JP5789497B2 - 片側スポット溶接装置 - Google Patents
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Description
このような構成とすることで、溶接電極とアース電極とを結ぶ通電経路が複数になることから、各電極とワークとの当接部における電流密度を分散させることで、1つの当接部に電流密度が集中することを防止し、ワークを全体的に軟化させることができる。その結果、電極全体が適切にワークに食い込み、接合不良を回避することができる。
つまり、特許文献1に開示された技術は、電流密度のバラツキによる接合不良は抑制できるが、圧力不足による接合不良(ブローホールの発生)は抑制できなかった。
また、この片側スポット溶接装置によれば、制御機構が本通電後の所定の電流値よりも低い電流値で通電を開始させる際(徐冷工程開始時)に、ロック機構により溶接電極(または溶接電極支持部材)とアース電極(またはアース電極支持部材)とを連結させることで、溶接電極の先端の位置をアース電極の先端の位置に対して相対的に固定することができる。ここで、アース電極が当接する部分のワークはあまり軟化していないことから、アース電極がワークに対して大きく沈み込むといったことはない。つまり、溶接時において、アース電極は、ワークに対して固定(位置決め)された状態となっている。その結果、当該アース電極(またはアース電極支持部材)に連結した後の溶接電極の先端は、ワークが軟化していても、ワークに沈み込むような事態を回避することができる。よって、この片側スポット溶接装置によれば、ワーク間の境界面がずれて接合強度が低くなってしまう(接合不良を引き起こす)といった事態を回避することができる。
また、本発明に係る片側スポット溶接装置によれば、徐冷工程における溶接電極のワークへの加圧力を、ナゲット形成工程における溶接電極のワークへの加圧力より低くすることにより、軟化したワークに電極が沈み込むことでワーク間の境界面がずれて接合強度が低くなってしまう(接合不良を引き起こす)といった事態を回避することができる。
なお、以下の説明において、「上、下、左、右」を表現するときは、各図面に示す方向を基準としている。
片側スポット溶接装置10は、被溶接対象である板金等のワークWを、ワークWの片側のみから加圧および通電を行うことにより溶接する装置である。
図1に示すように、片側スポット溶接装置10は、上方からワークW1に当接する溶接電極2と、上方からワークW1に当接するとともに、当該溶接電極2の左右側にそれぞれ一つずつ設けられるアース電極3、3と、を有する溶接ガン1を備える。そして、片側スポット溶接装置10は、溶接ガン1を移動させることにより溶接ガン1によりワークWを加圧する加圧機構6と、当該加圧機構6および溶接ガン1に流す電流の制御を行う制御機構7と、をさらに備える。
なお、片側スポット溶接装置10は、図5に示すように、左右方向(ワークWを加圧する方向と垂直となる方向)において、アース電極3、3を支持するアース電極支持部材5と溶接電極2とを連結するロック機構8(8a、8b)をさらに備えていてもよい。
<溶接ガン>
溶接ガン1は、電極(溶接電極2、アース電極3、3)を備えた部材であり、当該電極をワークWに押し当てながら通電させることでワークWを溶接する部材である。
図1に示すように、溶接ガン1は、略棒状を呈し上下方向に設けられる溶接電極2と、略棒状を呈し上下方向に設けられる2つのアース電極3、3と、を有する。そして、2つのアース電極3、3は、溶接電極2が対称中心となるよう設置され、溶接電極2の左右側に溶接電極2から同じ距離(L)を隔てた位置に設置される。
なお、「溶接電極2が対称中心となるように設置」とは、言い換えると、溶接電極2を中心とした円周上に等間隔に設置するということである。
そして、アース電極3、3は、バネ部材4、4を介してアース電極支持部材5に支持され、アース電極支持部材5と溶接電極2とは、上方側で直接、またはいくつかの部材を介して連結している。
加圧機構6は、溶接ガン1の溶接電極2およびアース電極3、3により、ワークWを加圧する機構である。
詳細には、加圧機構6は、溶接ガン1を移動させる機構であり、当該溶接ガン1をワークWが設置されている方向(下方向)に移動させることで、溶接ガン1の溶接電極2およびアース電極3、3の先端によりワークWを加圧する機構である。
