JP2010287763A - 積層セラミックコンデンサの製造方法 - Google Patents

積層セラミックコンデンサの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】シートアタックとデラミネーションを解決する積層セラミックコンデンサの製造方法を提供する。
【解決手段】セラミック粉末、ポリビニルアセタール樹脂(A)及び有機溶剤を含有するセラミックスラリー組成物を塗工、乾燥し、グリーンシートを作製する工程及び上記グリーンシートに、導電粉末、ポリビニルアセタール樹脂(B)及び有機溶剤(E)を含有する導電ペースト並びにセラミック粉末、ポリビニルアセタール樹脂(C)及び有機溶剤(F)を含有する段差吸収セラミックペーストを塗工する工程を有し、ポリビニルアセタール樹脂(A)は水酸基量が28モル%以上、(B)、(C)は水酸基量が24モル%以下であり(B)、(C)の水酸基量が、下記式(1)の関係を満たし、かつ、有機溶剤(E)、(F)は特定の溶剤を含有する。
Figure 2010287763

式(1)中、b、cはポリビニルアセタール樹脂(B)、(C)の水酸基量(モル%)。
【選択図】なし

Description

本発明は、シートアタックの発生を防止することができ、かつ、デラミネーションの問題を解決することが可能な積層セラミックコンデンサの製造方法、及び、該積層セラミックコンデンサの製造方法を用いて得られる積層セラミックコンデンサに関する。
積層セラミックコンデンサ等の積層型の電子部品は、特許文献1又は特許文献2に開示されているように、一般に次のような工程を経て製造される。
まず、ポリビニルブチラール樹脂やポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂等のバインダー樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に、可塑剤、分散剤等を添加した後、セラミック原料粉末を加え、ボールミル等により均一に混合し、脱泡後に一定粘度を有するセラミックスラリーを得る。得られたセラミックスラリーをドクターブレード、リバースロールコーター等を用いて、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム又はSUSプレート等の支持体面に流延成形し、加熱等により有機溶剤等の揮発分を溜去させた後、支持体から剥離してセラミックグリーンシートを得る。
次いで、得られたセラミックグリーンシート上に内部電極となる導電ペーストをスクリーン印刷等により塗布したものを交互に複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を製造し、この積層体中に含まれるバインダー樹脂成分等を熱分解して除去する処理、いわゆる脱脂処理を行った後、焼成して得られるセラミック焼成物の端面に外部電極を焼結する工程を経て、積層セラミックコンデンサが得られる。
近年は、積層セラミックコンデンサの高容量化及び小型化が求められている。高容量化の要求を満足させるためには内部電極層及び誘電体層の積層数を増やすことが必要となり、小型化の要求を満足するためには内部電極層及び誘電体層の薄膜化が必要となっている。
しかしながら、内部電極層及び誘電体層の積層数を増やすと、内部電極を塗布する部分と、塗布しない部分との間に厚みの差が累積されることで、加熱圧着後に、誘電体層及び内部電極層に大きな歪みが生じるという問題が発生していた。また、内部電極を塗布しない部分で誘電体層間の密着力が低下するため、焼成時にクラックやデラミネーション等のような構造上の問題が発生していた。
これに対して、特許文献3には、内部電極を塗布しない部分に、段差吸収のための段差吸収用セラミックペースト(以下、段差吸収ペーストともいう)を塗布し、内部電極層と実質的に同じ厚みの段差吸収層を形成する方法が記載されている。
しかしながら、内部電極層及び誘電体層の薄層化が更に進行することによって、導電ペーストや段差吸収ペーストに含まれる有機溶剤がセラミックグリーンシートのバインダー樹脂を溶解するシートアタック現象が発生し、セラミックグリーンシートに皺が生じたり、穴が開いたりするという問題が顕著になってきた。このようなシートアタック現象は、内部電極層と段差吸収層との間でも発生し、内部電極層と段差吸収層との接触部において、局所的に膨潤してしまうことによりクラックが発生するという問題があった。
このような問題を解決する方法として、特許文献4には、導電ペースト及び段差吸収ペーストに含まれる有機溶剤と、セラミックグリーンシート、導電ペースト及び段差吸収ペーストに含まれるバインダー樹脂との相溶性を調整することによって、シートアタック現象を抑制する方法が知られている。しかしながら、このような方法を用いた場合には、セラミックグリーンシートを積層、圧着した後に、セラミックグリーンシートと、内部電極層及び段差吸収層との間で層間接着力が不足することによって、層間剥離(デラミネーション)が発生するという問題が新たに発生していた。
