JP5675948B2 - 防音性を有する耐火二層管 - Google Patents
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Description
本発明に係る耐火二層管は、通常の戸建て住宅や高層ビル等において、建築基準法や消防法に基づく排水管として使用することができ、さらに、これらの建築物において発生する排水騒音を大幅に低減することができる。
これに対しては、建築基準法や消防法において、生命、財産等の保全の観点から、上記のような集合住宅の隣接又は上下の区画には、耐火壁、耐火性床(天井)等(本発明においては、これらを一括して、「耐火壁」と言う。)を設ける延焼防止策が規定されている。
しかしながら、アパート、マンション、オフィスビル等の集合住宅において、隣接区画を耐火壁で仕切るのみでは、十分な延焼防止策が図られるとは言えず、耐火壁自体に、一戸建て住宅の外壁と同等の延焼防止の機能が求められている。
上記要望に対応するために、建築基準法や消防法に基づく基準や行政指導において、集合住宅における隣接する区画の間の耐火壁を貫通する耐火性配管材についても、必要とされる構造や性能が定められている。
これらの耐火二層管は、構造的には、目的に応じて数多くの提案がなされているが、依然として、モルタル等からなる不燃性又は難燃性材料の外管と、軽量で、水の流れのよい強度のあるPVC管、PET管等の合成樹脂製内管で構成される2層構造のものが主流である。
したがって、耐火壁、耐火床のみで隣接する各室を構成したマンション、アパート等の高層住宅においては、その騒音対策が必要とされている。このため、マンション、アパート等において、前記耐火二層管を排水管として使用する際は、施工現場において、配管敷設後に耐火二層管の外周面にグラスウール又は遮音シート等を巻装して防音を行ったり、耐火二層管の敷設前に耐火二層管の外周面に吸音材や遮音材を工場で巻装してから工事現場に搬送し、配管敷設したりする方法も実施されていた。
このため、給排水管等が原因となる排水騒音の合理的かつ確実な防止対策は、業界でもその開発が急がれている。
また、筒状に曲成した遮音シートの内周に軟質吸音材を積層し、長手方向にわたって割り溝を設けた排水管用遮音材も提案されている(特許文献1参照)。
さらに、筒状の防音材を形成した場合は、保管や運搬の際にかさばり、従来の耐火二層管に比較して、多大のスペースを必要とするという問題点がある。また、構成材料も、内管、外管、防音材と3部材が必要となり、吸音材が遮音材(外管)の外側にくることになり、防音性が不十分になりやすい。
しかしながら、上記方法において用いられるモルタルフィルム抄造装置は、設備が極めて高価であり、操業経費も高い。また、鉄等の金属製芯管を用いる場合には、これを抜くためにモルタルの二次養生が必要となる等、生産効率が高い方法ではない。しかも、断熱・吸音材料として用いられる無機繊維製のフェルト又はマットは高価であり、コストアップが避けられない。
この提案では、吸音層、遮音材層を設けた防音材構造が示されているが、それぞれの層は、粘着材層、接着剤層等を用いて接合されているため、排水時の振動等で前記遮音材層が剥離するおそれがある。しかも、遮音材として高価なゴムやプラスチックシートを用いているため、コストダウンを図ることは困難である。
この場合、吸音層と遮音層が設けられているため、防音効果は高いと考えられるが、耐火性は不十分である上、遮音層が高価であり、その上、吸音層の配管側にシワを配管と平行に設けることが必要であり、工程的に面倒、煩雑である。
(1)耐火性防音層が、少なくとも従来の耐火二層管と同等の耐火性を有するとともに、モルタルを含浸させた不織布等により形成し、高剛性、耐火性、防音性を有するとともに、施工時、運搬時等において、吸音層の不織布繊維が飛散しないこと。
(2)高層又は低層の建築物用排水管として用いた時、排水騒音を低減する耐火二層管であること。
(3)接着剤を使用しなくても、吸音層と遮音層との剥離を確実に解消でき、さらに、内面の不織布等の吸音層により、排水管等の振動が吸収され、地震等の強い衝撃に遭遇しても吸音層からモルタル含浸層が剥離しないこと。
[1]合成樹脂製管の外面に、内側がモルタル非含浸の不織布からなる吸音層、前記吸音層の外側がモルタルを含浸させた不織布からなる遮音層である耐火性防音材を被覆してなる耐火二層管であって、モルタルを含浸させる外面の前記不織布の目付量が、モルタル非含浸の内面の前記不織布の目付量に比して小さいことを特徴とする防音性を有する耐火二層管、
[2]前記不織布が、1枚の不織布で疎部と密部の2層を有するものであることを特徴とする上記[1]に記載の防音性を有する耐火二層管、
