JP5700414B2 - 吸湿性樹脂組成物及び吸湿性多層容器 - Google Patents

吸湿性樹脂組成物及び吸湿性多層容器 Download PDF

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本発明は、吸湿性樹脂組成物に関するものであり、より詳細には、ある種の検査装置や検査試薬などの水分を嫌うものを収容するために使用する吸湿性の容器の形成に好適に使用される吸湿性樹脂組成物に関する。
水分の影響を受け易いものの包装に使用する包装容器では、容器内への水分の浸入を防止すると同時に、容器内の水分を効率よく吸収することが要求される。例えば、血糖値センサなどの湿気によって誤表示を招くおそれなどのある検査装置では、容器内の水分吸収性に対する要求が極めて高い。従って、このような要求を満足するために、容器を水蒸気バリア性の高い熱可塑性樹脂を用いて成形するとともに、該容器内に、シリカゲルやゼオライトなどの吸湿剤(乾燥剤)を充填した袋を、内容品と共に収容しておくという手段が採用されている。
しかしながら、上記のような吸湿剤が充填されている袋を内容品とは別個に容器内に収容しておくという手段では、該袋への吸湿剤の充填及び吸湿剤が充填された袋の容器内への封入などの面倒な手段が必要となるばかりか、該袋の収納により、内容品の充填空間が小さくなってしまい、内容品の収納に支障を来たすなどの問題を生じてしまう。
そこで、特許文献1では、容器を構成する熱可塑性樹脂中に吸湿性の無機化合物を配合することが提案されている。
また、特許文献2では、水蒸気透過性の高い熱可塑性樹脂に吸湿剤を配合した吸湿性樹脂組成物により形成された層と、該層の外側に設けられた水蒸気バリア性の高い熱可塑性樹脂からなる層とを設けた多層容器が提案されている。
特開2004−210392号公報 特開2010−116436号公報
特許文献1は、容器壁を形成する容器内の水分を、容器壁を形成する樹脂中に配合されている吸湿剤により除去するものであり、これにより、吸湿剤が充填された袋を収納する必要が無くなるというメリットがある。
しかしながら、特許文献1の手段では、吸湿剤の吸湿性を十分に発揮させることができないという問題がある。即ち、容器壁を形成する熱可塑性樹脂としては、容器内への水分の浸透を防止するために、水蒸気バリア性の高い樹脂が使用されており、このような水蒸気バリア性の高い樹脂中に吸湿剤を分散させている結果、容器内の水分と吸湿剤との接触が水蒸気バリア性の高い樹脂によって阻害され、吸湿剤の吸湿性が十分に発揮されないのである。
特許文献2で提案されている容器は、特許文献1の手段で発生する問題を有効に解決したものであり、水蒸気透過性の熱可塑性樹脂中に吸湿剤が配合されており、該吸湿剤を含む層を内層としているため、容器内の水分と吸湿剤との接触が阻害されず、吸湿剤の吸湿性を十分に発揮させることが可能となっている。また、このような吸湿剤を含む層の外側には、水蒸気バリア性の高い樹脂による層が形成されているため、容器内への水分の浸透も有効に防止できるようになっている。
しかしながら、特許文献2の容器においては、臭気の発生という新たな問題が生じた。このような臭気の発生は、衛生的観点或いはフレーバー保持などの観点から、医療分野や食品分野では特に大きな問題であり、その改善が求められている。
従って、本発明の目的は、優れた吸湿性を示すと同時に臭気の発生が有効に抑制された吸湿性樹脂組成物、及び該組成物から形成された層を有している多層容器を提供することにある。
本発明によれば、40℃、90%RHの条件下で測定した100μm厚みでの水蒸気透過度が10g/m/day以上である水蒸気透過性熱可塑性樹脂に、吸湿剤と脱臭剤とが配合されてなり、
該吸湿剤が、露点温度が−60℃以下の吸湿特性を示すものであり、
該脱臭剤が、シリカ/アルミナモル比が2.4以上のゼオライトであり、
前記熱可塑性樹脂が、エチレン−(メタ)アクリレート共重合体であることを特徴とする吸湿性樹脂組成物が提供される。
本発明の吸湿性樹脂組成物においては、
(1)前記熱可塑性樹脂が、エチレン−エチルアクリレート共重合体であり、エチルアクリレートの共重合比率が10重量%以上であること、
)前記吸湿剤が、A型ゼオライトであること、
