JP2009179650A - 重合体組成物およびそれを用いてなるフィルム - Google Patents

重合体組成物およびそれを用いてなるフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】透明性と低い水蒸気透過度とを両立させたフィルムを提供する。
【解決手段】2−ノルボルネンが90〜100重量%と置換基含有ノルボルネン類が10〜0重量%とを含有してなる重合性単量体を開環重合し、水素添加して得られる、融点が110〜145℃、重量平均分子量が50,000〜200,000、重量平均分子量/数平均分子量が1.5〜10.0である結晶性ノルボルネン系開環重合体(1)と、2−ノルボルネン化合物とジシクロペンタジエン化合物との合計量が90重量%以上であり、かつ2−ノルボルネン化合物重量が、ジシクロペンタジエン化合物重量の1/2以下である重合性単量体から得られる、ガラス転移温度が50℃以上の、融点を有しない非晶性脂環構造含有重合体(2)とを、90/10〜50/50(重量比)の割合で含有する重合体組成物を用いて、フィルムを製造する。
【選択図】なし

Description

本願発明は、優れた透明性と低い水蒸気透過度とを両立させた透明フィルムに関する。
特許文献1には、結晶性ポリオレフィンに、非晶性脂環構造含有重合体の一種である非晶性ポリビニルシクロヘキサン系樹脂を配合した重合体組成物が開示されている。この重合体組成物は、結晶性ポリオレフィン樹脂の特性を維持したまま、優れた耐熱性、剛性、硬度、小さい成型収縮率が達成できると記載されている。
また、特許文献2には、熱変形温度が100℃以下の非晶性オレフィンと高密度ポリエチレンと脂肪酸エステル滑剤と脂肪酸滑剤とを含有する樹脂組成物から得られるシートが、透明性に優れ、高防湿性であることが記載されている。しかしながら、非晶性オレフィンと高密度ポリエチレンとの相溶性が十分ではなく、透明性に劣る傾向がある。
更に、特許文献3には、非晶性脂環構造含重合体に、結晶性環状オレフィン系重合体を配合した組成物が、射出成形、圧縮成形、押出成形等の成形方法により、透明性と耐ソルベントクラック性を向上した成形物が得られることが開示されている。
特開平5−271482号公報 特開平7−33962号公報 特開2007−016102号公報
本発明者の検討の結果、特許文献3の実施例において具体的に採用されている割合で、結晶性環状オレフィン系重合体を配合した組成物を用いたフィルムは、水蒸気透過度が十分に低くはならないことが判った。そして、本発明者は、結晶性環状オレフィン重合体として、2−ノルボルネンが90〜100重量%と置換基含有ノルボルネン類が10〜0重量%とを含有してなる重合性単量体を開環重合し、水素添加して得られる、ある種の結晶性ノルボルネン系重合体(1)と、2−ノルボルネン化合物とジシクロペンタジエン化合物との合計量が90重量%以上であり、かつ2−ノルボルネン化合術重量が、ジシクロペンタジエン化合物重量の1/2以下である重合性単量体から得られる、ガラス転移温度が50℃以上の、非晶性脂環構造含有重合体(2)とを、所定の割合で配合した重合体組成物を用いると、透明性に優れ(ヘイズが低い)、かつ、水蒸気透過度が低いフィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、2−ノルボルネンが90〜100重量%と置換基含有ノルボルネン類が10〜0重量%とを含有してなる重合性単量体を開環重合し、水素添加して得られる、融点が110〜145℃、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量が50,000〜200,000、重量平均分子量/数平均分子量が1.5〜10.0である結晶性ノルボルネン系開環重合体(1)と、2−ノルボルネン化合物とジシクロペンタジエン化合物との合計量が90重量%以上であり、かつ2−ノルボルネン化合物重量が、ジシクロペンタジエン化合物重量の1/2以下である重合性単量体から得られる、ガラス転移温度が50℃以上の、融点を有しない非晶性脂環構造含有重合体(2)とを、90/10〜50/50(重量比)の割合で含有する重合体組成物。
また、本発明によれば、当該重合体組成物からなる、厚さ100μmでの水蒸気透過性が0.40g/m・day以下、かつ厚さ100μmでのヘイズが20%以下であるフィルムが提供される。
本発明の重合体組成物は、結晶性ノルボルネン系開環重合体(1)と非晶性脂環構造含有重合体(2)とを、90/10〜50/50(重量比)、好ましくは90/10〜55/45(重量比)、より好ましくは90/10〜60/40(重量比)の割合で含有するものである。結晶性ノルボルネン系開環重合体の割合が多すぎると透明性が低下する傾向にあり、非晶性脂環構造含有重合体の割合が多すぎると水蒸気透過度が高くなる傾向にある。
本発明に用いる結晶性ノルボルネン系開環重合体は、2−ノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン)が90〜100重量%と置換基含有ノルボルネン類が10〜0重量%とを含有してなる重合性単量体を開環重合し、水素添加して得られる、融点が110〜145℃、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量が50,000〜200,000、重量平均分子量/数平均分子量が1.5〜10.0である。特に開環重合後の水素添加によって、開環重合体の、炭素−炭素二重結合の80%以上を水素添加することにより得られるものが好ましい。
2−ノルボルネン又は2−ノルボルネン及び置換基含有ノルボルネン系単量体からなる単量体混合物を、メタセシス重合触媒の存在下に開環重合することにより2−ノルボルネン単独開環重合体又は2−ノルボルネンと置換基含有ノルボルネン系単量体との開環共重合体(以下、総称して「ノルボルネン単量体開環重合体」という)を水素添加することで、結晶性ノルボルネン系開環重合体を得ることができる。
2−ノルボルネンは公知の化合物であり、例えば、シクロペンタジエンとエチレンとを反応させることにより得ることができる。
置換基含有ノルボルネン系単量体は、分子内にノルボルネン骨格を有する化合物であって、置換基を有するものである。本発明に用いる「置換基含有ノルボルネン系単量体」には、置換基を有する2−ノルボルネン誘導体のほか、縮合した環を有するノルボルネン化合物も含まれる。
置換基含有ノルボルネン系単量体としては、分子内にノルボルネン環と縮合する環を有しないノルボルネン系単量体、及び3環以上の多環式ノルボルネン系単量体等が挙げられる。
前記分子内にノルボルネン環と縮合する環を有しないノルボルネン系単量体の具体例としては、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(5−メチル−2−ノルボルネン)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−デシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等のアルキル基を有するノルボルネン類;5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(5−エチリデン−2−ノルボルネン)、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキセニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロペンテニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等のアルケニル基を有するノルボルネン類;5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(5−フェニル−2−ノルボルネン)等の芳香環を有するノルボルネン類;5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン)、5−エトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エトキシカルボニル−5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、2−メチルプロピオン酸5−ヒドロキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、2−メチルオクタン酸5−ヒドロキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,5−ジ(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシイソプロピル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、6−カルボキシ−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等の酸素原子を含む極性基を有するノルボルネン類;5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、6−カルボキシ−5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等の窒素原子を含む極性基を有するノルボルネン類;等が挙げられる。
