JP2008195890A - 樹脂組成物及びフィルム - Google Patents

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Tsutomu Nagamune
勉 長宗
Akito Nakai
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Abstract

【課題】優れた機械的特性、水蒸気バリア性、耐熱性を有する樹脂組成物、及び該樹脂組成物を成形してなるフィルムを提供する。
【解決手段】結晶性環状オレフィン重合体を50〜99.9重量%、及び25℃以下のガラス転移温度を有する非晶性環状オレフィン重合体を0.1〜50重量%含有する樹脂組成物。好ましくは前記結晶性環状オレフィン重合体が、ノルボルネン開環重合体水素添加物であって、ノルボルネン開環重合体水素添加物の全繰り返し単位中、2−ノルボルネン由来の繰り返し単位の割合が90〜100重量%、2−ノルボルネン以外のノルボルネン単量体由来の繰り返し単位の割合が0〜10重量%であり、かつ、110〜145℃の融点を有するノルボルネン開環重合体水素添加物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物、及び該樹脂組成物を成形してなるフィルムに関し、更に詳しくは、優れた機械的特性、水蒸気バリア性、耐熱性を有する樹脂組成物、及び該樹脂組成物を成形してなるフィルムに関する。
従来、熱可塑性樹脂からなるフィルムとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、非晶質環状オレフィン重合体などの重合体からなるフィルムが、飴、スナック菓子などの食品包装袋、輸液バッグ、プレススルーパッケージなどの医療用包装などに広く使用されている。しかし、これらの重合体からなるフィルムは、水蒸気バリア性、機械的特性、耐熱性などに劣る場合があり、さらなる改善が望まれたいた。
これらの問題を解決すべく、特許文献1には、融点を有するノルボルネン開環重合体、または、該開環重合体中の炭素−炭素二重結合を水素添加して得られた、融点を有するノルボルネン系開環重合体水素添加物を成形してなるフィルムが開示されている。
しかしながら、特許文献1の重合体を成形してなるフィルムは、水蒸気バリア性、耐熱性に優れるものの、引張り破断伸びなどの機械的特性に劣る場合があり、該フィルムを使用した包装体などは使用の際に亀裂が生じるなどの問題があった。
特開2002−194067号公報
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、優れた機械的特性、水蒸気バリア性、耐熱性を有する樹脂組成物、及び該樹脂組成物を成形してなるフィルムを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、結晶性環状オレフィン重合体と、特定のガラス転移温度を有する非晶性環状オレフィン重合体とをそれぞれ特定割合で含有する樹脂組成物が、機械的特性、水蒸気バリア性、耐熱性に優れることを見出し、この知見に基づき、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、結晶性環状オレフィン重合体を50〜99.9重量%、及び25℃以下のガラス転移温度を有する非晶性環状オレフィン重合体を0.1〜50重量%含有する樹脂組成物が提供される。
また、本発明によれば、前記樹脂組成物を成形してなるフィルムが提供される。
本発明の樹脂組成物は、機械的特性、水蒸気バリア性、耐熱性に優れるため、該樹脂組成物を成形してなるフィルムは、食品分野、医療分野など様々な分野で好適に用いることができる。
本発明の樹脂組成物は、結晶性環状オレフィン重合体を50〜99.9重量%、及び25℃以下のガラス転移温度を有する非晶性環状オレフィン重合体を0.1〜50重量%含有する。
(1)結晶性環状オレフィン重合体
本発明に用いる結晶性環状オレフィン重合体は、環状オレフィンを重合、場合によっては、さらに水素添加して得られる重合体のうち、示差走査熱量計(DSC)で結晶融点を観測することができる環状オレフィン重合体であれば、特に制限されない。
このような結晶性環状オレフィン重合体としては、例えば、2−ノルボルネンの開環重合体水素添加物、ジシクロペンタジエンのシンジオタクチック開環重合体水素添加物やイソタクチック開環重合体水素添加物、テトラシクロドデセンのシンジオタクチック開環重合体水素添加物やイソタクチック開環重合体水素添加物などの結晶性ノルボルネン開環重合体水素添加物(a);2−ノルボルネン/エチレン交互付加共重合体などの結晶性のノルボルネン単量体/α−オレフィン付加共重合体(b);シクロペンテンやノルボルネン単量体の立体規則付加重合体などの結晶性環状オレフィン付加重合体(c);などを挙げることができる。
本発明においては、結晶性環状オレフィン重合体として、これらの重合体を一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、結晶性環状オレフィン重合体としては、樹脂組成物の水蒸気バリア性に優れることから、結晶性ノルボルネン開環重合体水素添加物(a)が好ましい。
結晶性ノルボルネン開環重合体水素添加物(a)は、2−ノルボルネン由来の繰り返し単位を主構成単位として含有する開環重合体水素添加物(a−1)(以下、「開環重合体水素化物(a−1)」ということがある。)と、2−ノルボルネン以外のノルボルネン単量体由来の繰り返し単位(以下、「その他のノルボルネン単量体由来の繰り返し単位」ということがある)を主構成単位として含有する開環重合体水素添加物(a−2)(以下、「開環重合体水素化物(a−2)」ということがある。)とに大別され、樹脂組成物の水蒸気バリア性に優れることから、開環重合体水素添加物(a−1)がより好ましい。
開環重合体水素添加物(a−1)は、開環重合体水素添加物の全繰り返し単位中、2−ノルボルネン由来の繰り返し単位の割合を、通常、50重量%超過100重量%以下含有し、その他のノルボルネン単量体由来の繰り返し単位の割合を、通常、0重量%以上50重量%未満含有する。
2−ノルボルネンとは、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エンの慣用名であり、置換基を持たない単量体である。2−ノルボルネン以外のノルボルネン単量体(以下、「その他のノルボルネン単量体」ということがある)は、化学構造式中にノルボルネン環を有する単量体であり、置換基を含有する2−ノルボルネン、置換基を持たない3環体以上の多環ノルボルネン単量体、及び置換基を有する3環体以上の多環ノルボルネン単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種のノルボルネン単量体である。
開環重合体水素添加物(a−1)は、2−ノルボルネンを含有する単量体を開環重合して得られた開環重合体を水素添加して得られる。例えば、2−ノルボルネンを開環重合すると、ノルボルネン環が開環して主鎖に炭素−炭素二重結合を有する開環重合体が得られる。水素添加反応により、開環重合体の主鎖の炭素−炭素二重結合を水素添加する。その他のノルボルネン単量体として、置換基または環内に炭素−炭素二重結合を持つノルボルネン単量体(例えば、ジシクロペンタジエン)を用いた場合、主鎖の炭素−炭素二重結合の水素添加時に、これらの炭素−炭素二重結合も水素添加される。
水素添加率は、開環重合体中の炭素−炭素二重結合の通常80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。耐熱性や耐光性、耐候性などが特に優れたノルボルネン開環重合体水素添加物を得るには、水素添加率を99%以上、さらには99.5%以上とすることが好ましい。多くの場合、水素添加率を99.9%程度にまで高くすることによって、諸特性に優れた開環重合体水素添加物を得ることができる。
本発明において、「2−ノルボルネン由来の繰り返し単位」とは、2−ノルボルネンの開環重合と、それに続く水素添加を経た後の繰り返し単位を意味する。同様に、「2−ノルボルネン以外のノルボルネン単量体由来の繰り返し単位」とは、その他のノルボルネン単量体の開環重合と、それに続く水素添加を経た後の繰り返し単位を意味する。水素添加率が100%に満たない場合には、炭素−炭素二重結合が未反応の状態で残存する構造を含む。また、各繰り返し単位の割合は、重合転化率がほぼ100%の場合、開環重合に使用する各ノルボルネン単量体の使用割合とほぼ一致する。
開環重合体水素添加物(a−1)が共重合体である場合には、その他のノルボルネン単量体に由来する繰り返し単位の割合は、全繰り返し単位に対して、0重量%超過50重量%未満、好ましくは0重量%超過10重量%以下、より好ましくは1〜8重量%、さらに好ましくは1〜5重量%、特に好ましくは1〜3重量%である。したがって、共重合体中における2-ノルボルネン由来の繰り返し単位の割合は、50重量%超過100重量%未満、好ましくは90重量%以上100重量%未満、より好ましくは92〜99重量%、さらに好ましくは95〜99重量%、特に好ましくは97〜99重量%である。
