JP3962882B2 - 脱酸素性樹脂組成物、これよりなるシート又はフィルム及び包装容器 - Google Patents

脱酸素性樹脂組成物、これよりなるシート又はフィルム及び包装容器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は樹脂加工性に優れ、かつ異臭発生がなく香り保持性に優れた脱酸素性樹脂組成物に関する。詳しくは、熱可塑性樹脂中に、水分を得て酸素吸収反応を生起する脱酸素剤,活性炭及びアルカリ土類金属酸化物を含有させてなることを特徴とする脱酸素性樹脂組成物に関する。さらに本発明は前記脱酸素性樹脂組成物よりなる単層又は多層のシート又はフィルム並びに包装容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、脱酸素包装技術の一つとして、脱酸素剤を配合した脱酸素性樹脂層を配した多層材料で容器を構成し、容器のガスバリア性の向上を図ると共に容器自体に脱酸素機能を付与した包装容器の開発が行われている。脱酸素機能を備えた包装容器は、通常、脱酸素剤を配合した脱酸素性樹脂層を中間層とし、外側にガスバリア性の外層と内側に酸素透過性の内層とを備えた脱酸素性多層体で構成されるが、袋,カップ,トレイ,ボトル等の容器に容易に成形加工な多層樹脂積層体として、シート又はフィルム状の脱酸素性多層体が開発されている。脱酸素性多層体としては、例えば、特公平6−51397,特開平2−72851,特開平7−309323および特開平8−72941等に開示されている、脱酸素剤を樹脂中に分散させた層を含む多層フィルムやシートが利用できる。しかし、これら従来技術のものは、容器内の酸素を吸収除去して容器内を無酸素状態に保持するものであるが、樹脂中の脱酸素剤成分の酸化反応時等に発生する異臭成分により、被保存物の香味を低下させるという問題を有していた。
【0003】
このような臭気の問題を解決するために、臭気成分を吸収する吸着剤を用いることはよく知られたことであり、例えば、特開平5−247276には酸化触媒と共に消臭を目的に吸着剤を含有する酸素バリアー性樹脂組成物が提案され、また、特開平7−67594には、脱酸素多層容器内部の異味・異臭の発生を防止するために、脱酸素性樹脂層中に一定以上の比表面積を有する吸着剤を含有する多層容器及び脱酸素性樹脂層の内側に前記の吸着剤を含有する層を一層設けた多層容器が提案されている。これら従来技術では、吸着剤として良く知られるゼオライト,シリカゲル,活性炭,珪藻土等が用いられている。しかしながら、これらの吸着剤は必ずしもすべてが有効なわけでもなく、また水分を吸着し易い吸着剤は、樹脂加工に際し保有する水分に起因する種々のトラブルを起こし易く、良好な加工性が得られないという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、臭気の吸収除去に活性炭を用いることはよく知られているが、吸着性能に優れた活性炭は大気中で容易に水分を吸着し、通常1%以上の水分を保有していることが多い。このように水分を保有した活性炭を脱酸素剤配合の樹脂に添加して、単層又は多層のシートやフィルム、或いは容器等に熱成形加工しようとすると、活性炭に保有された水分が樹脂中で発泡を起こして外観の良好なものを安定して得ることができず、時には樹脂加工そのもが不可能になることもある。このため、脱臭性能に優れた活性炭を利用しようとすると、大気中にあったものは使用に際し乾燥処理が必要であり、乾燥状態のものは使用まで手間のかかる防湿管理が必要となる。仮に水分含量が低く乾燥状態にある活性炭を用いて問題なく加工できたとしても、得られたシートやフィルムを大気中に保管しておくと吸湿し、これを容器等に二次加工しようとすると、やはり発泡により表面に凹凸が発生し、二次加工品の表面平滑性が損なわれるという問題が起こる。また、大気中であまり吸湿しないような活性炭では、樹脂加工に問題がなくても、脱臭性能が低いため添加して用いる意味がない。このように、脱酸素剤を含有する樹脂中に、活性炭を単独で添加しただけでは、保香性に優れかつ加工性が優れた脱酸素性樹脂組成物を製造することが困難である。
以上で述べた様に、水分を保有する活性炭を添加しても、熱成形加工に際して発泡を起こすことがなく、加工性が良好で、容易に外観良好な単層又は多層のシートやフィルム、さらには容器等への熱成形加工が可能であり、しかも活性炭がもつ異味・異臭成分を吸着する機能を発揮することができ、香味保持性に優れた新規な脱酸素性樹脂組成物の開発が必要とされてきた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、熱可塑性樹脂中に、水分を得て酸素吸収反応を生起する脱酸素剤を含有させた樹脂組成物に、活性炭とアルカリ土類金属酸化物とを配合することにより、上記課題を容易に解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、保香性と樹脂加工性に優れた脱酸素性樹脂組成物を提供するものであり、熱可塑性樹脂中に、水分を得て酸素吸収反応を生起する脱酸素剤,活性炭及びアルカリ土類金属酸化物を含有させてなる脱酸素性樹脂組成物に関する。
ここで、上記本発明の脱酸素性樹脂組成物においては、脱酸素剤の含有率が脱酸素性樹脂組成物に基いて10〜80重量%であり、かつ該脱酸素剤100重量部に対して、活性炭の含有率が0.1〜10重量部、及びアルカリ土類金属酸化物の含有率が0.1〜10重量部であることが好ましい。
【0006】
さらに本発明は、上記の脱酸素性樹脂組成物からなる脱酸素性シート又はフィルムに関する。
さらに本発明は、上記の脱酸素性樹脂組成物からなる脱酸素性樹脂層の両面に隔離層を配し、この隔離層のうち少なくとも一面が通気性隔離層である脱酸素性多層体に関する。
さらに本発明は、容器の一部又は全部が上記の脱酸素性多層体からなり、容器内部の酸素を吸収するようにしてなる包装容器に関する。
本発明によれば、本発明の脱酸素性樹脂組成物を上記組成のものとすることにより、たとえ活性炭が水分を保有するものであっても、共存するアルカリ土類金属酸化物が水分を吸収除去するために、該脱酸素性樹脂組成物の熱成形加工に際し、発泡を起こすようなことがなく、加工性の良好なものとなる。このため、本発明に係る脱酸素性樹脂組成物を樹脂加工して、表面が平滑で外観良好な単層又は多層のシートやフィルム、或いは容器等に容易に加工できる。また本発明に係るシートやフィルム状の多層体を、容器等に熱成形加工するに際しても、発泡により表面に凹凸が生じるようなことがなく、外観を損なうようなことがない。もって、活性炭がもつ異味・異臭成分を吸着する機能を発揮することができ、香味保持性に優れた脱酸素性樹脂組成物とすることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に係る脱酸素剤としては、水分を得て酸素吸収反応を生起することができ、熱可塑性樹脂中に分散可能なものが使用でき、殊に金属鉄を酸素吸収反応の主剤とする脱酸素剤が好ましく、また金属鉄とハロゲン化金属とを含有するものがより好ましく、鉄粉にハロゲン化金属を付着させたものが最も好ましい。
脱酸素剤に用いる主剤の金属鉄としては、酸素吸収反応を起こしうるものであれば純度等に特に制限することなく使用でき、例えば、表面の一部が既に酸化していても、また他の金属を含有するものであってもよい。また金属鉄は粒状または繊維状のものが好ましく、例えば、還元鉄粉,噴霧鉄粉,電解鉄粉等の鉄粉、ダライ粉,鋳鉄,鋼材等の各種鉄の粉砕物や研削品等が用いられる。鉄粉は、酸素吸収性樹脂の層厚を薄くするために細かい方がよく、平均粒径が200μm 以下が好ましく、特に1〜50μm が好ましい。
【0008】
ハロゲン化金属としては、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物,臭化物,ヨウ化物が用いられ、リチウム,ナトリウム,カリウム,マグネシウム,カルシウム,バリウム等の塩化物が好ましく用いられる。ハロゲン化金属の配合量は、金属鉄100重量部当たり好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。ハロゲン化金属は主剤の酸素吸収反応に触媒的に作用するものであり、ハロゲン化金属を鉄粉に付着させることによってハロゲン化金属の配合量を少なくすることができる。
上記ハロゲン化金属は、脱酸素剤の一成分として金属鉄とともに樹脂中に配合されるが、樹脂中では金属鉄に付着して容易に分離しないよう予め混合して添加することが好ましい。例えば、らいかい機,ボールミル,スピードミル等を用いハロゲン化金属と鉄粉を混合する方法、鉄粉表面の凹部にハロゲン化金属を埋め込む方法、バインダーを用いてハロゲン化金属を鉄粉表面に付着させる方法、ハロゲン化金属水溶液と鉄粉を混合した後乾燥して鉄粉表面に付着させる方法等の方法がとられる。
【0009】
本発明においては、脱酸素性樹脂組成物に添加する活性炭の保有水分の吸着物質として、アルカリ土類金属酸化物を用いることにより、優れた保香性や樹脂加工性等の高性能を達成できるが、公知の水分吸着剤であるシリカゲルやゼオライトではこのような高性能の達成は困難である。
即ち、上記樹脂組成物を溶融,成形加工する際の温度は、一般に90℃以上であるが、シリカゲルやゼオライト等の水分吸着剤では、樹脂加工を行う90℃以上の温度域で、吸着した水分を放出し、放出した水分が樹脂組成物内で発泡し、成形品の外観が悪くなるという問題がある。一方、本発明のようにアルカリ土類金属酸化物を用いた場合には、水分を吸着しても350℃以上の温度域に達しない限り、吸着した水分を放出しないため、この様な問題が発生しないという利点を有している。
アルカリ土類金属酸化物としては、酸化マグネシウム,酸化カルシウム,酸化ストロンチウム,酸化バリウムが挙げられ、入手しやすさ、反応性等の点から、酸化マグネシウムまたは酸化カルシウムが特に好ましい。アルカリ土類金属酸化物の粒子の大きさは、平均粒径1〜200μm の範囲が好ましく、1〜50μm の範囲がより好ましい。アルカリ土類金属酸化物の粒径は脱酸素剤の粒径に同等もしくはそれより細かいことが望ましい。
【0010】
活性炭は、比表面積が大きい程吸着性能に優れ、比表面積100m2/g(BET法)以上のものが好ましく、500m2/g以上のものが特に好ましく用いられる。また吸着性能に優れた活性炭ほど吸湿し易く、23℃、相対湿度(RH)60%下に保存した場合に水分を1%以上吸着するものが好ましく用いられる。また活性炭の吸着性能は、一般にメチレンブルー脱色力及びカラメル脱色力により表されるが、異味・異臭成分を効率よく吸着するためには、メチレンブルー脱色力及びカラメル脱色力ともに高い方が好ましい。本発明においては、それぞれ、カラメル脱色力が90%以上(JISK1470)、及びメチレンブルー脱色力が150ml/g以上(JISK1470)を示す活性炭が好ましく用いられる。
活性炭としては、椰子殻,木材,石炭を原料としたものが使用され、活性炭の製法は、特に制限はないが、水蒸気賦活法、塩化亜鉛賦活法等の製法で得られた活性炭が好ましく用いられる。活性炭の粒径は脱酸素剤の粒径に同等もしくはそれより細かいことが望ましく、好ましくは平均粒径1〜200μm、より好ましくは1〜50μmの範囲に選ばれる。活性炭には乾燥したドライ炭や水分を予め含有させたウェット炭があるが、本発明では水分含有量10%(JISK1470)以下のドライ炭が好ましく用いられる。活性炭の水分含有量が多くなればなるほどアルカリ土類金属酸化物を多く必要とするために、水分を多く含有する活性炭は好ましくない。
【0011】
脱酸素性樹脂組成物に用いる樹脂、すなわち上記脱酸素剤,活性炭およびアルカリ土類金属酸化物を含有する熱可塑性樹脂は、酸素透過係数が200cc・0.1mm/m2・atm ・day (23℃、RH60%)以上である熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、各種のポリエチレン,ポリプロピレン,プロピレン−エチレンランダム共重合体,プロピレン−エチレンブロック共重合体,ポリブタジエン,ポリメチルペンテン等のポリオレフィン類、エラストマー及びこれらの変性物、シリコーン樹脂とのグラフト重合物あるいはこれらの混合物が用いられる。上記の樹脂の中でも、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエチレンとポリプロピレンの混合物,プロピレン−エチレンランダム共重合体,プロピレン−エチレンブロック共重合体,エラストマー又はこれらの混合物が好ましく用いられる。
脱酸素性樹脂組成物における脱酸素剤含有率は、通常は脱酸素性樹脂組成物に基いて2〜93重量%であり、好ましくは10〜80重量%である。脱酸素剤の含有率が、上記範囲より少なくなると十分な酸素吸収性能が得られず、また高すぎると樹脂組成物の機械的強度や成形性に問題を生じる。脱酸素性樹脂組成物における活性炭の含有量は、脱酸素剤100重量部に対し0.1〜10重量部が好ましい。活性炭の含有量が上記範囲より少なくなると十分な香味保持性が得られず、また高すぎると樹脂組成物の機械的強度や成形性に問題を生じる。また、アルカリ土類金属酸化物の含有量は、脱酸素剤100重量部に対し0.1〜10重量部が好ましい。アルカリ土類金属の量が上記範囲より少なくなると、十分な水分除去効果が得られず、また多すぎると脱酸素反応に必要な水分までも吸着し、脱酸素性樹脂組成物の酸素吸収反応を阻害するため好ましくない。
【0012】
また脱酸素性樹脂組成物には、必要に応じて、有機,無機系の染料や顔料等の着色剤、シラン系,チタネート系等の分散剤、ポリアクリル酸系化合物等の吸水剤、クレー,シリカ,デンプン等の充填剤を添加することができる。
上記脱酸素性樹脂組成物を単層のシートまたはフィルムに加工して脱酸素体として用いることができる。
また、上記本発明の脱酸素性樹脂組成物を脱酸素性樹脂層として多層化し、シート状またはフィルム状の脱酸素性多層体とすることができる。
本発明に係る脱酸素性多層体は、脱酸素性樹脂組成物からなる脱酸素性樹脂層を中間層とし、これの両面に積層した隔離層の少なくとも一層が通気性隔離層であり、用途に応じた積層構成をとることができる。具体的には、脱酸素性樹脂層の一面に通気性隔離層、他面にガスバリア性隔離層を配してバリア材料(片面吸収型)とすることができ、脱酸素性樹脂層の両面に通気性隔離層を配してノンバリア材料(両面吸収型)とすることができる。上記脱酸素性多層体における脱酸素性樹脂層の厚みは1000μm 以下、好ましくは500μm 以下で選ばれる。
通気性隔離層に用いられる樹脂は熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、各種のポリエチレン,ポリプロピレン,プロピレン−エチレンランダム共重合体,プロピレン−エチレンブロック共重合体,ポリブタジエン,ポリメチルペンテン等のポリオレフィン類、エラストマー及びこれらの変性物,シリコーン樹脂とのグラフト重合物あるいはこれらの混合物が用いられる。上記の樹脂の中でも、ポリエチレン,ポリプロピレン,プロピレン−エチレンランダム共重合体,プロピレン−エチレンブロック共重合体,エラストマー又はこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0013】
また通気性隔離層は、本発明の多層体を包装容器とした際に最内層として、シーラント層の役割を果たすことが多く、前記熱可塑性樹脂としてヒートシール可能な樹脂を選択することが好ましく、さもなければ、通気性隔離層の最外面側に更にヒートシール性の層を設けてもよい。尚、通気性隔離層の最外層のヒートシール性層に、必要に応じて顔料等の着色剤,充填剤,帯電防止剤,安定剤等の添加剤を配合することができる。
上記通気性隔離層は、脱酸素性樹脂組成物からなる酸素吸収層の隔離層の役割を果たすと共に、酸素を迅速かつ効率よく透過する機能を有するものであり、通気性隔離層の構成の如何、層厚にかかわらず、その酸素透過度は少なくとも100cc/m2・ atm ・ day (23℃、RH60%)であることが望ましい。このため、通気性隔離層の膜厚は、強度,加工性,コスト等が許容する範囲でなるべく薄くし、酸素透過性を大きくすることが好ましい。また、通気性隔離層は、必ずしも無孔の樹脂層とは限らず、前記熱可塑性樹脂からなる通気性の微多孔膜や不織布であってもよい。
ガスバリア性隔離層は、本発明の多層体を包装容器とした際に酸素吸収層の外層に位置し、その酸素透過度が50cc/m2・day ・atm (23℃、RH100%)以下であることが好ましい。ガスバリア性隔離層には、ポリエステル,ポリアミド,エチレン−ビニルアルコール共重合体等の酸素透過性の低い熱可塑性樹脂、アルミニウム,スズ等の金属箔を積層したフィルム、アルミニウム,シリカ等を蒸着したフィルム等が用いられる。また、脱酸素性多層体のガスバリア性隔離層側には、必要に応じ、脱酸素性多層体の強度を補強するための補強層や接着剤層等を設けることができる。
【0014】
本発明の脱酸素性多層体の製造方法及び成形加工方法としては、公知の樹脂成形加工技術、例えば、Tダイ,サーキュラーダイを用いた多層共押出し成形、真空成形,圧空成形等のシート成形法、ダイレクトブロー,延伸ブロー等の多層ブロー成形法、共射出等の射出成形法、他に押出ラミネート,熱ラミネート,ドライラミネート,ホットメルトラミネート等のラミネート法や各種コート法など公知のコンバーティング技術、またはこれらを組み合わせて用いることができる。
本発明の脱酸素性多層体は、酸素吸収性のバリア材料(片面吸収型)またはノンバリア材料(両面吸収型)の包装材料として、包装容器を脱酸素性能を備えたものとするのに用いられる。バリア材料として、フィルム,トレイ,カップ,チューブ,ボトル,袋等の包装容器の外装材の一部または全部に用い、容器外から侵入する酸素の他、容器内の酸素を吸収して、被包装納物の酸素による変質等を防止することができる。また、トレイ,ボトル等の容器の開口部の蓋、トップシールフィルムなどの部材として使用することができる。また、ノンバリア材料としては、例えば、台紙,中仕切り等のシートの形態をとり、包装材料の一部として密封性容器の内部に挿入され、又、トレイ,ボトル等の容器とし、被包装物を収納した後更にガスバリア性フィルム等に外包して用いられる。
【0015】
【実施例】
以下に実施例及び比較例をもって本発明の効果を具体的に示す。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1
平均粒径30μm の還元鉄粉100kgを加熱ジャケット付き真空混合乾燥機中に投入し、10mmHgの減圧下140℃で加熱しつつ、塩化カルシウム50重量%水溶液5kgを噴霧、乾燥した後、篩い分けして100メッシュオーバーの粗粒を除き脱酸素剤を得た。
次に、ベント付き45mmφ同方向回転2軸押出機と定量フィーダーからなる押出し装置を用いて、エチレン−プロピレンランダム共重合体と上記脱酸素剤とを重量比1:1で混練し、ストランドダイから押し出した後、空冷、破砕してマスターバッチAを得た。同様に上記押出機を用いて、平均粒径20μm の酸化カルシウムと低密度ポリエチレンとを重量比1:1で混練し、マスターバッチBを得た。同様に上記押出機を用い、水蒸気賦活法で得られた木質系活性炭と上記マスターバッチBを1:4の重量比で混練し押し出して、マスターバッチCを得た。用いた木質系活性炭の性状は、水分含有率3%(JISK1470)、平均粒径20μm 、比表面積1200m2 /g(BET法)、カラメル脱色力95%、メチレンブルー脱色力190ml/g(JISK1470)であり、この場合、マスターバッチCはストランドダイから良好に押し出すことができた。得られたマスターバッチCの組成は、低密度ポリエチレン:活性炭:酸化カルシウム=2:1:2となり、活性炭20重量%及び酸化カルシウム40重量%を含む低密度ポリエチレンベースのマスターバッチとして用いた。
【0016】
【表1】
Figure 0003962882
【0017】
次いで、第1〜第5押出機,フィードブロック,Tダイ,冷却ロール,引取装置,スリッターおよび巻取り機からなる5種6層多層シート成形装置を用い、第1〜第5押出機から、それぞれ、上記表1に示す樹脂組成物を押出し、図1に示す層3/層2/層13/層14/層15/層16の順に積層した脱酸素性多層シート(650mm幅)を製造した。脱酸素性樹脂層の組成は、熱可塑性樹脂(エチレン−プロピレンランダム共重合体及び低密度ポリエチレン):脱酸素剤:活性炭:酸化カルシウム=49.5:47.5:1:2(重量比)であった。得られた多層シートの表面外観は平滑で良好であった。この多層シートの各層は、それぞれ、層3:通気性隔離層(100μm )、層2;脱酸素性樹脂層(200μm )、層13;接着剤層(20μm )、層14;ガスバリア層(40μm )、層15接着剤層(20μm )、層16;補強層(320μm )の役割を果たす(()内は膜厚を示す。)。製造した多層シートは、塩化ビニル製パイプ(内径3インチ)に30m単位で巻き取り、これをアルミ箔積層ポリプロピレンフィルムで防湿包装して、実施例2のトレイ状容器の製造に備えた。
【0018】
比較例1
実施例1の押出し装置を用い、実施例1で用いた木質系活性炭(水分含有率3%)と低密度ポリエチレンとを重量比1:4の割合で混練、押出しを試みたが、発泡が起こり、ストランドダイより良好に押し出すことができず、活性炭含有の低密度ポリエチレンマスターバッチを得ることができなかった。
参考例1
実施例1の押出し装置を用い、前記の木質系活性炭(水分含有率3%)を予め電気炉で200℃、2時間乾燥処理したものと前記低密度ポリエチレンとを重量比1:4で押し出し、活性炭20%含有の低密度ポリエチレンベースのマスターバッチDを得た。次に、実施例1の多層シート成形装置を用いて、第2押出機のマスターバッチCをマスターバッチDに変更したこと以外は実施例1と同様にして、多層シートの製造を試みた。しかし、得られた多層シートを観察したところ、シート表面には凹凸が発生して表面は平滑でなく、シート外観は不良であり、また、層2(脱酸素性樹脂層)内には気泡の発生が認められた。製造した多層シートは、一応、30m単位で巻き取り、これをアルミ箔積層ポリプロピレンフィルムで防湿包装して、後記比較例2のトレイ状容器の製造に備えた。
【0019】
参考例2
実施例1の多層シート成形装置を用いて、第2押出機から押し出す組成物のうち、マスターバッチCの代わりに、マスターバッチB4重量%とエチレン−プロピレンランダム共重合体1重量%とに変更したこと以外は実施例1と同様にして、多層シートを製造した。得られた多層シートは表面平滑で外観は良好なものであった。製造した多層シートは30m単位で巻き取り、これをアルミ箔積層ポリプロピレンフィルムで防湿包装して、後記比較例3のトレイ状容器の製造に備えた。
参考例3
実施例1の押出し装置を用い、マスターバッチCにおける活性炭を焼成した珪藻土(水分含有率0.3重量%)に代え、マスターバッチEを得た。マスターバッチEの組成は、焼成珪藻土:酸化カルシウム:低密度ポリエチレン=1:2:2の重量比となる。次に、実施例1の多層シート成形装置を用いて、第2押出機から押し出す組成物のうち、マスターバッチCをマスターバッチEに変更したこと以外は実施例1と同様にして、多層シートを製造した。得られた多層シートは表面平滑で外観は良好なものであった。製造した多層シートは30m単位で巻き取り、これをアルミ箔積層ポリプロピレンフィルムで防湿包装して、後記比較例4のトレイ状容器の製造に備えた。
【0020】
実施例2
実施例1で準備したロール巻き脱酸素性多層シートの包装体を2ヶ月後に開封し、この多層シートを、真空成型機を用いて温度170℃でトレイ状容器(縦130×横90mm×深さ25mm、内容積250cc)に成形加工した。得られたトレイ状容器の成形状態は極めて良好であった。このトレイ状容器に赤飯200gを充填し、ポリエステル/アルミニウム箔/ポリプロピレンの構成のトップフィルムを容器開口部にヒートシールして容器を密封した。赤飯を密封したトレイ状容器を120℃、30分のレトルト処理したのち、25℃で保存した。保存2ヶ月目に容器からトップフィルムを剥がし、電子レンジにて2分間加熱したのち、赤飯の風味を調べた。なお、保存期間中密封容器内の酸素濃度を経日的に測定した。結果を表2に示す。
比較例2
実施例2と同様に、参考例1で準備したロール巻き多層シートの包装体を2ヶ月後に開封し、多層シートをトレイ状容器に成形加工してみた。しかし、得られたトレイは、多層シートに発泡が起こり、トレイ内表面の外観が損なわれていただけでなく、部分的に通気性隔離層(層3)が破れ、脱酸素性樹脂層(層2)が露出して、トレイとして使用に耐えないものであった。
【0021】
比較例3
実施例2と同様に、参考例2で準備したロール巻き多層シートの包装体を2ヶ月後に開封し、多層シートをトレイ状容器に成形加工した。得られたトレイ状容器の成形状態は極めて良好であった。このトレイ状容器を用い、実施例2と同様に、赤飯の保存試験を行った。結果を表2に示す。
