JP2010233576A - ジフルクトース・ジアンヒドリドiii結晶の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ジフルクトース・ジアンヒドリドIII(di−D−fructofranose−1,2';2,3'dianhydride、以下、DFA IIIという)以外の糖及び各種不純物、特に臭いまでも除去したDFA III結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】純度60%以上のDFA IIIをR−Bx10以上の濃度で有するDFA III粗液に、粉末活性炭を0.1〜5%添加して攪拌した後、固液分離し(ケイソウ土濾過、メンブランフィルター濾過、限外濾過、連続遠心分離等)、分離液を濃縮した後、直ちに冷却結晶化して、高純度のDFA III結晶を製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ジフルクトース・ジアンヒドリドIII(Difructose dianhydride III:α−D−fructofuranose−β−D−fructofuranose−2',1:2,3'−dianhydride)(以下、DFA IIIということもある)結晶の製造方法に関するものであって、更に詳細には、DFA III含有液から高純度のDFA III結晶を、特に、再結晶処理を多数回くり返すことなく臭いまでも除去されて高度に精製されたDFA III結晶をきわめて効率よく得ることのできる工業的方法に関するものである。
ジフルクトース・ジアンヒドリドIII(difructose dianhydride III:DFA III)は、フラクトース2分子が1,2';2,3'で結合している難消化性二糖類であって(di−D−fructofuranose−1,2';2,3'dianhydride)、水への溶解性が高く、蔗糖の90〜95%程度を示すが、その甘味度は蔗糖の52%程度である。
DFA IIIは、最近の本出願人に属する研究者らの研究により、Ca等ミネラルの吸収促進作用を有することが明らかにされ(例えば、特許文献1参照)、今後、特に高齢者や乳幼児等にとって、医薬上、健康食品、特定保健用食品、その他飲食品上、有益な物質として期待されている。したがって、高純度のDFA IIIが、特に取扱いのうえからもまた加工のし易さからも、結晶化したDFA IIIの製造が、しかも研究試薬用のように小規模高コスト生産ではなく、大規模低コスト生産法の開発が待望されている。
DFA IIIは、従来、イヌリン又はイヌリン含有物(例えば、キクイモ、ゴボウ、チコリ等の抽出液)に、細菌又はそれが生産する酵素フラクトシルトランスフェラーゼであるイヌリンフラクトトランスフェラーゼを作用させてDFA III含有液を製造した後、これを更に処理して高濃度DFA III液を得ている。
例えば、DFA III含有液を活性炭カラムに通液してDFA IIIを吸着させた後、エタノールで溶離してDFA III含量の多い画分を回収し、蒸発乾固する方法が提案されているが(例えば、特許文献2、3参照)、この方法は実験室的な回収方法であって、工業的大量生産方法とはいい難いものである。また、上記酵素反応によって得た液をイオン交換樹脂によって精製し、これを濃縮乾固する方法も提案されているが(例えば、特許文献4参照)、DFA IIIの純度が低く、高純度のDFA III結晶を得る方法とはいい難いものである。しかも、従来の方法で結晶化したDFA III結晶は、他の不純物は除去できても、臭いまでは除去することができず、臭いの残留という欠点は不可避であった。たしかに再結晶によれば臭いの除去も一応は可能であるが、再結晶処理を多数回くり返す必要があり、そのたび毎に収率、歩留りが低下し、再結晶法は工業的な方法ではない。
このように、臭いも除去した高純度DFA III結晶、しかもこれを工業的に大量生産するのに成功した報告は未だなされていないのが現状である。
特開平11−43438号公報 特公昭56−26400号公報 特開平03−259090号公報 特開平01−285195号公報
上記したように、近年、DFA IIIについて有用な用途が開発されるに伴い、DFA IIIの需要が高まってきている。そして医薬用途に使用する場合はもちろんのこと飲食品用途に使用する場合においても、DFA III以外の糖及び各種不純物を除去した高純度DFA III結晶が要望されており、特に、これらの用途においては不純物の内、色のほかに臭いが結晶中に残存しないことが要望されている。しかしながら、従来の方法では、結晶から臭いを除くことがきわめて難しく、多数回再結晶処理をくり返すことなく、臭いまでも除去してきわめて高度に精製された結晶化DFA IIIを効率良く工業的に大量生産することはできず、当業界においてこの問題点を解決することが要望されている。
本発明は、上記のように、従来の結晶化方法では工業的に臭いを除去することができなかったのであるが(換言すれば、結晶化しても臭いが残存していたのであるが)、本発明方法ではそれをはじめて可能にしただけでなく、効率化、工業的大量生産にもはじめて成功したものである。
すなわち、本発明者らは、各方面から研究した結果、DFA III含有液を粒状活性炭充填カラムに通液するのではなく、DFA III含有液に少量の粉末状活性炭を加えて攪拌した後、これをケイソウ土濾過、メンブランフィルター濾過等の固液分離処理を行って得られた液状部の濃縮液を結晶化したところ、高純度のDFA III結晶がきわめて効率的に得られること、しかも純度95%以上、すなわち95〜99%ときわめてピュアーなDFA III結晶が得られることをはじめて見出した。また、この研究の過程において、DFA III含有液をクロマトグラフィー処理して得たDFA III画分は、これに活性炭を加え固液分離した後の液状部は直接結晶化することも可能であること、しかもこれらの方法で得られた結晶には臭いがないこともはじめて見出した。
本発明は、これら有用新知見に基づき更に検討研究を行った結果遂に完成されたものであって、従来なし得なかった臭いもなく高純度のDFA III結晶ないし顆粒状物の工業的大量生産の開発にはじめて成功したものであり、きわめて高価なDFA IIIを低コストで精製、結晶化すること、しかも従来わずかに実験室規模で行われていた再結晶を多数回くり返すことによる臭いの除去処理も実施する必要がないこともはじめて可能としたものである。
すなわち、本発明の実施形態は次のとおりである。
(1)純度60%以上のジフルクトース・ジアンヒドリドIII(以下、DFA IIIという)をR−Bx10以上の濃度で含有するDFA III粗液(イヌリンにアースロバクター エスピー(Arthrobacter sp.)AHU 1753株(FERM BP−8296)由来のイヌリンフラクトシルトランスフェラーゼ(デポリメライジング)(inulin fructotransferase(depolymerizing))を作用させて製造した酵素反応液を除く)に粉末活性炭を固形分に対して0.1%〜5%添加して清浄化した後、固液分離し、分離した液状部を濃縮した後、直ちに冷却結晶化すること、を特徴とする臭いまでも除去されたDFA III結晶の製造方法。
(2)液状部を濃縮した後、DFA IIIをR−Bx60以上の濃度で含有すること、を特徴とする(1)に記載の方法。
(3)冷却結晶化工程において、15〜20℃まで冷却して結晶化すること、を特徴とする(1)又は(2)に記載の方法。
(4)冷却結晶化工程において、23時間以上かけて冷却して結晶化すること、を特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の方法。
