JP2010192069A - 磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】薄いエッチングマスク厚での加工ながらも加工後のパターン形状がよく、少ないパターン凹凸でパターン凸部の磁性劣化を抑えつつ、効率的にパターン凹部の磁性を失活させることが可能なパターンド磁気記録媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】磁気記録層52上に、第1のハードマスク53、第2のハードマスク54およびパターン化されたレジスト55を形成し、パターン化されたレジスト55をマスクとして、前記第2のハードマスク54をエッチングして凹凸パターンを転写し、前記第2のハードマスク54をマスクとして前記第1のハードマスク53をエッチングして凹凸パターンを転写し、パターン凹部の磁気記録層52のエッチングレートを変化させる改質処理を施し、パターン凹部の磁気記録層52の磁性を失活させることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【選択図】 図3

Description

本発明は、パターンド媒体などの磁気記録媒体の製造方法に関する。
DTR(Discrete Track Recording)媒体のような記録媒体表面に凹凸の形成された媒体を、浮上ヘッドで記録再生するためには、表面凹凸をヘッドが安定浮上する程度に低減する必要がある。現状のDTR媒体では、隣接トラックと完全に分離するために、強磁性体記録層20nm、保護層5nmの計25nmを除去する必要がある。それに比べてヘッドの浮上設計量は10nm程度であるため、溝を非磁性体で充填し、媒体表面を平滑にするか、DTR媒体に凹凸構造をつけずに非記録部を非磁性体に変質させる方法が提案されている。
特許文献1および2に記載の方法では、2層のハードマスクを用いて凹凸パターンを形成した後、溝を非磁性体で充填して媒体表面を平滑化している。しかし、このような方法では、作製工程が増えてしまい、コスト増加とともに、歩留まりも悪くなる可能性がある。
また、凹凸構造をつけずに非記録部を非磁性体に変質させるだけでは、記録部との境界が揺らぎやすく、ノイズの原因となる可能性があるとともに、記録部の磁性の変質を抑えつつ、非記録部の磁性をいかに変質させるのかという問題がある。
このように、記録媒体表面の平滑性を出来る限り損なわず、なおかつ、効率的に非記録部の磁性が抑えられた記録媒体の製造方法が求められている。
特開2005−50468号公報 特開2006−12332号公報
本発明の目的は、薄いエッチングマスク厚での加工ながらも加工後のパターン形状がよく、少ないパターン凹凸でパターン凸部の磁性劣化を抑えつつ、効率的にパターン凹部の磁性を失活させることが可能なパターンド磁気記録媒体(DTR媒体およびBPM)の製造方法を提供することにある。
本発明の実施形態によれば、磁気記録層上に、第1のハードマスク、第2のハードマスクおよびレジストを形成し、前記レジストに対してスタンパをインプリントして凹凸パターンを転写し、パターン化されたレジストの凹部に残存している残渣を除去し、パターン化されたレジストをマスクとして、前記第2のハードマスクをエッチングして凹凸パターンを転写し、前記第2のハードマスクをマスクとして前記第1のハードマスクをエッチングして凹凸パターンを転写し、パターン凹部の磁気記録層のエッチングレートを変化させる改質処理を施し、パターン凹部の磁気記録層の磁性を失活させることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法が提供される。
本発明の実施形態によれば、パターンド媒体(DTR媒体およびBPM)の製造において、パターン凹部の磁気記録層表面のエッチングレートを変化させる改質処理を施し、続いてパターン凹部の磁気記録層表面の磁性失活工程を行うので、薄いエッチングマスク厚での加工ながらも加工後のパターン形状がよく、少ないパターン凹凸でパターン凸部の磁性劣化を抑えつつ、効率的にパターン凹部の磁性を失活させることができる。
本発明の方法を用いて製造されるディスクリートトラック媒体(DTR媒体)の周方向に沿う平面図。 本発明の方法を用いて製造されるビットパターンド媒体の周方向に沿う平面図。 本発明に係る磁気記録媒体の製造方法の一例を示す断面図。 本発明によって製造された磁気記録媒体を搭載した磁気記録装置を示す斜視図。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図1に、本発明の方法を用いて製造されるパターンド媒体の一例であるディスクリートトラック媒体(DTR媒体)の周方向に沿う平面図を示す。図1に示すように、パターンド媒体1の周方向に沿って、サーボ領域2と、データ領域3が交互に形成されている。サーボ領域2には、プリアンブル部21、アドレス部22、バースト部23が含まれる。データ領域3には隣接するトラック同士が互いに分離されたディスクリートトラック31が含まれる。
