JP7247704B2 - 開環重合体水素化物、樹脂組成物、および成形体 - Google Patents
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Description
また、本発明において、シス構造単位(I)の「メソ・ダイアッドの割合」は、13C-NMR測定の際に観測されるメソ・ダイアッドのシグナル強度とラセモ・ダイアッドのシグナル強度の合計中に占めるメソ・ダイアッドのシグナル強度の割合として得ることができる。より具体的には、「式(I)で示されるシス―1,3―シクロペンタン構造を有する構造単位」の「メソ・ダイアッドの割合」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて特定することができる。
そして、本発明において、開環重合体水素化物中の金属量合計は、上述した通り、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)により測定することができ、具体的には、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
なお、本発明において、「重量平均分子量」は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される値であり、具体的には、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
なお、本発明において、シス構造単位(I)とトランス構造単位(II)の合計中に占めるトランス構造単位(II)の割合(異性化率)は、13C-NMR測定により得ることができる。より具体的には、異性化率は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて特定することができる。
なお、本発明において、「融点」は、示差走査熱量計により測定することができ、例えば、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
本発明の開環重合体水素化物は、各種成形体を構成する樹脂材料として様々な分野で用いることができる重合体である。そして、本発明の樹脂組成物は、本発明の開環重合体水素化物を含む。また、本発明の成形体は、本発明の開環重合体水素化物を成形して得られる。
本発明の開環重合体水素化物は、ノルボルネン由来の構造単位を90質量%以上含む。ここで、当該ノルボルネン由来の構造単位には、ノルボルネン単位が水素化して得られる、少なくとも下記式(I)で示されるシス構造単位(I)が含まれ、任意に、下記式(II)で示されるトランス構造単位(II)が含まれる。
そして、上述した性状を有する開環重合体水素化物は、ヒートシール性およびガスバリア性に優れるため、成形体の樹脂材料として有利に使用することができる。
本発明の開環重合体水素化物は、上述した通り、少なくともノルボルネンに由来する構造単位を含み、任意にノルボルネン以外の単量体(その他の単量体)に由来する構造単位を含んでいてもよい。
開環重合体水素化物は、全構造単位を100質量%として、ノルボルネン由来の構造単位を90質量%以上含むことが必要であり、93質量%以上含むことが好ましく、96質量%以上含むことがより好ましく、99質量%以上含むことが更に好ましい。開環重合体水素化物の全構造単位中に占めるノルボルネン由来の構造単位の割合が90質量%未満であると、融点および結晶化度の低下に起因して、開環重合体水素化物のガスバリア性が低下する。また、開環重合体水素化物の延性が低下する。
なお、開環重合体水素化物の全構造単位中に占めるノルボルネン由来の構造単位の割合の上限は特に限定されず、100質量%以下とすることができる。
開環重合体水素化物の調製に使用し得るその他の単量体としては、ノルボルネンと開環共重合可能であれば特に限定されない。その他の単量体としては、例えば、ノルボルネン骨格を有するノルボルネン以外の単量体(以下、「ノルボルネン系単量体」と称する。)が挙げられる。なお、その他の単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
縮合環非形成ノルボルネン系単量体としては、例えば、5-メチルノルボルネン、5-エチルノルボルネン、5-ブチルノルボルネン、5-ヘキシルノルボルネン、5-デシルノルボルネン、5-シクロヘキシルノルボルネン、5-シクロペンチルノルボルネン等のアルキル基を有するノルボルネン類;5-エチリデンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、5-プロペニルノルボルネン、5-シクロヘキセニルノルボルネン、5-シクロペンテニルノルボルネン等のアルケニル基を有するノルボルネン類;5-フェニルノルボルネン等の芳香環を有するノルボルネン類;5-メトキシカルボニルノルボルネン、5-エトキシカルボニルノルボルネン、5-メチル-5-メトキシカルボニルノルボルネン、5-メチル-5-エトキシカルボニルノルボルネン、ノルボルネニル-2-メチルプロピオネイト、ノルボルネニル-2-メチルオクタネイト、5-ヒドロキシメチルノルボルネン、5,6-ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5,5-ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5-ヒドロキシイソプロピルノルボルネン、5,6-ジカルボキシノルボルネン、5-メトキシカルボニル-6-カルボキシノルボルネン等の酸素原子を含む極性基を有するノルボルネン類;5-シアノノルボルネン等の窒素原子を含む極性基を有するノルボルネン類;が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