3環以上の多環式ノルボルネン系単量体とは、分子内にノルボルネン環と、該ノルボルネン環と縮合している1つ以上の環とを有するノルボルネン系単量体である。その具体例としては、下記に示す式(1)又は式(2)で示される単量体が挙げられる。
Figure 2009179650
(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基;又はケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基;を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の二価の炭化水素基である。)
Figure 2009179650
(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基;又はケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基;を表し、RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。mは1又は2である。)
式(1)で示される単量体としては、具体的には、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:2−ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン等を挙げることができる。また、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレンとも言う)、テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9,9a,10−ヘキサヒドロアントラセンとも言う)等の芳香環を有するノルボルネン誘導体も挙げることができる。
式(2)で示される単量体としては、mが1であるテトラシクロドデセン類、mが2であるヘキサシクロヘプタデセン類が挙げられる。
テトラシクロドデセン類の具体例としては、テトラシクロドデセン、8−メチルテトラシクロドデセン、8−エチルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキシルテトラシクロドデセン、8−シクロペンチルテトラシクロドデセン等の無置換又はアルキル基を有するテトラシクロドデセン類;8−メチリデンテトラシクロドデセン、8−エチリデンテトラシクロドデセン、8−ビニルテトラシクロドデセン、8−プロペニルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキセニルテトラシクロドデセン、8−シクロペンテニルテトラシクロドデセン等の環外に二重結合を有するテトラシクロドデセン類;8−フェニルテトラシクロドデセン等の芳香環を有するテトラシクロドデセン類;8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−ヒドロキシメチルテトラシクロドデセン、8−カルボキシテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸無水物等の酸素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−シアノテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸イミド等の窒素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−クロロテトラシクロドデセン等のハロゲン原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−トリメトキシシリルテトラシクロドデセン等のケイ素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類等が挙げられる。
ヘキサシクロヘプタデセン類の具体例としては、ヘキサシクロヘプタデセン、12−メチルヘキサシクロヘプタデセン、12−エチルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキシルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンチルヘキサシクロヘプタデセン等の無置換又はアルキル基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−メチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−エチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−ビニルヘキサシクロヘプタデセン、12−プロペニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキセニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンテニルヘキサシクロヘプタデセン等の環外に二重結合を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−フェニルヘキサシクロヘプタデセン等の芳香環を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−メチル−12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−ヒドロキシメチルヘキサシクロヘプタデセン、12−カルボキシヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸無水物等の酸素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−シアノヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸イミド等の窒素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−クロロヘキサシクロヘプタデセン等のハロゲン原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−トリメトキシシリルヘキサシクロヘプタデセン等のケイ素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類等が挙げられる。これらのノルボルネン系単量体は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、上記した2−ノルボルネン及び置換基含有ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体とを組み合わせて用いることもできる。
2−ノルボルネン及び置換基含有ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のモノ環状オレフィン類及びその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン等の環状ジエン及びその誘導体;等が挙げられる。
単量体の組成は、2−ノルボルネンが、通常90〜100重量%、好ましくは95〜99重量%、より好ましくは97〜99重量%であり、置換基含有ノルボルネン系単量体は、通常0〜10重量%、好ましくは1〜5重量%、より好ましくは1〜4重量%である。
メタセシス重合触媒としては、例えば、特公昭41−20111号公報、特開昭46−14910号公報、特公昭57−17883号公報、特公昭57−61044号公報、特開昭54−86600号公報、特開昭58−127728号公報、特開平1−240517号公報等に記載された、本質的に(a)遷移金属化合物触媒成分と(b)金属化合物助触媒成分からなる一般のメタセシス重合触媒;シュロック型重合触媒(特開平7−179575号公報、Schrock et al.,J.Am.Chem.Soc.,1990年,第112巻,3875頁〜等)や、グラブス型重合触媒(Fu et al.,J.Am.Chem.Soc.,1993年,第115巻,9856頁〜;Nguyen et al.,J.Am.Chem.Soc.,1992年,第114巻,3974頁〜;Grubbs et al.,WO98/21214号パンフレット等)等のリビング開環メタセシス触媒;等が挙げられる。
これらの中でも、得られる重合体の分子量分布を好適な範囲に調節するには、(a)遷移金属化合物触媒成分と(b)金属化合物助触媒成分とからなるメタセシス重合触媒が好ましい。