)前記脱臭剤のゼオライトが、シリカ/アルミナモル比が80以上のMFI型ゼオライトであること、
)前記熱可塑性樹脂100重量部当り、前記吸湿剤が30230重量部の量で配合され且つ前記脱臭剤が、1200重量部の量で配合されていること、
が好ましい。
本発明によれば、また、上記の吸湿性樹脂組成物からなる吸湿層と、該吸湿層の外側に形成された40℃、90%RHの条件下で測定した100μm厚みでの水蒸気透過度が5g/m/day以下の水蒸気バリア材からなる層とを含む吸湿性多層容器が提供される。
本発明の吸湿性組成物では、露点が−60℃以下の吸湿剤が使用されているが、このような吸湿性の高い吸湿剤が水蒸気透過性の熱可塑性樹脂中に分散されているため、雰囲気中の水分と吸湿剤との接触が阻害されず、吸湿剤の高い吸湿性能が十分に発揮され、優れた吸湿性を示す。
また、本発明の吸湿性組成物は、シリカ/アルミナモル比が2.4以上、特に80以上のゼオライトを脱臭剤として含んでいるため、臭気の発生も有効に解決されている。即ち、本発明では、吸湿剤の優れた吸湿性を発揮させるため、水蒸気透過性の高い熱可塑性樹脂を使用するが、このような水蒸気透過性の高い熱可塑性樹脂は、臭気の発生という問題をもたらすことが実験的に確認されている。水蒸気透過性の高い熱可塑性樹脂は、アルキル(メタ)アクリレートや酢酸ビニルなどの芳香性のエステル単位を有するものであり、微量ではあるが、このような単位の形成に使用されたモノマー成分が樹脂中に含まれていることが臭気の原因となっている。本発明では、前述した吸湿剤と共に、上記のようなシリカ/アルミナモル比を有するゼオライトが脱臭剤として配合されているため、水分の捕捉と同時に微量のモノマー成分を捕捉し、臭気の発生を有効に防止している。
例えば、シリカ/アルミナモル比が上記範囲よりも低いゼオライトを用いた場合には、臭気の発生を防止することができない。即ち、ゼオライトは、所定の大きさの細孔を有する結晶性化合物であり、きっちりとした大きさの細孔が規則正しく均一に形成されているため、優れた分子篩効果を示すと同時に、各種成分に対する吸着性能にも優れている。従って、ゼオライトは、前述した臭気成分に対しても吸着性を示す。しかしながら、ゼオライトは、水分に対する吸着性(吸湿性)も高く、特にシリカ/アルミナモル比が低い(2.4未満)ゼオライトは親水性であり、このため、水分と臭気成分とが共存する場合、水分が優先的に吸着されてしまい、臭気成分に対する吸着性が不十分となり、この結果、臭気の発生を効果的に抑制することはできない。しかるに、本発明で脱臭剤として使用するゼオライトは、シリカ/アルミナモル比が高く(2.4以上)、シリカリッチであるため、疎水性である。従って、この脱臭剤は、水分よりも有機成分を優先的に吸着するように作用し、この結果、有機成分である前述した臭気成分(モノマー成分)を効果的に捕捉し、臭気の発生を有効に防止できるのである。
このように、本発明の吸湿性樹脂組成物は、臭気を発生せずに優れた吸湿性を示すが、本発明の多層容器では、かかる樹脂組成物の層を内層とし、その外側に水蒸気バリア材の層を形成しているため、容器内への水分の浸入を有効に防止し、しかも臭気を発生することなく、容器内の水分を有効に除去することができる。
このような本発明の多層容器は、水分を嫌う検査装置や検査薬等の包装容器として、特に医療関係の分野で好適に使用される。また、水分を嫌う食品関係、電子部品等の包装容器としても好適に使用することができる。
<吸湿性樹脂組成物>
本発明の吸湿性樹脂組成物は、水蒸気透過性の熱可塑性樹脂(A)をマトリックスとし、この熱可塑性樹脂中に所定の吸湿剤(B)及び脱臭剤(C)を分散させたものである。
水蒸気透過性熱可塑性樹脂(A);
マトリックス樹脂として用いる水蒸気透過性の熱可塑性樹脂は、40℃、90%RHの条件下で測定した100μm厚みでの水蒸気透過度が10g/m/day以上のものである。即ち、このような水蒸気透過性の熱可塑性樹脂をマトリックスとして使用することにより、後述した吸湿剤の優れた吸湿性を十分に発揮させることが可能となる。例えば、水蒸気透過度が上記範囲よりも小さい熱可塑性樹脂を用いた場合には、この熱可塑性樹脂が障壁となって水分と吸湿剤との接触を阻害することとなり、この結果、吸湿剤の吸湿性を十分に発揮させることが困難となってしまう。
