ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコール(以後「PVA」と略記する場合がある)とアルデヒド化合物を用いて、酸性条件下、水中でのアセタール化反応により得られる。ポリビニルアセタールは、強靭なフィルムが得られること、親水性のヒドロキシ基と疎水性のアセタール基を併せ持つユニークな構造であることなどから、種々のポリマーが提案されている。
その中でも、PVAとホルムアルデヒドから製造されるポリビニルホルマール、PVAとアセトアルデヒドから製造されるポリビニルアセトアセタール、およびPVAとブチルアルデヒドから製造されるポリビニルブチラールは、商業的に重要な位置を占めている。特に、ポリビニルブチラールは、各種バインダーやフィルム等として広く用いられており、商業的により重要な位置を占めている。
上述のようなポリビニルアセタールは、積層セラミックコンデンサ等の製造においてバインダーとしても用いられている。積層セラミックコンデンサとは、酸化チタンやチタン酸バリウムなどの誘電体を含む層と内部電極とを多数積み重ねたチップタイプのセラミックコンデンサである。
このような積層セラミックコンデンサは、例えば、次のような方法で製造することができる。まず、有機溶剤、可塑剤、分散剤等をセラミック粉末に添加後、セラミックスラリーを作製し、その後、ポリビニルブチラールやポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂等のバインダーを有機溶剤に溶解したものを加え、ボールミル等の混合機により均一に混合・分散してセラミックスラリー組成物を得る。続いてこのセラミックスラリーをドクターブレード等の塗工機を用いてセラミックグリーンシートを作製する。セラミックグリーンシートの表面に内部電極となる導電ペーストをスクリーン印刷等により塗布して乾燥させたものを複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を得る。その後さらに積層体を加熱してバインダーを分解除去して焼結し、セラミック焼結体の端部に外部電極を形成する工程を経て、積層セラミックコンデンサを得ることができる。
近年、電子機器の多機能化や小型化に伴い、積層セラミックコンデンサには大容量化、小型化が求められている。それを実現するためには、積層セラミックコンデンサに用いられるセラミックグリーンシートや導電ペーストを改良することが考えられる。
セラミックグリーンシート用のセラミックスラリーには、無機物としてセラミック粉末を分散させたものが用いられる。そのようなセラミック粉末として、0.5μm以下の微細な粒子径のものが用いられるようになってきており、このような微細な粒子径のセラミック粉末を用いると、セラミックスラリーにおけるセラミック粉末の充填密度や、セラミック粉末の総表面積が増加する。そのため、バインダー樹脂の必要量が増加し、これに伴って、セラミックスラリーの粘度も増大することから、基材への塗工が困難となったり、セラミック粉末自体の分散不良が発生したりすることがあった。分散後のセラミックスラリーの保存安定性は、セラミックスラリー中のセラミック粒子同士の凝集を防ぐために重要である。
加えて、積層セラミックコンデンサを小型化する場合には、積層セラミックコンデンサ中の誘電体層も非常に薄くなる。誘電体層の下には、導電ペーストを印刷し乾燥させた乾燥膜が内部電極として構成されているが、この内部電極の表面にセラミック粉末の再凝集に伴う凹凸が生じると、積層セラミックコンデンサ製造時の積層工程から圧着工程において、内部電極表面の凸部がその上に積層された誘電体層を突き抜いてしまい、内部電極のショート不良が発生しやすくなる。
したがって、内部電極の表面は、凹凸のない平滑状に形成されることが必要であり、この平滑性は、内部電極の作製に用いる導電粉末や、セラミックスラリー中のセラミック粉末の分散性や粒径の均一性に非常に大きく影響を受けるといえる。分散性の悪い粉末は、凝集体を形成するために内部電極の表面に凹凸が形成されやすく、内部電極の平滑性を悪化させる。よって、平均粒径の小さい導電粉末やセラミック粉末を用いたとしても、それらの分散性が悪い場合、あるいは粗大粒子を含んでいる場合には、小型化された積層セラミックコンデンサにおいては、内部電極のショート不良が発生しやすくなるという問題を生じ易いと言える。
このように、セラミック粉末の微粒子化による積層セラミックコンデンサの小型化には限界があるため、コンデンサを大容量化したり、コンデンサの容量を保って小型化したりするためには、セラミックグリーンシートの薄層化や、セラミックグリーンシートの多層化が求められる。
ただし、セラミックグリーンシートを薄膜化するためには、セラミックグリーンシート作製時の諸工程における引張りや曲げ等の応力に耐え得るように、バインダー樹脂として重合度の高いものを用いることが必要となる。しかしながら、重合度の高いバインダー樹脂を用いると、セラミックスラリーの粘度が増大し、基材への塗工性やセラミック粉末の分散性が悪化してしまう。
例えば、特許文献1では、重合度が1200を超え2400以下、アセチル基の割合が8モル%以上20モル%未満、アセタール化度が55〜70モル%であるポリビニルアセタール樹脂等を含有するセラミックグリーンシート用スラリー組成物であって、調製作業性が良好で、塗工性に優れるセラミックグリーンシート用スラリー組成物が開示されている。しかしながら、このようなセラミックグリーンシート用スラリー組成物を用いて、近年求められているような膜厚が2μm以下のセラミックグリーンシートを作製すると、セラミックグリーンシートの強度が不充分なものとなり、支持体からの剥離時にセラミックグリーンシートが破損するという問題があった。
このような問題点を解決するために、特許文献2では、重合度が2400を超え4500以下、ビニルエステル単位量が1〜20モル%、アセタール化度が55〜80モル%であるポリビニルアセタール樹脂、セラミック粉末、及び、有機溶剤を含有するセラミックグリーンシート用スラリー組成物を用いている。しかしながら、このようなセラミックグリーンシート用スラリー組成物によって、超薄層のセラミックグリーンシートを作製した場合、その膜厚が2μm以下になると、シートアタック現象が起こりやすいという問題が生じることがある。
ここで、シートアタック現象とは、セラミックグリーンシート上に内部電極層となる導電ペーストを印刷した際に、導電ペースト中の有機溶剤により、セラミックグリーンシートに含有されているバインダー樹脂が溶解して、セラミックグリーンシートに破れなどの欠陥が生じる現象をいう。このシートアタック現象が発生すると、積層セラミックコンデンサの電気性能や信頼性が低下し、歩留まりが著しく低下してしまう。
また、特許文献3には、分散剤を添加しなくても優れた分散性を実現できるスラリー組成物が記載されている。しかしながら、このようなスラリーは、乾燥中に無機粒子同士の凝集が起こり、均一なシートが得られず、焼結体の電気特性へ悪影響を及ぼす事があるという問題があった。
このように特許文献1、特許文献2および特許文献3においては、セラミックスラリーの保存安定性にすぐれ、かつセラミックグリーンシート作製時の塗工性に優れ、塗工後の乾燥中に無機粒子が凝集することなく、充分な機械的強度を有し、さらに導電ペースト中の有機溶剤に溶解されにくいという性質を兼ね備えたポリビニルアセタール樹脂は開示されていない。
一方、積層セラミックコンデンサの小型化のためには、セラミックグリーンシートの改良の他に、導電ペーストの改良が考えられることは、前述のとおりである。積層セラミックコンデンサの内部電極を形成するために用いる導電ペーストとしては、例えば、電極を構成するパラジウムやニッケル等の金属材料と、塗布するセラミックグリーンシート表面に適合する有機溶剤と、エチルセルロース等のバインダー樹脂とを含有するものが用いられている。
しかしながら、極めて薄膜化が進んだ積層セラミックコンデンサを製造するために、従来のエチルセルロースをバインダー樹脂とした導電ペーストと、ポリビニルアセタール樹脂をバインダー樹脂として用いたセラミックグリーンシートを用いた場合、両者の接着性が劣るため、いわゆるデラミネーションと呼ばれる層間剥離が発生しやすかった。また、エチルセルロース自体の熱分解性が低いため、上記積層体を脱脂処理した場合、焼成後にカーボン成分が残留し、電気特性を損なうといった問題点もあった。
上記のようなデラミネーションの問題を解決するため、セラミックグリーンシートとの接着性に優れるポリビニルアセタール樹脂を、導電ペーストのバインダー樹脂として用いる方法が検討されている。しかしながら、ポリビニルアセタール樹脂をバインダー樹脂とした導電ペーストでは、スクリーン印刷により導電ペーストをセラミックグリーンシートに印刷しようとしても、導電ペーストの糸引きや目詰まりといった問題を生じやすく、結果的に版離れが悪くなったり、導電ペーストの厚さにばらつきが生じたりして、内部電極のパターンを鮮明に描画できずに、積層セラミックコンデンサの生産歩留まりを低下させるといった問題が新たに生じていた。
例えば、特許文献4には、(メタ)アクリル酸エステル類を主成分とする重合性モノマーを、ポリビニルアセタール樹脂が分散されてなる水性媒体に添加して前記ポリビニルアセタール樹脂中に浸透させた後、重合させることにより得られるポリビニルアセタール・(メタ)アクリル酸エステル複合樹脂を含有することを特徴とする導電ペースト用バインダー樹脂が記載されている。しかしながら、このような導電ペーストは、保存安定性が不十分であり、導電ペーストを長時間放置しておくと、導電ペースト中の固形成分が沈降してしまい、導電ペーストの性能が不可逆的に損なわれるという問題があった。また、得られる積層セラミックコンデンサ焼結体中の炭素残渣の量が多く、積層セラミックコンデンサの性能が不十分になるという問題もあった。
特許文献5には、セラミックグリーンシートとの接着性に優れ、デラミネーションが発生せず、熱分解性に優れ、しかもスクリーン印刷性にも優れるとともに、シートアタックが発生することのない導電ペーストが記載されている。しかしながら、導電ペーストを塗工後、乾燥中に無機粒子同士の凝集が起こってしまい、均一な内部電極が得られずに、積層セラミックコンデンサ焼結体の電気特性へ悪影響を及ぼす事があるという問題があった。
特許文献6には、スクリーン印刷性を向上させ、デラミネーションの発生を防止するために、カルボキシル変性ポリビニルアセタールとアミノ変性ポリビニルアセタールとを含有する樹脂組成物を用いることが記載されている。しかしながら、スラリー中に酸成分を有する樹脂、塩基成分を有する樹脂が混在することから、無機分散液の保存安定性が必ずしも十分ではないという問題があった。さらに、カルボキシル変性ポリビニルアセタールの中和工程において金属塩が残留してしまう場合、積層セラミックコンデンサの電気特性が低下したり、酸による洗浄工程においてカルボン酸由来のプロトンが遊離した場合、樹脂自体の保存安定性が低下して未溶解分の増加が起こったりと、積層セラミックコンデンサの品質を十分に向上させることができないという問題もあった。
他方、積層セラミックコンデンサの製造には、ポリビニルアセタールのようなビニルアセタール系重合体が、バインダーとしても用いられることは上述した通りである。ビニルアセタール系重合体の溶融又は溶解時の取扱い性を向上させるための方法としては、原料のビニルアルコール系共重合体を低重合度化することによって、ビニルアセタール系重合体を低粘度化する方法が一般的に用いられる。しかし、ビニルアルコール系共重合体の低重合度化に伴って、ビニルアセタール系重合体の強度等の力学物性が低下することになるため、そのような低重合度のビニルアセタール系重合体が使用できる用途は、一部の用途に限定されている。
このような中、ビニルアセタール系重合体の強度等の力学物性やその他の諸物性を向上させることを目的として、ビニルアセタール系重合体の分子内に二重結合を導入し、分子内架橋を行うことが提案されている。例えば、分子内にイソシアナート基やグリシジル基などの水酸基と反応可能な官能基とエチレン性二重結合を有する化合物を、ポリビニルアセタールの残存水酸基と反応させることで、ビニルアセタール系重合体の分子内に二重結合を導入し、架橋させることが開示されている(例えば、特許文献7及び8参照)。特に、特許文献8では、分子内にエポキシ基とエチレン性二重結合を有する所定の化合物と、ポリビニルアセタールを反応させることで、ポリビニルアセタールの分子量をほとんど変化させずに、低粘度化できることが記載されている。しかしながら、スラリーの分散性、安定性まで改善されているとは言えない。
