JP2008146835A - 導電ペースト - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、セラミックグリーンシートとの接着性に優れ、印刷時のニジミが少ないと共に、シートアタック現象を発生しにくい導電ペーストを提供する。
【解決手段】 本発明の導電ペーストは、バインダー樹脂、有機溶剤及び金属粉末を含有してなる導電ペーストであって、上記バインダー樹脂は、変性ポリビニルアルコール樹脂とアルデヒドとのアセタール化反応により合成される、エチレン成分の含有量が1〜20モル%、ケン化度が80モル%以上、側鎖として結合している水酸基の量が15〜40モル%、側鎖として結合しているカルボキシ基の量が0.01〜10モル%で且つアセタール化度が40〜80モル%である変性ポリビニルアセタール樹脂であると共に、上記有機溶剤は、脂肪酸エステル系溶剤及び/又は炭化水素系溶剤であることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、積層セラミックコンデンサなどの積層型電子部品の内部電極層を形成するのに使用される導電ペーストに関する。
積層型の電子部品、例えば、積層セラミックコンデンサは、一般に次のような工程を経て製造される。先ず、ポリビニルブチラール樹脂やポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂などのバインダー樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に可塑剤、分散剤などを添加した後、セラミック原料粉末を加え、ボールミルにより均一に混合し、脱泡後に一定粘度を有するセラミックスラリー組成物を得る。このスラリー組成物をドクターブレード、リバースロールコーターなどを用いて、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム又はSUSプレートなどの支持体面に流延成形する。これを加熱することにより、有機溶剤の揮発分を溜去させた後、支持体から剥離してセラミックグリーンシートを得る。
次に、得られたセラミックグリーンシート上に内部電極層となる導電ペーストをスクリーン印刷により塗布したものを交互に複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を得、この積層体中に含まれるバインダー成分を熱分解して除去する処理、いわゆる脱脂処理を行った後、焼成して得られるセラミック焼成物の端面に外部電極を焼結する工程を経て積層セラミックコンデンサが得られる。
上記積層セラミックコンデンサなどの積層型の電子部品に用いられる導電ペーストとしては、通常、導電性金属、バインダー樹脂及び有機溶剤からなるものが使用されている。しかしながら、このような導電ペーストをセラミックグリーンシート上に塗布すると、導電ペーストの有機溶剤がセラミックグリーンシートに含まれるバインダー樹脂成分を溶解する「シートアタック現象」が発生した。
近年、積層セラミックコンデンサは更なる高容量化のためにセラミックグリーンシートの多層化が検討されており、そのためセラミックグリーンシートの薄膜化が求められている。しかしながら、薄膜化されたセラミックグリーンシートに上記のような導電ペーストを塗布すると、セラミックグリーンシートにシートアタック現象に起因する穴や皺が発生し、所望の電気特性が得られなくなるという問題が生じた。
そのため、シートアタック現象が発生しにくい導電ペーストが求められており、このような導電ペーストとしては、特許文献1に、有機バインダーがエトキシル基を含有するエチルセルロース系樹脂からなり、有機溶剤が脂肪族炭化水素、脂肪族高級アルコール及び芳香族炭化水素からなる混合溶剤であることを特徴とする積層セラミックコンデンサ内部電極用ペーストのためのビヒクルが開示され、特許文献2に、特定構造を有する有機溶剤を含有することを特徴とする導電ペーストが開示されている。
しかしながら、上記特許文献1のビヒクルより調製される導電ペーストは、有機バインダーであるエチルセルロース系樹脂のセラミックグリーンシートに対する接着性が充分でないため、形成された内部電極層がセラミックグリーンシートから剥離してしまうという問題が生じた。
