JP3972032B2 - グリーンシート用スラリー組成物、及びグリーンシートとその製造方法 - Google Patents

グリーンシート用スラリー組成物、及びグリーンシートとその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP3972032B2
JP3972032B2 JP2003367961A JP2003367961A JP3972032B2 JP 3972032 B2 JP3972032 B2 JP 3972032B2 JP 2003367961 A JP2003367961 A JP 2003367961A JP 2003367961 A JP2003367961 A JP 2003367961A JP 3972032 B2 JP3972032 B2 JP 3972032B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
green sheet
additive
dispersion medium
slurry
density
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2003367961A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2004168642A (ja
Inventor
交市 茂野
亨 岡内
博司 加賀田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Corp
Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Panasonic Corp
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Panasonic Corp, Matsushita Electric Industrial Co Ltd filed Critical Panasonic Corp
Priority to JP2003367961A priority Critical patent/JP3972032B2/ja
Publication of JP2004168642A publication Critical patent/JP2004168642A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3972032B2 publication Critical patent/JP3972032B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Compositions Of Oxide Ceramics (AREA)
  • Producing Shaped Articles From Materials (AREA)
  • Ceramic Capacitors (AREA)

Description

本発明は、積層構造を有する、コンデンサやインダクタ、あるいはこれらを含む積層複合部品等に用いられるグリーンシート用スラリー組成物、及びグリーンシートとその製造方法に関するものである。
近年、電子部品の小型化、高機能化を目的として、積層構造を有するコンデンサやインダクタ、あるいはこれらを含む積層複合部品等、積層デバイスの生産が進んでいる。
以下に、図2(a)-(c)を用いて積層デバイスの作成プロセスについて説明する。原料である1種類以上の無機粉体と、バインダー、分散剤、可塑剤、分散媒等を所定量調合し、スラリーとなし、媒体撹拌ミルなどで混合・分散を行い、出来る限り分散性の良好なスラリーを調製する。
次に、このスラリーをフィルム上に、膜厚を制御し、ドクターブレード方式、あるいはダイコーティング方式により塗工し、乾燥することで密度及び厚みの均一なグリーンシート201を得る。図2(a)に示すように、前記グリーンシート201上に、必要に応じてパンチングあるいはレーザによりビアホール202と呼ばれる穴の穴開け加工を行った後、スクリーン印刷によって導電性ペーストを前記穴開け加工された部分に印刷し、穴を埋める。その後、再びグリーンシート201面に導電性ペーストによるスクリーン印刷、感光性ペーストを用いたパターンニング、めっき工法などにより、設計された回路パターンの電極203を形成する。次に、これらのグリーンシート201複数枚を各々のシートに形成された電極パターンが電気的に接続するよう、高い位置精度で積層204し、積層体を形成する。
そして、得られた積層体をシート面の垂直方向に加圧し、図2(b)に示すような積層体を圧着する。これらを所定の温度で脱可塑剤、脱バインダー、焼成を行う。最後に表面に部品実装等を行うことにより積層デバイスを得る。
上記積層デバイス作成プロセスにおいて、電極が印刷されたグリーンシートを複数枚積層し、加圧したとき、図2(c)に示すような積層体のデラミネーション205が発生しないように、互いのグリーンシートの界面における密着性が良好であることが要求される。前記密着性は、グリーンシートの厚み方向圧縮率やグリーンシート密度に強い影響を受け、圧縮率が高く、グリーンシート密度が低いことが必要である。これについて図3を用いて説明する。
図3のように粒子301が充填しておらず、グリーンシート302の密度が低いとき、粒子間の隙間303は多い。従って、これらのグリーンシート302を複数枚積層し、加圧304したとき、粒子間の隙間303が多く含まれているため、グリーンシート面に対する垂直方向の圧縮率は大きくなる。
電極305が印刷されたグリーンシート同士を積層、加圧しても、電極305の膜厚分の段差をグリーンシート同士の圧縮によって埋めることができるので、グリーンシート同士の密着性は良好である。
このように、積層性を向上させるには、グリーンシートを低密度化し、積層・加圧したときにグリーンシートの厚み方向圧縮率を高くしなければならない。なぜなら、電極が印刷されたグリーンシート同士を積層、加圧するとき、電極の膜厚分の段差をグリーンシート同士の圧縮によって埋めなければならないからである。この段差を埋められないと、積層不良、すなわちデラミネーションが発生してしまうことになる。
特に、近年の積層電子部品の高集積化にともなって、グリーンシート薄層化の傾向が強まっている。グリーンシート厚に対する電極厚の割合が大きくなる傾向にあり、場合によっては100%前後となることもある。このため、より高い圧縮性を持ったグリーンシート、言い換えればより低密度のグリーンシートが要求される。また、積層・加圧時に電極自身も圧縮変形する場合もあるが、電極が強固で圧縮変形しにくい場合はさらにより高い圧縮性を持ったグリーンシート、言い換えればさらにより低密度のグリーンシートが要求される。
上記目的を達成するためには、スラリーの高い分散性を確保しつつ、グリーンシートの低密度化を可能とするスラリー組成物及びグリーンシートの製造方法が必要である。
従来のグリーンシートを低密度化する方法として、表面粗化されたセラミックシートの製造方法が挙げられる。これはセラミック粉体、有機バインダー及び溶剤を主成分として含有するスラリーからセラミックシートを製造する方法において、該溶剤が有機バインダーの可溶性溶剤及び難溶性または不溶性溶剤との混合溶剤であることを特徴とする表面粗化されたセラミックシートの製造方法である。密度について述べられていないが、表面粗化することで密度も下がると考えられる(例えば、特許文献1参照。)。