(5)DFA III粗液が、DFA III含有液、クロマトグラフィー処理して得たDFA III画分、結晶又は粗結晶シラップの少なくともひとつであること、を特徴とする(1)〜(4)のいずれか1つに記載の方法。
(6)粉末活性炭の平均粒径が15〜50ミクロンであり、最大粒径が200ミクロン以下であること、を特徴とする(1)〜(5)のいずれか1つに記載の方法。
(7)固液分離する方法が、濾過助剤を使用する濾過、メンブランフィルターを用いる方法、限外濾過膜を用いる方法から選ばれる少なくともひとつであること、を特徴とする(1)〜(6)のいずれか1つに記載の方法。
本発明によって、従来効率よく工業生産することができなかった高純度のDFA III結晶の工業生産にはじめて成功した。しかも、本発明によれば、特定の活性炭処理とDFA III含有液の純度向上との有機的結合によって、純度99w/w%にも達するきわめて高純度の精製されたDFA III結晶を効率的に工業生産できるだけでなく、従来法では再結晶を多数回くり返さなければ除去することができなかった結晶中の臭いの工業的且つ効率的除去にもはじめて成功したという著効も奏される。
このように、本発明に係るDFA III結晶は、単に純度が高いだけでなく、臭いがないというきわめて顕著な効果が奏されるので、医薬用途や飲食品用途に使用するのに特に適しており、例えばカルシウム吸収剤として自由に使用できる特徴も奏される。
DFA III結晶の製造フローの一例を示す。 クロマト処理による精製フローの例を示す。 各種イヌリン商品の液体クロマトグラムである。 MF(メンブランフィルター)濾過試験の結果を示す。
以下、本発明について詳述する。
本発明は、DFA III含有液を精製して高純度のDFA III結晶を効率的に工業生産するものである。DFA III含有液としては、DFA IIIを含有し後記する条件を満たす液状物をすべて包含するものであって、イヌリン又はイヌリン含有液にフラクトシルトランスフェラーゼを作用させて得たDFA III生成反応液のほか、DFA III化学合成液や本精製工程において生成する各種精製度のDFA IIIを含有する液体がすべて包含される。
例えばイヌリン(及び/又はイヌリン含有液)と酵素を用いてDFA IIIを製造する場合、イヌリンは、フラクトースが多数重合したもので、主にチコリ(あるいは、キクイモ、ゴボウ等)から抽出したものが使用されるため、重合度及び純度が異なるものが市販されているだけでなく、これを酵素によって分解すると、生成した反応液には、DFA III以外のフラクトース重合物、酵素、酵素源として使用した微生物、その培養物、色素、臭い等の不純物が含まれることは不可避であり、そのため、従来は、純粋なDFA III結晶又はその含有物を工業的に低コストで効率良く得るまでには至っていない。
酵素反応液の清浄法としては、既述のように、イオン交換樹脂及び活性炭カラムを用いる方法が知られているが(特許文献4及び2、3)、処理、操作が煩雑で効率的ではないだけでなく、他のフラクトース重合体を除去することがきわめて困難であるため、これらの重合体が残存してしまい、DFA III純度が低いという非常に大きな欠点は避けられないし、特に臭いが残存してしまう。
また、活性炭カラムを使用する方法は、DFA IIIのほか他のフラクトース重合体、色素等の不純物を非選択的に一旦活性炭に吸着せしめた後、エタノールを用いて各種画分を溶出し、DFA IIIリッチ画分を集めて回収するものであって、少量のしかも粉末状の活性炭を酵素反応液に添加して不純物を吸着し(DFA IIIはそのほとんどが液中に残留する)しかる後に粉末状活性炭を除去する本発明に係る清浄化方法とはその原理自体が相違することはもとより、操作方法、操作効率、精製度が全く異なり、しかも使用する活性炭の種類、粒度、使用量が全然相違しており、本発明とは全く別異の方法であって、本発明の特許性とは関係のないものである。両者は、方法自体が全く相違しているのである。
なお、特許文献4(イオン交換樹脂法)の実施例4において、キクイモ上清をセライト濾過して得た濾液を活性炭処理する工程が記載されているが、これは、キクイモ上清濾液は不純物が多くて後で行うイオン交換樹脂処理に支障をきたすためこれをスムースに実施する目的で行う前処理ないし最初の単なる部分精製工程であって、そもそも本発明の活性炭処理とは技術的意義を全く異にするものである。しかも、使用する活性炭の粒度、使用量についての規定もなければ、処理対象として特定純度のDFA IIIを特定濃度含有する特定のDFA III含有液(本発明におけるDFA III精製液)についての記載すらなく(キクイモ上清濾液が本発明でDFA III精製液として使用する特定したDFA III含有液でないことは明白である)、そのうえ、本発明においては活性炭によって清浄化した後には結晶化工程が行われるのに対して、この方法においてはイオン交換樹脂処理が行われていて全く相違しているだけでなく、そもそも結晶化自体が行われていない。ましてや脱臭もされていない。したがってこの方法も本発明に係る方法とは何らの関係もないものである。
このように従来技術とは全く異なる本発明を実施して高純度のDFA III結晶を高収率で製造するには、出発粗結晶化原料として、純度60%以上、好ましくは70%以上のDFA IIIをR−Bx60以上、好ましくは70以上の濃度で含有するDFA III粗液を使用するのが好適である。この特定のDFA III粗液を使用することにより、純度95%以上、あるいは99%以上の純粋なDFA III結晶を回収率35%以上(対イヌリン)で効率的に大量生産することができる。DFA III粗液としては、DFA III含有液、クロマトグラフィー処理して得たDFA III画分、結晶又は粗結晶シラップの少なくともひとつが使用される。
このDFA III含有液は、フラクトース重合度が10以上、好ましくは10〜100、更に好ましくは10〜60のイヌリンを酵素処理すれば得ることができるし、また、純度の低いDFA III含有液であっても、クロマトグラフィー(以下、クロマトということもある)処理して、上記した特定のDFA III画分を分画して回収してもよい。必要あれば濃縮、遠心分離、濾過その他の常法によって成分調整を行い、上記した組成を有するDFA III含有液を調製してもよい。
フルクトース単位を転移触媒して、DFA IIIの様なオリゴ糖を合成する酵素は、広義で「フラクトシルトランスフェラーゼ」である。フラクトシルトランスフェラーゼは、大きく2種類に大別される。(1)フルクトース単位(スクロースなどの2糖類を含む)を基質とし、これを加水・転移して、オリゴ糖を合成する酵素(場合として、多糖も合成する)。(2)イヌリンやレバンなどのフラクタンを基質とし、これを加水・転移して、オリゴ糖を合成する酵素である。発明者らがイヌリンからのDFA III製造に使用したのは、フラクトシルトランスフェラーゼの中でも、学名がイヌリンフルクトトランスフェラーゼであり、(2)の種類に属する。イヌリンフルクトトランスフェラーゼ(以後、単にIFTとする)を生成する微生物としては、アースロバクター属、クルイベロマイセス属、ストレプトマイセス属、エンテロバクター属に属する各種細菌、酵母、放線菌等が報告されており、これらを適宜使用することが可能である。これらの微生物を培養して、精製酵素、粗製酵素、酵素含有物、微生物培養物等の形態として適宜使用される。
その非限定例を以下に示す:Arthrobacter sp.;Arthrobacter ureafaciens IFO 12140;Arthrobacter globiformis IFO 12137;Arthrobacter pascens IFO 12139;Bacillus sp.;Kluyveromyces marxianus var.marxianus:Streptomyces sp.;Enterobacter sp.