一方、上記特許文献2の導電ペーストは、粘度が低く、セラミックグリーンシート上に薄層印刷した際にニジミが発生してしまうため、薄型のコンデンサを作製することができないという問題があった。
特開平11−273987号公報 特開2005−116504号公報
本発明は、セラミックグリーンシートとの接着性に優れ、印刷時のニジミが少ないと共に、シートアタック現象を発生しにくい導電ペーストを提供する。
本発明の導電ペーストは、バインダー樹脂、有機溶剤及び金属粉末を含有してなる導電ペーストであって、上記バインダー樹脂は、変性ポリビニルアルコール樹脂とアルデヒドとのアセタール化反応により合成される、エチレン成分の含有量が1〜20モル%、ケン化度が80モル%以上、側鎖として結合している水酸基の量が15〜40モル%、側鎖として結合しているカルボキシ基の量が0.01〜10モル%で且つアセタール化度が40〜80モル%である変性ポリビニルアセタール樹脂であると共に、上記有機溶剤は、脂肪酸エステル系溶剤及び/又は炭化水素系溶剤であることを特徴とする。
本発明の導電ペーストに含有されるバインダー樹脂は、変性ポリビニルアルコール樹脂とアルデヒドとのアセタール化反応により合成される変性ポリビニルアセタール樹脂が用いられる。
上記変性ポリビニルアルコール樹脂は、これをアセタール化して得られる変性ポリビニルアセタール樹脂のエチレン成分の含有量などが上記範囲となるように調整できるものであれば、特に限定されず、例えば、不飽和(ジ)カルボン酸若しくは不飽和(ジ)カルボン酸誘導体と、ビニルエステルとの共重合体、及び、エチレンとビニルエステルとの共重合体の樹脂混合物を混合前又は混合後にケン化してなるもの;不飽和(ジ)カルボン酸若しくは不飽和(ジ)カルボン酸誘導体とエチレンとビニルエステルとの共重合体をケン化してなるものが挙げられる。なお、変性ポリビニルアルコール樹脂中におけるビニルエステル成分の含有量が50モル%を超えるように調整しておく必要がある。
そして、上記ビニルエステルとしては、特に限定されず、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどが挙げられ、経済性の面から酢酸ビニルが好ましい。
上記不飽和(ジ)カルボン酸としては、特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フタル酸、マレイン酸、イタコン酸などが挙げられ、イタコン酸が好ましい。
又、上記不飽和(ジ)カルボン酸誘導体とは、カルボキシ基誘導体を有するものをいい、このカルボキシ基誘導体とは、酸触媒の存在下において容易にカルボキシ基に置換される官能基をいい、例えば、エステル基(−COOR)、アミド基(−CO−NH2)、シアノ基(−CN)、酸無水物基(−CO−O−CO−)、カルボキシ基の塩(−COOX)などが挙げられる。これらのカルボキシ基誘導体は、アセタール化反応の際に用いられる酸触媒によって、カルボキシ基に置換される。なお、上記エステル基中のRとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基などが挙げられ、カルボキシ基の塩中のXとしては、例えば、Naなどが挙げられる。
このような不飽和(ジ)カルボン酸誘導体としては、特に限定されず、例えば、不飽和(ジ)カルボン酸塩、不飽和(ジ)カルボン酸アルキルエステル、不飽和(ジ)カルボン酸無水物などが挙げられる。具体的には、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、並びに、上述の不飽和(ジ)カルボン酸のナトリウム塩などが挙げられる。これらは、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよく、更に上述の不飽和(ジ)カルボン酸と併用されてもよい。
又、上記変性ポリビニルアルコール樹脂のケン化度は、低いと、水への溶解性が低下してアセタール化反応が困難になったり、得られる変性ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が低下したり、或いは、変性ポリビニルアセタール樹脂の有機溶剤に対する溶解性が低下し、導電ペーストの作製に支障を生じたり、経時粘度安定性が低下するので、80モル%以上が好ましい。なお、変性ポリビニルアルコール樹脂が、複数種類の変性ポリビニルアルコール樹脂を混合したものである場合には、変性ポリビニルアルコール樹脂の混合物全体のケン化度が80モル%以上であることが好ましい。
