JP2010141139A - シリコン基板のエッチング液およびシリコン基板の表面加工方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】シリコン基板を浸漬して、該基板表面にピラミッド状の凹凸を均一に形成させるエッチング液であって、該エッチング液が、一分子中に一個以上の水酸基を有し、溶解度パラメータが8.0〜13.0[cal/cm3]0.5の範囲内で、かつ大気圧下での沸点が95℃以上の化合物(A)と、水酸化アルカリ(B)とを含む水溶液からなるエッチング液。
【選択図】 なし
Description
まず、シリコンインゴットをワイヤーソー等によりスライスして、シリコン基板を準備する。スライスされたシリコン基板の表層部は、ワイヤーソーによるダメージや汚染を受けている。次に、この表層部(ダメージ層)を取り除くためのエッチング(1次エッチング)を行う。なお、1次エッチングは、ダメージ層を完全にとりのぞくため、通常、数〜10数μm程度の深さまで行われる。さらに、1次エッチングでダメージ層を取り除いたシリコン基板の表面に、特定のエッチング液を使用して、2次エッチングを行うことで、該基板表面にテクスチャー構造が形成される。
Si+4OH-+4H+ → Si(OH)4 + 2H2 (1)
すなわち、アルカリ水溶液によるエッチング速度は、シリコンの(100)面が最も早く、(111)面が最も遅い。従って、エッチング速度を低下させることができる特定の添加剤(以下、「エッチング抑制剤」ということもある。)をアルカリ水溶液に添加することで、エッチングを適度な速度で行うと、エッチング速度の遅い(111)面が優先的に表面に残る。この(111)面は、(100)面に対して約54度の傾斜を持つためにプロセスの最終段階では(111)面とその等価な面で構成されるピラミッド状の凹凸が形成される。
しかしながら、特許文献1、非特許文献1に記載の従来の水酸化ナトリウム及びIPAを含むエッチング液では、IPAの沸点が82.4℃であるため、通常、60℃〜80℃でエッチングが行われるが、60℃〜80℃という温度域でもIPAの蒸気圧が高いため、エッチング処理中にIPAの揮発によりエッチング液の組成が変化してエッチング速度が変化する。そのため、このエッチング液を用いるとエッチングによりシリコン基板表面に形成される凹凸が不均一になりやすく、微細なテクスチャー構造をシリコン基板全面に再現性よく形成することが困難であった。また、エッチング速度が変化することを防止するため、揮発量に相当するIPAをエッチング液中に随時添加することもあるが、この方法では湿式エッチング作業が煩雑になると共に、IPAの消費量が増加することによるエッチング費用の増大が問題になっている。さらに、揮発性の高いIPAを多量使用することは安全性、環境面でも好ましくなく、揮発したIPAを回収する装置を付設したとしても、エッチング処理設備の製作費用が増大すると共に、設備運転費用も増加するという問題がある。
また、特許文献4の方法では、重金属や塩類の不純物濃度を必要なレベルに抑制するには、高価なNa2O3を使用する必要がある。また、系内の塩濃度が高くなり、シリコンのエッチングの際に副生するケイ酸塩の溶解量が減少するため、エッチング液を頻繁に交換しなければならない。
このような状況下、本発明の目的は、湿式エッチングで太陽電池用シリコン基板の表面に凹凸構造を形成するに際し、特別な装置を使用することが無く、比較的高温でも品質が変動することなく、均一かつ微細なテクスチャー構造を有するシリコン基板を安定的に形成することが可能なエッチング液及び該エッチング液を使用したシリコン基板の表面加工方法を提供することである。
<1> シリコン基板を浸漬して、該基板表面にピラミッド状の凹凸を均一に形成させるエッチング液であって、該エッチング液が、一分子中に一個以上の水酸基を有し、溶解度パラメータが8.0〜13.0[cal/cm3]0.5の範囲内で、かつ大気圧下での沸点が95℃以上の化合物(A)と、水酸化アルカリ(B)とを含む水溶液からなるエッチング液。
<2> 化合物(A)の溶解度パラメータが、9.0〜12.5[cal/cm3]0.5の範囲内である前記<1>記載のエッチング液。
<3> 化合物(A)の大気圧下での沸点が、120℃以上である前記<1>または<2>記載のエッチング液。
<4> 化合物(A)が、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、1−ブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、1−プロパノール、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、およびプロピレングリコールからなる群より選ばれた少なくとも1種である前記<1>記載のエッチング液。
