JP4302589B2 - 導電ペースト - Google Patents

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本発明は、セラミックグリーンシートとの接着性に優れデラミネーションを発生せず、熱分解性に優れ、しかもスクリーン印刷性にも優れるとともに、シートアタックが発生することのない導電ペーストに関する。
積層型の電子部品、例えば、積層セラミックコンデンサは、一般に次のような工程を経て製造される。
まず、ポリビニルブチラール樹脂やポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂等のバインダー樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に可塑剤、分散剤等を添加した後、セラミック原料粉末を加え、ボールミル等により均一に混合し、脱泡後に一定粘度を有するセラミックスラリー組成物を得る。得られたスラリー組成物をドクターブレード、リバースロールコーター等を用いて、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム又はSUSプレート等の支持体面に流延成形する。これを加熱等により溶剤等の揮発分を溜去させた後、支持体から剥離してセラミックグリーンシートを得る。
次いで、得られたセラミックグリーンシート上に内部電極となる導電ペーストをスクリーン印刷等により塗布したものを交互に複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を得、この積層体中に含まれるバインダー成分等を熱分解して除去する処理、いわゆる脱脂処理を行った後、焼成して得られるセラミック焼成物の端面に外部電極を焼結する工程を経て積層セラミックコンデンサが得られる。
このとき、内部電極を形成するのに用いる導電ペーストとしては、通常、主に電極を構成するパラジウムやニッケル等の金属材料と塗布するセラミックグリーンシート表面に適合するα−テルピネオール等の有機溶剤と、エチルセルロース等のバインダー樹脂とで構成される(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
しかし、近年積層セラミックコンデンサには更なる高容量化が求められており、より一層の多層化、薄膜化が検討されている。このように極めて薄膜化が進んだ積層セラミックコンデンサを、従来のエチルセルロースをバインダー樹脂とした導電ペーストを用いて製造した場合、ポリビニルアセタール樹脂をバインダー樹脂として用いたセラミックグリーンシートとの接着性が劣るため、いわゆるデラミネーションと呼ばれる層間剥離が発生しやすく、また、エチルセルロース自体の熱分解性が劣るため、上記積層体を脱脂処理した場合、焼成後にカーボン成分が残留し、電気特性を損なうといった問題点があった。
これに対して、セラミックグリーンシートのバインダー樹脂であるポリビニルアセタール樹脂をバインダー樹脂として用いた導電ペーストを用いれば、このような層間剥離の問題を解決できると考えられる。しかしながら、ポリビニルアセタール樹脂をバインダー樹脂とした導電ペーストでは、スクリーン印刷により導電ペーストを印刷しようとしても、糸引きや目詰まりといった問題を生じ、結果的に版離れが悪くなったり、厚み精度が落ちたりして、パターンを鮮明に描画できずに生産歩留まりを低下させるといった問題があった。
また、ポリビニルアセタール樹脂をバインダー樹脂とする導電ペーストをセラミックグリーンシート上に塗工すると、導電ペースト中の有機溶剤がセラミックグリーンシートに含まれるバインダー樹脂を溶解することがあった。この現象は、シートアタック現象と呼ばれている。近年の極めて薄膜化が進んだ積層セラミックコンデンサにおいては、シートアタック現象によりセラミック層に穴や皺が発生し、目的とする電気特性が得られないことがあるという問題があった。
特公平3−35762号公報 特公平4−49766号公報
本発明は、上記現状に鑑み、セラミックグリーンシートとの接着性に優れデラミネーションを発生せず、熱分解性に優れ、しかもスクリーン印刷性にも優れるとともに、シートアタックが発生することのない導電ペーストを提供することを目的とする。
本発明は、バインダー樹脂、導電性成分を含む無機固形分、び、溶剤を含有する導電ペーストであって、前記バインダー樹脂は、下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造単位からなる変性ポリビニルアセタール樹脂を含有するものであり、前記溶剤は、炭素数6〜10の長鎖アルキル基を有するカルボン酸系溶剤及び/又は炭素数6〜10の長鎖アルキル基を有するアルコール系溶剤を含有する導電ペーストである。
Figure 0004302589
式中、Rは、炭素数1〜20の直鎖又は枝分かれ状のアルキル基を表し、Rは、水素、炭素数1〜20の直鎖、枝分かれ状若しくは環状のアルキル基又はアリール基を表す。また、nは1〜8の整数を表す。更に、変性ポリビニルアセタール樹脂中、一般式(3)で表される構造単位の含有量は1〜20モル%、一般式(4)で表される構造単位の含有量は30〜78モル%である。
以下に本発明を詳述する。
本発明の導電ペーストは、バインダー樹脂、導電性成分を含む無機固形分、び、溶剤を含有するものである。