なお、上記変性ポリビニルアルコール樹脂のケン化度とは、変性ポリビニルアルコール樹脂中におけるエステル化されている水酸基数Aと水酸基数Bの合計数に対する水酸基数Bの割合をいい、下記式(1)により算出することができる。
ケン化度(モル%)=100×B/(A+B) ・・・式(1)
更に、上記変性ポリビニルアルコール樹脂の数平均重合度は、低いと、導電ペーストをセラミックグリーンシートに印刷した際の塗膜強度が低くなり、形成された内部電極層に亀裂(クラック)が生じることがある一方、高いと、水への溶解性が低下したり、水溶液の粘度が高くなり過ぎて、アセタール化が困難になることがあるので、300〜2400が好ましい。なお、本発明における樹脂の数平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール」の「5.4平均重合度」の項に従って求められた平均重合度をいう。又、ポリビニルアルコール樹脂として2種以上のポリビニルアルコール樹脂を混合して用いる場合は、混合後のポリビニルアルコール樹脂全体の見掛け上の数平均重合度をいう。
そして、上記変性ポリビニルアルコール樹脂をアセタール化するのに用いられるアルデヒドとしては、特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒドなどが挙げられ、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒドが好ましい。これらのアルデヒドは単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
上記変性ポリビニルアルコール樹脂とアルデヒドとのアセタール化反応の要領としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、塩酸、硝酸、硫酸のような酸触媒の存在下において、変性ポリビニルアルコール樹脂の水溶液に、所定のアセタール化度を付与するのに必要な量のアルデヒドを加えてアセタール化反応させた後、水酸化ナトリウムなどのアルカリによって中和し、水洗、乾燥を行なう方法が挙げられる。
そして、上記変性ポリビニルアセタール樹脂におけるエチレン成分の含有量は、少ないと、導電ペースト中における金属粉末の分散性が低下したり、導電ペーストの印刷性が低下する一方、多いと、変性ポリビニルアセタール樹脂の有機溶剤に対する溶解性が低下して、導電ペーストの作製に支障が生じたり、導電ペーストの経時粘度安定性が低下するので、1〜20モル%に限定され、1〜10モル%が好ましい。
又、上記変性ポリビニルアセタール樹脂のケン化度は、低いと、変性ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が低下してしまうので、80モル%以上に限定され、80〜99.9モル%が好ましい。
なお、上記変性ポリビニルアセタール樹脂のケン化度とは、変性ポリビニルアセタール樹脂中におけるエステル化されている水酸基数C、アセタール化反応により消失した水酸基数D及び水酸基数Eの合計数に対する水酸基数Eの割合をいい、下記式(2)により算出することができる。
ケン化度(モル%)=100×(D+E)/(C+D+E) ・・・式(2)
そして、上記変性ポリビニルアセタール樹脂の主鎖に側鎖として結合している水酸基の量は、少ないと、変性ポリビニルアセタール樹脂の強度が損なわれて、導電ペーストをセラミックグリーンシートに印刷した際の塗膜強度が低下し、形成された内部電極層に亀裂(クラック)が生じやすくなる一方、多いと、変性ポリビニルアセタール樹脂の有機溶剤への溶解性が低下し、導電ペーストの作製が困難になるので、15〜40モル%に限定され、18〜35モル%が好ましく、18〜25モル%がより好ましい。
又、上記変性ポリビニルアセタール樹脂の主鎖に側鎖として結合しているカルボキシ基の量は、少ないと、導電ペーストの粘度が不足し、セラミックグリーンシートに印刷した際にニジミが生じる一方、多いと、変性ポリビニルアセタール樹脂の有機溶剤に対する溶解性が低下し、導電ペーストの作製に支障が生じるので、0.01〜10モル%に限定され、0.1〜5モル%が好ましい。
