JP5416524B2 - 積層電子部品の製造方法及び積層電子部品 - Google Patents

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Description

本発明は、シートアタックの発生を防止し、かつ、製造コストを低くすることができる積層電子部品の製造方法に関する。また、本発明は、該積層電子部品の製造方法を用いて製造される積層電子部品に関する。
積層セラミックコンデンサ等の積層型の電子部品は、一般に次のような工程を経て製造される。まず、ポリビニルブチラール樹脂やポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂等のバインダー樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に、可塑剤、分散剤等を添加した後、セラミック原料粉末を加え、ボールミル等により均一に混合し、脱泡後に一定粘度を有するセラミックスラリーを得る。得られたセラミックスラリーをドクターブレード、リバースロールコーター等を用いて、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム又はSUSプレート等の支持体面に流延成形し、加熱等により有機溶剤等の揮発分を溜去させ、セラミックグリーンシートを得る。
次いで、得られたセラミックグリーンシート上に、内部電極となる導電ペーストをスクリーン印刷等により塗工し、乾燥したものを支持体から剥離させた後に交互に複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を製造し、この積層体中に含まれるバインダー樹脂成分等を熱分解して除去する処理、いわゆる脱脂処理を行った後、焼成して得られるセラミック焼成物の端面に外部電極を焼結する工程を経て、積層セラミックコンデンサの積層型等の電子部品が得られる。
近年は、積層電子部品に小型化が求められており、特に、セラミックコンデンサには高容量化及び小型化が求められている。高容量化の要求を満足させるためには電極層及び誘電体層(セラミックグリーンシート)の積層数を増やすことが必要となり、小型化の要求を満足するためには電極層及び誘電体層の薄層化が必要となっている。
しかしながら、電極層及び誘電体層の薄層化が更に進行することによって、導電ペーストに含まれる有機溶剤がセラミックグリーンシートのバインダー樹脂を溶解するシートアタック現象が発生し、セラミックグリーンシートに皺が生じたり、穴が開いたりするという問題があった。
この問題を解決する方法として、特許文献1には、内部電極となる導電ペーストの有機溶剤に、セラミックグリーンシートに含まれるバインダー樹脂を溶解しない有機溶剤を使用することによって、シートアタック現象を抑制する方法が開示されている。
一方で、塗工、乾燥させた電極層の表面にセラミックスラリーを塗工し、乾燥させることによっても積層体を形成させることも可能である。この方法で積層体を形成させた場合、セラミックスラリーを離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又はSUSプレート等の支持体面に塗工し、内部電極塗布、乾燥後に支持体から剥離させて積み重ねる方法に比べてセラミックグリーンシートを支持体から剥離する工程が不要であり、また、PETフィルムの使用量が減るため、低コストで積層セラミックコンデンサを製造することができる。
電極層形成及び誘電体層形成用の材料として、特許文献2には、導電ペーストのバインダー樹脂として、エチルセルロースやポリビニルアセタール樹脂を含有するものが開示されている。特に導電ペーストのバインダー樹脂としてポリビニルアセタール樹脂を使用すると、電極層と誘電体層間の接着性が向上することによって層間のデラミネーションやクラックが発生しなくなることから、製品の歩留まりを高くすることができる。また、特許文献3には、セラミックスラリーの有機溶剤として、エタノールやトルエンを含有するものが開示されている。
しかしながら、このような導電ペースト用バインダー樹脂とセラミックスラリー用有機溶剤とを組み合わせて用いると、塗工、乾燥させた電極層の表面にセラミックスラリーを塗工した際に、セラミックスラリーに含まれる有機溶剤が導電ペーストに含まれるバインダー樹脂を溶解するため、電極層に対するシートアタック現象が発生し、電極層の連続率が低下することによってコンデンサの静電容量が低下するという問題があった。また、電極層に凹凸が生じることによってセラミックグリーンシートを突き破って短絡したり、電極層が所定の面積以上に広がることによって短絡したりするため、充分な製品歩留まりが得られないという問題があった。
特開2005−026217号公報 特開2004−186339号公報 特開2004−186396号公報
本発明は、シートアタックの発生を防止し、かつ、製造コストを低くすることができる積層電子部品の製造方法を提供する。また、本発明は、該積層電子部品の製造方法を用いて製造される積層電子部品を提供する。
本発明は、電極層と誘電体層とを交互に積層し加熱圧着して得られた積層体を脱脂、焼成する積層電子部品の製造方法であって、導電粉末、バインダー樹脂(A)、及び、有機溶剤(a)を含有する導電ペーストを塗工し、乾燥することにより、電極層を形成する工程1と、工程1によって得られた電極層の表面に、セラミック粉末、バインダー樹脂(B)、及び、有機溶剤(b)を含有するセラミックスラリーを塗工し、乾燥することにより、誘電体層を形成する工程2とを有し、上記バインダー樹脂(A)は、酸基量が24.0モル%以下のポリビニルアセタール樹脂を含有し、上記バインダー樹脂(B)は、水酸基量が28.0モル%以上のポリビニルアセタール樹脂であり、上記有機溶剤(b)は、ロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、炭酸プロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を30重量%以上含有する層電子部品の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