制御機構7は、溶接ガン1の溶接電極2とアース電極3、3との間に通電させる電流を制御する機構である。そして、制御機構7は、加圧機構6を制御する機構でもある。
そして、制御機構7は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力インターフェース等を備えるコンピュータである。
なお、制御機構7による片側スポット溶接装置10(電流、加圧機構6およびロック機構8)の詳細な制御方法については後記する。
ロック機構8は、上下方向(ワークWを加圧する方向)における溶接電極2の先端の位置をアース電極3、3の先端の位置に対して相対的に固定する機構である。
詳細には、ロック機構8は、図5に示すように、溶接電極2の外周面に設けられる係止穴8aと、アース電極3、3を上方から支持するアース電極支持部材5の内周面であって係止部8aに対向する位置に設けられるとともに、左右方向(ワークWを加圧する方向と垂直となる方向)に移動させることで係止穴8aに挿入可能な棒状を呈する係止部材8bと、から構成される。
この係止部材8bの左右方向への移動については、どのような機構で行われてもよく、例えば、油圧シリンダ等(図示せず)により行われればよい。
また、ロック機構8の係止穴8aがアース電極支持部材5の内側(または、アース電極3、3)に設けられ、係止部材8bが溶接電極2(または、溶接電極支持部材)に設けられていてもよい。
片側スポット溶接方法は、図4に示すとおり、ナゲットを形成させる前にワークWの温度を高くする予備通電工程S1と、予備通電工程S1の後、ワークWにナゲットを形成させるナゲット形成工程S2と、ナゲット形成工程S2の後、形成したナゲットを押し込みながら徐冷する徐冷工程S3と、を含む溶接方法である。
溶接を行うに際し、まず、ワークWに対して溶接ガン1の溶接電極2とアース電極3、3による加圧を開始する。当該加圧は、作業者が溶接を開始するにあたって、制御機構7に開始の信号を入力することにより開始されてもよいし、制御機構7のHDD等に記憶されているタイムテーブルに基づき開始されてもよい。
そして、当該加圧が安定した後、予備通電工程S1を行う。
予備通電工程S1とは、ナゲット形成工程S2の前に行う工程であり、電極2、3、3によりワークWを片側から加圧しつつ、ワークWに本通電の電流値(ナゲット形成工程S2における所定の電流値)よりも低い電流値で予備通電を行う工程である。
そして、予備通電工程S1は、図3を用いて説明すると、所定の加圧力FでワークWを加圧しつつ、本電流の電流値A2よりも小さな電流値A1で通電する区間(b)が示す工程である。
ナゲット形成工程S2とは、電極2、3、3によりワークWを片側から加圧しつつ、ワークWに所定の電流値で本通電を行う工程である。
そして、ナゲット形成工程S2は、図3を用いて説明すると、所定の加圧力FでワークWを加圧しつつ、電流値A2(所定の電流値)で通電する区間(c)が示す工程である。
徐冷工程S3とは、ナゲット形成工程S2後に行う工程であり、電極2、3、3によりワークWを片側から加圧しつつ、ワークWに本通電の電流値(ナゲット形成工程S2における所定の電流値)よりも低い電流値で通電を行う工程である。
そして、徐冷工程S2は、図3を用いて説明すると、所定の加圧力FでワークWを加圧しつつ、本電流の電流値A2よりも小さな電流値A3で通電する区間(d)が示す工程である。なお、電流値A3は本電流の電流値A2より小さければ、予備通電工程S1の電流値A1より大きくてもよいし、小さくてもよい。
なお、電流値A3は、電流値A2に対して小さければ特に限定されないが、A3は、A2の1/1.25〜1/3であることが好ましい。電流値A3を当該範囲とすることにより、ブローホールの発生の抑制という効果を発揮しつつ、適切な溶接を行うことができる。
徐冷工程S3における溶接電極2のワークWへの加圧力は、ナゲット形成工程S2における溶接電極2のワークWへの加圧力より低くなるように設定するのが好ましい。
そして、当該加圧力について、図6(b)を用いて説明すると、ナゲット形成工程S2における所定の加圧力Fから所定の時間で加圧力Fよりも低い加圧力F1まで低下させ、少なくとも徐冷工程S3が終了するまで加圧力F1を維持する。ここで、所定の時間については、特に限定されないが、溶接電極2のワーク2への沈み込みを回避すべく、できる限り短時間とするのが好ましい。例えば、0.5秒以下である。