<5> 化合物(A)が、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、1−ブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、1−プロパノール、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコールおよび1,4−ブタンジオール、からなるからなる群より選ばれた少なくとも1種である前記<1>記載のエッチング液。
<6> 化合物(A)の濃度が、0.1重量%以上20重量%以下である前記<1>から<5>のいずれかに記載のエッチング液。
<7> 水酸化アルカリ(B)の濃度が0.3重量%以上15重量%以下である前記<1>から<6>のいずれかに記載のエッチング液。
<8> 水酸化アルカリ(B)が、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムである前記<1>から<7>のいずれかに記載のエッチング液。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載のエッチング液に単結晶シリコン基板を浸漬して、該基板表面にピラミッド状の凹凸を均一に形成させる工程を含むシリコン基板の表面加工方法。
本発明は、シリコン基板を浸漬して、該基板表面にピラミッド状の凹凸を均一に形成させるエッチング液であって、該エッチング液が、一分子中に一個以上の水酸基を有し、溶解度パラメータが8.0〜13.0[cal/cm3]0.5の範囲内で、かつ大気圧下での沸点が95℃以上の化合物(A)と、水酸化アルカリ(B)とを含む水溶液からなるエッチング液に係るものである。本発明のエッチング液中にシリコン基板を浸漬すると、該基板の表面を異方エッチングし、該基板の表面に均一で微細な凹凸構造を形成することができる。なお、本発明において、「シリコン基板」とは、単結晶シリコン基板および多結晶シリコン基板を含むが、本発明のエッチング液は、特に単結晶シリコン基板のエッチングに適するものである。
なお、上記溶解度パラメータ(δ)(Solubility Parameter、以下、「SP値」と称する場合がある。)とは、下記式(2)で表現される溶媒の極性の指標であり、その値が大きいほど極性が大きいことを意味する。
δ=(ΔE298/V)0.5 単位:[cal/cm3]0.5 (2)
なお、式(2)において、ΔE298は25℃における分子凝集エネルギー[cal/mol]、Vはモル体積容量[cm3/mol]である。
また、25℃における分子凝集エネルギーΔE298の計算には、文献「SP値 基礎・応用と計算方法(山本秀樹著、1995、株式会社情報機構)」第51頁記載のHidebrand Ruleにより与えられる下記経験式(3)を用いた。
ΔE298=−3542+23.7Tb+0.020Tb2 (3)
なお、式(3)において、Tbは沸点である。
一分子内に一つ以上の水酸基を有し、SP値が8.0〜13.0[cal/cm3]0.5の範囲にある物質(化合物(A))は、適度な親水・疎水性を有するため、水に可溶であって、かつ、疎水性であるシリコン基板表面に着脱可能に付着する。シリコン基板に付着した化合物(A)は、アルカリ成分とシリコン基板の接触を適度に阻害し、エッチングを抑制する。
化合物(A)の濃度が、0.1重量%未満の場合には、エッチングの抑制効果が小さく、均一なテクスチャー構造の形成が困難になる。一方、20重量%より大きい場合には、エッチング速度が著しく遅くなり、処理時間が長くなったり、表面の凹凸構造の均一性が低下したりする場合がある。
この範囲であれば、エッチングが好適に進行し、シリコン基板の表面に均一且つ微細な凹凸構造を形成することができる。アルカリ濃度が、0.3重量%未満では、エッチング速度が十分でない場合があり、15重量%より大きいと、逆にエッチング速度が大きくなりすぎて、表面の凹凸構造の均一性が低下する場合がある。
このような成分の代表例には、シリコン基板のエッチングの副生成物として生成するアルカリケイ酸塩が挙げられる。このアルカリケイ酸塩は、エッチング抑制剤としての作用を有し、高濃度になるとエッチング速度が著しく低下する。本発明のエッチング液で、テクスチャー構造の均一性を保ちつつシリコン基板をエッチングが可能なアルカリケイ酸塩濃度は、Si換算濃度で0〜7.3重量%の範囲である。ここで、「Si換算濃度」とは、アルカリケイ酸塩に含まれるシリコン(Si)原子換算での濃度をいう。
なお、本発明のエッチング液の溶媒としての水は、不純物を除去した水が好ましく、通常、イオン交換水または蒸留水が好適に用いられる。具体的には、25℃で測定した電気伝導度が1mS/cm以下(特に、100μS/cm以下)のイオン交換水または蒸留水が好適である。
エッチング液として、表1に示す組成のエッチング液を作製した。各エッチング液は、室温で超純水に溶解した水酸化アルカリ(B)を含む水溶液をエッチング温度まで加熱したのちに、化合物(A)を添加して、完全に溶解するまで撹拌することで作製した。なお、実施例15,16,20,21及び参考例のエッチング液は、更にシリコン基板を浸漬して副生するアルカリケイ酸塩が所定濃度になるまでエッチングを繰り返し実施して作製した。