図2に、本発明方法を用いて製造されるパターンド媒体の他の例であるビットパターンド(BPM)媒体の周方向に沿う平面図を示す。このパターンド媒体では、データ領域3に磁性ドット32が形成されている。
図3(a)〜(i)を参照して、本発明に係る磁気記録媒体の製造方法の一例を説明する。
図3(a)に示すように、ガラス基板51上に、下地層(図示せず)および厚さ20nmの磁気記録層52を成膜する。磁気記録層52上に厚さ15nmのカーボンからなる第1のハードマスク53と、厚さ3nmのCuからなる第2のハードマスク54を成膜する。第2のハードマスク54上に、レジスト55をスピンコートする。一方、たとえば図1に示すDTR媒体のパターンに対応する所定の凹凸パターンが形成されたスタンパ60を用意する。スタンパ60は、EB描画、Ni電鋳、射出成形を経て製造される。スタンパ60を、その凹凸面がレジスト55に対向するように配置する。
図3(b)に示すように、レジスト55に対してスタンパ60をインプリントして、スタンパ60の凹凸パターンをレジスト55に転写する。その後、スタンパ60を取り外す。レジスト55に転写された凹凸パターンの凹部の底にはレジスト残渣が残っている。
図3(c)に示すように、ドライエッチングにより、凹部のレジスト残渣を除去し、第2のハードマスク54の表面を露出させる。この際、たとえば誘導結合プラズマ(ICP)RIE装置により、エッチングガスとして酸素ガスを用いてレジスト残渣を除去する。
図3(d)に示すように、パターン化されたレジスト55をマスクとし、イオンビームエッチングを用いて第2のハードマスク54にレジストパターンを転写する。エッチングガスとしては例えばArを用いることができるが、特に限定されない。また、エッチング装置についても特に限定されず、たとえばRIE装置でもよい。
図3(e)に示すように、パターン化された第2のハードマスク54をマスクとして、第1のハードマスク53をエッチングしてパターンを転写し、凹部で磁気記録層52の表面を露出させる。エッチングにはたとえば、誘導結合プラズマ(ICP)RIE装置により、エッチングガスとして酸素ガスを用いる。その際、第2のハードマスク54のパターン上部に残存するレジストの一部または全部が剥離され、主に第1のハードマスク53と第2のハードマスク54とからなる凹凸パターンが形成される。
図3(f)に示すように、パターン凹部の磁気記録層52のエッチングレートを変化させる改質処理を施す。エッチングレートを変化させる改質処理は、例えばICP−RIE装置により、エッチングガスとしてCFガスを用いて行うことができる。この処理によって、磁気記録層52の凹部は、表面から一定の深さの領域が改質部56へと変化する。
図3(g)に示すように、例えばHe−N混合ガスをエッチングガスとして、イオンビームエッチングにより、残存する第2のハードマスク54および改質部56を除去するとともに、パターン凹部で磁気記録層52の磁性を失活させて非磁性層57を形成する。第2のハードマスク54を除去する際、パターン凹部の磁気記録層52の一部がエッチングされうる。しかし、凹部の磁気記録層52は磁性を失活して非磁性化しているため、加工後の媒体をハードディスクドライブに組み込んだ際に良好なフリンジ特性を得ることが可能である。なお、この工程に用いられるイオンビーム装置としては、たとえば電子サイクロトロン共鳴(ECR)型のイオンガンを用いることができる。
図3(h)に示すように、残存している第1のハードマスク53を除去する。この際、たとえば誘導結合プラズマ(ICP)RIE装置により、エッチングガスとして酸素ガスを用いて第1のハードマスク53を除去する。
図3(i)に示すように、CVD(化学気相堆積)により厚さ3nmの保護膜58を形成する。
なお、以上の工程において、各種の膜の厚さおよび凹凸の深さは、たとえばAFM(atomic force microscope)、断面TEM(transmission electron microscopy)などを用いて容易に測定することができる。また、メタルマスク種およびその組成比については、EDX(energy dispersive X-ray spectroscopy)分析を行なうことで容易に測定できる。加工完成後媒体をXPS(X-ray photoelectron spectroscopy)分析し、媒体内の残留ガスを分析することで、イオンビームエッチングで用いたエッチングガス種とその効果を調査することが可能である。また、図3に示した製造方法は、DTR媒体の製造に限らず、BPM(bit patterned media)の製造にも適用できる。
