JP2005265131A - 配管材及びその被覆体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 屈曲性又は可撓性を損なうことなく、被覆作業の簡易化を図ることが可能な配管材及びその被覆体を提供する。
【解決手段】 防音配管10は、屈曲自在な本体管11と、該本体管11の表面に設けられた第1被覆体21と、該第1被覆体21の表面に設けられた第2被覆体31とを備えている。第1被覆体21及び第2被覆体31は、それぞれ第1のシート材22及び第2のシート材32を丸めて側縁部同士を接合することによって形成されたものである。また、第1のシート材22及び第2のシート材32には、本体管11の屈曲性を保持するために第1切離部23及び第2切離部33がそれぞれ設けられている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、建築物の給排水装置や空調装置等の配管に適用される配管材及びその被覆体に関するものである。
従来、建築物の給排水装置や空調装置等に使用される給水管、排水管、吸気ダクト、排気ダクト等の配管材として、施工部位に応じて自在(フレキシブル)に敷設することができるよう、その利便性を鑑みて屈曲性、あるいは可撓性を備えたものが提供されている。また近年は、水、空気等の流体を管内で流通させるのみに留まらず、流体から発生した騒音の低減、流体の保温、断熱等といった効果を付与すべく、その表面に防音材、保温材、断熱材等の被覆体を設けた配管材が提供されている。例えば特許文献1には、表面に防音材を設けた配管材が記載されている。
当該配管材は、本体管と、同本体管の表面を被覆する被覆体と、該被覆体の表面を被覆する外被体とを備えている。前記本体管は、補強体が内包された軟質樹脂テープで形成されている。前記第1被覆体は、防音材である連続気泡構造の軟質発泡テープから形成されている。前記外被体は、軟質非発泡テープから形成されている。そして、当該配管材は、これら軟質樹脂テープ、軟質発泡テープ及び軟質非発泡テープを螺旋状に巻回しつつ、融着等の方法で一体化して形成されるものであり、屈曲又は可撓可能に構成されている。
特開2000−304166号公報
上記従来の配管材のように、一般に本体管の屈曲性、あるいは可撓性を保持しつつ、その表面を被覆体で被覆するには、本体管の表面にテープ等の帯状部材を螺旋状に巻回する方法が採用されていた。ところが、間隔が拡がったり、大きく重なり合ったり等しないよう帯状部材同士を等間隔で巻回する必要があることから、被覆体で本体管の表面を被覆する被覆作業は、精密性を要するとともに非常に煩雑であった。
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、屈曲性又は可撓性を損なうことなく、被覆作業の簡易化を図ることが可能な配管材及びその被覆体を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の配管材の発明は、屈曲自在に構成された本体管と、該本体管の表面を被覆する被覆体とを備えており、切離部が前記本体管の延びる方向と交差する方向へ延びるように設けられたシート材を使用し、当該シート材が筒状をなすように該シート材の側縁部を接合して前記被覆体を形成したことを要旨とする。
上記構成によれば、被覆体を形成するシート材には、切離部が設けられている。この切離部は、該被覆体によって表面を被覆される本体管の延びる方向と交差する方向へ延びるように設けられている。そして、本体管が屈曲又は可撓する際、当該切離部は、屈曲部分又は可撓部分の外側で拡がり、内側で狭まる。従って、本体管の屈曲又は可撓に応じて切離部が拡がったり、狭まったりすることにより、本体管の屈曲性又は可撓性が保持される。また、被覆体は、シート材が筒状をなすように当該シート材を湾曲させ、その側縁部を接合することによって形成されるものである。このため、帯状部材を螺旋状に巻回する等のような煩雑な作業を要することなく、シート材を丸めてその側縁部を接合するのみで本体管に対する被覆体の被覆作業が完了する。その結果、屈曲性又は可撓性を損なうことなく、被覆作業の簡易化を図ることができる。
請求項2に記載の配管材の発明は、請求項1に記載の発明において、前記シート材として防音材を使用したことを要旨とする。
上記構成によれば、シート材として防音材を使用したことにより、配管材は、その内部を流通する流体から発生した騒音に対し、好適な防音性を発揮することが可能となる。
請求項3に記載の配管材の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記被覆体は、前記本体管の表面を覆う第1被覆体と、その第1被覆体の表面を覆う第2被覆体とから構成されており、第1被覆体は前記切離部として第1切離部が設けられた第1のシート材から形成され、第2被覆体は前記切離部として第2切離部が設けられた第2のシート材から形成されるとともに、当該第2切離部は、前記第1切離部に対して位置をずらして配置されていることを要旨とする。