なお、加圧力F1(徐冷工程S3における加圧力)については、加圧力F(ナゲット形成工程S2における加圧力)に対して低ければ特に限定されないが、F1は、Fの1/1.1〜1/3であることが好ましい。加圧力F1を当該範囲とすることにより、ブローホールの発生の抑制という効果を発揮しつつ、溶接電極2のワーク2への沈み込みを回避することができる。
一方、この徐冷工程S3における加圧力の制御を行う場合、図6(b)に示すように、徐冷工程S3における加圧力が小さい(F1)ことから、当該工程S3の間において、溶接電極2の変位量が変化していない、つまり、溶接電極2がワークWに沈みこんでいないことがわかる。その結果、図7(b)に示すように、ワークW1、W2の境界面において、ほとんど応力が発生しない。これにより、ワークW1、W2の境界面がずれることによる接合強度の低下を回避することができる。
≪片側スポット溶接方法を実施する際における片側スポット溶接装置の詳細な駆動方法≫
まず、溶接開始前の状態として、片側スポット溶接装置10の溶接ガン1をロボットアーム等によりワークWの上方に設置する(図2(a))。この状態では、ワークWに対して電流や圧力は加えられていない(図3(a))。
溶接開始の信号が制御機構7に入力されると、制御機構7は、加圧機構6に下方移動信号を出力する。
なお、制御機構7が下方移動信号を出力するトリガー(誘因)は、作業者が溶接開始の信号を制御機構7の入出力インターフェースに入力するといったものであってもよいし、制御機構7のHDD等に記憶されているタイムテーブルに基づくものであってもよい。
電極2、3、3による加圧が開始し、加圧力が安定した状態となった後、制御機構7は、電流値A1(例えば、5.0kA)の電流を通電するように電源にA1電流信号を出力する。
なお、制御機構7がA1電流信号を出力するトリガーは、加圧の開始後、所定時間の経過時に行うといったものであってもよいし、別途、加圧力測定手段(図示せず)から、入力される信号に基づくものであってもよい。
そして、制御機構7のHDD等に記憶されているタイムテーブルに基づき、所定時間(例えば、24サイクル)経過後、制御機構7は電流値A2(例えば、6.0kA)の電流を通電するように電源にA2電流信号を出力する。
電源にA2電流信号が入力されると、電源は溶接ガン1の電源2、3、3に電流値A2の電流を流す(図2(c)、図3(c))。
電源にA3電流信号が入力されると、電源は溶接ガン1の電源2、3、3に電流値A3の電流を流す(図2(d)、図3(d))。
なお、溶接中、溶接ガン1の電極2、3、3のワークWに対する加圧力が一定となるように、加圧力測定手段(図示せず)により加圧力を測定し、制御機構7に適宜入力される当該測定値に基づき加圧機構6を制御する構成となっていてもよい。
徐冷工程S3において加圧力を変更する場合は、制御機構7が、電源にA3電流信号を出力すると同時(または、略同時)に、係止部材8bの移動を制御する機構(図示せず)にロック信号を出力する。前記のとおり、電源にA3電流信号が入力されると、電源は溶接ガン1の電源2、3、3に電流値A3の電流を流すとともに(図2(d)、図3(d))、係止部材8bの移動を制御する機構は、係止部材8bを係止穴8aに挿入させる。つまり、ロック機構8の係止部材8bは、係止穴8aに嵌っていない状態(図5(a)参照)から、係止穴8bに嵌まった状態(図5(b)参照)となる。
アース電極3、3が当接する部分のワークWはあまり軟化していないことから、アース電極3、3がワークWに対して大きく沈み込むといったことはない。つまり、溶接時において、アース電極3、3は、ワークWに対して固定(位置決め)された状態となっている。そして、係止部材8bが係止穴8aに挿入されることにより、溶接電極2がアース電極3、3(およびアース電極支持部材5)に対し、上下方向において相対的に固定される。その結果、溶接電極2の先端の位置がアース電極3、3の先端の位置に対して相対的に固定されることとなる。したがって、溶接電極2の先端は、ワークW(溶接電極2が当接する部分)が軟化していても、ワークWに沈み込むような事態を回避することができる。よって、ワークW1、W2間の境界面がずれて接合強度が低くなってしまう(接合不良を引き起こす)といった事態を回避することができる。
