】
しかしながら、正極材料にリチウムニッケル複合酸化物を用いる電池は、高充電時の熱的安定性に欠けるので、安全性が低いという問題点がある。また、リチウムマンガン複合酸化物を用いる電池では、安全性は高いものの、(1)高エネルギー密度(高充放電容量)の実現と高サイクル寿命の両立が困難であること、および(2)自己放電により保存容量が減少するという2つの問題点がある。
【0024】
まず、リチウムマンガン複合酸化物を用いる電池において、高容量が実現できない原因としては、複合酸化物合成時の反応の不均一、混入不純物の影響などが考えられる。また、充放電サイクルに伴う容量の劣化原因としては、Liの出入りに伴う電荷補償としてMnイオンの平均価数が3価と4価との間で変化して、そのためにJahn-Teller歪みが結晶中に生じること、リチウムマンガン複合酸化物からのMnが溶出すること、溶出したMnが負極活物質上またはセパレータ上に析出することに起因してインピーダンスが上昇すること、さらには、不純物の影響、活物質粒子の遊離による不活性化、含水水分により電解液中に生成した酸の影響、リチウムマンガン複合酸化物からの酸素放出による電解液の劣化などが考えられる。
上記Mn溶出の影響は、特に黒鉛系の炭素材料を負極に用いた場合に大きく、サイクル容量が大きく低下する。この現象は、負極活物質の利用率を活物質1g当り255mAhとしたときに顕著である。この原因は、黒鉛系材料の充放電電位が低いため、その表面に析出したマンガン化合物が電解液の分解、ガス発生等に関与するものと思われる。
【0025】
スピネル単一相が形成されている場合には、Mnの溶出原因は、スピネル構造中の3価のMnが、4価と2価に一部不均化することにより電解液中に溶解し易い形になってしまうこと、Liイオンの相対的な不足から溶出してしまうことなどが考えられる。その結果、充放電の繰り返しにより不可逆な容量分の発生および結晶中の原子配列の乱れが促進されるとともに、溶出したMnイオンが負極或いはセパレータに析出して、Liイオンの移動を妨げるものと推測される。また、リチウムマンガン複合酸化物はLiイオンを出し入れすることにより、結晶はJahn-Teller効果により歪み、単位格子長の数%の膨張収縮を伴う。したがって、充放電サイクルを繰り返すことにより、粒子の一部電気的な孤立により活物質として機能しなくなることも推測される。
【0026】
さらに、Mn溶出とともにリチウムマンガン複合酸化物からの酸素の放出も容易になってくるものと考えられる。酸素の放出量が多くなってくると、電解液の分解を促進するものと推測され、電解液の劣化による充放電サイクル劣化も生じるものと推測される。
【0027】
この様なMn溶出の抑制、格子歪みの低減、酸素欠損の低減などを実現することが、リチウム電池のサイクル特性を改善する上で重要である。そこで、特開平2-270268号公報は、Liの組成を化学量論比に対し十分過剰とすることにより、サイクル特性を向上させることが開示されている。さらに、リチウムマンガン複合酸化物のMn元素の一部をCo、Ni、Fe、Cr、Alなどを添加ないしドープにより置換することにより、サイクル特性が改善することも開示されている(特開平4-141954号公報、特開平4-160758号公報、特開平4-169076号公報、特開平4-237970号公報、特開平4-282560号公報、特開平4-289662号公報など)。これらのLi過剰組成、金属元素の添加などの手法は、サイクル特性の向上には、効果を発揮するものの、逆に充放電容量の低減を伴うので、高サイクル寿命と高容量との両方を満足させるには至っていない。
【0028】
特開平10-112318号公報は、正極活物質として、リチウムマンガン複合酸化物とリチウムニッケル複合酸化物との混合物を用いることを開示している。この公報によると、初回充放電における不可逆容量が補填され、大きな充放電容量が得られる。また、特開平7-235291号公報も、正極活物質として、リチウムマンガン複合酸化物とLiCo0.5Ni0.5O2との混合物を開示している。
【0029】
しかしながら、本発明者の研究によれば、正極活物質として単にリチウムマンガン複合酸化物とリチウムニッケル複合酸化物との混合物を用いるだけでは、充放電特性、サイクル特性などの改善は未だ不十分であり、特に大型電池の安全性に関しては、到底満足できる成果は得られない。
【0030】
また、電池の形状に関しては、従来の小型電池の設計思想を引き継ぐ角形、円筒型などの大型電池においては、内部蓄熱などのために、安全性の改善は望み得ない。
【0031】
リチウムイオン電池の電解液には、LiPF6、LiBF4などのリチウム塩などの電解質材料をエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒またはエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒に溶解させた非水系電解質が一般的に用いられている。
【0032】