本発明者は、電極層に用いるバインダー樹脂及び誘電体層に用いる有機溶剤としてそれぞれ特定の材料を用いることにより、電極層に対するシートアタック現象を防止し、静電容量が高く、デラミネーションやクラックが発生せず、低コストで歩留まりの高い積層電子部品を製造することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の積層電子部品の製造方法は、導電粉末、バインダー樹脂(A)、及び、有機溶剤(a)を含有する導電ペーストを塗工し、乾燥することにより、電極層を形成する工程1を有する。
上記導電粉末は充分な導電性を示すものであれば特に限定されず、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、銅、これらの合金等からなる粉末が挙げられる。
上記導電ペーストにおいて、上記導電粉末は、セラミック粉末と混合して使用してもよい。
上記セラミック粉末は特に限定されず、例えば、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、マグネシア、サイアロン、スピネムルライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。これらのセラミック粉末は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
上記導電ペーストにおける上記導電粉末の含有量は特に限定されないが、上記導電ペースト100重量部に対して、好ましい下限は30重量部、好ましい上限は90重量部である。上記導電粉末の含有量が30重量部未満であると、得られる導電ペーストの導電性が充分に得られないことがある。上記導電粉末の含有量が90重量部を超えると、導電ペースト中に上記導電粉末を高分散させることが困難となることがある。上記導電性末の含有量のより好ましい下限は40重量部、より好ましい上限は80重量部である。
上記バインダー樹脂(A)は、エチルセルロース及び/又は水酸基量が24.0モル%以下のポリビニルアセタール樹脂を含有する。なかでも、水酸基量が24.0モル%以下のポリビニルアセタール樹脂を含有することが好適である。上記バインダー樹脂(A)としてポリビニルアセタール樹脂を用いることにより、得られる電極層と後述する工程2で作製する誘電体層との間の接着性が向上し、層間のデラミネーションやクラックが発生しなくなり、製品の歩留まりを高くすることができる。更に、該ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量が24.0モル%以下であることにより、後述する有機溶剤(b)に対して溶解し難くなるため、シートアタック現象による積層電子部品の歩留まりの低下をより効果的に防ぐことができる。上記バインダー樹脂(A)に用いられるポリビニルアセタール樹脂の水酸基量の好ましい上限は23.0モル%である。なお、上記水酸基量の下限は特に限定されないが、実質的には20.0モル%である。これは、原料であるポリビニルアルコールをアセタール化してポリビニルアセタール樹脂を作製する際に、既にアセタール化した部分による立体障害のため、20.0モル%程度の水酸基は未反応のまま残ってしまうためである。
上記バインダー樹脂(A)に用いられるポリビニルアセタール樹脂の重合度の好ましい下限は300、好ましい上限は3500である。上記バインダー樹脂(A)に用いられるポリビニルアセタール樹脂の重合度が300未満であると、得られる導電ペーストの粘度が低くなり、塗工時に所定の形状に塗布することができないことがある。上記バインダー樹脂(A)に用いられるポリビニルアセタール樹脂の重合度が3500を超えると、粘度が高くなりすぎて塗布した後に膜表面が平滑にならず、焼成時に電極層が突き出た形状になってしまい、得られる積層電子部品をショートさせることがある。
上記バインダー樹脂(A)に好適に用いられるポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアセタール化することにより得られる。上記アセタール化の方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、酸触媒の存在下でポリビニルアルコールの水溶液、アルコール溶液、水/アルコール混合溶液、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液等の中に各種アルデヒドを添加する方法等が挙げられる。
上記ポリビニルアルコールのケン化度の好ましい下限は80モル%である。上記ポリビニルアルコールのケン化度が80モル%未満であると、ポリビニルアルコールの水溶性が悪化するためアセタール化が困難になり、また、水酸基量が少なくなるためアセタール化自体が困難になることがある。上記ポリビニルアルコールのケン化度のより好ましい下限は85モル%である。
上記バインダー樹脂(A)に好適に用いられるポリビニルアセタール樹脂としては、なかでも、α−オレフィン単位を含有する変性ポリビニルアルコールをアセタール化して得られる変性ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。このような変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて得られるペーストは、スクリーン印刷性に極めて優れたものとなる。