上記構成によれば、第1被覆体が第1切離部を、第2被覆体が第2切離部を有していることから、本体管が屈曲又は可撓する際、第1切離部及び第2切離部がそれぞれ拡がったり、狭まったりすることにより、本体管の屈曲性又は可撓性が保持される。また、第2切離部は、前記第1切離部に対して位置をずらして配置されていることから、第1被覆体の第1切離部と、第2被覆体の第2切離部とが互いに重なり合うことを抑制することができる。このため、本体管を屈曲又は可撓させた際、屈曲部分又は可撓部分の外側で第1切離部が拡がっても、第2被覆体で第1切離部を外部から覆うことが可能となる。その結果、本体管を屈曲又は可撓させた際、外部へ開放された隙間が第1被覆体及び第2被覆体に形成されることを抑制することができる。
請求項4に記載の被覆体の発明は、屈曲自在な本体管の表面を被覆して、該本体管とともに配管材を構成する被覆体であって、切離部が前記本体管の延びる方向と交差する方向へ延びるように設けられたシート材を使用し、当該シート材が筒状をなすように該シート材の側縁部を接合して形成することを要旨とする。
上記構成によれば、シート材には、切離部が設けられている。この切離部は、被覆体によって表面を被覆される本体管の延びる方向と交差する方向へ延びるように設けられている。そして、本体管が屈曲又は可撓する際、当該切離部は、屈曲部分又は可撓部分の外側で拡がり、内側で狭まる。従って、本体管の屈曲又は可撓に応じて切離部が拡がったり、狭まったりすることにより、本体管の屈曲性又は可撓性が保持される。また、被覆体は、シート材が筒状をなすように当該シート材を湾曲させ、その側縁部を接合することによって形成されるものである。このため、帯状部材を螺旋状に巻回する等のような煩雑な作業を要することなく、シート材を丸めてその側縁部を接合するのみで本体管に対する被覆体の被覆作業が完了する。その結果、屈曲性又は可撓性を損なうことなく、被覆作業の簡易化を図ることができる。
請求項5に記載の被覆体の発明は、請求項4に記載の発明において、前記シート材として防音材を使用しており、該防音材は、吸音材料から形成された吸音層と、遮音材料から形成された遮音層とを備えていることを要旨とする。
上記構成によれば、吸音層による吸音性能とともに、遮音層による遮音性能を発揮することにより、被覆体は、本体管の内部を流通する流体から発生した騒音に対し、好適な防音性を発揮することが可能となる。
本発明によれば、屈曲性又は可撓性を損なうことなく、被覆作業の簡易化を図ることが可能な配管材及びその被覆体を提供することができる。
以下、本発明を防音配管として使用される配管材に具体化した一実施形態について説明する。
図1及び図7(a)に示すように、防音配管10は、本体管11と、該本体管11の表面を被覆する被覆体20と、該被覆体20の表面に設けられた外被体41とを備えている。また、当該被覆体20は、本体管11の表面を覆う第1被覆体21と、第1被覆体21の表面を覆う第2被覆体31とから構成されている。そして、図7(b)に示すように、当該防音配管10は、その周壁が本体管11、第1被覆体21、第2被覆体31及び外被体41からなる、所謂4層構造となるように構成されている。
図2に示すように、前記本体管11は、一定の間隔を空けて螺旋状に巻回された壁材12と、該壁材12の間を埋めるように設けられた連結材13とから円筒状に形成されている。該壁材12は、金属、合成樹脂等の硬質材料から形成されている。該連結材13は、合成ゴム、エラストマー、合成樹脂等の柔軟性又は可撓性を有する軟質材料から形成されている。当該本体管11は、該連結材13が撓んだり、曲がったり、伸びたり等して変形し、各壁材12の間隔が変わることにより、全体で弧状等をなすように可撓又は全体で曲線状、半円状等をなすように屈曲することが可能なように、屈曲自在に構成されている。また、当該本体管11の端部には、防音配管10同士、あるいは防音配管10とヘッダー等を接続するための接続部材14が取着されている。そして、当該本体管11は、その内部で水、湯、排水等の液体、温風、冷風、空気等の気体、あるいは固体が混入した液体又は気体等の流体が流通するようになっており、該流体の流通時に騒音が発生してしまう。
図3及び図5(a),(b)に示すように、前記第1被覆体21は、第1のシート材22から形成されたものである。第1のシート材22は、平面視で長方形状をなしている。第1のシート材22の短辺(図3中で縦辺)の長さは、前記本体管11で接続部材14を除く箇所の外周の長さよりも若干長く、長辺(図3中で横辺)の長さは、前記本体管11において接続部材14を除く箇所の長さ(管長)と等しくなっている。そして、第1のシート材22は、円筒状をなすように湾曲されることによって丸められ、側縁部(第1側縁部22a)の端面同士を突き合わせるようにして、粘着テープ等を用いて第1側縁部22aを互いに接合することにより、第1被覆体21を形成している。