また、従来の別のグリーンシートを低密度化すると考えられる方法としてセラミックス基板の製造方法が挙げられる。これはセラミック原料粉末、焼結助剤、樹脂、可塑剤等を溶剤によりスラリー化してグリーンシートを形成するセラミックス基板の製造方法において、前記溶剤の種類と量をコントロールすることによりグリーンシート密度をコントロールすることを特徴とするセラミックス基板の製造方法である(例えば、特許文献2参照。)。
特開平4−37643号公報 特開平8−217546号公報
スラリー中無機粉体の分散・凝集の度合いによって無機粉体粒子の見かけの粒子径が変わり、スラリーからグリーンシートを作成したときの表面性やグリーンシート密度に強い影響を与える。このことを無機粉体粒子径とグリーンシート密度の関係として示したのが図1である。積層デバイスの高集積化に対応するために、グリーンシート密度境界線101よりも低いグリーンシート密度と、粒子径境界線102よりも低い粒子径の両者を満たす107の領域のようなスラリー及びグリーンシートが要求されている。
しかし、特許文献1のようにグリーンシート密度を下げる方法をとると、スラリー中無機粉体の見かけ粒子径が増加し、分散性の低下を招く。スラリー分散性が低下すると、グリーンシートを成形したときの厚みばらつき、密度ばらつき、表面性の低下が顕著になる。また、前記特許文献1はセラミックシートと他の物質の接着を強固とするため、セラミックシートの表面を粗化している。一般にグリーンシート表面が粗化されるようなスラリーの分散性は良好ではないため、グリーンシート密度や厚みを安定化することは困難である。以上の理由により、前記特許文献1では、グリーンシート低密度化とスラリー高分散性を両立することは困難である。
特許文献2においてもグリーンシート密度を下げる方法をとると、スラリー中無機粉体の見かけ粒子径が増加し、分散性の低下を招く。例えば、上記特許文献2の実施例によると、溶剤の種類が芳香族系の溶剤と樹脂に不溶性の低級アルコール系溶剤の混合物である。低級アルコールの量が多いと、前記特許文献1と同様、グリーンシート密度は低下するがスラリー中無機粉体の見かけ粒子径が増加し、分散性の低下を招く。また、メタノールやエタノールのような低級アルコールは蒸発速度が速く、表面性が悪化する。また、グリーンシート塗工直後にスラリーから蒸発してしまうため、密度低下効果が十分に発揮されない。以上の理由により、前記特許文献2では、低グリーンシート密度と高分散性を両立することは困難である。
このように、上記従来の技術ではスラリー中無機粉体粒子径とグリーンシート密度は図1の104や105のプロットで表され、粒子径と密度は曲線103に示すようなトレードオフの関係にあり、スラリーの高い分散性を確保しつつ、グリーンシートの低密度化を実現できなかった。このことが積層デバイス高集積化の課題となっていた。
本発明は、前記従来の問題を解決するため、スラリー中の無機粉体の分散性を確保しつつグリーンシートを低密度化し、高積層性を両立することができるグリーンシート用スラリー組成物、及びグリーンシートとその製造方法を提供する。
本発明のグリーンシート用スラリー組成物は、1種類以上の無機粉体Aと、バインダー溶液Bと、添加剤Cを含むスラリー組成物であって、
前記バインダー溶液Bは、互いに相溶性のあるバインダーDと分散媒Eと可塑剤を含むスラリー構成要素Fから構成され、
前記添加剤Cは、前記バインダーDに相溶性はないが、前記バインダー溶液Bに相溶性があり、沸点が前記分散媒Eより高温である添加剤であり、かつ極性を有する多価アルコール系の添加剤であり、
前記無機粉体Aを100重量部としたとき、前記バインダーDが1〜20重量部、前記分散媒Eが10〜120重量部、前記スラリー構成要素Fが1〜20重量部、前記添加剤Cが1〜20重量部の範囲であり、
さらに分散媒Gを含み、前記分散媒G、前記添加剤Cに相溶性はなく、前記バインダーDに相溶性があり、前記組成C、D、E、Fより構成されるバインダー溶液Hに相溶性があり、沸点が前記添加剤Cより低温である、ことを特徴とする。
本発明のグリーンシートは、前記のグリーンシート用スラリー組成物を用いて作成されるグリーンシートであって、前記グリーンシート成形後の乾燥工程で前記分散媒Eが蒸発する工程と、残りの前記添加剤Cと前記分散媒Gが相分離する工程と、前記分散媒Gが蒸発する工程と、前記添加剤Cが蒸発する工程とを経ることにより作成されるものである。
本発明のグリーンシートの製造方法は、前記のグリーンシート用スラリー組成物を用いてグリーンシートを製造する方法であって、前記添加剤Cを、前記添加剤Cを除くスラリー組成物構成要素の混合後に添加することを特徴とする。
本発明のスラリー組成物及びこれを用いたグリーンシートの製造方法によれば、スラリー中の無機粉体の高い分散性を保持しながら、グリーンシートを低密度化することができる。これにより、密度及び厚みの均一でかつ高い積層性を持ったグリーンシートを作成することが可能となる。
また、本発明の方法で調整されたスラリーを用いて作製したグリーンシートを、コンデンサやインダクタ、あるいはこれらを含む積層複合部品等の積層デバイスのグリーンシートに用いることにより、積層不良を抑制でき、かつロット振れの少ない安定した品質の積層部品を生産することができる。
本発明は、1種類以上の無機粉体Aと、バインダー溶液Bと、添加剤Cを含むスラリー組成物であって、前記バインダー溶液Bは、互いに相溶性のあるバインダーDと分散媒Eと可塑剤を含むスラリー構成要素Fから構成され、前記添加剤Cは、前記バインダーDに相溶性がないが前記バインダー溶液Bに相溶性があり沸点が前記分散媒Eより高温である添加剤である。無機粉体Aを除くスラリー組成物構成要素、つまりバインダー溶液Bと添加剤Cの混合溶液は均一相を形成することができるので、分散性を良好にすることができる。また、分散性を確保しつつ、グリーンシート成形・乾燥時の相分離によりグリーンシートをポーラス化して低密度化することができる。
前記添加剤Cは極性を有することが好ましい。通常表面極性を有する前記無機粉体Aの表面に前記添加剤が吸着することができるので、前記無機粉体A間の距離が広がり、分散性を良好にすることができる。
前記添加剤Cは多価アルコール系添加剤が好ましい。通常表面極性を有する前記無機粉体Aの表面に前記添加剤が吸着することができるので、前記無機粉体A間の表面特性が多価アルコール系に含まれるOH基で保持されつつ、前記無機粉体A間の距離が広がり、分散性を良好にすることができる。
前記無機粉体Aを100重量部としたとき、前記バインダーDが1〜20重量部、前記分散媒Eが10〜120重量部、前記可塑剤等のスラリー構成要素Fが1〜20重量部、前記添加剤Cが1〜20重量部の範囲が好ましい。前記組成範囲で無機粉体Aを除くスラリー組成物構成要素、つまりバインダー溶液Bと添加剤Cの混合溶液は均一相を形成することができ、分散性を良好にすることができる。
前記組成A、C、D、E、Fに加えて、さらに分散媒Gを含み、前記分散媒Gは、前記添加剤Cに相溶性がなく前記バインダーDに相溶性があり前記組成C、D、E、F、Gより構成されるバインダー溶液Hに相溶性があり沸点が前記添加剤Cより低温であることが好ましい。分散媒Gは添加剤Cと相溶性がないために、無機粉体Aの表面に吸着した添加剤Cと前記バインダー溶液との親和性が減少し、微小粒子径をもつ無機粉体Aのみが選択的に軽い凝集構造を形成する。一方、バインダー溶液は均一相を形成するので、スラリー分散性をほとんど低下させることなく、無機粉体Aの微凝集によるグリーンシートの低密度化が可能となる。
前記分散媒Eと前記分散媒Gの重量比は、100:0〜25:75の間であり、前記添加剤Cは多価アルコール系添加剤が好ましい。この組成範囲内であることにより、無機粉体Aの凝集をスラリー分散性が悪化しない程度に保ちつつ、グリーンシートの低密度化を実現することができる。