縮合環形成ノルボルネン系単量体としては、例えば下記式(III)および(IV)で示される単量体が挙げられる。
本発明の開環重合体水素化物は、ノルボルネン由来の構造単位に含まれるシス構造単位(I)のメソ・ダイアッドの割合が、0%以上30%以下又は70%以上100%以下であることが必要である、換言すると、本発明の開環重合体水素化物は、ノルボルネン由来の構造単位に含まれるシス構造単位(I)のメソ・ダイアッドの割合が、30%超70%未満の範囲内ではないことが必要である。シス構造単位(I)のメソ・ダイアッドの割合が30%超70%未満であると、開環重合体水素化物中のシス構造単位(I)により形成される分子鎖部分の立体規則性が低下する(即ち、シス構造単位(I)により形成される分子鎖部分がアタクチックな構造をとる)。そのような立体規則性の低下が関与していると推察されるが、シス構造単位(I)のメソ・ダイアッドの割合が30%超70%未満であると、開環重合体水素化物のヒートシール性が低下する。一方、シス構造単位(I)のメソ・ダイアッドの割合が、0%以上30%以下である(即ち、シス構造単位(I)により形成される分子鎖部分がシンジオタクチックな構造をとる)か、又は、70%以上100%以下である(即ち、シス構造単位(I)により形成される分子鎖部分がイソタクチックな構造をとる)ことにより、本発明の開環重合体水素化物は優れたヒートシール性を有しうる。
ここで、シス構造単位(I)のメソ・ダイアッドの割合は0%以上30%以下の範囲内である場合、当該割合は、例えば、10%以上とすることができ、25%以下とすることができる。
また、シス構造単位(I)のメソ・ダイアッドの割合は70%以上100%以下の範囲内である場合、当該割合は、例えば、75%以上とすることができ、90%以下とすることができる。
更に、比較的低温条件(例えば、ヒートシールの温度が150℃~170℃程度)でのヒートシール性を十分に向上させる観点からは、シス構造単位(I)のメソ・ダイアッドの割合は0%以上30%以下であることが好ましい。
なお、開環重合体水素化物におけるシス構造単位(I)のメソ・ダイアッドの割合は、開環重合体水素化物の製造方法を変更することで調整することができる。例えば、開環重合体水素化物の前駆体である開環重合体を調製する際の開環重合触媒の種類を変更することで調整することができる。
本発明の開環重合体水素化物は、シス構造単位(I)とトランス構造単位(II)の合計中に占めるトランス構造単位(II)の割合(異性化率)が、0.5%以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましく、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましい。異性化率が上述した範囲内であると、開環重合体水素化物の延性が向上する。
なお、開環重合体水素化物の異性化率は、開環重合体水素化物の製造方法を変更することで調整することができる。例えば、前駆体である開環重合体に水素添加反応に供して水素化する際に用いる水素化触媒の種類および/または量を変更することで、調整することができる。
本発明の開環重合体水素化物は、重量平均分子量が、10,000以上であることが好ましく、15,000以上であることがより好ましく、20,000以上であることが更に好ましく、25,000以上であることが特に好ましく、1,000,000以下であることが好ましく、500,000以下であることがより好ましく、300,000以下であることが更に好ましく、200,000以下であることがより一層好ましく、150,000以下であることが特に好ましい。重量平均分子量が10,000以上であれば、開環重合体水素化物のヒートシール性を更に高めつつ、延性を向上させることができ、重量平均分子量が1,000,000以下であれば、開環重合体水素化物の加工性を十分に確保することができる。
なお、開環重合体水素化物の重量平均分子量は、開環重合体水素化物の製造方法を変更することで調整することができる。例えば、開環重合体水素化物の前駆体である開環重合体を調製する際の開環重合触媒や分子量調整剤などの種類および/または量を変更することで調整することができる。
本発明の開環重合体水素化物は、結晶性であることが好ましい。ここで、重合体が「結晶性」であるとは、測定条件等を最適化することにより、示差走査熱量測定(DSC)で融点を観測することができることをいい、重合体鎖の立体規則性により定まる性質である。
そして、本発明の開環重合体水素化物は、融点が、110℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることが更に好ましく、200℃以下であることが好ましく、190℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることが更に好ましく、融点が110℃以上であれば、開環重合体水素化物の耐熱性を確保することができ、200℃以下であれば、開環重合体水素化物のヒートシール性を更に向上させることができる。
