JP2010116436A - 吸水性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】水分を効率よく吸収することができると共に、吸水(吸湿)性能に優れた吸水性樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】水蒸気透過度Aと吸水率Bの積A×Bが10〜500である熱可塑性樹脂(マトリックス樹脂)と吸水性材料からなることを特徴とする。
A:40℃ 90%RH 厚さ25μmにおける熱可塑性樹脂の水蒸気透過度
B:23℃ 50%RH 24時間浸漬における熱可塑性樹脂の吸水率
【選択図】なし

Description

本発明は、吸水性樹脂組成物に関し、より詳細には、吸水速度が高いと共に、吸水量も大きく、効率よく水分を吸収することが可能な吸水性樹脂組成物に関する。
水分の影響を受けやすい、食品、医薬品、精密機器、電子部品等を包装する包装容器においては、包装容器内の水分を効率よく吸収することが必要であり、このような内容品の保存には、容器内の湿気を除去するために、シリカゲル、ゼオライト等の乾燥剤を充填した小袋を上記製品と一緒に封入することが一般に行われている。
しかしながら、このような別体の乾燥剤を封入するのは、内容品によっては、封入操作が煩雑であると共に容器容積の減少により製品の収納に支障があったり、或いは乾燥剤を充填した小袋の破損により、内容品に影響を与えるおそれがある。
このような問題を解決するものとして、容器を構成する熱可塑性樹脂中に吸湿機能を有する無機化合物を配合して成る吸湿性樹脂組成物から成る吸湿層を有する吸湿容器が提案されている(特許文献1)。
特開2004−210392号公報
しかしながら、上記吸湿性樹脂組成物から成る吸湿層においては、吸湿材料を配合するマトリックスとして、エチレン系樹脂や、αオレフィン−エチレン共重合体、或いはエチレン−環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂が用いられており、これらの熱可塑性樹脂は、水分透過性の低いものであるため、水分が吸湿材料に到達するまでに時間がかかり、水分の吸収速度の点で未だ十分満足するものではなかった。
また吸湿材料として無機化合物を用いると、マトリックス樹脂と吸湿材料との間の剥離によりボイドが発生し、吸湿性能の低下や、透明性等の外観不良、或いは機械的物性の低下という問題を生じる場合がある。
従って本発明の目的は、水分を効率よく吸収することができると共に、吸水(吸湿)性能に優れた吸水性樹脂組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、外部からの吸湿を有効に防止することができると共に、内部の水分を効率よく吸収し、水分の影響を受けやすい食品、医薬品等の製品を保存性よく収納可能な多層構造体を提供することである。
本発明によれば、水蒸気透過度Aと吸水率Bの積A×Bが10〜500である熱可塑性樹脂(マトリックス樹脂)と吸水性材料からなることを特徴とする吸水性樹脂組成物が提供される。尚、A及びBは以下の通りである。
A:40℃ 90%RH 厚さ25μmにおける熱可塑性樹脂の水蒸気透過度
B:23℃ 50%RH 24時間浸漬における熱可塑性樹脂の吸水率
本発明の吸水性樹脂組成物においては、
1.熱可塑性樹脂の水蒸気透過度Aと吸水率Bの積A×Bが20〜500であること、
2.吸水性材料が熱可塑性樹脂に対し、1〜50wt%含有すること、
3.吸水性材料が親水基を有する有機系化合物であること、
4.有機系化合物が、架橋構造を有すること、
5.有機系化合物の水膨潤度が10以下であること、
が好適である。
本発明によればまた、上記吸水性樹脂組成物からなる層とその外層側に5g/m・day(40℃ 90%RH 25μm)以下の水蒸気バリア材で構成されることを特徴とする多層構造体が提供される。
尚、本発明において、「吸水性」は「吸湿性」を含み、「水分」は「水蒸気」を含むものとして使用する。
本発明の吸水性樹脂組成物によれば、マトリックス樹脂の水蒸気透過度と吸水率の積が上記範囲にあることにより、水分を効率よく吸水性材料に到達させることができ、吸水速度及び吸水量を顕著に向上することができる。
