JP5083530B2 - フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、近年の情報分野、食品分野、医療分野、土木分野等において要求される、水蒸気バリア性、耐熱性、耐油性、機械的特性、透明性、加工性等に優れる、ノルボルネン系開環共重合体水素化物を成形して得られる樹脂フィルムに関する。
ノルボルネン系開環(共)重合体水素化物は透明性に優れ、低複屈折性を有することから、光学レンズや光学シート用の樹脂材料としての利用が提案されている(特許文献1、2)。また、このものは溶融時の流動性に優れ、溶出性や耐薬品性にも優れているため、包装用フィルム、医療容器をはじめとして、光学用途以外の種々の樹脂材料としても有用であることも提案されている(特許文献3,4)。
しかし、ノルボルネン系開環(共)重合体水素化物の多くは非晶性であることから、その用途によっては、防湿性、耐皮脂性、耐溶剤性等が不十分であり、物性のさらなる改善が望まれていた。
一方、結晶性を有する(すなわち、融点を有する)ノルボルネン系開環重合体水素化物としては、特許文献5〜7に記載された、3環体以上のノルボルネン系単量体の繰り返し単位を含有する結晶性のノルボルネン系開環重合体水素化物が知られている。これらの文献に記載のノルボルネン系開環重合体水素化物から得られる樹脂フィルム又はシートは、透明性、耐熱性及び耐薬品性に優れ、機械的強度にも優れるものである。
しかし、これら結晶性のノルボルネン系開環重合体水素化物は、溶剤に対する溶解性に乏しく、開環共重合体を水素化した後において、溶剤から析出し、触媒残渣の除去等のポリマー精製が十分に行えない場合があった。また、当該ノルボルネン系開環共重合体水素化物を使用して成形したフィルムの透湿度は十分に要求を満たすものではなかった。
また、非特許文献1、2には、ある種の結晶性を有するノルボルネンモノマーの開環共重合体水素化物が開示されている。
しかし、これらの文献には、その重合体の重合体物性について具体的には記載されていない。また、具体的に開示された重合体のうち、分子量が大きく、分子量分布が狭い重合体は、フィルム成形する際においてフィルム厚みを制御することが困難であった。また、分子量が小さい重合体は、成形フィルムの引っ張り破断伸びが小さく、フィルムにした際の機械的特性に問題があった。さらに、水素添加率が必ずしも十分でないため、この重合体を成形して得られる成形体に焼けが生じ易い等の問題もあった。
特開昭60−26024号公報 特開平9−263627号公報 特開2000−313090号公報 特開2003−183361号公報 特開2000−201826号公報 特開2000−393316号公報 特開2006−52333号公報 Polymer International,1994年,第34巻,49−57頁 Macromolecules,2004年,第37巻,7278−7284頁
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、近年の情報分野、食品分野、医療分野、土木分野等における、水蒸気バリア性、耐熱性、耐油性、機械的特性、透明性、加工性等のより優れた性能の要求を満たすフィルムを提供することを課題とする。
かくして本発明によれば、少なくとも2−ノルボルネン90〜100重量%と置換基含有ノルボルネン類10〜0重量%とを含有するモノマーを開環重合し、水素添加して得られた、融点が110〜145℃、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)が50,000〜200,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜10.0であるノルボルネン系開環水素化物からなる、厚さ100μmでの水蒸気透過度が0.40g/m・day以下、かつ厚さ100μmでのヘイズが20%以下であるフィルムが提供される。
このフィルムは、平均長径が20μm以下の核剤存在下で結晶化されたノルボルネン系開環重合体水素化物を用いることで容易に得られる。
また本発明のフィルムにおいては、前記ノルボルネン系開環重合体水素化物が、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算での重量平均分子量が、50,000〜200,000であり、かつ、分子量分布が1.5〜7.0の高分子であるのが好ましい。
本発明によれば、透湿度が低く、ヘイズの小さいフィルムが提供される。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のフィルムは、少なくとも2−ノルボルネン90〜100重量%と置換基含有ノルボルネン類10〜0重量%とを含有するモノマーを開環重合し、水素添加して得られた、2−ノルボルネン由来の繰り返し単位(A)の全繰り返し単位に対する存在割合が90〜100重量%で、置換基含有ノルボルネン系単量体由来の繰り返し単位(B)の全繰り返し単位に対する存在割合が0〜10重量%であり、かつ、融点が110〜145℃の範囲であるノルボルネン系開環重合体水素化物を用いて得られる。
(ノルボルネン系開環重合体水素化物)
本発明に用いるノルボルネン系開環重合体水素化物は、(i)2−ノルボルネンを、メタセシス重合触媒の存在下に開環重合することにより、2−ノルボルネン単独開環重合体を得た後、得られる開環重合体の炭素−炭素二重結合の80%以上を水素化して得られるものであるか、(ii)2−ノルボルネン及び置換基含有ノルボルネン系単量体からなる単量体混合物を、メタセシス重合触媒の存在下に開環重合することにより、2−ノルボルネン及び置換基含有ノルボルネン系単量体の開環共重合体を得た後、得られる開環共重合体の炭素−炭素二重結合の80%以上を水素化して得られるものである。
2−ノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン)は、公知の化合物であり、例えば、シクロペンタジエンとエチレンとを反応させることにより得ることができる。
置換基含有ノルボルネン系単量体は、分子内にノルボルネン骨格を有する化合物である(ただし、2−ノルボルネンを除く)。本発明に用いる「置換基含有ノルボルネン系単量体」には、置換基を有する2−ノルボルネン誘導体のほか、縮合した環を有するノルボルネン化合物も含まれる。