上記のような水蒸気透過度を示す熱可塑性樹脂の例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ(メタ)アクリレート、エチレン−(メタ)アクリレート共重合体を挙げることができ、これらの熱可塑性樹脂は、それぞれ単独、或いは2種以上をブレンドして使用することもできる。
本発明において、上記の熱可塑性樹脂の中では、エチレン−(メタ)アクリレート共重合体やエチレン−酢酸ビニル共重合体が好適である。即ち、これらの共重合体は、水蒸気透過度が高く、吸湿剤の吸湿性を十分に発揮させ得るという点で好ましいばかりか、これらの共重合体中には、微量ではあるが芳香性のモノマー成分が含まれており、特に臭気の問題が大きく、臭気の発生を防止できるという本発明の利点が極めて有効となるからである。
また、上記のエチレン−(メタ)アクリレート共重合体としては、エチレン−メチル(メタ)アクリレート、エチレン−エチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができ、特に好ましいものは、エチレン−エチルアクリレート共重合体であり、さらに好ましくは、エチルアクリレートの共重合比が10重量%以上、特に10乃至30重量%のエチレン−エチルアクリレート共重合体である。
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体の中では、酢酸ビニル共重合比が20〜50重量%のものが好適である。
尚、上記のような熱可塑性樹脂は、フィルム等を形成するに足る分子量を有していればよい。
吸湿剤(B);
上述した水蒸気透過性の熱可塑性樹脂に配合される吸湿剤は、露点温度が−60℃以下の吸湿特性を示すものである。即ち、この露点温度は、吸湿剤の吸湿特性を示すパラメーターであり、具体的には、1リットルの容積のデシケータ中に1gの吸湿剤を入れ、30℃、80%RHの環境下で密封し、24時間経過後に測定されたデシケータ内部の露点(凝結が始まる温度)であり、この露点温度が−60℃以下であるということは、極めて高い吸湿性を示すことを意味する。
吸湿剤としては、ある種のゼオライト(露点−80℃)、シリカゲル(露点−65℃)、活性炭、活性白土、活性酸化アルミニウム(露点−73℃)、塩化カルシウム(露点−35℃)、水酸化ナトリウム(露点−38℃)、各種のクレー、タルクなどの天然乃至合成の無機化合物が知られているが、上記のような露点温度(−60℃以下)の吸湿剤はかなり限られており、例えばA型ゼオライトを例示することができる。
ゼオライトは、下記の一般式(1):
kM2/mO・Al・nSiO・pHO (1)
式中、Mは、金属カチオンまたは水素イオンであり、
mは、金属カチオンの価数(水素イオンの場合は1)であり、
k及びnは、正の数であり、
pは、0または正の数である、
で表される組成を有しており、所定の大きさの細孔を有するアルミノケイ酸塩の結晶化合物であり、特にA型ゼオライトは、nの値(即ち、シリカ/アルミナモル比)が2.4より低く、極めて親水性が高く、水分を選択的に吸着することができ(細孔径が3〜4nm程度)、しかも、吸湿性の温度依存性が殆んど無いという点で極めて好適に使用される。
また、吸湿剤として用いるカチオン種Mの種類はナトリウムイオンやカリウムイオンであることが好ましい。吸湿性能に優れ、熱可塑性樹脂に配合した際、樹脂の分解による黄変を抑制することができる。
本発明において、上記のような吸湿剤は、一般に微細な粉末の形態で使用され(例えばレーザー回折法により測定した体積中心の平均粒径D50が1乃至20μm程度)、その配合量は、前述した水蒸気透過性の熱可塑性樹脂(A)100重量部当り、30乃至230重量部、特に40乃至100重量部の範囲にあることが好ましい。即ち、吸湿剤の使用量が必要以上に多量の場合には、この樹脂組成物の成形性が損なわれてしまい、容器への適用が困難となってしまうおそれがあり、また、その使用量が少ない場合には、吸湿性が不満足となってしまうおそれがある。
脱臭剤(C);
本発明において、上述した吸湿剤と共に使用される脱臭剤は、シリカ/アルミナモル比が2.4以上のゼオライト、即ち、前述した一般式(1)におけるnが2.4以上であるシリカリッチのゼオライトである。