デラミネーションの問題を解決する手段としては、例えば、特許文献5で示すように、セラミックグリーンシート及び導電ペーストのバインダー樹脂に接着性に優れたポリビニルアセタール樹脂を用いる方法が提案されている。しかしながら、セラミックグリーンシート、導電ペースト及び段差吸収ペーストのバインダー樹脂を全てポリビニルアセタール樹脂とすると、例えば、導電ペーストに含まれる有機溶剤が、セラミックグリーンシートや段差吸収ペーストのバインダー樹脂を溶解したり、段差吸収ペーストに含まれる有機溶剤が、セラミックグリーンシートや導電ペーストのバインダー樹脂を溶解したりして、シートアタック現象が発生するという問題があった。
特公平3−35762号公報 特公平4−49766号公報 特開昭56−94719号公報 特開2001−167971号公報 特開2007−116083公報
本発明は、上記現状に鑑み、シートアタックの発生を防止することができるとともに、デラミネーションの問題を解決することが可能な積層セラミックコンデンサの製造方法、及び、該積層セラミックコンデンサの製造方法を用いて得られる積層セラミックコンデンサを提供する。
本発明は、セラミックグリーンシートと導電ペースト及び段差吸収セラミックペーストとを交互に積層し加熱圧着して得られた積層体を脱脂、焼成する積層セラミックコンデンサの製造方法であって、セラミック粉末、ポリビニルアセタール樹脂(A)及び有機溶剤(D)を含有するセラミックスラリー組成物を塗工した後、乾燥することにより、セラミックグリーンシートを作製する工程1、及び、上記セラミックグリーンシートに、導電粉末、ポリビニルアセタール樹脂(B)及び有機溶剤(E)を含有する導電ペースト、並びに、セラミック粉末、ポリビニルアセタール樹脂(C)及び有機溶剤(F)を含有する段差吸収セラミックペーストを塗工する工程2を有し、上記ポリビニルアセタール樹脂(A)は水酸基量が28モル%以上、上記ポリビニルアセタール樹脂(B)及びポリビニルアセタール樹脂(C)は水酸基量が24モル%以下であり、かつ、ポリビニルアセタール樹脂(B)及びポリビニルアセタール樹脂(C)の水酸基量が、下記式(1)の関係を満たし、かつ、上記有機溶剤(E)及び有機溶剤(F)は、ジヒドロターピニルアセテート、ターピニルアセテート、酢酸−2−エチルヘキシル、イソボルニルアセテート、4−(1’−アセトキシ−1’−メチルエチル)シクロヘキサノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート、イソボルニルプロピオネートからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有する積層セラミックコンデンサの製造方法である。
Figure 2010287763
式(1)中、bはポリビニルアセタール樹脂(B)の水酸基量(モル%)を表し、cはポリビニルアセタール樹脂(C)の水酸基量(モル%)を表す。
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明の積層セラミックコンデンサの製造方法は、セラミック粉末、ポリビニルアセタール樹脂(A)及び有機溶剤(D)を含有するセラミックスラリー組成物を塗工した後、乾燥することにより、セラミックグリーンシートを作製する工程1、及び、上記セラミックグリーンシートに、導電粉末、ポリビニルアセタール樹脂(B)及び有機溶剤(E)を含有する導電ペースト、並びに、セラミック粉末、ポリビニルアセタール樹脂(C)及び有機溶剤(F)を含有する段差吸収セラミックペーストを塗工する工程2を有する。
本発明では、セラミックスラリー組成物、導電ペースト及び段差吸収セラミックペーストのバインダー樹脂として、3種類のポリビニルアセタール樹脂(A)〜(C)を用いる。
以下、上記ポリビニルアセタール樹脂(A)〜(C)の水酸基量について説明する。
上記ポリビニルアセタール樹脂(A)の水酸基量は28モル%以上、上記ポリビニルアセタール樹脂(B)及びポリビニルアセタール樹脂(C)の水酸基量は24モル%以下である。このような水酸基を有するポリビニルアセタール樹脂を組み合わせて使用することで、上記導電ペーストや段差吸収ペーストに使用する有機溶剤として、セラミックグリーンシートを溶解させない有機溶剤を使用することが可能となる。
上記ポリビニルアセタール樹脂(A)の水酸基量の下限は28モル%である。上記水酸基量が28モル%未満であると、導電ペーストや段差吸収ペーストに使用される有機溶剤に対して、シートアタックを起こす。上記水酸基量の好ましい下限は30モル%である。なお、上記水酸基量の上限については特に限定されないが、40モル%が好ましい。