ここで、図3(f)の工程をより詳細に説明する。本発明の方法では、図3(f)の工程において、パターン凹部の磁気記録層52に対しエッチングレートを変化させる改質処理を行う。
イオンビームエッチング(g)の前にパターン凹部の磁気記録層52のエッチングレートを変化させる改質処理(f)を行なうことで、イオンビームエッチングでのエッチングレートが大きくなるため、ハードマスク材とのエッチング選択比を大きく取ることが出来ると共に、エッチング時間を短くすることが可能となる。その結果、薄いハードマスク厚でテーパー角が抑制された形状の良いパターンを作製することが可能となる。
また、パターン凹部の磁性失活を、例えば、He−N混合ガスによるイオンビームエッチングによって行なう場合には、磁気記録層52に対してエッチングレートを変化させる改質処理を行ったことにより、HeとNの失活イオンがより深いところまで到達し磁気記録層52の凹部の磁性を効率的に失活することが可能となり、少ない凹凸で且つ短時間で磁性失活させることが可能となる。
エッチングレートを変化させる改質処理は、例えば、CF、SF、CHFなどのフッ素系ガスを用いた反応性イオンエッチングで行なうことが可能である。第2のハードマスク54がケイ素系材料の場合は、イオンビームエッチング前の第2のハードマスク54の除去工程を兼ねてもかまわない。
磁性失活に用いるエッチングガスは、He−N混合ガスのほかにも、He、O、N、He−O混合ガス、He−N−O混合ガスを使用することが出来る。磁性失活にHeを用いる場合、加速されたHeイオンによって磁気記録層52の結晶を破壊することで磁性を失活することができる。また、OやNを用いる場合は、O原子やN原子が結晶中に入り込み化合物化することによって磁性を失活することができる。さらに、HeとNまたはOの反応性ガスとを組み合わせる場合は、双方のガスの効果によって磁性を失活させることができる。
次に、本発明の実施形態において用いられる好適な材料について説明する。
<基板>
基板としては、たとえばガラス基板、Al系合金基板、セラミック基板、カーボン基板、酸化表面を有するSi単結晶基板などを用いることができる。ガラス基板としては、アモルファスガラスおよび結晶化ガラスが用いられる。アモルファスガラスとしては、汎用のソーダライムガラス、アルミノシリケートガラスが挙げられる。結晶化ガラスとしては、リチウム系結晶化ガラスが挙げられる。セラミック基板としては、汎用の酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素などを主成分とする焼結体や、これらの繊維強化物などが挙げられる。基板としては、上述した金属基板や非金属基板の表面にメッキ法やスパッタ法を用いてNiP層が形成されたものを用いることもできる。
<軟磁性裏打ち層>
軟磁性裏打ち層(SUL)は、垂直磁気記録層を磁化するための単磁極ヘッドからの記録磁界を水平方向に通して、磁気ヘッド側へ還流させるという磁気ヘッドの機能の一部を担っており、記録層に急峻で充分な垂直磁界を印加させ、記録再生効率を向上させる作用を有する。軟磁性裏打ち層には、Fe、NiまたはCoを含む材料を用いることができる。このような材料として、FeCo系合金たとえばFeCo、FeCoVなど、FeNi系合金たとえばFeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiSiなど、FeAl系合金、FeSi系合金たとえばFeAl、FeAlSi、FeAlSiCr、FeAlSiTiRu、FeAlOなど、FeTa系合金たとえばFeTa、FeTaC、FeTaNなど、FeZr系合金たとえばFeZrNなどを挙げることができる。Feを60at%以上含有するFeAlO、FeMgO、FeTaN、FeZrNなどの微結晶構造または微細な結晶粒子がマトリクス中に分散されたグラニュラー構造を有する材料を用いることもできる。軟磁性裏打ち層の他の材料として、Coと、Zr、Hf、Nb、Ta、TiおよびYのうち少なくとも1種とを含有するCo合金を用いることもできる。Co合金には80at%以上のCoが含まれることが好ましい。このようなCo合金は、スパッタ法により製膜した場合にアモルファス層が形成されやすい。アモルファス軟磁性材料は、結晶磁気異方性、結晶欠陥および粒界がないため、非常に優れた軟磁性を示すとともに、媒体の低ノイズ化を図ることができる。好適なアモルファス軟磁性材料としては、たとえばCoZr、CoZrNbおよびCoZrTa系合金などを挙げることができる。