なお、開環重合体水素化物の融点は、開環重合体水素化物の製造方法を変更することで調整することができる。例えば、開環重合体水素化物の前駆体である開環重合体を調製する際の開環重合触媒や分子量調整剤などの種類および/または量を変更することで調整することができる。
本発明の開環重合体水素化物は、誘導結合プラズマ発光分析法により測定される、タングステン、アルミニウム、ルテニウム、リン、クロム、鉄、ニッケル、モリブデン、およびリチウムの含有量の合計(金属量合計)が、50質量ppm以下であることが必要であり、40質量ppm以下であることが好ましく、30質量ppm以下であることがより好ましい。金属量合計が50質量ppmを超えると、開環重合体水素化物のガスバリア性が低下する。なお、本発明の開環重合体水素化物は、例えば、開環重合で用いる開環重合触媒や、水素添加反応で用いる水素化触媒に由来して、金属量合計が、通常0.001質量ppm以上となる。
なお、開環重合体水素化物に含まれる金属量合計の量は、例えば、水素添加反応後にろ過を行うことにより低減することができる。
本発明の開環重合体水素化物の水素化率(前駆体である開環重合体の炭素-炭素二重結合に占める水素化されたものの割合)は、通常90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上である。
なお、本発明において、開環重合体水素化物の水素化率は、1H-NMR測定により特定することができる。
また、開環重合体水素化物の水素化率は、例えば、水素添加反応の条件を変更することで調整することができる。
本発明の開環重合体水素化物は、ノルボルネンを含む単量体組成物を開環重合し、得られた開環重合体を水素添加反応に供することで、調製することができる。なお、水素添加反応後には、必要に応じて後処理を行ってもよい。
ノルボルネンを含む単量体組成物の開環重合は、開環重合触媒を用いて行うことができる。なお、開環重合に際しては、重合系内に分子量調整剤などの重合助剤を添加してもよい。また、開環重合は、無溶媒で行ってもよいし、溶媒の存在下で行ってもよい。
開環重合触媒は、ノルボルネンを含む単量体組成物を開環重合可能であり、且つ所定の性状を有する開環重合体水素化物の前駆体として使用し得る開環重合体を得ることができれば特に限定されないが、メソ・ダイアッドの割合が所定の範囲内である開環重合体水素化物を効率良く得る観点から、開環重合体の調製に用いる開環重合触媒としては、開環重合体に立体規則性を付与し得る開環重合触媒が好ましい。このように、開環重合体に立体規則性を付与し得る開環重合触媒としては、周期表第6族の遷移金属を含む錯体触媒(例えば、特開2007-137935号公報、特開2002-249553号公報、国際公開第2015/127192号、Macromolecules, 2015, 48 (8), pp 2480-2492に記載されたもの)が挙げられる。
錯体触媒に(中心原子として)含まれる、周期表第6族の遷移金属としては、クロム、タングステン、モリブデンを挙げることができるが、タングステン、モリブデンが好ましい。
また、開環重合触媒としては、触媒活性を高めるべく、上述した周期表第6族の遷移金属を含む錯体触媒を当該錯体触媒以外の共触媒と組み合わせて用いることが好ましい。
有機マグネシウム化合物としては、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n-ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド、ネオペンチルマグネシウムクロリド、ネオフィルマグネシウムクロリド等が挙げられる。
有機亜鉛化合物としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛が挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジエトキシド等が挙げられる。
有機スズ化合物としては、テトラメチルスズ、テトラ(n-ブチル)スズ、テトラフェニルスズ等が挙げられる。
開環重合に際し任意に使用することができる分子量調整剤としては、例えば、ビニル化合物、ジエン化合物が挙げられる。
ジエン化合物としては、例えば、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、2,5-ジメチル-1,5-ヘキサジエン等の非共役ジエン;1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等の共役ジエン;等が挙げられる。
分子量調整剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。そして、分子量調整剤としては、α-オレフィン類が好ましく、1-オクテンがより好ましい。
開環重合は、反応を良好に制御することができる観点から、溶媒、特には有機溶媒中で行うことが好ましい。