第1のシート材22には、切離部として複数の第1切離部23が設けられている。これら第1切離部23は、第1のシート材22の第1側縁部22aを除く箇所に複数の切り込みを入れることによって形成されたものである。切り込みによって形成された第1切離部23は、内面が互いに接触した状態となっており、その内部に隙間を有しない構成とされている。各第1切離部23は、第1被覆体21を形成した状態で前記本体管11の延びる方向(第1のシート材22の長辺方向)と交差する方向へ延びるように、それぞれ形成されている。また、これら第1切離部23は、第1のシート材22の短辺方向の中央部22bを境界とし、同第1のシート材22の表面の両側部(図3中で上半部及び下半部)に設けられており、第1のシート材22の各側部でそれぞれが平行に延びるように配設されている。なお、第1のシート材22の両側部にそれぞれ形成された第1切離部23は、一直線状に並ぶように配設されている。そして、第1のシート材22が第1被覆体21を形成した状態で、各第1切離部23は、螺旋状をなすようにそれぞれ連なっている。
第1のシート材22としては防音材が使用されており、第1のシート材22は、吸音材料から形成された吸音層24と、遮音材料から形成された遮音層25とを備えている。前記吸音材料は、入射された音を吸音材料の内部で拡散して吸収する吸音性能を発揮することにより、音の反射を抑制するものである。前記遮音材料は、音の透過を抑制する遮音性能を発揮することにより、該遮音材料を介した音の伝搬を遮断するものである。第1のシート材22は、吸音層24が前記本体管11側となるように配設することが好ましい。これは、前記本体管11から発生した騒音を吸音層24で吸収して減衰させた後、遮音層25で遮音することにより、防音性能の向上を図ることが可能となるためである。また、吸音層24を本体管11側に配設した場合には、本体管11の表面又は遮音層25で反射された騒音を吸音層24で吸収することも可能である。
前記吸音材料としては、発泡樹脂材料、不織布、グラスウール、ロックウール等の多孔質材料が挙げられる。この実施形態では入手、加工が容易である等の観点から発泡樹脂材料が使用されている。発泡樹脂材料としては、エステル系又はエーテル系のウレタン、架橋又は無架橋ポリエチレン、クロロプレン、スチレンブタジエン共重合体、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル、スチレン等が挙げられ、これらが単独又は併用して使用される。また、発泡樹脂材料は、吸音性能の向上という観点から、発泡倍率が10〜50倍のものが好ましい。なお、発泡樹脂材料には連続気泡のものと、独立気泡のものとがあり、何れを使用してもよい。連続気泡の発泡材料は、材料中の気泡のうち一部又は全部が繋がっており、吸水性、吸音性に優れ、一方、独立気泡の発泡材料は、材料中の気泡がそれぞれ繋がっておらず、断熱性に優れるという利点を有する。例えば、当該防音配管を騒音の発生しやすい排水管として使用する場合には、吸音層24を連続気泡の発泡材料で形成することが好ましく、当該防音配管を給湯管として使用する場合には、吸音層24を独立気泡の発泡材料で形成することが好ましい。
前記遮音材料としては、高密度で比重が高い材料、つまりは重量の嵩む材料が挙げられる。これは、重量の嵩む材料は振動しにくく、音の振動が伝搬されにくいためである。この実施形態では、第1のシート材22が本体管11の表面を覆うものであることから、第1のシート材22全体ではなく、単位面積当たりの重量を重視しており、遮音材料として面密度が1kg/m2より高く、10kg/m2以下のものが使用されている。また、前記本体管11の屈曲性を阻害しないようにするため、この実施形態の遮音材料には、可撓性、柔軟性等を有する材料が使用されている。遮音材料の具体例としては、金属薄膜、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系エラストマー等のエラストマー等といった合成樹脂、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム等といったゴム類等の高分子材料等が挙げられる。また、遮音材料として高分子材料を使用する場合、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化チタン、バライト、鉄粉、酸化亜鉛、グラファイト等のフィラーが充填されることにより、遮音性の向上が図られる。