軟磁性裏打ち層の下に、軟磁性裏打ち層の結晶性の向上または基板との密着性の向上のために、さらに下地層を設けてもよい。こうした下地層の材料としては、Ti、Ta、W、Cr、Pt、これらを含む合金、またはこれらの酸化物もしくは窒化物を用いることができる。軟磁性裏打ち層と記録層との間に、非磁性体からなる中間層を設けてもよい。中間層は、軟磁性裏打ち層と記録層との交換結合相互作用を遮断し、記録層の結晶性を制御する、という2つの作用を有する。中間層の材料としては、Ru、Pt、Pd、W、Ti、Ta、Cr、Si、これらを含む合金、またはこれらの酸化物もしくは窒化物を用いることができる。
スパイクノイズ防止のために軟磁性裏打ち層を複数の層に分け、0.5〜1.5nmのRuを挿入することで反強磁性結合させてもよい。また、CoCrPt、SmCo、FePtなどの面内異方性を持つ硬磁性膜またはIrMn、PtMnなどの反強磁性体からなるピン層と軟磁性層とを交換結合させてもよい。交換結合力を制御するために、Ru層の上下に磁性膜(たとえばCo)または非磁性膜(たとえばPt)を積層してもよい。
<磁気記録層>
垂直磁気記録層としては、Coを主成分とし、少なくともPtを含み、さらに酸化物を含む材料を用いることが好ましい。垂直磁気記録層は、必要に応じて、Crを含んでいてもよい。酸化物としては、特に酸化シリコン、酸化チタンが好適である。垂直磁気記録層は、層中に磁性粒子(磁性を有した結晶粒子)が分散していることが好ましい。この磁性粒子は、垂直磁気記録層を上下に貫いた柱状構造であることが好ましい。このような構造を形成することにより、垂直磁気記録層の磁性粒子の配向および結晶性を良好なものとし、結果として高密度記録に適した信号ノイズ比(SN比)を得ることができる。このような構造を得るためには、含有させる酸化物の量が重要となる。
垂直磁気記録層の酸化物含有量は、Co、Cr、Ptの総量に対して、3mol%以上12mol%以下であることが好ましく、5mol%以上10mol%以下であることがより好ましい。垂直磁気記録層の酸化物含有量として上記範囲が好ましいのは、垂直磁気記録層を形成した際、磁性粒子の周りに酸化物が析出し、磁性粒子を分離させ、微細化させることができるためである。酸化物の含有量が上記範囲を超えた場合、酸化物が磁性粒子中に残留し、磁性粒子の配向性、結晶性を損ね、さらには、磁性粒子の上下に酸化物が析出し、結果として磁性粒子が垂直磁気記録層を上下に貫いた柱状構造が形成されなくなるため好ましくない。酸化物の含有量が上記範囲未満である場合、磁性粒子の分離、微細化が不十分となり、結果として記録再生時におけるノイズが増大し、高密度記録に適した信号ノイズ比(SN比)が得られなくなるため好ましくない。
垂直磁気記録層のCr含有量は、0at%以上16at%以下であることが好ましく、10at%以上14at%以下であることがより好ましい。Cr含有量として上記範囲が好ましいのは、磁性粒子の一軸結晶磁気異方性定数Kuを下げすぎず、また、高い磁化を維持し、結果として高密度記録に適した記録再生特性と十分な熱揺らぎ特性が得られるためである。Cr含有量が上記範囲を超えた場合、磁性粒子のKuが小さくなるため熱揺らぎ特性が悪化し、また、磁性粒子の結晶性、配向性が悪化することで、結果として記録再生特性が悪くなるため好ましくない。
垂直磁気記録層のPt含有量は、10at%以上25at%以下であることが好ましい。Pt含有量として上記範囲が好ましいのは、垂直磁性層に必要なKuが得られ、さらに磁性粒子の結晶性、配向性が良好であり、結果として高密度記録に適した熱揺らぎ特性、記録再生特性が得られるためである。Pt含有量が上記範囲を超えた場合、磁性粒子中にfcc構造の層が形成され、結晶性、配向性が損なわれるおそれがあるため好ましくない。Pt含有量が上記範囲未満である場合、高密度記録に適した熱揺らぎ特性に十分なKuが得られないため好ましくない。
垂直磁気記録層は、Co、Cr、Pt、酸化物のほかに、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Reから選ばれる1種類以上の元素を含むことができる。上記元素を含むことにより、磁性粒子の微細化を促進し、または結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性を得ることができる。上記元素の合計の含有量は、8at%以下であることが好ましい。8at%を超えた場合、磁性粒子中にhcp相以外の相が形成されるため、磁性粒子の結晶性、配向性が乱れ、結果として高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性が得られないため好ましくない。
垂直磁気記録層としては、CoPt系合金、CoCr系合金、CoPtCr系合金、CoPtO、CoPtCrO、CoPtSi、CoPtCrSi、ならびにPt、Pd、Rh、およびRuからなる群より選択された少なくとも一種を主成分とする合金とCoとの多層構造、さらに、これらにCr、BおよびOを添加したCoCr/PtCr、CoB/PdB、CoO/RhOなどを使用することもできる。