本発明の吸水性樹脂組成物から成る層を有する多層構造体においては、構造体内部の水分を速やかに除去することが可能であり、湿気により影響を受けやすい食品や医薬品等を収納する容器や包装として好適に使用することができる。
本発明の吸水性樹脂組成物においては、吸水性材料を配合するマトリックス樹脂として、水蒸気透過度Aと吸水率Bの積A×Bが10〜500、特に20〜500の範囲にあるものを使用することが重要な特徴である。
前述したように、従来の吸水性樹脂組成物においては、吸水性材料を配合する熱可塑性樹脂が吸水性の低いものであったことから、吸水性材料に水分が到達するまでに時間がかかり、結果として十分水分を吸収することができない、という問題を有している。
本発明においては、マトリックス樹脂が高い水蒸気透過度を有することにより、水分のマトリックス樹脂に対する拡散速度を高めて、水分がマトリックス樹脂を透過して吸水性材料に到達し得る速度及び吸水量を増加させると共に、マトリックス樹脂自体が吸水性を有することにより、短時間でより多くの水分を吸収することが可能となるのである。
本発明の吸水性樹脂組成物において、上記水蒸気透過度Aと吸水率Bの積A×Bが10〜500の範囲、特に20〜500の範囲にあることにより、上述した効果が奏されることは後述する実施例の結果から明らかである。
すなわち、熱可塑性樹脂中に吸水性材料を配合している場合であっても、水蒸気透過度Aと吸水率Bの積A×Bが10未満である樹脂組成物(比較例2)においては、同一の吸水性材料を同量配合した樹脂組成物(実施例1)に比して半分以下の吸水量しかなく、十分な吸水性が得られていない。これに対して、水蒸気透過度Aと吸水率Bの積A×Bが10以上である樹脂組成物(実施例1〜9)においては、優れた吸水性が得られている。特に、水蒸気透過度Aと吸水率Bの積A×Bが20以上であり、吸水性材料として非膨張性架橋有機を配合して成る樹脂組成物(実施例1〜4、6、9)においては、吸水材料及び樹脂組成物全体の吸水量が多く、優れた吸水性能を有していることが明らかである。
尚、水蒸気透過度Aと吸水率Bの積A×Bが500よりも大きい熱可塑性樹脂は、水蒸気透過度A及び吸水率Bが大きすぎるため、吸水による機械的強度の劣化が激しく、実用に供することが困難である。
(熱可塑性樹脂)
本発明の吸水性樹脂組成物において、マトリックスとして使用し得る熱可塑性樹脂としては、上述したように、水蒸気透過度Aと吸水率Bの積A×Bが10〜500、好ましくは20〜500、より好ましくは20〜400の範囲にある熱可塑性樹脂である。
尚、本発明における熱可塑性樹脂の水蒸気透過度Aは、40℃、90%RH条件下で測定した、25μm厚みの熱可塑性樹脂フィルムの水蒸気透過度(g/m・day)であり、一方、熱可塑性樹脂の吸水率Bは、熱可塑性樹脂ペレットを23℃、50%RHの条件下で24時間蒸留水に浸漬させた前後の重量差を浸漬前の重量で除した値である。
このような熱可塑性樹脂としては、これに限定されないが、酢酸ビニル含有量が20〜50wt%の範囲にあるエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を挙げることができ、中でも特に酢酸ビニル含有量が20〜50wt%の範囲にあるエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体を好適に使用することができる。また、上述した樹脂を2種類以上ブレンドして使用することができる。
(吸水性材料)
本発明の吸水性樹脂組成物に用いる吸水性材料としては、樹脂に分散可能な従来公知の吸水性材料を用いることができ、例えば、でんぷん、セルロース等の多糖類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸、或いはポリアクリル酸ナトリウム等のポリα,β不飽和カルボン酸或いはそのイオン架橋物、ポリエチレンオキサイド或いはポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド誘導体等の親水基を有する有機化合物や、或いはまた、ゼオライト、シリカゲル、活性炭、活性白土、活性酸化アルミニウム、クレー、カオリン、タルク、ベントナイト、セピオライト、珪酸アルミニウム等の無機系吸水性材料を挙げることができる。また、上述した吸水材料を2種類以上ブレンドし、使用することができる。