なお、遮音性能の向上は、上記のような遮音材料を選択する他に、遮音層25の周縁で隙間をなくす、遮音層25を多層にする等の工夫によっても図ることが可能である。従って、第1のシート材22に切り込みを入れることによって前記第1切離部23を形成し、第1切離部23の内部に隙間が形成されない構成とすることは、遮音性能の向上を図る上で好適な構成である。つまり、第1切離部23においては、遮音層25が互いの側面を接触させており、第1被覆体21全体が略一体の遮音層として働くことにより、本体管11のあらゆる箇所から発生した音を漏れなく遮音するように機能する。
図4及び図6(a),(b)に示すように、前記第2被覆体31は、第2のシート材32から形成されたものである。第2のシート材32は、平面視で長方形状をなしている。第2のシート材32の短辺(図4中で縦辺)の長さは、前記本体管11の表面を第1被覆体21により覆った状態での第1被覆体21の外周の長さよりも若干長く、長辺(図4中で横辺)の長さは、接続部材14を除く前記本体管11の管長よりも若干長くなっている。そして、第2のシート材32は、円筒状をなすように湾曲されることによって丸められ、側縁部(第2側縁部32a)の端面同士を突き合わせるようにして、粘着テープ等を用いて第2側縁部32aを互いに接合することにより、第2被覆体31を形成している。
第2のシート材32には、切離部として複数の第2切離部33が設けられている。これら第2切離部33は、第2のシート材32の第2側縁部32aを除く箇所に複数の長孔(スリット)を切り欠き形成することによって得られたものである。スリットによって形成された第2切離部33は、内面が互いに離隔した状態となっており、その内部に隙間を有する構成とされている。各第2切離部33は、第2被覆体31を形成した状態で前記本体管11の延びる方向(第2のシート材32の長辺方向)と交差する方向へ延びるように、それぞれ形成されている。また、これら第2切離部33は、第2のシート材32の短辺方向の中央部32bを境界とし、同第2のシート材32の表面の両側部(図4中で上半部及び下半部)に設けられており、第2のシート材32の各側部でそれぞれが平行に延びるように配設されている。なお、第2のシート材32の両側部にそれぞれ形成された第2切離部33は、一直線状に並ぶように配設されている。そして、第2のシート材32が第2被覆体31を形成した状態で、各第2切離部33は、螺旋状をなすようにそれぞれ連なっている。
第2のシート材32としては防音材が使用されており、第2のシート材32は、前に挙げた吸音材料及び遮音材料からそれぞれ形成された第2吸音層34及び第2遮音層35を備えている。第2のシート材32において、第2切離部33は、前記防音配管10を好適に屈曲又は可撓させるために設けられたものである。すなわち、防音配管10を屈曲又は可撓させた際には、屈曲部分又は可撓部分の内側で第2切離部33が狭まることにより、本体管11の屈曲性が維持されている。また、第2切離部33は、前記第1のシート材22の前記第1切離部23に対し、位置をずらして配置されている。そして、第1のシート材22の第1切離部23は、防音配管10の表面で外部へ露出されないよう、第2のシート材32によって外部から完全に覆われている。従って、防音配管10は、第1切離部23から漏れ出ようとする騒音が第2のシート材32の第2吸音層34で吸音され、さらに第2遮音層35で遮音されることにより、防音性能に優れた構成となっている。
図7(a),(b)に示すように、前記外被体41は、熱収縮性フィルムから円筒状に形成されている。この熱収縮性フィルムは、加熱によって収縮する合成樹脂を材料として形成された、所謂シュリンクフィルムであり、その材料の具体例として、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。そして、外被体41は、第1被覆体21及び第2被覆体31が設けられた状態の本体管11に被せられ、加熱されることにより装着されている。外被体41は、収縮により本体管11に対して第1のシート材22及び第2のシート材32を締め付け、これらが本体管11を被覆した状態を保持している。また、第2のシート材32は、外被体41によって第1のシート材22に密着されており、第1被覆体21と第2被覆体31との間に隙間が形成されることを抑制し、同隙間からの騒音の漏れ出しを防止している。
次に、前記防音配管の作用について以下に記載する。
当該防音配管10に被覆体20を設けるときには、まず本体管11を内部に包み込むように第1のシート材22を丸めた後、第1のシート材22の第1側縁部22aの端面同士を互いに突き合わせて接触させる。この後、第1のシート材22の第1側縁部22aの端面同士が接触した状態で、図1に2点鎖線で示したように、第1側縁部22a同士の境目を覆うように粘着テープ50を貼着することで、第1被覆体21による本体管11の被覆作業が完了する。