垂直磁気記録層の厚さは、好ましくは5ないし60nm、より好ましくは10ないし40nmである。この範囲であると、より高記録密度に適した磁気記録再生装置を作製することができる。垂直磁気記録層の厚さが5nm未満であると、再生出力が低過ぎてノイズ成分の方が高くなる傾向がある。垂直磁気記録層の厚さが40nmを超えると、再生出力が高過ぎて波形を歪ませる傾向がある。垂直磁気記録層の保磁力は、237000A/m(3000Oe)以上とすることが好ましい。保磁力が237000A/m(3000Oe)未満であると、熱揺らぎ耐性が劣る傾向がある。垂直磁気記録層の垂直角型比は、0.8以上であることが好ましい。垂直角型比が0.8未満であると、熱揺らぎ耐性に劣る傾向がある。
<第1のハードマスク>
第1のハードマスクの組成は、カーボンを主原料とする。原子数比で、カーボンの割合が75%を超えることが望ましい。カーボンの割合が75%以下であると、エッチング選択比が低下し、形状よく磁性層を加工できなくなる傾向がある。第1のハードマスクは、スパッタあるいはCVDで堆積させた膜によって形成することができる。第1のハードマスクの膜厚は4〜50nmが好ましい。膜厚が厚すぎると剥離の際にエッチング時間がかかり、パターン化された磁性層の側壁がダメージを受ける原因となる。薄すぎるとエッチングの際のハードマスクとしての機能が果たせない。また、必要に応じて、第1のハードマスクと磁気記録層との間に酸化防止層を成膜することができる。
<第2のハードマスク>
本発明の方法における第2のハードマスク54は、OあるいはOガスに耐性があって、Al、Ag、Au、Co、Cr、Cu、Ni、Pd、Pt、Si、Ta、Tiなどを主成分とするものが望ましい。例えば、これらの単体、窒化物、酸化物、合金、混合物が使用できる。また、第2のハードマスク54の膜厚は1〜15nmであることが好ましく、特に2〜10nmであることが好ましい。この膜厚が厚すぎる場合、第2のハードマスク54の除去の際に磁気記録層に対するダメージの原因となる。逆に、薄すぎる場合、一様な膜として成膜できず、第1のハードマスク53にパターンが形成できない。
<保護膜>
保護膜は、垂直磁気記録層の腐食を防ぐとともに、磁気ヘッドが媒体に接触したときに媒体表面の損傷を防ぐ目的で設けられる。保護膜の材料としては、たとえばC、SiO2、ZrO2を含むものが挙げられる。保護膜の厚さは1から10nmとすることが好ましい。これにより、ヘッドと媒体の距離を小さくできるので、高密度記録に好適である。カーボンは、sp2結合炭素(グラファイト)とsp3結合炭素(ダイヤモンド)に分類できる。耐久性、耐食性はsp3結合炭素のほうが優れるが、結晶質であることから表面平滑性はグラファイトに劣る。通常、カーボンの成膜はグラファイトターゲットを用いたスパッタリング法で形成される。この方法では、sp2結合炭素とsp3結合炭素が混在したアモルファスカーボンが形成される。sp3結合炭素の割合が大きいものはダイヤモンドライクカーボン(DLC)と呼ばれ、耐久性、耐食性に優れ、アモルファスであることから表面平滑性にも優れるため、磁気記録媒体の表面保護膜として利用されている。CVD(chemical vapor deposition)法によるDLCの成膜は、原料ガスをプラズマ中で励起、分解し、化学反応によってDLCを生成させるため、条件を合わせることで、よりsp3結合炭素に富んだDLCを形成することができる。
次に、本発明の実施形態における各工程の好適な製造条件について説明する。
<インプリント>
記録トラックとサーボ情報のパターンが形成されたスタンパを、レジストが塗布された基板に圧着しながらレジストを硬化させることで、レジストにその凹凸パターンを転写する。
レジストとしては、UV硬化樹脂や、ノボラックを主成分とした一般的なレジストなどを用いることができる。UV硬化樹脂を使用する場合は、スタンパ材は石英や樹脂などの光を透過させるものがよい。UV硬化樹脂に紫外線を照射することで硬化させることができる。紫外線の光源としては例えば高圧水銀ランプを用いればよい。ノボラックを主成分とした一般的なレジストを使用する場合は、スタンパにNi、石英、Si、SiCなどの材質を用いることができる。レジストは熱や圧力を加えることで硬化させることができる。
<残渣除去>
2ガスRIE(反応性イオンエッチング)でインプリント後のレジスト残差除去を行う。プラズマソースは、低圧で高密度プラズマが生成可能なICP(inductively coupled plasma)が好適であるが、ECR(electron cyclotron resonance)プラズマや、一般的な並行平板型RIE装置を用いてもよい。