これら微生物由来の酵素を使用する場合、分離精製した酵素のほか、粗精製酵素、微生物培養物、同処理物(培養上清、分離菌体、菌体破砕物等)も使用可能である。なお、DFA III結晶を食品用途に使用する場合には、酵素としてフラクトシルトランスフェラーゼ、特にIFTを使用するのが好適であって、上記微生物由来の酵素のほか、今回、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に平成15年(2003)2月18日付けでFERM BP−8296として寄託されたArthrobacter sp.AHU 1753株は、IFT生産能にすぐれているので、本菌株由来の酵素は好適に使用可能である。
なお、イヌリンの酵素分解によるDFA IIIの生成は、DFA III単独のものが生成されることが最も好ましいが、実際上ではDFA III以外のフラクトースの重合物が種々生成される。それが酵素分解液の純度の低下の原因となっている。このため、DFA IIIを結晶化するための原料として、イヌリン以外の不純物の混入量の出来るだけ少ないものや、また、DFA III以外のフラクトース重合物が生成しない酵素の選択が必要である。そして、このように精製されたDFA III含有液が得られれば、これをDFA III粗液として、直ちに本発明に係る清浄濾過、結晶化工程に入っていくことができる。
以下、結晶DFA IIIの製造フローの一例として図1に示した製造フローを参照しながら、本発明を詳細に説明する。
イヌリンをイヌリン分解酵素で処理した後、酵素を失活させて、DFA III含有液(酵素反応液)を得る。この際、高純度DFA III結晶を効率的に製造するには、原料イヌリンとしては、フラクトース重合度が10以上、好ましくは10〜60のものを使用するのがよい。酵素としては既述したものが適宜使用可能であり、酵素処理及び失活は常法にしたがえばよい。このようにして、R−Bx10以上、好ましくは15以上、更に好ましくは20以上、より好ましくは20〜30で、DFA III純度60%以上、好ましくは65%以上、更に好ましくは70%以上、更に好ましくは70〜85%のDFA III含有液を得る。化学合成によっても、同様にDFA III含有液を製造することができる。なお、原料イヌリンとしては、上記したようにフラクトース重合度が10以上のものが好適であるが、不純物を含有するイヌリン、例えばフラクトース重合度が5程度のものであっても、シラップの副生量が多くなり、循環処理する回数や量が多くなって効率面ではやや低下するものの、この製造で充分処理することができる。
上記によって得たDFA III含有液のほか、これと同じ性質を有するクロマト処理して得たDFA III画分、結晶又は粗結晶シラップの少なくともひとつからなるDFA III粗液は、次に清浄濾過する。清浄濾過は、DFA III粗液の活性炭処理及び固液分離処理を指すものである。活性炭処理は、DFA III粗液に粉末活性炭を少量添加して、必要あれば加熱及び/又は攪拌して、DFA III以外の不純物を活性炭に吸着せしめる処理である。
粉末活性炭としては、平均粒径が15〜50ミクロン、好ましくは25〜45ミクロン、更に好ましくは約35ミクロン;最大粒径が200ミクロン以下、好ましくは170ミクロン以下、更に好ましくは150ミクロン以下、例えば147ミクロン以下のものが使用される。その添加量は、固形分に対して、5%以下、好ましくは0.1〜3%、更に好ましくは0.5〜1.5%とするのが良く、DFA III粗液の組成に応じて適宜規定する。
固液分離処理としては、ハイフロスーパーセル(和光純薬製)やケイソウ土濾過等の濾過助剤を使用する濾過(例えば、セラミック濾過機による濾過:日本ポール(株)製PR−12型が使用可能)、メンブランフィルター(MF)濾過、連続遠心分離法、分子篩法、逆浸透膜法、場合によっては限外濾過(UF)膜の少なくともひとつが適宜利用される。固液分離は、常圧、加圧、又は減圧の少なくともいずれかで実施される。
上記の内、例えば、限外濾過膜(UF膜)を使用する濾過、メンブランフィルター(MF)濾過、連続遠心分離処理によれば、ケイソウ土等の濾過助剤を使用することなく、直接固液分離することができる。MF膜としては、例えばセラミック膜(例えば、月島機械(株)商品名ダリア)等が使用可能であるし、連続遠心分離(5,000〜25,000rpm、好ましくは8,000〜15,000rpm;6,500〜10,000G、好ましくは7,500〜9,500G:例えば10,000rpm、8,200G)によれば、DFA III結晶(結晶粒径250〜500μm)と微細結晶(DFA III以外の結晶、主に4、5糖類:結晶粒径100μm以下)とを分離することができるので、粗結晶シラップや結晶シラップの濾過にも適用できる。
固液分離して得た濾液は、これを濃縮する。濃縮は、常法によって行われ、例えば蒸発濃縮缶等が用いられる。得られた濃縮液は、粗結晶母液であって、蒸発結晶化または冷却結晶化等によって粗結晶化処理する。粗結晶化された母液は、粗結晶と粗結晶シラップに分離するが、それには、遠心分離が利用される。
結晶化された母液から分離された粗結晶シラップ及び結晶シラップの濾過には、遠心分離、例えば連続遠心分離(例えば、アルファ・ラバル社製)を用いた固液分離が行われる。シラップ中には未結晶のDFA III以外のフラクトース重合度の異なるオリゴ糖が含有されている。フラクトース重合度が高い程、結晶化がし易く、結晶の粒径が小さいことが新たに判明した。この性質を利用してDFA IIIと他のオリゴ糖を分けることができる。これによりDFA III以外のオリゴ糖が除去されてDFA III以外のオリゴ糖の循環蓄積が防止でき、DFA IIIの結晶化原料の純度の低下を抑さえることができる。このDFA III以外のオリゴ糖が循環蓄積されると粗結晶母液(濃縮液)の純度が低下し、効率的(工業的)に結晶化できる純度(粗結晶の場合、純度60%以上)を確保することが難しくなる。特に、粗結晶母液(濃縮液)の純度低下を防ぐためシラップの製造系外への排出を行う方法もあるがDFA IIIの損失となるので避けるほうが良い。
DFA III含有液(粗液)の清浄濾過処理によって得た濾液は、常法によって濃縮する。例えば、砂糖等の製造で用いられるカランドリア型濃縮効用缶により濃縮し、濃縮液を得る。濃縮液は、濃度R−Bx60〜85、好ましくは65〜80、例えば77程度に濃縮すればよい。
濃縮液は、粗結晶化するが、結晶缶を用いる蒸発結晶化、冷却結晶化等の結晶化処理が利用される。蒸発結晶缶は、例えば砂糖製造用として用いられている結晶缶であればよい。冷却結晶缶は砂糖製造用として使用されているものと同様な形状の横型又は縦型のクリスタライザーが用いられる。このように、結晶缶に供給されるDFA IIIを含有した液体を粗結晶母液(濃縮液)という。DFA IIIの粗結晶化の際、結晶缶内に結晶が付着しないような処置をとるとよい。例えば攪拌機をそれに付設すると結晶率の上昇の効果がある。遠心分離機は砂糖製造用に用いられているものであればよい。DFA III粗結晶を乾燥させる場合には、常圧の場合、50〜100℃の温度条件下で行う。なお、減圧乾燥も可能である。
粗結晶化工程により結晶が析出した母液(濃縮液)について、固液分離を行い、粗結晶(DFA III純度は95〜98%程度にまで達する)と粗結晶シラップに分離する。固液分離処理は、既述した方法で行えばよく、例えば上記のように遠心分離機(500〜6,000rpm、好ましくは1,000〜5,000rpm、例えば2,000〜4,000rpm、500G〜3,000G、好ましくは800〜2,000G、例えば約1,200G)で両者を分離し、粗結晶シラップは、固液分離し、又はすることなく、所望する場合、精製工程に戻してやり、粗結晶は水又は湯に再溶解して、再溶解液とし、これを製品結晶化用の結晶母液用のDFA III精製液として使用する。
再溶解液(DFA III精製液:R−Bxは10〜60、好ましくは20〜55、更に好ましくは40〜50、DFA III純度は90%以上、好ましくは90〜98%となり、例えば95〜98%程度にまで達する)は、上記粗結晶の条件と同様に、清浄濾過、濾液の濃縮、濃縮液(製品結晶母液)の製品結晶化、製品結晶及び結晶シラップの分離、製品結晶の乾燥、包装、DFA III結晶製品(純度98〜99%以上、色もなければ臭いもない高度に精製された結晶)を製造する。なお、結晶から分離したシロップ(結晶シロップ、粗結晶シロップ)は、所望する場合、濾過し又は濾過することなく、DFA III含有液からDFA III製品に至る全精製工程(図1のフロー)の少なくともひとつに戻してやる。
また、本発明においては、クロマト分離法を利用してDFA III結晶を製造することも可能である。すなわち、DFA III結晶化全精製工程(図1)で生成する各種生成物をクロマト処理原液(R−Bx 40〜75)として、これをクロマト処理し、DFA IIIを精製して結晶化することが可能である。そのクロマト処理による精製フローの一例を図2に示す。
