JP5429491B2 - 無機材料スラリを用いた導電性ペーストおよび該ペーストの製造方法 - Google Patents
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Description
先ず導電体層を形成するために、チタン酸バリウム(BaTiO3)を主成分として、これとポリビニルブチラール等の有機バインダーからなる誘電体グリーンシート上に導電性粉末を主成分とし、これを樹脂バインダーおよび溶剤を含むビヒクルに分散させた内部電極となる導電性ペーストを所定のパターンで印刷、乾燥させて溶剤を除去して乾燥膜を形成する。次に、乾燥膜を形成した誘電体グリーンシートを多層に積み重ねた状態で加熱圧着して一体化した後に切断し、酸化性雰囲気または不活性雰囲気中において500℃以下で脱バインダー処理する。その後、内部電極が酸化しないように還元雰囲気中にて1300℃程度で加熱焼成を行い、次いで、焼成チップを塗布、焼成後、外部電極上にニッケルメッキなどを施してMLCCを作製する。
しかしながら、導電性金属粉末およびセラミック粉末の微粒化が進むにしたがって、凝集のし易さが増大してくるため、従来の3本ロール法によるせん断力だけでは十分に分散した導電性ペーストが製造できず、平滑な乾燥塗膜や高い乾燥膜密度を得る事は困難であった。
しかしながら、上記の分散手法の場合、セラミック粉末では過粉砕やコンタミの混入、導電性金属粉末では変形してしまうことなどによって十分な分散が得られない問題があった。
(1)無機粉末の「濡れ」、すなわち2次粒子表面および、2次粒子内部の空隙に存在する空気が溶剤および分散剤により置換される過程、
(2)分散機により2次粒子が分散、粉砕される過程、
(3)分散、粉砕した粒子表面に分散剤が吸着し、粒子の「再凝集防止」が行われる過程、の3つの過程を含んでいる。
これらの分散過程がうまく連動しない場合には、無機粉末の分散性に大きく影響し、後工程における「フィルターろ過時間が長くなるため生産コストの上昇」や導電性ペーストの平滑な塗膜および高い乾燥膜密度を得ることが難しくなるため、「ペースト塗膜の品質低下」にもつながる等のデメリットを生じる。
(a)「大気圧下において高速攪拌した後、減圧脱泡する前処理分散方法」において、単に高速撹拌するだけでは処理物内の泡を除去できないため、「泡の巻き込み」による2次粒子内部の一次粒子表面の「濡れ」が不十分となり、結果として、フィルターの処理時間が長くなったり、平滑な導電性ペースト塗膜が得られないなどの問題が生じる。さらに、この前処理物を単に減圧脱泡する場合でも、泡が抜けるまでペーストを長時間放置しなければならないという問題点があり、生産コストの低減に至らない。例えば、泡は大気圧の760分の1の真空圧下に曝されると大気圧下の体積の約760倍に膨張し、この体積膨張を利用して脱泡する場合、材料表面の泡は比較的容易に脱泡できるが、攪拌操作を同時に行わないと混合物内に大きな対流が生じないため、泡を効率的に除去できない。
第1工程:少なくとも無機材料粉末、分散剤および有機溶剤を含有する粗スラリ組成物を、常圧を基準として−100mmHg〜−760mmHgの減圧雰囲気下に保持して攪拌することにより脱泡を行いながら分散処理して前処理混練物を形成する工程。
第2工程:第1工程で作製した前処理混練物を、高圧ホモジナイザーによりさらに分散処理してスラリを作製する工程。
第3工程:第2工程で作製したスラリを、フィルターを用いて濾過する工程。
さらに、無機材料スラリを構成する無機粉末における導電性金属紛体が、導電性ペースト全量に対して30〜70質量%の含有量であることを特徴とするものである。
本発明におけるスラリ製造の第1工程は、無機材料粉末、分散剤および有機溶剤を含有する粗スラリ組成物を減圧雰囲気下に保持し、自転および公転方向に回転させながら攪拌する事で脱泡しながら分散処理して、前処理混練物を形成するものである。
このような自転並びに公転攪拌装置としては、例えばプライミクス株式会社製「T.K.ハイビスディスパーミックス」などの分散・混練装置が用いられる。
自転方向の回転数が1000rpm/分未満では、容器内の上下方向(高さ)の流れを作る力が弱くなり、泡を上面まで移動させることができない場合がある。また、公転方向の回転数が10rpm/分未満では、流動性が低下し、小さな遠心力しか得られないため、十分な攪拌ができない。
