JP2010169153A - 防音性合成樹脂管およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】硬質ポリ塩化ビニルまたはポリエチレンテレフタレートの合成樹脂管1表面に、有機系繊維または無機系繊維の圧縮体またはニードルパンチされたフェルトである不織布または連続気泡フォームとからなる吸音層2と、該吸音層2の表面に不燃性無機化合物微粉と水性ポリマーディスパージョンもしくは再乳化型粉末樹脂であるポリマー混和剤とからなる遮音層3を形成する。
【選択図】図1
Description
従来、住宅用排水管には、合成樹脂管表面に水硬性材料(例えば、繊維強化モルタル等)で被覆した被覆二層合成樹脂管が主として使用されてきた。これ自体は、安価で、耐火性があり、施工も容易で、かつ、水の流れが良好であるという優れたものであるため、広く使用されてきたが、この種の二層管は、吸音材層を有していないため、遮音性能が低い。
また、配管等においては、筒状に成形した遮音シートの内周面に、軟質吸音材を積層し、長手方向に亘って割り溝を設けた配管用遮音材が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、現場でグラスウール等の吸音材や吸音シートを配管に巻き付けて針金等で固定する方法は、施工に手間がかかり、吸音効果はともかく、防音効果は十分なものとは言えない。また、筒状に曲成して割り溝を設けた吸音材を形成するには、特別な工程を必要とし、コストアップの要因となる。
これは、吸音材層、遮音材層を設けた防音材構造を示しているが、それぞれの層は粘着材層、接着剤層等を用いて接合されているものであり、遮音材層が排水時の振動や結露水等で剥離する危険がある上、高価なゴムやプラスチックシートを用いるため、コストダウンさせることが困難である。
この場合、吸音層と遮音層を設けているため、防音効果は高いと思われるが、遮音層が高価である上、吸音層の配管側に、配管に対して高精度に平行にシワを作製することは、工程的に面倒、煩雑であり、問題がある。
[1]合成樹脂管の外表面に不織布または連続気泡フォームからなる吸音層が形成され、前記吸音層の表面に不燃性無機化合物微粉およびポリマー混和剤からなる遮音層が形成されていることを特徴とする防音性合成樹脂管、
[3]前記ポリマー混和剤が、水性ポリマーディスパージョンまたは再乳化型粉末樹脂であることを特徴とする上記[1]または[2]に記載の防音性合成樹脂管、
[4]前記不燃性無機化合物微粉が、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、タルク、高炉スラグ、砂、硅砂、ポゾラン、マイカ、珪藻土、酸化チタン、酸化鉄、フェライトおよびフライアッシュのうちの少なくとも1種であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の防音性合成樹脂管、
[5]前記不織布が、有機系繊維または無機系繊維の圧縮体またはニードルパンチされたフェルトであることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の防音性合成樹脂管、
[8]筒状に成形された不織布または連続気泡フォームからなる吸音層の外表面に不燃性無機化合物微粉とポリマー混和剤とからなる遮音層が形成された配管用防音材に、合成樹脂管を挿入することを特徴とする防音性合成樹脂管の製造方法、
を開発することにより上記の課題を解決した。
内側の吸音層は、不織布または連続気泡フォームからなるため、振動をよく吸収し、合成樹脂管自体の振動およびその内部の液の流れに基づく振動の伝達を効率よく制御できる。
また、表面層の遮音層は、不燃性無機化合物微粉からなるにもかかわらず、ポリマー混和剤の粘弾性により、ある程度の弾力性、可撓性を有するため、施工も容易であるという特徴がある。
(1)合成樹脂管表面は、不燃性のスラリー硬化物で被覆されているため、吸音層に無機系繊維を使用したときは不燃性を有しているとともに、施工時に吸音層の不織布繊維の飛散を防止することができる。
(2)合成樹脂管の表面は、不織布製吸音層と弾性のあるスラリー硬化物による遮音層を有しているため、排水管等としての振動に対する防音性は抜群に高い。
(3)弾性のあるスラリー硬化物を使用しているため、スラリーの硬化後であっても、柔軟性があり、成形加工が容易である。
図1に、合成樹脂管1の表面に、吸音層2である不織布または連続気泡フォーム、および、その外側に遮音層3である不燃性無機化合物微粉とポリマー混和剤とからなるスラリー硬化物層とが形成された本発明の防音性合成樹脂管を示す。なお、吸音層2と遮音層3の間に、スラリー含浸層が形成されていてもよい。
本発明における吸音材層は、不織布または連続気泡フォームが使用可能ではあるが、特に、不織布が好ましい。不織布としては、原材料の繊維は有機系繊維または無機系繊維のいずれであってもよい。
不燃性無機化合物微粉としては、安価で入手しやすく、取り扱いが安全で、耐熱性のあるものであれば、ほとんどのものを使用することができる。例えば、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、タルク、高炉スラグ、砂、硅砂、ポゾラン、マイカ、珪藻土、酸化チタン、酸化鉄、フェライトおよびフライアッシュを挙げることができる。
これらの不燃性無機化合物微粉は、水硬性材料、特に、セメント系材料とは異なり、水和反応が進むことにより硬化が進むことはなく、硬化することにより脆くなって靱性が低下し、耐久性が低下するということがない。また、この結果、不燃性無機化合物とポリマー混和剤のスラリーの硬化物層は、外からの振動を吸収し、外部への伝導を効果的に遮断できる性能がある。
前記樹脂エマルジョンとしては、再乳化型粉末樹脂(JIS A 6203)を水中に分散したもの、または、各種熱可塑性樹脂もしくはゴム等との混合エマルジョンも使用することができる。