上記α−オレフィン単位は特に限定されず、例えば、エチレン単位、プロピレン単位、1−ブテン単位、1−ペンテン単位、1−ヘキセン単位、1−ヘプテン単位、1−オクテン単位、4−メチル−1−ペンテン単位等が挙げられる。なかでも、エチレン単位が好適である。
また、上記変性ポリビニルアルコールにおけるα−オレフィン単位の含有量の好ましい下限は1モル%、好ましい上限は20モル%である。上記α−オレフィン単位の含有量が1モル%未満であると、得られる導電ペーストの導電粉末又はセラミック粉末の分散性が低下したり、印刷性が低下したりすることがある。上記α−オレフィン単位の含有量が20モル%を超えると、上記変性ポリビニルアルコールの水溶性が低下するため、アセタール化反応が困難になったり、得られた変性ポリビニルアセタール樹脂の有機溶剤への溶解性が低下するため、導電ペーストの作製に支障が出たり、経時粘度安定性が悪化したりすることがある。
上記アセタール化に用いるアルデヒドは特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。なかでも、アセトアルデヒドとブチルアルデヒドとをそれぞれ単独で用いる、又は、アセトアルデヒドとブチルアルデヒドとを併用することが好ましい。
上記酸触媒は特に限定されず、有機酸、無機酸のどちらでも使用可能であり、例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。なかでも、非ハロゲン性の酸触媒が好適である。
上記アセタール化の反応を停止するために、アルカリによる中和を行うことが好ましい。上記アルカリは特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。
また、上記中和を行う前後に、水等を用いて得られたポリビニルアセタール樹脂を洗浄することが好ましい。なお、洗浄水中に含まれる不純物の混入を防ぐため、洗浄は純水で行うことがより好ましい。
上記バインダー樹脂(A)に好適に用いられるポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度の好ましい下限は55モル%である。上記バインダー樹脂(A)に好適に用いられるポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が55モル%未満であると、後述する有機溶剤(a)に不溶となることがある。また、上記バインダー樹脂(A)に好適に用いられるポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度の好ましい上限は特に限定されないが、実質的には80モル%である。これは、原料であるポリビニルアルコールをアセタール化してポリビニルアセタール樹脂を作製する際に、既にアセタール化した部分による立体障害のため、20モル%程度の水酸基が未反応のまま残ってしまうためである。
なお、本明細書において、アセタール化度の計算方法としては、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基が2個の水酸基をアセタール化して得られたものであることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用してアセタール化度を計算する。
本発明の効果を損なわない範囲において、上記水酸基量が24.0モル%以下のポリビニルアセタール樹脂と、アクリル系樹脂やセルロース系樹脂等との混合樹脂を上記バインダー樹脂(A)として用いてもよい。上記バインダー樹脂(A)として混合樹脂を用いる場合、例えば、上記水酸基量が24.0モル%以下のポリビニルアセタール樹脂として水酸基量が24.0モル%以下のポリビニルブチラール樹脂を用いた混合樹脂では、バインダー樹脂全体に占める上記水酸基量が24.0モル%以下のポリビニルブチラール樹脂の含有量の好ましい下限は10重量%である。上記水酸基量が24.0モル%以下のポリビニルブチラール樹脂の含有量が10重量%未満であると、充分な接着性が得られないことがある。上記水酸基量が24.0モル%以下のポリビニルブチラール樹脂の含有量のより好ましい下限は30重量%である。
上記有機溶剤(a)は特に限定されないが、後述するバインダー樹脂(B)を溶解しないものが好ましく、特に、ジヒドロターピニルアセテート、ターピニルアセテート、酢酸2−エチルヘキシル、イソボルニルアセテート、4−(1’−アセトキシ−1’−メチルエチル)シクロヘキサノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート、イソボルニルプロピオネートからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有することが好適である。上記有機溶剤(a)としてこのような有機溶剤を使用することにより、後述する工程2で作製した誘電体層上に、更に上記工程1を実施しても、シートアタック現象を発生させることなく該誘電体層上に電極層を形成することが可能となる。従って、上記工程1と後述する工程2とを次々と繰り返すことで、電極層及び誘電体層を支持体から剥離する工程が不要となり、また、支持体としてのポリエチレンテレフタラートフィルム等の使用量を減らすことができるため、低コストでシートアタック現象の発生しない積層電子部品を製造することができる。