[3]前記不織布が、密度の異なる2枚又はそれ以上の不織布を組み合わせたものであることを特徴とする上記[1]に記載の防音性を有する耐火二層管、
[4]前記不織布が、有機系繊維の圧縮体又はニードルパンチされたフェルトであることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の防音性を有する耐火二層管、
[5]前記有機系繊維が、ポリエチレンテレフタレート系の合成繊維であることを特徴とする上記[4]記載の防音性を有する耐火二層管、
[7]前記吸音層の厚さは少なくとも1mmであり、前記遮音層の厚さは少なくとも3mmであることを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれかに記載の防音性を有する耐火二層管、
[8]排水用配管の材料として用いられることを特徴とする上記[1]〜[7]のいずれかに記載の防音性を有する耐火二層管、を開発することにより上記の課題を解決した。
また、従来の耐火二層管の外管が、押出法あるいは抄造法(巻き芯を抜くために養生が必要)で製造するのに比べて、本発明の耐火性防音材は、簡単な装置で、より容易に、かつ、安価に製造することができ、輸送等における制約が少ない。
さらに、前記防音材の内面は、モルタル非含浸の不織布等からなるため、合成樹脂製管等に不織布等を巻装後にモルタルを含浸させたときであっても、不織布等により緩衝されるため、モルタルの硬化の際の収縮を考慮する必要がない。しかも、吸音層とモルタル含浸層の剥離も全くなく、振動が激しくても、破損やクラックの発生に耐えられ、また、後からモルタルを含浸させた場合には、表面にモルタルの継ぎ目がない耐火二層管が得られる。
また、モルタル層の厚さの調節で、遮音性の調整が可能であり、特に、騒音の漏洩しやすい箇所(例えば、排水の衝突する曲管等)の必要部分のみモルタルを厚くすることによって対応可能であり、耐震性、耐火性、防音性に優れた二層管である。
図1に、本発明に係る耐火二層管の防音材の構成を示す。この防音材は、モルタルを含浸させた不織布からなる遮音層2及びモルタル非含浸の不織布からなる吸音層1との2層構造である。
なお、本発明で言うフェルトとは、圧縮した繊維層、ニードルパンチしたフェルト等を含むものである。
不織布に使用される有機系繊維としては、ポリエチレンテレフタレート系(PET系ポリエステル)、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド、アクリル系繊維、木綿、羊毛等が挙げられる。中でも、物性や価格の点から、特に、PET系ポリエステル等の合成繊維が好ましい。
前記不織布は、制振、吸音効果の点で、フェルト、圧縮布として使用されることが好ましい。
発泡ウレタンフォーム等の連続気泡フォームも、フェルトとほぼ同一程度の厚さで使用することができる。ただし、連続気泡フォームは、不織布よりもモルタル含浸層に対する補強効果が小さく、また、モルタルの含浸性が劣るため、本発明においては、モルタル非含浸の吸音層にのみ使用し、モルタル含浸の遮音層には使用しない。
使用するモルタルの粘度は、不織布の面重量(密度)、不織布の厚さ、必要となるモルタル含浸層の厚さ、モルタル含浸時間等を考慮して決定する必要がある。
なお、モルタル含浸時間を短縮するために、不織布のモルタル含浸層部分の面密度を、吸音層の部分に比して小さくしておくことも有効である。
また、不織布にモルタルを含浸させることにより、セメントの強度(剛性)を向上させることができるため、セメントモルタルとして短繊維混入モルタルの使用は不要である。短繊維混入モルタルは、むしろ、フェルトに対する浸透性が悪くなるため、短繊維は使用しないことが好ましい。
モルタル含浸層の厚さは、不織布の厚さ、目的、施工場所等に応じて適宜設定する必要がある。厚いほど遮音性が向上するが、重量の問題もあり、少なくとも3mm、好ましくは5〜10mm程度で、遮音性を相当発揮することができる。これ以上厚くしても、防音性は向上するものの、耐火性は向上せず、耐火二層管の重量が増加し、輸送、施工が困難になる。
また、排水管内部に振動があると、靱性に富む合成樹脂製内管は大きく振動し、外管に振動を与える。不織布等からなる吸音層と剛性の高いモルタル含浸層の遮音層とからなる防音材の外管は加速度に対する反応が鈍い。すなわち、前記防音材の内面側の吸音層は、柔軟な不織布等であるため、これがクッションとなり、凹むとともに接触面積を増大させてから、外面側のモルタル含浸層の遮音層に衝突するため、衝撃力は非常に低減される。したがって、振動(音波)の伝播が低減され、内管及び外管ともに、破損耐力が大きく改善される。