用いる有機溶媒としては、得られる開環重合体を溶解又は分散させることができ、重合反応に不活性なものであれば、特に限定されない。具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系脂肪族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系芳香族炭化水素系溶媒;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素炭化水素系溶媒;ジエチルエ-テル、テトラヒドロフラン等のエ-テル系溶媒;アニソール、フェネトール等の芳香族エーテル系溶媒;等が挙げられる。溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。そして、溶媒としては、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、又は芳香族エーテル系溶媒が特に好ましい。
なお、開環重合の条件(上述した各成分の使用量、重合時間および重合温度など)は、特に限定されず、開環重合体および開環重合体水素化物の所望の物性に応じて、適宜設定することができる。
上述の開環重合を経て得られた開環重合体を水素添加反応に供することで、開環重合体水素化物を得ることができる。ここで、水素添加反応は、例えば、上述の開環重合後に得られた開環重合体と溶媒を含む重合体溶液(または重合体分散液)に、水素化触媒の存在下で水素ガスを供給することで行うことができる。
なお、水素添加反応の際の溶媒は、特に限定されることなく、例えば、上述の開環重合の際に用いた溶媒(特には有機溶媒)をそのまま用いることができる。
水素化触媒としては、特に限定されず、オレフィン化合物の水素添加反応に一般的に使用されているものを使用することができる、例えば、酢酸コバルトとトリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナートとトリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリドとn-ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリドとsec-ブチルリチウム、テトラブトキシチタネートとジメチルマグネシウム等の遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなるチーグラー系触媒;ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、特開平7-2929号公報、特開平7-149823号公報、特開平11-209460号公報、特開平11-158256号公報、特開平11-193323号公報、特開平11-209460号公報等に記載されるルテニウム化合物からなる貴金属錯体触媒;等の均一系触媒;ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム等の金属を、カーボン、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン等の担体に担持させた担持型不均一系触媒;等が挙げられる。
担持型不均一系触媒としては、具体的には、ニッケル/シリカ、ニッケル/珪藻土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/珪藻土、パラジウム/アルミナ等の組み合わせが好ましく挙げられる。
なお、水素添加反応の条件(水素化触媒の使用量、反応時間、反応温度、水素圧力など)は、特に限定されず、開環重合体水素化物の所望の物性(例えば、水素化率や異性化率)に応じて、適宜設定することができる。
上述した開環重合および水素添加反応後に、必要に応じて後処理を行うことにより、目的とする開環重合体水素化物を良好に単離することができる。例えば、不均一系触媒を用いた場合には、上記水素添加反応に、ろ過して水素化触媒を除去し、続いて凝固乾燥法、又は薄膜乾燥機等を用いた直接乾燥法にて得ることができる。また、水素化触媒として均一系触媒を用いた場合は、水素添加反応後に、アルコールや水を添加して触媒を失活させ、溶剤に不溶化させた後にろ過を行い触媒を除去する。開環重合体水素化物は、通常、パウダー状又はペレット状で得ることができる。
本発明の樹脂組成物は、上述した本発明の開環重合体水素化物を含み、任意に、既知の添加剤を含むことができる。そして、本発明の樹脂組成物は、本発明の開環重合体水素化物を含むので、ヒートシール性およびガスバリア性に優れる成形体の材料として有利に使用することができる。
本発明の成形体は、上述した本発明の樹脂組成物を用いて形成される。そして、本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物を成形してなるものであるため、ヒートシール性およびガスバリア性に優れる。
光ディスク、光学レンズ、プリズム、光拡散板、光カード、光ファイバー、光学ミラー、液晶表示素子基板、導光板、偏光フィルム、位相差フィルム等の光学材料;
液体、粉体、又は固体薬品の容器(注射用の液体薬品容器、アンプル、バイアル、プレフィルドシリンジ、輸液用バッグ、多層フィルムの内層、中間層、外層、シーラントフィルム、密封薬袋、プレス・スルー・パッケージ、固体薬品容器、点眼薬容器等)、サンプリング容器(血液検査用サンプリング試験管、薬品容器用キャップ、採血管、検体容器等)、医療器具(注射器等)、医療器具等の滅菌容器(メス用、鉗子用、ガーゼ用、コンタクトレンズ用等)、実験・分析器具(ビーカー、シャーレ、フラスコ、試験管、遠心管等)、医療用光学部品(医療検査用プラスチックレンズ等)、配管材料(医療用輸液チューブ、配管、継ぎ手、バルブ等)、人工臓器やその部品義(歯床、人工心臓、人造歯根等)等の医療用器材;