上記導電ペーストにおける上記有機溶剤(a)の含有量は特に限定されないが、上記導電ペースト100重量部に対して、好ましい下限は10重量部、好ましい上限は70重量部である。上記有機溶剤(a)の含有量が10重量部未満であると、得られる導電ペーストの粘度が高くなりすぎ、塗工することが困難となることがある。上記有機溶剤(a)の含有量が70重量部を超えると、導電ペーストの粘度が不足するため、印刷直後に導電ペーストが形状を保持できず、にじみが大きくなることがある。上記有機溶剤(a)の含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は60重量部である。
上記導電ペーストは、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、可塑剤、分散剤、ゲル化防止剤、安定剤、粘着剤、重合開始剤、重合禁止剤等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
上記導電ペーストを製造する方法は特に限定されず、例えば、上記導電粉末、上記バインダー樹脂(A)、上記有機溶剤(a)、及び、本発明の効果を損なわない範囲内で必要に応じて配合される添加剤を、ブレンダーミル、3本ロール等の各種混合機を用いて混合する方法が挙げられる。
上記工程1において、上記導電ペーストを塗工する方法については特に限定されないが、スクリーン印刷法や、グラビア印刷による方法等が挙げられる。
本発明の積層電子部品の製造方法は、上記工程1によって得られた電極層の表面に、セラミック粉末、バインダー樹脂(B)、及び、有機溶剤(b)を含有するセラミックスラリーを塗工し、乾燥することにより、誘電体層を形成する工程2を有する。
上記工程2における電極層の表面へのセラミックスラリーの塗工は、電極層の表面のみに限定されるものではなく、少なくとも電極層の表面に塗工することを意味する。
上記セラミックスラリーに含有されるセラミック粉末は特に限定されず、例えば、上記工程1おける導電粉末と混合して使用されるセラミック粉末と同様のものを用いることができる。
上記セラミックスラリーにおけるセラミック粉末の含有量は特に限定されないが、上記セラミックスラリー100重量部に対して好ましい下限は20重量部、好ましい上限は70重量部である。上記セラミックスラリーにおけるセラミック粉末の含有量が20重量部未満であると、得られる誘電体層の脱脂焼成後の体積収縮が大きくなることがある。また、得られる誘電体層にクラックが入ることがある。上記セラミックスラリーにおけるセラミック粉末の含有量が70重量部を超えると、セラミック粉末を結着することが難しくなることがある。上記セラミックスラリーにおけるセラミック粉末の含有量のより好ましい下限は40重量部、より好ましい上限は60重量部である。
上記バインダー樹脂(B)は、水酸基量が28.0モル%以上のポリビニルアセタール樹脂であることが好適である。水酸基量が28.0モル%以上のポリビニルアセタール樹脂を使用することにより、誘電体層の強度を充分に確保し、かつ、後述する有機溶剤(b)に可溶となる。上記水酸基量の好ましい下限は30.0モル%である。なお、上記水酸基量の上限については特に限定されないが、40.0モル%以下が好ましい。
上記バインダー樹脂(B)に好適に用いられるポリビニルアセタール樹脂の重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は4000である。上記バインダー樹脂(B)に好適に用いられるポリビニルアセタール樹脂の重合度が200未満であると、得られるセラミックグリーンシートの強度が不足し、破れやすくなるためショート不良が発生しやすくなることがある。上記バインダー樹脂(B)に好適に用いられるポリビニルアセタール樹脂の重合度が4000を超えると、得られるセラミックスラリーの粘度が高くなりすぎるため、平滑に塗工することができず、ショート不良が発生しやすくなる。
上記バインダー樹脂(B)に好適に用いられるポリビニルアセタール樹脂は、上記バインダー樹脂(A)に好適に用いられるポリビニルアセタール樹脂と同様に、ポリビニルアルコールをアセタール化することにより得られる。
上記バインダー樹脂(B)に好適に用いられるポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度の好ましい下限は55モル%である。上記バインダー樹脂(B)に好適に用いられるポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が55モル%未満であると、後述する有機溶剤(b)に不溶となることがある。また、上記バインダー樹脂(B)に好適に用いられるポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度の好ましい上限は特に限定されないが、実質的には80モル%である。これは、原料であるポリビニルアルコールをアセタール化してポリビニルアセタール樹脂を作製する際に、既にアセタール化した部分による立体障害のため、20モル%程度の水酸基が未反応のまま残ってしまうためである。
また、上記バインダー樹脂(B)は、上記バインダー樹脂(A)と同様に、本発明の効果を損なわない範囲において、上記ポリビニルアセタール樹脂と、アクリル系樹脂やセルロース系樹脂等との混合樹脂を上記バインダー樹脂(B)として用いてもよい。
上記有機溶剤(b)は、上記バインダー樹脂(B)を溶解し、上記工程1によって作製した電極層に含まれる上記バインダー樹脂(A)を溶解させない。
上記有機溶剤(b)は、メタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、炭酸プロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有する。有機溶剤(b)として、これらの有機溶剤を使用することにより、上記工程1で作製した電極層に対するシートアタック現象による歩留まり低下を防ぐことができる。これらの有機溶剤は、上記バインダー樹脂(B)の種類によっては、上記バインダー樹脂(B)を溶解しないことがある。その場合は他の有機溶剤を添加することによって、上記バインダー樹脂(B)を溶解することができる。