クロマト処理原液(R−Bx 40〜75)は、クロマトで処理して、DFA III画分を分離する。既述した再溶解液(DFAIII液)と同様の精製度を有するDFA IIIリッチ画分は、DFA III精製液として、これを清浄濾過、濃縮、結晶化することにより製品結晶を製造することができ(ルートA)、あるいは、上記再溶解液(DFA III液)に添加してDFA III精製液とし、これを結晶化することもできる(ルートB)。また、DFA IIIリッチ画分とは異なりDFA III含量が低いDFA III非リッチ画分及びごく少量しかDFA IIIを含まない非DFA III画分については、前者は製造フロー(図1に示すようなDFA III含有液からDFA III製品に至る全精製工程)の適宜個所に戻してやればよいし(ルートC)、後者について精製工程に導入するか、場合によっては廃棄する(ルートD)。
DFA IIIを含む液体(純度40%以上)をクロマト処理する場合、処理液のDFA III画分は純度70〜98%のものが得られるので、DFA III純度85%以上、好ましくは90〜95%、場合によっては95〜98%のDFA IIIリッチ画分は、ルートAにしたがって、清浄濾過、濃縮、製品結晶化することができる。したがって、例えば、粗結晶化工程を経ることなく粗結晶用の母液(濃縮液)をクロマト処理してDFA III画分(DFA IIIリッチ画分)を分離し、これをDFA III精製液として活性炭処理濾過後、この濃縮液を製品結晶母液として使用し、他は上記したのと同じ操作を行って、臭いもなく高度に精製されたDFA III結晶製品を得ることができる。もちろん、この画分を再溶解液に添加してDFA III精製液として使用するルート、例えばルートBでも可能である。また、上記で分離したDFA III非リッチ画分は、ルートCにしたがって、精製工程(DFA III含有液〜DFA III製品の全精製工程)例えば図1の適宜個所に戻してやり、全体として無駄やロスを生じることなく、本フローを循環させて徹底的に効率化することができる。
また、非常に不純物含量が少ないイヌリン、例えばフラクトースの重合度が10以上、好ましくは10〜60であり、ポリサッカライド含量が80%以上、好ましくは100%のイヌリンを原料とし、そしてフラクトトランスフェラーゼとして精製酵素を用いてこれを処理し、そして得られたDFA III含有液をクロマト処理し、得られたDFA IIIリッチ画分は、活性炭清浄濾過等を行うことなく、直接、濃縮し、結晶化することができる。得られたDFA III結晶は更に臭い、着色は全くなくきわめて高純度な結晶であり、高純度イヌリン及び/又は精製フラクトシルトランスフェラーゼを使用することにより、清浄濾過を行うことなく、しかも、分離、濃縮、結晶化の各処理はわずか1回で臭いのない高純度なDFA III結晶をきわめて効率的に製造することができる。
クロマト分離法としては、その分離装置は固定床方式(ワンパス方式)、連続方式(疑似移動床方式)、半連続方式(固定床方式と連続方式の組合)が適用できる。その装置の充填イオン交換樹脂としては、クロマト用のNa形、K形、Ca形等の強酸性イオン交換樹脂が使用される。その樹脂は均一粒径のスチレンジビニルベンゼン系樹脂等が用いられている。イオン交換樹脂のメーカーから種々のクロマト用樹脂が販売されているが、糖液に適用できるものであればいずれも使用できる。クロマト処理は結晶母液のDFA III純度が低い場合、その純度を上げるのにも適宜使用される。
本発明は、更に、DFA III純度が70%未満のDFA III含有液(結晶母液)についても、工業的に結晶させることができる。
本発明においては、DFA III純度が70%未満のDFA III含有液の精製度を高めるため、DFA III含有液を、イースト処理、清浄濾過処理又はクロマトグラフィー処理の少なくとも一つで処理することによりDFA含有液のDFA III純度を大幅に上昇させることができる。
本発明は、DFA III含有液をイースト処理、清浄濾過処理、クロマト処理の少なくともひとつから選ばれる処理によって精製する方法に関するものであり、本法を利用することにより高純度のDFA III結晶を効率的に工業生産できるものである。DFA III含有液としては、DFA IIIを含有し後記する条件を満たす液状物をすべて包含するものであって、フラクトースの重合体、例えばイヌリン又はイヌリン含有液にフラクトシルトランスフェラーゼを作用させて得たDFAIII生成反応液のほか、各種DFA III生合成液、DFA III化学合成液や本精製工程において生成する各種精製度のDFA IIIを含有する液体、あるいは市販のDFA IIIを溶解した液体等DFA IIIを含有する液体がすべて包含される。
例えばイヌリン(及び/又はイヌリン含有液)と酵素を用いてDFA IIIを製造する場合、イヌリンは、グルコース1つにフラクトースが多数重合したもので、主にキクイモ(あるいは、チコリ、ゴボウ等)から抽出したものが使用されるため、重合度及び純度が異なるものが市販されているだけでなく、これを酵素によって分解すると、生成した反応液には、DFA III以外のフラクトース重合物、酵素、酵素源として使用した微生物、その培養物、色素、臭い等の不純物が含まれることは不可避であり、そのため、従来は、精製されたDFA III、ひいては、純粋なDFA III結晶又はその含有物を工業的に低コストで効率良く得るまでには至っていない。
DFA III含有液からDFA IIIを結晶化する際、工業的、経済的に結晶可能なDFA IIIの純度は60%が限度である(好ましくは70%よりも高い方がよい)。換言すれば、DFA III純度が60〜70%以下のDFA III含有液から工業的、経済的にDFA IIIを結晶化することができず、従来、純度70%以下のDFA III含有液(純度60%以下のDFA III含有液の場合はなおさらのこと)は、工業的結晶化に採算がとれないため、使用することができなかったのである。
本発明は、このような現状に鑑み、従来工業的に使用することができなかったDFA III純度が低いDFA III含有液からDFA IIIを高度に精製する方法を開発して、例えば純粋なDFA III結晶が得られる程度に高純度に精製されたDFA IIIを効率良く得るため、各方面から研究の結果、DFA III含有液をクロマトグラフィー処理(以下、クロマト処理ということもある)、清浄濾過処理、イースト処理の少なくともひとつで処理することを骨子とする新規方法を開発したものである。
DFA III含有液としては、上記したように、DFA III生合成液、化学合成液、市販DFA III溶解液その他DFA IIIを含有するがDFA III純度の低いDFA III含有液体のいずれもが使用可能である。
本発明においては、DFA III含有液としては、高純度DFA含有液が使用できることはもちろんのこと、上記したように純度の低いDFA含有液も使用することができ、イースト処理、清浄濾過処理、クロマト処理の少なくともひとつの処理によって、従来経済的ないし工業的理由によって使用できなかった純度の低いDFA III含有液(純度70%以下のもの、60%以下のものも可能)も原料として使用可能となり、効率的にDFA IIIを精製することがはじめて可能となった。
先ず、イースト処理は、DFA III含有液とイーストを接触させればよく、両者を混合し、必要あれば攪拌してインキュベートしてもよいし、通気しながら培養してもよい。イーストとしては、パン酵母、清酒酵母、ビール酵母、ブドウ酒酵母その他各種の酵母が適宜使用可能であって、ドライイースト、圧搾酵母その他各種の市販品も充分に使用可能である。イーストによって、二糖類、単糖類が分解されたり菌体内に取り込まれるので、イースト処理は、主に二糖類及び/又は単糖類を系外に除去するのに有用である。
清浄濾過処理は、DFA III含有液の粉末活性炭処理の清浄等を目的とする処理と、固液分離を目的とする処理が含まれる。固液分離処理は、遠心分離、濾過、珪藻土等の濾過助剤を用いる濾過、メンブランフィルターを用いる方法、セラミック膜を用いる方法、限外濾過膜を用いる方法、その他固体と液体を分離する方法をすべて包含するものである。
そして、クロマト処理は、クロマト用のイオン交換樹脂を用い、固定床、連続床(疑似移動床)、半連続等各方式によって適宜行うことができ、二糖類と他の糖類を分離するものである。したがって、クロマト処理によれば、二糖類であるDFA IIIと他の糖類を効率的に分離することができる。
このように、二糖類としてはDFA IIIのみが含まれている場合には、クロマト処理はDFA IIIの精製にきわめて有効である。しかしながら、クロマト処理では、DFA IIIと他の二糖類を分離することは、双方共に二糖類であることから、非常に困難である。したがって、例えば、イヌリンをイヌリン分解酵素処理して得たDFA III含有液中に二糖類であるDFA IIIの他にこれまた二糖類である蔗糖も含まれる場合、クロマト処理では、DFA IIIと蔗糖(他の二糖類)の分離が非常に難しくなる。したがって、このような場合には他の処理を組み合わせることによってDFA IIIの精製を効率的に実施することが可能であり、例えば、前処理としてイースト処理を行ってDFA III以外の二糖類を系外に除去した後、クロマト処理を行えばよい。