この範囲にあると、得られる樹脂組成物は、水蒸気バリア性、機械的特性、耐熱性が高度にバランスされ好ましい。
本発明で用いるその他のノルボルネン単量体は、分子内にノルボルネン骨格(ノルボルネン環)を有する2−ノルボルネン以外の化合物である。本発明で用いるその他のノルボルネン単量体には、置換基を有する2−ノルボルネンのほか、ノルボルネン環に縮合した環が存在する構造の3環体以上のノルボルネン単量体が含まれる。3環体以上のノルボルネン単量体は、置換基を有していてもよい。
一般に、有機化合物の水素原子を他の原子または原子団で置き換えると種々の誘導体を得ることができるが、それら置換した原子及び原子団を置換基という。本発明における置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルキレン基、ビニリデン基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子、酸素原子を含む極性基(アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基など)、窒素原子を含む極性基(シアノ基、アミノ基、アミド基、イミド基など)、ケイ素原子を含む極性基などが挙げられる。これらの中で、炭素と水素とからなる置換基(芳香環を除く)は、炭化水素基ということがある。アリール基及びアラルキル基は、芳香環を有する置換基ということがある。
その他のノルボルネン単量体のうち、置換基を有する2−ノルボルネン(「置換基を有する2−ノルボルネン誘導体」ともいう)としては、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシル−2−ノルボルネン、5−シクロペンチル−2−ノルボルネン等のアルキル基またはシクロアルキル基を有する2−ノルボルネン類;5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−プロペニルノルボルネン、5−シクロヘキセニルノルボルネン、5−シクロペンテニルノル−2−ボルネン等のビニリデン基またはアルケニル基を有する2−ノルボルネン類;5−フェニル−2−ノルボルネン等の芳香環を有するノルボルネン類;5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−エトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−エトキシカルボニル−2−ノルボルネンなどのアルコキシカルボニル基を有する2−ノルボルネン類;ノルボルネニル−2−メチルプロピオネイト、ノルボルネニル−2−メチルオクタネイト、5−ヒドロキシメチル−2−ノルボルネン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)−2−ノルボルネン、5,5−ジ(ヒドロキシメチル)−2−ノルボルネン、5−ヒドロキシ−i−プロピル−2−ノルボルネン、5,6−ジカルボキシ−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−6−カルボキシ−2−ノルボルネン等の酸素原子を含む極性基を有する2−ノルボルネン類;5−シアノ−2−ノルボルネン等の窒素原子を含む極性基を有する2−ノルボルネン類;等が挙げられる。
その他のノルボルネン単量体のうち、3環体以上の多環ノルボルネン単量体とは、分子内にノルボルネン環(2環体)と、該ノルボルネン環と縮合している1つ以上の環とを有するノルボルネン単量体である。3環体以上のノルボルネン単量体としては、例えば、下記式(1)で表されるノルボルネン単量体、及び下記式(2)で表されるノルボルネン単量体が挙げられる。
Figure 2008195890
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、またはケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基を表し、これらは、互いに結合して環を形成していてもよい。Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の二価の炭化水素基である。)
Figure 2008195890
(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、またはケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基を表し、RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。mは、1または2である。)
前記式(1)で示されるノルボルネン単量体としては、例えば、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン等のジシクロペンタジエン誘導体;テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(「1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレン」ともいう)、テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエン(「1,4−メタノ−1,4,4a,9,9a,10−ヘキサヒドロアントラセン」ともいう)等の芳香環を有するノルボルネン誘導体;を挙げることができる。
前記式(2)で示される単量体としては、mが1であるテトラシクロドデセン類、mが2であるヘキサシクロヘプタデセン類が挙げられる。テトラシクロドデセン類の具体例としては、例えば、テトラシクロドデセン(すなわち、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン)、8−メチルテトラシクロドデセン、8−エチルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキシルテトラシクロドデセン、8−シクロペンチルテトラシクロドデセン等の未置換またはアルキル基若しくはシクロアルキル基で置換したテトラシクロドデセン類;8−メチリデンテトラシクロドデセン、8−エチリデンテトラシクロドデセン、8−ビニルテトラシクロドデセン、8−プロペニルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキセニルテトラシクロドデセン、8−シクロペンテニルテトラシクロドデセン等の環外にビニル基やビニリデン基などの二重結合を有するテトラシクロドデセン類;8−フェニルテトラシクロドデセン等の芳香環を有するテトラシクロドデセン類;8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−ヒドロキシメチルテトラシクロドデセン、8−カルボキシテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸無水物等のアルコキシカルボニル基または酸素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−シアノテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸イミド等の窒素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−クロロテトラシクロドデセン等のハロゲン原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−トリメトキシシリルテトラシクロドデセン等のケイ素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;等が挙げられる。