ボトル、リターナブルボトル、哺乳瓶、フィルム、シュリンクフィルム等の食品用容器;
処理用又は移送用容器(タンク、トレイ、キャリア、ケース等)、保護材(キャリアテープ、セパレーション・フィルム等)、配管類(パイプ、チューブ、バルブ、流量計、フィルター、ポンプ等)、液体用容器類(サンプリング容器、ボトル、アンプルバッグ等)の電子部品処理用器材;
被覆材(電線用、ケーブル用等)、民生用・産業用電子機器匡体(複写機、コンピューター、プリンター、テレビ、ビデオデッキ、ビデオカメラ等)、構造部材(パラボラアンテナ構造部材、フラットアンテナ構造部材、レーダードーム構造部材等)等の電気絶縁材料;
一般回路基板(硬質プリント基板、フレキシブルプリント基板、多層プリント配線板等)、高周波回路基板(衛星通信機器用回路基板等)等の回路基板;透明導電性フィルム(液晶基板、光メモリー、面発熱体等)の基材;
半導体封止材(トランジスタ封止材、IC封止材、LSI封止材、LED封止材等)、電気・電子部品の封止材(モーター封止材、コンデンサー封止材、スイッチ封止材、センサー封止材等)の封止材;
ルームミラーやメーター類のカバー等自動車用内装材料;ドアミラー、フェンダーミラー、ビーム用レンズ、ライト・カバー等自動車用外装材料;が挙げられる。
実施例および比較例において、開環重合体の共重合組成比、開環重合体水素化物の水素化率、重量平均分子量、融点、シス構造単位(I)のメソ・ダイアッドの割合、異性化率、および金属量合計、並びに、成形体のガスバリア性(水蒸気バリア性)、ヒートシール性、および破断伸び(延性)は、以下の方法を使用して測定および評価した。
1H-NMR測定に基づき、ノルボルネン単位に由来する水素原子の数と、その他の単量体単位に由来する水素原子の数の比を求め、その比に基づいて開環重合体の共重合組成比を算出した。
なお、測定用の開環重合体は、開環重合体を含む重合反応液に大量のアセトンを注いで得られる凝集物をろ取し、このろ取物をメタノールで洗浄後、40℃で24時間減圧乾燥することで採取した。
<水素化率>
1H-NMR測定に基づいて算出した。
<重量平均分子量>
開環重合体水素化物の重量平均分子量は、1,2,4-トリクロロベンゼンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として測定した。測定装置として、HLC8121GPC/HT(東ソー社製)を用いた。
サンプルは、サンプル濃度1mg/mlになるように、140℃にて測定試料を1,2,4-トリクロロベンゼンに加熱溶解させて調製した。
測定は、カラムに、TSKgelGMHHR・H(20)HT(東ソー社製)を3本直列に繋いで用い、流速1.0ml/分、サンプル注入量300μl、カラム温度140℃の条件で行った。
<融点>
開環重合体水素化物の融点は、樹脂の熱履歴の有無にかかわらず、示差走査熱量計(DSC;X-DSC7000、エスアイアイナノテクノロジー社製)を用いて、10℃/分の速度で昇温して測定し、結晶の融解の一次相転移ピークにおいて吸熱熱量の最も大きな温度点を融点とした。
<シス構造単位(I)のメソ・ダイアッドの割合>
開環重合体水素化物のシス構造単位(I)のメソ・ダイアッドの割合は、13C-NMR測定(溶媒:重クロロホルム、測定温度:60℃)により算出した。具体的には、得られたNMRスペクトルにおいて、31.712ppmに観測されるメソ・ダイアッドのシグナル強度を、31.724ppmに観測されるラセモ・ダイアッドのシグナル強度と上記31.712ppmに観測されるメソ・ダイアッドのシグナル強度の合計で除した値に100を乗ずることで、メソ・ダイアッドの割合(百分率)を算出した。
なお、開環重合体水素化物の溶媒に対する溶解性が低く、高温で溶解させる必要がある場合は、溶媒を重テトラクロロエタン、測定温度を125℃とした13C-NMR測定により算出した。かかる場合、具体的には、得られたNMRスペクトルにおいて、40.315ppmに観測されるメソ・ダイアッドのシグナル強度を、40.310ppmに観測されるラセモ・ダイアッドのシグナル強度と上記40.315ppmに観測されるメソ・ダイアッドのシグナル強度の合計で除した値に100を乗ずることで、メソ・ダイアッドの割合(百分率)を算出した。
なお、13C-NMRにおける各シグナルの化学シフトは、測定環境や解析プロセスにより多少の変動がある。
<異性化率>
開環重合体水素化物の異性化率は、13C-NMR測定(溶媒:重クロロホルム、測定温度:60℃)測定により算出した。具体的には、得られたNMRスペクトルにおいて、32.96~33.01ppmに観測されるトランス構造単位(II)のシグナル強度を、31.70~31.73ppmに観測されるシス構造単位(I)のシグナル強度と上記32.96~33.01ppmに観測されるトランス構造単位(II)のシグナル強度との合計で除した値に100を乗ずることで、異性化率(百分率)を算出した。
なお、開環重合体水素化物の溶媒に対する溶解性が低く、高温で溶解させる必要がある場合は、溶媒を重テトラクロロエタン、測定温度を125℃とした13C-NMR測定により算出した。かかる場合、具体的には、得られたNMRスペクトルにおいて、32.72ppmに観測されるトランス構造単位(II)のシグナル強度を、31.66ppmに観測されるシス構造単位(I)のシグナル強度と上記32.72ppmに観測されるトランス構造単位(II)のシグナル強度との合計で除した値に100を乗ずることで、異性化率(百分率)を算出した。