前記分散媒Gの沸点は分散媒Eの沸点より高いことが好ましい。分散媒Gの沸点が分散媒Eと添加剤Cの沸点の間であるため、グリーンシート成形後の乾燥時において、最初に分散媒Eが蒸発して、分散媒Gと添加剤Cの相分離を促進する。このため、さらなる低密度化が可能になる。
本発明のグリーンシートは、グリーンシート厚みに対するグリーンシート上に形成した電極厚みの割合が1に近づく、あるいは1を超える場合、積層工程においてデラミネーションを抑制する効果が極めて大きくなる。
本発明の製造方法は、均一なスラリーとした後で前記添加剤Cを添加することで、スラリー均一化前の添加剤Cの局所的相分離により生じる無機粉体Aの凝集を防ぐことができる。
以下、本発明の詳細について実施形態を示して説明する。なお、以下の各実施形態では、積層構造を有する、コンデンサやインダクタ、あるいはこれらを含む積層複合部品等の積層デバイスに用いられるグリーンシートを製造する場合を例にとって説明する。
(実施形態1)
本発明の実施形態について図1、図4及び図5を用いて説明する。
原料である0.1〜10μmの平均粒径を有する無機粉体A100重量部に対して、互いに相溶性のあるバインダーD1〜20重量部と分散媒E10〜120量部と可塑剤等のスラリー構成要素F1〜20重量部を配合及び攪拌し、バインダー溶液を作製した。次に、このバインダー溶液に無機粉体Aを図7の撹拌機401の投入口402より添加した。攪拌タンクのモータ403により所定の時間撹拌したスラリー404を、ポンプ405で循環させながら、媒体攪拌ミル406で所定の時間、強分散を行った。次に、前記バインダーDに相溶性がなく前記バインダー溶液Bに相溶性がありかつ沸点が前記分散媒Eより高温である添加剤C1〜20重量部を投入口402から上記スラリー404に添加し、24時間の撹拌機401による撹拌を行った。このようにして調製したスラリー403中の無機粉体粒子径を測定した。さらに、これらのスラリー403をドクターブレード方式で膜厚を制御し、一律の条件でコンベア407により送られるフィルム408上に塗工、乾燥炉409により乾燥し、グリーンシート410を作成、その密度を測定した。
図1の106に本発明のスラリーの粒子径及びグリーンシート密度をプロットした。その結果、粒子径、グリーンシート密度ともに、101、102以下となり、従来存在していたスラリー中無機粉体粒子径とグリーンシート密度の曲線103で表されるようなトレードオフの関係に従わない、107領域を満たすことができた。以下に詳細を説明する。
まず、スラリー中の無機粉体粒子径について述べる。本発明の添加剤Cは、バインダーDに相溶性がないが、互いに相溶性のあるバインダーD・分散媒E・可塑剤等のスラリー構成要素Fから構成されてなるバインダー溶液Bには相溶性があることにより、無機粉体Aを除くスラリー組成物構成要素、つまりバインダー溶液Bと添加剤Cの混合溶液は均一相を形成することができる。そのため、無機粉体Aを混合・分散したとき、無機粉体間に、無機粉体A同士を引き離し、障害物としての役割を果たすバインダーBが均一に分布し、無機粉体A間距離を広げることができる。これにより、分散性の良好で無機粉体A粒子径の小さい均一なスラリーを調製することができ、密度及び厚みの均一なグリーンシートを塗工することが可能となる。
さらに、添加剤Cが極性を有する添加剤であれば、通常表面極性を有する無機粉体Aの表面に、前記添加剤Eが吸着して表面吸着層を形成し、前記無機粉体A間距離を広げることができる。これにより、分散性のさらに良好で無機粉体A粒子径の小さい均一なスラリーを調製することができ、密度及び厚みの均一なグリーンシートを塗工することが可能となる。
さらに、添加剤Cが多価アルコール系添加剤であれば、OH基等の極性基を複数個有するため、通常表面極性を有する無機粉体Aの表面に、前記添加剤Eが吸着して表面吸着層を形成し、前記無機粉体A同士の表面極性による斥力をOH基で保持しつつ、前記無機粉体A間距離を広げることができる。これにより、分散性のさらに良好で無機粉体A粒子径の小さい均一なスラリーを調製することができ、密度及び厚みの均一なグリーンシートを塗工することが可能となる。
次に、グリーンシート密度について、図5を用いて説明する。図5(a)に示すフィルム501上にスラリーを塗工した直後のグリーンシート502からわかるように、本発明のグリーンシート502はバインダー溶液B503と、スラリーに含まれる凝集粒子が壊れた凝集のない一次粒子504から構成される。まず、沸点の低い分散媒E505がグリーンシート表面から蒸発乾燥する。このため、バインダーDと分散媒Eと可塑剤等のスラリー構成要素Fと添加剤Cからなる混合溶液503の分散媒E成分が減少し、バインダー溶液が1相領域を形成できない組成に近づく。そして、バインダー溶液が1相領域を形成できない飽和濃度に達した時点で図5(b)に示すようにグリーンシート502中に均一に存在する添加剤Cの少なくとも一部が微小液滴506としてバインダー溶液から相分離する。このとき分散媒E505の蒸発が進んでおり、グリーンシート502は流動性を失っており、添加剤の微小液滴506の流動は妨げられ、均一に分布する。その後、添加剤C507が蒸発すると、図5(c)に示すように、添加剤C507の部分が気泡508として残るために、グリーンシート502の密度を低下することができる。
また、本実施形態で作成したグリーンシートを、光学顕微鏡を用いて、透過光及び斜光下で観察したところ、凝集物及びピンホールが認められなかった。つまり、均一相を形成するバインダー溶液中に無機粉体Aを混合・分散し、均一なスラリーとした後で添加剤Eを添加することで、スラリー均一化前の添加剤Cの局所的相分離より生じる無機粉体Aの凝集を防ぐことができた。また、上記凝集によるグリーンシート作成時のピンホールを抑制することができた。
以上により、分散性の良好で無機粉体の凝集が少なく、無機粉体粒子径の小さい均一なスラリーを調製することができ、密度及び厚みの均一でかつ低密度のグリーンシートを作成することが可能となった。
なお、上記実施形態ではスラリーの構成材料を上記のようにしているが、本発明におけるスラリー構成材料が一種類以上の無機粉体A、バインダーD、分散媒E、可塑剤等のスラリー構成要素Fを含むものであれば特に制限はない。無機粉体Aは鉄、ステンレス、アルミなどの金属、アルミナ、シリカ、ジルコニア、カルシア、マグネシア、チタン酸バリウム、フェライトなどのセラミック、シリケート系、ボレート系などのガラス、のうち少なくとも1つを含む。バインダーDはポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、エチルセルロース、ポリウレタンなどが用いられる。分散媒Eはアセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどのアルコール類などが挙げられる。可塑剤等のスラリー構成要素のうち、可塑剤はジブチルフタレート、ベンジルブチルフタレートなどのフタル酸エステル系、ポリエチレングリコールなどのグリコール系、アジピン酸ジオクチルなどのアジピン酸エステル系などが挙げられる。また、分散剤や消泡剤なども可塑剤等のスラリー構成要素Fとして適宜用いることができる。
添加剤Cとしては、多価アルコール系等の添加剤が用いられるが、特に制限はない。ところで、溶媒の極性をあらわす指標の1つとして、溶解度パラメータが挙げられる。溶解度パラメータδは、一般的に次の式により表すことができる。δ=(△E/V)1/2,(ここに、△Eはモル蒸発エネルギー、Vはモル体積)。本発明における極性を有する添加剤Cの溶解度パラメータは通常10(cal1/2・cm-3/2)以上であり、12(cal1/2・cm-3/2)以上であることが望ましい。