上記ポリビニルアセタール樹脂(B)及びポリビニルアセタール樹脂(C)の水酸基量の上限は24モル%である。上記水酸基量が24モル%を超えると、セラミックグリーンシートに対してシートアタックを生じる有機溶剤にしか完全溶解しないため、導電ペーストや段差吸収ペーストに使用することができない。上記水酸基量の好ましい上限は23モル%である。なお、上記水酸基量の下限については特に限定されないが、現状では20モル%未満のものが製造されていない。これは、原料であるポリビニルアルコールをアセタール化してポリビニルアセタール樹脂を作製する際に、既にアセタール化した部分による立体障害のため、20モル%程度の水酸基が未反応のまま残ってしまうためである。
上記ポリビニルアセタール樹脂(B)の水酸基量及びポリビニルアセタール樹脂(C)の水酸基量は、上記式(1)の関係を満たす。上記水酸基量がこの関係を満たすことで、上記ポリビニルアセタール樹脂(B)とポリビニルアセタール樹脂(C)とが溶解性が異なるものとなり、有機溶剤(D)と有機溶剤(E)との間でシートアタックを起こさない有機溶剤の組み合わせを選択することが可能になる。
上記ポリビニルアセタール樹脂(B)及びポリビニルアセタール樹脂(C)の水酸基量が下記式(2)の関係を満たす場合、工程2において、セラミックグリーンシート上に導電ペーストを塗工、乾燥した後に、段差吸収ペーストを塗工、乾燥させることが好ましい。このようにポリビニルアセタール樹脂(C)として、水酸基量の小さいものを用い、更に段差吸収ペーストを後に塗工することで、段差吸収ペーストに含まれる有機溶剤によって、セラミックグリーンシート及び内部電極層にシートアタックが発生することを防止できる。
Figure 2010287763
式(2)中、bはポリビニルアセタール樹脂(B)の水酸基量(モル%)を表し、cはポリビニルアセタール樹脂(C)の水酸基量(モル%)を表す。
また、上記ポリビニルアセタール樹脂(B)及びポリビニルアセタール樹脂(C)の水酸基量が下記式(3)の関係を満たす場合、セラミックグリーンシート上に段差吸収ペーストを塗工、乾燥した後に、導電ペーストを塗工、乾燥させることが好ましい。
このようにポリビニルアセタール樹脂(B)として、水酸基量の小さいものを用い、更に導電ペーストを後に塗工することで、導電ペーストに含まれる有機溶剤によって、セラミックグリーンシート及び段差吸収層にシートアタックが発生することを防止できる。
Figure 2010287763
式(3)中、bはポリビニルアセタール樹脂(B)の水酸基量(モル%)を表し、cはポリビニルアセタール樹脂(C)の水酸基量(モル%)を表す。
以下、上記ポリビニルアセタール樹脂(A)〜(C)の水酸基量以外の性質について説明する。なお、上記ポリビニルアセタール樹脂(A)〜(C)を特に区別する必要がない場合は、単に「ポリビニルアセタール樹脂」とする。
上記ポリビニルアセタール樹脂において、アセタール化度の好ましい下限は55モル%である。上記アセタール化度が55モル%未満であると、溶解時に使用する有機溶剤に不溶となることがある。また、アセタール化度の好ましい上限は特に限定されないが、現状では80モル%を超えるものが製造されていない。これは、原料であるポリビニルアルコールをアセタール化してポリビニルアセタール樹脂を作製する際に、既にアセタール化した部分による立体障害のため、20モル%程度の水酸基が未反応のまま残ってしまうためである。
なお、本明細書において、アセタール化度の計算方法としては、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基が2個の水酸基をアセタール化して得られたものであることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用してアセタール化度のモル%を計算する。
上記ポリビニルアセタール樹脂(A)の重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は4000である。上記重合度が200未満であると、得られるセラミックグリーンシートの強度が不足し、破れやすくなるためショート不良が発生しやすくなることがある。上記重合度が4000を超えると、セラミックスラリー組成物の粘度が高くなりすぎるため、平滑に塗工することができず、ショート不良が発生しやすくなる。
上記ポリビニルアセタール樹脂(B)及びポリビニルアセタール樹脂(C)の重合度の好ましい下限は300、好ましい上限は3500である。上記重合度が300未満であると、得られる導電ペースト及び段差吸収ペーストの粘度が低くなり、塗工時に所定の形状に塗布することができないことがある。上記重合度が3500を超えると、粘度が高くなりすぎて塗布した後に膜表面が平滑にならず、焼成時に電極層が突き出た形状になってしまい、積層セラミックコンデンサをショートさせてしまうことがある。