溶媒からは泡の放出と溶剤成分の蒸発が同時に起こっているが、−100mmHg以下の場合は、溶剤の蒸発を抑えながら泡を効果的に膨張させて放出させることができる。これに反して、減圧環境下にしないで混練を行う場合は、材料などから分離した泡がつぶれて小さくなって溶媒から除去できなくなる場合がある。
本発明におけるスラリ製造の第2工程は、第1工程で得られた前処理混練物を高圧ホモジナイザーにより、さらに分散処理する工程である。なお、高圧ホモジナイザーとは、一般に原料を高圧もしくは超高圧に加圧し、オリフィスを抜ける際のせん断力を利用して粉砕、分散、乳化を行うものである。
この高圧ホモジナイザーとしては、オリフィスから噴出したジェット流を壁に衝突させる分散方式、オリフィスから噴出したジェット流同士を衝突させる分散方式、さらにはオリフィスから噴出したジェット流(処理物)が、次のオリフィス以降の抵抗により滞留した背圧状態の処理物に衝突させることで、速度変化を生じて力をうけ、次のオリフィスへ進み、それが多段となって、大気圧に放出される分散方式などがあげられる。例えば、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス社製)、ナノマイザー(吉田機械興業株式会社製)、アルティマイザー(株式会社スギノマシン製)、Nano3000(株式会社美粒製)が挙げられる。
この通過速度の調整は、オリフィス径、処理圧等の条件を選択することによって可能であり、スラリのオリフィス通過速度を100〜1000m/secの範囲とし、より好ましくは400〜800m/secの範囲に調整することにより、粒子を適度な微細粒径のままで維持することができる。
次に、高圧ホモジナイザーにより分散処理して得られたスラリをフィルター濾過する。
その条件としては、99%カットろ過精度で、目開きが5μm以下のフィルターでろ過することが望ましい。その目開きが5μmを超えるフィルターを用いた場合、無機物の未分散物、粗大粒子などが除去できなくなり、誘電体層の厚みより大きい物質が混入していると、ペースト塗膜表面に突起が生じるため、平滑性が低下する。そのため、平滑性に優れた導電性ペーストを得ることができない。
本発明において、乾燥塗膜の平滑性および乾燥膜密度を向上させる導電性ペーストを得るには、そのニッケル粉末の粒径は、0.5μm以下の微粉末を用いると良い。
ニッケル粉末は凝集により粗大粒子が生じることがあり、ニッケル粉末の粒径が0.5μmを超えると、ペースト層を薄層化するときの成膜性が悪化し、所定の静電容量が得られないばかりでなく、粗大粒子の混入確率が増大して破壊電圧(BDV)が下がる不良を発生しやすくなる。また、薄層化対応となるような電極膜を形成しようとすると、乾燥膜で平滑性が不十分であり、かつニッケル粉末粒子の充填が不十分となり、所望の乾燥膜密度が確保できない。
本発明において、ニッケル粉末の粒径は、特に断らない限り比表面積をBET法に基づいて算出した粒径である。その算出式を数1に示す。
なお、必要に応じて、セラミック粉末は、ビーズミルや高圧ホモジナイザーなどの装置により分散・粉砕処理を施したセラミックスラリを導電性ペーストに焼結抑制剤として添加することができる。
ペースト中のバインダー樹脂量は、1.0〜5.0wt%が望ましく、特に2.0〜4.0wt%がより好ましい。1.0wt%未満ではスクリーン印刷に適した粘度を得ることが困難であり、5.0wt%を超えると脱バインダー時に残留カーボン量が増え、積層チップのデラミネ−ションを引き起こすので好ましくない。
しかし、時間の経過とともに粒子同士の衝突により、吸着層の静電反発力より勝って粒子同士が凝集すると考えられるため、平均分子量は200以上が良い。また、分子量が20000より大きいと、ビヒクルおよび溶剤との相溶性が低下したり、粒子同士の凝集を招いたり、分散性・保存安定性の低下を引き起こす場合がある。さらに、ペースト粘度が高くなる問題も生じる。
セラミック粉末の含有量が3質量部未満では、例えば、ニッケル粉末の焼結が制御できず、内部電極層と誘電体層の焼結収縮挙動のミスマッチが顕著になると共に、内部電極の焼結が低温から始まってしまい、内部電極層と誘電体層との焼結温度の差が大きくなるため、焼成クラックが発生してしまう。一方、セラミック粉末の含有量が25質量部を超えると、例えば、内部電極層から誘電体層中のセラミック粒子との焼結により誘電体層の厚みが膨張し、組成のずれが生じるため、誘電率の低下等の電気特性に悪影響を及ぼす。