<磁性失活>
磁性失活は、パターン化された磁気記録媒体において、凹部の磁気記録層の磁性を凸部と比較して弱めることを指す。磁性を弱めるとは、軟磁性化させることや、非磁性化あるいは反磁性化するものである。このような磁性の変化は、VSM(試料振動型磁力計)やKerr(磁気光学カー効果)測定装置によりHn、Hs、Hcなどの値を測定することで観測することができる。
<保護膜形成および後処理>
カーボン保護膜は、凹凸へのカバレッジをよくするためにCVD法で成膜することが望ましいが、スパッタ法または真空蒸着法により成膜してもよい。CVD法によれば、sp3結合炭素を多く含むDLC膜が形成される。保護膜上に潤滑剤を塗布する。潤滑剤としては、たとえばパーフルオロポリエーテル、フッ化アルコール、フッ素化カルボン酸などを用いることができる。
次に、本発明の磁気記録媒体を用いた磁気記録再生装置(HDD)について説明する。図5は、本発明によって製造された磁気記録媒体を搭載した磁気記録装置を示す斜視図である。
図5に示すように、本発明の実施形態に係る磁気記録装置150は、ロータリーアクチュエータを用いた形式の装置である。パターンド媒体1は、スピンドルモータ140に装着され、図示しない駆動装置制御部からの制御信号に応答する図示しないモータにより矢印Aの方向に回転する。磁気記録装置150は、複数のパターンド媒体1を備えたものでもよい。
パターンド媒体1に対して情報の記録再生を行うヘッドスライダー130は、薄膜状のサスペンション154の先端に取り付けられている。ヘッドスライダー130の先端付近には磁気ヘッドが設けられている。パターンド媒体1が回転すると、サスペンション154による押付け圧力とヘッドスライダー130の媒体対向面(ABS)で発生する圧力とがつりあい、ヘッドスライダー130の媒体対向面は、パターンド媒体1の表面から所定の浮上量をもって保持される。
サスペンション154は、図示しない駆動コイルを保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム155の一端に接続されている。アクチュエータアーム155の他端には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ156が設けられている。ボイスコイルモータ156は、アクチュエータアーム155のボビン部に巻き上げられた図示しない駆動コイルと、このコイルを挟み込むように対向して配置された永久磁石及び対向ヨークからなる磁気回路とから構成することができる。アクチュエータアーム155は、ピボット157の上下2箇所に設けられた図示しないボールベアリングによって保持され、ボイスコイルモータ156により回転摺動が自在にできるようになっている。その結果、磁気ヘッドをパターンド媒体1の任意の位置にアクセスできる。
実施例1
図1に示すDTR媒体に対応する凹凸パターンを有するスタンパを用い、図3(a)〜(i)に示した方法でDTR媒体を作製した。各工程の条件は以下の通りであった。
図3(c)のレジスト残渣を除去する工程は、ICP−RIE装置により、O2を用いて、ガス圧0.1Pa、アンテナ電力100W、バイアス電力20W、エッチング時間15秒の条件で行った。
図3(d)の第2のハードマスク54をエッチングして第1のハードマスク53の表面を露出させる工程は、イオンビームエッチング装置により、Arを用いて、ガス圧0.04Pa、プラズマパワー600W、加速電圧400V、エッチング時間25秒の条件で行った。
図3(e)の第1のハードマスク53をエッチングして磁気記録層52の表面を露出させる工程は、ICP−RIE装置により、O2を用いて、ガス圧0.1Pa、アンテナ電力500W、バイアス電力20W、エッチング時間20秒の条件で行った。
図3(f)のパターン凹部の磁気記録層のエッチングレートを変化させる改質処理は、ICP−RIE装置により、CFを用いて、ガス圧1.0Pa、アンテナ電力800W、バイアス電力0W、エッチング時間15秒の条件で行った。
図3(g)のイオンビームエッチングにより、パターン凹部の磁気記録層52の磁性失活を行う工程は、ガス圧0.04Pa、プラズマパワー1000W、加速電圧1000V、エッチング時間12秒の条件で行った。エッチングガスはHe−N2混合ガスを用いた。
図3(h)の第1のハードマスク53を除去する工程は、ICP−RIE装置により、O2を用いて、ガス圧1.5Pa、アンテナ電力400W、バイアス電力0W、エッチング時間15秒の条件で行った。
加工後の磁気記録層52の凹凸深さをTEM観察で調べたところ、8nmであった。