なお、上記変性ポリビニルアセタール樹脂の主鎖に側鎖として結合している水酸基及びカルボキシ基の量とは、変性ポリビニルアセタール樹脂の側鎖の全数に対する水酸基数又はカルボキシ基数の割合(モル%)をいう。ここで、上記変性ポリビニルアセタール樹脂中のアセタール化された部分の側鎖の数としては、アセタール化反応により消失した水酸基の数を採用するものとする。
そして、上記変性ポリビニルアセタール樹脂の主鎖に側鎖として結合している水酸基及びカルボキシ基の量は、変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d6(ジメチルスルホキサイド)に溶解させて、13C−NMRスペクトルを測定し、エステル化されている水酸基、水酸基及びカルボキシ基が結合しているメチン基に由来するピーク面積と、アセタール化された部分のメチン基に由来するピーク面積とにより算出することができる。
又、上記変性ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、小さいと、変性ポリビニルアセタール樹脂の有機溶剤に対する溶解性が低下し、導電ペーストの作製に支障が生じる一方、大きいと、変性ポリビニルアセタール樹脂の主鎖に側鎖として結合している水酸基の数が少なくなり、変性ポリビニルアセタール樹脂の強度が損なわれて、導電ペーストをセラミックグリーンシートに印刷した際の塗膜強度が低下し、形成された内部電極層に亀裂(クラック)が生じやすくなるので、40〜80モル%に限定され、65〜78モル%が好ましい。
ここで、上記変性ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度とは、変性ポリビニルアセタール樹脂の側鎖の全数に対する、アセタール化反応の際に消失した水酸基数の割合(モル%)をいう。なお、上記変性ポリビニルアセタール樹脂中のアセタール化された部分の側鎖の数は、アセタール化反応により消失した水酸基の数として、変性ポリビニルアセタール樹脂の側鎖の全数を算出する。
そして、上記変性ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d6(ジメチルスルホキサイド)に溶解させて、13C−NMRスペクトルを測定し、変性ポリビニルアセタール樹脂の、エステル化されている水酸基が結合しているメチン基に由来するピーク面積S1、水酸基が結合しているメチン基に由来するピーク面積S2、カルボキシ基が結合しているメチン基に由来するピーク面積S3及びアセタール化された部分のメチン基に由来するピーク面積S4を下記式(3)に代入して算出することができる。
アセタール化度(モル%)=100×S4/(S1+S2+S3+S4) ・・・式(3)
更に、上記変性ポリビニルアセタール樹脂の数平均重合度は、低いと、導電ペーストをセラミックグリーンシートに印刷した際の塗膜強度が低くなり、形成された内部電極層に亀裂(クラック)が生じることがある一方、高いと、導電ペーストの粘度が高くなり過ぎて、取扱い性が低下することがあるので、300〜2400が好ましい。
なお、上記変性ポリビニルアセタール樹脂が2種以上の樹脂を混合してなる場合、上述の変性ポリビニルアセタール樹脂におけるエチレン成分の含有量、変性ポリビニルアセタール樹脂のケン化度、変性ポリビニルアセタール樹脂の主鎖に側鎖として結合している水酸基の量及びカルボキシ基の量、並びに、変性ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度及び数平均重合度は、混合させた樹脂全体の見かけ上の値とする。
又、上記バインダー樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記変性ポリビニルアセタール樹脂以外の樹脂成分が含有されていてもよい。このような樹脂成分としては、特に限定されず、例えば、エチルセルロース、アクリル系樹脂、変性されていないポリビニルアセタール樹脂などが挙げられる。
そして、本発明の導電ペーストにおける上記バインダー樹脂の含有量は、少ないと、導電ペーストにより形成される内部電極層とセラミックグリーンシートとの接着性が不十分となり、形成された内部電極層とセラミックグリーンシートとの間で層間剥離(デラミネーション)が発生することがある一方、多いと、導電ペーストの粘度が高くなり過ぎて、取扱い性が低下することがあるので、1〜10重量%が好ましく、2〜5重量%がより好ましい。