上記他の有機溶剤を添加する場合、上記有機溶剤(b)全体におけるメタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、炭酸プロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤の含有割合の下限は30重量%である。メタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、炭酸プロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤の含有割合が30重量%より少ないと、上記工程1で作製した電極層を溶解し、電極層に対するシートアタックを起こすことがある。
上記有機溶剤(b)における上記他の有機溶剤は特に限定はされないが、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類や、アセトン、メチルエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類や、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチル、ブタン酸ブチル、ペンタン酸メチル、ペンタン酸エチル、ペンタン酸ブチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸ブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酪酸2−エチルヘキシル等のエステル類や、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物等が好適である。
上記セラミックスラリーにおける上記有機溶剤(b)の含有量は特に限定されないが、上記セラミックスラリー100重量部に対して、好ましい下限は30重量部、好ましい上限は80重量部である。上記有機溶剤(b)の含有量が30重量部未満であると、得られるセラミックスラリーの粘度が高くなりすぎ、塗工することが困難となることがある。上記有機溶剤(b)の含有量が80重量部を超えると、セラミックスラリーの粘度が不足するため、塗工直後にセラミックスラリーが形状を保持できず、にじみが大きくなることがある。上記有機溶剤(b)の含有量のより好ましい下限は40重量部、より好ましい上限は60重量部である。
上記セラミックスラリーは、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、可塑剤、分散剤、ゲル化防止剤、安定剤、粘着剤、重合開始剤、重合禁止剤等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
上記セラミックスラリーを製造する方法は特に限定されず、例えば、上記セラミック粉末、上記バインダー樹脂(B)、上記有機溶剤(b)、及び、本発明の効果を損なわない限り必要に応じて配合される添加剤を、ブレンダーミル、3本ロール等の各種混合機を用いて混合する方法が挙げられる。
上記工程2において、上記工程1で得られた電極層の表面に上記セラミックスラリーを塗工する方法は特に限定されず、スリットコート、ダイコート、ロールコート等、従来公知の方法を用いることができる。
本発明の積層電子部品の製造方法は、更に、上記工程2を行う前に、上記工程1において導電ペーストが塗布されなかった部分に対して、セラミック粉末、バインダー樹脂(C)、及び、有機溶剤(c)を含有する段差吸収セラミックペーストを塗工し、乾燥することにより、段差吸収層を形成する工程3を有することが好ましい。上記工程3を有することにより、電極層及び誘電体層を積層した後、圧着する際に導電ペーストが塗布された部分と塗布されなかった部分との間の段差によって誘電体層に負荷がかかり、クラックが発生することを防止することができる。
上記段差吸収セラミックペーストに含有されるセラミック粉末は特に限定されず、例えば、上記工程1おける導電粉末と混合して使用されるセラミック粉末と同様のものを用いることができる。
上記段差吸収セラミックペーストおけるセラミック粉末の含有量は特に限定されないが、上記段差吸収セラミックペースト100重量部に対して好ましい下限は30重量部、好ましい上限は80重量部である。上記段差吸収セラミックペーストにおけるセラミック粉末の含有量が30重量部未満であると、段差吸収のためのセラミック量が不足し、段差吸収効果が不充分となることがある。上記段差吸収セラミックペーストにおけるセラミック粉末の含有量が80重量部を超えると、セラミック層の塗布量が多くなりすぎて段差吸収効果が不充分となったり、セラミック粉末を結着することが難しくなったりすることがある。上記段差吸収セラミックペーストにおけるセラミック粉末の含有量のより好ましい下限は40重量部、より好ましい上限は70重量部である。
上記バインダー樹脂(C)は、エチルセルロース、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂等、通常導電ペーストに使用される樹脂を用いることができるが、なかでも水酸基量が24.0モル%以下のポリビニルアセタール樹脂を用いることが好適である。ポリビニルアセタール樹脂を使用すると、電極層と誘電体層間の接着性が向上することによって層間のデラミネーションやクラックが発生しなくなることから、製品の歩留まりを高くすることができる。また、ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量を24.0モル%以下にすることによって、上記有機溶剤(b)に対して不溶となるため、シートアタック現象による製品の歩留まり低下を防ぐことができる。上記水酸基量のより好ましい上限は23.0モル%である。なお、上記水酸基量の下限については特に限定されないが、現状では20.0モル%未満のものが製造されていない。これは、原料であるポリビニルアルコールをアセタール化してポリビニルアセタール樹脂を作製する際に、既にアセタール化した部分による立体障害のため、20.0モル%程度の水酸基が未反応のまま残ってしまうためである。