上記ポリビニルアセタール樹脂(B)及びポリビニルアセタール樹脂(C)は、α−オレフィン単位を含有する変性ポリビニルアルコールをアセタール化した変性ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。このような変性ポリビニルアルコール樹脂を用いて得られるペーストは、スクリーン印刷性に極めて優れたものとなる。
上記α−オレフィン単位としては特に限定されず、例えば、エチレン単位、プロピレン単位、1−ブテン単位、1−ペンテン単位、1−ヘキセン単位、1−ヘプテン単位、1−オクテン単位、4−メチル−1−ペンテン単位等が挙げられる。なかでも、エチレン単位が好適である。また、上記変性ポリビニルアルコールにおけるα−オレフィン単位の含有量の好ましい下限は1モル% 、好ましい上限は20モル%である。上記α−オレフィン単位の含有量が1モル%未満であると、得られる導電ペースト又は段差吸収ペーストの導電粉末又はセラミック粉末の分散性が低下したり、印刷性が低下したりすることがある。上記α−オレフィン単位の含有量が20モル%を超えると、上記変性ポリビニルアルコールの水溶性が低下するため、アセタール化反応が困難になったり、得られた変性ポリビニルアセタール樹脂の有機溶剤への溶解性が低下するため、導電ペースト又は段差吸収ペーストの作製に支障が出たり、経時粘度安定性が悪化したりすることがある。
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアセタール化することにより得られる。上記アセタール化の方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、酸触媒の存在下でポリビニルアルコールの水溶液、アルコール溶液、水/アルコール混合溶液、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液中に各種アルデヒドを添加する方法等が挙げられる。
上記ポリビニルアルコールのケン化度の好ましい下限は80モル%である。80モル%未満であると、変性ポリビニルアルコールの水溶性が悪化するためアセタール化が困難になり、また、水酸基量が少なくなるためアセタール化自体が困難になることがある。より好ましい下限は85モル%である。
上記アセタール化に用いるアルデヒドとしては特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。なかでも、アセトアルデヒドとブチルアルデヒドとをそれぞれ単独で用いるか、又は、アセトアルデヒドとブチルアルデヒドとを併用することが好ましい。
上記酸触媒としては特に限定されず、有機酸、無機酸のどちらでも使用可能であり、例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。なかでも、非ハロゲン性の酸触媒が好適である。
上記アセタール化の反応を停止するために、アルカリによる中和を行うことが好ましい。上記アルカリとしては特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。
また、上記中和工程の前後に、水等を用いて得られたポリビニルアセタール樹脂(A)を洗浄することが好ましい。なお、洗浄水中に含まれる不純物の混入を防ぐため、洗浄は純水で行うことがより好ましい。
本発明の効果を損なわない範囲で、上記ポリビニルアセタール樹脂と、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂等との混合樹脂をバインダー樹脂として用いてもよい。上記混合樹脂とする場合、例えば、ポリビニルブチラール樹脂との混合樹脂では、バインダー樹脂全体に占める上記ポリビニルアセタール樹脂の含有量の好ましい下限は10重量%である。10重量%未満であると、充分な接着性が得られないことがある。より好ましい下限は、30%である。
本発明の積層セラミックコンデンサの製造方法において用いられるセラミック粉末としては特に限定されず、例えば、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、マグネシア、サイアロン、スピネムルライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
上記導電粉末としては充分な導電性を示すものであれば特に限定されず、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、銅、これらの合金等からなる粉末が挙げられる。
なお、上記導電ペーストにおいては、上記導電粉末単独で用いてもよく、上記導電粉末とセラミック粉末を混合して使用してもよい。