また、ビニルアセタール系重合体の分子内に二重結合を導入し、架橋させるためのその他の方法としては、アルデヒド基やアセタール基などの官能基とエチレン性二重結合を有する化合物を用いてポリビニルアセタールとアセタール化反応させ、ビニルアセタール系重合体の分子内に二重結合を導入することが開示されている(例えば、特許文献9参照)。特許文献9では、得られたビニルアセタール系重合体を含む架橋性セラミックグリーンシート用組成物が、通常のポリビニルアセタールと同程度の粘度で作業性に優れ、且つ、得られるセラミックグリーンシートが架橋により高強度化されることが記載されている。
しかし、特許文献7〜9に記載された方法では、ビニルアセタール系重合体の強度等の力学物性を維持したまま、十分に低粘度化できているとはいえず、セラミックスラリーにおけるセラミック粉末の分散性、セラミックグリーンシートの膜厚の均一性等まで改善されているとは言えない。また、通常のポリビニルアセタールの製造方法に比べ、ポリビニルアセタールの分子内にエチレン性二重結合を導入するための反応工程が増えてしまうなど、製造コストが大幅に上がる場合があるという問題があった。
本発明では、ビニルエステル系単量体と2つ以上のエチレン性二重結合を有する多官能単量体(以下、単に多官能単量体という場合がある)との共重合体をけん化して得られるビニルアルコール系共重合体をアセタール化して得られるビニルアセタール系重合体が用いられる。ビニルアルコール系共重合体をアセタール化して、ビニルアセタール系重合体を得るには、ビニルアルコール系共重合体は水溶性であることが好ましい。したがって、本発明のビニルアセタール系重合体は、好ましくはその側鎖にエチレン性二重結合を含有しながらも水溶性であるビニルアルコール系共重合体をアセタール化して得られる。ここで、側鎖におけるエチレン性二重結合とは、ビニルアルコール系重合体に共重合された多官能単量体中の未反応のエチレン性二重結合を指す。
ビニルエステル系単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられる。その中でも、酢酸ビニルが製造の容易さという観点から好ましい。
分子中にエチレン性二重結合を2つ以上含有する多官能単量体を、ビニルエステル系単量体とともに重合させる場合には、多官能単量体中の複数のエチレン性二重結合が反応することが避けられない。そして、この場合、当該多官能単量体単位が架橋点になるので、得られる重合体が架橋されて、溶媒に対して不溶性のものになってしまうことが多かった。しかしながら、本発明者らが検討を重ねた結果、多数の分岐構造を重合体において形成させるのに必要な量のエチレン性二重結合が含有されながらも、重合体内の架橋が適度に抑制された、水溶性のビニルアルコール系共重合体を合成することができた。以下、当該ビニルアルコール系共重合体について詳細に説明する。
本発明で用いられる多官能単量体は、分子中にエチレン性二重結合を2つ以上含有するものであれば、その種類は特に限定されない。しかしながら、過剰な架橋反応が進行することによってビニルアルコール系共重合体の水溶性が阻害されることがなく、多数の分岐構造を重合体において形成させるのに必要な量の二重結合を導入できるものであることが好ましい。ビニルエステル系単量体に対する多官能単量体の配合割合、重合温度、単量体濃度、重合率、重合度など、様々な要因を考慮しながら、適切な反応性を有する多官能単量体を選択する必要がある。過剰な架橋反応を抑制する観点からは、多官能単量体に含まれるエチレン性二重結合の数は、2〜4であることが好ましく、2つであることがより好ましい。以下で例示する多官能単量体は、単独で、あるいは2種以上を用いることができる。
多官能単量体としては、ビニルエーテル基を含有する単量体が好適である。ビニルエーテル基を含有する単量体としては、ジビニルエーテル化合物が挙げられ、例えば、エタンジオールジビニルエーテル、プロパンジオールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル(例えば、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル)、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテルなどが挙げられる。ビニルエーテル基を含有する単量体、特に、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテルは、ビニルアルコール系共重合体の重合度や二重結合の含有量の制御が容易であり、より好適に用いられる。
また、多官能単量体としては、アリル基を含有する単量体も好適である。アリル基を含有する単量体としては、ペンタジエン、ヘキサジエン、ヘプタジエン、オクタジエン、ノナジエン、デカジエン(例えば、1,9−デカジエン)等のジエン化合物、グリセリンジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテルなどのジアリルエーテル化合物、グリセリントリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルなどのトリアリルエーテル化合物、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテルなどのテトラアリルエーテル化合物のようなアリルエーテル基を含有する単量体;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、アジピン酸ジアリルなどカルボン酸ジアリルのようなアリルエステル基を含有する単量体;ジアリルアミン、ジアリルメチルアミンなどのジアリルアミン化合物、トリアリルアミンなどのアリルアミノ基を含有する単量体;ジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどジアリルアンモニウム塩のようなアリルアンモニウム基を含有する単量体;イソシアヌル酸トリアリル;1,3−ジアリル尿素;リン酸トリアリル;ジアリルジスルフィドなどが例示される。アリルエーテル基を含有する単量体、特に、1,9−デカジエン、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテルは、ビニルアルコール系共重合体の重合度や二重結合の含有量の制御が容易であり、より好適に用いられる。
さらに、上述した多官能単量体の他に、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸を有する単量体;N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミドを有する単量体、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンなども好適な多官能単量体として挙げることができる。
本発明で用いられるビニルアルコール系共重合体は、例えば、ビニルエステル系単量体と多官能単量体とを共重合させてビニルエステル系共重合体を得てから、ビニルエステル系共重合体をけん化することにより製造することができる。この製造方法によれば、多官能単量体由来の成分が分子鎖中に均一に分布したビニルアルコール系共重合体が得られる。
上記製造方法において、ビニルエステル系単量体に対する上記多官能単量体のモル比(p)を0.1/100〜5/100として共重合させることが好ましい。モル比(p)が0.1/100未満であると、ビニルアルコール系共重合体の側鎖にエチレン性二重結合が導入され難くなるおそれがある。モル比(p)は0.15/100以上であることがより好ましく、0.2/100以上であることがさらに好ましい。一方、モル比(p)が5/100を超えると、ビニルエステル系共重合体の重合度を制御するのが困難になるおそれがある。また、当該ビニルエステル系共重合体をけん化して得られたビニルアルコール系共重合体が水に溶解しないおそれがある。モル比(p)は3/100以下であることがより好ましく、2/100以下であることがさらに好ましい。
ビニルエステル系単量体と多官能単量体との重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法など任意の重合方法を採用することができる。また、共重合は、無溶媒またはアルコール系溶媒の存在下で行うことができる。その中でも、無溶媒の塊状重合法およびアルコール系溶媒を用いた溶液重合法が好適に採用される。アルコール系溶媒は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどを単独で、あるいは2種以上混合して用いることができる。共重合の方式は特に限定されず、回分重合、半回分重合、連続重合、半連続重合のいずれでもよい。
ビニルエステル系単量体と多官能単量体とを共重合する際の温度(共重合温度)は特に限定されない。共重合温度は、0〜200℃が好ましく、30〜140℃がより好ましい。共重合温度が0℃より低い場合、十分な重合速度が得られないことがある。共重合温度が200℃より高い場合、使用するビニルエステル系単量体や多官能単量体の分解が懸念される。
共重合温度の制御方法は特に限定されない。共重合温度の制御方法としては、例えば、重合速度の制御により、重合により生成する熱と、重合容器表面からの放熱とのバランスをとる方法が挙げられる。また、適当な熱媒を用いた外部ジャケットにより制御する方法も挙げられる。安全性の面からは、後者の方法が好ましい。
ビニルエステル系単量体と多官能単量体とを共重合する際に使用される重合開始剤は、重合方法に応じて、公知の開始剤(例えば、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤など)から選択すればよい。アゾ系開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などが挙げられる。過酸化物系開始剤としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのパーカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシデカネートなどのパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド;2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテートなどが挙げられる。これらの開始剤に、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などを組み合わせて開始剤としてもよい。レドックス系開始剤としては、例えば、上記過酸化物と、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、ロンガリットなどの還元剤とを組み合わせた開始剤が挙げられる。共重合を高温で行った場合に、ビニルエステル系単量体の分解に起因する着色が見られることがある。その場合、着色の防止を目的として、酒石酸のような酸化防止剤を、ビニルエステル系単量体に対して1〜100ppm程度、重合系に添加することはなんら差し支えない。
ビニルエステル系単量体と多官能単量体との共重合に際して、本発明の主旨を損なわない範囲で、他の単量体を共重合してもよい。当該他の単量体としては例えば、エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン類;(メタ)アクリル酸およびその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド;N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロール(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体などの(メタ)アクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどが挙げられる。このような他の単量体の共重合量は、通常5モル%以下である。