しかしながら、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合溶媒を用いた電解液では、高温におけるサイクル寿命が短いという問題点がある。
【0033】
また、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒を用いた電解液では、0℃以下の低温での電池容量が小さくなるという問題を有しており、低温における長いサイクル寿命と高容量維持の両立が困難である。
【0034】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、30Wh以上の大容量且つ180Wh/l以上の高体積エネルギー密度を有し、その厚さが12mm未満であり、高容量で、サイクル寿命及び低温特性に優れた扁平形状の非水系二次電池を提供することを主な目的とする。
【0035】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の様な技術の現状に留意しつつ研究を進めた結果、特定の構成を備えた非水系二次電池が、上記目的を達成することに成功した。
【0036】
すなわち本発明は、下記の非水系二次電池を提供する。
1.正極、負極、セパレーター及びリチウム塩を含む非水系電解質を電池容器内に収容し、厚さが12mm未満の扁平形状であり、エネルギー容量が30Wh以上且つ体積エネルギー密度が180Wh/l以上である非水系二次電池において、
正極における活物質が、以下の式(1)で表されるリチウムマンガン系複合酸化物と式(2)で表されるリチウムニッケル系複合酸化物とからなる混合物であり、
LixMn2-yMAyO4+z (1)
[式中、MAは、Mg、Al、Cr、Fe、CoおよびNiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、1<x≦1.2、0<y≦0.1および-0.3≦z≦0.3]
LiaNibMBcO2 (2)
[式中、MBは、Co、AlおよびMnからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、1≦a≦1.1、0.5<b<1、0<c<0.5およびb+c=1]
負極における活物質が、X線広角回折法による(002)面の面間隔(d002)が0.34nm以下である黒鉛系粒子の表面を面間隔0.34nmを超える非晶質炭素層で被覆した二重構造黒鉛粒子と黒鉛化メソカーボンマイクロビーズとからなる混合物であり、前記負極活物質が、満充電時にリチウムを活物質1g当り200mAh〜255mAh吸蔵し、
リチウム塩を含む非水系電解質が、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートからなる混合溶媒を含み、
エチルメチルカーボネートとジエチルカーボネートの合計体積が、全溶媒体積の50〜90%であり
ジエチルカーボネートの体積が、全溶媒体積の10〜40%とすることを特徴とする非水系二次電池。
2.扁平形状の表裏面の形状が、矩形である上記1に記載の非水系二次電池。
3.電池容器の板厚が、0.2〜1mmである上記1または2に記載の非水系二次電池。
【0037】
【発明の実施の形態】
本発明における非水系二次電池は、厚さが12mm未満の扁平形状であり、エネルギー容量が30Wh以上且つ体積エネルギー密度が180Wh/l以上である。
【0038】
本発明の二次電池の形状は、厚さが12mm未満の扁平形状である限り特に制限されず、例えば、WO99/60652号、特開2000-251940号公報、特開2000-251941公報、特開2000-260478号公報、特開2000-260477号公報などに記載されている形状を具体例として例示することができる。
【0039】
以下、図面に示す本発明の一実施形態による非水系二次電池を参照しつつ、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0040】
図1は、本発明の非水系二次電池の一実施形態について、平面図及び側面図を示す図であり、図2は、図1に示す電池の内部に収納される電極積層体の構成を示す側面図である。図1において、非水系二次電池は、厚さが12mm未満の扁平形状であり、表裏面の形状が矩形である。
【0041】
図1および図2に示す様に、本実施形態による非水系二次電池は、例えば、上蓋1および底容器2からなる電池容器と、該電池容器の中に収納されている複数の正極101a、負極101b、101cおよびセパレータ104からなる電極積層体とを備えている。本実施形態の様な扁平型非水系二次電池においては、正極101a、負極101b(または積層体の両外側に配置された負極101c)は、例えば、図2に示す様に、セパレータ104を介して交互に配置されて積層されているが、本発明による非水系二次電池は、この様な特定の配置に限定されるものではない。例えば、積層数などは、必要とされる容量などに応じて、種々の変更が可能である。図1および図2に示す非水系二次電池の形状は、例えば縦約300mm×横約210mm×厚さ約6mmである。