多価アルコール系の添加剤としては、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ネオフェニルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、メチル-2-ペンタンジオール-1,3、ジメチル-2,2-ブタンジオール-1,2、ジメチル-2,2-ブタンジオール-1,3、エチレンシアノヒドリン、グリセリン等が用いられるが、特に制限はない。
また、上記実施形態ではスラリー分散後、添加剤Cを投入口402から上記スラリー404に添加し、24時間の撹拌機401による撹拌を行ったが、分散開始から添加剤E投入までの時間は特に制限はなく、前記添加剤Cを除くスラリー構成要素が均一に混合されたあとであればよい。また、添加剤C添加後の撹拌時間も特に制限はなく、添加剤Cが均一に混合されていればよい。
(実施形態2)
本発明の別の実施形態について図1、図6及び図7を用いて説明する。
スラリー組成を、上記実施形態1のスラリー組成物における分散媒Eの50重量%を、分散媒Gで置き換えた組成とした。すなわち、本実施形態におけるバインダー溶液はバインダーDと分散媒Eと可塑剤等のスラリー構成成分Fと分散媒Gからなる混合溶液である。グリーンシート製造方法は上記実施形態1と同様の方法をとった。
図1の108に本発明のスラリーの粒子径及びグリーンシート密度をプロットした。その結果、粒子径は106とほぼ同様であり102以下を確保できた。そして、グリーンシート密度は106よりもさらに減少させることができ、従来存在していたスラリー中無機粉体粒子径とグリーンシート密度の曲線103で表されるようなトレードオフの関係に従わない、107領域を満たすことができた。以下に詳細を説明する。
まず、スラリー中の無機粉体粒子径について述べる。分散媒Gは、添加剤Cに相溶性がないが、前記バインダーDと前記分散媒E前記可塑剤等のスラリー構成要素Fと前記添加剤Cからなる混合溶液に相溶性があるために、バインダーDと分散媒Eと可塑剤等のスラリー構成要素Fと添加剤Cと分散媒Gから構成されてなる混合溶液は均一相を形成することができる。さらに、分散媒Gは添加剤Cに相溶性がないために、添加剤Cが表面に吸着した無機粉体Aと前記バインダー溶液との親和性を減少させ、無機粉体Aのうち微小粒子径をもつ粉体をファンデルワールス引力により選択的に極めて軽い凝集構造を形成させることが可能となる。このため、分散性が良好で無機粉体Aの凝集を制御したスラリーを調製することができ、密度及び厚みの均一なグリーンシートを塗工することが可能となる。
次に、グリーンシート密度について、図6を用いて説明する。図6(a)に示すフィルム501上にスラリーを塗工した直後のグリーンシート502からわかるように、グリーンシート502はバインダー溶液503と、スラリーに含まれる凝集粒子が壊れた凝集のない一次粒子504と、微小粒子による凝集粒子601から構成され、微小粒子による凝集粒子601には凝集粒子内部の隙間602が存在する。まず、沸点の低い分散媒E及び分散媒G603がシート表面から蒸発乾燥する。このため、バインダーDと分散媒Eと可塑剤等のスラリー構成要素Fと添加剤Cと分散媒Gからなるバインダー溶液601の分散媒E及び分散媒G成分が減少し、混合溶液が1相領域を形成できない組成に近づく。そして、混合溶液が1相領域を形成できない飽和濃度に達した時点で図6(b)に示すようにグリーンシート502中に均一に存在する添加剤Cの少なくとも一部が微小液滴506としてバインダー溶液から相分離する。このとき分散媒E及び分散媒G603の蒸発が進んでおり、グリーンシート502は流動性を失っており、添加剤の微小液滴506の流動は妨げられ、均一に分布する。その後、添加剤507が蒸発すると、図6(c)に示すように、添加剤の部分が気泡508として残るために、グリーンシート502の密度を低下することができる。そして微小粒子による凝集粒子601には凝集粒子内部の隙間602が存在することにより、グリーンシート502のさらなる密度低下が可能となる。分散媒Gの沸点が分散媒Eと添加剤Cの沸点の間であれば、シート成形後の乾燥時において、最初に分散媒Eが蒸発して、分散媒Gと添加剤Cの相分離が促進される。このため、さらなる低密度化が可能になる。
また、本実施形態で作成したグリーンシートを、光学顕微鏡を用いて、透過光及び斜光下で観察したところ、凝集物及びピンホールが認められなかった。つまり、均一相を形成するバインダー溶液中に無機粉体Aを混合・分散し、均一なスラリーとした後で添加剤Eを添加することで、スラリー均一化前の添加剤Cの局所的相分離より生じる無機粉体Aの凝集を防ぐことができた。また、上記凝集によるグリーンシート作成時のピンホールを抑制することができた。
以上により、分散性の良好で無機粉体の凝集が少なく、無機粉体粒子径の小さい均一なスラリーを調製することができ、密度及び厚みの均一でかつ低密度のグリーンシートを作成することが可能となった。
なお、上記実施形態の分散媒Gとしてはメチルアミルケトン、ジエチルケトンなどのケトン類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などが挙げられるが本発明の範囲に含まれるものであれば特に制限はない。
また、バインダーD、分散媒E、可塑剤F、添加剤C、分散媒Gがそれぞれ複数種類であってもよい。例えば、分散媒Eが分散媒E1と分散媒E2より構成されていてもよい。ただし、この場合、分散媒E1、分散媒E2それぞれが分散媒Eとしての性質を有しており、かつ分散媒E1と分散媒E2に相溶性があることが必要である。
また、上記実施形態ではスラリー分散後、添加剤Cを投入口402から上記スラリー404に添加し、24時間の撹拌機401による撹拌を行ったが、分散開始から添加剤C投入までの時間は特に制限はなく、前記添加剤Cを除くスラリー構成要素が均一に混合されたあとであればよい。また、添加剤C添加後の撹拌時間も特に制限はなく、添加剤Cが均一に混合されていればよい。
上記実施形態ではスラリーの分散手段をビーズミルやボールミルなどの媒体撹拌ミルとしたが、高速撹拌ミル、サンドミル、振動ミルなど他の分散手段を用いることも可能である。より強分散を行ったときにスラリー分散性は上昇し、添加剤Cによる低密度化の効率は上昇する。
また、グリーンシート作成方法は、ドクターブレード方式による塗工のほか、ロールコーティング方式あるいはダイコーティング方式等を用いることもできる。また、乾燥炉の温度は、用いる粉体や分散媒の種類、配合比率によって異なるが、通常は10〜130℃、好ましくは60〜100℃で乾燥するのがよい。また、乾燥後のグリーンシート厚みは通常1〜500μm、好ましくは5〜100μmであるのがよい。
また、スラリー分散性の指標として無機粉体粒子径を用いたが、レオロジー特性やゼータ電位などの他の指標を用いることも可能である。さらに前記無機粉体粒子径として、累
積平均径D50を用いるのが好ましいが、D10やD90など粒度分布の累積値を用いてもよい。また、体積平均径や面積平均径、個数平均径を用いることも可能である。
また、積層性の指標としてグリーンシート密度を用いたが、上記のとおり、グリーンシート密度とグリーンシート厚み方向圧縮率には図7で示すような相関があるため、これら他の指標を用いてもよい。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