ビニルエステル系単量体と多官能単量体との共重合は、得られる共重合体の重合度を調節することなどを目的として、本発明の主旨を損なわない範囲で、連鎖移動剤の存在下で行ってもよい。連鎖移動剤としては、例えば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどのアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;2−ヒドロキシエタンチオールなどのメルカプタン類;トリクロロエチレン、パークロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。なかでもアルデヒド類およびケトン類が好適に用いられる。連鎖移動剤の添加量は、添加する連鎖移動剤の連鎖移動定数、および目的とするビニルアルコール系共重合体の重合度に応じて決定すればよいが、一般に、ビニルエステル系単量体に対して0.1〜10質量%程度が望ましい。
また、ビニルエステル系単量体の重合率は20〜90%であることが好ましい。ビニルエステル系単量体の重合率が20%未満であると単位時間当たりに製造できるビニルエステル系共重合体の量が減少することによる生産効率の低下のおそれがあるとともに、ビニルエステル系単量体を回収するためのコストが増加するおそれがある。生産効率とコストの観点から、ビニルエステル系単量体の重合率は30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。一方、ビニルエステル系単量体の重合率が90%を超えると、架橋反応が過剰に進行して、得られるビニルアルコール系共重合体の水溶性が低下するおそれがある。架橋反応の抑制の観点から、ビニルエステル系単量体の重合率は80%以下であることがより好ましく、70%以下であることがさらに好ましい。なお、重合率は、得られた重合体溶液を120℃で2時間真空乾燥して、重合体の固形分を算出することによって求めることができる。
ビニルエステル系単量体と多官能単量体とを共重合することによって得られたビニルエステル系共重合体のけん化方法は特に限定されず、公知のけん化方法を採用できる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシドなどの塩基性触媒やp−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いた、加アルコール分解反応または加水分解反応が挙げられる。この反応に使用しうる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;アセトンメチルエチルケトンなどのケトン類:ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素などが挙げられる。これらの溶媒は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、メタノールまたはメタノール/酢酸メチル混合溶液を溶媒とし、水酸化ナトリウムを触媒としてけん化することが簡便であり好ましい。
本発明で用いられるビニルアルコール系共重合体のけん化度は60〜99.9モル%が好ましい。けん化度が60モル%未満では、ビニルアルコール系共重合体が水に不溶となる場合がある。けん化度は65モル%以上であることがより好ましい。一方、けん化度が99.9モル%を超えると、工業的製造が難しいだけでなく、ビニルアルコール系共重合体水溶液の粘度安定性が悪くなり、取り扱いが困難な場合がある。けん化度は99.5モル%以下であることがより好ましい。
けん化度は、JIS K6726に記載されているけん化度の測定方法により測定することができる。このとき、ビニルアルコール単位、ビニルエステル系単量体単位及びエチレン性二重結合を含む単量体単位以外の単位は、仮にビニルアルコール系共重合体に含まれていたとしても少量であるので、これらの単位を無視して、けん化度の算定を行う。
本発明で用いられるビニルアルコール系共重合体の粘度平均重合度Pηは100〜8000が好ましい。粘度平均重合度Pηが100未満では、ビニルアルコール系共重合体の工業的生産が難しくなるおそれがある。粘度平均重合度Pηは200以上であることがより好ましい。一方、粘度平均重合度Pηが8000を超えると、ビニルアルコール系共重合体の工業的生産が難しいだけでなく、ビニルアルコール系共重合体水溶液の粘度が非常に高くなり、その取り扱いが困難になる場合がある。ビニルアルコール系共重合体の粘度平均重合度Pηは5000以下であることがより好ましく、2500以下であることがさらに好ましい。また、通常、ビニルアルコール系共重合体の粘度平均重合度と、それを原料として得られるアセタール系共重合体の粘度平均重合度は一致する。本発明の樹脂組成物をセラミックスラリーとして用いる場合には、セラミックグリーンシートの平滑性、強度、印刷特性等を良好なものとする観点から、ビニルアルコール系共重合体の粘度平均重合度Pηは1000〜4000が好ましく、1500〜2500がより好ましい。また、本発明の樹脂組成物を導電ペーストとして用いる場合には、求められる性能にもよるが、ビニルアルコール系共重合体の粘度平均重合度Pηは、一般に250〜5000が好ましい。
粘度平均重合度Pηは、JIS K6726に準じて測定することができる。具体的には、ビニルアルコール系共重合体を再度けん化して、残存するカルボン酸残基を完全にけん化する。再けん化したビニルアルコール系共重合体を精製し、乾燥させた後、乾燥させた試料1gを水100mlに加えて加熱溶解し、30℃まで冷却する。得られた水溶液を粘度計に量り採り、30℃の水中における極限粘度[η](単位:L/g)を測定し、測定した極限粘度[η]から以下の式(1)により算出できる。
本発明で用いられるビニルアルコール系共重合体のサイズ排除クロマトグラフィーから求められる重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnは、2〜5が好ましく、2〜4がより好ましい。Mw/Mnが2未満では工業的生産が難しくなるおそれがある。また、Mw/Mnが5を越える場合は、ビニルアセタール系重合体を製造する際に、アセタール化反応速度が低下する傾向にある。
本発明で用いられるビニルアルコール系共重合体は、その側鎖にエチレン性二重結合を含有する。また、そのビニルアルコール系共重合体は、水溶性であることが好ましい。
本発明においては、ビニルアルコール系共重合体のビニルアルコール単位とビニルエステル単位とその他の単量体単位の合計モル数に対する多官能単量体由来のエチレン性二重結合のモル比(d)が、0.05/100〜2/100である。モル比(d)が0.05/100未満であると、得られるビニルアセタール系重合体の強度等の力学物性が十分でなくなる。一方、モル比(d)が2/100を超えると、ビニルエステル系共重合体の重合度の制御が非常に困難になって、得られるビニルアルコール系共重合体が水に不溶になり、アセタール化が困難になり易い。モル比(d)は0.07/100以上であることが好ましく、0.1/100以上であることがより好ましい。また、モル比(d)は1.5/100以下であることが好ましく、1/100以下であることがより好ましい。
また、本発明においては、ビニルアセタール系重合体中のビニルアルコール単位のモル数をXaとし、ビニルエステル単位のモル数をXbとし、化学式(イ):
(式中、R
1は、水素原子又は炭化水素基であり、該炭化水素基の水素原子は、他の原子又は官能基で置換されていてもよい。また、炭素原子に結合した水素原子も、他の原子又は官能基で置換されていてもよい。)で表される構造単位のモル数をXcとし、その他の単量体単位のモル数をXdとした場合に、Xa+Xb+2Xc+Xdの合計モル数に対する、側鎖のエチレン性二重結合のモル比(d’)が0.05/100〜2/100である。モル比(d’)が0.05/100未満であると、得られるビニルアセタール系重合体の強度等の力学物性が十分でなくなる。一方、モル比(d’)が2/100を超えると、ビニルエステル系共重合体の重合度の制御が非常に困難になって、得られるビニルアルコール系共重合体が水に不溶になり、アセタール化が困難になり易い。モル比(d’)は0.07/100以上であることが好ましく、0.1/100以上であることがより好ましい。また、モル比(d’)は1.5/100以下であることが好ましく、1/100以下であることがより好ましい。
なお、側鎖の二重結合の数と多官能単量体単位由来のエチレン性二重結合の数は実質的に一致する。また、ビニルアルコール系共重合体におけるエチレン性二重結合の数とビニルアセタール系重合体におけるエチレン性二重結合の数は、アルデヒド中にエチレン性二重結合がなければ、アセタール化の前後で原則として変化しないため、モル比(d)とモル比(d’)が表す意味は実質的に同義であると考えてよい。
本発明で用いられるビニルアルコール系共重合体は、その側鎖にビニルエーテル基を含有することが好ましい。また、ビニルアルコール系共重合体が、アリル基またはアリルエーテル基を含有することも好ましい。これらの構造は、ビニルエステル系単量体に含まれるビニルエステル基よりも適度に反応性が低いので、架橋反応を抑制しながら二重結合の一方だけが反応する単量体の割合を多くすることができる。これによって、二重結合の含有量が制御された水溶性のビニルアルコール系共重合体を得ることができる。また、このようなビニルアルコール系共重合体は、多数の分岐構造を重合体において形成させるのに必要な量の二重結合を有していながらも水溶性を有するので、ビニルアセタール系重合体を工業的な規模で経済的に安定に製造する点で好ましい。
ビニルアルコール系重合体のエチレン性二重結合の導入量(モル比(d))は、ビニルアルコール系共重合体の重水又は重ジメチルスルホキシド溶媒中での1H−NMRスペクトル、または、けん化前のビニルエステル系共重合体の重クロロホルム溶媒中での1H−NMRスペクトルから測定する。エチレン性二重結合の導入量は、多官能単量体のビニルエステル系単量体に対する混合比や重合率で制御することができる。また、モル比(d)と(d’)は基本的に一致するが、ビニルアセタール系重合体のエチレン性二重結合の導入量(モル比(d’))は、ビニルアセタール系重合体の重ジメチルスルホキシド溶媒中での1H−NMRのスペクトルによっても測定することができる。
ビニルアルコール系共重合体における架橋反応を抑制しつつ、ビニルアルコール系共重合体において多数の分岐構造を形成させるのに必要な量の二重結合を導入し、かつビニルアルコール系共重合体の生産効率も維持する観点から、ビニルアルコール系共重合体のビニルアルコール単位とビニルエステル単位とその他の単量体単位の合計モル数に対するエチレン性二重結合のモル比(d)とビニルエステル系単量体に対する多官能単量体のモル比(p)の比(d/p)が0.2以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。比(d/p)が0.2未満であると、ビニルエステル系単量体と多官能単量体とが架橋した生成物の割合が多くなり、ビニルアルコール系共重合体の水溶性が阻害されるおそれがある。ビニルエステル系単量体に対する多官能単量体の配合割合や重合条件によって比(d/p)を高くすることができるが、生産効率を考慮すれば、比(d/p)は0.8以下であることが好ましい。
ビニルアルコール単位としては、例えば、化学式(ロ):
で表される構造単位が挙げられる。なお、炭素原子に結合した水素原子は、ハロゲンなどの他の原子、炭化水素基又は任意の官能基で置換されていてもよい。
ビニルエステル単位としては、例えば、化学式(ハ):
で表される構造単位が挙げられる。なお、上記式において、R
2は水素原子または炭素原子を有する、炭素数1〜20の炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、炭素原子に結合した水素原子は、ハロゲンなどの他の原子、炭化水素基又は任意の官能基で置換されていてもよい。
