JP2010194609A - インダイレクトスポット溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】インダイレクトスポット溶接法において、通電時間を2つの時間帯t1,t2に区分し、最初の時間帯t1では、加圧力F1で加圧しかつ電流値C1で通電したのち、次の時間帯t2では、F1よりも低い加圧力F2で加圧しかつC1よりも高い電流値C2で通電する。
【選択図】図2
Description
いずれのスポット溶接も、重ね合わせた少なくとも2枚の鋼板を溶接により接合する点では変わりはない。
図1(a)は、ダイレクトスポット溶接法を示したものである。この溶接は、同図に示すとおり、重ね合わせた2枚の金属板1,2を挟んでその上下から一対の電極3,4を加圧しつつ電流を流し、金属板の抵抗発熱を利用して、点状の溶接部5を得る方法である。なお、電極3,4はいずれも、加圧制御装置6,7および電流制御装置8をそなえており、これらによって加圧力と通電する電流値が制御できる仕組みになっている。
しかしながら、実際の溶接に際しては、十分なスペースがない、閉断面構造で金属板を上下から挟むことができない場合も多く、かような場合には、シリーズスポット溶接法やインダイレクトスポット溶接法が用いられる。
また、特許文献2も、シリーズスポット溶接については有効であると考えられるが、インダイレクトスポット溶接に対しては有効であるとは限らず、しかも電極を接触させる位置に他の部分よりも一段高い座面をプレスなどで形成する工程が必要になるという問題があった。
輸送機器メーカーにおける現状のスポット溶接部の管理基準では、ダイレクトスポット溶接で得られるような完全に溶融した状態を経た碁石形のナゲットであることを要求されることが多いため、接合強度が得られても完全に溶融した状態で形成された碁石形のナゲットが得られなければ管理基準を満足しないという問題がある。
a)重ね合わせた金属板を一方向からのみ電極で加圧し、その反対側は支持の無い中空の状態でインダイレクトスポット溶接を行う場合、両側から電極で挟むダイレクトスポット溶接法のように電極直下に局部的に高い加圧力を与えることができないため、電極直下の重ね合わせた金属板間で高い電流密度が得られず、また通電中に電極が鋼板に沈み込んでいくため、電極−金属板、金属板−金属板間の接触面積が増大し、電極−金属板、金属板−金属板間の電流密度が低下する。そのため、インダイレクトスポット溶接では、ダイレクトスポット溶接法のように電極直下の重ね合わせた金属板間に溶融部が形成されるのに十分な発熱が得難く、溶融接合部が形成されにくい。
b)上記の問題を解決するには、通電中の電流値およびその時間を細かく制御する、または通電中の電極の加圧力およびその時間を細かく制御する、さらには通電中の電流値と電極の加圧力およびの時間を細かく制御することが有効である。
c)特に、通電開始からの通電時間、加圧時間をそれぞれ独立に2段階に分け、通電時間、加圧時間の各段階における電流値および/または電極の加圧力を個別に制御することにより、健全な碁石形のナゲットからなる溶融接合部を安定して形成することができる。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
1.少なくとも2枚の金属板を重ね合わせた部材に対し、一方の面側から金属板に溶接電極を加圧しながら押し当て、他方の面側の金属板には該溶接電極と離隔した位置に給電端子を取り付け、該溶接電極と該給電端子との間で通電して溶接を行うインダイレクトスポット溶接法において、通電する電流値については通電開始から終了まで一定にする一方、電極の加圧力に関しては、通電開始から2つの時間帯t1,t2に区分し、最初の時間帯t1では加圧力F1で加圧したのち、次の時間帯t2では、F1よりも低い加圧力F2で加圧することを特徴とするインダイレクトスポット溶接方法。
図2(a)、(b)に、本発明の基本的な通電時間と加圧力の関係および通電時間と電流値の関係をそれぞれ示す。
本発明では、電極の加圧力、通電する電流値に関して、通電開始からの時間帯を同時にまたはそれぞれ独立して2つに区分し、それぞれの時間帯において電極の加圧力Fまたは通電する電流値Cの一方、または加圧力Fと電流値Cの両方を制御する。ここで、加圧力Fまたは電流値Cの一方を制御する場合には、区分した各時間帯をt1,t2とし、また加圧力Fと電流値Cの両方を独立して制御する場合には、加圧力Fを区分する時間帯をtF1,tF2、電流値Cを区分する時間帯をtC1,tC2とし、各時間帯での加圧力をF1,F2、電流値をC1,C2で示す。