前記(a)遷移金属化合物触媒成分は、周期律表第3〜11族の遷移金属の化合物である。例えば、これらの遷移金属のハロゲン化物、オキシハロゲン化物、アルコキシハロゲン化物、アルコキシド、カルボン酸塩、(オキシ)アセチルアセトネート、カルボニル錯体、アセトニトリル錯体、ヒドリド錯体、これらの誘導体、これら又はこれらの誘導体のP(C等の錯化剤による錯化物が挙げられる。
具体例としては、TiCl、TiBr、VOCl、WBr、WCl、WOCl、MoCl、MoOCl、WO、HWO等が挙げられる。なかでも、重合活性等の点から、W、Mo、Ti、又はVの化合物が好ましく、特にこれらのハロゲン化物、オキシハロゲン化物、又はアルコキシハロゲン化物が好ましい。
前記(b)金属化合物助触媒成分は、周期律表第1〜2族、及び第12〜14族の金属の化合物で少なくとも一つの金属元素−炭素結合、又は金属元素−水素結合を有するものである。例えば、Al、Sn、Li、Na、Mg、Zn、Cd、B等の有機化合物等が挙げられる。
具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等の有機アルミニウム化合物;テトラメチルスズ、ジエチルジメチルスズ、テトラブチルスズ、テトラフェニルスズ等の有機スズ化合物;n−ブチルリチウム等の有機リチウム化合物;n−ペンチルナトリウム等の有機ナトリウム化合物;メチルマグネシウムイオジド等の有機マグネシウム化合物;ジエチル亜鉛等の有機亜鉛化合物;ジエチルカドミウム等の有機カドミウム化合物;トリメチルホウ素等の有機ホウ素化合物;等が挙げられる。これらの中で、第13族の金属の化合物が好ましく、特にAlの有機化合物が好ましい。
また、前記(a)成分、(b)成分の他に第三成分を加えて、メタセシス重合活性を高めることができる。用いる第三成分としては、脂肪族第三級アミン、芳香族第三級アミン、分子状酸素、アルコール、エーテル、過酸化物、カルボン酸、酸無水物、酸クロリド、エステル、ケトン、含窒素化合物、含ハロゲン化合物、その他のルイス酸等が挙げられる。
これらの成分の配合比は、(a)成分:(b)成分が金属元素のモル比で、通常1:1〜1:100、好ましくは1:2〜1:10の範囲である。また、(a)成分:第三成分がモル比で、通常1:0.005〜1:50、好ましくは1:1〜1:10の範囲である。
また、重合触媒の使用割合は、(重合触媒中の遷移金属):(全単量体)のモル比で、通常1:100〜1:2,000,000、好ましくは1:1,000〜1:20,000、より好ましくは1:5,000〜1:8,000である。触媒量が多すぎると重合反応後の触媒除去が困難になったり、また、分子量分布が広がるおそれがあり、一方、少なすぎると十分な重合活性が得られない。
開環重合は無溶媒で行うこともできるが、適当な溶媒中で行うことが好ましい。用いる有機溶媒としては、重合体及び重合体水素添加物が所定の条件で溶解もしくは分散し、かつ、重合及び水素添加反応に影響しないものであれば特に限定されないが、工業的に汎用されている溶媒が好ましい。
このような有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素炭化水素;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフラン等のエ−テル類等の溶媒を使用することができる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、工業的に汎用されている芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素及びエーテル類が好ましい。
重合を有機溶媒中で行う場合には、単量体の濃度は、1〜50重量%が好ましく、2〜45重量%がより好ましく、3〜40重量%が特に好ましい。前記モノマー混合物の濃度が1重量%より小さいと生産性が低くなるおそれがあり、50重量%より大きいと重合後の溶液粘度が高すぎて、その後の水素添加反応が困難となるおそれがある。
開環重合においては、反応系に分子量調節剤を添加することができる。分子量調節剤を添加することで、得られる開環重合体の分子量を調整することができる。
用いる分子量調節剤としては特に限定されず、従来公知のものが使用できる。例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエン等のスチレン類;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエーテル類;アリルクロライド等のハロゲン含有ビニル化合物;グリシジルメタクリレート等酸素含有ビニル化合物;アクリルアミド等の窒素含有ビニル化合物;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン等の非共役ジエン、又は1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン等を挙げることができる。これらの中で、分子量調節のし易さから、α−オレフィン類が好ましい。
分子量調節剤の添加量は、所望の分子量を持つ重合体を得るに足る量であればよく、(分子量調節剤):(全単量体)のモル比で、通常1:50〜1:1,000,000、好ましくは1:100〜1:5,000、より好ましくは1:300〜1:3,000である。
開環重合は、単量体と重合触媒とを混合することにより開始される。
開環重合を行う温度は、特に限定されないが、通常−20〜+100℃、好ましくは10〜80℃で重合を行う。温度が低すぎると反応速度が低下し、高すぎると副反応により、分子量分布が広がるおそれがある。
重合時間は、特に制限はなく、通常1分間〜100時間である。
重合時の圧力条件は特に限定されないが、加圧条件下で重合する場合、加える圧力は通常1MPa以下である。
反応終了後においては、通常の後処理操作により目的とするノルボルネン単量体開環重合体を単離することができる。
得られたノルボルネン単量体開環重合体は、次の水素添加反応工程へ供される。
また後述するように、開環重合を行った反応溶液に水素添加触媒を添加して、ノルボルネン単量体開環重合体を単離することなく、連続的に水素添加反応を行うこともできる。
ノルボルネン単量体開環重合体の水素添加反応は、ノルボルネン単量体開環重合体の主鎖又は/及び側鎖に存在する炭素−炭素二重結合に水素添加する反応である。この水素添加反応は、ノルボルネン単量体開環重合体の不活性溶媒溶液に水素添加触媒を添加し、反応系内に水素を供給して行う。
水素添加触媒としては、オレフィン化合物の水素添加に際して一般に使用されているものであれば、均一系触媒、不均一系触媒のいずれも使用することができる。得られる重合体中の残留金属の除去等を考慮すると、不均一系触媒が好ましい。
均一系触媒としては、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の組み合わせ等の遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなる触媒系;ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリド等の貴金属錯体触媒;等が挙げられる。
不均一触媒としては、例えば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナ等の、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、又はこれらの金属をカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタン等の担体に担持させた固体触媒系が挙げられる。
触媒の使用量は、ノルボルネン単量体開環重合体100重量部に対し、通常0.05〜10重量部である。
水素添加反応に用いる不活性有機溶媒としては、前述した2−ノルボルネンと置換基含有ノルボルネン系単量体との開環重合において用いることができる有機溶媒として例示したものと同様の、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン系芳香族炭化水素、含窒素炭化水素、エーテル類等が挙げられる。
水素添加反応の温度は、使用する水素添加触媒によって適する条件範囲が異なるが、水素添加温度は、通常−20℃〜+300℃、好ましくは0℃〜+250℃である。水素添加温度が低すぎると反応速度が遅くなるおそれがあり、高すぎると副反応が起こる可能性がある。
水素圧力は、通常0.01〜20MPa、好ましくは0.1〜10MPa、より好ましくは1〜5MPaである。水素圧力が低すぎると水素添加速度が遅くなり、高すぎると高耐圧反応装置が必要となるので好ましくない。
結晶性ノルボルネン系開環重合体は、ノルボルネン単量体開環重合体中の炭素−炭素二重結合の水素添加率が通常80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上、特に好ましくは99.9%以上である。上記の範囲にあると、成形体の樹脂焼けに起因する着色が抑えられ好ましい。