多官能単量体由来の、側鎖にエチレン性二重結合を有する単量体単位としては、例えば、化学式(ニ):
で表される構造単位が挙げられる。なお、上記の式においてR
3〜R
5は、水素原子であってもよく、該水素原子は、ハロゲンなどの他の原子、炭化水素基又は任意の官能基で置換されていてもよく(前記(ロ)(ハ)の構造は除く)、該炭化水素基の水素原子は、他の原子又は官能基で置換されていてもよい。R
6はエチレン性二重結合を有する置換基である。R
6は、炭素数3〜50の置換基であることが好ましく、炭素数5〜20の置換基であることがより好ましい。R
6中の任意の炭素原子に結合する水素原子は、他の原子又は官能基で置換されていてもよい。
R6は、具体的にはビニルエステル単量体と重合するものとして上述した多官能単量体を重合して得られる構造中、エチレン性二重結合を含有する置換基が挙げられる。R6は、エチレン性二重結合としてビニルエーテル基またはアリル基を有することが好ましい。この場合、上記化学式(ニ)の構造は、上述した好適な多官能単量体である、ビニルエーテル基を含有する単量体またはアリル基を含有する単量体として挙げた単量体が重合された構造となることが好ましく、アリルエーテル基を含有する単量体が重合された構造となることがより好ましい。
なお、その他の単量体単位とは、これらのビニルアルコール単位、ビニルエステル単位、多官能単量体単位以外の単量体単位をいう。
本明細書において、ビニルアルコール系共重合体が水溶性であるとは、温度90℃の4質量%のビニルアルコール系共重合体の水溶液を調製した場合に、ビニルアルコール系共重合体が水に完全に溶解する場合をいう。
本発明に用いられるビニルアセタール系重合体は、上述のようにして得られたビニルアルコール系共重合体を従来公知の方法に従ってアセタール化することにより得られる。この際のアセタール化度は45〜85モル%である。アセタール化度をこの範囲とすることで、ビニルアセタール系重合体は、柔軟で耐水性に優れた皮膜を形成でき、アルコール系溶媒等の広範囲の極性を有する溶媒への溶解性等を向上させることができる。ビニルアセタール系重合体のアセタール化度は、55モル%以上であることがより好ましく、60モル%以上であることがさらに好ましい。また、ビニルアセタール系重合体のアセタール化度は、使用する溶剤に対する溶解性に応じて適宜選択することができる。ビニルアセタール系重合体のアセタール化度を調整するには、使用するビニルアルコール系共重合体に対するアルデヒドの添加量、アルデヒドと酸触媒を添加した後の反応時間等を適宜調整すればよい。
PVAのアセタール化は、例えば次のような反応条件で行うことができるが、これに限定されない。80〜100℃に加熱してPVAを水に溶解させた後、10〜60分かけて徐々に冷却することにより、PVAの3〜40質量%水溶液を得る。温度が−10〜30℃まで低下したところで、前記水溶液にアルデヒドおよび酸触媒を添加し、温度を一定に保ちながら、30〜300分間アセタール化反応を行う。その際、一定のアセタール化度に達したポリビニルアセタールが析出する。その後反応液を30〜300分かけて25〜80℃まで昇温し、その温度を10分〜24時間保持する(この温度を追い込み時反応温度とする)。次に反応溶液に、必要に応じてアルカリなどの中和剤を添加して酸触媒を中和し、水洗、乾燥することにより、ビニルアセタール系重合体が得られる。
一般的に、このような反応や処理の工程においてビニルアセタール系重合体からなる凝集粒子が生じ、粗粒子を形成しやすい。このような粗粒子が生じた場合には、バッチ間にばらつきが生じるおそれがある。それに対して、上述した所定の方法を用いて製造したPVAを原料とした場合、従来品より粗粒子の生成が抑制される。
アセタール化反応に用いる酸触媒としては特に限定されず、有機酸および無機酸のいずれでも使用可能である。例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。これらの中でも塩酸、硫酸、硝酸が好ましく用いられる。また、これらを2種以上併用してもよい。一般には、硝酸を用いた場合は、アセタール化反応の反応速度が速くなり、生産性の向上が望める一方、得られるポリビニルアセタールの粒子が粗大になりやすく、バッチ間のばらつきが大きくなる傾向がある。それに対して、上述した所定の方法を用いて製造したPVAを原料とした場合、粗粒子の生成が抑制される。
アセタール化の反応に要する時間は、通常1時間〜10時間程度であり、反応は攪拌下に行うことが好ましい。また、上述した温度条件でアセタールを行った場合に、ビニルアセタール系重合体のアセタール化度が上昇しない場合には、50℃〜80℃程度の高い温度で反応を継続してもよい。
アセタール化後に得られる粒状の反応生成物を濾別してこれを水で十分に洗浄し、アルカリ等の中和剤を添加し、洗浄、乾燥することにより、目的とするビニルアセタール系重合体が得られる。中和剤として用いられるアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
本発明において、アセタール化反応に用いるアルデヒドは特に限定されないが、公知の炭素数1〜8のアルデヒドが好ましく、これらのうち、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド及びベンズアルデヒドが好ましく、ブチルアルデヒドが特に好ましい。このようなアルデヒドを用いることで、ビニルアルコール系共重合体のアセタール化をより効率よく行うことができる。本発明においては、アルデヒドを2種類以上併用して得られるビニルアセタール系重合体を使用することもできる。
本発明の特性を損なわない範囲で、以下のアルデヒドをアセタール化に用いてもよい。例えば、ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、ピバルアルデヒド、オクチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、ドデシルアルデヒド等の脂肪族アルデヒドおよびそのアルキルアセタール;シクロペンタンアルデヒド、メチルシクロペンタンアルデヒド、ジメチルシクロペンタンアルデヒド、シクロヘキサンアルデヒド、メチルシクロヘキサンアルデヒド、ジメチルシクロヘキサンアルデヒド、シクロヘキサンアセトアルデヒド等の脂環族アルデヒドおよびそのアルキルアセタール;シクロペンテンアルデヒド、シクロヘキセンアルデヒド等の環式不飽和アルデヒドおよびそのアルキルアセタール;ベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、ジメチルベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、クミンアルデヒド、ナフチルアルデヒド、アントラアルデヒド、シンナムアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレインアルデヒド、7−オクテン−1−アール等の芳香族あるいは不飽和結合含有アルデヒドおよびそのアルキルアセタール;フルフラールアルデヒド、メチルフルフラールアルデヒド等の複素環アルデヒドおよびそのアルキルアセタール;等が挙げられる。
また、ビニルアルコール系共重合体のアセタール化に用いることが可能な官能基として、水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基又はリン酸基等が挙げられる。これらの官能基を有するアルデヒドとして、ヒドロキシアセトアルデヒド、ヒドロキシプロピオンアルデヒド、ヒドロキシブチルアルデヒド、ヒドロキシペンチルアルデヒド、サリチルアルデヒド、ジヒドロキシベンズアルデヒド等の水酸基含有アルデヒドおよびそのアルキルアセタール;グリオキシル酸およびその金属塩あるいはアンモニウム塩、2−ホルミル酢酸およびその金属塩あるいはアンモニウム塩、3−ホルミルプロピオン酸およびその金属塩あるいはアンモニウム塩、5−ホルミルペンタン酸およびその金属塩あるいはアンモニウム塩、4−ホルミルフェノキシ酢酸およびその金属塩あるいはアンモニウム塩、2−カルボキシベンズアルデヒドおよびその金属塩あるいはアンモニウム塩、4−カルボキシベンズアルデヒドおよびその金属塩あるいはアンモニウム塩、2,4−ジカルボキシベンズアルデヒドおよびその金属塩あるいはアンモニウム塩;ベンズアルデヒド2−スルホン酸およびその金属塩あるいはアンモニウム塩、ベンズアルデヒド−2,4−ジスルホン酸およびその金属塩あるいはアンモニウム塩、4−ホルミルフェノキシスルホン酸およびその金属塩あるいはアンモニウム塩、3−ホルミル−1−プロパンスルホン酸およびその金属塩あるいはアンモニウム塩、7−ホルミル−1−ヘプタンスルホン酸およびその金属塩あるいはアンモニウム塩;4−ホルミルフェノキシホスホン酸およびその金属塩あるいはアンモニウム塩;等の酸含有アルデヒドおよびそのアルキルアセタール;等が挙げられる。
さらに、ビニルアルコール系共重合体のアセタール化に用いることが可能な官能基として、アミノ基、シアノ基、ニトロ基又は4級アンモニウム塩等が挙げられる。これらの官能基を有するアルデヒドとして、アミノアセトアルデヒド、アミノプロピオンアルデヒド、アミノブチルアルデヒド、アミノペンチルアルデヒド、アミノベンズアルデヒド、シアノアセトアルデヒド、α−シアノプロピオンアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、トリメチル−p−ホルミルフェニルアンモニウムイオダイン、トリエチル−p−ホルミルフェニルアンモニウムイオダイン、トリメチル−2−ホルミルエチルアンモニウムイオダインおよびそのアルキルアセタール等が挙げられる。
加えて、ビニルアルコール系共重合体のアセタール化に用いることが可能な官能基としては、ハロゲンを有するものが挙げられる。ハロゲンを官能基として有するアルデヒドとして、クロロアセトアルデヒド、ブロモアセトアルデヒド、フルオロアセトアルデヒド、クロロプロピオンアルデヒド、ブロモプロピオンアルデヒド、フルオロプロピオンアルデヒド、クロロブチルアルデヒド、ブロモブチルアルデヒド、フルオロブチルアルデヒド、クロロペンチルアルデヒド、ブロモペンチルアルデヒド、フルオロペンチルアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ジクロロベンズアルデヒド、トリクロロベンズアルデヒド、ブロモベンズアルデヒド、ジブロモベンズアルデヒド、トリブロモベンズアルデヒド、フルオロベンズアルデヒド、ジフルオロベンズアルデヒド、トリフルオロベンズアルデヒド、トリクロロメチルベンズアルデヒド、トリブロモメチルベンズアルデヒド、トリフルオロメチルベンズアルデヒドおよびそのアルキルアセタール等が挙げられる。
本発明で用いられるビニルアセタール系重合体は、重合体分子内に多数の分岐構造を有する。上記のような分岐を有するビニルアセタール系重合体を有機バインダ―として用いることで、樹脂組成物中の無機粒子が凝集したり沈殿したりしづらくなるため、樹脂組成物の保存安定性を向上させることができる。また、上記のような分岐を有するビニルアセタール系重合体が有機バインダ―として樹脂組成物中に存在することで、剪断力を印加された樹脂組成物の粘度が低下するようになるため、樹脂組成物におけるチキソトロピー性が向上する。良好なチキソトロピー性が得られることで、例えば、樹脂組成物を導電ペーストとして用いた場合には、印刷特性の高い導電ペーストを得ることができるようになる。加えて、樹脂組成物をフィルムやセラミックグリーンシートに成形した場合、それらと基材との接着性を向上させることができる。