上記バインダー樹脂(C)に用いられるポリビニルアセタール樹脂の重合度の好ましい下限は300、好ましい上限は3500である。上記バインダー樹脂(C)に用いられるポリビニルアセタール樹脂の重合度が300未満であると、得られる段差吸収セラミックペーストの粘度が低くなり、塗工時に所定の形状に塗布することができないことがある。上記バインダー樹脂(C)に用いられるポリビニルアセタール樹脂の重合度が3500を超えると、粘度が高くなりすぎて塗布した後に膜表面が平滑にならず、焼成時に段差吸収層が突き出た形状になってしまい、得られる積層電子部品をショートさせることがある。
上記バインダー樹脂(C)に好適に用いられるポリビニルアセタール樹脂は、上記バインダー樹脂(A)に好適に用いられるポリビニルアセタール樹脂、及び、上記バインダー樹脂(B)に好適に用いられるポリビニルアセタール樹脂と同様に、ポリビニルアルコールをアセタール化することにより得られる。
上記バインダー樹脂(C)に好適に用いられるポリビニルアセタール樹脂としては、α−オレフィン単位を含有する変性ポリビニルアルコールをアセタール化して得られる変性ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。このような変性ポリビニルアルコール樹脂を用いて得られるペーストは、スクリーン印刷性に極めて優れたものとなる。
上記α−オレフィン単位は特に限定されず、例えば、エチレン単位、プロピレン単位、1−ブテン単位、1−ペンテン単位、1−ヘキセン単位、1−ヘプテン単位、1−オクテン単位、4−メチル−1−ペンテン単位等が挙げられる。なかでも、エチレン単位が好適である。
また、上記変性ポリビニルアルコールにおけるα−オレフィン単位の含有量の好ましい下限は1モル%、好ましい上限は20モル%である。上記α−オレフィン単位の含有量が1モル%未満であると、得られる段差吸収セラミックペーストのセラミック粉末の分散性が低下したり、印刷性が低下したりすることがある。上記α−オレフィン単位の含有量が20モル%を超えると、上記変性ポリビニルアルコールの水溶性が低下するため、アセタール化反応が困難になったり、得られた変性ポリビニルアセタール樹脂の有機溶剤への溶解性が低下するため、段差吸収セラミックペーストの作製に支障が出たり、経時粘度安定性が悪化したりすることがある。
上記バインダー樹脂(C)に好適に用いられるポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度の好ましい下限は55モル%である。上記バインダー樹脂(C)に好適に用いられるポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が55モル%未満であると、後述する有機溶剤(c)に不溶となることがある。また、上記バインダー樹脂(C)に好適に用いられるポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度の好ましい上限は特に限定されないが、実質的には80モル%である。これは、原料であるポリビニルアルコールをアセタール化してポリビニルアセタール樹脂を作製する際に、既にアセタール化した部分による立体障害のため、20モル%程度の水酸基が未反応のまま残ってしまうためである。
また、上記バインダー樹脂(C)は、上記バインダー樹脂(A)及び(B)と同様に、本発明の効果を損なわない範囲において、上記ポリビニルアセタール樹脂と、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂等との混合樹脂を上記バインダー樹脂(C)として用いてもよい。
上記有機溶剤(c)は特に限定されないが、上記バインダー樹脂(B)を溶解しないものが好ましく、特に、ジヒドロターピニルアセテート、ターピニルアセテート、酢酸2−エチルヘキシル、イソボルニルアセテート、4−(1’−アセトキシ−1’−メチルエチル)シクロヘキサノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート、イソボルニルプロピオネートからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有することが好適である。
上記有機溶剤(c)としてこのような有機溶剤を使用することにより、上記工程2で作製した誘電体層上に、更に上記工程1を実施し、工程1において導電ペーストが塗布されなかった部分に対して上記工程3を実施しても、シートアタック現象を発生させることなく該誘電体層上に段差吸収層を形成することが可能となる。従って、上記工程1及び工程3と上記工程2とを次々と繰り返すことにより、電極層、段差吸収層、及び、誘電体層を支持体から剥離する工程が不要となり、また、支持体としてのポリエチレンテレフタラートフィルム等の使用量を減らすことができるため、低コストでシートアタック現象の発生しない積層電子部品を製造することができる。