本発明に用いる吸水性材料としては、機械的物性及び衛生性の点から、親水基を有する有機系化合物であることが好ましく、中でも有機系化合物が架橋構造を有することが好ましい。吸水による溶解が生じないため食品等に用いる場合、衛生的に安全である。
さらに、架橋構造を有すると共に、水膨潤度が10以下、特に5以下であることが好ましい。水膨潤度が10より大きい吸水性材料では、樹脂に配合した際、吸水性材料の周りを取り囲むマトリックス樹脂種によっては、吸水に伴う膨潤が阻害され、性能を発現できないことがある。これに対して、水膨潤度が10以下の吸水性材料では、樹脂種に制限されることなく性能を発現することができる。これは、構造内の自由体積が水を取り込むサイトになるためと考えられ、架橋密度や架橋間距離、親水基数等により吸水量を制御できると推測される。吸水性材料としては、アクリル酸系膨潤性有機ゲルである高吸水性樹脂や非膨潤性架橋ゲルが挙げられ、具体的には、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物やアクリル系微粒子、アルギン酸カルシウム微粒子を挙げることができる。前記微粒子の平均粒径は、10μm以下、特に5μm以下であることが好ましい。
尚、水膨潤度は、後述する吸水性材料を室温(25℃)の条件下で24時間蒸留水に浸漬させた前後の体積比で測定される。
(吸水性樹脂組成物)
本発明の吸水性樹脂組成物においては、上記吸水性材料をマトリックスと成る熱可塑性樹脂に対して1〜50wt%、特に1〜30wt%の量で配合することが好適である。上記範囲よりも少ないと、十分な吸水性能を得ることができず、一方上記範囲よりも吸水性材料の量が多いと、後述する実施例3の結果からも明らかなように、吸水性能においては優れているとしても、ブツの発生等の外観特性や成形性の点で劣るようになる。
本発明の吸水性樹脂組成物は、樹脂組成物の特性を損なわない限り、従来公知の樹脂用配合剤、例えば、充填剤、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、減粘剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を公知の処方に従って配合することができる。
(多層構造体)
本発明の吸水性樹脂組成物は、それ単独でフィルム、シート等に成形し、吸水性シート、或いは吸水性フィルム等として使用することもできるが、特に他の熱可塑性樹脂から成る層との多層構造体として使用することが好ましい。
本発明においては特に、吸水性樹脂組成物からなる層とその外層側に5g/m・day(40℃ 90%RH 25μm)以下の水蒸気バリア材で構成される多層構造体であることが好適である。このように本発明の吸水性樹脂組成物から成る層の外側に水蒸気バリア材で構成される層が形成されていることにより、多層構造体外部に存在する水分(水蒸気)の影響を受けることなく、多層構造体内部の水分を効率的に吸収することが可能となる。
このような水蒸気バリア材としては、アルミニウム箔等の金属箔、環状オレフィン系共重合体を挙げることができるが、特に環状オレフィン系共重合体(COC)を好適に用いることができる。
さらに、エチレン−ビニルアルコール共重合体やポリアミド樹脂或いは酸素吸収性樹脂組成物等の酸素バリア材を有する層を中間層に設けることにより酸素バリア性を付与することができる。
吸水性樹脂組成物から成る層は、多層構造体の最内層とすることもできるが、内容物が食品や医薬品等の場合には、他の熱可塑性樹脂から成る最内層を設けることが衛生的観点から望ましい。本発明の吸水性樹脂組成物から成る層の内面側に設ける層は、速やかに本発明の吸水性樹脂組成物から成る層に水蒸気を到達させるために、比較的水蒸気透過率が高いものであることが好ましく、好適には、酢酸ビニル含有量が20〜50wt%の範囲にあるエチレン−酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。