本発明における樹脂組成物中の無機粒子としては、セラミック粉末、導電粉末ガラスフィラー等用途に応じて種々のものを使用できる。これら無機粒子の材質は特に限定されず、例えば、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタン酸バリウム、窒化アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素;ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、CaO・Al2O3・SiO2系無機ガラス、MgO・Al2O3・SiO2系無機ガラス、LiO2・Al2O3・SiO2系無機ガラス等のガラス粉末(低融点ガラス);種々のカーボンブラック、カーボンナノチューブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、金属錯体、Y2O2S:Eu、(SrCaBaMg)5(PO4)3Cl:Eu、LaPO4:Ce,Tb、Y2O3:Eu、Ca10(PO4)6FCl:Sb,Mn、BaMgAl10O17:Eu、Zn2SiO4:Mn、(Y,Gd)BO3:Eu、CaWO4、Gd2O2S:Tb、(Y,Sr)TaO4:Nb等の蛍光体等を用いることができる。無機粒子がセラミック粉末である樹脂組成物は、セラミックスラリーとして好適であり、無機粒子が導電粉末である樹脂組成物は、導電ペーストとして好適である。
本発明の樹脂組成物は、本発明の主旨に反しない限り、本発明で使用されるビニルアセタール系重合体以外の樹脂を含んでいてもよく、可塑剤等の従来公知の添加剤を含んでいても良い。
本発明の樹脂組成物における有機バインダーの含有量は、樹脂組成物の用途によって異なるためこれを一概に規定することはできないが、無機粒子100質量部に対して1〜500質量部であることが好ましく、3〜300質量部であることがより好ましく、5〜200質量部であることがより好ましい。なお、本発明で有機バインダーとして使用されるビニルアセタール系重合体以外の樹脂を、樹脂組成物が含む場合、前記ビニルアセタール系重合体とそれ以外の樹脂との合計量は、無機粒子100質量部に対して上記範囲内であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、有機溶剤を含んでいてもよい。特に本発明の樹脂組成物をセラミックスラリーあるいは導電ペーストとして用いる場合、有機溶剤を含有することが好ましい。樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合、その含有量は、樹脂組成物の用途によって異なるためこれを一概に規定することはできないが、無機粒子100質量部に対して1〜500質量部であることが好ましく、5〜300質量部であることがより好ましく、5〜200質量部であることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物に含有される可塑剤としては、後述するセラミックスラリーの製造に用いられる可塑剤を用いることができる。
本発明の樹脂組成物に含有される有機バインダーおよび無機粒子ならびに必要に応じて含有される有機溶剤および可塑剤以外の成分の含有量は、有機バインダーであるビニルアセタール系共重合体100質量部に対して、100質量部未満であることが好ましく、50質量部未満であることがより好ましく、20質量部未満であることがさらに好ましく、当該成分を実質的に含まないことがさらに好ましい。上で述べたビニルアセタール系重合体以外の樹脂としては、例えば、アクリル系、セルロース系の樹脂が挙げられる。また、上で述べたような、エチレン性二重結合を所定の範囲で含むようなものではないポリビニルアセタールを樹脂組成物中に含んでも良い。
本発明における樹脂組成物を用いて、フィルムを成形することができる。フィルムの厚さは、使用目的によっても異なるが、好適な強度を得るという観点からは、厚さ30〜2000μmのものが好ましく50〜1000μmのものがより好ましい。成形したフィルムは、多様な用途に使用できる。また、フィルムの製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、溶融成形やキャスト製膜などの方法が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、無機粒子としてセラミック粉末を含有する場合、セラミックスラリーとして好適である。当該セラミックスラリーは、本発明で使用されるエチレン性二重結合を所定の範囲で含むビニルアセタール系重合体を有機バインダーとして含有することにより、セラミック粉末の分散性に優れており、なおかつ保存安定性にも優れる。このようなセラミックスラリーを成形して得られるセラミックグリーンシートは表面の平滑性およびシート強度に優れる。さらに、本発明のセラミックスラリーは焼成後の炭素残渣の量が少ない。したがって、本発明の樹脂組成物をセラミックスラリーとして用いれば、炭素残渣の量が少なく、高性能なセラミック成形品が得られる。
本発明の樹脂組成物をセラミックスラリーとして用いる場合、有機バインダーの使用量は、セラミックグリーンシートの使用目的によって異なるためこれを一概に規定することはできないが、セラミック粉末100質量部に対して通常3〜20質量部であることが好ましく、5〜15質量部であることがより好ましい。セラミック成形用バインダーの使用量が、セラミック粉末100質量部に対して3質量部よりも少なくなると、無機粒子の分散性が低下し、さらに、目的とするシート強度が得られなくなる。有機バインダーの使用量がセラミック粉末100質量部に対して20質量部よりも多くなると、セラミックグリーンシートの密度が低下し、また焼成後の焼成体の収縮率が高くなり、得られるコンデンサの性能が低下する傾向にある。なお、樹脂組成物中に本発明で有機バインダーとして使用されるビニルアセタール系重合体以外の樹脂を含む場合、前記ビニルアセタール系重合体とそれ以外の樹脂との合計量が、セラミック粉末100質量部に対して上記範囲内であることが好ましい。
セラミック粉末としては、セラミックの製造に使用される金属または非金属の酸化物もしくは非酸化物の粉末が挙げられる。その具体例として、Li、K、Mg、B、Al、Si、Cu、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Ga、In、Y、ランタノイド、アクチノイド、Ti、Zr、Hf、Bi、V、Nb、Ta、W、Mn、Fe、Co、Ni等の酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、硫化物等が挙げられる。また、通常複酸化物と称される複数の金属元素を含む酸化物粉末の具体例を結晶構造から分類すると、ペロブスカイト型構造をとるものとしてNaNbO3、SrZrO3、PbZrO3、SrTiO3、BaZrO3、PbTiO3、BaTiO3等が挙げられ、スピネル型構造をとるものとしてMgAl2O4、ZnAl2O4、CoAl2O4、NiAl2O4、MgFe2O4等が挙げられ、イルメナイト型構造をとるものとしてMgTiO3、MnTiO3、FeTiO3等が挙げられ、ガーネット型構造をとるものとしてGdGa5O12、Y6Fe5O12等が挙げられる。これらのセラミック粉末は、単独で用いても、あるいは2種類以上の混合物として用いてもよい。
本発明の樹脂組成物は、セラミックスラリーとして用いられる場合、有機溶剤を含有することが好ましい。セラミックスラリーに含有される有機溶剤は特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール等のアルコール;メチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のセルソルブ;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系炭化水素などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
セラミックスラリーにおける有機溶剤の含有量は特に限定されないが、セラミック粉末100質量部に対して2〜200質量部であることが好ましい。有機溶剤の含有量が2質量部未満の場合、セラミックスラリーの粘度が高くなりすぎて混練性が低下する傾向にある。当該含有量は5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましい。一方、セラミック粉末の含有量が200質量部を超える場合、粘度が低くなりすぎてセラミックグリーンシートを形成する際のハンドリング性が悪くなる傾向にある。当該含有量は、170質量部以下であることがより好ましく、150質量部以下であることがさらに好ましい。
セラミックスラリーは可塑剤を含有することが好ましい。可塑剤は、本発明の効果を損なわず、なおかつポリビニルアセタールとの相溶性に問題がなければ、その種類に特に制限はない。可塑剤として、両末端に水酸基を有するオリゴアルキレングリコールとカルボン酸とのモノまたはジエステル、ジカルボン酸とアルコールとのジエステルなどを用いることができる。これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。具体的には、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート等のトリまたはテトラエチレングリコールなどの両末端に水酸基を有するオリゴアルキレングリコールとカルボン酸とのモノまたはジエステル;ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジブチルアジペート等のジカルボン酸とアルコールとのジエステルが挙げられる。
可塑剤を添加する場合、セラミックスラリー中において、有機バインダーであるビニルアセタール系重合体に対する可塑剤の質量比(可塑剤/有機バインダー)が0.01〜2であることが好ましく、0.05〜1.5であることがより好ましい。なお、上記の含有量は、予め本発明のバインダー中に含有されていた可塑剤も含めた含有量を意味する。ビニルアセタール系重合体に対する可塑剤の質量比が0.01よりも小さくなると、十分な可塑化効果が得られない傾向にあり、可塑剤の質量比が2よりも大きくなると、ビニルアセタール系重合体との相溶性が悪くなり、セラミックグリーンシートの強度が低下する傾向にある。
セラミックスラリーは、有機溶剤、セラミック粉末、およびビニルアセタール系重合体のほかに、必要に応じて、解膠剤、密着促進剤、分散剤、粘着付与剤、保存安定剤、消泡剤、熱分解促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、滑剤などの他の添加剤を含有してもよい。また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、前記ビニルアセタール系重合体以外の樹脂を含有していてもかまわない。このような他の添加剤及び他の樹脂の合計量は、セラミックスラリー中、50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
セラミックスラリーを作製する方法は特に限定されない。例えば、以下の方法により製造できる。有機溶剤に本発明のセラミック成形用バインダーを溶解させ、当該溶液に必要に応じて可塑剤等の添加剤を添加した後、攪拌して均一なビヒクルを製造する。当該ビヒクルにセラミック粉末を添加した後、均一に分散させてセラミックスラリーを得る。分散させる方法としては、ビーズミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、サンドミルなどの媒体型分散機を用いる方法、固練り法、三本ロールを用いる方法など、種々の方法を用いることができる。なお、その際に分散剤として、カルボン酸基、マレイン酸基、スルホン酸基、リン酸基等を分子内に有するアニオン系分散剤を用いてもよく、とくに金属イオンを含有しないアニオン系分散剤が好適に用いられる。
セラミックグリーンシートの製造方法は特に限定されない。製造方法としては、片面離型処理を施した支持フィルム上にセラミックスラリーを塗工した後、有機溶剤を乾燥させてシート状に成形する方法を挙げることができる。セラミックスラリーの塗工には、ロールコーター、ブレードコーター、ダイコーター、スクイズコーター、カーテンコーター等を用いることができる。
セラミックグリーンシートを製造する際に用いる支持フィルムとして、耐熱性及び耐溶剤性を有し、なおかつ可撓性を有する樹脂からなるものが好ましい。上記支持フィルムが可撓性を有する樹脂からなることにより、当該支持フィルム上に前記セラミックスラリーを塗工することができる。そして、得られるセラミックグリーンシート形成フィルムをロール状に巻回した状態で保存し、必要に応じて供給することができる。