この時間帯t1は、電極を重ね合わせた金属板に加圧しながら押し当てつつ、通電を開始し、金属板間の接触抵抗による発熱から溶融部の形成を始める時間帯である。重ね合わせた金属板を一方向からのみ電極により加圧し、その反対側は支持の無い中空の状態でインダイレクトスポット溶接を行う際には、加圧力F1は両側から電極で挟むダイレクトスポット溶接法のような高い加圧力とすることができないが、加圧力F1が低く過ぎると電極と金属板との間の接触面積が極度に小さくなり、電流密度が過度に上昇して金属板表面が溶融飛散し、表面形状が著しく損なわれる不具合が発生する。従って、加圧力F1はかような不具合が生じないよう、適宜選択する必要がある。
この時間帯t2は、時間帯t1で形成が始まった溶融部をさらに成長させていく段階である。しかしながら、通電による発熱で電極周辺の金属板が軟化し、電極の反対側は支持の無い中空の状態でインダイレクトスポット溶接を行う際には、金属板が軟化すると電極先端が金属板に沈み込み、電極と金属板、金属板と金属板の間の接触面積が増大し電流密度が低下するため、ナゲットを成長させるに十分な発熱が得られない。従って、この時間帯t2では、加圧力F2を加圧力F1よりも低い加圧力とし、電極先端が金属板に沈み込むのを抑える必要がある。
すなわち、上記の時間帯t1,t2において、電流値C1,C2は一定とし、加圧力F2をF1より低くする方法、また加圧力F1,F2は一定とし、電流値C2をC1より高くする方法のどちらでも、同様の効果を得ることができる。
しかしながら、前述したとおり、上記の時間帯t1,t2において、加圧力F2をF1より低くし、かつ電流値C2をC1より高くすることによって、より一層の効果を得ることができる。
なお、時間帯t1,t2において、電流値C1,C2は一定とし、加圧力F2をF1より低くする場合の一定電流値は2.5〜10 kA程度、また加圧力F1,F2は一定とし、電流値C2をC1より高くする場合の一定加圧力は200〜1500N程度とすることが好ましい。
さらに、加圧力Fと電流値Cの両方を独立して制御する場合には、加圧力Fに関しては、tF1:0.02〜0.30s、tF2:0.10〜0.60s程度とし、各時間帯tF1,tF2においてそれぞれF1:300〜2000N、F2:100〜1500N程度とすることが、また電流値Cに関しては、tC1:0.02〜0.30s、tC2:0.10〜0.60s程度とし、各時間帯tC1,tC2においてそれぞれC1:2.0〜10.0 kA、C2:2.5〜12.0 kA程度とすることが好ましい。
溶接に際しては、クロム銅合金を材質とし、先端にR40mmの曲面を持つ形状の電極および直流インバータ式の電源を使用した。
なお、表2においてナゲット径は、溶接部を中心で切断した断面において、金属板21、22間で形成される溶融部の重ね線上での長さとした。ナゲット厚さは、溶接部を中心で切断した断面において、金属板21、22間に形成される溶融部の最大厚さとした。また、ナゲット厚さ/径は、上述したナゲット厚さをナゲット径で除したものである。ここに、ナゲット径が4.0mm以上で、かつナゲット厚さ/径が0.35以上であれば、溶融した状態で形成された好適ナゲットと判断することができる。
さらに、散りの発生状況は、電極と金属板間で起こる表面散りと、金属板と金属板との間で起こる中散りとに区別して開示した。
これに対し、比較例1では、表面散りが発生し、また比較例3では、中散りが発生した。比較例2においては、散りの発生はなかったが、ナゲット径が4.0mmより小さくなり、ナゲット厚さ/径が0.3より小さくなった。また、比較例4は、散りは発生しなかったものの、溶融ナゲットが得られなかった。
溶接に際しては、クロム銅合金を材質とし、先端にR40mmの曲面を持つ形状の電極および直流インバータ式の電源を使用した。
なお、比較例1〜6は、加圧力F、電流値Cを通電開始から終了まで一定で実施した場合、比較例7は、時間帯t1,t2において、加圧力F2をF1より低くし、かつ電流値C2をC1より低くして、加圧力Fと電流値Cの両方を同時に制御した場合、比較例8は、加圧力Fに関しては、通電開始から時間帯tF1,tF2に区分し、加圧力F2をF1より低くし、電流値Cに関しては、時間帯tF1,tF2とは独立して、通電開始から時間帯tC1,tC2に区分し、電流値C2をC1より低くして、加圧力Fと電流値Cの両方を独立に制御した場合である。
なお、表4においてナゲット径は、実施例1と同様に溶接部を中心で切断した断面において、上鋼板、下鋼板間で形成される溶融部の重ね線上での長さとした。ナゲット厚さは、溶接部を中心で切断した断面において、上鋼板、下鋼板間に形成される溶融部の最大厚さとした。また、ナゲット厚さ/径は、上述したナゲット厚さをナゲット径で除したものである。ここに、ナゲット径が3.5mm以上で、かつナゲット厚さ/径が0.25以上であれば、溶融した状態で形成された碁石形の好適なナゲットと判断することができる。
さらに、溶接部が溶融飛散しておこる外観不具合に関しては、電極と鋼板間で起こる表面えぐれの発生に関して開示した。