本発明の導電ペーストに含有される有機溶剤としては、脂肪酸エステル系溶剤及び/又は炭化水素系溶剤が用いられる。これらの有機溶剤は、上記変性ポリビニルアセタール樹脂の溶解性に優れ且つセラミックグリーンシートに通常用いられるバインダー樹脂への溶解性が低いため、シートアタック現象を発生させにくく、更に、セラミックグリーンシートへの導電ペーストの接着性に優れたものとすることができる。
又、上記脂肪酸エステル系溶剤としては、特に限定されず、例えば、ジヒドロテルピニルアセテート、テルピニルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、エチルヘキサノエートなどが挙げられ、上記炭化水素系溶剤としては、特に限定されず、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソパラフィン、ミネラルスピリッツ、ナフテンなどが挙げられる。これらの有機溶剤のなかでも、ジヒドロテルピニルアセテート、テルピニルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、エチルヘキサノエート、イソパラフィン、ナフテンが好ましい。なお、これらの有機溶剤は、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
そして、上記炭化水素系溶剤は、単独で用いられてもよいが、変性ポリビニルアセタール樹脂の溶解性を調節するために、脂肪酸エステル系溶剤及びアルコール系溶剤と併用して用いられることが好ましい。このように炭化水素系溶剤を他の有機溶剤と併用する場合において、有機溶剤中における炭化水素系溶剤の含有量は、少ないと、シートアタック現象が発生することがある一方、多いと、導電ペーストの貯蔵安定性が低下し、導電ペーストがゲル化することがあるので、1〜60重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましい。なお、アルコール系溶剤としては、例えば、テルピネオール、エチルアルコール、ブチルアルコールなどが挙げられる。
又、上記炭化水素系溶剤は、他の有機溶剤との揮発性が大きく異ならないことが好ましく、その沸点は100〜250℃であることが好ましい。上記炭化水素系溶剤の沸点は、低いと、炭化水素系溶剤の揮発性が高くなり、導電ペーストの粘度が変化しやすくなって、導電ペーストの取扱い性が低下することがある一方、高いと、炭化水素系溶剤が乾燥しにくくなり、積層型の電子部品の製造時において、導電ペースト中に炭化水素系溶剤が残留し、焼成過程において形成された内部電極層とセラミックグリーンシートとの間で層間剥離(デラミネーション)が発生することがある。
又、上記有機溶剤中におけるアルコール系溶剤の含有量は、少ないと、有機溶剤のバインダー樹脂に対する溶解性を向上させる効果が得られない一方、多いと、シートアタック現象が発生することがあるので、1〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。
そして、本発明の導電ペーストにおける有機溶剤の含有量は、少ないと、導電ペーストの粘度が高くなり過ぎて、取扱い性が低下したり、印刷性が低下することがある一方、多いと、導電ペースト中に含有される金属粉末の割合が少なくなって、充分な導電性が得られないことがあるので、30〜69重量%が好ましく、40〜60重量%がより好ましい。
上記金属粉末としては、充分な導電性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、銅やこれらの合金からなる粉末が挙げられる。これらの金属粉末は、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
又、上記導電ペーストにおける金属粉末の含有量は、少ないと、得られる内部電極層の導電性が低くなることがある一方、多いと、導電ペーストの印刷性が低下することがあるので、30〜69重量%が好ましく、35〜55重量%がより好ましい。