このように、本発明においては、DFA III含有液に応じて、イースト処理、固液分離処理、クロマト処理の内、最適な処理を実施すればよいし、必要ある場合には、これらの処理を適宜併用したり組み合わせたり、あるいは、各処理や複数の処理を更にくり返したりすることにより、従来工業的に使用できなかった低純度DFA III含有液も効率的に精製することがはじめて可能となった。
例えば、DFA III生合成液については、フラクトースの重合体を原料として用い、これにフラクトシルトランスフェラーゼを作用させて製造することができる。
その場合、原料として用いるフラクトースの重合体としては、上記したようにイヌリン等の天然の重合体のほか、生合成及び/又は化学合成した重合体のいずれも使用可能であるが、フラクトースの重合度は2以上、好ましくは10以上であって、10〜60が好適域である。また、重合体におけるポリサッカライドの含量は70%以上が好ましく、更に好適には100%である。しかしながら、本発明においては、純度の低いDFA III含有液も効率的に精製できるので、このような高品位フラクトース重合体のほか、低品位のものも適宜可能である。
なお、本発明において、フラクトース重合体は、フラクトースのみが重合したホモポリマーのほか、他の糖を含むヘテロポリマーのいずれであってもよく、例えば、イヌリンはフラクトース重合体にグルコースが1分子結合した一種のヘテロポリマーである。また、フラクトース重合体にはフラクトース重合体含有物も包含される。
これらフラクトースの重合体の内、天然由来物としてはイヌリンが有利に使用されるが、生合成又は化学合成したものも使用され、例えば次のようにして生合成したものも使用可能である。
例えば、シュークロースにフラクトース合成酵素(例えば、イヌリン合成酵素)を作用させて、イヌリンを生合成することができる。イヌリン合成酵素としては、シュークロース:シュークロース 1−フルクトシルトランスフェラーゼ(SST)及びβ−(2−1)フルクタン:β−(2−1)フルクタン 1−フルクトシルトランスフェラーゼ(FFT)等が使用される。また、アスペルギルス・シドウィ(Aspergillus sydowy)IFO4284、IFO7531やストレプトコッカス・ミュータンス等の微生物の産生する酵素がイヌリン類似物を生産するが、イヌリン類似物もフラクトースの重合体及び/又はそれの含有物であるので、本発明におけるDFA III含有液の原料として使用できる。
なお、生合成法等フラクトース重合体の製造工程において、グルコースが副生する場合には、グルコースイソメラーゼ等グルコースをフラクトースに変換する酵素を用いてグルコースをフラクトースに変換したり、あるいは、グルコースオキシダーゼ等グルコースをグルコン酸に変換するといった酵素を用いてグルコースを他の物質に変換して、グルコース量を低下せしめ、イヌリン(又はイヌリン類似物)の収率を高めることができる。また、DFA III含有液にイーストを加え、通気攪拌培養等のイースト処理を行って、DFA III以外の不純物をイーストに消費させてクロマト処理前のDFA III含有液の純度を高めてもよい。
以下、DFA III含有液として、フラクトースの重合体をフラクトシルトランスフェラーゼ処理して得たものを例にとって説明するが、フラクトースの重合体としてはイヌリンを例にとって説明する。
フルクトース単位を転移触媒して、DFA IIIの様なオリゴ糖を合成する酵素は、広義で「フラクトシルトランスフェラーゼ」である。フラクトシルトランスフェラーゼは、大きく2種類に大別される。(1)フルクトース単位(スクロースなどの2糖類を含む)を基質とし、これを加水・転移して、オリゴ糖を合成する酵素(場合として、多糖も合成する)。(2)イヌリンやレバンなどのフラクタンを基質とし、これを加水・転移して、オリゴ糖を合成する酵素である。発明者らがイヌリンからのDFA III製造に使用したのは、フラクトシルトランスフェラーゼの中でも、学名がイヌリンフルクトトランスフェラーゼであり、(2)の種類に属する。イヌリンフルクトトランスフェラーゼ(以後、単にIFTとする)を生成する微生物としては、アースロバクター属、クルイベロマイセス属、ストレプトマイセス属、エンテロバクター属に属する各種細菌、酵母、放線菌等が報告されており、これらを適宜使用することが可能である。これらの微生物を培養して、精製酵素、粗製酵素、酵素含有物、微生物培養物等の形態として適宜使用される。
その非限定例を以下に示す:Arthrobacter sp.;Arthrobacter ureafaciens IFO 12140;Arthrobacter globiformis IFO 12137;Arthrobacter pascens IFO 12139;Bacillus sp.;Kluyveromyces marxianus var.marxianus:Streptomyces sp.;Enterobacter sp.
これら微生物由来の酵素を使用する場合、分離精製した酵素のほか、粗精製酵素、微生物培養物、同処理物(培養上清、分離菌体、菌体破砕物等)も使用可能である。なお、DFA III結晶を食品用途に使用する場合には、酵素としてフラクトシルトランスフェラーゼ、特にIFTを使用するのが好適であって、上記微生物由来の酵素のほか、今回、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に平成15年(2003)2月18日付けでFERM BP−8296として寄託されたArthrobacter sp.AHU 1753株は、IFT生産能にすぐれているので、本菌株由来の酵素は好適に使用可能である。
なお、イヌリンの酵素分解によるDFA IIIの生成は、DFA III単独のものが生成されることが最も好ましいが、実際上ではDFA III以外のフラクトースの重合物が種々生成される。それが酵素分解液の純度の低下の原因となっている。このため、クロマトグラフィー処理を行うが、所望する場合には、DFA IIIを結晶化するための原料として、イヌリン以外の不純物の混入量の出来るだけ少ないものや、また、DFA III以外のフラクトース重合物が生成しない酵素の選択が必要である。そして、このように精製されたDFA III含有液が得られれば、これをDFA III粗液として、直ちに本発明に係る清浄濾過、結晶化工程に入っていくことができる。
イヌリンをイヌリン分解酵素で分解したDFA III含有液のDFA III純度の一例を、後記するA〜D社の製品について示せば、次のとおりである:
A社品 75%、B社品 59%、C社品 52%、D社品 78%
そして、D社品をイヌリン酵素分解して結晶化する際のシラップのDFA III純度の一例を示せば、次のとおりである:
粗結晶シラップ 53%、製品結晶シラップ 95%
上記したIFT処理等の酵素処理によって得たDFA III含有液はもちろんのこと、その他の方法で調製した各種DFA III含有液は、クロマトグラフィー処理(以下、クロマト処理ということもある)イースト処理、清浄濾過処理の少なくともひとつで処理して、不純物を除去して精製し、各種精製度のDFA IIIを得ることができる。
その場合、精製度の高いDFA III含有液からは、精製度の高いDFA III(直ちに高純度結晶化工程に入っていける程度に精製度の高いもの)が得られ、精製度の低いDFA III含有液からは、精製度の低いDFA IIIが生成するが、クロマト処理や他の処理をくり返すだけでも精製度を高めることができる。したがって、本発明によれば、各種精製度のDFA III含有液を自由に使用し、所望する精製度のDFA IIIを得ることができる。
クロマト処理によってDFA III含有液から不純物が除去され、高度に精製される。また、精製度が低いフラクションは、再度又はそれ以上の回数でクロマト処理したり、他の方法にて精製することができる。
DFA III含有液は、そのままクロマト処理してもよいが、濃縮処理といった濃度を高める処理により、更なる効率化が図られる。濃縮処理としては、例えば濃縮缶による濃縮(例えば、50〜80℃、140mmHg以下)が挙げられるが、その他各種濃縮処理が適宜可能である。
本発明の好適例のひとつとして、次のような精製方法が例示される。先ず、原料として市販されている又はシュークロースから生合成したイヌリンを用い、これにIFTを接触せしめて酵素処理し、得られたDFA III含有液をクロマト処理して、夾雑している不純物を除去し、DFA IIIの精製を行うものである。そしてこの間、所望するのであればイースト処理等の各種の精製を適宜行うことができる。