また、これらのポリマー混和剤は、目的に応じて選択することが必要であり、ワーカビリティー、コンシスタンシー等を考慮し、例えば、耐光性、難燃性を目的とするときはCR系を、伸びの性能を目的とするときはNR系、MBR系等を選択することになる。樹脂系の場合に伸びを確保するためには、配合比を多くする必要がある。
不燃性無機化合物微粉(C)とポリマー混和剤(P)の配合比(P/C)は、使用する材料、目的とするスラリー硬化物の破断時の伸び率等により変わるが、セレタックG(登録商標)でP/C=30〜200%であれば、10%以上の破断時の伸び率を確保することができる。破断時の伸び率を大きくしたいときは、P/Cを大きくすればよい。
制振、吸音効果の点で、不織布またはフェルトを使用することが好ましい。特に好ましいものの例としては、ポリエステル等の合成繊維からなる不織布が挙げられ、耐火性の点からは、ガラス繊維、ロックウール、セラミック繊維等の不織布が好ましい。
使用するフェルト層の厚さは、目的、吸音性、材質や使用箇所により変更が必要であるが、通常2〜30mm、好ましくは3〜15mmである。
前記遮音層は、不燃性無機化合物微粉とポリマー混和剤とからなるスラリーの硬化に際し、ある程度の収縮が避けられないが、内面に不織布層があるため、それらの歪みは吸収され、内部に対する形状保持性、成形性に悪影響を与えない。また、該遮音層は、遮音性に優れていることはもちろんであるが、排水管等の被覆に使用したとき、振動がかかっても、前記吸音層の助けもあって、ひび割れの危険がないものである。
すなわち、(a)予め吸音層を筒状に成形し、その外表面側からスラリーを含浸させて筒状の防音材とした後、合成樹脂管に嵌入してもよく、また、(b)筒状の吸音層を合成樹脂管に嵌入した後、その外表面側からスラリーを含浸させて、防音性を有する合成樹脂管を作製してもよい。本発明の方法は、遮音層につなぎ目ができず、好ましい方法である。この防音性合成樹脂管は、通常、アパート、戸建て住宅等の建築物のトイレ、風呂場、台所等の排水に用いられている排水管等に利用することができる。これらの排水管は、排水騒音を大幅に低減することが可能である。
[実施例1]
長さ1.4m、呼び径100mmφの硬質塩化ビニルパイプ(PVC管;重量4.78kg、外径約114mmφ)に、PETフェルト(20デニール、厚さ5mm、面重量400g/m2)を巻き付け、その表面に不燃性無機化合物微粉(主成分:炭酸カルシウム粉体)とポリマー混和剤(商品名:セレタック混和剤G(登録商標);アクリル−EVA系ポリマーエマルジョン、固形分濃度56%)のスラリーとを不燃性無機化合物微粉:ポリマー混和剤=1:1で混合したものを塗布し、厚さ1mm(面重量2kg/m2)のスラリー硬化物による遮音層を形成し、防音性合成樹脂管とした。
該防音性合成樹脂管を用い、半無響室(W:2m×L:3m×H:2m)内の試験装置(リオン社製:NA−29)にセットして、一定流量:4リットル/秒の水を定常的に流し、管壁面から50cm、床面から110cmの高さにセットしたマイクを用いて、発生する騒音を測定した。等価騒音レベル(Leq)として10秒間測定し、その値を騒音値とした。また、そのときのオクターブ周波数分析の結果を表1に示す。測定値は、ともにA特性で計測したものである。
実施例1と同様に、長さ1.4mの呼び径100mmφの硬質塩化ビニルパイプ(PVC管:重量4.78kg、外径約114mmφ)に、PETフェルト(20デニール、厚さ5mm、面重量400g/m2)を巻きつけた防音性合成樹脂管を用いて、半無響室にセットして、一定流量:4リットル/秒の水を定常的に流し、管壁面から50cm、床面から110cmの高さにセットしたマイクを用いて、発生する騒音を測定した。
比較例1において、前記PETフェルトの外側にゴム系遮音シート(厚さ1mm、面重量2kg/m2)を巻いたPVC管を用いて、発生する騒音測定を行った。
2 吸音層
3 遮音層
Claims (8)
- 合成樹脂管の外表面に不織布または連続気泡フォームからなる吸音層が形成され、前記吸音層の表面に不燃性無機化合物微粉およびポリマー混和剤からなる遮音層が形成されていることを特徴とする防音性合成樹脂管。
- 前記合成樹脂管が、硬質ポリ塩化ビニルまたはポリエチレンテレフタレートからなることを特徴とする請求項1記載の防音性合成樹脂管。
- 前記ポリマー混和剤が、水性ポリマーディスパージョンまたは再乳化型粉末樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の防音性合成樹脂管。
- 前記不燃性無機化合物微粉が、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、タルク、高炉スラグ、砂、硅砂、ポゾラン、マイカ、珪藻土、酸化チタン、酸化鉄、フェライトおよびフライアッシュのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防音性合成樹脂管。
- 前記不織布が、有機系繊維または無機系繊維の圧縮体またはニードルパンチされたフェルトであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防音性合成樹脂管。
- 低層住宅用排水管用であることを特徴とする請求項1〜5に記載の防音性合成樹脂管。
- 合成樹脂製パイプの外表面に不織布または連続気泡フォームからなる吸音層を形成した後、前記吸音層の表面に不燃性無機化合物微粉およびポリマー混和剤からなるスラリーを塗布、吹き付けまたは浸漬することにより遮音層を形成することを特徴とする防音性合成樹脂管の製造方法。
- 筒状に成形された不織布または連続気泡フォームからなる吸音層の外表面に不燃性無機化合物微粉とポリマー混和剤とからなる遮音層が形成された配管用防音材に、合成樹脂管を挿入することを特徴とする防音性合成樹脂管の製造方法。
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