置換基含有ノルボルネン系単量体としては、分子内にノルボルネン環と縮合する環を有しないノルボルネン系単量体、及び3環以上の多環式ノルボルネン系単量体等が挙げられる。
前記分子内にノルボルネン環と縮合する環を有しないノルボルネン系単量体の具体例としては、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシル−2−ノルボルネン、5−シクロペンチル−2−ノルボルネン等のアルキル基を有するノルボルネン類;5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−シクロヘキセニル−2−ノルボルネン、5−シクロペンテニル−2−ノルボルネン等のアルケニル基を有するノルボルネン類;5−フェニル−2−ノルボルネン等の芳香環を有するノルボルネン類;5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−エトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−エトキシカルボニル−2−ノルボルネン、ノルボルネニル−2−メチルプロピオネイト、ノルボルネニル−2−メチルオクタネイト、5−ヒドロキシメチルノルボルネン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)−2−ノルボルネン、5,5−ジ(ヒドロキシメチル)−2−ノルボルネン、5−ヒドロキシイソプロピル−2−ノルボルネン、5,6−ジカルボキシ−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−6−カルボキシ−2−ノルボルネン等の酸素原子を含む極性基を有するノルボルネン類;5−シアノ−2−ノルボルネン等の窒素原子を含む極性基を有するノルボルネン類;等が挙げられる。
3環以上の多環式ノルボルネン系単量体とは、分子内にノルボルネン環と、該ノルボルネン環と縮合している1つ以上の環とを有するノルボルネン系単量体である。その具体例としては、下記に示す式(1)又は式(2)で示される単量体が挙げられる。
Figure 0005083530
(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基;又はケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基;を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の二価の炭化水素基である。)
Figure 0005083530
(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基;又はケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基;を表し、RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。mは1又は2である。)
式(1)で示される単量体としては、具体的には、ジシクロペンタジエン(トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン)、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン等を挙げることができる。また、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレンともいう)、テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9,9a,10−ヘキサヒドロアントラセンともいう)等の芳香環を有するノルボルネン誘導体も挙げることができる。
式(2)で示される単量体としては、mが1であるテトラシクロドデセン類、mが2であるヘキサシクロヘプタデセン類が挙げられる。
テトラシクロドデセン類の具体例としては、テトラシクロドデセン(テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン)、8−メチルテトラシクロドデセン、8−エチルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキシルテトラシクロドデセン、8−シクロペンチルテトラシクロドデセン等の無置換又はアルキル基を有するテトラシクロドデセン類;8−メチリデンテトラシクロドデセン、8−エチリデンテトラシクロドデセン、8−ビニルテトラシクロドデセン、8−プロペニルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキセニルテトラシクロドデセン、8−シクロペンテニルテトラシクロドデセン等の環外に二重結合を有するテトラシクロドデセン類;8−フェニルテトラシクロドデセン等の芳香環を有するテトラシクロドデセン類;8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−ヒドロキシメチルテトラシクロドデセン、8−カルボキシテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸無水物等の酸素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−シアノテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸イミド等の窒素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−クロロテトラシクロドデセン等のハロゲン原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−トリメトキシシリルテトラシクロドデセン等のケイ素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類等が挙げられる。