即ち、このようなシリカリッチのゼオライトは、親水性が低く、疎水性に富んでいる。前述したシリカ/アルミナモル比が小さいA型ゼオライトが水分を選択的に吸着するのに対して、本発明で用いるシリカリッチのゼオライトは、有機成分、特に前述した水蒸気透過性の熱可塑性樹脂中に含まれる臭気の要因であるモノマー成分を選択的に吸着することができ、従って、臭気の発生を有効に防止することが可能となる。
上記のシリカ/アルミナモル比が2.4以上のゼオライトとしては、X型、Y型、MFI型ゼオライトなどがあり、これらゼオライトの何れをも使用することができるが、中でもシリカ/アルミナモル比が20以上、特に80以上のシリカ超リッチのMFI型ゼオライトが最も好適である。このようなシリカ超リッチのMFI型ゼオライトは、例えばZSM5と呼ばれることもあり、一般に細孔径が0.5nmよりも大きく、特に前述した臭気の要因となるモノマー成分の選択的吸着性に優れている。
また、かかるゼオライトにおいても、カチオン種Mの種類はナトリウムイオンやカリウムイオンであることが好ましい。熱可塑性樹脂に配合した際、樹脂の分解による黄変を抑制するだけなく、分解による臭気発生を低減することができる。
尚、上記のシリカ/アルミナモル比が20以上、特に80以上であるシリカ超リッチのMFI型ゼオライトは、特許第3547791号等により公知であり、例えば水澤化学工業株式会社により、シルトン MT−100、ミズカシーブスEX122等の名称で市販されている。
上記のようなシリカリッチのゼオライトからなる脱臭剤も、前述した吸湿剤と同様、微細な粉末の形態で使用するのが好ましく、例えばレーザー回折法により測定した体積中心の平均粒径D50が1乃至20μm程度の粉末の形態で水蒸気透過性の熱可塑性樹脂に配合するのがよい。その配合量は、水蒸気透過性の熱可塑性樹脂(A)100重量部当り、1乃至200重量部、特に5乃至50重量部の範囲にあることが好ましい。即ち、脱臭剤の使用量が必要以上に多量の場合には、この樹脂組成物の成形性が損なわれてしまい、容器への適用が困難となってしまうおそれがあり、また、その使用量が少ない場合には、臭気の発生を抑制することが困難となるおそれがある。
その他の配合剤;
上述した吸湿剤及び脱臭剤を水蒸気透過性熱可塑性樹脂に分散した本発明の吸湿性樹脂組成物においては、その吸湿性及び臭気成分吸着性を損なわない限りの範囲において、適宜の配合剤、例えば、充填材、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収材、滑剤、顔料等を、適宜の量で配合することができる。
<多層容器>
上述した本発明の吸湿性樹脂組成物は、それ単独でフィルム、シート等に成形し、吸湿性のフィルム乃至シートとして使用することができるが、水蒸気バリア材と組み合わせた多層構造の形で容器として使用することが好適である。容器の形態としては、フィルムを貼り合せた形態の袋状容器、ボトル形状の容器、カップ形状の容器などを挙げることができ、何れの形態の容器にも、本発明の吸湿性組成物を適用することができる。
例えば、吸湿性樹脂組成物からなる吸湿層を内層とし、水蒸気バリア材を、吸湿層の外側に設けた多層容器では、容器内への水分の浸入を防止することができるので、吸湿性樹脂組成物が示す吸湿性によって容器内を乾燥状態に保持することができ、水分を嫌う内容物の収容に好適に適用できる。また、異臭の発生も効果的に抑制されるため、異臭による内容物のフレーバー性の低下を回避できるし、衛生性も良好となる。
上記の水蒸気バリア材としては、特に、40℃、90%RHの条件下で測定した100μm厚みでの水蒸気透過度が5g/m/day以下のものが使用される。即ち、水蒸気透過度が5g/m/dayよりも大きい材料では、水分の外部から容器内への浸入を効果的に抑制できず、このため、容器内を適度な乾燥状態に保持することができず、水分を嫌う内容物の収容には不適当となってしまうからである。
このような水蒸気透過度を有する水蒸気バリア材としては、例えばアルミ箔等の金属箔が代表的であるが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や環状オレフィン系共重合体(COC)なども水蒸気バリア性が高く、上記の吸湿層の外側に設ける水蒸気バリア材として使用することができる。