上記支持フィルムを構成する樹脂は特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフロロエチレン等の含フッ素樹脂、ナイロン、セルロース等が挙げられる。上記支持フィルムの厚さは特に限定されず、20〜100μmの厚さであることが好ましい。また、上記支持フィルムの表面には離型処理が施されていることが好ましい。上記支持フィルムの表面に離型処理が施されていることにより、転写工程において、上記支持フィルムの剥離操作を容易に行うことができる。支持フィルムの好ましい具体例としては、シリコーンコートPETフィルムが挙げられる。
セラミックグリーンシートの厚さは、その使用目的によって異なるため、一概に規定することができないが、通常0.1〜300μmの範囲である。セラミックグリーンシートの厚さは、0.3〜100μmであることが好ましく、0.5〜30μmであることがより好ましい。また、キャリアーフィルム上に形成された塗膜を乾燥する際の乾燥温度は、セラミックグリーンシートの厚さなどによって異なるためこれを一概に規定することはできないが、概ね25〜200℃の範囲である。
本発明の樹脂組成物をセラミックスラリーとして用いて得られるセラミックグリーンシートは、各種電子部品の材料として好適に使用される。とりわけチップタイプの積層型コンデンサ、およびICチップの回路基板などの材料として好適に使用される。これらは、セラミックグリーンシート上に電極を形成し、積み重ねて圧着した後、焼成することにより製造される。
本発明の樹脂組成物は、無機粒子として導電粉末を含有する場合、導電ペーストとして好適である。上記導電粉末としては、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、銅等の導電性の高い金属の粉末の他、これら金属の合金の粉末が使用される。これらは単独、または2種類以上を組み合わせて用いてもかまわない。有機溶剤としては、ビニルアセタール系重合体を溶解し得るものであれば特に限定されず、例えば、ジヒドロターピニルアセテート;α−テルピネオール;ブチルカルビトール等のカルビトール;ブチルセロソルブ等のセロソルブ等が挙げられる。導電ペーストに含有される有機溶剤は、沸点が150℃以上であるものが好ましい。沸点が150℃未満の場合、例えば、導電ペーストを用いてスクリーン印刷を行う場合、印刷中に有機溶剤が揮発することにより、導電ペーストの粘度が高まり、印刷不良の原因となる。
本発明の樹脂組成物を導電ペーストとして使用する場合におけるビニルアセタール系重合体の含有量は特に限定されないが、導電粉末100質量部に対して1〜50質量部であることが好ましい。導電ペーストにおける前記ポリビニルアセタールの含有量がこのような範囲であると、低温で焼結した場合であっても脱脂され易い。ポリビニルアセタールの含有量が1質量部未満の場合、導電ペーストを印刷したときの成膜性が不十分となるおそれがある。ポリビニルアセタールの含有量は3質量部以上であることがより好ましい。一方、ポリビニルアセタールの含有量が50質量部を超える場合、得られる焼結体中の炭素残渣の量が多くなるおそれがある。ポリビニルアセタールの含有量は、25質量部以下であることがより好ましい。
上記導電ペーストは有機溶剤を含有することが好ましく、その含有量は特に限定されないが、導電粉末100質量部に対して5〜600質量部であることが好ましく、30〜400質量部であることがより好ましく、50〜200質量部であることがさらに好ましい。導電ペーストにおける有機溶剤の含有量が上記範囲を外れると、導電ペーストの塗工性が低下したり、導電粉末を分散させることが困難となったりすることがある。
上記導電ペーストは、有機溶剤、導電粉末、およびビニルアセタール系重合体のほかに、必要に応じて、解膠剤、可塑剤、密着促進剤、分散剤、粘着付与剤、保存安定剤、消泡剤、熱分解促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、滑剤などの他の添加剤を含有してもよい。また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ポリビニルアセタール以外の樹脂を含有していてもかまわない。このような他の添加剤及び他の樹脂の合計量は、50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
導電ペーストに用いる可塑剤は、本発明の効果を損なわず、なおかつビニルアセタール系重合体との相溶性に問題がなければ、その種類は特に制限されない。導電ペーストに用いる可塑剤としては、両末端に水酸基を有するオリゴアルキレングリコールとカルボン酸とのモノまたはジエステル、ジカルボン酸とアルコールとのジエステルなどを用いることができる。これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。具体的には、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート等のトリまたはテトラエチレングリコールなどの両末端に水酸基を有するオリゴアルキレングリコールとカルボン酸とのモノまたはジエステル;ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジブチルアジペート等のジカルボン酸とアルコールとのジエステルが挙げられる。
密着促進剤の種類は特に限定されないが、アミノシラン系シランカップリング剤を用いることが好ましい。上記アミノシラン系シランカップリング剤は特に限定されず、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。上記密着促進剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジルシラン系シランカップリング剤、ジメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のその他のシランカップリング剤を用いることもできる。これらの密着促進剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
導電ペーストを作製する方法は特に限定されない。例えば、以下の方法により製造できる。製造方法としては、導電ペースト用バインダー、導電粉末及び有機溶剤をブレンダーミル、ボールミル、3本ロール等の各種混合機を用いて混合する方法を挙げることができる。
本発明の樹脂組成物を導電ペーストとして用いた場合、上記有機バインダーとして用いるビニルアセタール系重合体は、導電粉末の分散性を良好にし、当該バインダーを用いて得られた導電ペーストは保存安定性が良好となる。さらに、セラミックグリーンシート表面に印刷する際の印刷適正にも優れ、乾燥時に粒子の凝集も抑制される為、印刷後の表面が平滑になる。当該導電ペーストを用いることにより、炭素残渣の量が少ない焼結体が得られる。
本発明の樹脂組成物を含有する層を少なくとも一層有する積層体も好適な実施態様である。
本発明の積層体の製造方法としては、樹脂組成物を含む層を積層できる方法であれば特に限定されず、本発明の樹脂組成物をポリエステルフィルム等のプラスチックフィルムの基材、あるいは無機物であるガラス等の基材に塗布、印刷する方法などが挙げられる。
より具体的には、本発明のセラミックグリーンシートの層又は本発明の導電ペーストの層を有する積層体が挙げられる。このような積層体は積層セラミックコンデンサとして好適であり、例えば、セラミックグリーンシートに導電ペーストを塗布したものを積層することにより、作製することができる。この場合、セラミックグリーンシート及び導電ペーストのうちの少なくとも一方が本発明のセラミックグリーンシート又は本発明の導電ペーストであればよく、本発明のセラミックグリーンシートに本発明の導電ペーストでない導電ペーストを塗布したものを積層してもよいし、本発明のセラミックグリーンシートでないセラミックグリーンシートに本発明の導電ペーストを塗布したものを積層してもよい。また、本発明のセラミックグリーンシートに本発明の導電ペーストを塗布したものを積層してもよい。このように、本発明のセラミックグリーンシート及び本発明の導電ペーストの少なくとも一方を用いて得られる積層セラミックコンデンサもまた、本発明に包含される。
積層セラミックコンデンサの製造方法としては特に限定されず、従来公知の製造方法を採用することができる。例えば、セラミックグリーンシート(本発明のセラミックグリーンシートなど)の表面に内部電極となる導電ペーストをスクリーン印刷等により塗布したものを交互に複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体とし、この積層体中に含まれるバインダー成分等を熱分解して除去した後(脱脂処理)、焼成して得られるセラミック焼成物の端面に外部電極を焼結する方法等が挙げられる。
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。以下の実施例及び比較例において、特に断りがない場合、部及び%はそれぞれ質量部及び質量%を示す。
(ビニルアルコール系共重合体におけるエチレン性二重結合の導入量の測定)
各実施例及び比較例で得られたビニルアルコール系共重合体0.3mgを重ジメチルスルホキシド3mlに溶解して、核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製、LAMBDA500)を用いて1H−NMRの測定を行った。得られたスペクトルから、ビニルアルコール単位のモル数とビニルエステル単位のモル数との合計でエチレン性二重結合のモル数を除して、ビニルアルコール系共重合体におけるエチレン性二重結合の導入量(モル比(d))を算出した。
(粘度平均重合度の測定)
各実施例及び比較例で得られたビニルアルコール系共重合体の粘度平均重合度PηをJIS K6726に準じて測定した。具体的には、ビニルアルコール系共重合体を再度けん化することで、残存する酢酸基を完全にけん化した。再度けん化したビニルアルコール系共重合体を精製し、乾燥させた後、乾燥させた試料1gを水100mlに加えて加熱溶解し、30℃まで冷却した。得られた水溶液を粘度計に量り採り、30℃の水中における極限粘度[η](単位:L/g)を測定した。粘度平均重合度Pηは、測定した極限粘度[η]から、以下の式(2)により算出した。
(ビニルアセタール系重合体におけるビニルエステル単位の含有量、ビニルアルコール単位の含有量、アセタール化度、エチレン性二重結合の導入量の測定)
各実施例及び比較例で得られたビニルアセタール系重合体0.3mgを重ジメチルスルホキシド3mlに溶解して、核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製、LAMBDA500)を用いて1H−NMRの測定を行った。得られたスペクトルから、ビニルアルコール単位と酢酸ビニル単位およびアセタール化度、エチレン性二重結合の導入量(モル比(d))を算出した。
(実施例1)
[ビニルエステル系共重合体の合成]
撹拌機、窒素導入口、添加剤導入口および開始剤添加口を備えた容量6Lの反応槽にビニルエステル系単量体として酢酸ビニル3300g、多官能単量体としてトリメチロールプロパンジアリルエーテル41.0g、メタノール2700gを仕込み、60℃に昇温した後、30分間窒素バブリングを行うことにより系中を窒素置換した。反応槽内の温度を60℃に調整し、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)2.5gを加えて、酢酸ビニルとトリメチロールプロパンジアリルエーテルの重合を開始した。重合中は重合温度を60℃に維持した。重合開始から3時間後に、反応槽内の温度を20℃に冷却して重合を停止した。酢酸ビニルの重合率は40%に達していた。なお、重合率は、反応溶液の固形分立より算出した。次いで減圧して未反応の酢酸ビニルを除去し、ビニルエステル系共重合体であるポリ酢酸ビニル−1(以下、PVAc−1と略記することがある)のメタノール溶液を得た。