ヘキサシクロヘプタデセン類としては、例えば、ヘキサシクロヘプタデセン、12−メチルヘキサシクロヘプタデセン、12−エチルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキシルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンチルヘキサシクロヘプタデセン等の未置換またはアルキル基若しくはシクロアルキル基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−メチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−エチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−ビニルヘキサシクロヘプタデセン、12−プロペニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキセニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンテニルヘキサシクロヘプタデセン等の環外に二重結合を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−フェニルヘキサシクロヘプタデセン等の芳香環を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−メチル−12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−ヒドロキシメチルヘキサシクロヘプタデセン、12−カルボキシヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸無水物等のアルコキシカルボニル基や酸素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−シアノヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸イミド等の窒素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−クロロヘキサシクロヘプタデセン等のハロゲン原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−トリメトキシシリルヘキサシクロヘプタデセン等のケイ素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;等が挙げられる。
その他のノルボルネン単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、所望により、2−ノルボルネン及びその他のノルボルネン単量体と開環共重合可能なその他の単量体を組み合わせて用いることができる。その他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のモノ環状オレフィン類とその置換誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン等の環状ジエン及びその置換誘導体;等が挙げられる。
ノルボルネン単量体が、2−ノルボルネンとその他のノルボルネン単量体との混合物である場合には、ノルボルネン単量体の組成は、2−ノルボルネンの割合が、50重量%超過100重量%未満、好ましくは90重量%以上100重量%未満、より好ましくは92〜99重量%、さらに好ましくは95〜99重量%、特に好ましくは97〜99重量%であり、その他のノルボルネン単量体の割合が、0重量%超過50重量%未満、好ましくは0重量%超過10重量%以下、より好ましくは1〜8重量%、さらに好ましくは1〜5重量%、特に好ましくは1〜3重量%である。
2−ノルボルネンの開環重合体または2−ノルボルネンとその他のノルボルネン単量体との開環共重合体の水素添加物は、一般的に知られているメタセシス重合触媒で重合後、水素添加することにより得られる。メタセシス重合触媒としては、例えば、特公昭41−20111号公報、特開昭46−14910号公報、特公昭57−17883号公報、特公昭57−61044号公報、特開昭54−86600号公報、特開昭58−127728号公報、特開平1−240517号公報等に記載された、本質的に、遷移金属化合物触媒成分と金属化合物助触媒成分からなる一般のメタセシス重合触媒;シュロック型重合触媒(特開平7−179575号公報、Schrock et al.,J.Am.Chem.Soc.,1990年,第112巻,3875頁〜等);グラブス型重合触媒(Fu et al.,J.Am.Chem.Soc.,1993年,第115巻,9856頁〜;Nguyen et al.,J.Am.Chem.Soc.,1992年,第114巻,3974頁〜;Grubbs et al.,WO98/21214号パンフレット等)の如きリビング開環メタセシス触媒;等が挙げられる。これらの触媒の中でも、得られる開環重合体の分子量分布を好適な範囲に調節するには、遷移金属化合物触媒成分と金属化合物助触媒成分からなるメタセシス重合触媒が好ましい。
前記の遷移金属化合物触媒成分は、周期律表第3〜11族の遷移金属の化合物である。例えば、これらの遷移金属のハロゲン化物、オキシハロゲン化物、アルコキシハロゲン化物、アルコキシド、カルボン酸塩、(オキシ)アセチルアセトネート、カルボニル錯体、アセトニトリル錯体、ヒドリド錯体、これらの誘導体などが挙げられる。これらの遷移金属化合物は、P(C等の錯化剤により錯化物としたものであってもよい。
遷移金属化合物触媒成分の具体例としては、TiCl、TiBr、VOCl、WBr、WCl、WOCl、MoCl、MoOCl、WO、HWO等が挙げられる。これらの中でも、重合活性等の点から、W、Mo、TiまたはVの化合物が好ましく、特に、これらの遷移金属のハロゲン化物、オキシハロゲン化物、及びアルコキシハロゲン化物が好ましい。
前記の金属化合物助触媒成分は、周期律表第1〜2族、及び第12〜14族金属の化合物で、少なくとも一つの金属元素−炭素結合もしくは金属元素−水素結合を有するものである。金属化合物助触媒成分としては、例えば、Al、Sn、Li、Na、Mg、Zn、Cd、B等の金属の有機金属化合物が挙げられる。
金属化合物助触媒成分の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等の有機アルミニウム化合物;テトラメチルスズ、ジエチルジメチルスズ、テトラブチルスズ、テトラフェニルスズ等の有機スズ化合物;n−ブチルリチウム等の有機リチウム化合物;n−ペンチルナトリウム等の有機ナトリウム化合物;メチルマグネシウムイオジド等の有機マグネシウム化合物;ジエチル亜鉛等の有機亜鉛化合物;ジエチルカドミウム等の有機カドミウム化合物;トリメチルホウ素等の有機ホウ素化合物;等が挙げられる。これらの中でも、第13族金属の化合物が好ましく、特にAlの有機化合物が好ましい。
前記の遷移金属化合物触媒成分と金属化合物助触媒成分の他に、第三成分を加えてメタセシス重合活性を高めることができる。第三成分としては、例えば、脂肪族第三級アミン、芳香族第三級アミン、分子状酸素、アルコール、エーテル、過酸化物、カルボン酸、酸無水物、酸クロリド、エステル、ケトン、含窒素化合物、含ハロゲン化合物、その他のルイス酸等が挙げられる。
これらの成分の配合比は、遷移金族化合物触媒成分:金属化合物助触媒成分が金属元素のモル比で通常1:1〜1:100、好ましくは1:2〜1:10となる範囲である。遷移金族化合物触媒成分:第三成分の配合比は、モル比で通常1:0.005〜1:50、好ましくは1:1〜1:10の範囲である。
重合触媒の使用割合は、(重合触媒中の遷移金属):(全単量体)のモル比で、通常1:100〜1:2,000,000、好ましくは1:1,000〜1:20,000、より好ましくは1:5,000〜1:8,000の範囲である。触媒量が多すぎると、重合反応後の触媒除去が困難となり、また、分子量分布が広がるおそれがある。触媒量が少なすぎると、十分な重合活性が得られない。
開環(共)重合は、無溶媒で行うこともできるが、一般に、適当な溶媒中で行うことが好ましい。用いる有機溶媒としては、開環重合体及び開環重合体水素添加物が所定の条件で溶解または分散し、しかも開環重合及び水素添加反応に影響しないものであればよく、特に限定されないが、工業的に汎用されている溶媒が好ましい。
このような有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素炭化水素;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフラン等のエ−テル類;等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、工業的に汎用されている芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、及びエーテル類が好ましい。
開環重合を有機溶媒中で行う場合には、溶液中の2−ノルボルネン及びその他のノルボルネン単量体からなる単量体混合物の濃度は、通常、1〜50重量%、好ましくは2〜45重量%、より好ましくは3〜40重量%である。単量体混合物の濃度が低すぎると、生産性が低くなるおそれがあり、高すぎると、重合後の溶液粘度が高すぎて、その後の水素添加反応が困難となるおそれがある。
開環重合において、反応系に分子量調節剤を添加することができる。分子量調節剤を添加することにより、得られる開環重合体の分子量を所望の範囲内に調整することができる。分子量調節剤としては、特に限定されず、従来公知のものが使用できる。分子量調節剤の具体例としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエン等のスチレン類;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエーテル類;アリルクロライド等のハロゲン含有ビニル化合物;グリシジルメタクリレート等酸素含有ビニル化合物;アクリルアミド等の窒素含有ビニル化合物;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン等の非共役ジエン;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン;等を挙げることができる。これらの中でも、分子量調節を容易に行うことができる点で、α−オレフィン類が好ましい。