尚、水蒸気バリア材としてアルミ箔等の金属箔を使用する場合には、該金属箔の内面に酸変性オレフィン樹脂などの接着剤樹脂を塗布し、この接着剤樹脂を介して、該金属箔を前述した吸湿性樹脂組成物から成形されたフィルム(吸湿層)に積層し、この積層フィルムを用いて、吸湿層が内面側に位置するように袋状容器を作製すればよい。
また、水蒸気バリア材として、オレフィン系樹脂や環状オレフィン共重合体などを使用する場合には、共押出や共射出により、吸湿層と水蒸気バリア材の層とを有する積層フィルムを成形し、これを用いて袋状容器を作製することができる。また、共押出や共射出により、試験管形状或いはシート状のプリフォームを成形し、このプリフォームを用いてプラグアシスト成形やブロー成形により、カップ状の容器やボトル状の容器を成形することもできる。
また、このような多層容器において、衛生的観点などから、容器内容物が吸湿剤や脱臭剤との接触を嫌うような場合においては、吸湿性樹脂組成物からなる吸湿層のさらに内側に、水蒸気透過性の層を形成し、これにより、吸湿層の吸湿性を損なわずに、吸湿剤や脱臭剤と容器内容物との接触を回避することができる。
さらに、吸湿層の外側には、酸素バリア層を設けることもできる。酸素バリア層は、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアミド樹脂等の酸素バリア性の高い樹脂や、これらの酸素バリア性樹脂に、酸素吸収成分(酸化性有機成分や遷移金属触媒成分など)が分散されたものであり、このような酸素バリア層を形成することにより、容器内への酸素の透過も防止することができる。
尚、上述した多層構造を形成するに際して、隣接する層同士の接着性が不十分な場合には、前述した酸変性オレフィン系樹脂等のそれ自体公知の接着剤樹脂による接着剤層を間に介在させることができる。
上述した各層の厚みは、各層に要求される特性が十分に発揮され且つ容器壁のトータル厚みが必要以上に厚くならない程度に設定される。例えば、用途によっても異なるが、本発明の吸湿性樹脂組成物から形成される吸湿層の厚みは、一般に、100乃至2000μm程度とすればよい。
上記のようにして製造される本発明の多層容器は、水分を嫌う内容物、例えば血糖値センサなどに代表される検査装置や各種の検査試薬、各種の電気部品や食品類などの収容に適しており、さらに、臭気の発生も有効に防止されているため、衛生性やフレーバー保持性などが要求される内容物の収容にも適している。
本発明を次の実施例及び比較例によりさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。実施例8は参考例とする。
尚、実施例及び比較例での各種の測定及び吸湿性樹脂組成物の調製は、以下の方法で行った。
1.水蒸気透過度の測定;
50tホットプレス(庄司鉄工社製)により200℃で熱可塑性樹脂を加熱溶融し、厚み約500μmのシートを作製した。得られたシートの40℃ 90%RHにおける水蒸気透過度を水蒸気透過測定装置(PERMATRAN−W3/30:MOCON社製)により測定し、100μm厚に換算して、熱可塑性樹脂の水蒸気透過度とした。
2.露点温度の測定;
1L容デシケータ中に吸湿剤1gと静電容量式露点計を入れ、30℃、80%RH環境下にて密封し、24時間後内部の露点温度を測定した。
3.シリカ/アルミナ比の測定
ゼオライトのシリカ/アルミナ比(モル比)は、蛍光X線分析装置により求めた。
4.吸湿性樹脂組成物の調製;
出口部分にストランドダイを装着した二軸押出機(スクリュー径φ20 L/D=32.5ULTNano05−20AG:テクノベル社製)を用意した。
上記の二軸押出機により、押出温度160℃、スクリュー回転数200rpmで真空ベントを引きながら熱可塑性樹脂を溶融混練した。同時に粉体フィーダーを用いて、押出機ホッパー下より吸湿剤および脱臭剤を配合した。ストランドはコンベア上にて空冷後、ペレット状にカッティングした。
5.吸湿性樹脂組成物の成形性;
押し出されたストランドの外観やベントアップの有無を確認し、下記の判断基準で、吸湿性樹脂組成物を作製する際の目視評価を行ない、成形性の尺度とした。