製造したDTR媒体に潤滑剤を塗布しハードディスクドライブに搭載して評価したところ、隣接記録前のエラーレートは10の−6乗という良好な値が得られた。隣接トラックに10000回記録を行った後、フリンジ耐性を評価したところ、エラーレートは10の−4.8乗が得られ、DTR媒体への適合性を確認できた。
比較例1
図2(f)のエッチングレートを変化させる改質処理を省略したこと以外は、実施例1と同様の方法によってDTR媒体を作製した。
加工後の磁気記録層の凹凸深さをAFM観察で調べたところ、4nmであった。さらに、製造したDTR媒体に潤滑剤を塗布しハードディスクドライブに搭載して評価したところ、隣接記録前のエラーレートは10の−6乗という良好な値が得られた。一方、隣接トラックに10000回記録を行った後、フリンジ耐性を評価したところ、エラーレートは10の−3.6乗が得られ、DTR媒体への適合性が不十分であった。媒体をDC着磁した後にMFM測定したところ、パターン凹部の磁気記録層の磁性が失活不足であることがわかった。したがって、十分なフリンジ耐性が得られなかったのはパターン凹部の磁性失活不足が原因と考えられる。エッチングレートを変化させる改質処理を含むプロセスで得られた実施例1のDTR媒体と比較すると、パターン凹部へのHe−N混合失活ガスの進入深さが浅くなっているためであると考えられる。
比較例2
図2(f)のエッチングレートを変化させる改質処理を省略し、図2(g)の磁性失活工程のエッチング時間を24秒としたこと以外は、実施例1と同様の方法によってDTR媒体を作製した。
加工後の磁気記録層の凹凸深さをAFM観察で調べたところ、8nmであった。さらに、製造したDTR媒体に潤滑剤を塗布しハードディスクドライブに搭載して評価したところ、隣接記録前のエラーレートは10の−6乗という良好な値が得られた。一方、隣接トラックに10000回記録を行った後、フリンジ耐性を評価したところ、エラーレートは10の−3.9乗が得られ、DTR媒体への適合性が不十分であった。媒体をDC着磁した後にMFM測定したところ、パターン凹部の磁気記録層の磁性が失活不足であることがわかった。したがって、十分なフリンジ耐性が得られなかったのはパターン凹部の磁性失活不足が原因と考えられる。エッチングレートを変化させる改質処理を含むプロセスで得られた実施例1のDTR媒体と比較すると、パターン凹部へのHe−N混合失活ガスの進入深さが浅くなってしまっているためであると考えられる。
比較例3
図2(f)のエッチングレートを変化させる改質処理を省略し、図2(g)の磁性失活工程のエッチング時間を42秒としたこと以外は、実施例1と同様の方法によってDTR媒体を作製した。
加工後の磁気記録層の凹凸深さをAFM観察で調べたところ、14nmであった。さらに、製造したDTR媒体に潤滑剤を塗布しハードディスクドライブに搭載して評価した。しかし、ヘッドの浮上が安定せずドライブが破壊され、DTR媒体への適合性が不十分であることが明らかとなった。ヘッドが安定浮上する凹凸領域よりもパターンの凹凸が高すぎたためであると考えられる。
実施例1および比較例1から3の処理条件、測定結果をまとめた結果は以下の表1の通りである。なお、隣接トラック記録後のエラーレートは、主に磁性失活の効率が反映されたものであると考えられる。
Figure 2010192069
表1の結果から、本発明の方法のように改質処理の工程を設けることで、より少ない凹凸且つより短いエッチング時間で、効率的に磁性失活できることがわかる。
実施例2
改質処理工程(f)において使用するガスを変更した以外は、実施例1と同様にDTR媒体を作製した。本実施例では、改質処理工程において、CF、SF、CHFまたはArを使用し、4種の媒体を製作して評価した。
加工後の磁気記録層の凹凸深さをAFM観察で調べたところ、エッチングレートを変化させる改質処理で用いるガスの違いでばらつきはあったが、おおよそ8nm程度であった。
製造したDTR媒体に潤滑剤を塗布しハードディスクドライブに搭載して評価したところ、エッチングレートを変化させる改質処理で、Arを用いて作製した媒体以外の3種のDTR媒体で、隣接記録前のエラーレートは10の−6乗という良好な値が得られた。隣接トラックに10000回記録を行った後、フリンジ耐性を評価したところ、エラーレートは10の−4.8乗が得られ、DTR媒体への適合性を確認できた。
エッチングレートを変化させる改質処理で、Arを用いて作製したDTR媒体は、隣接記録前のエラーレートは10の−6乗という良好な値が得られたが、フリンジ耐性が得られなかったため、DTR媒体へは適合性が不十分であった。媒体をDC着磁した後にMFM測定したところ、パターン凹部の磁気記録層の磁性が失活不足であることがわかった。したがって、フリンジ耐性が得られなかったのはパターン凹部の磁性失活不足が原因と考えられる。
以上の結果を表2にまとめる。
Figure 2010192069