上記バインダー樹脂は、上記一般式(1)で表されるビニルエステル単位、一般式(2)で表されるビニルアルコール単位、一般式(3)で表されるα−オレフィン単位及び一般式(4)で表されるアセタール単位からなる変性ポリビニルアセタール樹脂を含有する。このような変性ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアセタールに類似の構成を有することにより、ポリビニルアセタール樹脂をバインダー樹脂とするセラミックグリーンシートとの接着性に極めて優れる。また、各構成単位の比率やR、Rの選択、又は、nの選択により、粘度、チキソトロピー性等の諸性質を調整することができ、スクリーン印刷性に優れた導電ペーストを得ることができる。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、一般式(3)で表されるα−オレフィン単位の含有量は1〜20モル%である。1モル%未満であると、得られるペーストの塗工性が劣り、また導電ペースト用バインダー樹脂の熱分解性が劣り、焼成したときに残渣が発生する。20モル%を超えると、変性ポリビニルアセタール樹脂の溶剤溶解性が劣り導電ペースト用バインダー樹脂として用いることができなかったり、導電ペースト用バインダ
ー樹脂の経時粘度安定性が悪化したりする。好ましくは1〜10モル%、より好ましくは2〜8モル%である。
上記α−オレフィン単位としては特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等に由来する単位が挙げられる。なかでも、エチレンに由来するエチレン単位であることが好適である。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、一般式(3)で表されるα−オレフィン単位が連続する場合、該連続するα−オレフィン単位の数の好ましい上限は10である。10を超えると、変性ポリビニルアセタール樹脂の溶剤溶解性が劣り導電ペースト用バインダー樹脂として用いることができないことがある。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、一般式(4)で表されるアセタール単位の含有量は30〜78モル%である。30モル%未満であると、得られる変性ポリビニルアセタール樹脂が有機溶剤に不溶となり、ペースト作製に支障となる。78モル%を超えると、残存水酸基が少なくなって得られる変性ポリビニルアセタール樹脂の強靱性が損なわれ、ペースト印刷時の塗膜強度が低下することがある。好ましくは55〜78モル%である。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、一般式(4)で表されるアセタール単位が2以上連続している場合、隣り合うアセタール基がトランス位にある割合は30〜70%であることが好ましい。30%未満であると、変性ポリビニルアセタール樹脂の溶剤溶解性が劣り導電ペースト用バインダー樹脂として用いることができないことがあり、70%を超えると、アセタール結合が解離しやすくなり、粘度の変化が大きくなる等、保存安定性が劣ることがある。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、一般式(2)で表されるビニルアルコール単位の含有量は20〜30モル%であることが好ましい。20モル%未満であると、変性ポリビニルアセタール樹脂の溶剤溶解性が劣り導電ペースト用バインダー樹脂として用いることができないことがあり、30モル%を超えると、導電性成分を含む無機固形分等の分散性が劣ることがある。より好ましくは20〜27モル%である。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、一般式(2)で表されるビニルアルコール単位が2以上連続している場合、隣り合う水酸基がトランス位にある割合が60%以上であることが好ましい。60%以上である場合には、分子内の水酸基間の相互作用に比べて、分子間の水酸基間の相互作用が大きくなり、導電性成分を含む無機固形分等との親和性が向上して、これらの分散性が向上する。より好ましくは70%以上である。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、一般式(1)で表されるビニルエステル単位の含有量としては特に限定されない。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、更に、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、アクリロニトリルメタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及びそのナトリウム塩、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム等のエチレン性不飽和単量体に由来する成分を含有してもよい。これらのエチレン性不飽
和単量体に由来する成分を含有することにより、上記変性ポリビニルアセタール樹脂に経時粘度安定性等を付与することができる。ただし、これらのエチレン性不飽和単量体に由来する成分を含有する場合であっても、その含有量は2.0モル%未満であることが好ましい。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂の重合度としては特に限定はされないが、好ましい下限は300、好ましい上限は2400である。300未満であると、スクリーン印刷して得られた塗膜の強度が劣り、クラック等が入りやすくなることがあり、2400を超えると、本発明の導電ペーストの粘度が高くなりすぎて、ハンドリング性が低下することがある。
