JP5989487B2 - スラリー組成物及びセラミックグリーンシート - Google Patents
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Description
このような積層電子部品は、一般的には次のような工程を経て製造されている。まず、ポリビニルアセタール樹脂やポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂等の有機バインダー樹脂を、有機溶剤に溶解した溶液に可塑剤、分散剤等を添加した後、セラミック原料粉末を加え、ボールミルやジェットミル等により均一に混合し、脱泡後に一定粘度を有するセラミックスラリー組成物を得る。このスラリー組成物をドクターブレード、リバースロールコーターなどを用いて、離型処理したPETフィルムまたはSUSプレート等の支持体面に流延成形する。これを加熱等により溶剤等の揮発分を溜去させた後、支持体から剥離してセラミックグリーンシートを得る。
しかしながら、粒子径が小さいセラミック粉末は均一に分散させることが難しいことから、混合液を長時間に渡って撹拌しなければ充分に分散せず、撹拌に過大なエネルギーや時間を要する等の問題が生じていた。
しかしながら、このような方法では、バインダー樹脂との相溶性が悪いと逆に分散性を悪化させるという問題があった。
また、積層セラミックコンデンサの製造では、セラミックスラリー組成物を作製した後、塗工するまでに数日間の保管期間が設けられる場合があるが、特許文献1の方法では、保管後の粘度が大幅に増加するという問題が発生していた。このような粘度の増加は、塗工等の加工性低下を引き起し、シート成形や導体パターンの形成が困難になるという問題があった。また、焼結後の成型体の強度が低下してクラック等の不具合が生じていた。
また、特許文献3には、キレート化剤としてβ−ジケトンを増粘防止添加剤として加える方法が開示されている。
しかしながら、この方法は、使用できるバインダー樹脂がアクリル系のみに限られており、ブチラールをバインダーとして使用すると、積層セラミックコンデンサ等の製品にした際にデラミネーションが発生し、歩留まりが悪くなるという問題があった。
更に、特許文献1〜3の方法では、長期的なスラリーの分散安定性も不充分であり、分散性低下によって、セラミックグリーンシートの強度が低下したり、表面の凹凸が大きくなったりして、得られる積層セラミックコンデンサの電気特性が低下するという問題も生じていた。
上記無機化合物は、Cu、B、Al、Ti、Zr、Sn、V、Mg、Cr、Mn、Co、Y、Mo、Zn及びアルカリ土類金属からなる群より選択される少なくとも1種類の元素を含有する。なかでも、B及びアルカリ土類金属からなる群より選択される少なくとも1種類の元素を含有することが好ましい。なお、上記アルカリ土類金属は、Ca、Sr、Ba、Raである。
特に、上記元素の酸化物、水酸化物、窒化物、炭化物、炭酸塩、硫酸塩等が挙げられる。具体的には例えば、酸化銅、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化バナジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化マンガン、酸化イットリウム、酸化モリブデン、酸化カルシウム、ホウケイ酸ガラス、チタン酸バリウム、窒化アルミニウム、酸化ホウ素、ホウ酸、硫酸チタニル、三塩化チタン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
上記バインダー樹脂は、分子内に水酸基を有するバインダー樹脂である。
上記α−オレフィンとして、例えば、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンチレン、へキシレン、シクロヘキシレン、シクロヘキシルエチレン、シクロヘキシルプロピレンが挙げられる。なかでも、エチレンが好ましい。
また、上記ポリビニルアルコール樹脂として、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸等のチオール化合物の存在下で、上記ビニルエステルとエチレンとを共重合し、その後、ケン化することで得られる末端変性ポリビニルアルコール樹脂を用いてもよい。
上記その他のエチレン性不飽和単量体として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)フマル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びそのナトリウム塩、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