ニッケル粉末(粒径:0.3μm)を85wt%、有機溶剤が14.5wt%、アニオン系分散剤が0.5wt%とした粗スラリ組成物を、圧力が−650mmHgの減圧雰囲気下に保持し、自転方向に2500rpm/分、公転方向に25rpm/分に回転させながら攪拌脱泡する前処理分散を行い、前処理混練物を形成した。次いで、得られた前処理混練物を、200MPaの処理圧、ダイヤモンド製オリフィス径を0.1mm、処理回数を5回とした条件の高圧ホモジナイザーを行い、ニッケルスラリを作製した。このニッケルスラリを目開きが2.0μmのデプスタイプフィルターにより濾過して、最終のニッケルスラリを得た。
上記無機材料スラリの作製で作製したニッケルスラリ中に含まれたニッケル含有量が50wt%、ビヒクルが3.5wt%、アニオン系分散剤が0.5wt%、ターピネオールが46wt%となるように各成分を混合し、3本ロールにて混練して導電性ペーストを作製した。なお、ビヒクルは樹脂成分としてエチルセルロースが9wt%、有機溶剤としてターピネオール91%からなり、加熱して作製した。この作製した導電性ペーストの粒度分布、および導電性ペーストによる乾燥膜の表面粗さRzを、下記測定法によって測定し、その結果を表1に示した。
(a)粒度分布
前処理方法が異なるニッケルスラリの最終的な分散性を比較するために、上記フィルター処理直前のスラリの粒度分布のD50を測定した。
なお、粒度分布測定は日機装社製のマイクロトラックにより測定した。
粒度分布をフィルター処理前で比較した理由は、前処理攪拌条件の相違がニッケル粉の分散性に及ぼす影響が、フィルター処理によって判別できなくなることを避けるためである。フィルター処理前の粒度分布の相違は、フィルターの濾過効率や目詰まりの程度に影響する。すなわち、粒度分布が大きいものほど濾過時間が増大し、また目詰まりが多く発生するといった問題を生じるものである。
前処理方法が異なるニッケルスラリを用いて製造したニッケルペーストを、アプリケーター(ギャップ厚10μm)を用いてガラス基板上に塗布後、120℃で5分間、空気中で乾燥させ、乾燥膜を作製し、次いで、その乾燥膜を表面粗さ計(装置名;SURFCOM 551A、ピックアップ:スタイラス10μmR、ダイヤモンド90°円錐)を用い、Cut−off:1.6mm、測定範囲3.0mm、測定速度:0.6mm/secの条件にて、10点平均粗さ(Rz)を測定した。
ニッケル粉末(粒径:0.3μm)を85wt%、有機溶剤が14.5wt%、アニオン系分散剤を0.5wt%とした粗スラリ組成物を、減圧雰囲気下の圧力が−80mmHgに保持し、自転方向に2500rpm/分、公転方向に25rpm/分に回転させながら攪拌脱泡する前処理分散を行い、前処理混練物を形成した。次いで、得られた前処理混練物を200MPaの処理圧、ダイヤモンド製オリフィス径を0.1mm、処理回数を5回とした条件の高圧ホモジナイザーを行い、ニッケルスラリを作製した。このニッケルスラリを目開きが2.0μmのデプスタイプフィルターにより濾過し、最終のニッケルスラリを得た。
次いで、実施例1と同様にして導電性ペーストを作製した。
その導電性ペーストを用いて特性評価を行い実施例1と同様に、その結果を表1に示した。
ニッケル粉末(粒径:0.3μm)を85wt%、ターピネオールが14.5wt%、アニオン系分散剤を0.5wt%とした粗スラリ組成物を、常圧下で高速攪拌する前処理分散を行った。
次いで、実施例1と同様にして導電性ペーストを作製した。
その導電性ペーストを用いて特性評価を行い実施例1と同様に、その結果を表1に示した。
さらに、前処理混練条件が同じ減圧下であるが、減圧量が小さく、本発明の範囲を外れた条件で作製されたニッケルスラリ(比較例1A参照)と比較しても、D50値は約11%ほど小さくなっている。
また、前処理混練条件が同じ減圧下であるが、減圧量が小さく、本発明の範囲を外れた条件で作製されたニッケルスラリ(比較例1A参照)と比較しても、乾燥膜のRz値は約32%改善されているのがわかる。
セラミック粉末(粒径:0.03μm)が40wt%、有機溶剤が59wt%、アニオン系分散剤が1.0wt%である粗スラリ組成物を減圧雰囲気下の圧力が−650mmHgに保持し、自転方向に2000rpm/分、公転方向に20rpm/分に回転させながら攪拌脱泡する前処理分散を行い、前処理混練物を形成する。次いで、得られた前処理混練物を前述の高圧ホモジナイザーを用いて処理圧を200MPa、ダイヤモンド製オリフィス径を0.1mm処理回数を10回とした条件にて行い、セラミックスラリを得た。得られたセラミックスラリを目開きが0.8μmのメンブレンフィルターにより濾過し、最終のセラミックスラリを得た。