このような変性ポリビニルアセタール樹脂は、α−オレフィン単位の含有量が1〜20モル%、ケン化度が80モル%以上である変性ポリビニルアルコールをアセタール化することにより製造することができる。
上記変性ポリビニルアルコールは、ビニルエステルとα−オレフィンとを共重合した共重合体をケン化することにより得ることができる。この場合に用いるビニルエステルとしては、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等が挙げられ、なかでも経済的な観点から酢酸ビニルが好適である。また、上記エチレン性不飽和単量体に由来する成分を含有する変性ポリビニルアセタールを得る場合には、更にエチレン性不飽和単量体を共重合させる。また、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸等のチオール化合物の存在下で、酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体とα−オレフィンとを共重合し、それをケン化することによって得られる末端変性ポリビニルアルコールも用いることができる。
上記変性ポリビニルアルコールのケン化度の下限は80モル%である。80モル%未満であると、変性ポリビニルアルコールの水への溶解性が悪くなるためアセタール化反応が困難になり、また、水酸基量が少ないとアセタール化反応自体が困難となる。
上記変性ポリビニルアルコールを用いる場合、α−オレフィン含有量が1〜20モル%の範囲の変性ポリビニルアルコールを使用することが必要であるが、α−オレフィン含有量が1〜20モル%の範囲であれば、上記変性ポリビニルアルコールを単独で使用してもよく、最終的に得られた変性ポリビニルアセタール樹脂のα−オレフィン含有量が1〜20モル%となるならば、変性ポリビニルアルコールと未変性ポリビニルアルコールを混合して用いてもよい。また、ケン化度においては、アセタール化する際の変性ポリビニルアルコールのケン化度が80モル%以上であれば、それを該変性ポリビニルアルコール単独、又は、ケン化度80モル%以上の変性ポリビニルアルコールとケン化度80モル%未満の変性ポリビニルアルコールを混合して、全体としてケン化度を80モル%以上に調整してから用いてもよい。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記変性ポリビニルアルコールをアセタール化することにより製造することができる。アセタール化の方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、塩酸等の酸触媒の存在下で上記変性ポリビニルアルコールの水溶液に各種アルデヒドを添加する方法等が挙げられる。
上記アセタール化に用いるアルデヒドとしては特に限定されず、例えばホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシ
ベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。なかでも、アセトアルデヒド又はブチルアルデヒドが、生産性と特性バランス等の点で好適である。これらのアルデヒドは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記アセタール化のアセタール化度は、単独アルデヒド、混合アルデヒドのいずれを用いる場合でも、全アセタール化度で好ましい下限は40モル%、好ましい上限は78モル%の範囲である。全アセタール化度が40モル%未満では樹脂が水溶性となり、有機溶剤に不溶となり、本発明の導電ペースト作製に支障となる。全アセタール化度が78モル%を超えると、残存水酸基が少なくなって変性ポリビニルアセタール樹脂の強靱性が損なわれ、本発明の導電ペースト印刷時の塗膜強度が低下することがある。
なお、本明細書において、アセタール化度の計算方法としては、変性ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基が2個の水酸基からアセタール化されて形成されていることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用してアセタール化度のモル%を計算する。
本発明の導電ペーストにおける上記バインダー樹脂は、上記変性ポリビニルアセタール樹脂単独からなるものであってもよく、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂等の通常バインダー樹脂として用いられる樹脂との混合樹脂であってもよい。この場合、上記変性ポリビニルアセタール樹脂の含有量の好ましい下限は30重量%である。
本発明の導電ペーストは、上記変性ポリビニルアセタール樹脂の他に、導電性成分を含む無機固形分び溶剤成分を含有する。更に、分散剤を含有することにより、導電性成分を含む無機固形分の分散性が良くなり、導電ペースト中での充填密度が高くなるため、焼結時の体積変化が小さくなり、デラミネーションやクラックの発生が生じにくくなる。