これに対し、比較例1では、表面えぐれが発生した。また、比較例2,3,6〜8はいずれも、ナゲット径が3.5mmより小さくなり、ナゲット厚さ/径が0.25より小さくなった。その他の比較例では、ナゲットの形成は観察されなかった。
溶接に際しては、クロム銅合金を材質とし、先端にR40mmの曲面を持つ形状の電極および直流インバータ式の電源を使用した。
なお、比較例1〜6は、加圧力F、電流値Cを通電開始から終了まで一定で実施した場合、比較例7は、時間帯t1,t2において、加圧力F2をF1より低くし、かつ電流値C2をC1より低くして、加圧力Fと電流値Cの両方を同時に制御した場合、比較例8は、加圧力Fに関しては、通電開始から時間帯tF1,tF2に区分し、加圧力F2をF1より低くし、電流値Cに関しては、時間帯tF1,tF2とは独立して、通電開始から時間帯tC1,tC2に区分し、電流値C2をC1より低くして、加圧力Fと電流値Cの両方を独立に制御した場合である。
なお、表6においてナゲット径は、実施例1と同様に溶接部を中心で切断した断面において、上鋼板、下鋼板間で形成される溶融部の重ね線上での長さとした。ナゲット厚さは、溶接部を中心で切断した断面において、上鋼板、下鋼板間に形成される溶融部の最大厚さとした。また、ナゲット厚さ/径は、上述したナゲット厚さをナゲット径で除したものである。ここに、ナゲット径が2.5mm以上で、かつナゲット厚さ/径が0.1以上であれば、溶融した状態で形成された碁石形の好適なナゲットと判断することができる。
さらに、溶接部が溶融飛散しておこる外観不具合に関しては、電極と鋼板間で起こる表面えぐれの発生に関して開示した。
これに対し、比較例1では、表面えぐれが発生した。また、比較例3はナゲット径が2.7mmとなったが、十分なナゲット厚さが得られず、ナゲット厚さ/径が0.1より小さくなった。その他の比較例では、ナゲットの形成は観察されなかった。
Claims (5)
- 少なくとも2枚の金属板を重ね合わせた部材に対し、一方の面側から金属板に溶接電極を加圧しながら押し当て、他方の面側の金属板には該溶接電極と離隔した位置に給電端子を取り付け、該溶接電極と該給電端子との間で通電して溶接を行うインダイレクトスポット溶接法において、通電する電流値については通電開始から終了まで一定にする一方、電極の加圧力に関しては、通電開始から2つの時間帯t1,t2に区分し、最初の時間帯t1では加圧力F1で加圧したのち、次の時間帯t2では、F1よりも低い加圧力F2で加圧することを特徴とするインダイレクトスポット溶接方法。
- 少なくとも2枚の金属板を重ね合わせた部材に対し、一方の面側から金属板に溶接電極を加圧しながら押し当て、他方の面側の金属板には該溶接電極と離隔した位置に給電端子を取り付け、該溶接電極と該給電端子との間で通電して溶接を行うインダイレクトスポット溶接法において、電極の加圧力については通電開始から終了まで一定にする一方、通電する電流値に関しては、通電開始から2つの時間帯t1,t2に区分し、最初の時間帯t1では電流値C1で通電したのち、次の時間帯t2では、C1よりも高い電流値C2で通電することを特徴とするインダイレクトスポット溶接方法。
- 少なくとも2枚の金属板を重ね合わせた部材に対し、一方の面側から金属板に溶接電極を加圧しながら押し当て、他方の面側の金属板には該溶接電極と離隔した位置に給電端子を取り付け、該溶接電極と該給電端子との間で通電して溶接を行うインダイレクトスポット溶接法において、電極の加圧力および通電する電流値に関して、通電開始から2つの時間帯t1,t2に区分し、最初の時間帯t1では、加圧力F1で加圧しかつ電流値C1で通電したのち、次の時間帯t2では、F1よりも低い加圧力F2で加圧しかつC1よりも高い電流値C2で通電することを特徴とするインダイレクトスポット溶接方法。
- 少なくとも2枚の金属板を重ね合わせた部材に対し、一方の面側から金属板に溶接電極を加圧しながら押し当て、他方の面側の金属板には該溶接電極と離隔した位置に給電端子を取り付け、該溶接電極と該給電端子との間で通電して溶接を行うインダイレクトスポット溶接法において、電極の加圧力に関しては、通電開始から2つの時間帯tF1,tF2に区分し、最初の時間帯tF1では、加圧力F1で加圧したのち、次の時間帯tF2では、F1よりも低い加圧力F2で加圧する一方、通電する電流値に関しては、時間帯tF1,tF2とは独立して、通電開始から2つの時間帯tC1,tC2に区分し、最初の時間帯tC1では、電流値C1で通電したのち、次の時間帯tC2では、C1よりも高い電流値C2で通電することを特徴とするインダイレクトスポット溶接方法。
- 請求項1〜4のいずれかにおいて、前記溶接電極として、先端が曲面形状になる電極を使用することを特徴とするインダイレクトスポット溶接方法。
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