【0042】
各正極101aの正極集電体105aは、正極端子3に電気的に接続されている。同様に、各負極101b、101cの負極集電体105bは、負極端子4に電気的に接続されている。正極端子3及び負極端子4は、電池容器、すなわち上蓋1と絶縁された状態で取り付けられている。
【0043】
上蓋1および底容器2は、図1中の拡大図に示したA点で全周にわたり上蓋を溶かし込み溶接されている。上蓋1には、電解質などの注液口5が開けられており、電解質などを注液した後、例えば、アルミニウム-変成ポリプロピレンラミネートフィルムからなる封口フィルム6を用いて封口される。最終封口工程は、少なくとも1回の充電操作実施後に行うことが好ましい。封口フィルム6による最終封口工程後の電池容器内の圧力は、大気圧未満であることが好ましく、8.66×104Pa(650Torr)以下程度であることがより好ましく、7.33×104Pa (550Torr)以下程度であることが特に好ましい。電池容器内の圧力は、使用するセパレータ、電解質などの種類、電池容器の材質および厚み、電池の形状などを総合的に考慮して決定することができる。内圧が大気圧未満とした場合には、電池の厚みが、設計厚みより大きくなることを抑制できる。または、電池の厚みが、ばらつくことを抑制することができるので、電池の内部抵抗および容量がばらつきにくい。
【0044】
本発明の二次電池では、正極101aにおいて用いられる正極活物質として、以下の式(1)で表されるリチウムマンガン系複合酸化物(以下「式(1)複合酸化物」と言うことがある)と式(2)で表されるリチウムニッケル系複合酸化物(以下「式(2)複合酸化物」と言うことがある)からなる混合物を用いる。
【0045】
LixMn2-yMAyO4+z (1)
[式中、MAは、Mg、Al、Cr、Fe、CoおよびNiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、1<x≦1.2、0<y≦0.1および-0.3≦z≦0.3]
LiaNibMBcO2 (2)
[式中、MBは、Co、AlおよびMnからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、1≦a≦1.1、0.5<b<1、0<c<0.5およびb+c=1]
前記式(1):LixMn2-yMAyO4+zにおいて、Liのモル比を示すxは、通常1<x≦1.2程度である。xが小さすぎる場合には、サイクル特性が十分に改善されない。一方、xが大きすぎる場合には、活物質の容量が、大きく低下する。
【0046】
MAのモル比を示すyは、通常0<y≦0.1程度である。yが大きすぎる場合には、活物質の容量が、大きく低下する。
【0047】
式(1)中のMnと置換する元素MAとしては、Mg、Al、Cr、Fe、Co、Niなどが挙げられ、これらの中では、Al、MgおよびCrがより好ましい。
【0048】
式(1)中において、zは、通常-0.3≦z≦0.3程度である。
【0049】
前記式(2):LiaNibMBcO2において、Liのモル比を示すaは、通常1≦a≦1.1程度である。
【0050】
式(2)においてNiのモル比を示すbは、通常0.5<b<1程度である。bが小さすぎる場合には、容量が小さくなり過ぎるのに対し、b=1の場合には、活物質のサイクル特性が著しく低下する。
【0051】
式(2) 中のNiと置換する元素MBは、Co、AlおよびMnからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0052】
MBのモル比であるcは、0<c<0.5程度である。cが0である場合(すなわち、Niを置換しない場合)には、活物質のサイクル特性が改善されないのに対し、0.5以上である場合には、容量が小さくなり過ぎる。
【0053】
さらに、本発明で正極活物質として使用する混合物において、式(1)複合酸化物(1)の割合は、式(1)複合酸化物と式(2)複合酸化物との合計量を100重量部としたときに、通常70〜95重量部程度、好ましくは70〜85重量部程度である。上記の範囲とすることによって、より確実に本発明の効果を得ることができる。
【0054】
正極活物質の平均粒径は、特に制限されず、公知の活物質と同等の粒径とすることができる。正極活物質の平均粒径は、通常1〜60μm程度、好ましくは5〜40μm程度、より好ましくは10〜30μm程度である。なお、本明細書において、「平均粒径」とは、乾式レーザー回折測定法により得られた体積粒度分布における中心粒径を意味する。
【0055】
正極活物質の比表面積は、特に制限されないが、式(1)複合酸化物では、通常1m2/g以下程度であり、より好ましくは0.2〜0.7m2/g程度である。式(2)複合酸化物では、通常1m2/g以下程度であり、より好ましくは0.2〜0.7m2/g程度である。これらの混合物である正極活物質全体の値としては、通常1m2/g以下程度であり、より好ましくは0.2〜0.7m2/g程度である。なお、本明細書において、「比表面積」とは、窒素ガスを使用するBET法による測定値を示す。