続いて、本体管11及び第1被覆体21を内部に包み込むように第2のシート材32を丸めた後、第2のシート材32の第2側縁部32aの端面同士を互いに突き合わせて接触させる。第2のシート材32の第2側縁部32aの端面同士が接触した状態で、第2側縁部32a同士の境目を覆うように粘着テープを貼着することで、第2被覆体31による本体管11及び第1被覆体21の被覆作業が完了する。そして、第2被覆体31の表面に外被体41を被せ、同外被体41を加熱することにより、本体管11、第1被覆体21、第2被覆体31及び外被体41からなる4層構造の周壁を有する防音配管10が得られる。
なお、第2のシート材32は、第2切離部33が第1のシート材22の第1切離部23に対して位置ずれするように予め成形されている。従って、第2被覆体31による被覆作業時には、第1のシート材22の第1側縁部22aに対して第2側縁部32aの位置を揃えるのみで、第1切離部23と第2切離部33とが位置ずれした構成とされる。
図8(a)に示すように、当該防音配管10を屈曲させたとき、屈曲部分の外側において、第1被覆体21は、第1のシート材22に設けられた第1切離部23を拡げることにより屈曲に対応する。この状態で第1切離部23には隙間が形成される。第2被覆体31は、第2のシート材32に設けられた第2切離部33を拡げることにより屈曲に対応する。また、防音配管10を屈曲させた状態としても、第2のシート材32は、一対の第2切離部33によって挟まれた箇所で第1切離部23を外部から覆う状態を維持する。従って、第1切離部23に形成された隙間は、第2被覆体31によって外部から塞がれている。そして、第1切離部23の隙間から漏れ出た騒音は、第2被覆体31によって吸音及び遮音される。
一方、図8(b)に示すように、当該防音配管10を屈曲させたとき、屈曲部分の内側において、第1被覆体21は、第1切離部23の周縁部分が湾曲したり、潰れたり等して屈曲に対応する。このとき、第1切離部23は密閉状態となり、第1切離部23から騒音が漏れ出ることはない。第2被覆体31は、第2切離部33が狭まることにより屈曲に対応する。なお、このとき第2切離部33は互いの内面を接触させておらず、防音配管10を180゜と大きく屈曲させたときにはじめて互いの内面を接触させる程度の十分な間隔を有している。
前記の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 防音配管10によれば、第1被覆体21は、第1のシート材22を丸め、第1側縁部22a同士を接合するのみで被覆作業を完了させることが可能である。同様に、第2被覆体31は、第2のシート材32を丸め、第2側縁部32a同士を接合するのみで被覆作業を完了させることが可能である。従って、本体管の表面に帯状部材を螺旋状に巻回する従来の作業に比べ、被覆作業を簡易なものとすることができる。特に、本実施形態の防音配管10は、騒音の漏れを防止するため、第1被覆体21及び第2被覆体31の2つを設け、さらに第2被覆体31で第1被覆体21の第1切離部23を覆っている。このように第1切離部23を第2被覆体31で覆う構成する場合、従来の作業であれば巻回の正確さをも要求されるため非常に煩雑となる。これに対し、本実施形態の第1被覆体21及び第2被覆体31は、シート材を丸めて側縁部同士を接合するという簡便な作業のみで第1切離部23を第2被覆体31で覆う構成とすることが可能であり、被覆作業を格段に簡易なものとすることができる。
・ また、第1のシート材22及び第2のシート材32には第1切離部23及び第2切離部33がそれぞれ形成されている。防音配管10を屈曲又は可撓させた際には、これら第1切離部23及び第2切離部33がそれぞれ拡がったり、狭まったりすることから、防音配管10の屈曲性又は可撓性を損なうことなく保持することができる。
・ また、防音配管10の屈曲時に屈曲部分の外側で第1切離部23が拡がり、ここから騒音が漏れ出ようとも、第2被覆体31が第1切離部23を覆っており、第1切離部23から漏れ出た騒音を吸音及び遮音する。従って、防音配管10は、直線状に延ばした状態は言うに及ばず、屈曲させた状態としても、好適な防音性を発揮することが可能である。なお、防音配管10を大きく曲げた屈曲状態で好適な防音性を発揮することが可能であることから、屈曲状態よりも防音配管10を小さく曲げた可撓状態では、さらに好適な防音性を発揮することが可能である。
・ また、外被体41を設けることにより、第1被覆体21と第2被覆体31との間における隙間の形成を防止することが可能であるとともに、本体管11からの第1被覆体21及び第2被覆体31の脱離を防止することができる。