本発明の多層構造体において、各層の厚みに特に制限はないが、本発明の吸水性樹脂組成物から成る層は、1〜1000μm、特に5〜500μmの範囲にあるのが好適である。また水蒸気バリア材から成る外層は、1〜500μm、特に1〜100μmの範囲にあるのが好ましく、内層を設ける場合には、1〜100μm、特に1〜50μmの範囲にあるのが好ましい。
本発明の多層構造体は、これに限定されるものではないが、従来公知の製法によって、フィルム 、シート、カップ、トレイ 、包装袋、容器蓋、ボトル等の成形体として成形され、吸湿性に優れた包装材として使用することができる。
本発明の多層構造体において、フィルム或いはシートは、予め各層を別途形成し、熱接着などの方法により積層することもできるし、従来公知の接着剤を用いて積層することも勿論できる。また共射出、共押出等の従来公知の積層体の方法により成形することもできる。カップ、トレイ等は、上記方法により得られたシートを真空成形、圧空成形、張出成形、プラグアシスト成形等に付することにより成形することができる。
またパウチ等の包装袋は、種々の形状に従来公知の製法により成形することができ、ボトルは、従来公知の押出機から押し出した中空パリソンをダイレクトブロー成形、或いは射出成形によって得たプリフォームを二軸延伸ブロー成形することにより成形することができる。
1.[熱可塑性樹脂(マトリックス樹脂)]
(水蒸気透過度Aの測定)
50tホットプレス(庄司鉄工製)により200℃で熱可塑性樹脂の加熱溶融を繰り返し、厚み約150μmのシートを作製した。水蒸気透過測定装置(PERMATRAN−W 3/30:MOCON社製)により得られたシートの40℃ 90%RHにおける水蒸気透過度を測定し、25μm厚に換算して、熱可塑性樹脂の水蒸気透過度とした。
(吸水率Bの測定)
熱可塑性樹脂ペレット2.0gを23℃ 50%RHの条件下で24時間蒸留水に浸漬させた。その後、ペレット表面についた水をふき取り、電子天秤で秤量し、下記計算式より吸水率を求めた。
Figure 2010116436
2.[吸水性材料]
(水膨潤度の測定)
メスシリンダーに有機系吸水性材料0.5gと蒸留水100mlを入れ、室温(25℃)で24時間静置した。その後、有機系吸水性材料の体積をメスシリンダーの目盛りから読み取り、これを吸水後の体積とした。また、吸水前の体積は嵩密度(JIS Z2504に準拠)より仕込み量0.5gを換算した値を用いた。吸水前後の体積変化を水膨潤度とし、下記計算式より算出した。
Figure 2010116436
3.[吸水性樹脂組成物]
(作製方法)
出口部分にストランドダイを装着した二軸押出機(スクリュー径φ20 L/D=32.5ULTNano05−20AG:テクノベル社製)により、押出温度200℃ スクリュー回転数100rpmで真空ベントを引きながら熱可塑性樹脂を溶融混練した。同時に粉体フィーダーを用いて、押出機ホッパー下より吸水性材料を配合した。このとき熱可塑性樹脂に対し10wt%になるように、配合量を調整した。
(混練時の目視評価)
吸水性樹脂組成物を作製する際の目視評価として、押し出されたストランドの外観やベントアップの有無を確認し、特に問題ないものを○、ストランド中にブツが発生し、ゲルの分散が不十分なものを△、樹脂圧の増加等によるベントアップ等により作製できなかったものを×とした。
(吸水量評価)
上記方法で得られた吸水性樹脂組成物ペレット2.0gを23℃ 50%RHの条件下で24時間蒸留水に浸漬させた。その後、ペレット表面の水分を拭き取り電子天秤で重量増加分を求め、これを吸水量とした。吸水量が15mg以上のものを○、15mg未満のものを×として評価した。また同様な方法で、熱可塑性樹脂のみの吸水量を測定し、吸水性樹脂組成物の重量と熱可塑性樹脂の重量の差分を吸水性材料の吸水量とした。
[多層構造体]
(多層ボトルの作製)
上記方法により作製した吸水性樹脂組成物、水蒸気バリア材として環状オレフィンコポリマー樹脂(アペルAPL8008T:三井化学(株))、低密度ポリエチレン樹脂(スミカセンF108−2:住友化学(株))、接着性樹脂(アドマーSF730:三井化学(株))を用いて、ダイレクトブロー成形機により多層構造体を作製した。成形温度は200℃、シェル径15mm、コア13mmを用い、広口ボトル(口径44mm、内容積125cc)を作製した。