<金属量合計>
開環重合体水素化物中に含まれる所定の金属の量を、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)により下記の手順で測定した。
開環重合体水素化物約0.45gからなる7mm×20mm程度の試験片を、メスフラスコAに秤量した。なお、空試験用のメスフラスコBも別途用意した。メスフラスコA中の試験片を硫酸および硝酸で湿式分解し、放冷後、超純水で10Lに定溶した。得られた試料を適宜希釈して、ICP発光分光分析装置を用いて下記の測定条件で分析を行った。なお、空試験用のメスフラスコBについても同量の硫酸および硝酸を投入し、超純水で10Lに定溶した。
検量線:内標準検量線法
測定波長:207.912nm(タングステン)、396.152nm(アルミニウム)、240.272nm(ルテニウム)、213.618nm(リン)、205.560nm(クロム)、238.204nm(鉄)、231.604nm(ニッケル)、202.032nm(モリブデン)、610.365nm(リチウム)
<ガスバリア性(水蒸気バリア性)>
開環重合体水素化物の単層フィルムについて、JIS K 7129(A法)に基づいて温度:40℃、湿度:90%RHの条件下の水蒸気透過度を、水蒸気透過度テスタ-(L80-5000型、LYSSY社製)を用いて測定した。水蒸気透過度の値が小さいほど、ガスバリア性(水蒸気バリア性)に優れることを示す。
<ヒートシール性>
開環重合体水素化物の単層フィルムから幅15mm、長さ100mmの試験片を切り出し、JIS Z 0238に準じて、ヒートシール部のシール強度(N/15mm)を引張速度100mm/分、幅15mmにて測定した。なお、ヒートシール条件は、190℃の温度において、圧力0.3MPaで2秒間加熱および加圧するものとした。シール強度の値が大きいほど、ヒートシール性に優れることを示す。
<破断伸び(延性)>
開環重合体水素化物の単層フィルムを打ち抜き、JIS K 7127の試験片(タイプ5)を作製した。この試験片について、テンシロン万能試験機(ORIENTIC社製、製品名「RTC-1125A」)を用いて、23℃、引張速度:50mm/分、チャック間距離;50mmの条件下で、破断するまで引張り試験を行った。破断時の伸びを破断伸び(%)とした。
反応器に、ビス{3,3’-ジ(t-ブチル)-5,5’,6,6’-テトラメチル-2,2’-ビフェノキシ}オキシモリブデン(VI)0.6部およびトルエン49部を添加し、これを-78℃に冷却した。この反応器に、n-ブチルリチウム0.096部をヘキサン9部に溶解したものを添加して、温度を室温まで戻し、15分間反応させた。次いで、得られた反応混合物に、ノルボルネン99部、ジシクロペンタジエン1部、シクロヘキサン360部および1-ヘキセン8.6部を添加し、50℃において重合反応を行い、開環重合体を含む重合反応液を得た。なお重合反応開始後、徐々に混合物の粘度が上昇した。得られた開環重合体におけるノルボルネン単位と、ジシクロペンタジエン単位の質量比率は、99:1であった。
攪拌機付きオートクレーブに、上記で得た重合反応液(開環重合体を98部含む)を沈殿させずに移送し、そこへ、珪藻土担持ニッケル触媒(T8400、ニッケル担持率58重量%、日産ズードヘミー社製)3部を加え、200℃、水素圧4.5MPaで8時間反応させた。この溶液を、別途添加した珪藻土1部をろ過助剤として、ステンレス製金網をそなえたろ過器によりろ過し、得られた反応溶液を0.13×103Pa以下、100℃に設定した減圧乾燥器中で48時間乾燥し、開環重合体水素化物100部を得た。
上記で得た開環重合体水素化物100部に、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、イルガノックス1010、BASF社製)0.1部を加え、ヘッド部にTダイを備えた2軸押出機(HK20、パーカーコーポレーション社製)を用いて305℃で押出し、開環重合体水素化物の単層フィルム(厚み100μm)を製膜し、各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
ビス{3,3’-ジ(t-ブチル)-5,5’,6,6’-テトラメチル-2,2’-ビフェノキシ}オキシモリブデン(VI)0.6部に替えて、ビス{3,3’,5,5’-テトラメチル-2,2’-ビフェノキシ}オキシモリブデン(VI)0.45部を使用した以外は、実施例1と同様にして、開環重合体、開環重合体水素化物、および開環重合体水素化物の単層フィルムを得た。得られた開環重合体におけるノルボルネン単位と、ジシクロペンタジエン単位の質量比率は、99:1であった。また、得られた開環重合体水素化物の単層フィルムについて各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