【0056】
負極101b、101cに用いられる負極活物質は、黒鉛粒子からなるコア部表面を非晶質炭素により被覆した二重構造黒鉛粒子(以下、簡略化のために「第一成分」ということがある)と黒鉛化メソカーボンマイクロビーズ(以下、簡略化のために「第二成分」ということがある)との混合物である。
【0057】
二重構造黒鉛粒子のコア部である黒鉛粒子は、X線広角回折法による(002)面の面間隔(d002)が0.34nm以下程度であり、好ましくは0.3354〜0.338nm程度、より好ましくは0.3354〜0.336nm程度である。この値が大きすぎる場合には、コア部の結晶性が低くなるので、リチウムイオンの放出に伴う電位の変化が大きくなり、電池として利用できる有効容量が低くなる。黒鉛系粒子コア部を被覆している非晶質炭素層の面間隔は、X線広角回折法による(002)面の面間隔(d002)が0.34nmを越える程度であり、より好ましくは0.34nmを越え0.38nm程度であり、さらに好ましくは0.34nmを越え0.36nm以下程度である。被覆層におけるこの値が小さすぎる場合には、結晶性が高すぎて、電解液の分解によるものと推測される充放電効率の低下が生じるとともに、充放電の繰り返しに伴う結晶の面間隔の膨張/収縮により、炭素材料が破壊される危険性が増大する。一方、(002)面の面間隔(d002)が大きすぎる場合には、リチウムイオンが移動し難くなり、電池として利用できる容量が小さくなるおそれがある。この様な二重構造黒鉛粒子の製造方法は、特に限定されるず、例えば、WO97/18160号などに記載されている公知の方法により製造することができる。
【0058】
黒鉛化メソカーボンマイクロビーズのX線広角回折法による(002)面の両面間隔(d002)は、通常0.34nm未満程度であり、好ましくは0.3354〜0.338nm程度であり、より好ましくは0.3354〜0.336nm程度である。黒鉛化メソカーボンマイクロビーズの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、特開平9-151382号公報などに記載されている公知の方法を用いることができる。黒鉛化メソカーボンマイクロビーズの容量は、二重構造黒鉛粒子に比べて小さいものの、比表面積が小さい。本発明において用いる負極活物質を利用すると、少量のバインダーにより電極を製造することができる。
【0059】
本発明において用いる負極活物質において、各成分の混合比は特に制限されないが、第一成分と第二成分の合計を100重量部としたときに、第一成分は、通常50〜95重量部程度であり、好ましくは60〜80重量部程度である。上記範囲とすることにより、バインダー量が少量であっても、集電体に対する良好な接着性をより確実に得ることができる。その結果、より確実に高い電池容量を得ることができる。
【0060】
負極活物質の平均粒径は、特に制限されず、例えば従来の活物質の粒径と同様とすることができる。平均粒径は、通常1〜60μm程度、好ましくは5〜40μm程度、より好ましくは10〜30μm程度である。
【0061】
負極活物質の比表面積は、特に制限されないが、通常0.2〜3m2/g程度であり、好ましくは0.2〜2.5m2/g程度である。
【0062】
本発明における負極活物質のリチウム吸蔵量は、満充電時にリチウムを活物質1g当り200mAh〜255mAh程度とする。負極活物質のリチウム吸蔵量が小さすぎる場合には、電池の容量が小さくなりすぎ、一方、大きすぎる場合には、サイクル寿命が極端に低下する。
【0063】
上記第一成分と第二成分との混合物を活物質として用いて負極を作製するには、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系材料などのバインダーを使用することができる。バインダーとしては、PVDF構造中に-COOH基などを導入した変性PVDFがより好ましい。
【0064】
セパレータは、特に限定されず公知のものを用いることができ、電池の耐熱性、所望の安全性などに応じて適宜決定することができる。セパレータの材質として、例えば、ポリオレフィン系材料(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)などの微孔膜;ポリアミド、クラフト紙、ガラス、セルロース系材料(レーヨンなど)などの不織布などが挙げられる。
【0065】
セパレータの構成は、特に限定されるものではなく、例えば、単層又は複層のセパレータを用いることができる。複層とする場合には少なくとも1枚は不織布を用いることが好ましい。不織布を少なくとも1枚用いる場合には、サイクル特性が向上する。
【0066】
本発明の二次電池は、リチウム塩を含む非水系電解質を用いる。非水系電解質に含まれるリチウム塩は、特に制限されず、正極材料、負極材料などの種類、充電電圧などの使用条件などを総合的に考慮して、常法に従って公知のリチウム塩の中から適宜決定することができる。例えば、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6などを例示することができ、LiPF6、LiBF4が好ましい。