上記のように、エッチングレートを変化させる改質処理がCF、SF、CHFを用いた反応性イオンエッチングであれば、パターン凹部の磁性失活を効率的に行なうことが可能であることがわかる。
実施例3
磁性失活工程(g)において処理条件を変更した以外は、実施例1と同様にDTR媒体を作製した。本実施例では、磁性失活工程の失活ガスとして、He、O、N、He−N、He−O、He−N−OまたはArの7種をそれぞれ使用した。加工後のパターン凹凸が実施例1と同等の8nmとなるように、エッチング時間をガスごとに適宜調節した。ガス及び時間以外の処理条件は実施例1と同様に行った。
製造したDTR媒体に潤滑剤を塗布しハードディスクドライブに搭載して評価したところ、7種類すべての媒体で、隣接記録前のエラーレートが10の−6乗という良好な値が得られた。隣接トラックに10000回記録を行った後フリンジ耐性を評価したところ、磁性失活ガスにArを用いた媒体以外は、エラーレートは10の−4.8乗程度が得られ、6種類すべての媒体でDTR媒体への適合性を確認できた。
磁性失活ガスにArを用いた媒体は、隣接トラックに10000回記録を行った後フリンジ耐性を評価したところ、10の−3.7乗程度しか得られずDTR媒体への適合性が不十分であった。媒体をDC着磁した後にMFM測定したところ、パターン凹部の磁気記録層の磁性が失活不足であることがわかった。したがって、フリンジ耐性が得られなかったのはパターン凹部の磁性失活不足が原因と考えられる。
上記のように、磁性失活ガスがHe、O、N、He−N、He−O、He−N−Oガスであれば、パターン凹部の磁性失活を効率的に行なうことが可能であることがわかる。
1…パターンド媒体、2…サーボ領域、3…データ領域、21…プリアンブル部、22…アドレス部、23…バースト部、31…ディスクリートトラック、32…磁性ドット、51…ガラス基板、52…磁気記録層、53…第1のハードマスク、54…第2のハードマスク、55…レジスト、56…改質部、57…非磁性層、58…保護膜、60…スタンパ、130…ヘッドスライダー、140…スピンドルモータ、150…磁気記録装置、154…サスペンション、155…アクチュエータアーム、156…ボイスコイルモータ、157…ピボット。
本発明の実施形態によれば、磁気記録層上に、第1のハードマスク、第2のハードマスクおよびレジストを形成し、前記レジストに対してスタンパをインプリントして凹凸パターンを転写し、パターン化されたレジストの凹部に残存している残渣を除去し、パターン化されたレジストをマスクとして、前記第2のハードマスクをエッチングして凹凸パターンを転写し、前記第2のハードマスクをマスクとして前記第1のハードマスクをエッチングして凹凸パターンを転写し、CF 、SF またはCHF を用いた反応性イオンエッチングにより、パターン凹部の磁気記録層のイオンビームエッチングでのエッチングレートを大きくする改質処理を施し、He、O 、N 、He−N 混合ガス、He−O 混合ガスまたはHe−N −O 混合ガスを用いたイオンビームエッチングにより、パターン凹部の磁気記録層の磁性を失活させることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法が提供される。

Claims (4)

  1. 磁気記録層上に、第1のハードマスク、第2のハードマスクおよびレジストを形成し、
    前記レジストに対してスタンパをインプリントして凹凸パターンを転写し、
    パターン化されたレジストの凹部に残存している残渣を除去し、
    パターン化されたレジストをマスクとして、前記第2のハードマスクをエッチングして凹凸パターンを転写し、
    前記第2のハードマスクをマスクとして前記第1のハードマスクをエッチングして凹凸パターンを転写し、
    パターン凹部の磁気記録層のエッチングレートを変化させる改質処理を施し、
    パターン凹部の磁気記録層の磁性を失活させる
    ことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  2. 前記磁気記録層のエッチングレートを変化させる改質処理が、CF、SFまたはCHFを用いた反応性イオンエッチングであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記磁気記録層の磁性の失活が、He、O、N、He−N混合ガス、He−O混合ガスまたはHe−N−O混合ガスを用いて行われることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  4. 請求項1に記載の製造方法によって製造された磁気記録媒体を搭載した磁気記録装置。
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