ヘキサシクロヘプタデセン類の具体例としては、ヘキサシクロヘプタデセン、12−メチルヘキサシクロヘプタデセン、12−エチルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキシルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンチルヘキサシクロヘプタデセン等の無置換又はアルキル基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−メチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−エチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−ビニルヘキサシクロヘプタデセン、12−プロペニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキセニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンテニルヘキサシクロヘプタデセン等の環外に二重結合を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−フェニルヘキサシクロヘプタデセン等の芳香環を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−メチル−12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−ヒドロキシメチルヘキサシクロヘプタデセン、12−カルボキシヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸無水物等の酸素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−シアノヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸イミド等の窒素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−クロロヘキサシクロヘプタデセン等のハロゲン原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−トリメトキシシリルヘキサシクロヘプタデセン等のケイ素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類等が挙げられる。これらのノルボルネン系単量体は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、上記した2−ノルボルネン及び/又は置換基含有ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体とを組み合わせて用いることもできる。
2−ノルボルネン及び/又は置換基含有ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のモノ環状オレフィン類及びその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン等の環状ジエン及びその誘導体;等が挙げられる。
2−ノルボルネン、又は2−ノルボルネン及び置換基含有ノルボルネン系単量体からなる単量体混合物の組成は、2−ノルボルネンが、通常90〜100重量%、好ましくは95〜99重量%、より好ましくは97〜99重量%であり、置換基含有ノルボルネン系単量体は、通常0〜10重量%、好ましくは1〜5重量%、より好ましくは1〜3重量%である。
メタセシス重合触媒としては、例えば、特公昭41−20111号公報、特開昭46−14910号公報、特公昭57−17883号公報、特公昭57−61044号公報、特開昭54−86600号公報、特開昭58−127728号公報、特開平1−240517号公報等に記載された、本質的に(a)遷移金属化合物触媒成分と(b)金属化合物助触媒成分からなる一般のメタセシス重合触媒;シュロック型重合触媒(特開平7−179575号公報、Schrock et al.,J.Am.Chem.Soc.,1990年,第112巻,3875頁〜等)や、グラブス型重合触媒(Fu et al.,J.Am.Chem.Soc.,1993年,第115巻,9856頁〜;Nguyen et al.,J.Am.Chem.Soc.,1992年,第114巻,3974頁〜;Grubbs et al.,WO98/21214号パンフレット等)等のリビング開環メタセシス触媒;等が挙げられる。
これらの中でも、得られる重合体の分子量分布を好適な範囲に調節するには、(a)遷移金属化合物触媒成分と(b)金属化合物助触媒成分とからなるメタセシス重合触媒が好ましい。
前記(a)遷移金属化合物触媒成分は、周期律表第3〜11族の遷移金属の化合物である。例えば、これらの遷移金属のハロゲン化物、オキシハロゲン化物、アルコキシハロゲン化物、アルコキシド、カルボン酸塩、(オキシ)アセチルアセトネート、カルボニル錯体、アセトニトリル錯体、ヒドリド錯体、これらの誘導体、これら又はこれらの誘導体のP(C等の錯化剤による錯化物が挙げられる。
具体例としては、TiCl、TiBr、VOCl、WBr、WCl、WOCl、MoCl、MoOCl、WO、HWO等が挙げられる。なかでも、重合活性等の点から、W、Mo、Ti、又はVの化合物が好ましく、特にこれらのハロゲン化物、オキシハロゲン化物、又はアルコキシハロゲン化物が好ましい。
前記(b)金属化合物助触媒成分は、周期律表第1〜2族、及び第12〜14族の金属の化合物で少なくとも一つの金属元素−炭素結合、又は金属元素−水素結合を有するものである。例えば、Al、Sn、Li、Na、Mg、Zn、Cd、B等の有機化合物等が挙げられる。
具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等の有機アルミニウム化合物;テトラメチルスズ、ジエチルジメチルスズ、テトラブチルスズ、テトラフェニルスズ等の有機スズ化合物;n−ブチルリチウム等の有機リチウム化合物;n−ペンチルナトリウム等の有機ナトリウム化合物;メチルマグネシウムイオジド等の有機マグネシウム化合物;ジエチル亜鉛等の有機亜鉛化合物;ジエチルカドミウム等の有機カドミウム化合物;トリメチルホウ素等の有機ホウ素化合物;等が挙げられる。これらの中で、第13族の金属の化合物が好ましく、特にAlの有機化合物が好ましい。