ビス{3,3’-ジ(t-ブチル)-5,5’,6,6’-テトラメチル-2,2’-ビフェノキシ}オキシモリブデン(VI)0.6部に替えて、ビス{3,3’,5,5’-テトラメチル-2,2’-ビフェノキシ}オキシモリブデン(VI)0.35部およびフェニルイミドタングステン(VI)テトラクロリドテトラヒドロフラン(「タングステン(フェニルイミド)(テトラクロリド)(テトラヒドロフラン)」ともいう。以下同じ。)0.05部を使用した以外は、実施例1と同様にして、開環重合体、開環重合体水素化物、および開環重合体水素化物の単層フィルムを得た。得られた開環重合体におけるノルボルネン単位と、ジシクロペンタジエン単位の質量比率は、99:1であった。また、得られた開環重合体水素化物の単層フィルムについて各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
反応器Aに、フェニルイミドタングステン(VI)テトラクロリドテトラヒドロフラン0.44部およびトルエン60部を入れ、撹拌した。次いで、別の反応器Bに、シクロヘキサン360部および1-オクテン2.9部、並びにジエチルアルミニウムエトキシド0.29部をn-ヘキサン8.7部に溶解したものを添加した。次に、反応器A中のフェニルイミドタングステン(VI)テトラクロリドテトラヒドロフランのトルエン溶液と、ノルボルネン99部と、ジシクロペンタジエン1部とを2時間かけて反応器Bに添加し、50℃において2時間の重合反応を行い、開環重合体を含む重合反応液を得た。なお重合反応開始後、徐々に混合物の粘度が上昇した。得られた開環重合体におけるノルボルネン単位と、ジシクロペンタジエン単位の質量比率は、99:1であった。
攪拌機付きオートクレーブに、上記で得た重合反応液(開環重合体を98部含む)を沈殿させずに移送し、そこへ、珪藻土担持ニッケル触媒(T8400、ニッケル担持率58重量%、日産ズードヘミー社製)2部を加え、200℃、水素圧4.5MPaで8時間反応させた。この溶液を、別途添加した珪藻土1部をろ過助剤として、ステンレス製金網をそなえたろ過器によりろ過し、得られた反応溶液を0.13×103Pa以下、100℃に設定した減圧乾燥器中で48時間乾燥し、開環重合体水素化物100部を得た。
上記で得た開環重合体水素化物100部に、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、イルガノックス1010、BASF社製)0.1部を加え、ヘッド部にTダイを備えた2軸押出機(HK20、パーカーコーポレーション社製)を用いて305℃で押出し、開環重合体水素化物の単層フィルム(層厚100μm)を製膜し、各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
フェニルイミドタングステン(VI)テトラクロリドテトラヒドロフランの使用量を0.44部から0.37部に変更し、1-オクテンの使用量を2.9部から2.4部に変更した以外は、実施例4と同様にして、開環重合体、開環重合体水素化物、および開環重合体水素化物の単層フィルムを得た。得られた開環重合体におけるノルボルネン単位と、ジシクロペンタジエン単位の質量比率は、99:1であった。また、得られた開環重合体水素化物の単層フィルムについて各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
ろ過助剤としての珪藻土の使用量を1部から0.75部に変更した以外は、実施例5と同様にして、開環重合体、開環重合体水素化物、および開環重合体水素化物の単層フィルムを得た。得られた開環重合体におけるノルボルネン単位と、ジシクロペンタジエン単位の質量比率は、99:1であった。また、得られた開環重合体水素化物の単層フィルムについて各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
ろ過助剤としての珪藻土の使用量を1部から0.55部に変更した以外は、実施例5と同様にして、開環重合体、開環重合体水素化物、および開環重合体水素化物の単層フィルムを得た。得られた開環重合体におけるノルボルネン単位と、ジシクロペンタジエン単位の質量比率は、99:1であった。また、得られた開環重合体水素化物の単層フィルムについて各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
1-オクテンの使用量を2.4部から2.9部に変更した以外は、実施例5と同様にして、開環重合体、開環重合体水素化物、および開環重合体水素化物の単層フィルムを得た。得られた開環重合体におけるノルボルネン単位と、ジシクロペンタジエン単位の質量比率は、99:1であった。また、得られた開環重合体水素化物の単層フィルムについて各種測定および評価を行った。結果を表2に示す。
フェニルイミドタングステン(VI)テトラクロリドテトラヒドロフランをフェニルイミドタングステン(VI)テトラクロリドジエチルエーテル(「タングステン(フェニルイミド)(テトラクロリド)(ジエチルエーテル)」ともいう。)に変更し、1-オクテンの使用量を2.4部から2.9部に変更した以外は、実施例5と同様にして、開環重合体、開環重合体水素化物、および開環重合体水素化物の単層フィルムを得た。得られた開環重合体におけるノルボルネン単位と、ジシクロペンタジエン単位の質量比率は、99:1であった。また、得られた開環重合体水素化物の単層フィルムについて各種測定および評価を行った。結果を表2に示す。