以下、前記実施形態をさらに具体化した実施例について説明する。
(試験例1)
オレフィン系エラストマーに硫酸バリウムを配合して得られた遮音材料から、厚さ1mm、面密度2.3kg/m2の遮音シート材を成形した。一方、吸音材料である連続気泡構造のエーテル系ポリウレタン(イノアックコーポレーション製のウレタンを粉砕して成形したモールドチップ品)を用い、厚さ5mm、面密度0.25kg/m2の吸音シート材を成形した。次に、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤を用い、前記遮音シート材及び前記吸音シート材を接着し、防音材を製造した。そして、この防音材を第1のシート材及び第2のシート材に使用した。
続いて、屈曲自在な本体管(積水化学製のTFJ751F、75mmφ、長さ1500mm)の表面を第1のシート材で被覆し、第1被覆体を形成した。その後、第1被覆体の表面を第2のシート材で被覆し、第2被覆体を形成した。そして、第2被覆体の表面を熱収縮性フィルムであるポリエチレンテレフタレート製のフィルムで覆い、該フィルムを加熱することにより、外被体を形成して防音配管を得た。
上記のようにして得られた防音配管を使用し、騒音レベルを測定した。このときの測定環境を説明する。図9に示すように、測定環境において、トイレ51は、その床下空間52に敷設された排水管を介して、床下空間52の外部に配置された排水部53に接続されている。前記排水管は、長さ方向のほぼ中央で90゜に屈曲させた防音配管10と、防音配管10の両端にそれぞれ接続された直管54aと、これら直管54aをトイレ51及び排水部53の排水口にそれぞれ接続する継手管54bとから形成されている。なお、各直管54a及び継手管54bには、防音処理が施されたもの(シーシーアイ製、商品名:音ナイン、75mmφ)を使用した。また、各直管54aの長さは、防音配管10の上端に接続されたものが1250mmであり、下端に接続されたものが1200mmであった。
そして、床下空間52の内部に騒音計55を配置し、該騒音計55で排水管内に排水を流通させたときの騒音レベルの最大値を合計で10回測定した。騒音計55には、小野測器製のLA−5120を使用した。また、騒音計55は、そのマイク55aが防音配管10の上端からの距離Aが1000mm、防音配管10の下端からの距離Bが1000mmの位置となるように配置した。測定結果は、10回の測定値の平均値で48.5dBであった。
(対照例1)
試験例1と同様の測定環境において、防音配管に代えて前記本体管(積水化学製のTFJ751F、75mmφ、長さ1500mm)を一対の直管54aの間に繋ぎ、騒音レベルの最大値を合計で10回測定した。測定結果は、10回の測定値の平均値で55.0dBであった。
(対照例2)
前記本体管(積水化学製のTFJ751F、75mmφ、長さ1500mm)の表面に第1被覆体のみを設け、接続管を製造した。試験例1と同様の測定環境において、防音配管に代えて当該接続管を一対の直管54aの間に繋ぎ、騒音レベルの最大値を合計で10回測定した。測定結果は、10回の測定値の平均値で52.7dBであった。
(考察)
試験例1及び対照例1,2から、防音配管10は騒音レベルが、前記本体管のみとした場合に比べて6.4dB、前記接続管に比べて4.1dB低下していることが測定された。なお、前記接続管は騒音レベルが、前記本体管のみと比較して2.3dBの低下に留まり、前記防音配管と前記接続管との比較よりも低下の度合いが小さい。これらの結果より、第2被覆体で第1被覆体の切離部を覆うことで、防音配管を屈曲させた状態としても好適な防音性を発揮することが可能であることが示された。
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 1枚のシート材に形成される切離部は、全て同じ形状とする必要はなく、1枚のシート材に異なる形状の切離部を設けてもよい。例えば、図10(a)に示すように、このシート材61は、一側部(図中で上半部)には前記第2切離部33と同様の第3切離部62が設けられており、他側部(図中で下半部)には前記第1切離部23と同様の第4切離部63が設けられている。そして、図10(b)に示すように、このシート材61は、防音配管10の屈曲時に内側となる部分に第3切離部62が、屈曲時に外側となる部分に第4切離部63が配設されるように、本体管11を被覆している。なお、このシート材61は、前記第1被覆体21、前記第2被覆体31の何れの形成に使用してもよい。このように構成した場合、屈曲部分の外側で切離部により形成される隙間を小さくすることが可能であり、防音性能を高めることが可能となる。また、1枚のシート材に異なる形状の切離部を設ける例として、前記シート材61のようにシート材の短辺方向(本体管の周方向)の一側部と他側部とで切離部の形状を異ならせることに限らず、シート材の長辺方向(本体管の延びる方向)で並列する切離部の形状を異ならせてもよい。例えば、本体管11の延びる方向で該本体管11の中間部、或いは防音配管10を屈曲させる部分に配設される切離部はスリットから形成する一方、本体管11の延びる方向で本体管11の端部に配設される切離部は切り込みから形成してもよい。この他に、防音配管10の屈曲時に屈曲部分の内側となる箇所(シート材の短辺方向の一側部であり、かつ長辺方向の中間部)に配設される切離部はスリットから形成し、当該箇所以外に配設される切離部は切り込みから形成してもよい。