また、前記(a)成分、(b)成分の他に第三成分を加えて、メタセシス重合活性を高めることができる。用いる第三成分としては、脂肪族第三級アミン、芳香族第三級アミン、分子状酸素、アルコール、エーテル、過酸化物、カルボン酸、酸無水物、酸クロリド、エステル、ケトン、含窒素化合物、含ハロゲン化合物、その他のルイス酸等が挙げられる。
これらの成分の配合比は、(a)成分:(b)成分が金属元素のモル比で、通常1:1〜1:100、好ましくは1:2〜1:10の範囲である。また、(a)成分:第三成分がモル比で、通常1:0.005〜1:50、好ましくは1:1〜1:10の範囲である。
また、重合触媒の使用割合は、(重合触媒中の遷移金属):(全単量体)のモル比で、通常1:100〜1:2,000,000、好ましくは1:1,000〜1:20,000、より好ましくは1:5,000〜1:8,000である。触媒量が多すぎると重合反応後の触媒除去が困難になったり、また、分子量分布が広がるおそれがあり、一方、少なすぎると十分な重合活性が得られない。
開環重合は無溶媒で行うこともできるが、適当な溶媒中で行うことが好ましい。用いる有機溶媒としては、重合体及び重合体水素化物が所定の条件で溶解もしくは分散し、かつ、重合及び水素化反応に影響しないものであれば特に限定されないが、工業的に汎用されている溶媒が好ましい。
このような有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素炭化水素;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフラン等のエ−テル類等の溶媒を使用することができる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、工業的に汎用されている芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素及びエーテル類が好ましい。
重合を有機溶媒中で行う場合には、2−ノルボルネン及び所望により2−ノルボルネンと開環共重合可能なその他の単量体、又は2−ノルボルネン及び置換基含有ノルボルネン系単量体からなる単量体混合物、並びに所望によりこれらと開環共重合可能なその他の単量体(以下、これらをまとめて「単量体」ということがある。)の濃度は、1〜50重量%が好ましく、2〜45重量%がより好ましく、3〜40重量%が特に好ましい。前記単量体の濃度が1重量%より小さいと生産性が低くなるおそれがあり、50重量%より大きいと重合後の溶液粘度が高すぎて、その後の水素化反応が困難となるおそれがある。
開環重合においては、反応系に分子量調節剤を添加することができる。分子量調節剤を添加することで、得られる開環重合体の分子量を調整することができる。
用いる分子量調節剤としては特に限定されず、従来公知のものが使用できる。例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエン等のスチレン類;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエーテル類;アリルクロライド等のハロゲン含有ビニル化合物;グリシジルメタクリレート等酸素含有ビニル化合物;アクリルアミド等の窒素含有ビニル化合物;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン等の非共役ジエン、又は1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン等を挙げることができる。これらの中で、分子量調節のし易さから、α−オレフィン類が好ましい。
分子量調節剤の添加量は、所望の分子量を持つ重合体を得るに足る量であればよく、(分子量調節剤):(全単量体)のモル比で、通常1:50〜1:1,000,000、好ましくは1:100〜1:5,000、より好ましくは1:300〜1:3,000である。
開環重合は、単量体と重合触媒とを混合することにより開始される。
開環重合を行う温度は、特に限定されないが、通常−20〜+100℃、好ましくは10〜80℃である。開環重合を行う温度が低すぎると反応速度が低下し、高すぎると副反応により、分子量分布が広がるおそれがある。
重合時間は、特に制限はなく、通常1分間から100時間である。
重合時の圧力条件は特に限定されないが、通常0〜1MPaの加圧下で重合を行う。
反応終了後においては、通常の後処理操作により目的とするノルボルネン系開環重合体を単離することができる。
得られたノルボルネン系開環重合体は、次の水素化反応工程へ供される。
また後述するように、開環重合を行った反応溶液に水素化触媒を添加して、ノルボルネン系開環重合体を単離することなく、連続的に水素化反応を行うこともできる。
ノルボルネン系開環重合体の水素化反応は、ノルボルネン系開環重合体の主鎖及び/又は側鎖に存在する炭素−炭素二重結合に水素化する反応である。この水素化反応は、ノルボルネン系開環重合体の不活性溶媒溶液に水素化触媒を添加し、反応系内に水素を供給して行う。
水素化触媒としては、オレフィン化合物の水素化に際して一般に使用されているものであれば、均一系触媒、不均一系触媒のいずれも使用することができる。得られる重合体中の残留金属の除去等を考慮すると、不均一系触媒が好ましい。
均一系触媒としては、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の組み合わせ等の遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなる触媒系;ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の貴金属錯体触媒;等が挙げられる。
不均一触媒としては、例えば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナ等の、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、又はこれらの金属をカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタン等の担体に担持させた固体触媒系が挙げられる。