結晶性ノルボルネン系開環重合体の水素添加率は、溶媒に重クロロホルムを用い、H−NMRにより測定して求めることができる。
水素添加反応終了後は、反応溶液から水素添加触媒等を濾別し、濾別後の重合体溶液から溶媒等の揮発成分を除去することにより、目的とする結晶性ノルボルネン系開環重合体を得ることができる。
溶媒等の揮発成分を除去する方法としては、凝固法や直接乾燥法等公知の方法を採用することができる。
凝固法は、重合体溶液を重合体の貧溶媒と混合することにより、重合体を析出させる方法である。用いる貧溶媒としては、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;等の極性溶媒が挙げられる。
凝固して得られた粒子状の成分は、例えば、真空中又は窒素中若しくは空気中で加熱して乾燥させて粒子状にするか、さらに必要に応じて溶融押出機から押し出してペレット状にすることができる。
直接乾燥法は、重合体溶液を減圧下加熱して溶媒を除去する方法である。この方法には、遠心薄膜連続蒸発乾燥機、掻面熱交換型連続反応器型乾燥機、高粘度リアクタ装置等の公知の装置を用いて行うことができる。真空度や温度はその装置によって適宜選択され、限定されない。
以上のようにして得られる結晶性ノルボルネン系開環重合体の2−ノルボルネン由来の繰り返し単位(A)の全繰り返し単位に対する存在割合が、通常90〜100重量%、好ましくは95〜99重量%、より好ましくは97〜99重量%であり、置換基含有ノルボルネン系単量体由来の繰り返し単位(B)の全繰り返し単位に対する存在割合が、0〜10重量%、好ましくは1〜5重量%、より好ましくは1〜4重量%である。
繰り返し単位(B)の存在割合が多すぎると、成形体の耐熱性や水蒸気バリア性が悪化するおそれがある。繰り返し単位(B)の存在割合が上記範囲であると、水蒸気バリア性に優れ、また、成形体の機械的特性にも優れ好適である。また、繰り返し単位(B)の存在割合が少なすぎると、機械的特性が低下するおそれがある。
得られる結晶性ノルボルネン系開環重合体は、その重量平均分子量(Mw)が、1,2,4−トリクロロベンゼンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算で、好ましくは50,000〜200,000、より好ましくは70,000〜180,000、さらに好ましくは80,000〜150,000である。
Mwがこの範囲にあると、成形加工し易く、得られた成形体は十分な機械的特性を有し、耐油性にも優れるため好ましい。一方、Mwが高すぎると、成形し難く、フィルム、シートにした場合、膜厚ムラを生じ易い。また、Mwが低すぎると、成形体の機械的特性が低下し、耐油性も劣るおそれがある。
得られる結晶性ノルボルネン系開環重合体は、その分子量分布(Mw/Mn)が、好ましくは1.5〜7.0、より好ましくは2.0〜6.5、さらに好ましくは2.5〜6.0、特に好ましくは2.5〜5.5である。
Mw/Mnが狭すぎると、該重合体の温度に対する溶融粘度が敏感に変化し易くなるため、成形品の加工性が悪化し、厚みムラが発生するおそれがある。また、Mw/Mnが広すぎると、成形品の機械的特性が低下するおそれがある。ちなみに、Mnは1,2,4−トリクロロベンゼンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算として測定した数平均分子量である。
得られる結晶性ノルボルネン系開環重合体の融点は、通常110〜145℃、好ましくは120〜145℃、より好ましくは130℃〜145℃である。
融点が上記の範囲にあると、成形品の耐熱性に優れるため好ましい。特に、融点が130〜145℃の範囲においては、医療用成形品において行われるスチーム滅菌にも耐えうるため好ましい。
なお、結晶性ノルボルネン系開環重合体の融点は、結晶性ノルボルネン系開環重合体の分子量、分子量分布、異性化率、組成比率などにより制御できる。
前記結晶性ノルボルネン系開環重合体は、融点を有する重合体、すなわち結晶構造を形成する重合体であるので、成形体内部に結晶部を形成し、これと非晶部とが相俟って成形品の機械的特性が向上する。それでいて、しかも結晶が大きくないので透明性の良さをも与えるのである。
得られる結晶性ノルボルネン系開環重合体の異性化率は、通常40%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。異性化率が高すぎると、該重合体の耐熱性が低下するおそれがある。異性化率は、溶媒に重クロロホルムを用い、13C−NMRにより測定した33.0ppmピーク積分値/(31.8ppmピーク積分値+33.0ppmピーク積分値)×100から算出することができる。ちなみに、31.8ppmピークは、該重合体中の2−ノルボルネン由来の繰り返し単位のシス体由来のもの、33.0ppmピークは、該重合体中の2−ノルボルネン由来の繰り返し単位のトランス体由来のものである。
異性化率を上記範囲にするためには、ノルボルネン単量体開環重合体の水素添加反応において、反応温度を好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜170℃、特に好ましくは130〜160℃とし、かつ、使用する水素添加触媒の使用量を、ノルボルネン単量体開環重合体100重量部に対し、好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは0.2〜1重量部とする。このような範囲にあると、水素添加反応速度と得られるポリマーの耐熱性のバランスに優れ、好適である。
本発明に用いる非晶性脂環構造含有重合体は、2−ノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン)化合物とジシクロペンタジエン(トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン)化合物との合計量が90重量%以上であり、かつ2−ノルボルネン化合物重量が、ジシクロペンタジエン化合物重量の1/2以下である重合性単量体から得られる、ガラス転移温度が50℃以上の、融点を有しないものである。非晶性脂環構造含有重合体は、重合性単量体を公知の方法により開環重合して得られる開環重合体、またはこの開環重合体を、公知の方法により水素添加して製造される開環重合体水素添加物である。
重合性単量体中の、2−ノルボルネン化合物の割合は、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下であり、ジシクロペンタジエン化合物の割合は、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上であり、これらと共重合可能な重合性単量体の割合は、好ましくは0重量%以上、より好ましくは5重量%以上、特に好ましくは10重量%以上である。このような割合の重合性単量体を用いることで、優れた透明性を確保しつつ、水蒸気透過度を低く抑えることができる。特に、ジシクロペンタジエン化合物の割合が少なすぎると、透明性が低下する傾向にあり好ましくない。
2−ノルボルネン化合物とは、2−ノルボルネンまたは置換基を有する2−ノルボルネンのことである。置換基を有する2−ノルボルネンは、上述した置換基含有ノルボルネン系単量体の内、分子内にノルボルネン環と縮合する環を有しないノルボルネン系単量体に相当するものである。
ジシクロペンタジエン化合物とは、ジシクロペンタジエンまたは置換基を有するジシクロペンタジエンのことである。置換基を有するジシクロペンタジエンとしては、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン等を挙げることができる。
非晶性脂環構造含有重合体を得るために用いられる重合性単量体としては、2−ノルボルネン化合物およびジシクロペンタジエン化合物以外に、これらと共重合可能な重合性単量体が挙げられる。このような重合性単量体としては、上述した3環以上の多環式ノルボルネン系単量体や、上述した2−ノルボルネン及び置換基含有ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体が挙げられる。これらの中でも、3環以上の多環式ノルボルネン系単量体が好ましく、テトラシクロドデセン類が特に好ましい。
非晶性脂環構造含有重合体のガラス転移温度(Tg)は、通常50℃以上、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上である。Tgが低くなると水蒸気透過度が高くなる傾向にあり好ましくない。
本発明の重合体組成物には、必要に応じて配合剤を添加することができる。配合剤としては、酸化防止剤、ゴム質重合体、紫外線吸収剤、耐候安定剤、帯電防止剤、造核剤、スリップ剤、防曇剤、染料、顔料、着色剤、天然油、合成油、可塑剤、有機又は無機の充填剤、抗菌剤、消臭剤、脱臭剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、その分子量が700以上であるものが好ましい。酸化防止剤の分子量が低すぎると、成形品から酸化防止剤が溶出するおそれがある。