分子量調節剤の添加量は、所望の分子量を持つ開環重合体を得るに足る量であればよく、(分子量調節剤):(全単量体)のモル比で、通常、1:50〜1:1,000,000、好ましくは1:100〜1:5,000、より好ましくは1:300〜1:3,000である。
重合反応温度は、特に限定されないが、通常、−20℃から100℃、好ましくは10〜80℃である。重合反応温度が低すぎると反応速度が低下し、高すぎると副反応により、分子量分布が広がるおそれがある。重合時間は、1分間〜100時間で、特に制限はない。圧力条件も特に限定されないが、通常、0〜1MPaの加圧下で重合を行う。重合反応終了後、通常の後処理操作により目的とする開環重合体を回収することができる。
このようにして得られた開環重合体は、次の水素添加反応工程へ供される。開環重合を行った反応溶液に水素添加触媒を添加して、開環重合体を単離することなく、連続的に水素添加反応を行うこともできる。
開環重合体の水素添加反応は、該開環重合体の主鎖に存在する炭素−炭素二重結合を水素添加して飽和とする反応である。側鎖や環内の炭素−炭素二重結合が存在する場合には、水素添加反応により、これらの炭素−炭素二重結合も水素添加して飽和させる。
水素添加反応は、開環重合体の不活性溶媒溶液に水素添加触媒を添加し、反応系内に水素を供給して行う。水素添加触媒としては、オレフィン化合物の水素添加に際して一般に使用されているものであれば、均一系触媒、不均一系触媒のいずれも使用することができる。得られる重合体中の残留金属の除去等を考慮すると、不均一系触媒が好ましい。
水素添加触媒のうち、均一系触媒としては、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の組み合わせ等の遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなる触媒系;ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の貴金属錯体触媒;等が挙げられる。
水素添加触媒のうち、不均一触媒としては、例えば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナ等の、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、またはこれらの金属をカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタン等の担体に担持させた固体触媒系が挙げられる。
水素添加触媒の使用量は、開環重合体100重量部に対して、通常0.05〜10重量部の範囲である。
水素添加反応に用いる不活性有機溶媒としては、2−ノルボルネンまたは2−ノルボルネンとその他のノルボルネン単量体との開環(共)重合において用いることができる有機溶媒として前記に例示したものと同様の有機溶媒を用いることができ、それらの中でも、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン系芳香族炭化水素、含窒素炭化水素、エーテル類等が好ましい。
水素添加反応の温度は、使用する水素添加触媒系によって適する条件範囲が異なるが、通常、−20℃から300℃、好ましくは0〜250℃、より好ましくは100〜200℃である。水素添加反応温度が低すぎると反応速度が遅くなるおそれがあり、高すぎると副反応が起こる可能性がある。
水素添加反応における水素圧力は、通常0.01〜20MPa、好ましくは0.1〜10MPa、より好ましくは1〜5MPaである。水素圧力が低すぎると水素添加速度が遅くなり、高すぎると高耐圧反応装置が必要となる。
開環重合体水素添加物(a−1)の水素添加率は、前記した通り、通常80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。耐熱性や耐光性、耐候性などが特に優れたノルボルネン単量体開環重合体水素添加物を得るには、水素添加率を99%以上、さらには99.5%以上とすることが好ましい。多くの場合、水素添加率を99.9%程度にまで高くすることによって、諸特性に優れた開環重合体水素添加物を得ることができる。
開環重合体水素添加物(a−1)の異性化率は、通常、0〜40%、好ましくは0〜20%、より好ましくは1〜10%、さらに好ましくは3〜9%である。異性化率は、後記の実施例に記載された方法により測定することができる。本発明では、開環重合により、実質的にシス体の開環重合体を合成し、これを水素添加して開環重合体水素添加物とすることが好ましい。水素添加反応の際に、通常、トランス体への異性化が生じるが、この異性化を抑制して、トランス体の含有量を低く抑えることが好ましい。
開環重合体水素添加物の異性化率が高すぎると、耐熱性が低下するおそれがある。一方、異性化率が低すぎると、該開環重合体水素添加物の溶媒に対する溶解性が低下し、ポリマーの生産性が悪化したり、ポリマーの精製が困難になったりするおそれがある。そのため、開環重合体水素添加物の異性化率は、0%であってもよいが、10%以下の範囲内である程度の異性化率を示すものであることが好ましい。
異性化率を上記範囲にするためには、開環重合体の水素添加反応において、反応温度を好ましくは120〜170℃、より好ましくは130〜160℃とし、かつ、使用する水素添加触媒の使用量を、開環重合体100重量部に対し、好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは0.2〜1重量部とする。
水素添加反応終了後は、反応溶液から水素添加触媒等を濾別し、濾別後の重合体溶液から溶媒等の揮発成分を除去することにより、目的とする開環重合体水素添加物を得ることができる。溶媒等の揮発成分を除去する方法としては、凝固法や直接乾燥法等公知の方法を採用することができる。
凝固法は、重合体溶液を重合体の貧溶媒と混合することにより、重合体を析出させる方法である。用いる貧溶媒としては、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;等の極性溶媒が挙げられる。凝固して得られた粒子状の成分は、例えば、真空中または窒素中もしくは空気中で加熱し乾燥させて粒子状にするか、さらに必要に応じて溶融押出機から押出してペレットにすることができる。
直接乾燥法は、重合体溶液を減圧下加熱して溶媒を除去する方法である。この方法には、遠心薄膜連続蒸発乾燥機、掻面熱交換型連続反応器型乾燥機、高粘度リアクタ装置等の公知の装置を用いて行うことができる。真空度や温度はその装置によって適宜選択され、限定されない。
開環重合体水素化物(a−2)は、立体規則性を発現する重合触媒を用いて開環重合後、水素添加することにより得ることができる。具体的には、WO2001/14446号パンフレットや特開2005-89744号公報に記載されているW、Mo触媒などの重合触媒、重合方法により得ることができる。
得られた開環重合体の水素添加は、前記の開環重合体水素化物(a−1)の合成方法に準じて行うことができる。
開環重合体水素添加物(a−2)の水素添加率は、通常80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。耐熱性や耐光性、耐候性などが特に優れたノルボルネン開環重合体水素添加物を得るには、水素添加率を99%以上、さらには99.5%以上とすることが好ましい。多くの場合、水素添加率を99.9%程度にまで高くすることによって、諸特性に優れた開環重合体水素添加物を得ることができる。
開環重合体水素添加物(a−2)に使用する「2−ノルボルネン以外のノルボルネン単量体」は、前記の開環重合体水素化物(a−1)の合成に使用できるものが使用でき、この中でも、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、及びこれらの誘導体が好ましく用いられる。
開環重合体水素化物(a−2)の全繰り返し単位中の2−ノルボルネン以外のノルボルネン単位由来の繰り返し単位の割合は、通常、50重量%超過100重量%以下である。また、本発明の目的を損なわない範囲で、2−ノルボルネン由来の繰り返し単位を含有していても良い。
結晶性のノルボルネン単量体/α−オレフィン付加共重合体(b)としては、例えば、WO1996/40806号パンフレットに記載の重合触媒、重合方法により得ることができる。