【0067】
上記の非水系電解質は、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジエチルカーボネート(DEC)からなる混合溶媒を含む。
【0068】
EC、EMCおよびDECからなる混合溶媒におけるEMCとDECの合計体積は、全溶媒体積の通常50〜90%程度であり、好ましくは55〜85%程度であり、より好ましくは60〜80%程度である。EMCとDECの合計体積が少なすぎる場合には、比較的高い凝固点(39℃)を有するECの割合が多くなりすぎ、ECが低温で分離凝固しやすくなる。分離凝固すると、-10℃以下の低温における電池の放電容量は、著しく低下する。
【0069】
DECの体積は、全溶媒体積の通常10%〜40%程度である。DECの体積が少なすぎる場合には、50℃以上の高温におけるサイクル寿命が低下するおそれがある。一方、50%を越える場合には、-10℃以下の低温における電池の放電容量が著しく低下するおそれがある。
【0070】
エチレンカーボネートの体積は、全溶媒体積の通常10%以上程度である。
【0071】
非水系電解質におけるリチウム塩の濃度は、特に限定されるものではないが、混合溶媒1リットル当たり通常0.5〜2mol程度である。
【0072】
非水系電解質は、当然のことながら、水分含有量ができるだけ低いもの、具体的には水分含有量100ppm以下程度のものが好ましい。なお、本明細書で使用する「非水系電解質」という用語は、非水系電解液および有機電解液を含むものであり、さらにはゲル状ないし固体状の電解質も含む。
【0073】
本発明において用いる非水系電解質は、必要に応じて、ジスルフィド誘導体などの公知の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤の配合量は、本発明の効果が奏される限り特に制限されないが、非水系電解質全体に対して通常0.01〜5重量%程度である。
【0074】
本発明の正極及び負極は、所望の非水系二次電池の形状、特性などを考慮しつつ、公知の方法(例えば成形など)により作成することができる。より具体的には、活物質とバインダーと、必要に応じて導電材と有機溶媒とを含む混合物(例えばスラリー)を集電体に塗布後、乾燥し、成形する方法などを例示することができる。
【0075】
バインダーは、特に限定されず、具体例として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ四フッ化エチレンなどのフッ素系樹脂;フッ素ゴム、SBRなどのゴム系材料;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;アクリル樹脂などを例示でき、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系材料が好ましく、特に、PVDF構造中に-COOH基などを導入した変性PVDFがより好ましい。
【0076】
バインダーの配合量は、本発明の正極または負極活物質の種類、粒径、形状、目的とする電極の厚み、強度などに応じて適宜決定すれば良く、特に限定されるものではない。正極におけるバインダーの配合量は、正極活物質を100重量部としたときに、通常1〜30重量部程度である。負極におけるバインダーの配合量は、負極活物質を100重量部としたときに、通常1〜10重量部程度である。
【0077】
導電材は、当該分野において公知の導電材を用いることができ、例えば、アセチレンブラック、天然黒鉛、人工黒鉛、ケッチェンブラックなどを例示することができる。
【0078】
正極における導電材の使用量は、特に制限されず、活物質の種類などに応じて適宜設定することができる。正極における導電材の使用量は、正極活物質を100重量部としたときに、通常20重量部以下程度である。負極においては、導電材は不要あるいは混合するとしても負極活物質100重量部に対して、通常0.1〜10重量部程度と少なくする方が本発明の効果を得やすい。
【0079】
有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などを例示することができる。
【0080】
集電体は、特に限定されず、正極用集電体として、例えば、アルミ箔、負極用集電体として、例えば、銅箔、ステンレス鋼箔などが挙げられる。さらに、金属箔上あるいは金属の隙間に電極が形成可能であるもの、例えば、エキスパンドメタル、メッシュなどを正極用および負極用集電体として用いることができる。
【0081】
本発明の非水系二次電池は、大容量且つ高エネルギー密度を有するので、家庭用蓄電システム(夜間電力貯蔵、コージェネレーション、太陽光発電など)、電気自動車などの蓄電システムなどに用いることができる。この様な蓄電システムなどにおいて用いる場合は、エネルギー容量は、好ましくは30Wh以上程度、より好ましくは50Wh以上程度であり、且つエネルギー密度は、好ましくは180Wh/l以上程度、より好ましくは200Wh/l以上程度である。エネルギー容量または体積エネルギー密度が、小さすぎる場合には、電池容量が小さいので、充分なシステム容量を得るために電池の直並列数を増やす必要があること、コンパクトな設計が困難となることなどの理由により、蓄電システム用としては好ましくない。