酸化防止剤の具体例としては、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のフェノール系酸化防止剤;トリフェニルホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン等リン系酸化防止剤;ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリル−チオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤;等が挙げられる。これらの酸化防止剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、フェノール系酸化防止剤が好ましい。
酸化防止剤の配合量は、結晶性ノルボルネン系開環重合体と非晶性脂環構造含有重合体との合計100重量部に対し、通常0.01〜1重量部、好ましくは、0.05〜0.5重量部である。酸化防止剤の添加量が少なすぎると、成形品にやけが生じるおそれがある。一方、添加量が多すぎると、成形品が白濁したり、成形品から酸化防止剤が溶出するおそれがある。
ゴム質重合体は、ガラス転移温度が40℃以下の重合体である。ゴム質重合体にはゴムや熱可塑性エラストマーが含まれる。ブロック共重合体のごとくガラス転移温度が2点以上ある場合は、最も低いガラス転移温度が40℃以下であればゴム質重合体として用いることができる。ゴム質重合体のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常5〜300である。
ゴム質重合体としては、例えば、エチレン−α−オレフィン系ゴム;エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体ゴム;エチレン−メチルメタクリレート、エチレン−ブチルアクリレート等のエチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレンと脂肪酸ビニルとの共重合体;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル等のアクリル酸アルキルエステルの重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレンとブタジエン又はイソプレンとのランダム共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−アクリロニトリル−スチレン共重合体等のジエン系ゴム;ブチレン−イソプレン共重合体;スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体等の芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体、低結晶性ポリブタジエン樹脂、エチレン−プロピレンエラストマー、スチレングラフトエチレン−プロピレンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、エチレン系アイオノマー樹脂等が挙げられる。
ゴム質重合体の配合量は、使用目的に応じて適宜選択される。耐衝撃性や柔軟性が要求される場合にはゴム質重合体の量は、結晶性ノルボルネン系開環重合体と非晶性脂環構造含有重合体との合計100重量部に対して、通常0.01〜100重量部、好ましくは、0.1〜70重量部、より好ましくは、1〜50重量部の範囲である。
紫外線吸収剤及び耐候安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−1−{2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のヒンダードアミン系化合物;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物;2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベゾエート系化合物等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤及び耐候安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。紫外線吸収剤及び耐候安定剤の量は、結晶性ノルボルネン系開環重合体と非晶性脂環構造含有重合体との合計100重量部に対して通常0.001〜5重量部、好ましくは、0.01〜2重量部の範囲である。
帯電防止剤としては、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の長鎖アルキルアルコール;アルキルスルホン酸ナトリウム塩及び/又はアルキルスルホン酸ホスホニウム塩;ステアリン酸のグリセリンエステル等の脂肪酸エステル;ヒドロキシアミン系化合物;無定形炭素、酸化スズ粉、アンチモン含有酸化スズ粉等を例示することができる。帯電防止剤の量は、結晶性ノルボルネン系開環重合体と非晶性脂環構造含有重合体との合計100重量部に対して、通常0.001〜5重量部の範囲である。
造核剤としては、例えば、ジベンジリデンソルビトール誘導体、ホスフェート金属塩、安息香酸金属塩、カルボン酸類の金属塩等、ロジン酸金属塩、高密度ポリエチレン、3,3−ジメチルブテン−1等の炭素数5以上の3位分岐オレフィン、ビニルシクロアルカンの重合体等、セバシン酸金属塩、シリカ、酸化チタン、カーボンブラック、タルク、ミョウバン、炭酸カルシウム等の無機化合物、ブチルベンゾエート類、顔料等が挙げられる。これらの造核剤は単独で用いても良く、少なくとも2種類を併用しても良い。造核剤の量は、結晶性ノルボルネン系開環重合体と非晶性脂環構造含有重合体との合計100重量部に対して、通常0.005〜10重量部、好ましくは、0.05〜5重量部の範囲である。
本発明の重合体組成物の製法に限定はないが、上述した各成分を溶融状態で混練する方法が好適な方法として挙げられる。溶融混練装置としては、開放型のミキシングロールや非開放型のバンバリーミキサー、押出機、ニーダー、連続ミキサー等の公知のものを使用することができる。
本発明の重合体組成物は、周知の方法によってフィルム、シート、各種成形品に成形加工することができる。例えば、単軸押出機、ベント式押出機、二本スクリュー押出機、円錐二本スクリュー押出機、コニーダー、プラティフィケーター、ミクストルーダー、二軸コニカルスクリュー押出機、遊星ネジ押出機、歯車型押出機、スクリューレス押出機などを用いて押出成形、射出成形、圧縮成形、ブロー成形、回転成形等を行なう。また、Tダイ成形、インフレーション成形等によりフィルムやシートを得ることができる。また、重合体組成物製造時に直接成形加工してもよい。
本発明のフィルムは、本発明の重合体組成物を成形して得られるものである。
本発明のフィルムは、本発明の重合体組成物を、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上含有する。
本発明のフィルムを成形する方法に制限はなく、押出成形、インフレーション成形、カレンダー成形、圧縮成形、キャスト成形など公知の成形方法を採用することができる。
本発明のフィルムの厚みは特に限定されないが、通常1μmから20mm、好ましくは5μmから5mm、より好ましくは10μmから2mmである。
本発明のフィルムにおいては、本発明の重合体組成物を含有する層と、家電、食品分野、医療分野などで一般に使用される公知の重合体を含有する層とを有する積層体であってもよい。
積層する層の数は、通常2層又は3層であるが、更に多層の積層体とすることができる。3層以上の多層における重合体種による層の配置順序は、目的や用途により決めることができる。
本発明のフィルムは水蒸気透過度が低い(すなわち水蒸気バリア性に優れる)。本発明のフィルムが水蒸気バリア性に優れることは、例えば、JIS K 7129(A法)に基づいて、温度50℃、湿度90%RHの条件下で水蒸気透過度テスター(LYSSY社製:L80−5000型)を用いて水蒸気透過度を測定することにより評価することができる。
本発明の厚さ250μmのフィルムの水蒸気透過度は、通常0.5(g/(m・24h))以下、好ましくは0.45(g/(m・24h))以下、より好ましくは0.40(g/(m・24h))以下、さらに好ましくは0.35(g/(m・24h))以下である。
本発明のフィルムは機械的特性に優れる。本発明のフィルムが機械的特性に優れることは、例えば、本発明のフィルムの形状1B形、厚さ250μmの試験片での、JIS K 7162に基づいた引張速度200mm/分の条件でオートグラフ(AGS−5kNH、島津製作所社製)により引張り破断伸びを測定することにより評価することができる。
本発明のフィルムの引張り破断伸びは、通常50%以上、好ましくは、60%以上、さらに好ましくは70%以上である。
本発明のフィルムは、食品分野、医療分野、ディスプレイ分野、エネルギー分野、光学分野、電気電子分野、通信分野、自動車分野、民生分野、土木建築分野等の多岐の用途で利用することができる。中でも、食品分野、医療分野、エネルギー分野、ディスプレイ分野等の用途に適している。