ノルボルネン単量体としては、前記の開環重合体水素化物(a−1)の合成に使用できるノルボルネン単量体を使用することができ、α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素原子数が2〜20のα−オレフィンを挙げることができる。
なお、結晶性のノルボルネン単量体/α−オレフィン付加共重合体において、ノルボルネン単量体の共重合組成比が低いと、α−オレフィン連鎖による結晶性が発現されるが、本発明にはポリ(α−オレフィン)に由来する結晶性重合体は含まれない。本発明の結晶性のノルボルネン単量体/α−オレフィン付加共重合体は、ノルボルネン単量体の共重合組成比が30モル%以上で、ポリ(α−オレフィン)の融点よりも高い融点を有する結晶性重合体である。
結晶性環状オレフィン付加重合体(c)としては、例えば、特表2000-515195号公報に記載されたNi,Pd触媒などの重合触媒、重合方法により得ることができる。
環状オレフィンとしては、前記の開環重合体水素化物(a−1)の合成に使用できるノルボルネン単量体;シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類及びその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状ジエン及びその誘導体;などが挙げられる。
結晶性環状オレフィン重合体は、その重量平均分子量(Mw)が、1,2,4−トリクロロベンゼンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算で、通常、50,000〜200,000、好ましくは、70,000〜180,000、より好ましくは80,000〜150,000である。この範囲にあると、得られる樹脂組成物は機械的特性、及び耐熱性に優れると共に、成形加工性も良好である。
結晶性環状オレフィン重合体は、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)が、通常、1.0〜10.0、好ましくは1.5〜7.0、より好ましくは1.5〜5.0、さらに好ましくは2.0〜4.0、特に好ましくは2.5〜3.5である。この範囲にあると、得られる樹脂組成物は機械的特性に優れるため好ましい。
結晶性環状オレフィン重合体の融点は、通常、100〜300℃、好ましくは110〜145℃、より好ましくは120〜145℃、さらに好ましくは130〜145℃である。この範囲にあると、得られる樹脂組成物は耐熱性に優れるため好ましい。
(2)非晶性環状オレフィン重合体
本発明に用いる非晶性環状オレフィン重合体は、環状オレフィンを重合して得られる重合体のうち、示差走査熱量計(DSC)で融点が観測されず、25℃以下にガラス転移温度(Tg)が観測される環状オレフィン重合体であれば、特に制約はない。また、ガラス転移温度が2点以上観測される場合であっても、その内少なくとも1点が上記範囲内に入っていればよい。
非晶性環状オレフィン重合体としては、例えば、非晶性ノルボルネン開環重合体水素添加物(d)、非晶性のノルボルネン単量体/α−オレフィン付加共重合体(e)、非晶性環状オレフィン付加重合体(f)などを挙げることができる。
本発明の樹脂組成物においては、非晶性環状オレフィン重合体として、これらの重合体を一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、非晶性環状オレフィン重合体としては、樹脂組成物の機械的特性に優れることから、非晶性ノルボルネン開環重合体水素化物(d)が好ましい。
非晶性ノルボルネン開環重合体水素化物(d)は、例えば、特開平4-77520号公報、WO00/73366号公報に記載の重合触媒、水素添加触媒、製造方法を用いて得ることができる。
ノルボルネン単量体としては、前記の結晶性環状オレフィン重合体の合成に使用できるノルボルネン単量体であれば特に制限されないが、その中でも、アルキル基またはアルキレン基を有するノルボルネン単量体は、開環重合体水素添加物のガラス転移温度を本願発明の範囲に容易に制御できるため好ましく用いられ、アルキル基またはアルキレン基を有するノルボルネン単量体を単独で、あるいは2種以上のアルキル基またはアルキレン基を有するノルボルネン単量体を組み合わせて、あるいはそれ以外のノルボルネン単量体とを組み合わせて用いることができる。
アルキル基またはアルキレン基を有するノルボルネン単量体のアルキル基、アルキレン基の炭素数は、通常、1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6、さらに好ましくは2〜6である。また、アルキル基またはアルキレン基を有するノルボルネン単量体は、通常、2環体以上、好ましくは2環体である。
このようなアルキル基またはアルキレン基を有するノルボルネン単量体としては、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−プロピル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ペンチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−オクチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネンなどを挙げることができる。
ノルボルネン単量体中のアルキル基またはアルキレン基を有するノルボルネン単量体の割合は、通常、50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%である。
開環重合体水素添加物のアルキル基またはアルキレン基を有するノルボルネン単量体由来の繰り返し単位の割合は、全繰り返し単位に対して、通常、50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%である。
本発明において、「アルキル基またはアルキレン基を有するノルボルネン単量体由来の繰り返し単位」とは、アルキル基またはアルキレン基を有するノルボルネン単量体の開環重合と、それに続く水素添加を経た後の繰り返し単位を意味する。
水素添加反応により、開環重合体の主鎖の炭素−炭素二重結合を水素添加するが、アルキレン基を有するノルボルネン単量体を用いた場合には、アルキレン基の炭素−炭素二重結合も主鎖の炭素−炭素二重結合の水素添加時に水素添加される。
水素添加率が100%に満たない場合には、炭素−炭素二重結合が未反応の状態で残存する構造を含む。また、各繰り返し単位の割合は、重合転化率がほぼ100%の場合、開環重合に使用する各ノルボルネン単量体の使用割合とほぼ一致する。
また、融点が観測されない程度に2−ノルボルネンを共重合して本発明のガラス転移温度範囲とすることもできる。その共重合割合は、全繰り返し単位に対して、通常、50重量%未満である。
水素添加率は、開環重合体中の炭素−炭素二重結合の通常80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。耐熱性や耐光性、耐候性などが特に優れたノルボルネン開環重合体水素添加物を得るには、水素添加率を99%以上、さらには99.5%以上とすることが好ましい。多くの場合、水素添加率を99.9%程度にまで高くすることによって、諸特性に優れた開環重合体水素添加物を得ることができる。
非晶性のノルボルネン系単量体/α−オレフィン付加共重合体(e)は、例えば、特開昭60-168708号公報、特開平3-45612号公報、特表平11-508635号公報、特開2004-107442号公報、特開2004-107486号公報などに記載されている重合触媒、重合方法を用いて得ることができる。
また、使用するノルボルネン単量体としては、非晶性ノルボルネン開環重合体水素添加物(d)の合成に使用できるものを使用することができる。
非晶性環状オレフィン付加重合体(f)は、例えば、特開平3-258814号公報、特表平9-5086号公報、特開2004-107442号公報などに記載されている重合触媒、重合方法を用いて得ることができる。
また、使用するノルボルネン単量体としては、非晶性ノルボルネン開環重合体水素化物(d)の合成に使用できるものを使用することができる。
非晶性環状オレフィン重合体のガラス転移温度(Tg)は、25℃以下、好ましくは−50〜+25℃、より好ましくは−40〜15℃、さらに好ましくは−25〜+5℃である。
上記範囲にあると、得られる樹脂組成物は機械的特性、特にフィルムとした際の引っ張り伸びに優れる。一方、ガラス転移温度が高すぎると、得られる樹脂組成物は引張り伸びなどの機械的特性に劣る場合がある。
非晶性環状オレフィン重合体の重量平均分子量(Mw)は、10,000〜500,000、好ましくは15,000〜300,000、より好ましくは20,000〜100,000である。この範囲にあると、得られる樹脂組成物は機械的特性に優れると共に、成形加工性も良好である。。
(3)樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、前記の結晶性環状オレフィン重合体と、前記の非晶性環状オレフィン重合体との混合物である。