・ 前記第1のシート材22で第1被覆体を形成し、前記第2のシート材32で第2被覆体を形成することに限らず、第2のシート材32で第1被覆体を形成し、第1のシート材22で第2被覆体を形成してもよい。また、第1被覆体21及び前記第2被覆体31は、第1のシート材22、第2のシート材32のように、必ずしも異なる構成のシート材から形成することに限らず、同一構成のシート材で形成してもよい。例えば、第1被覆体21及び前記第2被覆体31を共に第1のシート材22で形成してもよく、或いは第1被覆体21及び前記第2被覆体31を共に第2のシート材32で形成してもよい。さらには、第1被覆体21又は前記第2被覆体31の何れか一方を第1のシート材22又は第2のシート材32で形成し、他方を帯状部材を螺旋状に巻回する従来の作業で形成してもよい。
・ 切離部は、本体管11の延びる方向と交差する方向に延びるよう形成されているならば、実施形態のように螺旋状に連なるように形成することに限定されない。例えば図11(a)に示す第2切離部33のように、本体管11の延びる方向と直交するように切離部を設けてもよい。この場合、切離部は円環状に連なることとなる。また、スリットに限らず、例えば図11(b)に示すように、第2切離部33を楕円状に形成してもよい。あるいは、円形状、多角形状等としてもよい。当然ではあるが、楕円状、円形状、多角形状等とした当該第2切離部33は、本体管11の延びる方向と交差する方向に延びているならば、螺旋状及び円環状の何れに連なるように形成してもよい。
・ 切離部は、シート材の短辺の中央を境界として両側部に設けることに限らず、例えば不規則(ランダム)に設ける等、シート材の何れの箇所に設けてもよい。また、実施形態ではシート材の側縁部を除くように切離部を設けたが、これに限らず、側縁部にも切離部を設けてもよい。
・ 本体管は、実施形態に示したものに限らず、例えば樹脂製又は金属製のホース等のように、屈曲自在に構成された本体管であれば何れを用いてもよい。
・ 実施形態では、配管材として流通させることを想定して防音配管という形態を示したが、被覆材としてシート材のみを流通させてもよい。
・ 外被体41を省略してもよい。あるいは、粘着テープの貼着を省略し、外被体41のみで前記本体管11に対する前記第1被覆体21及び前記第2被覆体31による被覆状体を保持してもよい。さらには、粘着テープ、外被体41等によらず、シート材の側縁部を接着、加熱融着等によって接合してもよい。また、第1のシート材22の中央部22b、第2のシート材32の中央部32b等のように切離部の周縁部分に粘着テープ、フィルム等を貼着したり、糸を縫いつけたり等することで該周縁部分を補強してもよい。
・ 前記第1被覆体21と前記第2被覆体31との間に、前記外被体41と同様のシュリンクフィルムからなる内被体を介装してもよい。すなわち、防音配管10の周壁を、本体管11、第1被覆体21、内被体、第2被覆体31及び外被体41からなる、所謂5層構造としてもよい。この内被体は、前記本体管11に対する前記第1被覆体21による被覆状体を保持するものとして機能する。なお、防音配管10の周壁を、6層以上の構造としてもよい。
・ シート材として防音材を使用することに限らず、例えば発泡体、合成ゴム、合成樹脂等からなる断熱材、保温材、保護材等を使用してもよい。また、シート材として防音材を使用する場合、この防音材を遮音層のみで構成してもよい。
・ 被覆体は、第1被覆体と第2被覆体の2層から構成することに限らず、例えば第1被覆体のみ等のように1層のみで構成してもよい。また、第3被覆体を設ける等して、被覆体を3層以上の構成としてもよい。
・ シート材を、互いの側縁部同士が上下に重なり合うようにして接合してもよい。
・ 防音配管は、排水管として使用することに限らず、給水管、給湯管、吸気ダクト、排気ダクト等として使用してもよい。
・ 実施形態では第2のシート材32の長辺の長さを、接続部材14を除く前記本体管11の管長よりも若干長くすることにより、図6(a)に示したように、第2被覆体31で接続部材14の一部を覆っているが、これに限らず第2のシート材32の長辺の長さを、本体管11の管長と等しくしてもよい。あるいは、第1のシート材22の長辺の長さを、接続部材14を除く前記本体管11の管長よりも若干長くしてもよい。なお、実施形態において、第2被覆体31で接続部材14の一部を覆う構成とした理由は、防音配管10の防音性能を向上させるためである。