上記無機固形分としては充分な導電性を示すものであれば特に限定されず、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、銅やこれらの合金等からなる微粒子等が挙げられる。これらの無機固形分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記分散剤としては特に限定されないが、例えば、脂肪酸、脂肪族アミン、アルカノールアミド、リン酸エステルが好適である。
上記脂肪酸としては特に限定されず、例えば、ベヘニン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸、カプリル酸、ヤシ脂肪酸等の飽和脂肪酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ソルビン酸、牛脂脂肪酸、ヒマシ硬化脂肪酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。なかでも、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が好適である。
上記脂肪族アミンとしては特に限定されず、例えば、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アルキル(ヤシ)アミン、アルキル(硬化牛脂)アミン、アルキル(牛脂)アミン、アルキル(大豆)アミン等が挙げられる。
上記アルカノールアミドとしては特に限定されず、例えば、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、牛脂脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等が挙げられる。
上記リン酸エステルとしては特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルリン酸エステルが挙げられる。
本発明の導電ペーストにおいて、上記溶剤は、炭素数6〜10の長鎖アルキル基を有するカルボン酸系溶剤及び/又は炭素数6〜10の長鎖アルキル基を有するアルコール系溶剤
を含有する。このような炭素数6〜10の長鎖アルキル基を有するカルボン酸系溶剤及び/又は炭素数6〜10の長鎖アルキル基を有するアルコール系溶剤を溶剤として含有することで、本発明の導電ペーストは、スクリーン印刷特性が優れたものとなる。また、炭素数6〜10の長鎖アルキル基を有するカルボン酸系溶剤及び/又は炭素数6〜10の長鎖アルキル基を有するアルコール系溶剤を含有する上記溶剤は、導電ペースト中のバインダー樹脂である上記変性ポリビニルアセタール樹脂は溶解するが、一般にセラミックグリーンシートのバインダー樹脂として用いられているポリビニルアセタール樹脂は溶解しにくいため、本発明の導電ペーストをセラミックグリーンシート上に塗工しても、いわゆるシートアタックが生じることがない。
上記カルボン酸系溶剤及び/又はアルコール系溶剤の炭素数が6未満であると、揮発性が高いためにペーストの粘度変化が大きく扱いにくく、またグリーンシートのバインダー樹脂を溶解してしまう。炭素数が10より大きいと、シートアタックの問題は無いが、本発明の導電ペーストのバインダー樹脂の溶解性が悪化する。上記カルボン酸系溶剤及び/又はアルコール系溶剤は、炭素数8〜10であることが好ましい。
上記炭素数6〜10の長鎖アルキル基を有するカルボン酸系溶剤及び/又は炭素数6〜10の長鎖アルキル基を有するアルコール系溶剤としては、炭素数が6〜10のものであれば特に限定されず、例えば、1−ヘキサノール、2−メチルー1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、カプロン酸、2−エチル酪酸、カプリル酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸等が挙げられる。なかでも、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、2−エチル−1−ヘキサノール、及び、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の導電ペーストにおいて、上記溶剤は、カルビトール類、セロソルブ類及びカルビトールエステル類からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有することが好ましい。上記変性ポリビニルアセタール樹脂の溶解性が向上するからである。
上記カルビトール類としては特に限定されず、例えば、α−テルピネオール、水添テルピネオール、ブチルカルビトール等が挙げられる。
上記セロソルブ類としては特に限定されず、例えば、ブチルセロソルブ等が挙げられる。上記カルビトールエステル類としては特に限定されず、例えば、テルピネオールアセテート、水添テルピネオールアセテート等が挙げられる。
なかでも、テルピネオール、水添テルピネオール、テルピネオールアセテート、及び、水添テルピネオールアセテートが好適である。