水素化触媒の使用量は、ノルボルネン系開環重合体100重量部に対し、通常0.05〜10重量部である。
水素化反応に用いる不活性有機溶媒としては、前述した2−ノルボルネンと置換基含有ノルボルネン系単量体との開環重合において用いることができる有機溶媒として例示した
ものと同様の、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン系芳香族炭化水素、含窒素炭化水素、エーテル類等が挙げられる。
水素化反応の温度は、使用する水素化触媒によって適する条件範囲が異なるが、水素化温度は、通常−20℃〜+300℃、好ましくは0℃〜+250℃である。水素化温度が低すぎると反応速度が遅くなるおそれがあり、高すぎると副反応が起こる可能性がある。
水素圧力は、通常0.01〜20MPa、好ましくは0.1〜10MPa、より好ましくは1〜5MPaである。水素圧力が低すぎると水素化速度が遅くなり、高すぎると高耐圧反応装置が必要となるので好ましくない。
ノルボルネン系開環重合体水素化物(以下、「開環重合体水素化物」ということがある)は、重合体中の炭素−炭素二重結合の水素化率が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上、特に好ましくは99.9%以上である。上記の範囲にあると、得られるフィルムは防湿性と耐溶剤性に優れる。
開環重合体水素化物の水素化率は、溶媒に重クロロホルムを用い、H−NMRにより測定して求めることができる。
水素化反応終了後は、反応溶液から水素化触媒等を濾別し、濾別後の重合体溶液から溶媒等の揮発成分を除去することにより、目的とする開環重合体水素化物を得ることができる。
溶媒等の揮発成分を除去する方法としては、凝固法や直接乾燥法等公知の方法を採用することができる。
凝固法は、重合体溶液を重合体の貧溶媒と混合することにより、重合体を析出させる方法である。用いる貧溶媒としては、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;等の極性溶媒が挙げられる。
凝固して得られた粒子状の成分は、例えば、真空中又は窒素中若しくは空気中で加熱して乾燥させて粒子状にするか、さらに必要に応じて溶融押出機から押し出してペレット状にすることができる。
直接乾燥法は、重合体溶液を減圧下加熱して溶媒を除去する方法である。この方法には、遠心薄膜連続蒸発乾燥機、掻面熱交換型連続反応器型乾燥機、高粘度リアクタ装置等の公知の装置を用いて行うことができる。真空度や温度はその装置によって適宜選択され、限定されない。
以上のようにして得られる開環重合体水素化物の2−ノルボルネン由来の繰り返し単位(A)の全繰り返し単位に対する存在割合は、90〜100重量%、好ましくは95〜99重量%、より好ましくは97〜99重量%であり、置換基含有ノルボルネン系単量体由来の繰り返し単位(B)の全繰り返し単位に対する存在割合は、0〜10重量%、好ましくは1〜5重量%、より好ましくは1〜3重量%である。
繰り返し単位(B)の存在割合が上記範囲であると、フィルムの機械的特性に優れ好ましい。繰り返し単位(B)の存在割合が多すぎると、フィルムの耐熱性が悪化するおそれがある。一方、繰り返し単位(B)の存在割合が少なすぎると、フィルムの機械的特性が低下するおそれがある。
得られる開環重合体水素化物は、その重量平均分子量(Mw)が、1,2,4−トリクロロベンゼンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算で、通常50,000〜200,000、好ましくは70,000〜180,000、より好ましくは80,000〜150,000である。
Mwが高すぎると、フィルムの加工性が悪化するおそれがある。また、Mwが低すぎると、フィルムの機械的特性、耐熱性が低下するおそれがあり、開環重合体水素化物が溶剤から析出し易くなり、ポリマー精製が困難になるおそれがある。
開環重合体水素化物は、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)が、通常1.5〜7.0、好ましくは2.0〜6.5、より好ましくは2.5〜6.0、さらに好ましくは2.5〜5.5である。
Mw/Mnが狭すぎると、フィルムの加工性が悪化するおそれがある。また、Mw/Mnが広すぎると、機械的特性が低下するおそれがある。
ちなみに、Mnは1,2,4−トリクロロベンゼンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算として測定した数平均分子量である。
開環重合体水素化物の融点は、110〜145℃、好ましくは120〜145℃、より好ましくは、130℃〜145℃である。上記の範囲にあると、フィルムの耐熱性に優れるため好ましい。
ちなみに、開環重合体水素化物の融点は、開環重合体水素化物の分子量、分子量分布、異性化率、組成比等により変化する。
開環重合体水素化物の異性化率は、通常0〜40%、好ましくは0〜20%、より好ましくは1〜10%、特に好ましくは3〜9%である。
異性化率は、溶媒に重クロロホルムを用い、13C−NMRにより測定した33.0ppmピーク積分値/(31.8ppmピーク積分値+33.0ppmピーク積分値)×100から算出することができる。
ちなみに、31.8ppmピークは、該重合体中の2−ノルボルネンの繰り返し単位のシス体由来のもの、33.0ppmピークは、該重合体中の2−ノルボルネンの繰り返し単位のトランス体由来のものである。
本発明では、開環重合により、実質的にシス体である開環重合体を合成し、これを水素化して開環重合体水素化物とすることが好ましい。水素化反応の際に、通常、トランス体への異性化が生じるが、この異性化を抑制して、トランス体の含有量を低く抑えることが好ましい。
開環重合体水素化物の異性化率が高すぎると、耐熱性が低下するおそれがある。一方、異性化率が低すぎると、開環重合体水素化物の有機溶剤に対する溶解性が低下し、析出するおそれがある。そのため、開環重合体水素化物の異性化率は、0%であってもよいが、10%以下の範囲内である程度の異性化率を示すものであることが好ましい。