該樹脂組成物中の結晶性環状オレフィン重合体の割合は50〜99.9重量%、好ましくは55〜99重量%、さらに好ましくは65〜97重量%、特に好ましくは75〜95重量%であり、25℃以下のガラス転移温度を有する非晶性環状オレフィン重合体の割合は0.1〜50重量%、好ましくは1〜45重量%、さらに好ましくは3〜35重量%、特に好ましくは5〜25重量%である。
上記範囲にあると、得られる樹脂組成物は、水蒸気バリア性、機械的特性、耐熱性が高度にバランスされ好ましい。一方、非晶性環状オレフィン重合体の割合が多すぎると、得られる樹脂組成物は水蒸気バリア性や耐熱性に劣る場合があり、非晶性環状オレフィン重合体の割合が少なすぎると、得られる樹脂組成物は機械的特性に劣る場合がある。
本発明の樹脂組成物を製造する方法は特に限定されず、公知の混合方法が採用でき、例えば、結晶性環状オレフィン重合体のペレットと非晶性環状オレフィン重合体のペレットとをヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合後さらに一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、ロール等により溶融混練する方法や、結晶性環状オレフィン重合体の樹脂溶液と非晶性環状オレフィン重合体の樹脂溶液とを混合した後、公知の方法により溶媒等の揮発成分を除去する方法などがあげられる。
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、公知の添加剤を添加してもよい。
公知の添加剤としては、充填材、酸化防止剤、離型材、難燃剤、抗菌剤、木粉、カップ
リング剤、可塑剤、着色剤、滑剤、シリコンオイル、発泡剤、界面活性剤、光安定剤、滑
剤や分散助剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、結晶化核剤
、防曇剤、有機物充填材、中和剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止材、ゴム質重合体、樹脂等が挙げられる。
ゴム質重合体としては、例えば、エチレン−α−オレフィン系ゴム;エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体ゴム;エチレン−メチルメタクリレート、エチレン−ブチルアクリレート等のエチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレンと脂肪酸ビニルとの共重合体;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル等のアクリル酸アルキルエステルの重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレンとブタジエン又はイソプレンとのランダム共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−アクリロニトリル−スチレン共重合体等のジエン系ゴム;ブチレン−イソプレン共重合体;スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体等の芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体、低結晶性ポリブタジエン樹脂、エチレン−プロピレンエラストマー、スチレングラフトエチレン−プロピレンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、エチレン系アイオノマー樹脂等が挙げられる。
樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、水素化ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。
これらの添加剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
添加剤の添加量は、特に制限されず、本発明の効果を損なわない範囲で、添加する目的
に応じて適宜定めることができる。
本発明の樹脂組成物は、公知の成形手段、例えば射出成形法、圧縮成形法、押出成形法等を用いて成形体にすることができる。成形体の形状は特に制限されないが、使用する目的に応じて適宜選択することができる。
(4)フィルム
本発明のフィルムは、本発明の樹脂組成物を成形して得られるものである。
本発明のフィルムは、本発明の樹脂組成物を、通常、50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上含有する。
本発明のフィルムを成形する方法に制限はなく、押出成形法、圧縮成形法、キャスト成形法など公知の成形方法を採用することができる。
本発明のフィルムの厚みは特に限定されないが、通常、1μmから20mm、好ましくは5μmから5mm、より好ましくは10μmから2mmである。
本発明のフィルムにおいては、本発明の樹脂組成物を含有する層と、食品分野、医療分野などで一般に使用される公知の重合体を含有する層とを有する積層体であってもよい。
積層する層の数は、通常、2層又は3層であるが、更に多層の積層体とすることができる。3層以上の多層における重合体種による層の配置順序は、目的や用途により決めることができる。
本発明のフィルムは機械的特性に優れる。本発明のフィルムが機械的特性に優れることは、例えば、本発明のフィルムの形状1B形、厚さ250μmの試験片での、ISO 527に基づいた引張速度200mm/minの条件でオートグラフ(AGS−5kNH、島津製作所製)により引張り破断伸びを測定することにより評価することができる。
本発明のフィルムの引張り破断伸びは、通常50%以上、好ましくは、60%以上、さらに好ましくは70%以上である。
本発明のフィルムは水蒸気バリアー性に優れる。本発明のフィルムが水蒸気バリア性に優れることは、例えば、JIS K7129(A法)に基づいて、温度50℃、湿度90%RHの条件下で水蒸気透過度テスター(LYSSY社製:L80−5000型)を用いて水蒸気透過度を測定することにより評価することができる。
本発明の厚さ250μmのフィルムの水蒸気透過度は、通常、0.5(g/(m・24h))以下、好ましくは0.45(g/(m・24h))以下、より好ましくは0.40(g/(m・24h))以下、さらに好ましくは0.35(g/(m・24h))以下である。
本発明のフィルムは耐熱性に優れる。本発明のフィルムが耐熱性に優れることは、例えば、JIS K7196に基づいて、熱機械分析装置(TMA/SS6100、SIIナノテクノロジー社製)を用いて、軟化温度を測定することにより評価することができる。
本発明のフィルムの軟化温度は、通常、80℃以上、好ましくは85℃以上、より好ま90℃以上である。
本発明のフィルムは、食品分野、医療分野、ディスプレイ分野、エネルギー分野、光学分野、電気電子分野、通信分野、自動車分野、民生分野、土木建築分野等の多岐の用途で利用することができる。中でも、食品分野、医療分野、エネルギー分野、ディスプレイ分野等の用途に適している。
食品分野としては、ハム、ソーセージ、レトルト食品、冷凍食品等の加工食品、乾燥食品、特定保険食品、米飯、菓子、食肉、ラップフィルム、シュリンクフィルム等の食品包装袋、ブリスター・パッケージ用フィルム等として使用できる。
医療分野では、薬栓、輸液用バッグ、点滴用バッグ、プレス・スルー・パッケージ(PTP)用フィルム、ブリスター・パッケージ用フィルム等で使用できる。
エネルギー分野では太陽光発電システム周辺部材、燃料電池周辺部材、アルコール含有燃料系統部材及びそれらの包装フィルム等として使用できる。
ディスプレイ分野では、バリアーフィルム、位相差フィルム、偏光フィルム、光拡散シート、集光シート等として使用できる。
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明する。ただし本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、部又は%は、特に断りがない限り、重量基準である。
以下の実施例及び比較例において、各種物性の測定法は次のとおりである。
(1)結晶性環状オレフィン重合体の分子量の測定は以下のように行った。
(1.1)開環共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、トルエンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として測定した。
測定装置としては、東ソー社製GPC−8020シリーズ(DP8020、SD8022、AS8020、CO8020、RI8020)を用いた。
標準ポリスチレンとしては、東ソー社製標準ポリスチレン、Mw=500、2630、10200、37900、96400、427000、1090000、5480000の計8点を用いた。