上記有機溶剤(D)としては、例えば、エタノール、メタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、酢酸、ピリジン、キシレン、トルエン等が好ましい。
本発明では、上記有機溶剤(E)及び有機溶剤(F)は、ジヒドロターピニルアセテート、ターピニルアセテート、酢酸−2−エチルヘキシル、イソボルニルアセテート、4−(1’−アセトキシ−1’−メチルエチル)シクロヘキサノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート、イソボルニルプロピオネートからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有する。
上記有機溶剤(E)及び有機溶剤(F)については、上述した有機溶剤を含有すれば、上記ポリビニルアセタール樹脂(B)及びポリビニルアセタール樹脂(C)の水酸基量に応じて適宜使い分けてもよく、下記の有機溶剤を組み合わせて用いることが好ましい。下記の組み合わせの有機溶剤を使用することによって、導電ペースト又は段差吸収ペーストに使用するポリビニルアセタール樹脂を溶解させつつ、セラミックグリーンシートに対するシートアタックを防ぐことができる。
上記ポリビニルアセタール樹脂(B)及びポリビニルアセタール樹脂(C)の水酸基量が上記式(2)の関係を満たす場合、上記有機溶剤(E)としては、ジヒドロターピニルアセテート、ターピニルアセテート、酢酸−2−エチルヘキシル、イソボルニルアセテート、4−(1’−アセトキシ−1’−メチルエチル)シクロヘキサノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート、イソボルニルプロピオネートからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を用いることが好ましい。
また、上記有機溶剤(F)としては、脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤と、ジヒドロターピニルアセテート、ターピニルアセテート、酢酸−2−エチルヘキシル、イソボルニルアセテート、4−(1’−アセトキシ−1’−メチルエチル)シクロヘキサノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート、イソボルニルプロピオネートからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤とを含有するものを用いることが好ましい。
上記ポリビニルアセタール樹脂(B)及びポリビニルアセタール樹脂(C)の水酸基量が上記式(3)の関係を満たす場合、上記有機溶剤(E)としては、脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤と、ジヒドロターピニルアセテート、ターピニルアセテート、酢酸−2−エチルヘキシル、イソボルニルアセテート、4−(1’−アセトキシ−1’−メチルエチル)シクロヘキサノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート及びイソボルニルプロピオネートからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有するものを用いることが好ましい。
また、上記有機溶剤(F)としては、ジヒドロターピニルアセテート、ターピニルアセテート、酢酸−2−エチルヘキシル、イソボルニルアセテート、4−(1’−アセトキシ−1’−メチルエチル)シクロヘキサノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート、イソボルニルプロピオネートからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を用いることが好ましい。
上記脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、n−ヘプタン、イソペンタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のほか、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等のパラフィンが挙げられる。
上記芳香族系炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、メチルベンジルキシレン、1,4−ジメチル−2−(1−フェニルエチル)ベンゼン、アルキルベンゼン等が挙げられる。なお、上記アルキルベンゼンとしては、アルキル(C10−13)ベンゼン、アルキル(C14−30)ベンゼンが好ましい。