なお、本発明の導電ペーストには、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、可塑剤、増粘剤、潤滑剤、分散剤、帯電防止剤などの添加剤を添加してもよい。
本発明の導電ペーストの製造方法としては、特に限定されず、例えば、上記有機溶剤、バインダー樹脂、金属粉末及び必要に応じて添加する各種添加剤をブレンダーミル、3本ロールなどの各種混合機を用いて混合する方法が挙げられる。
そして、上述のようにして製造された導電ペーストは、例えば、公知の印刷方法を用いてセラミックグリーンシート上に所望形状及び所望厚さで印刷し、乾燥させることによって導電ペースト層を形成し、しかる後、導電ペースト層が形成されたセラミックグリーンシートを複数枚積層し加熱圧着して積層体を製造し、この積層体に脱脂処理を施した上で焼成してセラミック焼成物を製造し、このセラミック焼成物に外部電極を焼結することによって積層セラミックコンデンサを製造することができる。
なお、上記セラミックグリーンシートのバインダー樹脂としては、側鎖として結合している水酸基の量が28モル%以上、好ましくは30モル%以上のポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましい。これは、側鎖として結合している水酸基の量が28モル%以上であると、ポリビニルブチラール樹脂の水素結合が強くなって、セラミックグリーンシートの薄層化が可能になると共に、ポリビニルブチラール樹脂の有機溶剤に対する溶解性が更に低下して、シートアタック現象が発生しにくくなるからである。
本発明の導電ペーストは、セラミックグリーンシートに通常用いられるバインダー樹脂をほとんど溶解しない有機溶剤と、この有機溶剤に対する溶解性に優れた所定の化学構造を有する変性ポリビニルアセタール樹脂とを含有してなる。従って、上記導電ペーストは、変性ポリビニルアセタール樹脂が充分に溶解されたものであると共に、シートアタック現象をほとんど発生させないものであるため、積層セラミックコンデンサなどの積層型電子部品の内部電極層を形成するのに好適に使用することができる。
又、上記導電ペーストは、上述のような有機溶剤を用いていることから、シートアタック現象を発生させにくく、セラミックグリーンシートとの接着性に優れている。従って、本発明の導電ペーストによれば、セラミックグリーンシートとの間で層間剥離(デラミネーション)が発生しにくい内部電極層を形成することができるので、積層型電子部品の歩留まりを向上することができる。
そして、上記導電ペーストは、エチレン成分及びカルボン酸ビニル成分を所定量含有する変性ポリビニルアセタール樹脂を含有してなることから、適度な粘度を有している。従って、本発明の導電ペーストによれば、セラミックグリーンシートに印刷した際にニジミがほとんど発生しないので、所望形状の内部電極層を精度良く形成することができる。
更に、上記導電ペーストは、水酸基が側鎖として所定割合結合されてなる変性ポリビニルアセタール樹脂を含有してなることから、セラミックグリーンシートに印刷した際の塗膜の強度が強く、形成された内部電極層に亀裂(クラック)が生じることがほとんどない。
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
〔実施例1〕
(変性ポリビニルブチラール樹脂の合成)
エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化してなるエチレン変性ポリビニルアルコール樹脂(エチレン成分含有量:8モル%、ケン化度:98モル%)130gと、イタコン酸−酢酸ビニル共重合体をケン化してなるイタコン酸変性ポリビニルアルコール樹脂(イタコン酸成分含有量:2モル%、ケン化度:88モル%)130gを純水2900gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌して変性ポリビニルアルコール樹脂水溶液を得た。なお、変性ポリビニルアルコール樹脂全体のケン化度は93.4モル%であった。
続いて、この変性ポリビニルアルコール樹脂水溶液を28℃に冷却して、これに濃度35重量%の塩酸500gとn−ブチルアルデヒド178gを添加し、更にこの溶液を10℃まで下げてアセタール化反応させた。次に、溶液を30℃まで昇温して5時間この温度で保持し、アセタール化反応を完了させて、常法により中和、水洗及び乾燥を行なうことにより変性ポリビニルブチラール樹脂を得た。