サンプル調整としては、サンプル濃度1mg/mlになるように、測定試料をトルエンに溶解後、カートリッジフィルター(PTFE0.5μm)でろ過して調整した。
測定条件としては、カラムに東ソー社製TSKgel GMHHR・Hを2本直列に繋いで用い、流速1.0ml/min、サンプル注入量100μml、カラム温度40℃の条件で測定した。
(1.2)開環共重合体水素添加物の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、1,2,4−トリクロロベンゼンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として測定した。
測定装置としては、東ソー社製HLC8121GPC/HTを用いた。
標準ポリスチレンとしては、東ソー社製標準ポリスチレン、Mw=988、2580、5910、9010、18000、37700、95900、186000、351000、889000、1050000、2770000、5110000、7790000、20000000の計16点を用いた。
サンプル調整としては、サンプル濃度1mg/mlになるように、140℃にて測定試料を1,2,4−トリクロロベンゼンに加熱溶解させて調整した。
測定条件としては、カラムに東ソー社製TSKgel GMHHR・H(20)HTを3本直列に繋いで用い、流速1.0ml/min、サンプル注入量300μml、カラム温度140℃の条件で測定した。
(2)非結晶性環状オレフィン重合体の分子量の測定は以下のように行った。
(2.1)開環重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として測定した。
測定装置としては、東ソー社製HLC8120を用いた。
標準ポリスチレンとしては、東ソー社製標準ポリスチレン、Mw=500、1050、2630、5970、10200、18100、96400、190000、427000、706000の計10点を用いた。
サンプル調整としては、サンプル濃度4mg/mlになるように、測定試料をテトラヒドロフランに溶解後、カートリッジフィルター(PTFE0.5μm)でろ過して調整した。
測定条件としては、カラムに東ソー社製TSKguardcolumn superH−H、TSKgel SuperH5000、TSKgel SuperH4000、TSKgel SuperH2000を4本直列に繋いで用い、流速0.6ml/min、カラム温度40℃の条件で測定した。
(2.2)開環重合体水素添加物の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、シクロヘキサンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準イソプレン換算値として測定した。
測定装置としては、東ソー社製HLC8120を用いた。
標準イソプレンとしては、東ソー社製標準イソプレン、Mw=531、1970、4540、8050、10500、19700、56000、114000、155000、293000の計10点を用いた。
サンプル調整としては、サンプル濃度4mg/mlになるように、測定試料をシクロヘキサンに溶解後、カートリッジフィルター(PTFE0.5μm)でろ過して調整した。
測定条件としては、カラムに東ソー社製TSKguardcolumn HXL−L、TSKgel G5000H、TSKgel G4000H、TSKgel G2000Hを4本直列に繋いで用い、流速1.0ml/min、カラム温度40℃の条件で測定した。
(3)開環重合体水素添加物の水素添加率は、溶媒に重クロロホルムを用い、1H−NMRにより測定した。
(4)異性化率は、溶媒に重クロロホルムを用い、13C−NMRにより測定した33.0ppmピーク積分値/(31.8ppmピーク積分値+33.0ppmピーク積分値)×100から算出することができる。
ちなみに、31.8ppmピークは、該重合体中の2−ノルボルネンの繰り返し単位のシス体由来のもの、33.0ppmピークは、該重合体中の2−ノルボルネンの繰り返し単位のトランス体由来のものである。
(5)融点は、示差走査熱量分析計(DSC6220、SIIナノテクノロジー社製)を用いて、JIS K7121に基づき、試料を融点より30℃以上に加熱した後、冷却速度−10℃/minで室温まで冷却し、その後、昇温速度10℃/minで測定を行った。
(6)ガラス転移温度は、示差走査熱量分析計(DSC6220、SIIナノテクノロジー社製)を用いて、JIS K6911に基づいて測定した。
(7)フィルムの厚みは、マイクロゲージを用いて測定した。
(8)水蒸気バリア性は、JIS K7129(A法)に基づいて温度50℃、湿度90%RHの条件下の水蒸気透過度を水蒸気透過度テスター(LYSSY社製:L80−5000型)で測定して評価した。水蒸気透過度(g/(m・24h))が小さいと水蒸気バリア性が良好であることを示す。
(9)引張り破壊伸びは、ISO 527に基づき、引張速度200mm/minの条件でオートグラフ(AGS−5kNH、島津製作所製)により測定した。試験片は、形状1B形、厚さ250μmとした。
(10)耐熱性は、軟化温度を測定することにより評価した。軟化温度は、熱機械分析装置(TMA/SS6100、SIIナノテクノロジー社製)を用いて、JIS K7196に基づき測定した。
[製造例1]
(結晶性環状オレフィン重合体の合成)
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500重量部に、1−ヘキセン0.40重量部、ジイソプロピルエーテル0.31重量部、トリイソブチルアルミニウム0.20重量部、イソブチルアルコール0.08重量部を攪拌器付ステンレス鋼製オートクレーブに入れ攪拌混合した後、攪拌下で55℃に保ちながら、2−ノルボルネン245重量部と5−メチル−2−ノルボルネン5重量部とからなる単量体混合物及び六塩化タングステン1.0重量%トルエン溶液15重量部を3時間かけて反応液に連続添加し、さらに1時間攪拌し重合反応を完了し、ノルボルネン開環重合体を得た。重合転化率は、ほぼ100%であった。得られた開環共重合体(A)の重量平均分子量Mwは、103,000で、分子量分布(Mw/Mn)は、1.9であった。
上記で得た開環重合体(A)を含む重合反応液を耐圧の攪拌器付ステンレス鋼製水素化反応器に移送し、珪藻土担持ニッケル触媒(日産ズードヘミー社製;T8400、ニッケル担持率58重量%)0.5重量部を加え、攪拌下で160℃、水素圧4.5MPaに保ちながら10時間水素化反応させた。この溶液を、珪藻土をろ過助剤としてステンレス製金網を備えたろ過器によりろ過し、触媒を除去した。
得られた反応ろ過溶液を3000重量部のイソプロピルアルコール中に撹拌下に注いで水素添加物を沈殿させ、ろ別して回収した。さらに、アセトン500重量部で洗浄した後、0.13×10Pa以下、100℃に設定した減圧乾燥器中で48時間乾燥し、開環重合体水素添加物(A)を230重量部得た。
得られた開環共重合体水素添加物(A)の水素化率は99.9%、重量平均分子量(Mw)は100,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.9、異性化率は8%、融点は136℃であった。
[製造例2]
(非晶性環状オレフィン重合体の合成)
製造例1において、1−ヘキセン1.35重量部、ジイソプロピルエーテル0.30重量部、イソブチルアルコール0.19重量部、2−エチル−5−ノルボルネン250重量部、六塩化タングステン1.0重量%トルエン溶液15重量部とした以外は実施例1と同様にして開環重合体(B)を得た。重合転化率は、ほぼ100%であった。得られた開環重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、30,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。
製造例1において、珪藻土担持ニッケル触媒(日産ズードヘミー社製;T8400、ニッケル担持率58重量%)2.5重量部とした以外は製造例1と同様にして開環重合体水素添加物(C)を230重量部得た。
得られた開環重合体水素添加物(B)の水素添加率は99.9%、重量平均分子量(Mw)は34,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.0、ガラス転移温度は0℃であった。
[製造例3]
(非晶性環状オレフィン重合体の合成)
製造例2において、2−エチル−5−ノルボルネンに代えて2−メチル−5−ノルボルネンを用い、1−ヘキセンを0.90重量部とした以外は製造例2と同様にして開環重合体(C)を得た。重合転化率は、ほぼ100%であった。得られた開環重合体(C)の重量平均分子量(Mw)は、40,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.0であった。