【0082】
本発明の非水系二次電池は、扁平形状をしており、その厚さは12mm未満程度、より好ましくは10mm未満程度である。厚さの下限については、電極の充填率、電池サイズ(薄くなれば同容量を得るためには面積が大きくなる)などを考慮して、2mm以上程度とすることが実用的である。電池の厚さが厚すぎると、電池内部の発熱を充分に外部に放熱することが難しくなること、電池内部と電池表面付近とでの温度差が大きくなり内部抵抗が異なるので、電池内での充電量および電圧のバラツキが大きくなると言う大きな問題を生じる。なお、具体的な電池の厚さは、電池容量、エネルギー密度などに応じて、適宜決定されるが、特に期待する放熱特性が得られる最大厚さで設計することが好ましい。
【0083】
また、本発明の非水系二次電池は、例えば、扁平形状の表裏面が角形、円形、長円形などの種々の形状とすることができる。形状が角形である場合には、一般には矩形であるが、用途に応じて、三角形、六角形などの矩形以外の多角形とすることもできる。さらに、肉厚の薄い円筒などの筒形とすることもできる。形状が筒形の場合には、筒の肉厚がここでいう厚さとなる。また、製造の容易性の観点からは、図1に示す様に、電池の扁平形状の表裏面が矩形である「ノート型」形状が好ましい。
【0084】
電池容器となる上蓋1及び底容器2に用いられる材質は、電池の用途、形状により適宜選択され、特に限定されるものではなく、鉄、ステンレス鋼、アルミニウムなどが一般的であり、かつ実用的である。また、電池容器自体の厚さも、電池の用途、形状或いは電池ケースの材質により適宜決定され、特に限定されるものではない。電池の製造に必要な強度を確保するためには、その電池全表面積80%以上程度の部分の厚さ(電池容器を構成する一番面積が広い部分の厚さ)を0.2mm以上程度とすることが好ましく、0.3mm以上程度とすることがより好ましい。また、同時に同部分の厚さは、1mm以下程度であることが好ましく、0.7mm以下程度とすることがより好ましい。厚さが厚すぎると、電極面を押さえ込む力は大きくなるものの、電池の内容積が減少して、充分な容量が得られないこと、また重量が増大する。
【0085】
【発明の効果】
本発明によると、サイクル特性に優れた非水系二次電池を得ることができる。即ち、充放電を繰り返しても、電池容量が高い値で維持される非水系二次電池を得ることができる。本発明の二次電池は、特に50℃程度の高温におけるサイクル特性に優れている。
【0086】
本発明によると、電池容量の大きな非水系二次電池を得ることができる。
【0087】
本発明によると、低温における放電特性に優れた非水系二次電池を提供することができる。即ち、低温においても高い放電容量を有する非水系二次電池を提供することができる。
【0088】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、これら実施例の記載により限定されるものではない。
【0089】
実施例1
(1)まず、リチウムマンガン系複合酸化物としてLi1.1Mn1.8Al0.1O4、リチウムニッケル系複合酸化物としてLiNi0.82Co0.18O2および導電材であるアセチレンブラックとを乾式混合した。バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を溶解させたN-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に、得られた混合物を均一に分散させて、スラリー1を調製した。次いで、スラリー1を集電体となるアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥した後、プレスを行い、正極を得た。
【0090】
正極中の固形分重量比は、リチウムマンガン系複合酸化物:リチウムニッケル系複合酸化物:アセチレンブラック:PVDF=73.6:18.4:3:5(リチウムマンガン系複合酸化物:リチウムニッケル系複合酸化物=80:20)となるよう調製した。
【0091】
図3-(a)は、正極の説明図である。本実施例において、正極101aの塗布面積(W1×W2)は、177×130mm2である。また、電極の短辺側には、スラリー1が塗布されていない集電部106aが設けられ、その中央に直径3mmの穴が開けられている。
【0092】