上記段差吸収セラミックペーストにおける上記有機溶剤(c)の含有量は特に限定されないが、上記段差吸収セラミックペースト100重量部に対して、好ましい下限は20重量部、好ましい上限は70重量部である。上記有機溶剤(c)の含有量が20重量部未満であると、得られる段差吸収セラミックペーストの粘度が高くなりすぎ、塗工することが困難となることがある。上記有機溶剤(c)の含有量が70重量部を超えると、段差吸収セラミックペーストの粘度が不足するため、印刷直後に段差吸収セラミックペーストが形状を保持できず、にじみが大きくなることがある。上記有機溶剤(c)の含有量のより好ましい下限は30重量部、より好ましい上限は60重量部である。
上記段差吸収セラミックペーストは、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、可塑剤、分散剤、ゲル化防止剤、安定剤、粘着剤、重合開始剤、重合禁止剤等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
上記段差吸収セラミックペーストを製造する方法は特に限定されず、例えば、上記セラミック粉末、上記バインダー樹脂(C)、上記有機溶剤(c)、及び、本発明の効果を損なわない限り必要に応じて配合される添加剤を、ブレンダーミル、3本ロール等の各種混合機を用いて混合する方法が挙げられる。
上記工程3において、上記段差吸収セラミックペーストを塗工する方法については特に限定されないが、スクリーン印刷法や、グラビア印刷による方法等が挙げられる。
本発明の積層電子部品の製造方法において、上記電極層や上記段差吸収層と上記誘電体層とを加熱圧着する方法、及び、得られた積層体を脱脂、焼成する方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
本発明によれば、シートアタックの発生を防止し、かつ、製造コストを低くすることができる積層電子部品の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、該積層電子部品の製造方法を用いて製造される積層電子部品を提供することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
なお、ポリビニルブチラール樹脂のアセタール化度及び水酸基量は、該ポリビニルブチラール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解させ、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて測定した。
(実施例1)
(導電ペーストの作製)
導電粉末としてニッケル粉(JFEミネラル社製、「NFP−201S」)100重量部、バインダー樹脂として変性ポリビニルブチラール(重合度1700、エチレン含有量5モル%、ケン化度98モル%、水酸基量22.8モル%)7重量部、及び、有機溶剤としてジヒドロターピニルアセテート70重量部を添加し、三本ロールで混練することにより導電ペーストを得た。
(セラミックスラリーの作製)
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製、「エスレックB BM−2」、重合度850、アセタール化度68モル%、水酸基量30.0モル%)10重量部を、1,4−ブタンジオール(和光純薬工業社製)30重量部とトルエン15重量部との混合溶剤に加え、攪拌溶解し、更に、可塑剤としてジブチルフタレート3重量部を加え、攪拌溶解した。得られた樹脂溶液に、セラミック粉末としてチタン酸バリウム(堺化学工業社製、「BT−02、平均粒子径0.2μm)100重量部を加え、ボールミルで48時間混合してセラミックスラリーを得た。
(段差吸収セラミックペーストの作製)
セラミック粉末としてチタン酸バリウム(堺化学工業社製、「BT−02」、平均粒子径0.2μm)100重量部、変性ポリビニルブチラール樹脂(重合度1700、エチレン含有量5モル%、ケン化度98モル%、水酸基量20.4モル%)5重量部、及び、有機溶剤としてターピニルアセテートを80重量部添加して三本ロールで混練することにより段差吸収セラミックペーストを得た。
(電極層及び段差吸収層の形成)
作製した導電ペーストをPETフィルム上にスクリーン印刷法によって塗布し、120℃、5分乾燥することにより、電極層を形成した。なお、スクリーン版にはカレンダー加工されたSUS500メッシュの版を用いた。
その後、PETフィルム上の電極層が形成されていない部分に、作製した段差吸収セラミックペーストをスクリーン印刷法で塗布し、120℃、5分乾燥することにより、段差吸収層を形成した。なお、スクリーン版にはカレンダー加工されたSUS500メッシュの版を用いた。得られた電極層及び段差吸収層の厚みを接触式粗さ計で測定したところ、ともに1.5μmであった。
(セラミックスラリーの塗工及び乾燥)
作製したセラミックスラリーを、PETフィルム上に形成した電極層及び段差吸収層の上に、乾燥後の厚みが約3μmとなるようにコーターを用いて塗工し、常温で1時間風乾した後、熱風乾燥機で80℃、3時間乾燥し、続けて120℃で2時間乾燥させることにより、表面に誘電体層(セラミックグリーンシート)を形成した電極層及び段差吸収層を表面に有するPETフィルムを得た。
(積層セラミック焼結体の作製1)
表面にセラミックグリーンシートを形成した電極層及び段差吸収層をPETフィルムから剥がし、得られた表面に電極層及び段差吸収層を有するセラミックグリーンシートを20層重ね合わせ、温度70℃、圧力160kg/cm、10分間の熱圧着条件で圧着して、20層のセラミックグリーンシート積層体200個を得た。得られたセラミックグリーンシート積層体を窒素雰囲気で、昇温速度3℃/分で450℃まで昇温し、5時間保持した後、更に、昇温速度5℃/分で1350℃まで昇温し、10時間保持することにより、積層セラミック焼結体(α)200個を得た。
(積層セラミック焼結体の作製2)