○:特に問題なし。
△:ストランド中にブツが発生し、分散が不十分である。
×:樹脂圧の増加等によるベントアップ等により作製できない。
6.吸湿性樹脂組成物の吸湿性;
(試験用シートの作製)
50tホットプレス(庄司鉄工社製)により160℃で熱可塑性樹脂を加熱溶融し、厚み約1mmのシートを作製した。これを0.8gとなるように切り分けた。
(吸湿性の評価)
上記で作製したシート0.8gおよびワイヤレス式温湿度計(ハイグロクロン:KNラボラトリーズ社製)をポリプロピレンフィルム、接着剤、スチール箔からなる口径78mm、内容量84ccの丸形カップ(ハイレトフレックスHR78−84;東洋製罐社製)中に入れ、30℃ 80%RHの雰囲気下において、アルミ/ポリプロピレンで積層した蓋材で容器口部をヒートシールした。
24時間静置後、容器内部の湿度により、吸湿性を評価した。
○:容器内の湿度が10%RH以下である。
×:容器内の湿度が10%RHより高い。
7.脱臭性評価;
吸湿性の評価の場合と同様にして作製した試験用シート0.8gを、前記スチール箔からなる容器に入れ、30℃ 80%RHの雰囲気下において、アルミ/ポリプロピレンで積層した蓋材で容器口部をヒートシールした。
50℃、48時間後、室温に戻し5日静置後、容器内部の臭気が無臭になったものを○、臭気がやや残存していたものを△、全く脱臭できていなかったものを×とした。
(実施例1〜5)
熱可塑性樹脂、吸湿剤及び脱臭剤として下記のものを用意した。
熱可塑性樹脂;
エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)
日本ユニカー社製NUC−6170
水蒸気透過度:26.8g/m/day
エチルアクリレート共重合比率:18wt%
吸湿剤;
カリウム置換A型ゼオライト
ユニオン昭和社製
露点温度:−80℃
細孔径:0.3nm
脱臭剤;
Na置換MFI型ゼオライト(ZSM−5)
水澤化学工業社製
シリカ/アルミナモル比:100
細孔径:0.6nm
上記の熱可塑性樹脂、吸湿剤及び脱臭剤を、表1で示す配合量で溶融混練して吸湿性樹脂組成物を調製し、混練時の目視評価、吸湿性評価および脱臭性評価を行ない、その結果を表1に合わせて示した。
いずれの組成物においてもブツの発生はなく、均一に分散しており、ベントアップ等の問題なく作製することができた。上記方法により作製した単層シートの吸湿性評価において、容器内部の湿度はいずれにおいても10%RH以下であった。また、上記方法により作製した単層シートの脱臭性評価において、実施例1、実施例2、実施例4は容器内部の臭気が無臭であった。実施例3、実施例5についても脱臭効果はみられるが、臭気がやや残存していた。
Figure 0005700414
(実施例6)
脱臭剤として、下記の13X型ゼオライトを用意した。
13X型ゼオライト;
ユニオン昭和社製
シリカ/アルミナ比:2.46
細孔径:1.0nm
上記の13X型ゼオライトを脱臭剤として用いた以外は、実施例1と同様に、吸湿性樹脂組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行い、その結果を表2に示した。
混練時の目視評価は良好であり、特に問題なく吸湿性樹脂組成物を調製することができた。また、吸湿性評価においては容器内部の湿度が10%RH以下であり、脱臭性評価においては容器内部の臭気が無臭であった。
(実施例7)
熱可塑性樹脂として、下記のエチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)を用意した。
エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)
日本ユニカー社製EERN−023
水蒸気透過度:18.4g/m/day
エチルアクリレート共重合比率:13wt%
上記のエチレン−エチルアクリレート共重合体をベースの熱可塑性樹脂(ベース樹脂)として用いた以外は、実施例1と同様に、吸湿性樹脂組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行い、その結果を表2に示した。
混練時の目視評価は良好であり、特に問題なく吸湿性樹脂組成物を調製することができた。また、吸湿性評価において、容器内部の湿度が10%RH以下であり、脱臭性評価において、容器内部の臭気は無臭であった。
(実施例8)
熱可塑性樹脂として、下記のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を用意した。
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)
三井デュポンポリケミカル社製エバフレックス360
水蒸気透過度:30.3g/m/day
酢酸ビニル共重合比率:25wt%
上記のエチレン−酢酸ビニル共重合体をベースの熱可塑性樹脂(ベース樹脂)として用いた以外は、実施例1と同様に、吸湿性樹脂組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行い、その結果を表2に示した。
特に問題なく吸湿性樹脂組成物を調製することができた。また、吸湿性評価において、容器内部の湿度が10%RH以下であり、脱臭性評価において、容器内部の臭気は無臭であった。
(実施例9)
吸湿剤として、以下シリカゲルを用意した。
シリカゲル:
和光純薬社製 Wakogel C−500HG
上記のシリカゲルを吸湿剤として用いた以外は、実施例1と同様に、吸湿性樹脂組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表2に示した。
混練時の目視評価は良好であり、特に問題なく吸湿性樹脂組成物を調製することができた。また、吸湿性評価においては容器内部の湿度が10%RH以下であり、脱臭性評価においては容器内部の臭気が無臭であった。
Figure 0005700414
(比較例1)
脱臭剤を配合しなかった以外は、実施例1と同様に、吸湿性樹脂組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行い、その結果を表3に示した。
(比較例2)
吸湿剤を配合しなかった以外は、実施例1と同様に、吸湿性樹脂組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行い、その結果を表3に示した。
(比較例3)
脱臭剤として、下記のCa置換A型ゼオライトを用意した。
Ca置換A型ゼオライト;
ユニオン昭和社製
シリカ/アルミナモル比:2.0
細孔径:0.5nm
上記のCa置換A型ゼオライトを脱臭剤として使用し、且つこの配合量を20重量部とした以外は、実施例1と同様に吸湿性樹脂組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行い、その結果を表3に示した。
尚、混練時の目視評価は良好であり、特に問題なく吸湿性樹脂組成物を調製することができ、吸湿性評価においては容器内部の湿度が10%RH以下であったが、脱臭性評価においては容器内部の臭気は全く脱臭できていなかった。
(比較例4)
熱可塑性樹脂として、下記のエチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)を用意した。
エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)
日本ユニカー社製NUC-6220
水蒸気透過度:7.7g/m/day
エチルアクリレート共重合比率:7wt%
上記のエチレン−エチルアクリレート共重合体をベースの熱可塑性樹脂(ベース樹脂)として用いた以外は、実施例1と同様に、吸湿性樹脂組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行い、その結果を表4に示した。
混練時の目視評価は良好であり、特に問題なく吸湿性樹脂組成物を調製することができ、また、脱臭性評価において、容器内部の臭気は無臭であった。しかし、吸湿性評価において、容器内部の湿度が10%RHを超えた。この原因として、熱可塑性樹脂の水蒸気透過度が低いために、吸湿剤の効果が十分発揮できていないためと考えられる。
(比較例5)
ベースの熱可塑性樹脂を、水蒸気透過度1.7g/m/dayである低密度ポリエチレンに変更した以外は、比較例1と同様に、吸湿性樹脂組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行い、その結果を表4に示した。