(2)一方、二重構造黒鉛粒子(商品名“OPCG-K”、大阪ガスケミカル製;黒鉛粒子コアの(002)面の面間隔(d002)=0.34nm未満、被覆層の(002)面の面間隔(d002)=0.34nmを越える)、黒鉛化メソカーボンマイクロビーズ(MCMB、大阪ガスケミカル製、品番“25-28”;(002)面の面間隔(d002)=0.34nm未満)および導電材であるアセチレンブラックを乾式混合した後、バインダーであるPVDFを溶解させたNMP中に均一に分散させ、スラリー2を調製した。次いで、スラリー2を集電体となる銅箔の両面に塗布し、乾燥した後、プレスを行い、負極を得た。ここでの負極活物質塗布量は、電池の満充電時のリチウム吸蔵量が活物質1g当り230mAhに相当する量とした。
【0093】
負極中の固形分比率(重量比)は、二重構造黒鉛粒子:黒鉛化メソカーボンマイクロビーズ:アセチレンブラック:PVDF=64.4:27.6:2:6(二重構造黒鉛粒子:黒鉛化メソカーボンマイクロビーズ=70:30)となるよう調製した。
【0094】
図3-(b)は、負極の説明図である。負極101bの塗布面積(W1×W2)は、133×181.5mm2である。また、電極の短辺側には、スラリー2が塗布されていない集電部106bが設けられ、その中央に直径3mmの穴が開けられている。
【0095】
さらに、上記と同様の手法により片面だけにスラリー2を塗布し、片面電極を作製した。片面電極は、後述の(3)項の電極積層体において外側に配置される(図2中101c)。
【0096】
(3)図2に示すように、上記(1)項で得られた正極9枚と上記(2)項で得られた負極10枚(内片面2枚)とを、セパレータ材A(レーヨン系不織布、目付12.6g/m2)とセパレータ材B(ポリエチレン製微孔膜;目付13.3g/m2)とを合わせたセパレータ104を介して交互に積層し、さらに、電池容器との絶縁のために外側の負極101cのさらに外側にセパレータ材Bを配置して、電極積層体を作製した。なお、セパレータ104は、セパレータ材Aが正極側に位置し、セパレータ材Bが負極側に位置するように配置した。
【0097】
(4)図4に示す様に、厚さ0.5mmのSUS304製薄板を深さ5mmに絞り、底容器2を作製し、上蓋1も厚さ0.5mmのSUS304製薄板により作製した。次いで、上蓋1にアルミニウム製の正極端子3および銅製の負極端子4(頭部直径6mm、先端M3のねじ部)を取り付けた。正極および負極端子3、4は、ポリプロピレン製ガスケットにより上蓋1と絶縁した。
【0098】
(5)上記(3)項で作製した電極積層体の各正極集電部106aの穴を正極端子3に、また各負極集電部106bの穴を負極端子4に入れ、それぞれアルミニウム製および銅製のボルトで接続した後、接続された電極積層体を絶縁テープで固定し、図1の角部Aを全周に亘りレーザー溶接した。次いで、注液口5(直径6mm)から、電解液(エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネートを体積比30:35:35に混合した溶媒に1mol/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液)を注液した。次いで、大気圧下で仮止め用のボルトを用いて注液口5を一旦封口した。
【0099】
(6)25℃中でこの電池を2Aの電流で4.2Vまで充電した後、4.2Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を合計8時間行い、続いて2Aの定電流で3.0Vまで放電した。
【0100】
(7)次に、電池の仮止め用ボルトを取り外した後、容器内が4×104Pa(300Torr)の減圧下となるように、直径12mmに打ち抜いた厚さ0.08mmのアルミニウム箔-変性ポリプロピレンラミネートフィルムからなる封口フィルム6を、温度250〜350℃、圧力1〜3kg/cm2、加圧時間5〜10秒の条件で熱融着することにより、注液口5を最終封口して、幅148mm×高さ210mm×厚さ6.5mmの扁平形状のノート型電池を得た。
【0101】
(8)50℃中でこの電池を用いて「2Aの電流で4.2Vまで充電した後、4.2Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を合計8時間行い、続いて2Aの定電流で3.0Vまで放電する充放電サイクル」を100サイクル行った。また、サイクル特性を評価するために、1サイクルおよび100サイクル時点の放電容量から容量維持率を算出した。結果を表2に示す。
【0102】
(9)また同様に作製した電池を25℃中で上記(8)と同様の充放電サイクルを3回繰り返した後、4回目の充電を行なった。その後、-20℃中、2Aの定電流で3.0Vまで放電した。表2に低温特性評価試験を行った結果を併せて示す。
【0103】
比較例1
実施例1の(2)における負極活物質塗布量を、電池の満充電時のリチウム吸蔵量が活物質1g当り190mAhに相当する量とした以外は、実施例1と同様の方法により二次電池を製造し、同様の方法によりサイクル特性および容量維持率を測定すると共に、低温特性評価試験を実施した。結果を表2に示す。
【0104】
比較例2
実施例1の(2)における負極活物質塗布量を、電池の満充電時のリチウム吸蔵量が活物質1g当り260mAhに相当する量とした以外は、実施例1と同様の方法により二次電池を製造し、同様の方法によりサイクル特性および容量維持率を測定すると共に、低温特性評価試験を実施した。結果を表2に示す。