層構成は、外層側より低密度ポリエチレン樹脂層(250μm)/接着層(5μm)/環状オレフィンコポリマー樹脂層(15μm)/接着層(5μm)/吸水性樹脂組成物層(50μm)の4種5層、または外層側より低密度ポリエチレン樹脂層(250μm)/接着層(5μm)/環状オレフィンコポリマー樹脂層(15μm)/接着層(5μm)/吸水性樹脂組成物層(50μm)/接着層(5μm)/低密度ポリエチレン樹脂層(10μm)の4種7層である。
(多層フィルムの作製)
上記方法により作製した吸水性樹脂組成物、水蒸気バリア材として環状オレフィンコポリマー樹脂(アペルAPL8008T:三井化学(株))、低密度ポリエチレン樹脂(スミカセンF108−2:住友化学(株))、接着性樹脂(アドマーSF730:三井化学(株))を用いて、多層フィルム成形機により成形温度250℃で多層フィルムを作製した。
層構成は、外層側より低密度ポリエチレン樹脂層(50μm)/接着層(5μm)/環状オレフィンコポリマー樹脂層(20μm)/接着層(5μm)/吸水性樹脂組成物層(50μm)/低密度ポリエチレン樹脂層(20μm)の4種6層である。
(吸水性評価)
前記作製した多層ボトル内にワイヤレス式温湿度計(ハイグロクロン:KNラボラトリーズ製)を入れ、23℃ 60%RHの雰囲気下において、アルミ/ポリエチレンで積層した蓋材で容器口部をヒートシールした。多層フィルムでは、内容積が150mlになるように包装袋を作製し、ボトル同様に上記雰囲気下で端部をヒートシールした。24時間静置後、容器内部の湿度が20%RH以下になっているものを○、20%RHより高いものを×とした。
(実施例1)
熱可塑性樹脂として水蒸気透過度520g/m・day、吸水率0.05%、酢酸ビニル含有量が20wt%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA20%、ウルトラセンEVA638:東ソー(株))、吸水性材料として水膨潤度1.2(嵩密度0.28g/cm)のアクリル系微粒子である非膨潤性架橋有機ゲル(タフチックHU:東洋紡(株))を用い、上記作製方法により吸水性樹脂組成物を作製し、混練時の目視評価および吸水性評価を行なった。ブツの発生はなく、均一にゲルが分散しており、ベントアップ等の問題なく作製することができた。吸水性材料は20mg程度吸水しており、上記方法により作製した4種5層の多層構造体の吸水性評価において、容器内部の湿度が20%RH以下であった。
(実施例2)
吸水性材料の配合量を50wt%にした以外は、実施例1と同様に、吸水性樹脂組成物を作製した。特に問題なく作製することができ、吸水性材料の配合量増加により吸水性能が向上していた。また上記方法により作製した4種5層の多層構造体の吸水性評価において、容器内部の湿度が20%RH以下であった。
(実施例3)
吸水性材料の配合量を60wt%にした以外は、実施例1と同様に、吸水性樹脂組成物を作製した。ストランド中にブツが発生し、ゲルの分散が不十分であったが、作製することができた。実施例2同様に、配合量増加により性能が向上し、4種7層で作製した多層構造体において、容器内部の湿度が20%RH以下であった。
(実施例4)
熱可塑性樹脂を30g/m・day、吸水率3.5%、エチレン含有量が32mol%であるエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH、F171B:(株)クラレ)にした以外は、実施例1と同様に、吸水性樹脂組成物を作製した。特に問題なく作製することができ、EVOH、吸水性材料ともに吸水しており、特にEVOHの吸水量が多かった。また上記方法により作製した4種7層の多層構造体において、容器内部の湿度が20%RH以下であった。
(実施例5)
吸水性材料として水膨潤度1.0(嵩密度3.0g/cm)のゼオライト3A(純正化学(株))を用いた以外は実施例1と同様に吸水性樹脂組成物を作製した。特に問題なく作製することができ、実施例1との比較において非膨潤性架橋有機ゲルより性能が劣るが吸水性を示した。また4種5層で作製した多層構造体において、容器内部の湿度が20%RH以下であった。
(実施例6)
熱可塑性樹脂を200g/m・day、吸水率2.0%であるポリアミド樹脂(Nylon6、UBEナイロン1022B:宇部興産製)にした以外は、実施例1と同様に、吸水性樹脂組成物を作製した。特に問題なく作製することができ、Nylon6、吸水性材料ともに吸水しており、4種7層の多層構造体において、容器内部の湿度が20%RH以下であった。