原料である1.0±0.1μmの平均粒径を有するアルミナ及びガラスを主成分とする無機粉体A100重量部に対して、バインダーDとしてポリビニルアセタール樹脂(積水化学製)10重量部、分散媒E、可塑剤等のスラリー構成要素Fとしてフタル酸ジブチル5重量部、添加剤Cを所定量配合・攪拌し、バインダー溶液を数種類作製した。次に、このバインダー溶液に無機粉体Aを添加し、スラリーとした。以下に本実施例として使用した分散媒E及び添加剤C、比較例で使用した溶剤について説明する。
(試料1) 比較例として、特許文献1の実施例に準拠した組成で行った。無機粉体、バインダー、及び可塑剤は実施例1と同様で、トルエン/2−プロパノール=1/4を80重量部を分散媒とし、水8重量部を添加剤とした。
(試料2) 比較例として、特許文献2の実施例に準拠した組成で行った。無機粉体、バインダー、及び可塑剤は実施例1と同様で、キシレン80重量部を分散媒とし、メタノール8重量部を添加剤とした。
(試料3) 比較例として、無機粉体、バインダー、及び可塑剤は実施例1と同様で、エタノール80重量部を分散媒、ジエチレングリコール3重量部を添加剤とした。
(試料4〜13) 分散媒E及び添加剤Cの組み合わせを表1の試料3〜12に示した。なお、試料10〜12についてはバインダーDとして、試料1〜9よりも極性の強いポリビニルアセタール樹脂(積水化学製)を使用した。
前記スラリーについて、撹拌機で1時間の予備混合を行った後、直径φ1mmのジルコニアを用いた媒体撹拌ミルで周速10m/secの強分散を行い、スラリーを調製した。このようにして調製したスラリー中の無機粉体粒度分布を“マイクロトラックHRA”(Honeywell社製商品名)で測定し、粒子径の累積平均径D50を算出した。分散終了後に、ダイコーティング方式で乾燥後の膜厚が20μmとなるように膜厚を制御し、毎分8mの塗工速度で塗工、乾燥炉温度80〜100℃で乾燥、グリーンシートを作成し、その密度を測定した。
さらに、これらグリーンシートを100×100mmに切断し、図2(a)に示す電極パターンを形成し、300kgf/cm2の条件で加圧、積層体を作成した。なお、電極厚みは12μmであった。このとき、デラミネーション発生の有無を観察し、デラミネーションが発生したとき×、デラミネーションが発生しなかったときを〇とし、積層性の指標とした。さらに、図10に示すように、グリーンシート201を100×100mmに切断し、グリーンシート201の2層分の両面に内部電極1001を形成、引き出し電極1002やビア1003により回路を形成し、積層、平面方向無収縮焼成し、焼成後厚みが約20μmとなるコンデンサを1パレットあたり100個、これを5パレット、つまり500個作成した。LCRメーターによりその容量値を測定し、ばらつきを変動係数(%)(=100×標準偏差/平均値)で評価した。変動係数が1%を超えるときを×、超えないときを〇とし、分散性の指標とした。
結果を図8及び表1に示した。
Figure 0003972032
無機粉体粒子径及びグリーンシート密度の関係を示した図8より、試料1及び試料3について、グリーンシート密度は要求されるグリーンシート密度境界線101以下となったものの、粒子径が上昇し、粒子径境界線102以下とならなかった。試料2について、粒子径は要求される粒子径境界線102以下に到達するものの、グリーンシート密度が上昇し、グリーンシート密度境界線101以下とはならなかった。試料4についても、粒子径は要求される粒子径境界線102以下に到達するものの、グリーンシート密度が上昇し、グリーンシート密度境界線101以下とはならなかった。これに対して、添加剤E含む試料5〜9は、粒子径、グリーンシート密度ともに、101、102以下となり、107領域を満たすことができた。また添加剤Cの重量部が増えるとともに、粒子径、グリーンシート密度ともに小さくなる傾向にあることが確認できた。なお、上記図8では試料4〜9までしか示していないが、試料10〜13においても同様の傾向が見られた。
また、表1よりグリーンシート密度の高い試料2及び試料4はデラミネーションの発生が認められた。粒子径の大きい試料1及び試料3は容量ばらつきが大きかった。試料2、3の粒子径は101以下であるが、容量ばらつきが大きかった。これは、低級アルコールであるメタノールの蒸発が早すぎるため、表面に荒れが生じたことによると考えられる。これに対して、添加剤Cを含む試料5〜12については、デラミネーションの発生もなく、容量ばらつきも小さいことが確認できた。また、コンデンサ作成の際、ビアの接続も良好であった。
(実施例2)
原料である1.0±0.1μmの平均粒径を有するアルミナ及びガラスを主成分とする無機粉体A100重量部に対して、バインダーDとしてポリビニルアセタール樹脂(積水化学製)10重量部、分散媒E、可塑剤等のスラリー構成要素Fとしてフタル酸ジブチル5重量部、添加剤C、分散媒Gを所定量配合・攪拌し、バインダー溶液Bを数種類作製した。次に、このバインダー溶液Bに無機粉体Aを添加し、スラリーとした。その後、実施例1と同様のことを行った。以下に本実施例として使用した分散媒E、分散媒G及び添加剤Cについて説明する。
(試料6、14〜23)分散媒E、分散媒G及び添加剤Cの組み合わせを表2の試料6及び14〜23に示した。なお、試料14〜17についてはバインダーBとして、試料1〜9と同じバインダーを使用し、試料18〜23についてはバインダーBとして、試料14〜17よりも極性の強いポリビニルアセタール樹脂(積水化学製)を使用した。
結果を図9及び表2に示した。
Figure 0003972032
無機粉体粒子径及びグリーンシート密度の関係を示した図9より、分散媒Gを含む試料6、14〜16については、粒子径、グリーンシート密度ともに、101、102以下となり、107領域を満たすことができた。また14〜16について分散媒Gの重量部が増えるとともに、粒子径はほぼ一定でありながらグリーンシート密度はさらに小さくなる傾向にあることが確認できた。分散媒Eを含まない試料17については、スラリーの増粘が顕著に認められた。グリーンシート密度は要求されるグリーンシート密度境界線101以下となったものの、粒子径が上昇し、粒子径境界線102以下とならなかった。これは、分散媒Gを含むバインダー溶液が均一相を形成することができず、凝集を引き起こしたことによると考えられる。なお、図9では試料14〜17までしか示していないが、試料18〜23においても同様の傾向が見られた。
また、表2より試料6、14〜16、18〜23については、デラミネーションの発生もなく、容量ばらつきも小さいことが確認できた。また分散媒Gの重量部が増えても容量ばらつきはほとんど上昇しないことも確認できた。分散媒Gのみを含む試料17については、容量ばらつきが大きかった。
(実施例3)
上記実施例1及び2に示した試料6,16のスラリー組成について、無機粉体A及び添加剤C以外を配合・攪拌し、バインダー溶液を作製した。次に、このバインダー溶液に無機粉体Aを添加し、スラリーとした。前記スラリーについて、撹拌機で1時間の予備混合を行った後、直径φ1mmのジルコニアを用いた媒体撹拌ミルで周速10m/secの強分散を行い、スラリーを調製した。次に、添加剤Cを上記スラリーに添加し、24hの撹拌を行った。上記実施例1及び2に示した試料6、16のスラリー組成を本実施例の方法で調製したスラリーを試料24、25とした。ダイコーティング方式で乾燥後の膜厚が20μmとなるように膜厚を制御し、毎分8mの塗工速度で塗工、乾燥炉温度80〜100℃で乾燥、グリーンシートを作成した。これらグリーンシート200mm×10mを、光学顕微