本発明の導電ペーストにおける溶剤は、上記炭素数6〜10の長鎖アルキル基を有するカルボン酸系溶剤及び/又は炭素数6〜10の長鎖アルキル基を有するアルコール系溶剤と、上記カルビトール類、セロソルブ類及びカルビトールエステル類からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤とが混合されたものであることが好ましい。このような溶剤は、上記変性ポリビニルアセタール樹脂を溶解させるが、セラミックグリーンシートのバインダー樹脂として一般的に用いられているポリビニルアセタール樹脂は溶解しにくいことから、これを溶剤として含有する本発明の導電ペーストは、シートアタックが発生することを防止しながら、かつ、スクリーン印刷性が向上したものとなる。
本発明の導電ペーストにおいて、溶剤が上記カルビトール類、セロソルブ類及びカルビトールエステル類からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有する場合、上記溶剤における炭素数6〜10の長鎖アルキル基を有するカルボン酸系溶剤及び/又は炭
素数6〜10の長鎖アルキル基を有するアルコール系溶剤の配合量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は90重量%であり、上記カルビトール類、セロソルブ類及びカルビトールエステル類からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤の配合量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は90重量%である。
炭素数6〜10の長鎖アルキル基を有するカルボン酸系溶剤及び/又は炭素数6〜10の長鎖アルキル基を有するアルコール系溶剤の配合量が10重量%未満、又は、上記有機溶剤の配合量が90重量%を超えると、本発明の導電ペーストをセラミックグリーンシート上に塗工した際に、セラミックグリーンシートのポリビニルアセタール樹脂が溶解してシートアタックが発生することがある。炭素数6〜10の長鎖アルキル基を有するカルボン酸系溶剤及び/又は炭素数6〜10の長鎖アルキル基を有するアルコール系溶剤の配合量が90重量%を超えるか、又は、上記有機溶剤の配合量が90重量%未満であると、上記変性ポリビニルアセタール樹脂の溶解性が不充分となることがある。
本発明の導電ペーストは、本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤、潤滑剤、分散剤、帯電防止剤等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
本発明の導電ペーストにおける各成分の含有量としては特に限定されないが、バインダー樹脂の含有量の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は10重量%であり、導電性成分を含む無機固形分の含有量の好ましい下限は30重量%、好ましい上限は70重量%であり、分散剤の含有量の好ましい下限は0.05重量%、好ましい上限は5重量%であり、他の全量が溶剤成分であることが好ましい。
上記バインダー樹脂の含有量が1重量%未満であると、得られる導電ペーストの成膜性能が劣ることがあり、10重量%を超えると、脱脂・焼成後にカーボン成分が残留しやすくなる。
上記無機固形分の含有量が30重量%未満であると、導電成分が少なく有機成分が多いことから、焼成後の収縮率変化が大きく、またカーボン成分が残留しやすくなる。70重量%を超えると、導電ペーストの粘度が高くなりすぎて、塗工、印刷ができないことがある。
上記分散剤の含有量が0.05重量%未満であると、分散性効果が得られないことがあり、5%重量%を超えると、分散性がかえって悪化することがある。より好ましい下限は0.1重量%、より好ましい上限は3重量%である。
本発明によれば、セラミックグリーンシートとの接着性に優れデラミネーションを発生せず、熱分解性に優れ、しかもスクリーン印刷性にも優れるとともに、シートアタックが発生することのない導電ペーストを提供できる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
重合度1700、エチレン含有量10mol%、ケン化度88mol%の変性ポリビニルアルコール193gを純水2900gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。
この溶液を28℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸20gとn−ブチルアルデヒド115gとを添加し、液温を20℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。
その後、液温を30℃、5時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、変性ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d6(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてブチラール化度を測定したところ、ブチラール化度は55モル%であり、水酸基量は23モル%であった。
無機固形分としてニッケル微粒子(三井金属社製、「2020SS」)100重量部に対して、得られた変性ポリビニルアセタール樹脂7重量と、テルピネオール20重量%、2−エチルヘキサン酸80重量%からなる溶剤60重量部とを加え、三本ロールで混練して導電ペーストを作製した。