単結晶シリコンインゴットを切断加工して作製した50mm×50mm、厚さ約200μmの単結晶シリコン基板(表面結晶面:(100)面)を使用した。このシリコン基板を70℃に加温された4重量%の水酸化ナトリウム溶液に約2分間浸漬し、シリコン基板表面の付着物及びインゴットスライス時のダメージ層を除去した(1次エッチング)。
1次エッチング後のシリコン基板を水洗後、表1に示す組成のエッチング液に浸漬して、表2に示す条件でエッチングを行った(2次エッチング)。
なお、エッチングレートは、2次エッチング前後のシリコン基板の重量を測定し、その重量差とエッチング時間から下記の式(4)より求めた。
2次エッチング後のシリコン基板に対して、目視での外観評価、電子顕微鏡観察並びに表面反射率測定を行った。なお、電子顕微鏡観察は、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM 560)、表面反射率測定には、紫外・可視・近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製、UV−3150)を使用した。
各シリコン基板の外観評価及び波長600nmにおける反射率の結果を表2、代用的な電気顕微鏡写真(実施例4,5,8及び12)を図1〜4に示す。なお、目視での外観評価の基準は以下の通りである。
○:基板全面が一様にエッチングされている。
△:わずかな白濁点が存在するが、基板全面としてのエッチングの均一性は高い。
×:エッチングむらが確認される。
一方、化合物(A)として、SP値が7.7[cal/cm3]0.5である1−ヘキサデカノールを使用した比較例2のエッチング液は、1−ヘキサデカノールがほとんど溶解せず、相分離を起こしエッチング液として使用することができなかった。また、化合物(A)として、SP値が14.7[cal/cm3]0.5であるエチレングリコールを使用した比較例3のエッチング液は、外観に明らかにエッチングむらが確認され、表面均一性で満足がいくものではなかった。
実施例20,21及び参考例では化合物(A)として、1−プロパノールを使用して、エッチングの副生成物のアルカリケイ酸塩の許容濃度を評価した。その結果、アルカリケイ酸塩がSi換算濃度で7.3重量%までは、シリコン基板に良好なテクスチャー構造が形成可能であることを確認された。
Claims (9)
- シリコン基板を浸漬して、該基板表面にピラミッド状の凹凸を均一に形成させるエッチング液であって、
該エッチング液が、一分子中に一個以上の水酸基を有し、溶解度パラメータが8.0〜13.0[cal/cm3]0.5の範囲内で、かつ大気圧下での沸点が95℃以上の化合物(A)と、水酸化アルカリ(B)とを含む水溶液からなることを特徴とするエッチング液。 - 化合物(A)の溶解度パラメータが、9.0〜12.5[cal/cm3]0.5の範囲内である請求項1記載のエッチング液。
- 化合物(A)の大気圧下での沸点が、120℃以上である請求項1または2記載のエッチング液。
- 化合物(A)が、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、1−ブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、1−プロパノール、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオールおよびプロピレングリコールからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1記載のエッチング液。
- 化合物(A)が、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、1−ブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、1−プロパノール、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1記載のエッチング液。
- 化合物(A)の濃度が、0.1重量%以上20重量%以下である請求項1から5のいずれかに記載のエッチング液。
- 水酸化アルカリ(B)の濃度が0.3重量%以上15重量%以下である請求項1から6のいずれかに記載のエッチング液。
- 水酸化アルカリ(B)が、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムである請求項1から7のいずれかに記載のエッチング液。
- 請求項1から8のいずれかに記載のエッチング液に単結晶シリコン基板を浸漬して、該基板表面にピラミッド状の凹凸を均一に形成させる工程を含むことを特徴とするシリコン基板の表面加工方法。
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