異性化率を上記範囲にするためには、開環重合体の水素化反応において、反応温度を好ましくは120〜170℃、より好ましくは130〜160℃とし、かつ、使用する水素化触媒の使用量を、開環重合体100重量部に対し、好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは0.2〜1重量部とする。
用いる開環重合体水素化物は、異物が少ないことが好ましい。フィルム中の金属残渣や異物等は、電子部品への適用において電気特性の低下を招くおそれがある。重合反応後又は水素化反応後に、孔径が0.2μm以下のフィルターにて重合体溶液を濾過することによって金属残査や異物等を精密に取り除くことができる。
本発明に用いる開環共重合体水素化物は、融点を有する重合体、すなわち結晶構造を形成する重合体であるので、フィルム及びシートの成形体内部に結晶部を形成(結晶化)し、これと非晶部とが相俟って成形品の引張り破断伸び等の機械的特性が向上する。
フィルムが、厚さ100μmでの水蒸気透過度が0.40g/m・day以下、かつ厚さ100μmでのヘイズが20%以下であるためには、上記開環重合体水素化物を結晶化させる際に、核剤を存在させることにより、球晶サイズを制御することが重要となる。球晶サイズは、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下である。また、球晶サイズは、核剤を入れないで上述した開環重合体水素化物を結晶化させたときの球晶の好ましくは1/2以下、より好ましくは1/3である。尚、ここで球晶サイズは偏光顕微鏡を用いて結晶を観察し、測定するものとする。
核剤は、結晶化させたい開環重合体水素化物の融点より高い融点を有する粒子であれば特に制限はなく、タルク、ソルビトール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、有機リン酸の金属塩、有機カルボン酸の金属塩、マイカあるいはクレー、白土等の粘土等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、少なくとも2種を併用しても良い。
これらの中でも、核剤の長径が好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下のものを用いることで、厚さ100μmでの水蒸気透過度が0.40g/m・day以下、かつ厚さ100μmでのヘイズが20%以下のフィルムを得ることができる。
また、核剤は、開環重合体水素化物100重量部に対して、通常0.005〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.05〜1重量部の割合で添加する。
また、本発明のフィルムは、必要に応じて、酸化防止剤(安定剤)、架橋剤、発泡剤、難燃剤、熱可塑性樹脂や軟質重合体等のその他の重合体、滑剤等の配合剤や、染料、帯電防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、ワックス等の樹脂工業分野で通常使用されるその他の配合剤を含有していてもよい。
なお、本発明のフィルムを構成する重合体全体に対して、開環重合体水素化物の割合は、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
開環重合体水素化物に核剤及び必要に応じて用いられる配合剤を混合して樹脂組成物を調製する。樹脂組成物を調製する方法に特別な制限はないが、開環重合体水素化物、核剤及び配合剤を、単軸押出機、2軸押出機、ロール、バンバリーミキサー等の混練機によって溶融混合する方法が、生産性の観点から好適である。
配合剤と混合する際の開環重合体水素化物は、開環重合体水素化物を含む反応液から単離したものであっても、前記反応液から不溶物を濾過した溶液のものであっても、濾過前の反応溶液のものであってもよい。また、配合剤は、それぞれ適当な溶媒に溶解したものであってもよい。開環重合体水素化物の溶液及び/又は配合剤の溶液は、必要に応じて加熱して用いてもよい。
以上のようにして得られる樹脂組成物は、通常、取り扱いやすいようにペレットと呼ばれる米粒程度の大きさに加工された後、フィルム製造に供される。
本発明のフィルムを製造する方法に特に制限はなく、加熱溶融成形法、溶液流延法のいずれも用いることができる。
加熱溶融成形法は、上記のペレットを、重合体の融点(Tm)以上で、熱分解温度未満の温度に加熱して流動状態にしてフィルムに成形する方法である。
加熱溶融成形法には、押出成形法、カレンダー成形法、圧縮成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法等がある。
また、押出成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法等により製膜した後に、延伸成形法を行ってもよい。
加熱溶融成形法における加熱、加圧条件としては、成形機、用いる開環重合体水素化物の特性等により適宜選択すればよく、温度は、通常Tm〜(Tm+100℃)、好ましくは(Tm+20℃)〜(Tm+50℃)である。
成形時の圧力は、通常0.5〜100MPa、好ましくは1〜50MPaである。
加圧時間は、通常数秒から数十分程度である。
本発明に用いる開環共重合体水素化物は、Tmが比較的高く、耐熱性が高いが、200〜400℃の間で著しく低粘度になって流動性となる特徴を有している。
この理由は明確ではないが、結晶性を有するため液晶状態になり急激に粘度が下がるものと考えられる。そのため本発明の開環共重合体水素化物は溶融温度の高い樹脂であるにも拘らず、良く流動するので短時間でフィルムに成形することができる。
一方、溶液流延法は、本発明の樹脂組成物を有機溶媒に溶解して、このものを平面上又はロール上にキャスティングして、溶媒を加熱により除去してフィルム及びシートを成形する方法である。
用いる溶媒としては、2−ノルボルネンと置換基含有ノルボルネン系単量体との開環重合反応及び開環共重合体の水素化反応の溶媒として例示したものと同様の、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン系芳香族炭化水素、含窒素炭化水素、エーテル類等が挙げられる。