(実施例2)
テルピニルアセテート80重量%、3,5,5−トリメチルヘキサン酸20重量%からなる溶剤を用いたこと以外は、実施例1と同様にして導電ペーストを作製した。
(実施例3)
水添テルピネオール50重量%、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール50重量%からなる溶剤を用いたこと以外は、実施例1と同様にして導電ペーストを作製した。
(実施例4)
水添テルピニルアセテート50重量%、2−エチル−1−ヘキサノール50重量%からなる溶剤を用いたこと以外は、実施例1と同様にして導電ペーストを作製した。
(実施例5)
重合度1000、エチレン含有量10mol%、ケン化度88mol%の変性ポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例1と同様の方法により変性ポリビニルアセタールを得た。
得られた変性ポリビニルアセタールのブチラール化度は56モル%であり、水酸基量は22モル%であった。
得られた変性ポリビニルアセタールを用いた以外は、実施例1と同様にして導電ペーストを作製した。
(実施例6)
重合度800、エチレン含有量10mol%、ケン化度88mol%の変性ポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例1と同様の方法により変性ポリビニルアセタールを得た。
得られた変性ポリビニルアセタールのブチラール化度は51モル%であり、水酸基量は22モル%であった。
得られた変性ポリビニルアセタールと、市販のポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製、エスレックB「BM−S」)とを重量比6:4で混合した混合樹脂をバインダー樹脂として用いた以外は、実施例1と同様の方法により導電ペーストを作製した。
(実施例7)
重合度600、エチレン含有量5mol%、ケン化度93mol%の変性ポリビニルアルコールを用い、アセタール化させるアルデヒドとしてn−ブチルアルデヒドとアセトアルデヒド混合物(重量比で2:1)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により変性ポリビニルアセタールを得た。
得られた変性ポリビニルアセタールのアセタール化度は63モル%であり、水酸基量は25モル%であった。
得られた変性ポリビニルアセタールを用いた以外は、実施例1と同様の方法により導電ペーストを作製した。
(実施例8)
無機固形分としてニッケル微粒子(三井金属社製、「2020SS」)30重量部に対して、変性ポリビニルアセタール樹脂10重量、分散剤としてオレイン酸0.05重量部及び溶剤59.95重量部を加えた以外は、実施例1と同様の方法により導電ペーストを作製した。
(実施例9)
無機固形分としてニッケル微粒子(三井金属社製、「2020SS」)70重量部に対して、変性ポリビニルアセタール樹脂1重量、分散剤としてラウリルアミン5重量部及び溶剤24重量部を加えた以外は、実施例1と同様の方法により導電ペーストを作製した。
(実施例10)
無機固形分としてニッケル微粒子(三井金属社製、「2020SS」)50重量部に対して、変性ポリビニルアセタール樹脂5重量、分散剤としてラウリン酸ジエタノールアミド5重量部及び溶剤40重量部を加えた以外は、実施例1と同様の方法により導電ペーストを作製した。
(実施例11)
無機固形分としてニッケル微粒子(三井金属社製、「2020SS」)50重量部に対して、変性ポリビニルアセタール樹脂5重量、分散剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(日光ケミカルズ社製、NIKKOL TDP−2)1重量部及び溶剤44重量部を加えた以外は、実施例1と同様の方法により導電ペーストを作製した。
(比較例1)
バインダー樹脂として、エチルセルロース(ダウ社製、「STD型」)を用い、溶剤として、α−テルピネオールを用いた以外は、実施例1と同様の方法により導電ペーストを作製した。
(比較例2)
バインダー樹脂として、アクリル樹脂(ローム&ハース社製、「B−66」)を用い、溶剤として、α−テルピネオールを用いた以外は、実施例1と同様の方法により導電ペーストを作製した。
(比較例3)
バインダー樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業製、エスレックB「BM−S」)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により導電ペーストを作製した。
(比較例4)
溶剤として、α−テルピネオールを用いた以外は、実施例1と同様の方法により導電ペーストを作製した。
(評価)
実施例1〜11及び比較例1〜4で作製したバインダー樹脂及び導電ペーストについて以下の方法により評価を行った。
結果を表1に示した。
(1)バインダー樹脂の熱分解性の評価
バインダー樹脂10mgを窒素雰囲気中で、昇温速度10℃/分で、常温から700℃まで加熱し、生成した熱分解残渣量を測定した。
(2)セラミックグリーンシート積層体の熱分解性及びデラミネーション発生の評価