・ 1枚のシート材で被覆体を形成することに限らず、2枚以上のシート材で被覆体を形成してもよい。例えば実施形態において、第1のシート材22及び第2のシート材32を短辺の中央で分割し、各2枚のシート材として、これらの側縁同士を接合して被覆体を形成してもよい。あるいは、本体管の延びる方向に沿ってシート材を分割することに限らず、本体管の周方向に沿ってシート材を分割してもよい。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記切離部は、本体管を屈曲した状態で屈曲部分の内側に配設されるものはその内面が互いに接触するように形成し、屈曲部分の外側に配設されるものはその内面が互いに離隔するように形成したことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の配管材。
・ 前記切離部は、本体管を屈曲した状態で屈曲部分の内側に配設されるものはその内面が互いに接触するように形成し、屈曲部分の外側に配設されるものはその内面が互いに離隔するように形成したことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の被覆体。
・ 前記防音材は、吸音材料から形成された吸音層と、遮音材料から形成された遮音層とを備えており、前記吸音層が前記本体管側に配置されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の配管材。
・ 前記吸音層が前記本体管側に配置されることを特徴とする請求項5に記載の被覆体。
実施形態の防音配管を示す一部を分解した斜視図。 本体管を示す側面図。 第1のシート材を示す平面図。 第2のシート材を示す平面図。 (a)は本体管の表面に第1被覆体を設けた状態を示す側面図、(b)は同状態を示す断面図。 (a)は第1被覆体の表面に第2被覆体を設けた状態を示す側面図、(b)は同状態を示す断面図。 (a)は第2被覆体の表面に外被体を設けた状態を示す側面図、(b)は同状態を示す断面図。 (a)は防音配管の屈曲部分で外側を示す断面図、(b)は防音配管の屈曲部分で内側を示す断面図。 実施例の測定環境を示す概念図。 (a)は別形態のシート材を示す平面図、(b)は本体管の表面に別形態のシート材を設けた状態を示す側面図。 (a),(b)は別形態の切離部を示す平面図。
符号の説明
11…本体管、20…被覆体、21…第1被覆体、22…第1のシート材、22a…第1のシート材の側縁部である第1側縁部、23…第1のシート材の切離部としての第1切離部、24…第1のシート材の吸音層、25…第1のシート材の遮音層、31…第2被覆体、32…第2のシート材、32a…第2のシート材の側縁部である第2側縁部、33…第2のシート材の切離部としての第2切離部、34…第2のシート材の吸音層である第2吸音層、35…第2のシート材の遮音層である第2遮音層、61…シート材。

Claims (5)

  1. 屈曲自在に構成された本体管と、該本体管の表面を被覆する被覆体とを備えており、切離部が前記本体管の延びる方向と交差する方向へ延びるように設けられたシート材を使用し、当該シート材が筒状をなすように該シート材の側縁部を接合して前記被覆体を形成したことを特徴とする配管材。
  2. 前記シート材として防音材を使用したことを特徴とする請求項1に記載の配管材。
  3. 前記被覆体は、前記本体管の表面を覆う第1被覆体と、その第1被覆体の表面を覆う第2被覆体とから構成されており、第1被覆体は前記切離部として第1切離部が設けられた第1のシート材から形成され、第2被覆体は前記切離部として第2切離部が設けられた第2のシート材から形成されるとともに、当該第2切離部は、前記第1切離部に対して位置をずらして配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の配管材。
  4. 屈曲自在な本体管の表面を被覆して、該本体管とともに配管材を構成する被覆体であって、
    切離部が前記本体管の延びる方向と交差する方向へ延びるように設けられたシート材を使用し、当該シート材が筒状をなすように該シート材の側縁部を接合して形成することを特徴とする被覆体。
  5. 前記シート材として防音材を使用しており、該防音材は、吸音材料から形成された吸音層と、遮音材料から形成された遮音層とを備えていることを特徴とする請求項4に記載の被覆体。
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