本発明によれば、純度の低いDFA III含有液であってもクロマト処理、イースト処理、清浄濾過処理の少なくともひとつで処理することにより、精製されたDFA III精製液が効率よく工業生産できるので、精製されたDFA IIIは各種の用途に広く利用することができ、本発明によれば、DFA III含有液を直ちに結晶化できる程度にまで高度に精製することができる。したがって純度が95w/w%以上というきわめて高純度のDFA IIIの結晶、結晶破砕物、又は顆粒状物を製造することができ、医薬やサプリメント等として各種用途に広範に利用することができる。
また、本発明は、イヌリンフルクトトランスフェラーゼ(単にIFTということもある。)をはじめとするフラクトシルトランスフェラーゼの効率的大量生産方法も含むものである。
本発明においては、イヌリンの添加によって活性を低下させることなく、本酵素の生産量が飛躍的に増大することをはじめて見出したもので、200リットル以上もの大容量タンクにおける大量培養でもIFTを大量生産することができる。
本酵素を生成する微生物(菌体外に本酵素を分泌するもの、及び/又は、菌体内に本酵素を蓄積するものを問わない)を培養して、培養物から本酵素を取得するに際して、イヌリンを添加した培地を用いて培養を行う必要がある。イヌリンの添加量は、0.1〜10%、好ましくは0.5〜5%であって、例えば、イヌリンを約1%添加した培地を使用することができる。
また、更に、培地には酵母エキスを微量栄養源として添加すると好適である。その際、酵母エキスを0.02〜2.0%、好ましくは0.1〜1.5%添加すればよく、例えば、酵母エキスを約0.5%添加した培地を使用することができる。
本発明を実施するには、上記のようにイヌリンを添加した培地(好適には、更に酵母エキスを添加した培地)で本酵素生産菌を培養すればよい。その際、その他の培地組成及び培養条件等に格別の限定はなく、使用菌に応じて適宜行えばよいが、培養時の通気量については、0.5vvm以上、好ましくは1〜2vvmとするのがよい。
上記した本発明に係る培養方法によれば、本酵素は大量に生産することができ、従来法では酵素調製量が1〜多くても数十ユニット(酵素単位)/ml(培養液)であったのが、本法では、高活性(数百ユニット(酵素単位)/ml(培養液)以上)とすることがはじめて可能になったという著効が奏される。
しかも、上記著効は、実験室や小規模生産レベルで奏されることはもちろんのこと、容量が50リットル以上、例えば100リットル以上の大型発酵タンクを用いる大型微生物培養装置を使用した場合にも奏されるという特徴を有し、200リットル容のジャーファーメンターの使用も確認されており、それ以上の大容量発酵タンク、例えば300〜500リットル容の発酵タンクの使用も可能である。
このように本発明は、酵素の大量生産をはじめて可能にしたものであり、しかも酵素活性をいささかも低下させることがないものであって、そのポイントを例示すれば次のとおりである。
(培養装置に関して)
(1)大型微生物培養装置を導入したこと。
フルクトシルトランスフェラーゼの調製は、実験室レベルでは成功されているので、容易に考えられる発展項目でもあるが、これらの誘導酵素は、培養装置を大型にすることで、活性値が実験室レベルより顕著に低下することが多くある。200リットル容以上タンクの導入で、事実活性値が上昇したことは、新たな重大発見である。
(培養方法に関して)
(2)酵素の誘導物質であるイヌリンの最適添加量を、大型微生物培養装置に合わせ、決定したこと。
(3)酵素の生産量増加、および安定性上昇の要素として、酵母エキスを見出し、その最適添加量を大型微生物培養装置に合わせ、決定したこと。
(4)酵素の生産量増加の要素として、培養中の空気の通気量を見出し、その最適量を大型微生物培養装置に合わせ、決定したこと。
使用する微生物としては、アースロバクター属、クルイベロマイセス属、ストレプトマイセス属、エンテロバクター属、バチルス属、ミクロバクテリウム属に属する微生物のほか、各種細菌、酵母、糸状菌、放線菌等が適宜使用可能である。
本発明において使用できる微生物の非限定例を以下に示す:Arthrobacter ureafaciens、同(IFO 12140)、同(ATCC 21124)、A.pascens(IFO 12139)、同T13−2、A.globiformis(IFO 12137)、同C11−1、A.nictinovorans GS−9、A.ilicis OKU 17B、Arthrobacter sp.、同H65−7、同AHU 1753(FERM BP−8296)、同MCI−2493;Kluyveromyces marxianus(ATCC 12424)、同CBS 6556、K.marxianus var.marxianus、同(IFO 1735);Streptomyces fumigatus、S.rochei、同E87、Streptomyces sp.、同MCI−2524;Pseudomonas fluorescens、同No.949;Bacillus circulans、同OKUMZ.31B、同MCI−2554、Bacillus sp.、同Snu−7;Aureobacterium sp.、同MCI−2494;Microbacterium sp.、同AL−210;Enterobacter sp.、同S45;Aspergillus fumigatus;Penicillium purpurogenum。
本酵素を生産するに当っては、例えば上記したような本酵素生産菌を用い、既述した特定の培養条件のほかは常法にしたがって培養を行い、培養物中から酵素製造の常法にしたがって本酵素を抽出精製すればよい。例えば、得られた培養物を遠心分離して除菌し、得られた濾液に硫安(65%飽和)を加えて、塩析し、析出した沈殿物を遠心分離により取得し、少量の水に懸濁させた後、透析して粗酵素液を得ることができる。そして所望するのであれば、常法にしたがい、例えば粗製酵素をクロマトグラフィー処理等既知の精製方法を1種又は2種以上組み合わせて、精製酵素とすることができる。
なお、本酵素生産菌が上記のように本酵素を菌体外へ分泌するタイプではなく、菌体内に蓄積するタイプの場合には、培養物から菌体を分離し、得られた菌体を超音波処理等常用される菌体破壊処理に対して菌体を破壊し、しかる後に上記したようにして酵素を分離、精製すればよい。
しかも、本発明では、小規模に本酵素を生産できることはもちろんのこと、特に上記した培養条件によれば、200リットル以上、更には500リットル以上もの大容量発酵タンクを用いても、何らの弊害も生じることなく、酵素力価を低下させることなく、高活性の酵素を大量に生産できるという工業上特にすぐれた効果が奏される。
本発明においては、酵素としては、分離精製した酵素のほか、粗精製酵素、微生物培養物、同処理物(培養上清、分離菌体、菌体破砕物等)も使用可能である。なお、DFA III結晶を食品用途に使用する場合には、酵素としてフラクトシルトランスフェラーゼ、特にIFTを使用するのが好適であって、上記微生物由来の酵素のほか、今回、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に平成15年(2003)2月18日付けでFERM BP−8296として寄託されたArthrobacter sp.AHU 1753株は、IFT生産能にすぐれているので、本酵素生産菌として好適に使用可能である。
このようにして大量生産した酵素は、酵素自体として試薬や研究用に利用されるほか、多数の応用が可能であって、そのひとつとして、本酵素をイヌリンに作用させることにより、各種のオリゴ糖を合成することができる。例えばフラクトースの重合度が10以上、好ましくは10〜60のイヌリンにフラクトシルトランスフェラーゼを作用させることによってDFA III含有液を製造することができるが、その際、イヌリンフラクトトランスフェラーゼ(デポリメライジング)(inulin fructotransferase(depolymerizing))として、アースロバクター・エスピー(Arthrobacter sp・)AHU 1753株(FERM BP−8296)由来の精製酵素、粗製酵素、酵素含有物、菌体、菌培養物、同処理物の少なくともひとつを使用することができる。
このようにして、効率的に且つ低コストでDFA III含有液を製造することが可能となったので、例えばこれに粉末活性炭を例えば固形分に対し5%以下添加して清浄化した後、固液分離し、分離した液状部を濃縮した後、直ちに結晶化し、必要あれば、これらの操作をくり返したり、クロマトグラフィー処理を組み合わせたりして、更に精製して、臭いも除去されてきわめて高純度の結晶DFA IIIを得ることができる。
以下、実施例をあげて本発明を更に詳しく説明する。
イヌリンのフラクトース重合度(分子量分布)
市販イヌリンを購入しフラクトース重合度を調査した。下記の条件で液体クロマトグラフィー分析装置を使用したクロマトグラムを図3に示す。
1)イヌリンの分析サンプル
イ.A社品
ロ.B社品
ハ.C社品
二.D社品
上記サンプルに係わるカタログの表示を下記表1に示す。
Figure 2010233576
2)分析条件〈BR〉
カラム :Dionex,CarboPac PA1,4×250mm I.D.