食品分野としては、ハム、ソーセージ、レトルト食品、冷凍食品等の加工食品、乾燥食品、特定保険食品、米飯、菓子、食肉、ラップフィルム、シュリンクフィルム等の食品包装袋、ブリスター・パッケージ用フィルム等として使用できる。
医療分野では、薬栓、輸液用バッグ、点滴用バッグ、プレス・スルー・パッケージ(PTP)用フィルム、ブリスター・パッケージ用フィルム等で使用できる。
エネルギー分野では太陽光発電システム周辺部材、燃料電池周辺部材、アルコール含有燃料系統部材及びそれらの包装フィルム等として使用できる。
ディスプレイ分野では、バリアーフィルム、位相差フィルム、偏光フィルム、光拡散シート、集光シート等として使用できる。
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明する。本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、部及び%は、特に断りがない限り、重量基準である。
以下に各種物性の測定法を示す。
(1)水素添加反応前の重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、トルエンを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算値として測定した。
測定装置としては、東ソー社製GPC−8020シリーズ(DP8020、SD8022、AS8020、CO8020、RI8020)を用いた。標準ポリスチレンとしては、東ソー社製標準ポリスチレン、Mw=500、2630、10200、37900、96400、427000、1090000、5480000の計8点を用いた。
サンプルは、サンプル濃度1mg/mlになるように、測定試料をトルエンに溶解後、カートリッジフィルター(孔径0.5μmの多孔質ポリテトラフルオロエチレン製フィルター)でろ過して調製した。
測定は、カラムとして東ソー社製TSKgel GMHHR・Hを2本直列に繋いで用い、流速1.0ml/分、サンプル注入量100μml、カラム温度40℃の条件で行った。
(2)水素添加反応後の重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、1,2,4−トリクロロベンゼンを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算値として140℃において測定した。測定装置としては、東ソー社製HLC8121GPC/HTを用いた。
標準ポリスチレンとしては、東ソー社製標準ポリスチレン、Mw=988、2580、5910、9010、18000、37700、95900、186000、351000、889000、1050000、2770000、5110000、7790000、20000000の計16点を用いた。
サンプルは、サンプル濃度1mg/mlになるように、140℃にて測定試料を1,2,4−トリクロロベンゼンに加熱溶解させて調製した。
測定は、カラムとして東ソー社製TSKgel GMHHR・H(20)HTを3本直列に繋いで用い、流速1.0ml/分、サンプル注入量300μml、カラム温度140℃の条件で行った。
(3)水素添加率は、溶媒として重クロロホルムを用いて、H−NMRにより測定した。
(4)結晶性ノルボルネン系開環重合体の異性化率は、溶媒として重クロロホルムを用い、13C−NMRにより測定した31.8ppm及び33.0ppmのピーク値から、式[(33.0ppmピーク積分値)/(31.8ppmピーク積分値+33.0ppmピーク積分値)]×100により算出した。
31.8ppmのピークは、開環重合体水素添加物中の2−ノルボルネン由来の繰り返し単位のシス体由来のものであり、33.0ppmのピークは、開環重合体水素添加物の2−ノルボルネン由来の繰り返し単位のトランス体由来のものである。
(5)融点Tmは、示差走査熱量分析計(DSC6220SII、ナノテクノロジー社製)を用いて、JIS K 7121に基づき、試料を融点より30℃以上に加熱した後、冷却速度−10℃/分で室温まで冷却し、その後、昇温速度10℃/分で昇温する過程で測定した。
(6)ガラス転移温度Tgは、示差走査熱量分析計(DSC6220SII、ナノテクノロジー社製)を用いて、JIS K 6911に基づいて測定した。
(7)メルトマスフローレートは、JIS K 7210に準拠して、190℃、2.16kg荷重で測定した。
(8)粘弾性Tgは、動的粘弾性測定装置(=レオメーターと同じ意味)(ARES、ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて、試料を5℃/min(室温から160℃まで昇温)、角速度周波数1rad/s、歪み振幅0.1(測定サンプルは短冊状:幅×長さ×厚さ=10mm×45mm×1mm)の条件下、ねじり変形様式で貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”の温度依存性を測定し成形体の特性評価を行った。温度依存性測定からG”/G’(=tanδ損失正接)の値が1に近い温度をTgとした。
(8)膜厚は、マイクロゲージを用いて、フィルムのエッヂから50mm内側を10mm間隔で測定して得られた値の平均値である。
(9)水蒸気バリア性評価試験は、JIS K 7129(A法)に基づいて温度40℃、湿度90%RHの条件下の水蒸気透過度を水蒸気透過度テスター(L80−5000型、LYSSY社製)で測定した。水蒸気透過度(g/(m・24h))が小さいほど、水蒸気バリア性が良好であることを示す。
(10)ヘイズの測定は厚さ100μmのフィルムサンプルを作製し、ヘイズメータ(NDH2000、日本電色工業社製)を用いて測定した。ヘイズ(%)が小さいほど、透明性が良好であることを示す。
[製造例1]
(開環重合)
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500部に、1−ヘキセン0.55部、ジイソプロピルエーテル0.30部、トリイソブチルアルミニウム0.20部、イソブチルアルコール0.075部を室温で反応器に入れ混合した後、55℃に保ちながら、重合性単量体としてビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(以下、「2−NB」という。)250部及び重合触媒として六塩化タングステン1.0%トルエン溶液15部を2時間かけて連続的に添加し、重合した。得られた開環重合体(A)の重量平均分子量は、83,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。
(水素添加反応)
上記で得た開環重合体(A)を含む重合反応液を耐圧の水素化反応器に移送し、珪藻土担持ニッケル触媒(ズードケミー触媒社製;T8400、ニッケル担持率58%)0.5部を加え、160℃、水素圧4.5MPaで6時間反応させた。この溶液を、珪藻土をろ過助剤としてステンレス製金網を備えたろ過器によりろ過し、触媒を除去した。
得られた反応溶液を3000部のイソプロピルアルコール中に撹拌下に注いで水素添加物を沈殿させ、ろ別して回収した。さらに、アセトン500部で洗浄した後、0.13×10Pa以下、100℃に設定した減圧乾燥器中で48時間乾燥し、開環重合体水素添加物(A)を190部得た。
(重合体物性)
得られた開環重合体水素添加物(A)の水素添加率は99.9%、重量平均分子量は82,200、分子量分布(Mw/Mn)は2.9、異性化率は5%、融点は140℃であった。
(樹脂の調製)
開環重合体水素添加物(A)100部に酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製;イルガノックス1010、テトラキス[メチレン−3−(3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)0.1部を加え、二軸混練機(TEM−35B、東芝機械社製)で混練し、ペレット化した樹脂(A)を得た。
[製造例2]
(開環共重合及び水素添加反応)
製造例1において、重合性単量体として、2−NB 250部を、2−NB240部とトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(以下、「DCP」という。)10部の混合モノマーとし、1−ヘキセンの量を0.55部、ジイソプロピルエーテルの量を0.40部、トリイソブチルアルミニウムの量を0.27部、イソブチルアルコールの量を0.10部、六塩化タングステン1.0%トルエン溶液の量を20部に変更した以外は製造例1と同様にして、重合を行った。得られた開環重合体(B)の重量平均分子量は、83,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.7であった。重合添加率は、ほぼ100%であった。その後、製造例1と同様にして、水素添加反応を行い、開環重合体水素添加物(B)を190部得た。
(重合体物性)