次に、このようにして得られた変性ポリビニルブチラール樹脂を、DMSO−d6(ジメチルスルホキサイド)に溶解させて、13C−NMRスペクトルの測定を行ない、変性ポリビニルブチラール樹脂の組成及びブチラール化度を算出したところ、エチレン成分の含有量が4.3モル%、ケン化度が93.4モル%、側鎖として結合している水酸基の量が19.6モル%、側鎖として結合しているカルボキシ基の量が0.9モル%、ブチラール化度が73モル%であった。
(導電ペーストの調製)
そして、上述のようにして得られた変性ポリビニルアセタール樹脂4.2重量%、ニッケル粉(三井金属社製 商品名「2020SS」)50重量%及び表1の組成の有機溶剤45.8重量%を混合し、三本ロールで混練して導電ペーストを得た。
〔実施例2〜6〕
(導電ペーストの調製)
有機溶剤として、それぞれ表1に示した有機溶剤を用いたこと以外は、実施例1と同様の要領で導電ペーストを得た。
〔比較例1〕
(変性ポリビニルアセタール樹脂の合成、及び、導電ペーストの調製)
ポリビニルアルコール(ケン化度:96モル%)193gを純水2900gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌してポリビニルアルコール水溶液を得、このポリビニルアルコール水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様の要領で、ポリビニルアセタール樹脂を得た。更に、有機溶剤としてテルピネオールを用いたこと以外は、実施例1と同様の要領で導電ペーストを得た。
そして、実施例1と同様の要領で、ポリビニルアセタール樹脂の13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)測定を行ない、ポリビニルアセタール樹脂の組成及びアセタール化度を算出したところ、エチレン成分の含有量が0モル%、側鎖に結合しているアセチル基の量が4モル%、側鎖として結合している水酸基の量が28モル%、側鎖として結合しているカルボキシ基の量が0モル%、アセタール化度が68モル%であった。
〔比較例2〕
(変性ポリビニルブチラール樹脂の合成、及び、導電ペーストの調製)
変性ポリビニルアルコール樹脂として、エチレン変性ポリビニルアルコール樹脂(エチレン成分含有量:5モル%、ケン化度:98モル%)260gのみを用いたこと以外は実施例1と同様の要領で変性ポリビニルブチラール樹脂を得た。更に、有機溶剤としてジヒドロテルピニルアセテートを用いたこと以外は、実施例1と同様の要領で導電ペーストを得た。
そして、実施例1と同様の要領で、変性ポリビニルブチラール樹脂の13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)測定を行ない、変性ポリビニルブチラール樹脂の組成及びブチラール化度を算出したところ、エチレン成分の含有量が5モル%、側鎖に結合しているアセチル基の量が2モル%、側鎖として結合している水酸基の量が23モル%、側鎖として結合しているカルボキシ基の量が0モル%、ブチラール化度が75モル%であった。
次に、上記のようにして得られた導電ペーストのシートアタック性、ニジミ性及びショート発生率について下記の要領で評価し、その結果を表1に示した。
〔シートアタック性〕
(セラミックグリーンシートの作製)
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業製、商品名「エスレックB(BM−2)」、数平均重合度:850、水酸基含有量:31モル%)10重量部を、トルエン30重量部とエタノール15重量部との混合溶剤に加えて攪拌溶解し、更に、可塑剤としてジブチルフタレート3重量部を加え、攪拌溶解した。得られた樹脂溶液に、セラミック粉末としてチタン酸バリウム(堺化学工業製 商品名「BT−01」、平均粒径:0.1μm)100重量部を加え、ボールミルで48時間混合してセラミックスラリー組成物を得た。得られたセラミックスラリー組成物を、離型処理したポリエステルフィルム上に、乾燥後の厚みが約1μmになるように塗布し、常温で1時間風乾し、熱風乾燥機中で、80℃で3時間、続いて120℃で2時間乾燥させてセラミックグリーンシートを得た。
(内部電極層の形成)