なお、本明細書中、バインダー樹脂として、ポリビニルアセタール樹脂を用いる場合は、合成前の原料であるポリビニルアルコール樹脂の重合度をポリビニルアセタール樹脂の重合度とする。
また、上記中和工程の前後に、水等を用いて得られたポリビニルアセタール樹脂を洗浄することが好ましい。なお、洗浄水中に含まれる不純物の混入を防ぐため、洗浄は純水で行うことがより好ましい。
上記R1〜R3は、炭素数2以上の炭化水素に加えて、酸素等の原子からなる官能基を有していてもよい。
上記R1〜R3が芳香環を有するものを用いる場合、R1〜R3は炭素数が2〜10であることが好ましい。
これらのなかでも、グリセリン、アセチルサリチル酸が特に好ましい。
上記有機溶剤を含有することで、バインダー樹脂と無機化合物との凝集を緩和させることができ、スラリーの分散性が著しく向上する。
また、上記有機溶剤としては、特にエタノール及びトルエンからなる混合溶媒を用いることが好ましい。上記混合溶媒を用いることによって、スラリー組成物の分散性を更に向上させることができる。
このように、無機分散液と樹脂溶液とを別々に作製、混合する方法を用いることで、一括で混合する方法と比較して、無機化合物の凝集を抑えることができ、それに伴ってバインダー樹脂が凝集し、分散性が低下することを妨げることができる。
(ポリビニルアセタール樹脂の合成)
ポリビニルアルコール(平均重合度1700、ケン化度98モル%)193gを純水2900gに加え、90℃の温度で約2時間拡販し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸20gとn−ブチルアルデヒド115gとを添加し、液温を15℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃とし、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗、及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d6(ジメチルスルホキサシド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてブチラール化度を測定したところ、ブチラール化度は65モル%であった。
ホウケイ酸ガラスの粉末(コアフロント社製、平均粒子径2μm)100重量部、グリセリン0.25重量部を、トルエン25重量部とエタノール25重量部との混合溶剤に加えた後に、直径2mmのセラミックボールを80ml加え、ボールミル(セイワ技研工業社製 BM−10)を用い、回転数100rpmで8時間撹拌することにより、無機分散液を作製した。
得られたポリビニルアセタール樹脂0.8重量部をエタノール5重量部とトルエン5重量部との混合溶剤に加え、攪拌溶解することにより、樹脂溶液を作製した。
得られた無機分散液に樹脂溶液を添加しボールミルにて回転数100rpmで180分間攪拌することにより、スラリー組成物を得た。
(無機分散液の作製)において、グリセリン0.25重量部に代えて、表1に示す添加剤0.25重量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてスラリー組成物を得た。
(無機分散液の作製)において、ホウケイ酸ガラスの粉末(コアフロント社製、平均粒子径2μm)100重量部に代えて、表1に示す無機化合物100重量部を用いた以外は、参考例1と同様にしてスラリー組成物を得た。
(ポリビニルアセタール樹脂の合成)
ポリビニルアルコール(平均重合度1700、ケン化度80モル%)193gを純水2900gに加え、90℃の温度で約2時間拡販し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸20gとn−ブチルアルデヒド115gとを添加し、液温を15℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃とし、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗、及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d6(ジメチルスルホキサシド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてブチラール化度を測定したところ、ブチラール化度は47モル%であった。
ホウケイ酸ガラスの粉末(コアフロント社製、平均粒子径2μm)100重量部、グリセリン0.25重量部を、トルエン25重量部とエタノール25重量部との混合溶剤に加えた後に、直径2mmのセラミックボールを80ml加え、ボールミル(セイワ技研工業社製 BM−10)を用い、回転数100rpmで8時間撹拌することにより、無機分散液を作製した。