鏡を用いて、透過光及び斜光下で観察し、直径が20μm以上の凝集物及びピンホールの個数をカウントした。また、このグリーンシートを用いて、グリーンシート1層の両端に内部電極を形成、積層、平面方向無収縮焼成し、焼成後厚みが約10μmとなるコンデンサを1パレットあたり100個、これを5パレット、つまり500個作成し、ショート不良の発生割合(不良個数/検査個数)を調べた。結果を表3に示す。
Figure 0003972032
表3より、添加剤Cを、添加剤C以外のスラリー構成成分分散後に添加した試料24及び25はグリーンシートの凝集物及びピンホールの個数及びコンデンサのショート不良ともにゼロとなることが確認できた。
(実施例4)
原料である0.6±0.05μmの平均粒径を有するアルミナを主成分とする無機粉体A100重量部に対して、バインダーDとしてポリビニルアセタール樹脂(積水化学製)10重量部、可塑剤等のスラリー構成要素Fとしてフタル酸ベンジルブチル8重量部、添加剤Cとしてエチレングリコール4重量部、分散媒Eとして1−ブタノールもしくはヘキサノール、分散媒Gとしてキシレンを、E:Gの比をそれぞれ100:0、80:20、60:40、40:60、20:80、0:100、EとGの合計を100重量部として配合・攪拌し、バインダー溶液Hを6種類作製した。次に、このバインダー溶液に無機粉体Aを添加し、スラリーとした。
(試料26〜31)分散媒Eをキシレンより沸点の低い1−ブタノールとし、キシレンの量を0、20、40、60、80、100重量部とした試料をそれぞれ26、27、28、29、30、31とした。
(試料32〜36)分散媒Eをキシレンより沸点の高いヘキサノールとした。キシレンの量を0、20、40、60、80重量部とした試料をそれぞれ32、33、34、35、36とした。
前記スラリーについて、撹拌機で1時間の予備混合を行った後、直径0.5mmのジルコニアを用いた媒体撹拌ミルで周速10m/secの強分散を行い、スラリーを調製した。このようにして調製したスラリー中の無機粉体粒度分布をマイクロトラックHRA(Honeywell社製)で測定し、粒子径の累積平均径D50を算出した。分散終了後に、ダイコーティング方式で乾燥後の膜厚が20、15、10μmとなるように制御し、毎分8mの塗工速度で塗工、乾燥炉温度80〜100℃で乾燥、3種類のグリーンシートを作成し、その密度を測定した。
さらに、これら膜厚の異なるグリーンシートを100×100mmに切断し、図2(a)に示す電極パターンを形成し、300kgf/cm2の条件で加圧、積層体を作成した。なお、電極厚みは12μmであった。このとき、デラミネーション発生の有無を観察し、デラミネーションが発生したとき×、デラミネーションが発生しなかったときを〇とし、積層性の指標とした。さらに、図10に示すように、10μm厚のグリーンシート201を100×100mmに切断し、グリーンシート201の2層分の両面に内部電極1001を形成、引き出し電極1002やビア1003により回路を形成し、積層、平面方向無収縮焼成し、焼成後厚みが約10μmとなるコンデンサを1パレットあたり100個、これを5パレット、つまり500個作成した。LCRメーターによりその容量値を測定し、ばらつきを変動係数(%)(=100×標準偏差/平均値)で評価した。変動係数が1%を超えるときを×、超えないときを〇とし、分散性の指標とした。
結果を図11及び表4〜5に示す。
Figure 0003972032
Figure 0003972032
図11にキシレンの重量%とシート密度、スラリー粒子径D50の関係を示すが、1−ブタノールやヘキサノール単独のときと比較してキシレン60%まではシート密度は下がり、粒子径もほとんど変わらない。キシレン80%以上のとき、シート密度はさらに下がるものの、スラリーの凝集が顕著であり、粒子径が急激に増大していることがわかる。また、分散媒Eが1−ブタノールである場合(試料27〜29)とヘキサノールである場合(試料33〜35)を比較したとき、粒子径は変わらないのに対し、シート密度は1−ブタノールである場合のほうが低下した。
本実施例ではシート厚みが20、15、10μmの3種であり、電極厚みが12μmである。シート厚みに対する電極厚みの割合が大きくなるような場合、積層時のデラミネーションが起こりやすくなる。キシレンを含有しないシートはシート厚みが15μmのときデラミネーションが発生した(試料26、32)。キシレンが60%以下の場合において、分散媒Eがヘキサノールであればシート厚みが10μmのときデラミネーションが発生した(試料33〜35)。これに対し、分散媒Eが1−ブタノールであればデラミネーションを抑制することができた(試料27〜29)。またキシレンが60%以下の場合において容量変動係数は1以下となり良好な特性を示した。
本発明にかかるスラリー組成物及びこれを用いたグリーンシートの製造方法は、スラリー中の無機粉体の高い分散性を保持しながら、グリーンシートを低密度化することができる。これにより、密度及び厚みの均一でかつ高い積層性を持ったグリーンシートを作成することができる、という効果を有し、積層構造を有する、コンデンサやインダクタ、あるいはこれらを含む積層複合部品等に用いられるグリーンシートにおいて、グリーンシートの材料であるスラリー組成物、及びグリーンシートとその製造方法として有用である。
スラリー中の無機粉体粒子径とグリーンシート密度の関係を示す図である。 (a)〜(c)は従来の積層デバイスの製造工程を示す模式断面図である。 従来の密度の低いグリーンシート同士を積層、加圧した模式断面図である。 本発明における実施形態1及び2のスラリー及びグリーンシート製造プロセスを示す図である。 (a)〜(c)は本発明における実施形態1のスラリーより作成したグリーンシートを示す模式断面図である。 (a)〜(c)は本発明における実施形態2のスラリーより作成したグリーンシートを示す模式断面図である。 本発明における実施形態1及び2のグリーンシート密度とグリーンシート厚み方向圧縮率の関係を示す図である。 本発明による実施例1のスラリー中の無機粉体粒子径とグリーンシート密度の関係を示す図である。 本発明による実施例2のスラリー中の無機粉体粒子径とグリーンシート密度の関係を示す図である。 本発明による実施例1で作成したコンデンサを示す部分断面図である。 本発明による実施例4のキシレン重量%とグリーンシート密度及びスラリー中の無機粉体粒子径D50との関係を示す図である。
符号の説明
101 グリーンシート密度境界線
102 粒子径境界線
103 従来のスラリー中の無機粉体粒子径とグリーンシート密度の関係
104 従来の分散性の良好であるスラリー中の無機粉体粒子径及びグリーンシート密度のプロット
105 従来の分散性の良好でないスラリー中の無機粉体粒子径及びグリーンシート密度のプロット
106 本発明における実施形態1のスラリー中の無機粉体粒子径及びグリーンシート密度のプロット
107 グリーンシート密度境界線101よりも低いグリーンシート密度と粒子径境界線102よりも低い粒子径を満たす領域
108 本発明における実施形態2のスラリー中の無機粉体粒子径及びグリーンシート密度のプロット
201,302,410,502 グリーンシート
202 ビアホール
203,305 電極
205 デラミネーション
301 粒子
303 粒子間の隙間
401 撹拌タンク
402 投入口
403 モータ
404 スラリー
405 ポンプ
406 媒体攪拌ミル
407 コンベア
408,501 フィルム
409 乾燥炉
503 バインダー溶液
504 一次粒子
505 分散媒E
506 添加剤Cの微小液滴
507 添加剤C
508 気泡
601 凝集粒子
602 凝集粒子内部の隙間
603 分散媒E及び分散媒G
1001 内部電極
1002 引き出し電極
1003 ビア