製造例2において、開環重合体(B)を含む重合反応液に代えて前記の開環重合体(C)を含む重合反応液を用いた以外は製造例2と同様にして開環重合体水素添加物(C)を230重量部得た。
得られた開環共重合体水素添加物(C)の水素化率は99.9%、重量平均分子量(Mw)は41,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.5、ガラス転移温度は10℃であった。
[製造例4]
(非晶性環状オレフィン重合体の合成)
製造例2において、2−エチル−5−ノルボルネンに代えて2−ヘキシル−5−ノルボルネン、1−ヘキセンを0.50重量部とした以外は製造例2と同様にして開環重合体(D)を得た。重合転化率は、ほぼ100%であった。得られた開環重合体(D)の重量平均分子量(Mw)は、90,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.5であった。
製造例2において、開環重合体(B)を含む重合反応液に代えて前記の開環重合体(D)を含む重合反応液を用い、珪藻土担持ニッケル触媒(日産ズードヘミー社製;T8400、ニッケル担持率58重量%)5.0重量部とした以外は製造例1と同様にして開環重合体水素添加物(D)を230重量部得た。
得られた開環重合体水素添加物(D)の水素添加率は99.9%、重量平均分子量(Mw)は98,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.2、ガラス転移温度は−24℃であった。
[実施例1]
(樹脂組成物)
開環重合体水素添加物(A)100重量部、開環重合体水素添加物(B)30重量部、及び酸化防止剤(イルガノックス1010、チバガイギー社製)(以下、「酸化防止剤(A)」ということがある)0.13重量部を、2軸混練機(TEM35、東芝機械社製)で混練し、ペレット化し、樹脂組成物(A)を得た。樹脂組成物(A)の融点は136℃、ガラス転移温度は0℃であった。
(フィルム成形)
樹脂組成物(A)を、スクリュー径20mmφ、圧縮比3.1、L/D=30のスクリューを備えたハンガーマニュホールドタイプのTダイ式フィルム溶融押出成形機を使用して以下の条件でフィルム成形を行い、フィルム(A)(厚み250μm)を得た。
フィルム成形条件は、ダイリップ:0.8mm、溶融樹脂温度:180℃、Tダイの幅:300mm、冷却ロール:120℃、キャストロール:130℃であった。
(フィルム評価)
フィルム(A)について、引張り破断伸び、水蒸気バリア性、耐熱性を評価した結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1において、開環重合体水素添加物(B)を80重量部、酸化防止剤(A)を0.18重量部とした以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物(B)を得た。樹脂組成物(B)の融点は135℃、ガラス転移温度は0℃であった。
また、実施例1において、樹脂組成物(A)に代えて樹脂組成物(B)を用いた以外は実施例1と同様にして、フィルム(B)を得た。
得られたフィルム(B)について、引張り破断伸び、水蒸気バリア性、耐熱性を評価した結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、開環重合体水素添加物(B)を5重量部、酸化防止剤(A)を0.11重量部とした以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物(C)を得た。樹脂組成物(C)の融点は136℃、ガラス転移温度は0℃であった。
また、実施例1において、樹脂組成物(A)に代えて樹脂組成物(C)を用いた以外は実施例1と同様にして、フィルム(C)を得た。
得られたフィルム(C)について、引張り破断伸び、水蒸気バリア性、耐熱性を評価した結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例1において、開環重合体水素添加物(B)に代えて開環重合体水素添加物(C)を用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物(D)を得た。樹脂組成物(D)の融点は136℃、ガラス転移温度は10℃であった。
また、実施例1において、樹脂組成物(C)に代えて樹脂組成物(D)を用いた以外は実施例1と同様にして、フィルム(D)を得た。
得られたフィルム(D)について、引張り破断伸び、水蒸気バリア性、耐熱性を評価した結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例1において、開環重合体水素添加物(B)に代えて開環重合体水素添加物(D)を用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物(E)を得た。樹脂組成物(E)の融点は136℃、ガラス転移温度は−24℃であった。
また、実施例1において、樹脂組成物(C)に代えて樹脂組成物(E)を用いた以外は実施例1と同様にして、フィルム(E)を得た。
得られたフィルム(E)について、引張り破断伸び、水蒸気バリア性、耐熱性を評価した結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、開環重合体水素添加物(B)に代えて市販の非晶性の開環重合体水素添加物であるゼオノア1060R(日本ゼオン株式会社製、ガラス転移温度:99℃)を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(F)を得た。樹脂組成物(F)の融点は136℃、ガラス転移温度は明確には観測されなかった。
また、実施例1において、樹脂組成物(A)に代えて樹脂組成物(F)を用いた以外は実施例1と同様にして、フィルム(F)を得た。
得られたフィルム(F)について、引張り破断伸び、水蒸気バリア性、耐熱性を評価した結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1において、開環重合体水素添加物(B)を用いず、酸化防止剤(A)を0.1重量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(G)を得た。樹脂組成物(G)の融点は136℃であり、ガラス転移温度は明確に観測されなかった。
また、実施例1において、樹脂組成物(A)に代えて樹脂組成物(G)を用いた以外は実施例1と同様にして、フィルム(G)を得た。
得られたフィルム(G)について、引張り破断伸び、水蒸気バリア性、耐熱性を評価した結果を表1に示す。
[比較例3]
比較例2において、開環重合体水素添加物(A)に代えてゼオノア1060Rを用いた以外は、比較例2と同様にして樹脂組成物(H)を得た。樹脂組成物(H)のガラス転移温度は99℃であり、融点は観測されなかった。
また、実施例1において、樹脂組成物(F)に代えて樹脂組成物(H)を用いた以外は実施例1と同様にして、フィルム(H)を得た。
得られたフィルム(H)について、引張り破断伸び、水蒸気バリア性、耐熱性を評価した結果を表1に示す。
Figure 2008195890
表1より、実施例1〜5のフィルムは、引張り破断伸び、水蒸気バリア性、耐熱性の全てに優れていた。一方、比較例1のフィルムは、水蒸気バリア性に優れるものの、引張り破断伸び、耐熱性に劣っていた。また、比較例2のフィルムは、水蒸気バリア性、耐熱性に優れるものの、引張り破断伸びに劣っていた。一方、比較例3のフィルムは、水蒸気バリア性、耐熱性に劣っていた。

Claims (4)

  1. 結晶性環状オレフィン重合体を50〜99.9重量%、及び25℃以下のガラス転移温度を有する非晶性環状オレフィン重合体を0.1〜50重量%含有する樹脂組成物。
  2. 前記結晶性環状オレフィン重合体が、1,2,4−トリクロロベンゼンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算での重合平均分子量(Mw)の、50,000〜200,000であり、かつ、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)が、1.5〜10である請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記結晶性環状オレフィン重合体が、ノルボルネン開環重合体水素添加物であって、ノルボルネン開環重合体水素添加物の全繰り返し単位中、2−ノルボルネン由来の繰り返し単位の割合が90〜100重量%、2−ノルボルネン以外のノルボルネン単量体由来の繰り返し単位の割合が0〜10重量%であり、かつ、110〜145℃の融点を有するノルボルネン開環重合体水素添加物である請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形してなるフィルム。
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