得られたポリビニルアセタール樹脂0.8重量部をエタノール5重量部とトルエン5重量部との混合溶剤に加え、攪拌溶解することにより、樹脂溶液を作製した。
(スラリー組成物の作製)
得られた無機分散液に樹脂溶液を添加しボールミルにて回転数100rpmで180分間攪拌することにより、スラリー組成物を得た。
(無機分散液の作製)において、グリセリンの添加量を0.5重量部とした以外は、参考例1と同様にしてスラリー組成物を得た。
(無機分散液の作製)において、グリセリン0.25重量部を添加しない以外は、参考例1と同様にしてスラリー組成物を得た。
(無機分散液の作製)において、グリセリン0.25重量部に代えて、表1に示す添加剤0.25重量部を用いた以外は、参考例1と同様にしてスラリー組成物を得た。
(1)組成物の評価
(1−1)粘度
得られたスラリー組成物について、レオメーター(Bohlin社製 Jemini)を用いて23℃、回転数1(1/s)における粘度を測定した。また、23℃で一週間放置した後の粘度についても測定し、1週間経過前後での増粘率を計算した。得られた増粘率について、以下の基準で評価した。
◎ 100%未満
○ 100%以上、300%未満
△ 300%以上、500%未満
× 500%以上
(分散性評価溶液の作製)
エタノール5重量部とトルエン5重量部との混合溶剤に、得られたスラリー組成物0.1重量部を添加し、撹拌することにより、分散評価用溶液を作製した。
(分散性評価)
得られた分散評価用溶液について、レーザー回折式粒度分布計(堀場製作所社製、LA−910)を用いて粒度分布測定を行い、平均粒子径を測定した。また、23℃で一週間放置した後の平均粒子径についても測定し、平均粒子径変化率を以下の基準で評価した。
◎ 30%未満
○ 30%以上、60%未満
△ 60%以上、100%未満
× 100%以上
(グリーンシートの作製)
離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、得られたスラリー組成物を乾燥後の膜厚が20μmとなるように塗工、乾燥してセラミックグリーンシートを作製した。
得られたセラミックグリーンシートについて、JIS B 0601(1994)に基づいて表面粗さRaを測定し、セラミックスラリーの表面粗さを評価した。また、23℃で一週間放置した後の表面粗さRaについても測定した。そして、表面粗さの変化率を以下の基準で評価した。
一般に、スラリー組成物の分散性が高いほど、セラミックグリーンシートの表面粗さは小さくなる。
◎ 20%未満
○ 20%以上、50%未満
△ 50%以上、80%未満
× 80%以上
JIS K 7113に準拠して、TENSILON(島津製作所製、AUTOGRAPH AGS−J)を用い、引張速度20mm/分の条件にて引張弾性率(MPa)の測定を行った。また、23℃で一週間放置した後の引張弾性率(MPa)についても測定した。そして、引張弾性率の変化率を以下の基準で評価した。
◎ 10%未満
○ 10%以上、20%未満
△ 20%以上、30%未満
× 30%以上
Claims (6)
- Cu、B、Al、Ti、Zr、Sn、V、Mg、Cr、Mn、Co、Y、Mo、Zn及びアルカリ土類金属からなる群より選択される少なくとも1種類の元素を含有する無機化合物、分子内に水酸基を有するバインダー樹脂、有機添加剤、及び、有機溶剤を含有し、
前記有機添加剤は、炭素数が6以上の炭化水素を有し、オルト位にエステル基及びカルボキシル基を有する化合物である
ことを特徴とするスラリー組成物。 - 無機化合物100重量部に対して、有機添加剤を0.01〜20重量部含有することを特徴とする請求項1記載のスラリー組成物。
- 炭化水素が芳香環を有し、かつ、炭素数が6〜10であることを特徴とする請求項1又は2記載のスラリー組成物。
- 無機化合物は、B及びアルカリ土類金属からなる群より選択される少なくとも1種類の元素を含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載のスラリー組成物。
- バインダー樹脂は、ポリビニルアルコール樹脂又はポリビニルアセタール樹脂であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のスラリー組成物。
- 請求項1、2、3、4又は5記載のスラリー組成物を用いてなることを特徴とするセラミックグリーンシート。
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