JP5748411B2 - 片側スポット溶接による接合品の製造方法 - Google Patents

片側スポット溶接による接合品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、片側スポット溶接による接合品の製造方法に関し、具体的には、複数の金属製の被溶接材を重ね合わせ、一の被溶接材の被溶接部に溶接電極を配置し、他の一の被溶接材の被溶接部以外の位置にバック電極を配置して、両電極間に通電することによりこれらの被溶接材を溶接する、いわゆる片側スポット溶接による接合品の製造方法に関する。
板厚方向へ重ね合わせた複数の金属製の被溶接材を一対の溶接電極で挟み込んで通電し、抵抗発熱により溶融させて複数の金属製の被溶接材を接合するダイレクトスポット溶接では、被溶接材の一つが閉断面構造の部材であると溶接が難しい。そこで、このような被溶接材の溶接には、一方の被溶接材の被溶接部にドーム型の溶接電極を配置するとともに他方の被溶接材の被溶接部以外の位置にバック電極を配置し、溶接電極とバック電極との間を通電する片側スポット溶接が利用されている。
しかしながら、この片側スポット溶接法では、溶接電極からバック電極までの通電経路が長く、また部品の変形を避けるためダイレクトスポット溶接と比べて低い加圧力を用いることから、被溶接部を通らずにその他の接触箇所や被溶接材の内部を通ってバック電極に至る電流が生じ易い。この電流は、溶接点での溶融したナゲットの形成に寄与しない電流(無効電流)となる。
片側スポット溶接やシリーズ溶接のようなインダイレクトスポット溶接において無効電流の発生を抑制し、溶接点に溶融したナゲット(本明細書では「溶融ナゲット」という。)の形成を促進する方法として、種々の技術が提案されている。
例えば、特許文献1〜3には、被溶接材の溶接位置に座面または突起を設けることにより、溶接位置における被溶接材同士の間の接触箇所を限定して電流を集中させる方法が開示されている。
また、無効分流を低減するために電極での加圧力を上げると部品に変形が生じ、この変形により生じた接触部がさらに無効分流を発生し易くする場合があることから、特許文献4には、閉断面構造部品の中にサポート部品を配置した状態で溶接する方法が開示されている。
さらに、特許文献5には、シリーズスポット溶接において、通電の初期に定常よりも高い加圧力を負荷して定常よりも高い電流を流して被溶接材同士の間に溶融ナゲットを設けることにより溶接電流の通電パスを確保した後、加圧力と電流を下げて通電して溶融ナゲットを拡大させる多段通電法が開示されている。
特開2002−239742号公報 特開2007−331012号公報 特開2009−095881号公報 特開2007−83301号公報 特開平11−333569号公報
しかし、特許文献1〜3に開示された方法では、溶接前に被溶接材の加工を要するために、接合品の製造コストが上昇する。
また、特許文献4に開示された方法では、サポート機能を有する特殊な溶接機を用いるか、溶接前に閉断面部品の内部にサポート部品を配置する作業が必要となる。これは部品の形状に制限があることに加え、溶接による部品変形を伴う場合には、溶接後のサポート部品の除去が困難になることがある。
さらに、特許文献5に開示された方法では、溶接前の加工や準備作業を必要としない利点があるものの、溶接中の加圧力制御が可能な特殊な溶接機を用いる必要がある上、初期の高電流溶接時の被溶接材同士の間や、被溶接材と溶接電極との間からのスパッタを生じる恐れがある。
一般に抵抗溶接においては、溶接電流を増加させると溶融ナゲットも拡大するが、溶接電流が高くなり過ぎると被溶接材と被溶接材との間から溶融した金属が飛散するチリが発生する。片側スポット溶接では、溶接部の構成が上下で非対称であるために溶接電極側に偏った溶融ナゲットが形成され、電流を高くし過ぎた場合には、上記のような被溶接材と被溶接材との間からのチリや、溶接電極と被溶接材との間からチリ(表面チリ)が発生する場合もある。
このようなチリあるいは表面チリが発生した場合には、溶融ナゲットの体積が減少して継手品質が損なわれるとともに、飛散したチリにより溶接部やその周辺の外観品質が損なわれる。したがって、チリや表面チリの発生を伴わずに十分な大きさの溶融ナゲットを得られる溶接方法が必要である。
本発明者は、片側スポット溶接において、通電初期に低い電流で被溶接材と被溶接材との間に溶融ナゲットを形成して、溶接しようとする位置での被溶接材と被溶接材との間の通電パスを確保し、その後にこの溶融ナゲットを拡大させるための高い電流を通電する方法(以下「2段通電」という。)の基礎試験を行い、この2段通電によれば、通電開始から通電終了まで一定の溶接電流を付加する通電(以下「単通電」という。)よりも高い電流まで、チリを発生させずに安定した通電が可能であるか否かを検討した。
図1(a)は、2段通電の溶接電流および通電時間の関係を示す模式図であり、図1(b)は、単通電の溶接電流および通電時間の関係を示す模式図である。なお、図1(a)に示す2段通電の模式図は、第1通電に継続して第2通電を行うケースであるが、第1通電と第2通電との間に通電を休止するケースも検討した。
基礎試験の結果を以下に説明する。
図2は、基礎試験の概要を示す説明図である。
図2(a)に示すように、引張り強さ590MPa、板厚1.6mmの板状鋼板からなる試験体1と、母材引張り強さ1500MPa、肉厚1.8mmの角型鋼管からなる試験体2とを重ね併せて種々の条件で抵抗溶接し、ナゲット3の形成状況と、溶接中のチリ発生の有無とを評価するとともに、図2(b)に示すように、溶接後に接合品4における試験体1を試験体2に対して捻って溶接部位(ナゲット3)を破断させ、図2(c)に示すように、破断面を観察することにより破断径(接合径)dを測定した。
溶接の際には、溶接電極5を試験体1に当てるとともにバック電極6を試験体2に当てて、加圧および通電を行った。試験体1は、幅30mm、長さ50mmであり、試験体2は、50mm×70mmの断面形状を有し、試験体2の70mm幅面を試験体1の長手方向に配置した試験(管幅70mm)と、50mm幅面を試験体1の長手方向に配置した試験(管幅50mm)との両方を行った。
なお、溶接電極5として、後述する図7に示すように、湾曲した先端R部(湾曲面)29aと、先端R部29aに続く側壁部29bと有するドーム状のチップ形状を有する溶接電極を用いた。先端R部29aと側壁部29bとの境界を肩部29cという。
表1に、第1通電終了時の被溶接材同士の間の接合状況、溶接中のチリ発生状況ならびに破断径を、溶接条件とともに示す。なお、第1通電終了時のナゲットの形成状況は、第1通電のみの溶接後に試験体1を試験体2に対して捻って破断させ、破断面を観察することにより調査した。
Figure 0005748411
この基礎試験により下記の知見を得た。
(1)試験番号1〜4は、単通電、加圧力250kgfで溶接した結果であり、チリが発生しない限界電流は11kAであるとともにそのときの破断径は5.5mmであった。
(2)試験番号5〜13は、2段通電、加圧力250kgfで溶接した結果であり、チリが発生しない限界電流は13kAであるとともにそのときの破断径は6.7mmであった。
(3)トータルの通電時間が同じあっても、2段通電によりチリが発生しない限界電流を高め、ナゲット径を拡大することができる。
(4)試験番号7、11は、第2通電中にチリが発生した。この理由は、第1通電時の入熱量(溶接電流×通電時間)が過小であるため、第1通電終了時に試験体1、2の間に溶融ナゲットが形成されなかったため、第2通電時に溶接電流を被溶接部に集中させる効果を十分に得られなかったためと推察される。したがって、2段通電では、第1通電により試験体1、2の間に溶融ナゲット3を形成することが重要となる。
(5)試験番号10は、第1通電時の溶接電流が過大であるため、第1通電時にチリが発生した。
(6)試験番号13は、試験番号12に比べて破断径が減少した。これは、第1通電時の入熱量(溶接電流×通電時間)が過大であるため、溶接電極5の押圧による試験体1、2の変形が大きく、試験体1、2の接触面積が過大となり、さらに溶接電極5の肩部が試験体1に触れる状態となったために、第2通電開始時の通電パスが溶接電極5の肩部に集中し、被溶接部の電流密度が低下したためと推察される。
(7)したがって、第1通電においてチリ発生限界電流未満の電流で試験体1、2の間に溶融ナゲット3を形成して試験体1、2の間の通電パスを確保し、次いで第2通電において溶融ナゲット3を成長させるための第1通電に比べて高い電流を通電することにより、単通電に比べてチリ発生限界電流が著しく高まり、ナゲット径が大幅に拡大する。これにより単通電に比べて破断径dが著しく大きくなる。
(8)試験番号14、15は、第1通電と第2通電の間に溶接電極5での加圧を保持したまま通電を停止する通電休止を設けたものであるが、いずれも第2通電終了時までチリ発生を伴うことなく、5.5mmを超える破断径を得ることができた。
(9)試験番号16、17は、溶接時の加圧力を350kgとしたものであり、試験番号16は第1通電時の入熱量が過小であるため第1通電終了時に試験体1、2の間に溶融ナゲット3が形成されず、第2通電中にチリが発生した。一方、試験番号17は第1通電終了時に試験体1、2の間に溶融ナゲット3が形成し、第2通電終了までチリ発生を伴うことなく、6mmを超える破断径を得ることができた。
(10)試験番号18〜22は、試験番号1〜18とは異なる試験体2を用いた場合であるが、2段通電の有効性を確認した。
本発明は、上記基礎試験の知見(1)〜(10)に基づいて完成されたものである。
本発明は、複数の金属製の被溶接材の重ね合わせた方向の最も外側に位置する二つの被溶接材のうち、一の被溶接材の被溶接部を、湾曲面と湾曲面に続く側壁部と湾曲面および側壁部の境界である肩部とを有するドーム状のチップを有する溶接電極で押圧するとともに、他の一の被溶接材の被溶接部以外の位置にバック電極を配置し、溶接電極とバック電極との間に通電を行うことにより複数の被溶接材を溶接する片側スポット溶接により接合品を製造する際に、通電は、接触している被溶接材間に溶融ナゲットを形成する第1通電と、この第1通電の電流よりも大きな電流を通電することにより第1の通電により形成された溶融ナゲットを拡大する第2通電とを有し、第1通電の溶接電流および/または通電時間を、溶接電極の先端に形成された湾曲面の周囲の肩部と一の被溶接材との接触を防止するように、調整すること、および、第1通電と第2通電との間で通電を休止することを特徴とする片側スポット溶接による接合品の製造方法である。
次に、本発明による溶接性の改善の機構を説明する。
図3は、被溶接材7、8に溶接電極9およびバック電極10a、10bを介して2段通電を行って溶接する場合における溶接電流の流れと、被溶接材7、8間のナゲット11の形成状態とを模式的に示す説明図であり、図3(a)は、第1通電により溶融ナゲット11が形成される場合であり、図3(b)は、第1通電により溶融ナゲット11が形成されない場合である。図3(a)および図3(b)における(A)、(B)、(C)は、それぞれ、第1通電終了時、第2通電開始時、第2通電中を示す。
図3(a)に示すように、第1通電時に被溶接材7、8の界面に溶融ナゲット11が形成される場合には、この溶融ナゲット11が被溶接材7、8間の通電パスとなるため、第2通電開始時に溶接電流12が被溶接材7、8の界面に集中し、続く通電中に電流密度の高い被溶接材7、8間の溶融ナゲット11が効率的に発熱し、チリ発生が抑制されながらナゲット径が拡大する。
これに対し、図3(b)に示すように、第1通電時に溶融ナゲット11が形成されない場合には、第2通電の溶接電流12が被溶接材7、8の界面に集中しないため、電流密度の高い溶接電極9側に片寄った溶け込みの浅い溶融ナゲット11が形成され、さらに通電を続けても被溶接材7、8の界面の溶融ナゲット11の径が拡大し難く、溶接電極9と被溶接材7との接触部から表面チリ13が発生し易い。
なお、図3(b)は2段通電において第1通電時に溶融ナゲット11が形成されない場合であるが、単通電の場合にも同様の現象が見られる。
すなわち、第1通電により溶融ナゲット11を形成することにより、単通電では被溶接材同士の間や、被溶接材と溶接電極との間からチリが発生するために不可となる高電流を、第2通電ではチリや表面チリの発生を伴わずに通電することができるようになり、単通電に比べて大きな溶融ナゲット11を形成することが可能となる。したがって、本発明の2段通電により、所定のナゲット径を確保できる溶接電流の範囲が拡がり、安定した溶接が可能となる。
本発明により、片側スポット溶接により接合品を製造する際に、被溶接材の溶接前の加工や、溶接中の加圧力制御などを必要とせずに、被溶接材同士の間や被溶接材の表面からのチリの発生を抑制し、所望のナゲット径を有するナゲットを安定して形成することができるようになる。
図1(a)は、2段通電の電流および時間の関係を示す模式図であり、図1(b)は、単通電の電流および時間の関係を示す模式図である。 図2は、基礎試験の概要を示す説明図である。 図3は、被溶接材に溶接電極およびバック電極を介して2段通電を行って溶接する場合における溶接電流の流れと被溶接材同士の間の溶融ナゲットの形成状態を模式的に示す説明図であり、図3(a)は、第1通電により溶融ナゲットが形成される場合であり、図3(b)は、第1通電により溶融ナゲットが形成されない場合である。 図4(a)〜図4(f)は、片側スポット溶接の形態例を模式的に示す説明図である。 図5は、本発明の通電要領を模式的に示す説明図である。 図6は、第1通電終了時に被溶接材の界面に溶融ナゲットが形成された状態を模式的に示す説明図である。 図7は、第1通電終了時の被溶接材と溶接電極との接触状況を模式的に示す説明図であり、図7(a)は、溶接電極のチップ形状を示し、図7(b)は第1通電終了時の被溶接材と溶接電極との接触領域が溶接電極の先端R部に限定される場合を示し、図7(c)は、第1通電終了時の被溶接材と溶接電極との接触領域が溶接電極の肩部にまで及ぶ場合を示す。 図8は、通電休止によるナゲット径拡大のメカニズムを模式的に示す説明図であり、図8(a)は第1通電終了時の状態を示し、図8(b)は通電休止中を示し、図8(c)は第2通電開始時を示す。
以下、本発明を実施するための形態を説明する。なお、以降の説明では、二つの被溶接材を重ね合わせて溶接する場合を例にとるが、本発明はこの形態に限定されるものではなく、三つ以上の複数の被溶接材を重ね合わせる場合にも同様に適用される。この場合、溶接電極、バック電極が接触するのは、重ね合わされた三つ以上の複数の被溶接材のうち、重ね合わせた方向の最も外側に位置する二つの被溶接材である。
<片側スポット溶接>
図4(a)〜図4(f)は、片側スポット溶接の形態例を模式的に示す説明図である。図4(a)〜図4(c)は、シート状の被溶接材14と閉断面部材の被溶接材15とを、ドーム型溶接電極17と、板状バック電極18またはドーム型バック電極19とを用いて片側スポット溶接することによって接合品16を製造する状況を示す。また、図4(d)〜図4(f)は、シート状の被溶接材20とシート状の被溶接材21とを、ドーム型溶接電極17と、板状バック電極23または板状支持部品24とを用いて片側スポット溶接することによって接合品22を製造する状況を示す。
図4(a)〜図4(c)に示すように、片側スポット溶接は、一方の被溶接材14の被溶接部に溶接電極17を押圧し、他方の被溶接材15の被溶接部とは別の位置にバック電極18または19を配置し、溶接電極17とバック電極18または19との間に溶接電流を通電し、抵抗発熱により被溶接部を溶融させて、被溶接材14と被溶接材15とを溶接して接合品16を製造する。
また、図4(d)〜図4(f)に示すように、片側スポット溶接は、一方の被溶接材20の被溶接部に溶接電極17を押圧し、他方の被溶接材21の被溶接部とは別の位置にバック電極23を配置し、溶接電極17とバック電極23との間に溶接電流を通電し、抵抗発熱により被溶接部を溶融させて、被溶接材20と被溶接材21とを溶接して接合品22を製造する。
バック電極18、19または23の形状や取付け位置、被溶接材14、15、20、21の形状には、特に制限はない。
溶接電極17として、例えば、後述する図7に示すように、湾曲した先端R部(湾曲面)29aと先端R部29aに続く側壁部29bと、先端R部29aおよび側壁部29bの境界である肩部29cと有するドーム状のチップを有する溶接電極29を用いることができる。
<通電方法>
図5は、本発明の通電要領を模式的に示す説明図である。
図5に示すように、本発明では、所定の加圧力を保持した状態で第1通電と第2通電とにより溶接を行う。第1通電と第2通電との間に通電を休止する通電休止を設けるのが望ましい。
なお、第1通電を開始する前に一定時間(スクイズ時間)加圧力を負荷し、第2通電を終えた後に一定時間加圧を保持(保持時間)してから加圧力を徐荷することが、通電中の加圧力が安定するので、望ましい。
以下、「第1通電」、「通電休止」、「第2通電」について説明する。
<第1通電>
図6は、第1通電終了時に被溶接材25、26の界面に溶融ナゲット27が形成された状態を模式的に示す説明図である。なお、図6における符号28は溶接電極を示し、バック電極は省略してある。
図6に示すように、第1通電により被溶接材25、26の間(界面)に溶融ナゲット27が形成され、かつ第1通電中にチリが発生しないように、第1通電の溶接電流と通電時間が設定される。被溶接材25、26の形状や加圧力などの条件は、溶融ナゲット27の形成やチリの発生に影響を及ぼすので、これらの条件を踏まえて第1通電の溶接電流と通電時間の適正範囲が決定される。
図7は、第1通電終了時の被溶接材30と溶接電極29との接触状況を模式的に示す説明図であり、図7(a)は、溶接電極29のチップ形状を示し、図7(b)は第1通電終了時の被溶接材30と溶接電極29との接触領域が溶接電極29の先端R部29aに限定される場合を示し、図7(c)は、第1通電終了時の被溶接材30と溶接電極29との接触領域が、溶接電極29の肩部29cを含む場合を示す。
被溶接材30は、通電の際の溶接電極29の押し込みにより、溶接電極29の反対側にたわむ変形を生じる。この変形が過大となると、図7(c)に示すように、溶接電極29の肩部29cを含む領域が被溶接材30に接触するため、第2通電開始時の通電パスが肩部29cに集中し、被溶接部の電流密度が低下する。したがって、この変形は、図7(b)に示すように、肩部29cを含む領域が被溶接材30に接触するのを防止し、溶接電極29と被溶接材30とが先端R部29aでの接触を保つことができる範囲にするのが望ましい。
なお、溶接電極29の先端R部29aと肩部29cの両方が被溶接材30に接触する場合にも、先端R部29aに比べ肩部29cに荷重が集中するため、電極−板表面の接触抵抗が低くなり、肩部29cは優先的な通電経路となり易い。したがって、先端R部29aと肩部29cの両方が接触している状態でも、肩部29cのみが接触している場合と同様に、被溶接部の電流密度が低下する。
第1通電の溶接電流が過小となるか、または通電時間が過小となると、第1通電終了時に被溶接材同士の間に溶融ナゲットが形成されず、第2通電開始時に通電パスが確保されないため、被溶接材同士の接合界面への電流集中が得られない。このため、溶接電極側の被溶接材が優先的に発熱して溶接電極側に片寄った溶融ナゲットが形成され、溶接電極と被溶接材との間からのチリ(表面チリ)が発生し易い。
一方、第1通電の通電時間が過大となると、第1通電終了時における電極の押し込みによる変形が大きくなり、溶接電極の先端R部のみならず肩部もが被溶接材に接触するようになるため、この位置での電流密度が増加して過剰に発熱し、肩部と被溶接材との間からのチリ(表面チリ)が発生し易い。したがって、第1通電終了時に被溶接材と肩部とが接触しないように、被溶接材の押し込みによる変形を抑制することが望ましい。
<休止時間>
図5に示すように、第1通電と第2通電との間に加圧力を保持したまま通電を停止する通電休止時間を設けることにより、2段通電によるナゲット径の拡大効果が一層大きくなる。したがって、通電休止時間を設けるのが望ましい。溶接能率の観点から、休止時間は最大20サイクルとするのが望ましく、より望ましくは最大10サイクルである。
通電休止によるナゲット径の拡大のメカニズムは、以下のように推察される。
図8は、本発明により被溶接材31、32を片側スポット溶接する場合における通電休止によるナゲット径の拡大のメカニズムを模式的に示す説明図であり、図8(a)は第1通電終了時の状態を示し、図8(b)は通電休止中を示し、図8(c)は第2通電開始時を示す。なお、図8における符号33は溶接電極を示し、バック電極は省略してある。
片側スポット溶接では、図8(a)に示すように、第1通電により溶接電極33側が広がった上下非対称の溶融ナゲット34が形成されるが、通電停止に伴う溶接電極33による被溶接材31、32の抜熱は溶接電極33に接触する被溶接材31のほうが大きいため、図8(b)および図8(c)に示すように、凝固および収縮の過程で被溶接材31が反って被溶接材32との接触面積が減少し(シートセパレーション発生)、第2通電開始時の通電パスがさらに制限される。また、通電停止により溶融ナゲット34が凝固し、溶融ナゲット34の温度の低下に伴い、電気抵抗が下がるため、第2通電開始時の通電パスがさらに安定となる。
さらに、溶融ナゲット34の外周にあたる被溶接材31と被溶接材32との界面には、溶融には至らないが高温で加圧保持され金属結合が生じた圧接部35が存在するが、通電休止の過程でこの圧接部35の結合強度が増すことにより、第2通電開始時の急激な温度上昇と、界面の溶融が生じた際の被溶接材31と被溶接材32との界面からのチリ発生とが抑制される。
<第2通電>
図5に示すように、第2通電では、第1通電よりも高い溶接電流を通電する。第2通電により、第1通電により形成された被溶接材同士の間の溶融ナゲットが成長し、単通電に比べてチリ発生限界電流が大きくなり、ナゲット径が拡大される。第1通電と第2通電との間に通電休止を設けることにより、上記効果は一層促進される。
<加圧力>
溶接中の加圧力は、接合しようとする部品の形状や寸法に基づき適正な範囲に選定される。加圧力が過大となると、第1通電において電極と被溶接材との接触面積が拡大し、電流密度が低下するため、被溶接材同士の間における溶融ナゲットの形成が困難となる。一方、加圧力が低過ぎる場合には、溶接電極側の被溶接材の表面からのチリ発生が低電流条件でも起こり易くなるため、第1通電の適正な電流範囲が狭くなり、安定した通電が難しくなる。なお、溶接中の加圧力は、図5に示すように一定とすることができるが、溶接中に加圧力変更を行う多段加圧としてもよい。
以上の説明では、二つの被溶接材を重ね合わせて溶接する場合を例にとったが、上述したように本発明はこの形態に限定されるものではなく、三つ以上の複数の被溶接材を重ね合わせる場合も同様に適用できる。
本発明を、実施例を参照しながら、具体的に説明する。
本発明による通電電流の適正範囲の拡大効果を確認するため、図2に示す要領で溶接試験を行った。
試験体1と試験体2には、それぞれ引張強度590MPaの板厚1.6mmの板状鋼板と、肉厚1.8mmの高張力角型鋼管を用い、第1通電時の溶接電流9kA、通電時間15サイクルで、休止時間、第2通電時の溶接電流を種々変更して、チリ発生状況を調査するとともに、溶接後に、前述の基礎試験と同様に試験体1を捻じって溶接部を破断させ、破断面を観察することにより破断径を測定した。
なお、比較のため、単通電による溶接試験も実施した。表2に試験結果を示す。
Figure 0005748411
表2の試験番号23〜25に示すように、単通電では、溶接電流12kAでチリが発生し、溶接電流11kAで破断径は5.5mmであった。
これに対し、試験番号26〜30に示すように、2段通電(通電休止無し)では、溶接電流14kAまでチリ発生を伴わずに通電が可能となり、溶接電流14kAで破断径は7.5mmであった。
また、試験番号31〜40に示すように、2段通電(通電休止有り)では、溶接電流15.5kAまでチリ発生を伴わずに通電が可能となり、溶接電流15.5kAで破断径は7.7mmであった。
表3は、上記試験結果に基づき、破断径が5.5mmとなる電流からチリが発生する電流までの範囲を整理したものであり、この範囲が広いほど安定した通電が可能となる。
Figure 0005748411
表3に示すように、チリが発生しない限界電流(チリ発生限界電流)は、単通電では11kA、2段通電で休止なしでは14kA、2段通電で休止有りでは15.5kAとなり、その結果、チリの発生を伴わずに5.5mm以上の破断径が得られる通電範囲は、単通電に比べ、2段通電では拡大し、特に2段通電で通電休止を設けることによりこの範囲がさらに拡大するため、安定した通電が可能であることが判った。
1 試験体
2 試験体
3 ナゲット
4 接合品
5 溶接電極
6 バック電極
7、8 被溶接材
9 溶接電極
10a、10b バック電極
11 ナゲット
12 溶接電流
13 表面チリ
14 被溶接材
15 被溶接材
16 接合品
17 ドーム型溶接電極
18 板状バック電極
19 ドーム型バック電極
20 シート状の被溶接材
21 シート状の被溶接材
22 接合品
23 板状バック電極
24 板状支持部品
25、26 被溶接材
27 溶融ナゲット
28 溶接電極
29 溶接電極
29a 先端R部
29b 側壁部
29c 肩部
30 被溶接材
31、32 被溶接材
33 溶接電極
34 溶融ナゲット
35 圧接部

Claims (1)

  1. 複数の金属製の被溶接材の重ね合わせた方向の最も外側に位置する二つの被溶接材のうち、一の被溶接材の被溶接部を、湾曲面と該湾曲面に続く側壁部と前記湾曲面および前記側壁部の境界である肩部とを有するドーム状のチップを有する溶接電極で押圧するとともに、他の一の被溶接材の被溶接部以外の位置にバック電極を配置し、前記溶接電極と前記バック電極との間に通電を行うことにより複数の前記被溶接材を溶接する片側スポット溶接により接合品を製造する際に、前記通電は、接触している前記被溶接材間に溶融したナゲットを形成する第1通電と、該第1通電の電流よりも大きな電流を通電することにより前記ナゲットを拡大する第2通電とを有し、
    前記第1通電の溶接電流および/または通電時間を、前記溶接電極の先端に形成された前記湾曲面の周囲の前記肩部と前記一の被溶接材との接触を防止するように、調整すること、および
    前記第1通電と前記第2通電との間で通電を休止すること
    を特徴とする片側スポット溶接による接合品の製造方法。
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