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業製、エスレックB「BM−S」、重合度800)10重量部を、トルエン30重量部とエタノール15重量部との混合溶剤に加え、攪拌溶解し、更に、可塑剤としてジブチルフタレート3重量部を加え、攪拌溶解した。得られた樹脂溶液に、セラミック粉末としてチタン酸バリウム(堺化学工業製「BT−01(平均粒径0.3μm)」)100重量部を加え、ボールミルで48時間混合してセラミックスラリー組成物を得た。得られたスラリー組成物を、離型処理したポリエステルフィルム上に、乾燥後の厚みが約5μmになるように塗布し、常温で1時間風乾し、熱風乾燥機、80℃で3時間、続いて120℃で2時間乾燥させてセラミックグリーンシートを得た。
セラミックグリーンシートを5cm角の大きさに切断し、これにスクリーン印刷用導電ペーストをスクリーン印刷たものを100枚積重ね、温度70℃、圧力150kg/cm、10分間の熱圧着条件で圧着して、セラミックグリーンシート積層体を得た。
得られたセラミックグリーンシート積層体を窒素雰囲気で、昇温速度3℃/分で450℃まで昇温し、5時間保持後、更に昇温速度5℃/分で1350℃まで昇温し、10時間保持してセラミック焼結体を得た。得られたセラミック焼結体について目視にて観察し、以下の基準によりセラミックグリーンシート積層体の熱分解性を評価した。
○:均一に焼結されており、セラミックパウダー以外のものは認められない
△:シート内に黒色の点状のものが一部まれに確認される
×:シート内に黒色の点状のものがかなり多く確認される
更に、この焼結体を常温まで冷却した後、半分に割り、ちょうど50層付近のシートの状態を電子顕微鏡で観察し、セラミック層と導電層とのデラミネーションの有無観察し、以下の基準により接着性を評価した。
○:デラミネーションなし
×:デラミネーションあり
(3)スクリーン印刷性の評価
300メッシュのポリエステル版を用いて、20本/cmのラインパターンを連続して印刷したときに、印刷に不具合が発生したときの回数をカウントした。
(4)シートアタック性の評価
セラミックグリーンシートの片面に導電ペーストを乾燥後の厚みが約2μmになるようにスクリーン印刷法により印刷し、グリーンシートの表面(印刷面)及び裏面(ポリエステルフィルム面)を目視及び拡大顕微鏡で観察(シートアタック性の評価)し、以下の基準によりシートアタック性を評価した。
○:皺やクラックが認められなかった
×:皺やクラックが認められた
Figure 0004302589
本発明によれば、セラミックグリーンシートとの接着性に優れデラミネーションを発生せず、熱分解性に優れ、しかもスクリーン印刷性にも優れるとともに、シートアタックが発生することのない導電ペーストを提供できる。

Claims (6)

  1. バインダー樹脂、導電性成分を含む無機固形分、び、溶剤を含有する導電ペーストであって、
    前記バインダー樹脂は、下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造単位からなる変性ポリビニルアセタール樹脂を含有するものであり、
    前記溶剤は、炭素数6〜10の長鎖アルキル基を有するカルボン酸系溶剤及び/又は炭素数6〜10の長鎖アルキル基を有するアルコール系溶剤を含有する
    ことを特徴とする導電ペースト。
    Figure 0004302589
    式中、Rは、炭素数1〜20の直鎖又は枝分かれ状のアルキル基を表し、Rは、水素、炭素数1〜20の直鎖、枝分かれ状若しくは環状のアルキル基又はアリール基を表す。また、nは1〜8の整数を表す。更に、変性ポリビニルアセタール樹脂中、一般式(3)で表される構造単位の含有量は1〜20モル%、一般式(4)で表される構造単位の含有量は30〜78モル%である。
  2. 更に、溶剤は、カルビトール類、セロソルブ類及びカルビトールエステル類からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有することを特徴とする請求項1記載の導電ペースト。
  3. 炭素数6〜10の長鎖アルキル基を有するカルボン酸系溶剤及び/又は炭素数6〜10の長鎖アルキル基を有するアルコール系溶剤は、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、2−エチル−1−ヘキサノール、及び、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノールからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の導電ペースト。
  4. は、CH又はCであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の導電ペースト。
  5. 更に、分散剤を含有し、前記分散剤は、脂肪酸、脂肪族アミン、アルカノールアミド又はリン酸エステルであることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の導電ペースト。
  6. バインダー樹脂1〜10重量%、導電性成分を含む無機固形分30〜70重量%、分散剤0.05〜5重量%を含有し、他の全量が溶剤成分であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の導電ペースト。
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