カードカラム:Dionex,CarboPac PA1 Guard
カラム温度 :室温
溶離液 :グラジエント
0分 100分
割合(%) 割合(%)
1N NaOH 15 15
1M NaOAc 0 45
水 85 40
カーブNo. − 2
検出器 :Dionex,Pulsed Electrochemical Detector
検出モード :Integrated Amperometry
パルス電圧 :E1:+0.05V(400m sec),E2:+0.75V(200m sec),E3:−0.15V(400m sec)
流速 :1.0ml/min
レンジ :1μC
注入量 :各0.1%水溶液を5μl注入
分析サイクル:120min
3)結果
各クロマトグラムの流出時間によるピーク値を比較する。リテンションタイムの経過に従って各ピークは重合度(分子量)の高いものとなる。
(C社品)流出時間約6.5minから約40minの間に約40個のピークが存在している。このピークの状態から流出時間6.5から14.5minのものが多いため重合度の低いポリサッカライドの割合が多い。
(D社品)流出時間約14.5minから46minの間に約40個のピークが存在した。このことから比較的重合度の高いポリサッカライドが多い。
(B社品)流出時間約7.9minから30minの間に約30個のピークがあった。流出時間14.5min以上の割合が多いが14.5min未満のポリサッカライドも含まれる。
(A社品)流出時間約9minから41minの間に40個のピークがあった。D社品と同様な傾向のピークを示したが、流出時間6.5から14.5minの間にも多少ピークが散見された。
これらの結果とカタログから推察すると滞留時間6.5minの重合度が2で、14.5minのピークが重合度10と予想される。
(1)IFT酵素生産量及びイヌリンからのDFAIIIの反応収率
上記市販品4種のイヌリンを使用し、後記するフラクトシルトランスフェラーゼを使用して酵素反応を行い、DFAIIIの生成率を調査した。イヌリンを80℃のお湯で完全に溶解した後、60℃まで冷却する。そこにIFTを5000unit/kgイヌリンを添加し、60℃、24時間攪拌しながら反応させる。反応液のIFT酵素生産量を下記の通り測定した。また、反応液を失活(80℃)させ、活性炭(太閤活性炭S)及び珪藻土(ラジオライト700)で清浄濾過し、清浄反応液を液体クロマトグラフィー(以下HPLCと記す。カラム:Shodex Sugar KS−801,300×8mm I.D.、流速1ml/min、カラム温度80℃)を使用しDFAIIIを定量した。IFTの酵素生産量及びDFA IIIの生成収率の結果を表2に示した。
Figure 2010233576
その結果から明らかなように、酵素生産量及びDFA IIIの反応収率ともD社品が最も良かった。図3及び表2の結果からフラクトース重合度が高い分布のものほど、即ち、A社品及びD社品は重合度10以上のものと予想されるが、これらがDFA III収率がよかった。尚、イヌリンは、分子量(重合度)が高くなると溶解性が悪く、ハンドリングしづらくなるため、DFA IIIの工業生産には重合度100程度が限界である。
(2)酵素生産量(酵素活性)の測定法
2ml容チューブに10%イヌリン溶液0.5mlと0.1Mクエン酸・NaOHバッファー(pH5.5)0.45mlを入れ、60℃の湯浴で約5分間加温した。そこに、粗酵素液50μlを加え、60℃で10分間反応させた。沸とう水中に5分間保持することにより反応を停止させた。HPLCにより生成したDFA IIIを定量した。1unitは1分間に1μmolのDFA IIIを生成する酵素量とした
イヌリンからDFA IIIの製造
(1)上記D社品200kgを80℃のお湯1000kgで溶解し、60℃まで冷却する。その溶液に下記酵素生産で得られたIFT 5000units/kgイヌリンを添加し、60℃で24時間攪拌しDFA IIIの含有液を生成させる。この反応完了液を80℃に上げ酵素を失活させる。この失活液に固形分当たり1%の割合で太閤活性炭S(二村化学工業製:平均粒径約35ミクロン、147ミクロン以下)を添加し60℃、10分間攪拌する。この完了液を珪藻土(昭和化学工業製ラジオライト700)濾過を行った。すなわちセラミック製の筒(日本ポール(株)製PR−12型セラミックチューブ)の内面に上記珪藻土をプレコートしておき、筒内に活性炭含有反応液を加圧通過させて、加圧濾過し、筒外から濾液を回収した。
(2)この濾液を濃縮缶で濃縮(60〜70℃ 120mmHg以下)する。最終濃度R−Bx77まで濃縮した後、その母液を結晶化工程に移した。結晶は冷却結晶化法を行った。60℃の濃縮液を冷却缶外部に冷却外套及び攪拌機が設けられた缶で、23時間かけて15〜20℃に冷却する。結晶の析出した母液を分離機(3000rpm、1200G)で粗結晶とシラップに分離する。その粗結晶(DFA III純度97%)を再溶解し、得られた再溶解液(DFA III精製液)を、上記条件と同様に活性炭処理、珪藻土濾過を行い濃縮、結晶化・分離し、製品結晶(DFA III純度99%)を得る。得られた結晶を50℃で通風乾燥し、DFA III7.2kg(水分0.1%)が得られた。この結晶は、着色もなく臭いも認められなかった。
(3)上記(1)において、珪藻土濾過にかえてメンブランフィルター(MF)濾過を行った。
すなわち、酵素反応完了液(約R−Bx20)を失活させて、それに太閤活性炭Sを固形分当たり1%添加し、60℃、10分間攪拌する。それを、0.14μmのメンブランフィルター(月島機械株式会社製:セラミック膜 TSK−TAMIダリア)を使用し、濾過を行った。濃縮率は10倍とした。結果を図4に示す。その結果から明らかなように、透過液量の低下もみられず順調に濾過できることを確認した。透過液は透明であった。
(4)上記(1)、(2)において、DFA III含有液(酵素反応完了液:濃度R−Bx60、DFA III純度78.6%、その他21.4%(主に4糖類および5糖類))について、以下によってクロマト処理を行い、下記する画分を得た(表3)。このようにして、通液量0.600〜0.700L/L−R画分を回収して、DFA III画分(純度97.3%)を得た。このようにしてクロマト分画して得たDFA III画分は、DFA IIIリッチ画分として、清浄濾過した後に濃縮して製品結晶母液として使用できるほか、粗結晶再溶解液(DFA III精製液)としてあるいはそれに添加して使用できることも確認された。また、DFA III純度76.8%画分は、例えばDFA III非リッチ画分としてルートCに利用できることも確認された。
Figure 2010233576
(クロマト処理条件)
クロマト用樹脂:Na型強酸性樹脂(オルガノ製CR−1310型)
カラム: 22×525mm、200ml
クロマト処理原液:DFAIII酵素反応液を失活した後粉末活性炭で清浄濾過した液。〈BR〉
R−Bx 60、DFAIII純度 78.6%、
供給量 2.5% L/L−R
通液条件:70℃、SV=0.6(2.0ml/min)
溶離液:水
回収フラクション:5ml/フラクション。
フラクトシルトランスフェラーゼの製造
(1)アースロバクター・エスピー(Arthrobacter sp.)AHU 1753株(FERM BP−8296)を下記の培養条件で培養し、酵素液を作成した。
(2)培地1:1%グルコース、1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム、pH7.0。500ml容の振とう坂口フラスコに、100mlを調製し、高圧蒸気殺菌をした。
培地2:1%イヌリン、0.2%硝酸ナトリウム、0.05%塩化ナトリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.05%リン酸二水素カリウム、0.01g/L硫酸第二鉄、0.5%酵母エキス、pH7.0。200L容のジャーファーメンター(日立製作所製、モデルFF−02)に、100Lを調製し、高圧蒸気殺菌をした。)