しかしながら、前記突起部又は曲管部に接合された二層管において、従来の耐火二層管では、排水管設備内部で発生した衝撃が、合成樹脂製管から直接、外管のモルタル層に伝達され、衝撃音、振動を吸収するものが全くなかった。
これに対して、本発明の耐火二層管では、吸音層として不織布等が存在し、合成樹脂製管からの衝撃の大部分が吸音層で吸収され、モルタル含浸層である遮音層への伝達が減殺される。また、前記モルタル含浸層は、モルタル非含浸の不織布等と一体化しているため、振動伝達が大きく減殺され、騒音の発生を減少させる顕著な効果が認められる。
[実施例1]
長さ1.4mの称呼径φ100mm硬質塩化ビニル管(PVC管;重量4.78kg、外径約114mmφ)に、PETフェルト(材質PET;3.3,4.4,6.6デシテックスの混合品、概寸厚さ14mm、疎部約100g/m2、密部約200g/cm2の2層からなる。面重量平均300g/m2)に、モルタル(主成分ポルトランドセメント70±10重量部、砂26±6重量部(国土交通大臣認定配合))を厚さ7mmまで含浸させた防音材(内側:フェルト層、外側:含浸層)を巻いたPVC管を作製した。
これを半無響室(W:2m×L:3m×H:2m)内の試験装置(リオン社製;NA−29)にセットして一定流量:4リットル/秒の水を定常的に流し、管壁面から50cm、床面から110cmの高さにセットしたマイクを用いて、発生する騒音を測定した。
等価騒音レベル(LAeq)として10秒間測定してその値を騒音値とした。
また、その時のオクターブ周波数分析の結果を表1に示す。測定値は、ともに、A特性で計測したものである。
内管が長さ1.4mの呼び径100mmφの硬質塩化ビニル管(PVC管:重量4.78kg、外径約114mmφ)、外管が繊維混入モルタルセメント(厚さ6.5mm)であり、内管と外管の間に空隙を有する耐火二層管(ケイプラパイプ(登録商標);昭和電工建材株式会社製)を用いて、実施例1と同様にして、半無響室にセットして、一定流量:4リットル/秒の水を定常的に流し、管壁面から50cm、床面から110cmの高さにセットしたマイクを用いて、発生する騒音を測定した。
測定結果を表1に併せて示す。
すなわち、本発明によれば、振動に対して強く、保管、移動等によってもモルタル層が破損されにくく、遮音層であるモルタル層が吸音層から剥離するおそれがなく、防音性に優れ、流水の衝撃等による騒音防止等に優れた効果を有し、しかも、加工性に優れている耐火二層管が得られた。
本発明に係る耐火二層管は、製造が容易であり、コストも極めて低く、軽量、成形性、現場加工性、耐震動性、耐クラック性、耐水性、透水性に優れ、特に、前記防音材は、吸音層と遮音層は剥離の危険がほとんどなく、耐火性に優れているものである。
2 遮音層
Claims (8)
- 合成樹脂製管の外面に、内側がモルタル非含浸の不織布からなる吸音層、前記吸音層の外側がモルタルを含浸させた不織布からなる遮音層である耐火性防音材を被覆してなる耐火二層管であって、モルタルを含浸させる外面の前記不織布の目付量が、モルタル非含浸の内面の前記不織布の目付量に比して小さいことを特徴とする防音性を有する耐火二層管。
- 前記不織布が、1枚の不織布で疎部と密部の2層を有するものであることを特徴とする請求項1記載の防音性を有する耐火二層管。
- 前記不織布が、密度の異なる2枚又はそれ以上の不織布を組み合わせたものであることを特徴とする請求項1記載の防音性を有する耐火二層管。
- 前記不織布が、有機系繊維の圧縮体又はニードルパンチされたフェルトであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の防音性を有する耐火二層管。
- 前記有機系繊維が、ポリエチレンテレフタレート系の合成繊維であることを特徴とする請求項4記載の防音性を有する耐火二層管。
- 前記モルタルが、セメント系モルタルであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の防音性を有する耐火二層管。
- 前記吸音層の厚さは少なくとも1mmであり、前記遮音層の厚さは少なくとも3mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の防音性を有する耐火二層管。
- 排水用配管の材料として用いられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の防音性を有する耐火二層管。
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