得られた開環共重合体水素添加物(B)の水素添加率は99.9%、重量平均分子量は81,300、分子量分布(Mw/Mn)は3.8、異性化率は9%、融点は134℃であった。
(樹脂の調製)
開環共重合体水素添加物(B)を用いたこと以外は、製造例1と同様にしてペレット化した樹脂(B)を得た。
[製造例3]
(開環共重合)
窒素雰囲気下、攪拌機付きオートクレーブに、70%の2−NBのトルエン溶液33.4部、DCP 2.86部と1−ヘキセン0.020部、シクロヘンサン49.3部を加えて攪拌した。続いてビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリド0.023部を8.6部のトルエンに溶解した溶液を加えて、60℃にて30分間反応させた。重合転化率は、ほぼ100%であった。得られた開環重合体(C)の重量平均分子量は、81,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.6であった。
(水素添加反応)
上記で得た重合溶液にエチルビニルエーテル0.020部を加えて攪拌した後、水素圧力1.0MPa、150℃で20時間水素添加反応を行なった。その後、室温まで冷却させ、活性炭粉末0.5部をシクロヘキサン10部に懸濁させた溶液を添加し、水素圧力1.0MPa、150℃で2時間反応させた。次いで反応液を孔径0.2μmのフィルターでろ過し、活性炭粉末を除去した。反応溶液を大量のイソプロパノールに注いでポリマーを完全に析出させ、ろ別して回収した。さらに、アセトンで洗浄した後、0.13×10Pa以下、100℃に設定した減圧乾燥器中で48時間乾燥し、開環重合体水素添加物(C)を得た。
(重合体物性)
得られた開環重合体水素添加物(C)の水素添加率は99.9%、重量平均分子量は85,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.9、融点は101℃であった。
(樹脂の調製)
開環重合体水素添加物(C)を用いたこと以外は、製造例1と同様にしてペレット化した樹脂(C)を得た。
[製造例4]
(開環重合)
窒素で置換したフラスコに、DCP 5gと脱水したシクロヘキサン120gを加え、重合触媒としてトリイソブチルアルミニウムとイソブチルアルコールを各0.57mmol、反応調整剤としてアセトン0.189mmol、及び分子量調節剤として1−ヘキセン3.79mmolを添加した。ここに、六塩化タングステン0.086mmolを添加して、70℃で5分間攪拌した。次いで、反応系を70℃に保持しながら、DCP 45gと六塩化タングステン0.103mmolとの混合液を系内に30分かけて連続的に滴下した。滴下終了後、さらに30分間攪拌して開環重合を終了させた。得られた開環重合体(D)の重量平均分子量は、24,800、分子量分布(Mw/Mn)は2.3であった。
(水素添加反応)
上記で得た開環重合体(D)を含む重合反応液をオートクレーブに移し、シクロヘキサン160gを加え、ケイソウ土担持ニッケル触媒2.5gとトリイソブチルアルミニウムの30重量%トルエン溶液5.15gを混合したものを加え、反応器内を水素置換した後、攪拌しながら120℃に昇温した。温度が安定したところで、水素圧力を20kg/cmに上げ、反応過程で消費される水素を補充しながら6時間反応させた。次いで、水4.2gと活性アルミナ(表面積320cm/g、細孔容量0.8cm/g、平均粒径15μm、水澤化学製、ネオビードD粉末)2.5gを加え、80℃にて1時間攪拌した後、固形分を濾過して除去した。得られた水素添加反応液を3000部のイソプロピルアルコール中に攪拌下に注いで析出させ、濾別して回収した。さらにアセトン500部で洗浄した後、0.13×10Pa以下、100℃に設定した減圧乾燥器中で48時間乾燥し、開環重合体水素添加物(D)を得た。
(重合体物性)
得られた開環重合体水素添加物(D)の水素添加率は99.9%、重量平均分子量は、26,100、分子量分布(Mw/Mn)は2.6、ガラス転移温度は97℃であり、融点は観察されなかった。
(樹脂の調製)
開環重合体水素添加物(D)を用いたこと以外は、製造例1と同様にしてペレット化した樹脂(D)を得た。
[製造例5]
(開環共重合及び水素添加反応)
窒素で置換したフラスコにDCPとメチルテトラシクロドデセン(以下、「MTD」という。)の90:10の混合モノマー5重量部と脱水したシクロヘキサン120重量部を加え、重合触媒としてトリイソブチルアルミニウム0.57mmol、反応調製剤としてイソブチルアルコール0.57molとアセトン0.189mmol、分子量調整剤として1−ヘキセン3.79mmolを添加した。ここに、六塩化タングステン0.076mmolを添加し、60℃で5分間攪拌した。次いで、反応系を60℃に保持しながら、DCPとMTDの90:10の混合モノマー45重量部と、六塩化タングステン0.114mmol当量とシクロヘキサンとの混合溶液をそれぞれ系内に連続的に滴下した。滴下終了後、さらに30分間攪拌して開環重合を終了させた。得られた開環重合体(E)の重量平均分子量は、52,000分子量分布は2.8であった。
上記で得た開環重合体(E)を含む重合反応液をオートクレーブに移し、シクロヘキサン160重量部を加えた。これに水素添加触媒として、ケイソウ土担持ニッケル触媒)を2.5重量部と、活性アルミナ(表面積320cm/重量部、細孔容量0.8cm/重量部、平均粒径15μm、水澤化学製、ネオビードD粉末)を2.5重量部加え、反応器内を水素置換した後、約10kg/cmで昇圧し、攪拌しながら160℃に昇温した。温度が安定したところで水素圧力を4.5MPaに保持し8時間反応させた。水添反応終了後、水素添加触媒及び活性アルミナをろ別した後、水素添加反応液を3リットルのイソプロピルアルコール中に注いで析出させ、ろ別して回収した。回収した樹脂を0.13×10Pa以下、100℃以下で48時間乾燥し、開環重合体水素添加物(E)を得た。
(重合体物性)
得られた開環重合体水素添加物(E)の水素添加率は99.9%、重量平均分子量は52,600、分子量分布は3.0、ガラス転移温度は99℃であり、融点は観察されなかった。
(樹脂の調製)
開環重合体水素添加物(E)を用いたこと以外は、製造例1と同様にしてペレット化した樹脂(E)を得た。
[製造例6]
(開環共重合)
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500部に、1−ヘキセン0.82部、ジブチルエーテル0.15部、及びトリイソブチルアルミニウム0.30部を室温で反応器に入れ混合した後、45℃に保ちながら、DCP 160部と、2−NB 40部と、六塩化タングステン(0.7%トルエン溶液)80部とを、2時間かけて連続的に添加し重合した。重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06部とイソプロピルアルコール0.52部を加えて重合触媒を不活性化し重合反応を停止させた。得られた開環共重合体(F)の重量平均分子量は、41,000分子量分布は2.7であった。
(水素添加反応)
上記で得た開環重合体(F)を含有する反応溶液100部に対して、シクロヘキサン270部を加え、さらに水素添加触媒としてニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)5部を加え、水素により5MPaに加圧して撹拌しながら温度200℃まで加温した後、4時間反応さた、DCP/NB開環共重合体水素添加物を20%含有する反応溶液を得た。水添反応終了後、水素添加触媒及び活性アルミナをろ別した後、水素添加反応液を3000部のイソプロピルアルコール中に注いで析出させ、ろ別して回収した。回収した樹脂を0.13×10Pa以下、100℃以下で48時間乾燥し、開環重合体水素添加物(F)を得た。
(重合体物性)
得られた開環重合体水素添加物(F)の水素添加率は99.9%、重量平均分子量は43,000、分子量分布は2.8、ガラス転移温度は70℃であり、融点は観察されなかった。
(樹脂の調製)
開環共重合体水素添加物(F)を用いたこと以外は、製造例1と同様にしてペレット化した樹脂(F)を得た。
[製造例7]
(開環共重合及び水素添加反応)
製造例6において、重合性単量体として、DCPと2−NBの65:35の混合モノマーに変えた以外は、製造例6と同様にして、重合を行った。得られた開環重合体(G)の重合平均分子量は41,000、分子量分布は3.4であった。
上記で得た開環重合体(G)を、製造例6と同様にして、水素添加を行った。得られた開環共重合体水素添加物(G)を得た。
(重合体物性)
得られた開環共重合体水素添加物(G)の水素添加率は99.9%、重量平均分子量は46,000、分子量分布は4.1、ガラス転移温度は62℃であり、融点は観察されなかった。
(樹脂の調製)
開環共重合体水素添加物(G)を用いたこと以外は、製造例1と同様にしてペレット化した樹脂(G)を得た。
以下に、結晶性ノルボルネン系開環重合体の物性をまとめた。
Figure 2009179650
[実施例1]