上記ナフテン系炭化水素としては、例えば、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、1,1−ジメチルシクロペンタン、1,3−ジメチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,2,4−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
上記有機溶剤(E)又は有機溶剤(F)において、脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤と、ジヒドロターピニルアセテート、ターピニルアセテート、酢酸−2−エチルヘキシル、イソボルニルアセテート、4−(1’−アセトキシ−1’−メチルエチル)シクロヘキサノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート及びイソボルニルプロピオネートからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤とを含有するものを用いる場合、脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤の含有量は、5〜40重量%であることが好ましい。上記含有量が5重量%未満であると、導電ペースト又は段差吸収ペーストに使用するポリビニルアセタール樹脂のうち、水酸基量の多い方のペースト乾燥膜に対してシートアタックを起こすことがあり、40重量%を超えると、ポリビニルアセタール樹脂を溶解しなくなってしまい、ペースト化することができないことがある。
上記セラミックスラリー組成物、導電ペースト及び段差吸収ペーストを製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記ポリビニルアセタール樹脂、有機溶剤、導電粉末及び/又はセラミック粉末をブレンダーミル、3本ロール等の各種混合機を用いて混合する方法が挙げられる。
本発明の積層セラミックコンデンサの製造方法では、セラミックグリーンシートに導電ペースト並びに段差吸収ペーストを塗工する工程を行う。
上記導電ペースト及び段差吸収ペーストを塗工する方法については特に限定されないが、スクリーン印刷法や、グラビア印刷による方法等が挙げられる。
本発明では、例えば、工程1及び工程2を行い、電極層及び段差吸収層が形成されたセラミックグリーンシートを作製した後、同様にして作製した電極層及び段差吸収層が形成されたセラミックグリーンシートを積層し加熱圧着して得られた積層体を脱脂、焼成することで、シートアタックやデラミネーション、クラック等の問題が解決された積層セラミックコンデンサが得られる。また、本発明では、上述のように、電極層及び段差吸収層が形成されたセラミックグリーンシートを作製した後、積層して積層体を作製する方法のほかに、セラミックスラリー組成物と、導電ペースト及び段差吸収ペーストとを順次塗工する方法で積層体を形成し、脱脂、焼成することで、積層セラミックコンデンサを製造してもよい。
このようにして得られる積層セラミックコンデンサもまた本発明の1つである。
なお、本発明の積層セラミックコンデンサの製造方法における加熱圧着工程、積層体を脱脂、焼成する工程についても特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
本発明によれば、導電ペースト及び段差吸収ペーストの塗工時におけるシートアタックの発生、加熱圧着工程におけるデラミネーションの発生といった従来の薄層、多層の積層セラミックコンデンサを製造する際の問題を同時に解決することが可能な積層セラミックコンデンサの製造方法、及び、該積層セラミックコンデンサの製造方法を用いて得られる積層セラミックコンデンサが提供できる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
(セラミックスラリー組成物の作製)
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業製、エスレックB 「BM−2」、重合度850、水酸基量30.0モル%)10重量部を、トルエン30重量部とエタノール15重量部との混合溶剤に加え、攪拌溶解し、更に、可塑剤としてジブチルフタレート3重量部を加え、攪拌溶解した。得られた樹脂溶液に、セラミック粉末としてチタン酸バリウム(堺化学工業製「BT−02(平均粒子径0.2μm)」)100重量部を加え、ボールミルで48時間混合してセラミックスラリー組成物を得た。
(セラミックグリーンシートの作製)
得られたセラミックスラリー組成物を、コーターを用いて乾燥後の厚みが約3μmとなるように離形処理したポリエステル(PET)フィルム上に塗工し、常温で1時間風乾した後、熱風乾燥機で80℃、3時間乾燥し、続けて120℃で2時間乾燥させることにより、セラミックグリーンシートを得た。
(導電ペーストの作製)