(実施例7)
熱可塑性樹脂を40g/m・day、吸水率0.3%であるポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA:和光純薬)にした以外は、実施例1と同様に、吸水性樹脂組成物を作製した。特に問題なく作製することができ、PMMA、吸水性材料ともに吸水しており、4種7層の多層構造体において、容器内部の湿度が20%RH以下であった。
(実施例8)
熱可塑性樹脂として水蒸気透過度22g/m・day、吸水率0.5%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(PET、RT543CTHP:日本ユニペット(株))、吸水性材料として水膨潤度100.0(嵩密度0.65g/cm)のアクリル酸系膨潤性有機ゲル(サンフレッシュST−500MPS:三洋化成(株))、押出温度280℃とし、上記方法により吸水性樹脂組成物を作製した。特に問題なく作製することができ、吸水性材料の吸水はほとんどなく、PETの吸水が多かった。この原因としては、膨潤性有機ゲルは吸水と同時に膨潤する材料であるため、樹脂組成物のようなマトリックス中に分散している系では、マトリックスが吸水性材料の膨潤を阻害しているためと推察される。多層構造体の吸水性評価では、4種5層の多層構造体において、容器内部の湿度が20%RH以下であった。
(実施例9)
実施例1で作製した吸水性樹脂組成物を用いて、前記方法により多層フィルムを作製した。吸水性評価では、容器内部の湿度が20%RH以下であった。
(比較例1)
吸水性材料を配合しなかった以外は、実施例1と同様に吸水性樹脂組成物を作製した。
(比較例2)
熱可塑性樹脂を80g/m・day、吸水率0.05%、酢酸ビニル含有量が10wt%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA10%、ウルトラセンEVA541:東ソー(株))にした以外は、実施例1と同様に、吸水性樹脂組成物を作製した。特に問題もなく作製することができたが、吸水量が少なく、作製した4種5層の多層構造体においても容器内部の湿度低下がほとんど認められなかった。この原因としては、熱可塑性樹脂の水蒸気透過度が低いため、吸水性材料の吸水性能が十分発現できていないと考えられる。
実施例1〜9、比較例1〜2の結果を表1にまとめた。表1の結果から明らかなように、熱可塑性樹脂の水蒸気透過度および吸水率、吸水性材料の種類や配合量、水膨潤度の違いにより吸水性評価で相違が見られた。
Figure 2010116436

Claims (7)

  1. 水蒸気透過度Aと吸水率Bの積A×Bが10〜500である熱可塑性樹脂(マトリックス樹脂)と吸水性材料からなることを特徴とする吸水性樹脂組成物。
    A:40℃ 90%RH 厚さ25μmにおける熱可塑性樹脂の水蒸気透過度
    B:23℃ 50%RH 24時間浸漬における熱可塑性樹脂の吸水率
  2. 前記熱可塑性樹脂の水蒸気透過度Aと吸水率Bの積A×Bが20〜500であることを特徴とする請求項1記載の吸水性樹脂組成物。
  3. 前記吸水性材料が熱可塑性樹脂に対し、1〜50wt%含有することを特徴とする請求項1〜2記載の吸水性樹脂組成物。
  4. 前記吸水性材料が親水基を有する有機系化合物であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の吸水性樹脂組成物。
  5. 前記有機系化合物が架橋構造を有することを特徴とする請求項4に記載の吸水性樹脂組成物。
  6. 前記有機系化合物の水膨潤度が10以下であることを特徴とする請求項5に記載の吸水性樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6の何れかに記載の吸水性樹脂組成物からなる層とその外層側に5g/m・day(40℃ 90%RH 25μm)以下の水蒸気バリア材で構成されることを特徴とする多層構造体。
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