得られたPVAc−1について、良溶媒としてアセトン、貧溶媒としてヘキサンを用いた再沈殿精製を5回行い、真空乾燥により乾燥させた。その後、得られたビニルエステル系共重合体(PVAc−1)30mgを重クロロホルム2gへ溶解して1H−NMRの測定を行った。ビニルエステル系共重合体(PVAc−1)における酢酸ビニル単位に対するエチレン性二重結合の導入量は0.30モル%と算出された。
[ビニルアルコール系共重合体の合成]
得られたPVAc−1のメタノール溶液にメタノールを添加することで、PVAc−1の濃度を20質量%に調製した。アルカリモル比(NaOHのモル数/PVAc中のビニルエステル単位のモル数)が0.02となるようにNaOHメタノール溶液(10%濃度)を添加してPVAc−1をけん化することで、側鎖にエチレン性二重結合を有するビニルアルコール系共重合体PVA−1を得た。得られたPVA−1はメタノールで洗浄した。
以上の操作により粘度平均重合度2400、けん化度98.0モル%のビニルアルコール系共重合体を得た。得られたビニルアルコール系共重合体を90℃の水に溶解させて4質量%の水溶液を調製したところ、完全に溶解した。重合条件を表1に示す。
また、得られたビニルアルコール系共重合体(PVA−1)を重ジメチルスルホキシド2gへ溶解して1H−NMRの測定を行った。得られたビニルアルコール系共重合体(PVA−1)のビニルアルコール単位と酢酸ビニル単位の合計に対するエチレン性二重結合の導入量は0.30モル%と算出された。
使用する多官能単量体の種類及び仕込み量、酢酸ビニルとメタノールの仕込み量を表1に示すようにした以外は上記と同様の方法で、PVAc−2〜PVAc−15およびPVAc−C1〜PVAc−C6を得た。得られたポリ酢酸ビニル(PVAc)を表2に示した条件に変更した以外は上記と同様の方法でけん化して、PVA−2〜PVA−15およびPVA−C1〜PVA−C6を得た。得られたビニルエステル系共重合体(PVAc)およびビニルアルコール系共重合体(PVA)の評価結果を表1および表2に示す。
[ビニルアセタール系重合体の合成]
260gのPVA−1を、3720mLの水中に投入し、撹拌しながら溶液の温度を90℃まで昇温して溶解させた後、30℃まで冷却した。この水溶液に20%濃度の塩酸水溶液130gを添加した。その後、水溶液を15℃まで冷却し、ブチルアルデヒド146gを10分間かけて滴下してアセタール化反応を開始させた。15℃で60分間反応を行った後、約0.5℃/分の昇温速度で70℃まで昇温し、70℃で200分間維持した。その後、反応溶液を室温まで冷却し、析出した粒状物を濾別してこれを水で十分に洗浄した。得られた生成物を0.3%水酸化ナトリウム溶液5000gに投入し、65℃に加温して中和した。この生成物を引き続き、水で洗浄してアルカリ性化合物を除去した後、生成物を乾燥し、側鎖にエチレン性二重結合を有するビニルアセタール系重合体(PVB−1)を得た。得られたビニルアセタール系重合体PVB−1のアセタール化度を1H−NMRにより測定したところ、表3に示すように、68.5モル%であった。
[セラミックスラリーの製造]
実施例1で得られたポリビニルブチラール(PVB−1)15質量部を、トルエン30質量部とエタノール30質量部との混合溶剤に加えた後、攪拌してポリビニルブチラールを溶解させた。得られた溶液に、可塑剤としてジオクチルフタレート3質量部を加えた後、攪拌して可塑剤を溶解させた。得られた樹脂溶液に、セラミック粉末としてチタン酸バリウム(堺化学工業株式会社製、BT−02、平均粒子径0.2μm)100質量部を加え、ボールミルで24時間混合してセラミックスラリーを得た。
(セラミックスラリーの保存安定性)
得られたセラミックスラリーの保存安定性を、当該セラミックスラリーの製造直後の粘度η0と製造後1ヶ月(30度保管)の粘度η1との比率によって評価した。保存安定性は以下のように4段階で評価した。
評価A:0.95<η1/η0<1.05
評価B:0.85<η1/η0≦0.95 あるいは、1.05≦η1/η0<1.15
評価C:η1/η0≦0.85 あるいは、1.15≦η1/η0
評価D:大きな層分離が見られる
[セラミックグリーンシートの作製]
得られたセラミックスラリーを、離形処理したポリエステルフィルム上に、乾燥膜厚が2〜3μmとなるようにバーコーターを用いて塗工し、常温で1時間風乾した後、熱風乾燥機にて80℃にて2時間、続いて120℃で2時間乾燥させてセラミックグリーンシートを得た。
(セラミック粉末の分散性評価)
セラミックグリーンシートを走査型電子顕微鏡(SEM)により表面観察し、セラミック粉末の分散性を以下のように4段階で評価した。
評価A:セラミック粉末の凝集物が認められないもの
評価B:セラミック粉末の凝集物は認められるが、粒子径3μm以上のセラミック粉末の凝集物が認められないもの
評価C:粒子径3μm以上のセラミック粉末の凝集物が30μm2に10個以下のもの
評価D:粒子径3μm以上のセラミック粉末の凝集物が30μm2に10個より多いもの
(セラミックグリーンシートの光沢度評価)
得られたセラミックグリーンシートの光沢度を測定した。光沢度は、セラミックグリーンシートの表面における光沢度を、日本電色工業株式会社製VGS−1Dを用い、JIS Z−8741(1983)方法3に準拠して測定した。光沢度が高いほど、セラミックグリーンシートの表面が平滑性に優れているといえる。光沢度は以下のように4段階で評価した。セラミックグリーンシートの光沢度が60%未満であると、セラミックグリーンシート表面の平滑性が損なわれ、積層セラミックコンデンサを作製した時に、ショートの原因や、接着性の低下の要因になるからである。
評価A:85%以上
評価B:60%以上85%未満
評価C:50%以上60%未満
評価D:50%未満
(セラミックグリーンシートの機械的強度の評価)
得られたセラミックグリーンシートをポリエステルフィルムから剥離し、セラミックグリーンシートの状態を観察し、機械的強度を以下のように2段階で評価した。
評価A:セラミックグリーンシートに切れや破れが観察されなかったもの
評価B:切れや破れがわずかでも観察されたもの
(セラミックグリーンシートのシートアタック耐性)
得られたセラミックグリーンシートに、ジヒドロターピニルアセテートを0.02g滴下し、60℃で1時間乾燥させた後、セラミックグリーンシートの表面を光学顕微鏡により観察し、シートアタック耐性を以下のように3段階で評価した。
評価A:セラミックグリーンシートの表面に皺及び破れは認められないもの
評価B:セラミックグリーンシートの表面に若干の皺及び破れが認められるもの
評価C:セラミックグリーンシートの表面に皺及び破れが認められるもの
[導電ペーストの作製]
攪拌機、冷却器、温度計、湯浴及び窒素ガス導入口を備えた2Lセパラプルフラスコに、実施例1で得られたポリビニルブチラール(PVB−1)、有機溶剤としてジヒドロターピネオールを加え、80℃の温度で4時間攪拌してポリビニルアセタール樹脂溶液を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂溶液とニッケル粉(JFEミネラル株式会社製、NFP201)とチタン酸バリウム(共材)を混合し、三本ロールに数回通して導電ペーストを得た。なお、導電ペースト中の組成比率は、PVBが3質量%、ジヒドロターピネオールが45質量%及びニッケル粉が43質量%、チタン酸バリウム(共材)が7質量%となるように調整した。
(導電ペーストの保存安定性)
得られた導電ペーストの製造直後の粘度η0と製造後1ヶ月(30℃保管)の粘度η1との比率を求め、導電ペーストの保存安定性を以下のように4段階で評価した。
評価A:0.95<η1/η0<1.05
評価B:0.85<η1/η0≦0.95 あるいは、1.05≦η1/η0<1.15
評価C:η1/η0≦0.85 あるいは、1.15≦η1/η0
評価D:大きな層分離が見られる(目視評価)
(導電ペーストの糸曳き性)
得られた導電ペーストの粘度をジヒドロターピネオールで希釈あるいは有機溶媒を乾燥することによって5Pa・sに調整し、直径3cmの円プレートを粘度調整した導電ペーストの上に接地し、2mm/secの速度で円プレートを引き上げた時に、円プレートに付着した導電ペーストの糸曳きが切れるまでの時間を測定した。糸曳き性が良好な導電ペーストは、良好な印刷特性を示す。糸曳き性は以下のように4段階で評価した。
評価A:糸が切れるまでの時間が5秒未満
評価B:糸が切れるまでの時間が5秒以上10秒未満
評価C:糸が切れるまでの時間が10秒以上30秒未満
評価D:糸が切れるまでの時間が30秒以上
[導電ペースト皮膜の作製]
2.54cm(1インチ)角の耐熱強化ガラス上に、得られた導電ペーストをスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製DP−320)によってスクリーン印刷し、大気中120℃で1時間乾燥させることにより、20mm角、膜厚1〜3μmの乾燥膜(導電ペースト皮膜)を作製した。
(導電ペースト皮膜の光沢度評価)
得られた導電ペースト皮膜の光沢度を測定した。光沢度は、導電ペースト皮膜の表面における光沢度を、日本電色工業株式会社製VGS−1Dを用い、JIS Z−8741(1983)方法3に準拠して測定した。光沢度が高いほど、導電ペースト皮膜の表面の平滑性が優れているといえる。光沢度は以下のように4段階で評価した。導電ペースト皮膜の光沢度が60%未満であると、導電ペースト皮膜の平滑性が損なわれ、積層セラミックコンデンサを作製した時に、ショートの原因や、接着性の低下の要因になるからである。
評価A:85%以上
評価B:60%以上85%未満
評価C:50%以上60%未満
評価D:50%未満
(導電ペーストの炭素残渣)
導電ペーストの炭素残渣の測定は、TA INSTRUMENTS社製Q5000IRを用いて、白金パン中で熱を加え、樹脂部分の残渣比率を測定することによって行った。炭素残渣は以下のように3段階で評価した。
評価A:樹脂部分の残渣≦0.02wt%
評価B:0.02wt%<樹脂部分の残渣≦0.05wt%
評価C:0.05wt%<樹脂部分の残渣
<測定条件>
昇温速度:10℃/分
雰囲気:空気中
測定開始温度:30℃
測定終了温度:1000℃
(セラミックグリーンシートと導電ペーストの接着性評価)
実施例1で得られた導電ペーストを、実施例1で得られたセラミックグリーンシート上に10cm×10cmの正方形にスクリーン印刷した。得られたシートを5cm角に切断し、これを50枚積層して圧力150kg/cm
2、10分間の熱圧着条件で圧着し、セラミックグリーンシート積層体を得た。得られたセラミックグリーンシート積層体を所定のサイズに切断後、窒素-水素の混合雰囲気で、昇温速度2℃/分で450℃まで昇温し、5時間保持後、更に昇温速度5℃/分で1250℃まで昇温し、6時間保持し、セラミック焼結体を得た。得られたセラミック焼結体をランダムに50個抽出し、セラミックグリーンシート積層体の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察してデラミネーションの発生率を評価した。デラミネーションの発生率は以下の式によって算出し、その発生率の評価は、以下のように4段階で行った。
評価A:デラミネーションの発生率が3%未満であった
評価B:デラミネーションの発生率が3〜5%未満であった
評価C:デラミネーションの発生率が5〜8%未満であった
評価D:デラミネーションの発生率が8%以上であった
(実施例2〜4)
PVA−1の代わりにPVA−2〜PVA−4をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にしてポリビニルブチラール(PVB−2〜PVB−4)を合成した。得られたポリビニルブチラールのアセタール化度を表3に示す。そして、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートおよび導電ペーストの評価を行った。その結果を表4および表5に示す。
(実施例5)
PVA−1の代わりにPVA−5を用い、n−ブチルアルデヒドの添加量を177gに変更し、塩酸量を266gにしたこと以外は実施例1と同様にしてポリビニルブチラール(PVB−5)を合成した。得られたポリビニルブチラールのアセタール化度を表3に示す。そして、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートおよび導電ペーストの評価を行った。その結果を表4および表5に示す。