導電粉末としてニッケル粉(JFEミネラル社製、NFP−201S)100重量部、バインダー樹脂として変性ポリビニルブチラール(重合度1700、エチレン含有量5モル%、ケン化度98モル%、水酸基量22.8モル%)7重量部、有機溶剤としてジヒドロターピニルアセテート70重量部を添加し、三本ロールで混練することにより導電ペーストを得た。
(段差吸収用セラミックペーストの作製)
セラミック粉末としてチタン酸バリウム(堺化学工業製、BT−02(平均粒子径0.2μm))100重量部、変性ポリビニルブチラール樹脂(重合度1700、エチレン含有量5モル%、ケン化度98モル%、水酸基量20.4モル%)6重量部、有機溶剤としてターピニルアセテート90重量%、アルキルベンゼン(新日本石油株式会社製、グレードアルケンL)10重量%で構成される混合溶剤を80重量部添加して三本ロールで混練することにより段差吸収用セラミックペーストを得た。
(電極層及び段差吸収層の形成)
得られたグリーンシートの上に、導電ペーストをスクリーン印刷法によって塗布し、120℃、5分乾燥することにより、電極層を形成した。なお、スクリーン印刷にはカレンダー加工されたSUS500メッシュの版を用いた。
その後、グリーンシート上の電極層が形成されていない部分に、段差吸収用セラミックペーストをスクリーン印刷法で塗布し、120℃、5分乾燥することにより、段差吸収層を形成した。なお、スクリーン版にはカレンダー加工されたSUS590メッシュの版を用いた。得られた電極層及び段差吸収層の厚みを接触式粗さ径で測定したところ、ともに1.5μmであった。
(積層セラミック焼結体の作製)
電極層及び段差吸収層を形成したセラミックグリーンシートを150層重ね合わせ、温度70℃、圧力160kg/cm、10分間の熱圧着条件で圧着して、セラミックグリーンシート積層体300個を得た。得られたセラミックグリーンシート積層体を窒素雰囲気で、昇温速度3℃/分で450℃まで昇温し、5時間保持後、更に昇温速度5℃/分で1350℃まで昇温し、10時間保持することにより、積層セラミック焼結体300個を得た。
(実施例2〜20、比較例1〜7)
表1に示す水酸基量を有するポリビニルアセタール樹脂、有機溶剤を用いた以外は実施例1と同様にして、電極層及び段差吸収層を形成したセラミックグリーンシート及び積層セラミック焼結体を得た。
(比較例8)
実施例1の(導電ペーストの作製)において、変性ポリビニルブチラール(重合度1700、エチレン含有量5モル%、ケン化度98モル%、水酸基量22.8モル%)に代えて、エチルセルロース(ダウケミカル社製、STD−40)を用いた以外は実施例1と同様にして、電極層及び段差吸収層を形成したセラミックグリーンシート及び積層セラミック焼結体を得た。
(評価)
(シートアタックの評価)
得られた電極層及び段差吸収層を形成したセラミックグリーンシートの表面(印刷面)及び裏面(ポリエステルフィルム面)各10箇所を金属顕微鏡(200倍)で観察した。
電極層とセラミックグリーンシートとの間については、電極層が形成された部分の裏面に皺やクラックが発生しているか否かを確認した。
また、段差吸収層とセラミックグリーンシートとの間については、段差吸収層が形成された部分の裏面に皺やクラックが発生しているか否かを確認した。
更に、電極層と段差吸収層との間については、電極層と段差吸収層の境界面(表面)に樹脂膨潤による突起が見られるか否かを確認した。
皺やクラック又は樹脂膨潤による突起が見られたものを×、皺やクラック又は樹脂膨潤による突起が見られなかったものを○とした。
(接着性の評価)
得られた積層セラミック焼結体を常温まで冷却した後、半分に割り、シートの状態を電子顕微鏡で観察し、セラミック層と電極層との構造欠陥(デラミネーション又はシートアタックによるクラック)の有無を観察し、構造欠陥発生率を算出した。
Figure 2010287763
Figure 2010287763
Figure 2010287763
本発明によれば、シートアタックの発生を防止することができ、かつ、デラミネーションの問題を解決することが可能な積層セラミックコンデンサの製造方法、及び、該積層セラミックコンデンサの製造方法を用いて得られる積層セラミックコンデンサを提供することができる。

Claims (8)

  1. セラミックグリーンシートと導電ペースト及び段差吸収セラミックペーストとを交互に積層し加熱圧着して得られた積層体を脱脂、焼成する積層セラミックコンデンサの製造方法であって、セラミック粉末、ポリビニルアセタール樹脂(A)及び有機溶剤(D)を含有するセラミックスラリー組成物を塗工した後、乾燥することにより、セラミックグリーンシートを作製する工程1、及び、前記セラミックグリーンシートに、導電粉末、ポリビニルアセタール樹脂(B)及び有機溶剤(E)を含有する導電ペースト、並びに、セラミック粉末、ポリビニルアセタール樹脂(C)及び有機溶剤(F)を含有する段差吸収セラミックペーストを塗工する工程2を有し、