得られたセラミックグリーンシートの表面に導電ペーストを乾燥後の厚みが約1μmとなるようにスクリーン印刷法によって印刷し、乾燥させて内部電極層を形成した。このセラミックグリーンシートの表裏面を目視及び拡大顕微鏡で観察し、以下の基準でシートアタック性の評価を行なった。
○:セラミックグリーンシートの表裏面に皺及び亀裂(クラック)は認められなかった。
×:セラミックグリーンシートの表裏面に皺又は亀裂(クラック)が認められた。
〔ニジミ性〕
上記のようにして得られたセラミックグリーンシートの表面に、導電ペーストを乾燥後の厚みが約1μmとなるようにスクリーン印刷法によって印刷し、乾燥させて内部電極層を形成した。次に、得られた内部電極層を光学顕微鏡で観察し、内部電極層の最も広幅になっている部分の幅x(μm)を測定して、この広幅の部分の幅y(μm)と所定の印刷幅z(ニジミが発生しなかった場合の印刷幅)との差(y−z)よりニジミ幅x(μm)を算出し、下記基準によってニジミ性の評価を行なった。
○:ニジミ幅xは、10μm未満であった。
△:ニジミ幅xは、10μm以上で且つ20μm未満であった。
×:ニジミ幅xは、20μm以上であった。
〔ショート発生率〕
(積層セラミックコンデンサの作製)
上記シートアタック性の評価の際と同様の要領で、表面に内部電極層が形成されたセラミックグリーンシートを100枚作製し、この100枚のセラミックグリーンシートを、その内部電極層が同一方向となるように重ね合わせ、更に、最外層のセラミックグリーンシートのそれぞれに、内部電極層が形成されていないセラミックグリーンシートを1枚ずつ重ね合わせ、温度70℃、圧力14.7MPaで10分間に亘ってセラミックグリーンシートの重ね合わせ方向に熱圧着して積層体を得た。
次に、この積層体を窒素雰囲気下にて昇温速度3℃/分で450℃まで昇温して5時間保持した後、積層体を更に昇温速度5℃/分で1350℃まで昇温して10時間保持し、セラミック焼成体を得た。
このセラミック焼成体にバレル研磨を施した後、銀を主成分とする外部電極用の導電ペーストを積層セラミック焼成体の両端部に塗布し、焼き付けて外部電極を形成することにより積層セラミックコンデンサを作製した。
(ショート発生率の測定)
上記のようにして得られた積層セラミックコンデンサをそれぞれ1000個ずつ用意して、これらの静電容量をLCRメーター(ヒューレット・パッカード社製)によって測定し、積層セラミックコンデンサの全数に対する短絡不良の積層セラミックコンデンサ数の百分率を算出した。
Figure 2008146835

Claims (4)

  1. バインダー樹脂、有機溶剤及び金属粉末を含有してなる導電ペーストであって、上記バインダー樹脂は、変性ポリビニルアルコール樹脂とアルデヒドとのアセタール化反応により合成される、エチレン成分の含有量が1〜20モル%、ケン化度が80モル%以上、側鎖として結合している水酸基の量が15〜40モル%、側鎖として結合しているカルボキシ基の量が0.01〜10モル%で且つアセタール化度が40〜80モル%である変性ポリビニルアセタール樹脂であると共に、上記有機溶剤は、脂肪酸エステル系溶剤及び/又は炭化水素系溶剤であることを特徴とする導電ペースト。
  2. 変性ポリビニルアルコール樹脂は、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体とビニルエステルとの共重合体、及び、エチレンとビニルエステルとの共重合体の樹脂混合物を混合前又は混合後にケン化してなるものであることを特徴とする請求項1に記載の導電ペースト。
  3. 有機溶剤が、ジヒドロテルピニルアセテート、テルピニルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、エチルヘキサノエート、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソパラフィン、ミネラルスピリッツ、ナフテンからなる群より選択される1種以上の溶剤であることを特徴とする請求項1に記載の導電ペースト。
  4. アルデヒドが、ブチルアルデヒド及び/又はアセトアルデヒドであることを特徴とする請求項1に記載の導電ペースト。
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