溶液流延法は、溶媒を揮散する温度が成形温度となり、その温度は使用する溶媒の種類によって適宜設定される。
また、成形後に、成形品の結晶性をより強く現出するために、成形体をアニール処理しても良い。
本発明の樹脂フィルムの厚みは特に限定されないが、通常1μmから20mm、好ましくは5μmから5mm、より好ましくは10μmから2mmである。フィルムとシートの区別に格別な規定はなく、厚みによって区別することもあるが、用途や業種における
慣習により呼称が変わるのが実状である。
フィルムの機械的強度や水蒸気バリア性を増大すべく、結晶化度を高めるために延伸を施しても良い。延伸とは、成形されたフィルムを、続いて1.1〜10倍程度伸張して塑性変形を与えることである。この塑性変形は、内部の摩擦で、結晶鎖は勿論、非晶鎖も引き伸ばして配向させる効果を有する。
本発明のフィルムにおいては、開環共重合体水素化物を含有する層と、その他の重合体を含有する層とを有する積層体であってもよい。
その他の重合体としては、ゴム質重合体又はその他の樹脂が挙げられ、それらの具体例は、いずれも本発明の開環共重合体水素化物に配合して使用できるものとして前記したものと同様である。
積層する層の数は、通常2層又は3層であるが、更に多層の積層体とすることもできる。3層以上の多層における重合体種による層の配置順序は、目的や用途により適宜設定することができる。
また、同種の重合体の層を他の重合体の層を隔てて配置してもよく、例えば、本発明の開環共重合体水素化物を含有する2つの層の間にポリスチレンを含む層を挟む3層の積層体や、さらにその一方の外側に水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体を含む層が積層された4層の積層体等が可能である。
積層方法としては、層と層の間に接着剤を塗布して貼り合わせる方法、単層もしくは複数層のフィルム又はシートを熱もしくは高周波により融点以上に加熱して融着する方法、開環共重合体水素化物又はその他の重合体のフィルム又はシートの表面に、その他の重合体又は開環共重合体水素化物を分散もしくは溶解させた有機溶媒を塗布して乾燥させる方法等がある。
また、押出機で開環共重合体水素化物とその他の重合体とを共押出して積層体を製造することもできる。
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、部又は%は、特に断りがない限り、重量基準である。
以下の実施例及び比較例において、各種物性の測定法は次のとおりである。
(1)開環(共)重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、トルエンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として測定した。
測定装置として、GPC−8020シリーズ(DP8020、SD8022、AS8020、CO8020、RI8020、東ソー社製)を用いた。
標準ポリスチレンとしては、東ソー社製標準ポリスチレン(Mwが500、2630、10200、37900、96400、427000、1090000、5480000のものの計8点)を用いた。
サンプルは、サンプル濃度1mg/mlになるように、測定試料をトルエンに溶解後、カートリッジフィルター(ポリテトラフルオロエチレン製、孔径0.5μm)で濾過して調製した。
測定は、カラムに、TSKgel GMHHR・H(東ソー社製)を2本直列に繋いで用い、流速1.0ml/分、サンプル注入量100μml、カラム温度40℃の条件で行った。
(2)開環(共)重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、1,2,4−トリクロロベンゼンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として測定した。
測定装置として、HLC8121GPC/HT(東ソー社製)を用いた。
標準ポリスチレンとしては、東ソー社製標準ポリスチレン(Mwが988、2580、5910、9010、18000、37700、95900、186000、351000、889000、1050000、2770000、5110000、7790000、20000000のものの計16点)を用いた。
サンプルは、サンプル濃度1mg/mlになるように、140℃にて測定試料を1,2,4−トリクロロベンゼンに加熱溶解させて調製した。
測定は、カラムに、TSKgel GMHHR・H(20)HT(東ソー社製)を3本直列に繋いで用い、流速1.0ml/min、サンプル注入量300μml、カラム温度140℃の条件で行った。
(3)開環共重合体水素化物の水素化率は、溶媒に重クロロホルムを用い、H−NMRにより測定して求めた。
(4)異性化率は、溶媒に重クロロホルムを用い、13C−NMRにより測定した33.0ppmピーク積分値/(31.8ppmピーク積分値+33.0ppmピーク積分値)×100から算出して求めた。
ちなみに、31.8ppmピークは、該重合体中の2−ノルボルネンの繰り返し単位のシス体由来のもの、33.0ppmピークは、該重合体中の2−ノルボルネンの繰り返し単位のトランス体由来のものである。
(5)融点は、示差走査熱量分析計(DSC6220、SIIナノテクノロジー社製)を用いて、JIS K 7121に基づき、試料を融点より30℃以上に加熱した後、冷却速度−10℃/分で室温まで冷却し、その後、昇温速度10℃/分で測定した。
(6)ガラス転移温度は、示差走査熱量分析計(DSC6220、SIIナノテクノロジー社製)を用いて、JIS K 6911に基づいて測定した。
(7)結晶核剤の平均長径は、試料をエポキシ樹脂で包埋し、ウルトラミクロトーム(ULTRACUT UCT、LEICA社製)で面出し操作を行い、その断面を電界放出型走査型電子顕微鏡(FE−SEM S−4700、日立製作所社製)で観察し、100個の結晶核剤から値を平均化した。
(8)球晶の平均長径は、試料をホットステージ付き偏光顕微鏡下で180℃5分間溶融後、90℃で結晶化させた際に形成する球晶を観察し、100個の球晶から値を平均化した。
(9)100μm厚のフィルムのヘイズは、ヘイズメータ(NDH2000、日本電色工業社製)を用いて測定した。