(3)培養(酵素生産)
前培養;保存スラント培地より、Arthrobacter sp.AHU 1753株の一白金耳量菌体を、無菌的に(培地1)に接種した。そして、27℃、24時間、振とう培養をした。振とう条件は、15センチ幅、120rpm。
本培養:前培養で調製した培養液(フラスコ10本分、1L分)を、無菌的に(培地2)に接種した。そして、ジャーファーメンターを27℃で、17時間、運転した。通気量は、1vvm(100L/分)、攪拌数は、300rpm。
(4)菌体回収、およびその他(3)で調製した培養液を、遠心分離器で菌体と上清とに分離し、上清をDFA III酵素液とした。酵素液をリン酸にて、pH5.5に調整後、マイナス20℃で保存した。
(結果)
この操作により、IFTを、
濃度:300ユニット/ミリリットル(培養液)、(実験室レベルの3倍)
全量:4.5×10の7乗、ユニット量、(工業生産に対応できる十分量)
時間:17時間、(実験室レベルより短時間)
に製造できた。
(培養条件)
・前培養:27℃、24時間、振とう培養
・本培養:前培養液を本培養液に接種(本培養液量に対して1%の前培養液量)し、27℃、24時間振とう培養する。
(酵素液の調整)
本培養液を遠心分離(2000G、4℃、20分)し、上澄みを酵素液として使用する。
DFA III酵素反応液のイースト処理
イヌリン(C社品)200kgを80℃の湯1kgに溶解し、IFT5000units/kgイヌリンを添加し、60℃で12時間攪拌し、DFA III含有液を生成させた。
この反応終了液を80℃にまで加温して酵素を失活させた後、この失活反応完了液を30℃に冷却し、しかる後にイースト(日本甜菜製糖(株)製:ニッテンイースト)100g(水分66%)を添加し、30℃で12時間通気培養した。
得られたイースト反応液を濾過(セラミック膜等)し、その濾過液を濃縮して、Bx50〜70程度までにし、これをクロマト分離処理のクロマト原液とした。
DFA III顆粒状物の製造
DFA III結晶を乳鉢で微粉砕した後、DFA III100に対して水10を加え、均一に混合した。これを押出し造粒機(不二パウダル(株)製、FINERYUZER、型式EXR−60、処理能力40〜150kg/hr)にて造粒し、70℃の送風定温恒温機(ヤマト科学(株)製、型式DN910)で3時間乾燥し、顆粒状DFA IIIを製造した。
熟練したパネラー20人により、結晶DFA IIIと微粉砕DFA III、顆粒状DFA IIIの官能試験を実施した。得られた結果を下記表4に示した。表4に示すように、微粉砕DFA IIIは結晶DFA IIIより甘味が強くなり、口溶けや甘味の切れが向上し、結果的に好ましいという結果が得られた。さらに顆粒状DFA IIIでは微粉砕DFA IIIに対して甘味の強さは変わらないものの、口溶けや甘味の切れが向上し、総合評価も高かった。
Figure 2010233576
以上のことから、口溶け感や甘味の切れなど、食味や食感において敬遠される面があった結晶DFA IIIは、微粉砕後、更に顆粒化することで、これらの点を改善できることが確認された。
なお、結晶化条件は、DFA III冷却結晶化時のR−Bx:65以上であった(50℃における溶解度より判断した)。
フラクトシルトランスフェラーゼの大量生産
(1)アースロバクター・エスピー(Arthrobacter sp.)AHU 1753株(FERM BP−8296)を下記の培養条件で培養し、酵素液を作成した。
(2)《培地1》:1%グルコース、1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム、pH7.0。500ml容の振とう坂口フラスコに、100mlを調製し、高圧蒸気殺菌をした。
《培地2》:1%イヌリン、0.2%硝酸ナトリウム、0.05%塩化ナトリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.05%リン酸二水素カリウム、0.01g/L硫酸第二鉄、0.5%酵母エキス、pH7.0。200L容のジャーファーメンター(日立製作所製、モデルFF−02)に、100Lを調製し、高圧蒸気殺菌をした。
(3)培養(酵素生産)
前培養:保存スラント培地より、Arthrobacter sp.AHU 1753株の一白金耳量菌体を、無菌的に(培地1)に接種した。そして、27℃、24時間、振とう培養をした。振とう条件は、15センチ幅、120rpm。
本培養:前培養で調製した培養液(フラスコ10本分、1L分)を、無菌的に(培地2)に接種した。そして、ジャーファーメンターを27℃で、17時間、運転した。通気量は、1vvm(150L/分)、攪拌数は、300rpm。
(4)菌体回収、およびその他(3)で調製した培養液を、遠心分離器で菌体と上清とに分離し、上清をDFA III酵素液とした。酵素液をリン酸にて、pH5.5に調整後、マイナス20℃で保存した。
(結果)
この操作により、IFTを、
濃度:300ユニット/ミリリットル(培養液)、(実験室レベルの3倍)
全量:4.5×10の7乗、ユニット量、(工業生産に対応できる十分量)
時間:17時間、(実験室レベルより短時間)
に製造できた。
(培養条件)
・前培養:27℃、24時間、振とう培養
・本培養:前培養液を本培養液に接種(本培養液量に対して1%の前培養液量)し、27℃、24時間振とう培養する。
(酵素液の調整)
本培養液を遠心分離(2000G、4℃、20分)し、上澄みを酵素液として使用する。
本発明において寄託されている微生物の受託番号を下記に示す。
Arthrobacter sp.AHU 1752(FERM BP−8296)。

Claims (7)

  1. 純度60%以上のジフルクトース・ジアンヒドリドIII(以下、DFA IIIという)をR−Bx10以上の濃度で含有するDFA III粗液(イヌリンにアースロバクター エスピー(Arthrobacter sp.)AHU 1753株(FERM BP−8296)由来のイヌリンフラクトシルトランスフェラーゼ(デポリメライジング)(inulin fructotransferase(depolymerizing))を作用させて製造した酵素反応液を除く)に粉末活性炭を固形分に対して0.1%〜5%添加して清浄化した後、固液分離し、分離した液状部を濃縮した後、直ちに冷却結晶化すること、を特徴とする臭いまでも除去されたDFA III結晶の製造方法。
  2. 液状部を濃縮した後、DFA IIIをR−Bx60以上の濃度で含有すること、を特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 冷却結晶化工程において、15〜20℃まで冷却して結晶化すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. 冷却結晶化工程において、23時間以上かけて冷却して結晶化すること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. DFA III粗液が、DFA III含有液、クロマトグラフィー処理して得たDFA III画分、結晶又は粗結晶シラップの少なくともひとつであること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 粉末活性炭の平均粒径が15〜50ミクロンであり、最大粒径が200ミクロン以下であること、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 固液分離する方法が、濾過助剤を使用する濾過、メンブランフィルターを用いる方法、限外濾過膜を用いる方法から選ばれる少なくともひとつであること、を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
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