【0105】
比較例3〜7
実施例1の(5)における電解液の混合溶媒を下記表1に示すものを用いた以外は、実施例1と同様にして電池を作製し、実施例1と同様の方法により高温サイクル特性および容量維持率を測定すると共に、低温放電特性を評価した。結果を表2に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
表2に示す結果から明らかな様に、負極活物質1g当りのリチウム吸蔵量が200mAh未満の場合は電池容量が小さくなる。一方、255mAhを越える場合は、サイクル試験での容量劣化が大きい。
【0109】
また、電解液の溶媒組成が所定の範囲を逸脱した場合には、50℃でのサイクル特性が極端に低下するか、または-20℃での放電容量が極端に小さくなる。
【0110】
従来の非水系電池は、電解液へ多量のMnイオンが溶出する。これは、正極/負極と電解液の残存水分と溶質との反応により水素イオンが生成し、これがリチウムマンガン複合酸化物の一部と反応してMnが溶出するためであると考えられる。特に、電解質としてLiPF6およびLiBF4を使用する場合には、Mnイオンの溶出が大きい。
【0111】
本発明の二次電池においては、Mnイオンの溶出が著しく減少したために、サイクル特性、電池の充放電特性が顕著に改善されたと思われる。また、本発明によると、電解液の劣化、変色および酸の生成も抑制され、負極上に析出するMnが減少すると思われる。
【0112】
本発明の二次電池は、スピネル単一相であるLiMn2O4を使用する場合に比して、電池の充放電を繰り返しても、Mnの不均化が起こりにくくなり、Mnイオン溶出量を低減させるともに、酸素の脱離をも減少させることができると思われる。その結果、リチウムマンガン系複合酸化物(式(1)複合酸化物)の構造劣化、電解液の分解などを効果的に抑制することができ、サイクル特性が改善されたと思われる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態による蓄電システム用非水系二次電池の平面図及び側面図を示す図である。
【図2】 図1に示す電池の内部に収納される電極積層体の構成を示す側面図である。
【図3】 本発明実施例による非水系二次電池において用いた正極、負極およびセパレータの説明図である。
【図4】 本発明実施例による非水系二次電池における上蓋および底容器の説明図である。
【符号の説明】
1 上蓋
2 底容器
3 正極端子
4 負極端子
5 注液口
6 封口フィルム
101a 正極(両面)
101b 負極(両面)
101c 負極(片面)
104 セパレータ
105a 正極集電体
105b 負極集電体
106a 正極集電部
106b 負極集電部
Claims (3)
- 正極、負極、セパレーター及びリチウム塩を含む非水系電解質を電池容器内に収容し、厚さが12mm未満の扁平形状であり、エネルギー容量が30Wh以上且つ体積エネルギー密度が180Wh/l以上である非水系二次電池において、
正極における活物質が、以下の式(1)で表されるリチウムマンガン系複合酸化物と式(2)で表されるリチウムニッケル系複合酸化物とからなる混合物であり、
LixMn2-yMAyO4+z (1)
[式中、MAは、Mg、Al、Cr、Fe、CoおよびNiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、1<x≦1.2、0<y≦0.1および-0.3≦z≦0.3]
LiaNibMBcO2 (2)
[式中、MBは、Co、AlおよびMnからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、1≦a≦1.1、0.5<b<1、0<c<0.5およびb+c=1]
負極における活物質が、X線広角回折法による(002)面の面間隔(d002)が0.34nm以下である黒鉛系粒子の表面を面間隔0.34nmを超える非晶質炭素層で被覆した二重構造黒鉛粒子と黒鉛化メソカーボンマイクロビーズとからなる混合物であり、
前記負極活物質が、該二次電池の設計された充電条件で満充電とした際にリチウムを、充放電可能なリチウム量として、活物質1g当り200mAh〜255mAh吸蔵し、
リチウム塩を含む非水系電解質が、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートからなる混合溶媒を含み、
エチルメチルカーボネートとジエチルカーボネートの合計体積が、全溶媒体積の50〜90%であり、
ジエチルカーボネートの体積が、全溶媒体積の10〜40%とすることを特徴とする非水系二次電池。 - 扁平形状の表裏面の形状が、矩形である請求項1に記載の非水系二次電池。
- 電池容器の板厚が、0.2〜1mmである請求項1または2に記載の非水系二次電池。
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