Claims (5)

  1. 1種類以上の無機粉体Aと、バインダー溶液Bと、添加剤Cを含むスラリー組成物であって、
    前記バインダー溶液Bは、互いに相溶性のあるバインダーDと分散媒Eと可塑剤を含むスラリー構成要素Fから構成され、
    前記添加剤Cは、前記バインダーDに相溶性はないが、前記バインダー溶液Bに相溶性があり、沸点が前記分散媒Eより高温である添加剤であり、かつ極性を有する多価アルコール系の添加剤であり、
    前記無機粉体Aを100重量部としたとき、前記バインダーDが1〜20重量部、前記分散媒Eが10〜120重量部、前記スラリー構成要素Fが1〜20重量部、前記添加剤Cが1〜20重量部の範囲であり、
    さらに分散媒Gを含み、前記分散媒G、前記添加剤Cに相溶性はなく、前記バインダーDに相溶性があり、前記組成C、D、E、Fより構成されるバインダー溶液Hに相溶性があり、沸点が前記添加剤Cより低温である、
    ことを特徴とするグリーンシート用スラリー組成物。
  2. 前記分散媒Eと前記分散媒Gの重量比が100:0〜25:75の間であり、前記添加剤Cが多価アルコール系添加剤である請求項1記載のグリーンシート用スラリー組成物。
  3. 前記分散媒Gの沸点が分散媒Eの沸点より高い請求項2に記載のグリーンシート用スラリー組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のグリーンシート用スラリー組成物を用いて作成されるグリーンシートであって、
    前記グリーンシート成形後の乾燥工程で前記分散媒Eが蒸発する工程と、残りの前記添加剤Cと前記分散媒Gが相分離する工程と、前記分散媒Gが蒸発する工程と、前記添加剤Cが蒸発する工程とを経ることにより作成されるグリーンシート。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載のグリーンシート用スラリー組成物を用いてグリーンシートを製造する方法であって、前記添加剤Cを、前記添加剤Cを除くスラリー組成物構成要素の混合後に添加することを特徴とするグリーンシートの製造方法。
JP2003367961A 2002-10-29 2003-10-28 グリーンシート用スラリー組成物、及びグリーンシートとその製造方法 Expired - Fee Related JP3972032B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003367961A JP3972032B2 (ja) 2002-10-29 2003-10-28 グリーンシート用スラリー組成物、及びグリーンシートとその製造方法