混練時の目視評価は良好であり、特に問題なく吸湿性樹脂組成物を調製することができた。また、樹脂そのものの臭気が少なく、脱臭効果は確認できなかった。しかし、吸湿性評価において、容器内部の湿度が10%RHを超えた。この原因として、熱可塑性樹脂の水蒸気透過度が低いために、吸湿剤の効果が十分発揮できていないためと考えられる。
(比較例6)
ベースの熱可塑性樹脂を、水蒸気透過度2.4g/m/dayであるポリプロピレンに変更した以外は、比較例1と同様に、吸湿性樹脂組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行い、その結果を表4に示した。
混練時の目視評価は良好であり、特に問題なく吸湿性樹脂組成物を調製することができた。また、樹脂そのものの臭気が少なく、脱臭効果は確認できなかった。しかし、吸湿性評価において、容器内部の湿度が10%RHを超えた。この原因として、熱可塑性樹脂の水蒸気透過度が低いために、吸湿剤の効果が十分発揮できていないためと考えられる。
(比較例7)
ベースの熱可塑性樹脂を水蒸気透過度5.5g/m・dayであるポリエチレン−テレフタレート(PET)に変更した以外は、比較例1と同様に、吸湿性樹脂組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行い、その結果を表4に示した。
混練時の目視評価は良好であり、特に問題なく吸湿性樹脂組成物を調製することができた。また、樹脂そのものの臭気が少なく、脱臭効果は確認できなかった。しかし、吸湿性評価において、容器内部の湿度が10%RHを超えた。この原因として、熱可塑性樹脂の水蒸気透過度が低いために、吸湿剤の効果が十分発揮できていないためと考えられる。
Figure 0005700414
(実施例10)
水蒸気透過度が2.4g/m/dayであるポリプロピレンを用意した。
2材射出成形機を用い、実施例1の吸湿性樹脂組成物を内層(容器胴部肉厚1500μm)、上記ポリプロピレンを外層(容器胴部肉厚1600μm)とする円筒状多層容器を成形した。
30℃ 80%RHの雰囲気内において、この多層容器にワイヤレス式温湿度計を入れて密封した。24時間静置後、容器内部の湿度は、10%RH以下になっており、優れた吸湿性が発揮されていた。
また、30℃80%RHの雰囲気下において、上記の多層容器を密封し、50℃、48時間後、室温に戻し、5日静置後、容器内部の臭気を評価したところ、容器内部の臭気は無臭であった。

Claims (6)

  1. 40℃、90%RHの条件下で測定した100μm厚みでの水蒸気透過度が10g/m/day以上である水蒸気透過性熱可塑性樹脂に、吸湿剤と脱臭剤とが配合されてなり、
    該吸湿剤が、露点温度が−60℃以下の吸湿特性を示すものであり、
    該脱臭剤が、シリカ/アルミナモル比が2.4以上のゼオライトであり、
    前記熱可塑性樹脂が、エチレン−(メタ)アクリレート共重合体であることを特徴とする吸湿性樹脂組成物。
  2. 前記熱可塑性樹脂が、エチレン−エチルアクリレート共重合体であり、エチルアクリレートの共重合比率が10重量%以上である請求項1に記載の吸湿性樹脂組成物。
  3. 前記吸湿剤が、A型ゼオライトである請求項1または2に記載の吸湿性樹脂組成物。
  4. 前記脱臭剤のゼオライトが、シリカ/アルミナモル比が80以上のMFI型ゼオライトである請求項1〜3の何れかに記載の吸湿性樹脂組成物。
  5. 前記熱可塑性樹脂100重量部当り、前記吸湿剤が30230重量部の量で配合され且つ前記脱臭剤が、1200重量部の量で配合されている請求項1〜4の何れかに記載の吸湿性樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5の何れかに記載の吸湿性樹脂組成物からなる吸湿性層と、該吸湿性層の外側に形成された40℃、90%RHの条件下で測定した100μm厚みでの水蒸気透過度が5g/m/day以下の水蒸気バリア材からなる層とを含む吸湿性多層容器。
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