なお、図5(a)、(b)では、アース電極3、3とアース電極支持部材5との間にバネ部材4、4が設けられているが、当該バネ部材4、4は、ナゲット形成工程S2における加圧力により十分に縮んでいる。よって、徐冷工程S3において、ロック機構8により、溶接電極2とアース電極支持部材5とが連結されても、バネ部材4、4がこの状態からさらに大きく縮むことはない。また、ナゲット形成工程S2においても、アース電極3、3(およびアース電極支持部材5)は上方から加圧機構6により加圧されていることから、バネ部材4、4が大きく伸びることもない。つまり、アース電極3、3とアース電極支持部材5との間にバネ部材4、4が設けられていても、徐冷工程S3では、アース電極支持部材5はアース電極3、3に対して上下方向に固定(位置決め)された状態となる。よって、図5(a)、(b)のように、バネ部材4、4が設けられていても、ロック機構8により、溶接電極2とアース電極支持部材5とを連結することで、溶接電極2の先端の位置がアース電極3、3の先端の位置に対して相対的に固定されることとなる。
また、係止部材8bが係止穴8aに挿入されることで、加圧機構6から溶接電極2に加えられていた圧力が、アース電極3、3(またはアース電極支持部材5)に分散されることとなり、溶接電極2のワークWに対する加圧力が低くなる。よって、溶接電極2の先端は、ワークW(溶接電極2が当接する部分)が軟化していても、ワークWに沈み込むような事態を回避することができる。
また、ワークWに対する溶接電極2の沈み込み量をセンサーにより計測し、所定の沈み込み量となったタイミングで、係止部材8bを係止穴8aに挿入させるという構成であってもよい。
また、制御機構7が、電源にA3電流信号を出力すると同時(または、略同時)に、加圧機構6にF1加圧力信号を出力し、当該F1加圧力信号が入力された加圧機構6は、溶接電極2のワークW表面に対する加圧力がF1となるように、溶接ガン1を若干上方に駆動させるといった構成であってもよい。この場合、ロック機構8は、設けなくてもよい。
また、片側スポット溶接装置10の溶接ガン1が、バネ部材4、4、アース電極支持部材5を備える場合について説明したが、これらの部材は必須ではなく、溶接電極2、アース電極3、3以外の構成については、従来公知の構成であってもよい。
2 溶接電極(電極)
3 アース電極(電極)
5 アース電極支持部材
6 加圧機構
7 制御機構
8 ロック機構
10 片側スポット溶接装置
W、W1、W2 ワーク
S1 予備通電工程
S2 ナゲット形成工程
S3 徐冷工程
Claims (3)
- ワークの溶接部位に、前記ワークの片側からのみ電極を当てて溶接する片側スポット溶接装置であって、
前記ワークの溶接部位に前記片側から当接する溶接電極と、
前記ワークに前記片側から当接するアース電極と、
を有する溶接ガンを備え、
前記溶接電極および前記アース電極により前記ワークを加圧する加圧機構と、
前記溶接電極と前記アース電極との間に通電させる電流を制御する制御機構と、をさらに備え、
前記制御機構は、前記溶接電極および前記アース電極により前記ワークを加圧しつつ、前記ワークに所定の電流値で本通電を行わせた後、前記溶接電極および前記アース電極により前記ワークを加圧しつつ、前記ワークに前記所定の電流値よりも低い電流値で通電を行わせ、
前記溶接電極の先端の位置を前記アース電極の先端の位置に対して相対的に固定することが可能なように、前記溶接電極または前記溶接電極を支持する溶接電極支持部材と、前記アース電極または前記アース電極を支持するアース電極支持部材と、を連結するロック機構をさらに備え、
前記制御機構は、前記本通電後の前記所定の電流値よりも低い電流値で通電を開始させる際に、前記ロック機構により、前記溶接電極または前記溶接電極支持部材と、前記アース電極または前記アース電極支持部材と、を連結させることを特徴とする片側スポット溶接装置。 - 前記制御機構は、前記本通電の前に、前記溶接電極および前記アース電極により前記ワークを加圧しつつ、前記ワークに前記所定の電流値よりも低い電流値で予備通電を行わせることを特徴とする請求項1に記載の片側スポット溶接装置。
- 前記アース電極は、2つ以上であるとともに、前記溶接電極が対称中心となるように設置されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の片側スポット溶接装置。
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