(10)水蒸気透過度(透湿度)は、100μm厚のフィルムを用いて、JIS K 7129(A法)に基づいて温度:40℃、湿度:90%RHの条件下の水蒸気透過度を水蒸気透過度テスター(L80−5000型、LYSSY社製)で測定した。透湿度(水蒸気透過度、[g/(m・24h)])が小さいと水蒸気バリア性が良好であることを示す。
実施例1
(開環重合)
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500部に、1−ヘキセン0.55部、ジイソプロピルエーテル0.30部、トリイソブチルアルミニウム0.20部、及びイソブチルアルコール0.075部を室温で反応器に入れ混合した。そこへ、2−ノルボルネン(以下、「2−NB」ということがある。)250部及び六塩化タングステン1.0%トルエン溶液15部を、55℃に保ちながら、2時間かけて連続的に添加し、重合を行った。
得られた開環重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、83,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。重合転化率は、ほぼ100%であった。
(水素化反応)
上記で得た重合反応液を耐圧の水素化反応器に移送し、そこへ、ケイソウ土担持ニッケル触媒(T8400、ニッケル担持率58%、日産ズードヘミー社製)0.5部を加え、160℃、水素圧4.5MPaで6時間反応させた。この溶液を、ラジオライト#500(昭和化学社製)を濾過床として、加圧濾過器(フンダフィルター、石川島播磨重工社製)を使用し、圧力0.25MPaで加圧濾過して、開環重合体水素化物(A)の無色透明な溶液を得た。
(重合体物性)
得られた開環重合体水素化物(A)の水素化率は99.9%、重量平均分子量(Mw)は、82,200、分子量分布(Mw/Mn)は2.9、異性化率は5%、融点は140℃であった。
(樹脂組成物の調製)
得られた溶液に、重合体固形分100部当り、酸化防止剤(テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、イルガノックス1010、チバガイギー社製)(以下「酸化防止剤(A)」と略す)0.1部、及び結晶核剤(日本タルク社製;MS、食添タルク;長径15μm)0.5重量部を加え、溶解させた。
(乾燥)
この溶液を金属ファイバー製フィルター(孔径0.5μm、ニチダイ社製)にて濾過した後、ろ液を「ゼータプラスフィルター30S」(孔径0.5〜1μm、キュノ社製)で濾過し、さらに、金属ファイバー製フィルター(孔径0.2μm、ニチダイ社製)で濾過して異物を除去した。得られたろ液を予備加熱装置で200℃に加熱し、圧力3MPaで薄膜乾燥機(日立製作所社製)に連続的に供給した。薄膜乾燥機の運転条件は、圧力13.4kPa下、内部の濃縮された重合体溶液の温度を240℃とした(第一段階乾燥)。
次に、濃縮された溶液を、薄膜乾燥機から連続的に導出し、さらに同型の薄膜乾燥機に温度240℃を保ったまま、圧力1.5MPaで供給した。運転条件は、圧力0.7kPa、温度240℃とした(第二段階乾燥)。
(ペレット化)
溶融状態の重合体を、薄膜乾燥機から連続的に導出し、クラス100のクリーンルーム内でダイから押し出し、水冷後、ペレタイザー(OSP−2、長田製作所社製)でカッティングして樹脂組成物(A)のペレットを得た。
(フィルム成形)
樹脂組成物(A)のペレットを、スクリュー径20mmφ、圧縮比3.1、L/D=30のスクリューを備えたハンガーマニュホールドタイプのTダイ式溶融押出成形機(据置型、GSIクレオス社製)を使用して以下の条件でTダイ成形を行い、単層シート(A)(厚さ100μm、ヘイズ17%)を得た。
<成形条件>
ダイリップ:0.8mm
溶融樹脂温度:170℃
Tダイの幅:300mm
Tダイ温度:200℃
冷却ロール:10℃
キャストロール:10℃
シート引き取り速度:2.5m/分
スクリュー圧縮比:3.1
得られた単層シート(A)から結晶核剤の平均長径、球晶の平均長径、水蒸気バリア性、ヘイズを評価した。評価結果を表1に示す。
実施例2
実施例1において、結晶核剤MS食添タルクの代わりに、結晶核剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;製品名TINUVIN144(ヒンダードアミン系化合物);長径1μm以下)0.5重量部とした以外は実施例1と同様にしてフィルムを製造し、評価を行った。
比較例1
実施例1において、結晶核剤を用いなかったこと以外は実施例1と同様にしてフィルムを製造し、評価を行った。
比較例2
実施例1において、結晶核剤MS食添タルクの代わりに、結晶核剤(日本タルク社製;MS−KY、タルク;長径24μm)0.5重量部とした以外は実施例1と同様にしてフィルムを製造し、評価を行った。
実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。
Figure 0005083530
第1表から、所定の結晶核剤を添加することで球晶サイズを小さくし、ヘイズを悪化させることなく厚さ100μm当たりの水蒸気透過度が0.40g/m2・day以下であり水蒸気バリア性に優れたフィルムが得られることがわかる。

Claims (1)

  1. 少なくとも2−ノルボルネン90〜100重量%と置換基含有ノルボルネン類10〜0重量%とを含有するモノマーを開環重合し、水素添加して得られた、融点が110〜145℃、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)が50,000〜200,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜10.0である、平均長径が20μm以下の核剤存在下で結晶化されたノルボルネン系開環水素化物からなる、JIS K 7129(A法)に従い、40℃、90%RH条件下で測定される、厚さ100μmでの水蒸気透過度が0.40g/m・day以下、かつ厚さ100μmでのヘイズが20%以下であるフィルム。
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