表面にセラミックグリーンシートを形成した電極層及び段差吸収層を表面に有するPETフィルムのセラミックグリーンシートの上に導電ペースト、段差吸収セラミックペーストを順次スクリーン印刷で塗工し、乾燥し、更にその上にセラミックスラリーを塗工し、乾燥することを19回繰り返し、温度70℃、圧力160kg/cm、10分間の熱圧着条件で圧着して、20層のセラミックグリーンシート積層体200個を得た。得られたセラミックグリーンシート積層体を窒素雰囲気で、昇温速度3℃/分で450℃まで昇温し、5時間保持後、更に昇温速度5℃/分で1350℃まで昇温し、10時間保持することにより、積層セラミック焼結体(β)200個を得た。
(実施例〜1参考例2〜3、11、比較例1〜4)
表1〜3に示すバインダー樹脂及び有機溶剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして、表面にセラミックグリーンシートを形成した電極層及び段差吸収層を表面に有するPETフィルム並びに積層セラミック焼結体を得た。
<評価>
実施例及び比較例で得られた表面にセラミックグリーンシートを形成した電極層及び段差吸収層を表面に有するPETフィルム並びに積層セラミック焼結体について以下の評価を行った。結果を表4に示した。
(シートアタックの評価)
表面にセラミックグリーンシートを形成した電極層及び段差吸収層を表面に有するPETフィルムの表面(セラミックグリーンシート面)及び裏面(PETフィルム面)各10箇所を金属顕微鏡を用いて200倍の倍率で観察し、電極層及び段差吸収層とセラミックグリーンシートとの間に皺やクラックが発生しているか否かを確認した。皺やクラック又は樹脂膨潤による突起が見られたものを「×」、皺やクラック又は樹脂膨潤による突起が見られなかったものを「○」として、シートアタックを評価した。
(コンデンサ特性の評価)
得られた積層セラミック焼結体(α)及び積層セラミック焼結体(β)を積層面に対して垂直に割り、断面を電子顕微鏡を用いて5000倍の倍率で観察し、任意に選んだ20箇所について、電極層の連続している部分の長さと切れている部分の長さとを測定し、全体の長さの合計値に対する連続している部分の長さの合計値の割合を計算することによって連続率を算出した。
Figure 0005416524
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本発明によれば、シートアタックの発生を防止し、かつ、製造コストを低くすることができる積層電子部品の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、該積層電子部品の製造方法を用いて製造される積層電子部品を提供することができる。

Claims (6)

  1. 電極層と誘電体層とを交互に積層し加熱圧着して得られた積層体を脱脂、焼成する積層電子部品の製造方法であって、
    導電粉末、バインダー樹脂(A)、及び、有機溶剤(a)を含有する導電ペーストを塗工し、乾燥することにより、電極層を形成する工程1と、
    工程1によって得られた電極層の表面に、セラミック粉末、バインダー樹脂(B)、及び、有機溶剤(b)を含有するセラミックスラリーを塗工し、乾燥することにより、誘電体層を形成する工程2とを有し、
    前記バインダー樹脂(A)は、酸基量が24.0モル%以下のポリビニルアセタール樹脂を含有し、
    前記バインダー樹脂(B)は、水酸基量が28.0モル%以上のポリビニルアセタール樹脂であり、
    前記有機溶剤(b)は、ロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、炭酸プロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を30重量%以上含有する
    ことを特徴とする積層電子部品の製造方法。
  2. 有機溶剤(a)は、ジヒドロターピニルアセテート、ターピニルアセテート、酢酸2−エチルヘキシル、イソボルニルアセテート、4−(1’−アセトキシ−1’−メチルエチル)シクロヘキサノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート、イソボルニルプロピオネートからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有することを特徴とする請求項1載の積層電子部品の製造方法。
  3. 工程2を行う前に、工程1において導電ペーストが塗工されなかった部分に対して、セラミック粉末、バインダー樹脂(C)、及び、有機溶剤(c)を含有する段差吸収セラミックペーストを塗工し、乾燥することにより、段差吸収層を形成する工程3を有することを特徴とする請求項1記載の積層電子部品の製造方法。
  4. バインダー樹脂(C)が、水酸基量が24.0モル%以下のポリビニルアセタール樹脂を含有することを特徴とする請求項記載の積層電子部品の製造方法。
  5. 有機溶剤(c)は、ジヒドロターピニルアセテート、ターピニルアセテート、酢酸2−エチルヘキシル、イソボルニルアセテート、4−(1’−アセトキシ−1’−メチルエチル)シクロヘキサノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート、イソボルニルプロピオネートからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有することを特徴とする請求項又は記載の積層電子部品の製造方法。
  6. 請求項1、2、3、4記載の積層電子部品の製造方法を用いて製造される積層電子部品。
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