作製したセラミックスラリ中に含有されるセラミック粉末(粒径:0.03μm)の量を4.7wt%になる量のセラミックスラリと、ニッケル粉末(粒径:0.2μm)が47wt%、ビヒクル2.8wt%、アニオン系分散剤が0.5wt%、ターピネオールが45wt%となるように混合して3本ロールにて混練した。ビヒクルは、樹脂成分としてエチルセルロースが9wt%、有機溶剤としてターピネオール91%からなり加熱して作製したビヒクルとした。
そのニッケルスラリを、目開きが1.0μmのデプスタイプフィルターにより濾過し、最終のニッケルスラリを作製し、実施例1と同様にして導電性ペーストであるニッケルペーストを作製した。
そのニッケルペーストによる乾燥膜の表面粗さRa、乾燥膜密度(DFD)を下記測定法によって測定し、その結果を表2に示した。
セラミック粉末(粒径:0.03μm)が40wt%、有機溶剤が59wt%、アニオン系分散剤が1.0wt%とした粗スラリ組成物を常圧下で高速攪拌した後、実施例2と同じ条件で前処理分散を行いセラミックスラリを作製した。
次いで、実施例2と同様にして、ニッケルペーストを作製し、表面粗さRa、乾燥膜密度(DFD)を測定した。その結果を表2に示した。
比較例2の粗スラリ組成物を常圧下で高速攪拌し、次いで前処理分散を行わずに、ニッケル粉末(粒径:0.2μm)が47wt%、セラミック粉末(粒径:0.03μm)が4.7wt%、ビヒクルAが2.8wt%、アニオン系分散剤が0.5wt%、ターピネオールが45wt%の成分組成になるように混合したセラミックスラリを作製して3本ロールにて混練した。なお、ビヒクルAは樹脂成分としてエチルセルロースが9wt%、有機溶剤としてターピネオール91%からなり加熱して作製したビヒクルとした。
(c)非接触式表面粗さRaの測定
本発明における平均表面粗さの測定方法は、以下の方法を用いた。
アプリケーター(ギャップ厚5μm)を用いてガラス基板上にニッケルペーストを塗布後、120℃で5分間、空気中で乾燥させ、膜厚約3μmの乾燥膜を得る。次いで、乾燥膜について、光学的な方法、つまり位相シフト干渉方式により表面の突起を測定する。
具体的には、特定波長領域に限定された光源から光を、試料およびリファレンス鏡に照射し、試料およびリファレンス鏡に照射した光の干渉縞により表面状態を観察する。さらに言えば、試料を1/4波長ごとに光が照射される方向に移動させて光の干渉縞から表面状態を観察する。たとえば、光干渉式表面形状測定装置(WYCO製NT-1100)を用いて、乾燥膜の平均粗さを測定することができる。測定数は3箇所としている。
乾燥膜密度の測定は、ペーストをPETフィルム上に5cm×10cmの面積で膜厚30μmとなるように印刷後、120℃で40分間、空気中で乾燥させ、その乾燥したニッケルペースト乾燥膜を1×1cmに切断し、厚みと質量を測定して、下記数3によって乾燥膜密度を算出した。測定数は15箇所であり、得られた膜密度の平均値をその導電性ペーストの膜密度とした。
ここで、乾燥膜密度とは、導電性ペーストを乾燥させた後の密度のことである。
Claims (3)
- 無機材料スラリの製造方法であって、
下記の第1工程から第3工程を有することを特徴とする。
〔第1工程〕
少なくとも無機粉末、分散剤および有機溶剤を含有する粗スラリ組成物を、常圧を基準として−100mmHg〜−760mmHgの減圧雰囲気下に保持して攪拌することにより脱泡を行いながら分散処理して前処理混練物を形成する工程。
〔第2工程〕
前記前処理混練物を、高圧ホモジナイザーによりさらに分散処理してスラリを作製する工程。
〔第3工程〕
前記スラリを、フィルターを用いて濾過する工程。 - 無機材料スラリ、ビヒクル、有機溶剤を含有する導電性ペーストであって、
前記無機材料スラリが、請求項1に記載の無機材料スラリの製造方法によって形成されていることを特徴とする。 - 前記無機材料スラリを構成する無機粉末における導電性金属粉体が、前記導電性ペースト全量に対して30〜70質量%の含有量であることを特徴とする請求項2に記載の導電性ペースト。
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