    前記ポリビニルアセタール樹脂(A)は水酸基量が28モル%以上、前記ポリビニルアセタール樹脂(B)及びポリビニルアセタール樹脂(C)は水酸基量が24モル%以下であり、かつ、
    ポリビニルアセタール樹脂(B)及びポリビニルアセタール樹脂(C)の水酸基量が、下記式(1)の関係を満たし、
    かつ、
    前記有機溶剤(E)及び有機溶剤(F)は、ジヒドロターピニルアセテート、ターピニルアセテート、酢酸−2−エチルヘキシル、イソボルニルアセテート、4−(1’−アセトキシ−1’−メチルエチル)シクロヘキサノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート、イソボルニルプロピオネートからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有する
    ことを特徴とする積層セラミックコンデンサの製造方法。
    Figure 2010287763
    式(1)中、bはポリビニルアセタール樹脂(B)の水酸基量(モル%)を表し、cはポリビニルアセタール樹脂(C)の水酸基量(モル%)を表す。
  2. ポリビニルアセタール樹脂(B)及びポリビニルアセタール樹脂(C)の水酸基量が、下記式(2)の関係を満たすことを特徴とする請求項1記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
    Figure 2010287763
    式(2)中、bはポリビニルアセタール樹脂(B)の水酸基量(モル%)を表し、cはポリビニルアセタール樹脂(C)の水酸基量(モル%)を表す。
  3. 工程2において、セラミックグリーンシート上に導電ペーストを塗工、乾燥した後に、段差吸収セラミックペーストを塗工、乾燥させることを特徴とする請求項2記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
  4. 有機溶剤(F)は、脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤と、ジヒドロターピニルアセテート、ターピニルアセテート、酢酸−2−エチルヘキシル、イソボルニルアセテート、4−(1’−アセトキシ−1’−メチルエチル)シクロヘキサノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート、イソボルニルプロピオネートからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤とを含有することを特徴とする請求項2又は3記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
  5. ポリビニルアセタール樹脂(B)及びポリビニルアセタール樹脂(C)の水酸基量が、下記式(3)の関係を満たすことを特徴とする請求項1記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
    Figure 2010287763
    式(3)中、bはポリビニルアセタール樹脂(B)の水酸基量(モル%)を表し、cはポリビニルアセタール樹脂(C)の水酸基量(モル%)を表す。
  6. 工程2において、セラミックグリーンシート上に段差吸収セラミックペーストを塗工、乾燥した後に、導電ペーストを塗工、乾燥させることを特徴とする請求項5記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
  7. 有機溶剤(E)は、脂肪族炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤と、ジヒドロターピニルアセテート、ターピニルアセテート、酢酸−2−エチルヘキシル、イソボルニルアセテート、4−(1’−アセトキシ−1’−メチルエチル)シクロヘキサノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート及びイソボルニルプロピオネートからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤とを含有することを特徴とする請求項5又は6記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
  8. 請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の積層セラミックコンデンサの製造方法によって得られたことを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
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