フェニルイミドタングステン(VI)テトラクロリドテトラヒドロフラン0.37部を下記式(V)で示される錯体触媒0.22部に変更し、1-オクテンの使用量を2.4部から11.7部に変更し、そしてジエチルアルミニウムエトキシドを使用しなかった以外は、実施例5と同様にして、開環重合体、開環重合体水素化物、および開環重合体水素化物の単層フィルムを得た。得られた開環重合体におけるノルボルネン単位と、ジシクロペンタジエン単位の質量比率は、99:1であった。また、得られた開環重合体水素化物の単層フィルムについて各種測定および評価を行った。結果を表2に示す。
珪藻土担持ニッケル触媒の使用量を2部から20部に変更した以外は、実施例5と同様にして、開環重合体、開環重合体水素化物、および開環重合体水素化物の単層フィルムを得た。得られた開環重合体におけるノルボルネン単位と、ジシクロペンタジエン単位の質量比率は、99:1であった。また、得られた開環重合体水素化物の単層フィルムについて各種測定および評価を行った。結果を表2に示す。
ろ過助剤としての珪藻土の使用量を1部から0.5部に変更した以外は、実施例2と同様にして、開環重合体、開環重合体水素化物、および開環重合体水素化物の単層フィルムを得た。得られた開環重合体におけるノルボルネン単位と、ジシクロペンタジエン単位の質量比率は、99:1であった。また、得られた開環重合体水素化物の単層フィルムについて各種測定および評価を行った。結果を表2に示す。
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500部に、1-ヘキセン0.55部、ジイソプロピルエーテル0.40部、トリイソブチルアルミニウム0.28部、
イソブチルアルコール0.10部を室温で反応器に入れ混合した後、55℃に保ちながら、ノルボルネン247.5部、ジシクロペンタジエン2.5部、および六塩化タングステン1.0%トルエン溶液20部を2時間かけて連続的に添加して、重合反応を行い、開環重合体を含む重合反応液を得た。重合転化率は、ほぼ100%であった。得られた開環重合体におけるノルボルネン単位と、ジシクロペンタジエン単位の質量比率は、99:1であった。
上記で得た重合反応液を耐圧の水素化反応器に移送し、そこへ、珪藻土担持ニッケル触媒(T8400、ニッケル担持率58重量%、日産ズードヘミー社製)0.5部を加え、160℃、水素圧4.5MPaで6時間反応させた。この溶液を、別途添加した珪藻土1部をろ過助剤として、ステンレス製金網をそなえたろ過器によりろ過し、触媒を除去した。得られた反応溶液を0.13×103Pa以下、100℃に設定した減圧乾燥器中で48時間乾燥し、開環重合体水素化物190部を得た。
上記で得た開環重合体水素化物100部に、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、イルガノックス1010、BASF社製)0.1部を加え、ヘッド部にTダイを備えた2軸押出機(HK20、パーカーコーポレーション社製)を用いて305℃で押出し、開環重合体水素化物の単層フィルム(厚み100μm)を製膜し、各種測定および評価を行った。結果を表2に示す。
ろ過助剤としての珪藻土の使用量を1部から0.5部に変更した以外は、実施例5と同様にして、開環重合体、開環重合体水素化物、および開環重合体水素化物の単層フィルムを得た。得られた開環重合体におけるノルボルネン単位と、ジシクロペンタジエン単位の質量比率は、99:1であった。また、得られた開環重合体水素化物の単層フィルムについて各種測定および評価を行った。結果を表2に示す。
「W」は、タングステンを示し、
「Ru」は、ルテニウムを示し、
「Al」は、アルミニウムを示し、
「Fe」は、鉄を示し、
「P」は、リンを示し、
「Cr」は、クロムを示し、
「Ni」は、ニッケルを示し、
「Mo」は、モリブデンを示し、
「Li」は、リチウムを示す。
一方で、金属量合計が所定の上限値を超える比較例1、3の開環重合体水素化物は、ガスバリア性に劣ることが分かる。
また、シス構造単位(I)におけるメソ・ダイアッドの割合が所定の範囲外である比較例2の開環重合体水素化物は、ヒートシール性に劣ることが分かる。
Claims (5)
- ノルボルネン由来の構造単位を90質量%以上含む開環重合体水素化物であって、
前記ノルボルネン由来の構造単位に含まれる下記式(I)で示されるシス―1,3―シクロペンタン構造を有する構造単位のメソ・ダイアッドの割合が、0%以上30%以下又は70%以上100%以下であり、
下記式(I)で示される前記シス―1,3―シクロペンタン構造を有する構造単位と、下記式(II)で示されるトランス―1,3―シクロペンタン構造を有する構造単位の合計中に占める、式(II)で示される前記トランス―1,3―シクロペンタン構造を有する構造単位の割合が、0.5%以上20%以下であり、
誘導結合プラズマ発光分析法により測定される、タングステン、アルミニウム、ルテニウム、リン、クロム、鉄、ニッケル、モリブデン、およびリチウムの含有量の合計が、0.001質量ppm以上50質量ppm以下である、開環重合体水素化物。
- 重量平均分子量が、10,000以上1,000,000以下である、請求項1に記載の開環重合体水素化物。
- 融点が110℃以上200℃以下である、請求項1又は2に記載の開環重合体水素化物。
- 請求項1~3の何れかに記載の開環重合体水素化物を含む、樹脂組成物。
- 請求項4に記載の樹脂組成物を用いて形成される、成形体。
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