(実施例6)
PVA−1の代わりにPVA−6を用い、n−ブチルアルデヒドの添加量を107gに変更し、塩酸量を86gにしたこと以外は実施例1と同様にしてポリビニルブチラール(PVB−6)を合成した。得られたポリビニルブチラールのアセタール化度を表3に示す。そして、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートおよび導電ペーストの評価を行った。その結果を表4および表5に示す。
(実施例7)
320gのPVA−7を、3680mLの水中に投入し、撹拌しながら溶液の温度を90℃まで昇温して溶解させた後、30℃まで冷却した。この水溶液に20%濃度の塩酸水溶液330gを添加した。その後、水溶液を5℃まで冷却し、ブチルアルデヒド219gを10分間かけて滴下して、アセタール化反応を開始させた。15℃で60分間反応を行った後、約0.5℃/分の昇温速度で50℃まで昇温し、50℃で200分間維持した。その後、反応溶液を室温まで冷却し、析出した粒状物を濾別してこれを水で十分に洗浄した。得られた生成物を0.3%水酸化ナトリウム溶液に投入し、50℃に加温して中和した。この生成物を引き続き、水で洗浄してアルカリ性化合物を除去した後、生成物を乾燥し、ビニルアセタール系重合体(PVB−7)を得た。得られたポリビニルブチラールのアセタール化度を表3に示す。そして、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートおよび導電ペーストの評価を行った。その結果を表4および表5に示す。
(実施例8)
PVA−7の代わりにPVA−8を用い、n−ブチルアルデヒドの添加量を167g、塩酸量を133gに変更したこと以外は実施例7と同様にしてポリビニルブチラール(PVB−8)を合成した。得られたポリビニルブチラールのアセタール化度を表3に示す。そして、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートおよび導電ペーストの評価を行った。その結果を表4および表5に示す。
(実施例9)
PVA−7の代わりにPVA−9を用いた以外は実施例7と同様にしてポリビニルブチラール(PVB−9)を合成した。得られたポリビニルブチラールのアセタール化度を表3に示す。そして、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートおよび導電ペーストの評価を行った。その結果を表4および表5に示す。
(実施例10)
380gのPVA−10を、3620mLの水中に投入し、撹拌しながら溶液の温度を90℃まで昇温して溶解させた後、30℃まで冷却した。この水溶液に20%濃度の塩酸水溶液390gを添加した。その後、水溶液を2℃まで冷却し、ブチルアルデヒド260gを20分間かけて滴下して、アセタール化反応を開始させた。2℃で60分間反応を行った後、約0.3℃/分の昇温速度で40℃まで昇温し、40℃で300分間維持した。その後、反応溶液を室温まで冷却し、析出した粒状物を濾別してこれを水で十分に洗浄した。得られた生成物を0.3%水酸化ナトリウム溶液に投入し、40℃に加温して中和した。この生成物を引き続き、水で洗浄してアルカリ性化合物を除去した後、生成物を乾燥し、ビニルアセタール系重合体(PVB−10)を得た。得られたポリビニルアセタール系重合体のアセタール化度を表3に示す。そして、実施例1と同様にしてセラミックスラリーを作製し、保存安定性の評価を行った。重合度が低いため、セラミックグリーンシートの評価は実施しなかったが、セラミックスラリーおよび導電ペーストの評価については、実施例1と同様に行った。その結果を表4および表5に示す。
(実施例11)
n−ブチルアルデヒドの添加量を210g、塩酸量を170gに変更したこと以外は実施例10と同様にしてポリビニルブチラール(PVB−11)を合成した。得られたポリビニルブチラールのアセタール化度を表3に示す。そして、実施例1と同様にしてセラミックスラリーおよび導電ペーストの評価を行った。その結果を表4および表5に示す。
(実施例12)
PVA−10の代わりにPVA−11(M)を用い、n−ブチルアルデヒドの添加量を172g、塩酸量を138gに変更したこと以外は実施例10と同様にしてポリビニルブチラール(PVB−12)を合成した。得られたポリビニルブチラールのアセタール化度を表3に示す。そして、実施例1と同様にしてセラミックスラリーおよび導電ペーストの評価を行った。その結果を表4および表5に示す。
(実施例13)
PVA−10の代わりにPVA−11(L)を用い、n−ブチルアルデヒドの添加量を97g、塩酸量を78gに変更したこと以外は実施例10と同様にしてポリビニルブチラール(PVB−13)を合成した。得られたポリビニルブチラールのアセタール化度を表3に示す。そして、実施例1と同様にしてセラミックスラリーおよび導電ペーストの評価を行った。その結果を表4および表5に示す。
(実施例14)
380gのPVA−12を、3620mLの水中に投入し、撹拌しながら溶液の温度を90℃まで昇温して溶解させた後、30℃まで冷却した。この水溶液に20%濃度の塩酸水溶液250gを添加した。その後、水溶液を−1℃まで冷却し、ブチルアルデヒド220gを20分間かけて滴下して、アセタール化反応を開始させた。−1℃で60分間反応を行った後、約0.2℃/分の昇温速度で35℃まで昇温し、35℃で420分間維持した。その後、反応溶液を室温まで冷却し、析出した粒状物を濾別してこれを水で十分に洗浄した。得られた生成物を0.3%水酸化ナトリウム溶液に投入し、38℃に加温して中和した。この生成物を引き続き、水で洗浄してアルカリ性化合物を除去した後、生成物を乾燥し、ビニルアセタール系重合体(PVB−14)を得た。得られたビニルアセタール系重合体のアセタール化度を表3に示す。そして、実施例1と同様にしてセラミックスラリーを作製し、保存安定性の評価を行った。重合度が低いため、セラミックグリーンシートの評価は実施しなかったが、セラミックスラリーおよび導電ペーストの評価は実施例1と同様に行った。その結果を表4および表5に示す。
(実施例15)
320gのPVA−13を、3680mLの水中に投入し、撹拌しながら溶液の温度を90℃まで昇温して溶解させた後、30℃まで冷却した。この水溶液に20%濃度の塩酸水溶液203gを添加した。その後、水溶液を2℃まで冷却し、ブチルアルデヒド185gを20分間かけて滴下して、アセタール化反応を開始させた。2℃で60分間反応を行った後、約0.3℃/分の昇温速度で40℃まで昇温し、40℃で300分間維持した。その後、反応溶液を室温まで冷却し、析出した粒状物を濾別してこれを水で十分に洗浄した。得られた生成物を0.3%水酸化ナトリウム溶液に投入し、40℃に加温して中和した。この生成物を引き続き、水で洗浄してアルカリ性化合物を除去した後、生成物を乾燥し、ビニルアセタール系重合体(PVB−15)を得た。得られたビニルアセタール系重合体のアセタール化度を表3に示す。そして、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートおよび導電ペーストの評価を行った。その結果を表4および表5に示す。
(実施例16)
PVA−13の代わりにPVA−14を用い、n−ブチルアルデヒドの添加量を150gに変更し、塩酸量を165gにしたこと以外は実施例15と同様にしてポリビニルブチラール(PVB−16)を合成した。得られたポリビニルブチラールのアセタール化度を表3に示す。そして、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートおよび導電ペーストの評価を行った。その結果を表4および表5に示す。
(実施例17)
PVA−13の代わりにPVA−15を用いた以外は実施例15と同様にしてポリビニルブチラール(PVB−6)を合成した。得られたポリビニルブチラールのアセタール化度を表3に示す。そして、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートおよび導電ペーストの評価を行った。その結果を表4および表5に示す。
(実施例18)
PVA−7の代わりに、224gのPVA−3と96gのPVA−C4を混合して用いた以外は実施例7と同様にしてポリビニルブチラール(PVB−18)を合成した。得られたポリビニルブチラールのアセタール化度を表3に示す。そして、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートおよび導電ペーストの評価を行った。その結果を表4および表5に示す。
(比較例1、2)
PVA−1の代わりにPVA−C1、PVA−C2をそれぞれに用いた以外は実施例1と同様にしてポリビニルブチラール(PVB−C1、PVB−C2)を合成した。得られたポリビニルブチラールのアセタール化度を表3に示す。そして、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートおよび導電ペーストの評価を行った。その結果を表4および表5に示す。
(比較例3)
PVA−7の代わりにPVA−C3を用い、n−ブチルアルデヒドの添加量を192gに変更し、塩酸量を165gにしたこと以外は実施例7と同様にしてポリビニルブチラール(PVB−C3)を合成した。得られたポリビニルブチラールのアセタール化度を表3に示す。そして、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートおよび導電ペーストの評価を行った。その結果を表4および表5に示す。
(比較例4)
n−ブチルアルデヒドの添加量を210g、塩酸量を170gに変更したこと以外は実施例10と同様にしてポリビニルブチラール(PVB−C4)を合成した。得られたポリビニルブチラールのアセタール化度を表3に示す。そして、実施例1と同様にしてセラミックスラリーおよび導電ペーストの評価を行った。その結果を表4および表5に示す。
(比較例5)
PVA−7の代わりにPVA−C5を用い、n−ブチルアルデヒドの添加量を192gに変更し、塩酸量を165gにしたこと以外は実施例7と同様にしてポリビニルブチラール(PVB−C3)を合成した。得られたポリビニルブチラールのアセタール化度を表3に示す。そして、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートおよび導電ペーストの評価を行った。その結果を表4および表5に示す。
(比較例6)
合成したPVA−C6は水に不溶であったため、ポリビニルブチラールを合成することはできなかった。
(比較例7)
PVA−1の代わりにPVA−3を用い、n−ブチルアルデヒドの添加量を93gに変更し、塩酸量を75.5gにしたこと以外は実施例1と同様にしてポリビニルブチラール(PVB−C7)を合成した。得られたポリビニルブチラールのアセタール化度を表3に示す。そして、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートおよび導電ペーストの評価を行った。その結果を表4および表5に示す。
(比較例8)
PVA−7の代わりにPVA−9を用い、n−ブチルアルデヒドの添加量を93gに変更し、塩酸量を75.5gにしたこと以外は実施例7と同様にしてポリビニルブチラール(PVB−C8)を合成した。得られたポリビニルブチラールのアセタール化度を表3に示す。そして、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートおよび導電ペーストの評価を行った。その結果を表4および表5に示す。
(比較例9)
PVA−7の代わりにPVA−C5を用い、n−ブチルアルデヒドの添加量を93gに変更し、塩酸量を75.5gにしたこと以外は実施例7と同様にしてポリビニルブチラール(PVB−C9)を合成した。得られたポリビニルブチラールのアセタール化度を表3に示す。そして、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートおよび導電ペーストの評価を行った。その結果を表4および表5に示す。