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002314933 2002-10-29
JP2003367961A JP3972032B2 (ja) 2002-10-29 2003-10-28 グリーンシート用スラリー組成物、及びグリーンシートとその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2004168642A JP2004168642A (ja) 2004-06-17
JP3972032B2 true JP3972032B2 (ja) 2007-09-05

Family

ID=32715773

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003367961A Expired - Fee Related JP3972032B2 (ja) 2002-10-29 2003-10-28 グリーンシート用スラリー組成物、及びグリーンシートとその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3972032B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4930817B2 (ja) * 2004-06-15 2012-05-16 日立金属株式会社 セラミックスラリー、セラミックグリーンシート、及びそれを用いた積層型電子部品
JP2006016258A (ja) * 2004-07-01 2006-01-19 Ngk Spark Plug Co Ltd 配線基板及びその製造方法
JP5029092B2 (ja) * 2007-03-28 2012-09-19 パナソニック株式会社 セラミックグリーンシートの製造方法
JP2010037146A (ja) * 2008-08-05 2010-02-18 Nippon Soken Inc 分散スラリーの調製方法及び分散スラリー製造装置
JP5989487B2 (ja) * 2012-09-27 2016-09-07 積水化学工業株式会社 スラリー組成物及びセラミックグリーンシート

Also Published As

Publication number Publication date
JP2004168642A (ja) 2004-06-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4389431B2 (ja) グラビア印刷用導電性ペーストおよびその製造方法、ならびに積層セラミック電子部品
JP2003187638A (ja) グラビア印刷用導電性ペーストおよびその製造方法、ならびに積層セラミック電子部品
JP2012226865A (ja) 導電性ペースト組成物
JP3972032B2 (ja) グリーンシート用スラリー組成物、及びグリーンシートとその製造方法
US6989110B2 (en) Electroconductive paste and method of producing the same
JPWO2005032785A1 (ja) 積層セラミック電子部品用の誘電体ペーストの製造方法
JP5429491B2 (ja) 無機材料スラリを用いた導電性ペーストおよび該ペーストの製造方法
JP5018542B2 (ja) 板状ニッケル粉及び板状ニッケル粉有機スラリーとそれらの製造方法、並びにそれらを用いた導電性ペースト
WO2015040916A1 (ja) 導電性ペーストおよびセラミック電子部品
JP2006181737A (ja) 複合セラミックグリーンシート、複合セラミックグリーンシートの製造方法及び多層セラミック基板の製造方法
JP4601438B2 (ja) グリーンシートの製造方法
JP4654673B2 (ja) 印刷用誘電体ペーストの製造方法および積層セラミック部品の製造方法
JP4392602B2 (ja) 導電性ペースト、及び導電性ペーストの製造方法
CN114641835A (zh) 层叠陶瓷电容器内部电极用导电膏组合物及其制造方法以及导电膏
JP4826086B2 (ja) 印刷用導電体ペーストの製造方法および積層セラミック部品の製造方法
JP2002255657A (ja) セラミックスラリー、セラミックグリーンシートおよび積層セラミック電子部品
JP2004269325A (ja) セラミックペーストの製造方法、及びセラミックペーストを用いた積層型セラミック電子部品の製造方法
JP3857005B2 (ja) セラミックグリーンシートおよび積層体の製法
JP2006351348A (ja) 導電性ペーストの製造方法および積層セラミック電子部品の製造方法
JP4012795B2 (ja) 導電性ペースト
JP2005104070A (ja) スラリーの製造方法、セラミックグリーンシート、および導電性ペースト
JP5459951B2 (ja) セラミックスラリーの製造方法
JP6844299B2 (ja) 導電性ペーストの製造方法
JP2001138317A (ja) セラミックスラリー組成物、セラミックグリーンシート及び積層セラミック電子部品の製造方法
JP2003209026A (ja) 積層型電子部品の製法

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20060809

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060829

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20061023

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20061205

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070116

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070301

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070327

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20070517

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20070611

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 3972032

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100615

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100615

Year of fee payment: 3

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100615

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110615

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120615

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130615

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130615

Year of fee payment: 6

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees