JP2014200797A - 抵抗スポット溶接方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】板隙等の外乱の影響を抑制し、金属板を安定して溶接する。
【解決手段】加工条件設定工程S10で、外側に薄い金属板を含む3枚以上の金属板の界面に溶融部を形成するための2つの加工条件を設定する。又、複合条件設定工程S20で、設定した2つの加工条件を、加圧力が高い加工条件又は電流値が小さい加工条件から順番に組み合わせて、2段階の複合条件を設定する。そして、溶接工程S30で、設定した複合条件下で溶接し、1段階目の加工条件下で総板厚中心部に近い界面を効率よく発熱させ、2段階目の加工条件下で薄い金属板を含む金属板間の界面を効率よく発熱させる。これにより、総板厚中心部に近い界面に板隙が存在するような場合にも、加圧力が高く電流値が小さい加工条件により、先に総板厚中心部に近い界面を接合するため、板隙の影響を抑制することができ、全ての金属板を安定して溶接することが可能となる。
【選択図】図1

Description

本発明は、抵抗スポット溶接方法及び抵抗スポット溶接装置に関するものである。
従来から、複数の金属板を溶接する際に、抵抗溶接の一種である抵抗スポット溶接が用いられている。抵抗スポット溶接は、一対の電極により重ね合わせた金属板を挟み、金属板に電極を接触させ、電流を流してその抵抗熱で金属を加熱・溶融すると共に、加圧力を加えて接合する溶接方法である。例えば、図7(a)に示すような3枚の金属板20、22、24を、抵抗スポット溶接で溶接する場合、通常は総板厚Tの中心近傍を起点として溶融部50が形成される。この理由について図7(b)を参照して説明すると、抵抗スポット溶接は、上述したように金属の電気抵抗発熱を利用した溶接法であるため、一対の電極16a、16b間の通電により、金属板全体が発熱する。しかし、電極16a、16bは、電極磨耗の抑制や溶着を回避するために、図中矢印yaで示すイメージの如く水冷されている。このため、電極16a、16bの近傍に位置する金属板は、図中矢印ybで示すイメージの如く抜熱され、総板厚の中心近傍に熱が残る。このようにして、総板厚の中心近傍を起点として溶融部が形成される。なお、図中peで示す破線は、一対の電極16a、16b間の通電をイメージしたものである。
上述したような理由により、一対の電極16a、16bにより加熱することで、図7(c)に示すように、総板厚の中心近傍を起点とした、金属板22、24間の界面Ibを接合するような大きさの溶融部50が形成される。ここで、3枚の金属板20、22、24は、図7(a)に示すように、外側の金属板20の板厚t1の総板厚Tに対する割合が小さい組み合わせであるため、金属板20、22間の界面Iaを接合するためには、図7(d)に破線52で示す大きさに溶融部50を形成する必要がある。しかしながら、このような大きさの溶融部50を形成するために、電極16a、16bにより更に加熱すると、溶融部50が過加熱状態となり、図7(d)に符合58で示すような「散り」と呼ばれる溶融金属の飛散現象が発生してしまう。これにより、溶融部50が縮小してしまうため、界面Iaを接合するような溶融部50を形成することが困難であった。
次に、図8(a)に示すような薄い金属板20を含む2枚の金属板の組み合わせや、図8(b)に示すような薄い金属板20、24を外側に含む3枚の金属板の組み合わせを、抵抗スポット溶接する場合について説明する。これらの場合においても、上述したように、総板厚の中心近傍から溶融部50が形成されることから、金属板20、22間の界面Iaの接合に必要な溶融部52や、金属板22、24間の界面Ibの接合に必要な溶融部54を形成するために、本来溶融する必要がない総板厚の中心近傍の不必要な溶融部56が形成されていた。このため、必要以上のエネルギーが消費されることとなっていた。
一方、複数の金属板に加える加圧力を制御することで、上述したような課題の解決を図る方法が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。この方法では、電極で金属板に与える電流値CVと加圧力WPを、図9のグラフに示すように2段階に制御して、複数の金属板を溶接する。まず、1段階目の制御において、加圧力WPを低く、電流値CVを大きく制御することにより、図10(a)に示すように界面Iaにおける金属板の接触面積を小さくし、接触抵抗を大きく保つようにする。これにより、界面Iaの発熱効率を高めて発熱領域60のように発熱させ、図10(b)のように界面Iaを接合するような溶融部50aを形成する。次に、2段階目の制御において、加圧力WPを1段階目よりも高く、電流値CVを1段階目よりも小さくなるように制御することで、総板厚の中心近傍を発熱させ、図10(c)のように界面Ibを接合するような溶融部50bを形成する。このようにして、大きな溶融部を一度に形成することなく、又、不必要な溶融部の形成を抑制して、界面Ia、Ibを接合するものである。
特開2006−55898号公報 特開2004−358500号公報
ここで、上述した方法を用いて、図11(a)に示すような界面Ibに板隙62が存在する金属板の組み合わせを溶接する場合について言及する。この場合には、1段階目において、加圧力WPが低く制御されるものの、界面Ibに板隙62が存在するため、図11(b)に示すように各金属板が撓み、界面Iaにおける金属板の接触面積が大きくなり、発熱領域60が広がってしまう。この結果、1段階目では、界面Iaに溶融部が形成されず、金属板の接触面積が小さい界面Ibに小さな溶融部50bが形成される。続いて、2段階目では、総板厚の中心近傍が発熱され、界面Ibを接合する溶融部50bが大きくなるものの、図11(c)のように、界面Iaまで達するような大きさにはならず、結果として界面Iaが接合されないことになる。
又、高加圧力で事前に加圧し、板隙62を潰した後に、1段階目の制御を行う方法も考えられるが、高張力の金属板を含む組み合わせの場合、塑性変形しないため、1段階目の制御において加圧力を下げた時点で金属板の形状が戻ってしまう。更に、軟金属板のみの組み合わせの場合でも、事前の加圧により塑性変形するものの、板隙62を潰した時点で界面Iaの金属板の接触面積が増大するため、界面Iaに溶融部を形成することが困難になってしまう。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、板隙等の外乱の影響を抑制し、金属板を安定して溶接することにある。
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではない。そのため、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
(1)外側に他の金属板よりも薄い金属板を含むようにして重ね合わせた3枚以上の金属板を一対の電極間で溶接する抵抗スポット溶接方法であって、前記3枚以上の金属板の複数の界面に溶融部を形成するための加圧力及び通電する電流値を含む加工条件を、複数の界面それぞれに対して設定する加工条件設定工程と、該加工条件設定工程で設定した前記各加工条件を、前記一対の電極による加圧力が高い加工条件又は通電する電流値が小さい加工条件から順番に組み合わせて、複数段階の加工条件で構成した複合条件を設定する複合条件設定工程と、該複合条件設定工程で設定した前記複合条件に基づいて前記3枚以上の金属板を溶接する溶接工程とを含む抵抗スポット溶接方法(請求項1)。
本項に記載の抵抗スポット溶接方法は、他の金属板よりも薄い金属板を外側に重ね合わせた3枚以上の金属板を加工対象とし、加工条件設定工程と、複合条件設定工程と、溶接工程とを含むものである。加工条件設定工程では、重ね合わせた3枚以上の金属板の複数の界面に溶融部を形成するための加工条件を、複数の界面それぞれに対して設定する。これらの加工条件には、一対の電極により金属板に加える加圧力及び通電する電流値が含まれている。
又、複合条件設定工程では、加工条件設定工程で設定した各加工条件を組み合わせて、複数段階の加工条件で構成した複合条件を設定する。この際、各加工条件は、一対の電極により金属板に加える加圧力が高い加工条件、又は、金属板に通電する電流値が小さい加工条件から、順番に組み合わせる。
そして、溶接工程では、複合条件設定工程で設定した複合条件に基づいて、加工対象である3枚以上の金属板を溶接する。加圧力が高い加工条件、又は電流値が小さい加工条件との、何れからの順番に組み合わせた複合条件に基づいて金属板を溶接する場合であっても、まずは総板厚中心部に近い界面を効率よく発熱させて溶融部を形成する。続いて、外側の薄い金属板を含む金属板間の界面を効率よく発熱させて溶融部を形成し、結果として、全ての界面が接合される。
従って、本項に記載の抵抗スポット溶接方法は、総板厚中心部に近い界面に板隙が存在するような場合にも、加圧力が高い又は電流値が小さい加工条件により、先に総板厚中心部に近い界面を接合することで、板隙の影響を抑制する。そして、外側の薄い金属板を含む金属板間の界面を接合する際には、総板厚中心部に近い界面が既に接合され、板隙の影響が抑制されていることから、薄い金属板の界面も安定して接合される。このように、板隙等の外乱の影響を抑制して、重ね合わせた全ての金属板を安定して溶接するものである。
(2)上記(1)項の、前記加工条件設定工程において、前記3枚以上の金属板の総板厚中心部に最も近い界面に溶融部を形成するための加工条件として、前記薄い金属板を含む金属板間の界面に溶融部を形成するための加工条件よりも、加圧力が高くかつ電流値が小さい加工条件を設定し、前記複合条件設定工程において、前記総板厚中心部に最も近い界面に溶融部を形成するための加工条件を先行するように並べる抵抗スポット溶接方法(請求項2)。
本項に記載の抵抗スポット溶接方法は、加工条件設定工程において、3枚以上の金属板の総板厚中心部に最も近い界面に溶融部を形成するための加工条件を、外側の薄い金属板を含む金属板間の界面に溶融部を形成するための加工条件よりも、加圧力が高くかつ電流値が小さい加工条件に設定する。そして、複合条件設定工程において、総板厚中心部に最も近い界面に溶融部を形成するための加工条件を先行するように並べて、複合条件を設定する。このように設定した複合条件に基づき、溶接工程において金属板の溶接を行うと、まず、1段階目の加工条件として組み合わせた、総板厚中心部に最も近い界面に溶融部を形成するための加工条件下で溶接する。この加工条件は、薄い金属板を含む金属板間の界面に溶融部を形成するための加工条件に比べて、加圧力が高くかつ電流値が小さく設定されている。従って、高い加圧力により、外側の薄い金属板と、この薄い金属板と合わさる金属板との接触面積を大きくすることで、接触抵抗を小さくし、総板厚中心部まで十分な電流が流れるようにする。これにより、小さい電流値でも、総板厚中心部に最も近い界面を効率よく発熱させ、溶融部を形成する。更に、総板厚中心部に最も近い界面に板隙が存在していても、高い加圧力で溶接することで、板隙の影響を抑制して接合させる。
続いて、2段階目の加工条件として組み合わせた、外側の薄い金属板を含む金属板間の界面に溶融部を形成するための加工条件下で溶接する。この加工条件は、総板厚中心部に最も近い界面に溶融部を形成するための加工条件に比べて、加圧力が低くかつ電流値が大きく設定されている。従って、低い加圧力により、外側の薄い金属板と、この薄い金属板と合わさる金属板との接触面積を小さくすることで、接触抵抗を大きくし、更に、水冷されている電極と外側の薄い金属板との密着度を下げ、電極により抜熱され難くする。そして、このような状況下で大きな電流を流すことにより、薄い金属板を含む金属板間の界面を効率よく発熱させ、溶融部を形成する。
すなわち、本項に記載の抵抗スポット溶接方法は、総板厚中心部に最も近い界面を発熱させる適切な加工条件と、外側の薄い金属板を含む金属板間の界面を発熱させる適切な加工条件とを組み合わせることで、各界面を効率よく発熱させると共に、板隙の影響を抑制して安定して金属板を溶接するものである。
(3)上記(1)(2)項の、前記加工条件設定工程において、電流値が大きいほど通電時間を短く設定する抵抗スポット溶接方法(請求項3)。
本項に記載の抵抗スポット溶接方法は、加工条件設定工程において設定する各加工条件を、一対の電極により通電する電流値が大きいほど、通電時間が短くなるように設定するものである。これにより、大きい電流が長時間流れることがなくなるため、過加熱状態やこれに起因する散り等の発生を防止すると共に、無駄なエネルギーの消費を抑えるものである。
(4)外側に他の金属板よりも薄い金属板を含むようにして重ね合わせた3枚以上の金属板を一対の電極間で溶接する抵抗スポット溶接装置であって、前記一対の電極により前記3枚以上の金属板の複数の界面に溶融部を形成するための加圧力及び通電する電流値を含む加工条件を、複数の界面それぞれに対して設定し、設定された前記加工条件を前記一対の電極による加圧力が高い加工条件又は通電する電流値が小さい加工条件から順番に組み合わせて、複数段階の加工条件で構成した複合条件を設定し、該複合条件に基づいて前記一対の電極を制御する制御部を含む抵抗スポット溶接装置(請求項4)。
本項に記載の抵抗スポット溶接装置は、3枚以上の金属板の複数の界面に溶融部を形成するための加工条件を、複数の界面それぞれに対して設定すると共に、これらの加工条件を組み合わせた複合条件を設定し、設定した複合条件に基づいて一対の電極を制御する制御部を含むものである。そして、制御部は、上記(1)項の抵抗スポット溶接方法の、加工条件設定工程及び複合条件設定工程に係る記載内容と同様に、各加工条件及び複合条件を設定する。これにより、一対の電極は、上記(1)項の抵抗スポット溶接方法の溶接工程と同じ様に、外側に薄い金属板を含む3枚以上の金属板を溶接するよう、制御部により制御される。従って、本項に記載の抵抗スポット溶接装置は、上記(1)項に対応する同等の作用を奏するものである。
(5)上記(4)項において、前記制御部は、前記3枚以上の金属板の総板厚中心部に最も近い界面に溶融部を形成するための加工条件として、前記薄い金属板を含む金属板間の界面に溶融部を形成するための加工条件よりも、加圧力が高くかつ電流値が小さい加工条件を設定し、前記総板厚中心部に最も近い界面に溶融部を形成するための加工条件を先行するように並べる抵抗スポット溶接装置(請求項5)。
(6)上記(4)(5)項において、前記制御部により設定される加工条件は、電流値が大きいほど通電時間が短い抵抗スポット溶接装置(請求項6)。
そして、上記(5)(6)項に記載の抵抗スポット溶接装置は、各々、上記(2)(3)項に記載の抵抗スポット溶接方法に用いられることで、上記(2)(3)項に対応する同等の作用を奏するものである。
本発明はこのように構成したので、板隙等の外乱の影響を抑制し、金属板を安定して溶接することができる。
本発明の実施の形態に係る抵抗スポット溶接方法の各工程を示すフロー図である。 本発明の実施の形態に係る抵抗スポット溶接装置の構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態に係る抵抗スポット溶接方法で溶接する金属板の組み合わせの一例を示す概略図である。 本発明の実施の形態に係る抵抗スポット溶接方法で設定する加工条件を例示するグラフである。 本発明の実施の形態に係る抵抗スポット溶接方法で設定する複合条件を例示するグラフである。 本発明の実施の形態に係る抵抗スポット溶接方法で金属板を溶接する際のイメージ図である。 一般的な抵抗スポット溶接方法を説明するためのイメージ図である。 一般的な抵抗スポット溶接方法の課題を説明するためのイメージ図である。 従来の抵抗スポット溶接方法による加圧力と電流値の制御パターンを示すグラフである。 従来の抵抗スポット溶接方法を説明するためのイメージ図である。 従来の抵抗スポット溶接方法の課題を説明するためのイメージ図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
図1は、本発明の実施の形態に係る抵抗スポット溶接方法の処理工程を示すフロー図である。このフロー図に沿って、図2のブロック図に示す抵抗スポット溶接装置10を用いて実行する、本発明の実施の形態に係る抵抗スポット溶接方法について説明する。なお、図2のブロック図は、本発明の実施の形態に係る抵抗スポット溶接装置10に含まれる構成の一例を示すものであり、例えば、加工対象の金属板を保持する保持手段等の図示は省略している。又、以下の説明では、図3に示す3枚の金属板20、22、24の組み合わせを加工対象としているが、本発明の実施の形態に係る抵抗スポット溶接方法で溶接する金属板の組み合わせは、図3に示す組み合わせに限定されるものではなく、外側に他の金属板よりも薄い金属板を含むような、3枚以上の金属板の組み合わせであればよい。
S10(加工条件設定工程):制御部14により、加工対象となる金属板の組み合わせを考慮して、各金属板間の界面を接合するための適切な加工条件を設定する。図3に示す、例えば鋼板等の金属板20、22、24は、各々の板厚がt1、t2、t3(t1<t3≦t2)であり、3枚の総板厚がTである。又、金属板が3枚重ね合わされているため、金属板20、22間の界面Iaと、金属板22、24間の界面Ibとの、2つの界面が存在する。このため、各金属板の板厚t1、t2、t3、各金属板の材質、重ね合わせの順番等を考慮して、2つの界面の各々について加工条件を設定する。加工条件は、例えば、一対の電極16により金属板に加える加圧力、加圧時間、通電する電流値、通電時間等を含むものである。
S12(1つ目の加工条件設定):まず、2つの界面のうち、金属板22、24間の界面Ibの加工条件を設定する。界面Ibは、総板厚Tの中心部に近く、又、後述する溶接工程時に、図3における金属板20の上面と、金属板24の下面とに接触する一対の電極16から離れている。これらを考慮し、例えば、図4(a)のグラフに示すような加工条件を設定する。この加工条件では、過加熱を避けるため、又、電極16付近が抜熱されても界面Ibへの影響は小さいため、電流値CVを中程度(M)に設定している。又、界面Ibに板隙が存在する場合にも対応できるように、又、界面Iaにおいて金属板20、22が十分に接触するように、加圧力WPを高く(H)設定している。更に、界面Ibの接合に十分な大きさの溶融部が形成され、かつ、過加熱にならないような、周囲へ逃げる熱と発熱とが飽和する通電時間と、通電中は常に設定した加圧力WPが加えられるような加圧時間とに設定している。なお、図4、5中の符号TMは時間であり、グラフの横軸が時間軸であることを示している。
S14(2つ目の加工条件設定):次に、2つの界面のうち、金属板20、22間の界面Iaの加工条件を設定する。界面Iaは、金属板20の板厚t1の総板厚Tに対する割合が小さいため、後述する溶接工程時に、図3における金属板20の上面に接触する電極16から近い位置にある。これを考慮し、例えば、図4(b)のグラフに示すような加工条件を設定する。この加工条件では、電極16による抜熱の影響を受けても、界面Iaを十分に発熱させるように、電流値CVを大きく(H)設定している。又、界面Iaにおける金属板20、22の接触面積を小さくし、接触抵抗が上がるように、かつ、電極16の密着度を下げ、抜熱の影響が小さくなるように、加圧力WPを低く(L)設定している。更に、大電流による過加熱を回避するような短時間の通電時間と、通電中は常に設定した加圧力WPが加えられるような加圧時間とに設定している。
S20(複合条件設定工程):制御部14により、上記S10で設定した各加工条件を組み合わせて、複数段階の加工条件で構成した複合条件を設定する。すなわち、図1のフロー図の例では、上記S12で設定した図4(a)に示す1つ目の加工条件と、上記S14で設定した図4(b)に示す2つ目の加工条件との、2つの加工条件を組み合わせる。この際、組み合わせの順番として、加圧力WPが高い加工条件、又は、電流値CVが小さい加工条件から組み合わせることとする。図4に示す加工条件では、界面Ibを接合するための図4(a)の加工条件(加圧力WPがH、電流値CVがM)の方が、界面Iaを接合するための図4(b)の加工条件(加圧力WPがL、電流値CVがH)よりも、加圧力WPが高く、電流値CVが小さい。このため、本工程では、図4(a)の加工条件を先に、図4(b)の加工条件を後にして組み合わせた、図5のグラフに示すような2段階の加工条件mc1、mc2で構成された複合条件を設定する。
S30(溶接工程):制御部14により一対の電極16を制御し、上記S20で設定した複合条件下で金属板20、22、24を溶接する。上記S20では、2つの加工条件を組み合わせた2段階の複合条件を設定したため、1段階目の加工条件mc1下で溶接する1段階目の溶接と、2段階目の加工条件mc2下で溶接する2段階目の溶接とを行う。
S32(1段階目の溶接):複合条件の1段階目の加工条件である、図5のmc1で示す加工条件下で溶接する。この1段階目の加工条件mc1は、上記S12で設定した界面Ibを接合するための加工条件に相当するものである。このため、図6(a)に示すように、一対の電極16a、16bにより加工条件mc1下で溶接すると、総板厚Tの中心部を起点として、界面Ibを接合する十分な大きさの溶接径を有する溶融部30aが形成される。これは、上記S12において説明したように、界面Ibを接合するための加工条件として、加圧力WPをH、電流値CVをMとする等の、総板厚T中心部を発熱させるような好適な条件を設定したためである。
S34(2段階目の溶接):複合条件の2段階目の加工条件である、図5のmc2で示す加工条件下で溶接する。この2段階目の加工条件mc2は、上記S14で設定した界面Iaを接合するための加工条件に相当するものである。このため、図6(b)に示すように、一対の電極16a、16bにより加工条件mc2下で溶接すると、重ね合わせた金属板内の一対の電極16a、16bの近傍に、夫々、溶融部30b、30cが形成される。溶融部30bは、界面Iaを接合する十分な大きさの溶接径を有している。これは、上記S14において説明したように、界面Iaを接合するための加工条件として、加圧力WPをL、電流値CVをHとする等の、一対の電極16a、16bに近い部位を発熱させるような好適な条件を設定したためである。
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る抵抗スポット溶接方法は、図2に示すような抵抗スポット溶接装置10を用いて実行するものであり、一例として図3に示すような、他の金属板よりも薄い金属板20を外側に重ね合わせた、3枚の金属板20、22、24を加工対象としている。そして、本発明の実施の形態に係る抵抗スポット溶接方法は、図1に示すように、加工条件設定工程S10と、複合条件設定工程S20と、溶接工程S30とを含むものである。
加工条件設定工程S10では、重ね合わせた3枚の金属板20、22、24の2つの界面Ia、Ibに溶融部を形成するための各加工条件を、制御部14により設定する。これらの加工条件には、一対の電極16により金属板に加える加圧力及び通電する電流値が含まれており、例えば、3枚の金属板20、22、24の総板厚T、各金属板の板厚t1、t2、t3、各金属板の材質等に基づいて、2つの界面Ia、Ibの各々が接合されるような適切な加工条件を設定する。なお、加工条件は、溶接する金属板の枚数等に応じて、複数の界面毎に溶融部を形成するものであってもよく、2つ以上の界面を1つの溶融部で接合するものであってもよい。又、1つの加工条件で同時に複数の溶融部が形成されるものであってもよい。然る内容を考慮して、全ての界面が接合されるような適切な加工条件を設定する。
例えば、本発明の実施の形態に係る抵抗スポット溶接方法は、加工条件設定工程S10において、図4(a)に示すような、3枚の金属板20、22、24の総板厚T中心部に最も近い界面Ibに溶融部を形成するための加工条件と、図4(b)に示すような、外側の薄い金属板20を含む金属板間の界面Iaに溶融部を形成するための加工条件とを設定する(S12、S14)。この際、図4(a)、(b)を比較すると明らかなように、総板厚T中心部に最も近い界面Ibに溶融部を形成するための加工条件を、薄い金属板20を含む金属板間の界面Iaに溶融部を形成するための加工条件よりも、加圧力WPが高くかつ電流値CVが小さい加工条件に設定する。
又、複合条件設定工程S20では、制御部14により、加工条件設定工程S10で設定した各加工条件を組み合わせて、複数段階の加工条件で構成した複合条件を設定する。この際、各加工条件は、一対の電極16により金属板に加える加圧力が高い加工条件、又は、金属板に通電する電流値が小さい加工条件から、順番に組み合わせる。図4に示した2つの加工条件の例では、図4(a)に示した界面Ibに溶融部を形成するための加工条件の方が、図4(b)に示した界面Iaに溶融部を形成するための加工条件よりも、加圧力WPが高くかつ電流値CVが小さい。このため、総板厚T中心部に最も近い界面Ibに溶融部を形成するための加工条件を先行するように並べて、図5に示すような、1段階目の加工条件mc1と2段階目の加工条件mc2とで構成される複合条件を設定する。
そして、溶接工程S30では、制御部14により一対の電極16を制御し、複合条件設定工程S20で設定した複合条件に基づいて、加工対象である3枚の金属板20、22、24を溶接する。図5に示すような複合条件に基づき、金属板の溶接を行うと、まず、1段階目の加工条件mc1として組み合わせた、総板厚T中心部に最も近い界面Ibに溶融部を形成するための加工条件下で、1段階目の溶接を行う(S32)。この加工条件は、薄い金属板20を含む金属板間の界面Iaに溶融部を形成するための加工条件に比べて、加圧力WPが高くかつ電流値CVが小さく設定されている。
ここで、加圧力WPが高い加工条件は、外側の薄い金属板20と、この薄い金属板20と合わさる金属板22との接触面積を大きくして、接触抵抗を小さくし、総板厚T中心部まで十分な電流が流れるようにする。更に、水冷されている電極16a(図6参照)と外側の薄い金属板20との密着度が上がるため、電極16aにより抜熱され易くなる。又、電流値CVが小さい加工条件は、金属板を大きく加熱するものではないため、水冷されている電極16aにより抜熱される外側の薄い金属板20を含む金属板間の界面Iaの発熱には不十分であるが、電極16a、16bから離れている総板厚T中心部に近い界面Ibを十分に発熱させることができる。
従って、加圧力WPが高くかつ電流値CVが小さく設定されている、1段階目の加工条件mc1下で溶接を行うと、図6(a)に示すように、総板厚T中心部に最も近い界面Ibを効率よく発熱させることができ、界面Ibの接合に十分な大きさの溶接径を有する溶融部30aを形成することが可能となる。更に、総板厚T中心部に最も近い界面Ibに、板隙62(図11参照)が存在するような場合であっても、高い加圧力WPで溶接することで、板隙62の影響を抑制して接合することが可能となる。
続いて、2段階目の加工条件mc2として組み合わせた、外側の薄い金属板20を含む金属板間の界面Iaに溶融部を形成するための加工条件下で、2段階目の溶接を行う(S34)。この加工条件は、総板厚T中心部に最も近い界面Ibに溶融部を形成するための加工条件に比べて、加圧力WPが低くかつ電流値CVが大きく設定されている。
ここで、加圧力WPが低い加工条件は、外側の薄い金属板20と、この薄い金属板20と合わさる金属板22との接触面積を小さくし、接触抵抗を大きくする。更に、水冷されている電極16aと外側の薄い金属板20との密着度が下がるため、電極16aにより抜熱され難くなる。又、電流値CVが大きい加工条件は、金属板を大きく加熱するものであり、水冷されている電極16aにより抜熱される外側の薄い金属板20を含む金属板間の界面Iaを、十分に発熱させることができる。
従って、加圧力WPが低くかつ電流値CVが大きく設定されている、2段階目の加工条件mc2下で溶接を行うと、図6(b)に示すように、外側の薄い金属板20を含む金属板間の界面Iaを効率よく発熱させることができ、界面Iaの接合に十分な大きさの溶接径を有する溶融部30bを形成することが可能となる。
すなわち、本発明の実施の形態に係る抵抗スポット溶接方法は、総板厚T中心部に最も近い界面Ibを発熱させる適切な加工条件と、外側の薄い金属板20を含む金属板間の界面Iaを発熱させる適切な加工条件とを組み合わせることで、各界面を効率よく発熱させ、全ての界面を接合するものである。更に、総板厚T中心部に近い界面Ibに板隙が存在するような場合にも、加圧力WPが高く電流値CVが小さい加工条件により、先に総板厚T中心部に近い界面Ibを接合するため、板隙の影響を抑制することができる。しかも、外側の薄い金属板20を含む金属板間の界面Iaを接合する際には、総板厚T中心部に近い界面Ibが既に接合され、板隙の影響が抑制されていることから、薄い金属板20の界面Iaも安定して接合することができる。このように、本発明の実施の形態に係る抵抗スポット溶接方法は、板隙等の外乱の影響を抑制して、重ね合わせた全ての金属板20、22、24を安定して溶接することができる。
又、本発明の実施の形態に係る抵抗スポット溶接方法は、加工条件設定工程S10において設定する各加工条件を、一対の電極16により通電する電流値が大きいほど、通電時間が短くなるように設定するものである。これにより、大きい電流が長時間流れることがなくなるため、過加熱状態やこれに起因する散り等の発生を防止すると共に、無駄なエネルギーの消費を抑えることが可能となる。
10:抵抗スポット溶接装置、14:制御部、16(16a、16b):一対の電極、20:薄い金属板、22、24:金属板、30a、30b、30c:溶融部、Ia、Ib:界面、T:総板厚、WP:加圧力、CV:電流値

Claims (6)

  1. 外側に他の金属板よりも薄い金属板を含むようにして重ね合わせた3枚以上の金属板を一対の電極間で溶接する抵抗スポット溶接方法であって、
    前記3枚以上の金属板の複数の界面に溶融部を形成するための加圧力及び通電する電流値を含む加工条件を、複数の界面それぞれに対して設定する加工条件設定工程と、
    該加工条件設定工程で設定した前記各加工条件を、前記一対の電極による加圧力が高い加工条件又は通電する電流値が小さい加工条件から順番に組み合わせて、複数段階の加工条件で構成した複合条件を設定する複合条件設定工程と、
    該複合条件設定工程で設定した前記複合条件に基づいて前記3枚以上の金属板を溶接する溶接工程とを含むことを特徴とする抵抗スポット溶接方法。
  2. 前記加工条件設定工程において、前記3枚以上の金属板の総板厚中心部に最も近い界面に溶融部を形成するための加工条件として、前記薄い金属板を含む金属板間の界面に溶融部を形成するための加工条件よりも、加圧力が高くかつ電流値が小さい加工条件を設定し、
    前記複合条件設定工程において、前記総板厚中心部に最も近い界面に溶融部を形成するための加工条件を先行するように並べることを特徴とする請求項1記載の抵抗スポット溶接方法。
  3. 前記加工条件設定工程において、電流値が大きいほど通電時間を短く設定することを特徴とする請求項1又は2記載の抵抗スポット溶接方法。
  4. 外側に他の金属板よりも薄い金属板を含むようにして重ね合わせた3枚以上の金属板を一対の電極間で溶接する抵抗スポット溶接装置であって、
    前記一対の電極により前記3枚以上の金属板の複数の界面に溶融部を形成するための加圧力及び通電する電流値を含む加工条件を、複数の界面それぞれに対して設定し、設定された前記加工条件を前記一対の電極による加圧力が高い加工条件又は通電する電流値が小さい加工条件から順番に組み合わせて、複数段階の加工条件で構成した複合条件を設定し、該複合条件に基づいて前記一対の電極を制御する制御部を含むことを特徴とする抵抗スポット溶接装置。
  5. 前記制御部は、前記3枚以上の金属板の総板厚中心部に最も近い界面に溶融部を形成するための加工条件として、前記薄い金属板を含む金属板間の界面に溶融部を形成するための加工条件よりも、加圧力が高くかつ電流値が小さい加工条件を設定し、前記総板厚中心部に最も近い界面に溶融部を形成するための加工条件を先行するように並べることを特徴とする請求項4記載の抵抗スポット溶接装置。
  6. 前記制御部により設定される加工条件は、電流値が大きいほど通電時間が短いことを特徴とする請求項4又は5記載の抵抗スポット溶接装置。
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