製造例1で得られた樹脂(A)のペレット90部と製造例4で得られた樹脂(D)のペレット10部とを、ブレンダーで混合した。次いで、二軸混練機(TEM−35B、東芝機械社製)により、以下の混練条件で混練し、押し出し、ペレット化し、重合体組成物(A)のペレットを得た。
混練条件;スクリュー径37mm、L/D=32
スクリュー回転数250rpm
樹脂温度200℃
フィードレート15kg/時間
得られた重合体組成物(A)のペレットをスクリュー径50mmφ、圧縮比2.5、L/D=30のスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するハンガーマニュホールドタイプのTダイ式フィルム溶融押出成形機を使用して以下の成形条件でTダイ成形を行い単層フィルム(A)を得た。
成形条件;ダイリップ : 0.8mm
溶融樹脂温度 : 210℃
Tダイ幅 : 300mm
冷却ロール : 40℃
キャストロール : 40℃
得られた単層フィルム(A)の水蒸気バリア性とヘイズと粘弾性Tgを測定した。評価結果を表1に示す。"
[実施例2]
製造例1で得られた樹脂(A)のペレット70部と製造例4で得られた樹脂(D)のペレット30部とを、ブレンダーで混合した。次いで、二軸混練機(TEM−35B、東芝機械社製)により、以下の混練条件で混練し、押し出し、ペレット化し、重合体組成物(B)のペレットを得た。
混練条件;スクリュー径37mm、L/D=32
スクリュー回転数250rpm
樹脂温度210℃
フィードレート15kg/時間
得られた重合体組成物(B)のペレットをスクリュー径50mmφ、圧縮比2.5、L/D=30のスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するハンガーマニュホールドタイプのTダイ式フィルム溶融押出成形機を使用して以下の成形条件でTダイ成形を行い単層フィルム(B)を得た。
成形条件;ダイリップ : 0.8mm
溶融樹脂温度 : 220℃
Tダイ幅 : 300mm
冷却ロール : 50℃
キャストロール : 50℃"
得られた単層フィルム(B)の水蒸気バリア性とヘイズと粘弾性Tgを測定した。評価結果を表1に示す。
[実施例3]
製造例1で得られた樹脂(A)のペレット50部と製造例4で得られた樹脂(D)のペレット50部とを、ブレンダーで混合した。次いで、二軸混練機(TEM−35B、東芝機械社製)により、以下の混練条件で混練し、押し出し、ペレット化し、重合体組成物(C)のペレットを得た。
混練条件;スクリュー径37mm、L/D=32
スクリュー回転数250rpm
樹脂温度220℃
フィードレート15kg/時間
得られた重合体組成物(C)のペレットをスクリュー径50mmφ、圧縮比2.5、L/D=30のスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するハンガーマニュホールドタイプのTダイ式フィルム溶融押出成形機を使用して以下の成形条件でTダイ成形を行い単層フィルム(C)を得た。
成形条件;ダイリップ : 0.8mm
溶融樹脂温度 : 230℃
Tダイ幅 : 300mm
冷却ロール : 60℃
キャストロール : 60℃"
得られた単層フィルム(C)の水蒸気バリア性とヘイズと粘弾性Tgを測定した。評価結果を表1に示す。
[実施例4]
製造例1で得られた樹脂(A)を70部、製造例5で得られた樹脂(E)を30部に変更した以外は実施例2と同様にして重合体組成物(D)、単層フィルム(D)を得た。
得られた単層フィルム(D)の水蒸気バリア性とヘイズと粘弾性Tgを測定した。評価結果を表1に示す。
[実施例5]
製造例2で得られた樹脂(B)を70部、製造例4で得られた樹脂(D)を30部に変更した以外は実施例2と同様にして重合体組成物(E)、単層フィルム(E)(層厚100μm)を得た。
得られた単層フィルム(E)の水蒸気バリア性とヘイズと粘弾性Tgを測定した。評価結果を表1に示す。
[実施例6]
製造例1で得られた樹脂(A)を70部、製造例6で得られた樹脂(F)を30部に変更した以外は実施例2と同様にして重合体組成物(F)、単層フィルム(F)を得た。
得られた単層フィルム(F)の水蒸気バリア性とヘイズと粘弾性Tgを測定した。評価結果を表1に示す。
[比較例1]
製造例1で得られた樹脂(A)のペレットのみ100部、フィルム溶融押出成形機の成形条件で溶融樹脂温度を200℃に変更した以外は実施例1と同様にして単層フィルム(G)を得た。
得られた単層フィルム(G)の水蒸気バリア性とヘイズと粘弾性Tgを測定した。評価結果を表1に示す。
[比較例2]
製造例1で得られた樹脂(A)のペレットのみ100部、フィルム溶融押出成形機の成形条件で溶融樹脂温度を200℃、冷却ロール温度とキャストロール温度を30℃に変更した以外は実施例1と同様にして単層フィルム(H)を得た。
得られた単層フィルム(H)の水蒸気バリア性とヘイズと粘弾性Tgを測定した。評価結果を表1に示す。
[比較例3]
製造例1で得られた樹脂(A)のペレット40部と製造例4で得られた樹脂(D)のペレット60部とを、ブレンダーで混合した。次いで、二軸混練機(TEM−35B、東芝機械社製)により、以下の混練条件で混練し、押し出し、ペレット化し、重合体組成物(I)のペレットを得た。
混練条件;スクリュー径37mm、L/D=32
スクリュー回転数250rpm
樹脂温度220℃
フィードレート15kg/時間
得られた重合体組成物(I)のペレットをスクリュー径50mmφ、圧縮比2.5、L/D=30のスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するハンガーマニュホールドタイプのTダイ式フィルム溶融押出成形機を使用して以下の成形条件でTダイ成形を行い単層フィルム(I)を得た。
成形条件;ダイリップ : 0.8mm
溶融樹脂温度 : 230℃
Tダイ幅 : 300mm
冷却ロール : 60℃
キャストロール : 60℃"
得られた単層フィルム(I)の水蒸気バリア性とヘイズと粘弾性Tgを測定した。評価結果を表1に示す。
[比較例4]
製造例3で得られた樹脂(C)のペレットを70部、製造例4で得られた樹脂(D)のペレットを30部に変更した以外は実施例2と同様にして重合体組成物(J)、単層フィルム(J)を得た。
得られた単層フィルム(J)の水蒸気バリア性とヘイズと粘弾性Tgを測定した。評価結果を表1に示す。
[比較例5]
製造例1で得られた樹脂(A)のペレットを70部、製造例7で得られた樹脂(G)のペレットを30部に変更した以外は実施例1と同様にして重合体組成物(K)、単層フィルム(K)を得た。
得られた単層フィルム(K)の水蒸気バリア性とヘイズと粘弾性Tgを測定した。評価結果を表1に示す。
実施例及び比較例における評価結果を表2に示す。
Figure 2009179650
<考察>
本発明の重合体組成物を用いて得られたフィルムは、水蒸気バリア性が良好で、かつ、透明性に優れることが判る(実施例1〜6)。
それに対し、非晶性脂環構造含有重合体を混練しない重合体組成物を用いて得られたフィルムは、ヘイズが劣ることが判る(比較例1)。またヘイズを改良するため冷却ロール・キャストロールの温度を下げて得られたフィルムは、透明性が良好になるが、水蒸気バリア性に劣ることが判る(比較例2)。
2−ノルボルネン開環重合水素添加物と、非晶性脂環構造含有重合体とを、90/10〜50/50(重量比)の範囲にない重合体組成物の場合は、水蒸気バリア性に劣ることが判る(比較例3)。
2−ノルボルネン由来の繰り返し単位の全繰り返し単位に対する存在割合が90〜100重量%の範囲になく、融点の低い2−ノルボルネン開環重合体水素添加物と、非晶性脂環構造含有重合体を混練した場合は、水蒸気バリア性が劣ることが判る(比較例4)。
2−ノルボルネン開環重合水素添加物と、2−ノルボルネン化合物重量が、ジシクロペンタジエン化合物重量の1/2より多い非晶性脂環構造含有重合体を混練した場合は、水蒸気バリア性に劣ることが判る(比較例5)。

Claims (2)

  1. 2−ノルボルネンが90〜100重量%と置換基含有ノルボルネン類が10〜0重量%とを含有してなる重合性単量体を開環重合し、水素添加して得られる、融点が110〜145℃、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量が50,000〜200,000、重量平均分子量/数平均分子量が1.5〜10.0である結晶性ノルボルネン系開環重合体(1)と、2−ノルボルネン化合物とジシクロペンタジエン化合物との合計量が90重量%以上100重量%であり、かつ2−ノルボルネン化合物重量が、ジシクロペンタジエン化合物重量の1/2以下である重合性単量体から得られる、ガラス転移温度が50℃以上の、融点を有しない非晶性脂環構造含有重合体(2)とを、90/10〜50/50(重量比)の割合で含有する重合体組成物。
  2. 請求項1記載の重合体組成物からなる、厚さ100μmでの水蒸気透過性が0.40g/m・day以下、かつ厚さ100μmでのヘイズが20%以下であるフィルム。
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