比較例4
実施例2と同様に、参考例3で準備したロール巻き多層シートの防湿包装体を2ヶ月後に開封し、多層シートをトレイ状容器に成形加工した。得られたトレイ状容器の成形状態は極めて良好であった。このトレイ状容器を用い、実施例2と同様に、赤飯の保存試験を行った。結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
Figure 0003962882
【0023】
表2の赤飯の保存試験から明らかなように、実施例2の脱酸素性樹脂層に活性炭を含有させた本発明の多層シートの成形容器は、異臭の発生がなく良好な風味保持効果を発揮した。一方、比較例3の活性炭を含有しない多層シートの成形容器の場合は、異臭が発生した。また、比較例4の活性炭に代えて焼成珪藻土を含有を含有させた多層シートの成形容器の場合、焼成珪藻土は吸着性能が低く、異臭成分を吸着することができなかった。
実施例3
ベント付き45mmφ同方向回転二軸押出機と定量フィーダーからなる押出し装置を用いて、低密度ポリエチレンと実施例1の脱酸素剤とを重量比1:1で混練し、ストランドダイから押し出した後、空冷、破砕してマスターバッチFを得た。
2台の押出機を備えたタンデムラミネーターを用い、ポリエステルフィルム(12μm)/アルミニウム箔(8μm)/低密度ポリエチレン(20μm)をドライラミネートしたアルミニウム箔積層フィルムを基材フィルムとして、このフィルムの低密度ポリエチレン側に、それぞれ、第1押出機より、マスターバッチFが95重量%及びマスターバッチCが5重量%のブレンド樹脂を、第2押出機より、酸化チタン10%含有低密度ポリエチレンを、押し出してラミネートし、脱酸素性多層フィルムを製造した。この脱酸素性多層フィルムの層構成は、通気性隔離層(30μm)/脱酸素性樹脂層(70μm)/低密度ポリエチレン(20μm)/アルミニウム箔(8μm)/PET(12μm)であり、フィルム厚みは140μm であった。ここでの押出しラミネートによる脱酸素性樹脂層の製膜性は良く、外観良好な脱酸素性多層フィルムが得られた。
【0024】
参考例4
実施例3のタンデムラミネーターを用いて、第1押出機より、マスターバッチFが95重量%,マスターバッチBが4重量%及び低密度ポリエチレンが1重量%のブレンド樹脂を押出したこと以外は実施例3と同様にして、脱酸素性多層フィルムを製造した。この場合の脱酸素性樹脂層の押出しによる製膜性は良く、外観良好な脱酸素性多層フィルムが得られた。
実施例4
実施例3で製造した脱酸素性多層フィルムを、通気性隔離層側を内側にして三方をヒートシールして製袋し、脱酸素性を有する袋(15cm×30cm)を作製した。作製した三方シール袋に凍り豆腐(水分活性0.68、水分10%含有)を100g充填し、袋をヒートシールして密封したのち、25℃で保存した。保存2ヶ月目に袋を開封して凍り豆腐を取り出し、その風味を調べた。なお、保存期間中、密封袋内の酸素濃度を経日的に測定した。結果を表3に示す。
比較例5
参考例4で準備した脱酸素性多層フィルムを用いたこと以外は実施例4と同様にして、凍り豆腐の保存試験を行った。結果を表3に示す。
【0025】
【表3】
Figure 0003962882
【0026】
表3から明らかなように、比較例5の脱酸素性樹脂層に活性炭を含有しない脱酸素性多層フィルムの包装袋に食品を保存した場合は、異臭が発生したのに対して、実施例4の脱酸素性樹脂層に活性炭を含有させた本発明の場合には、異臭の発生がなく良好な風味保持効果を発揮した。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、脱酸素性樹脂組成物に活性炭を配合するに際し、アルカリ土類金属酸化物を共存させたことにより、配合した活性炭が水分を保有するものであっても、良好な加工性が付与され、容易に単層又は多層のシートやフィルム、或いは容器等に加工できる。特に、吸着性能に優れ吸湿し易い活性炭が乾燥処理することなく簡単に使用できることのメリットは大きい。
結局、本発明の脱酸素性樹脂組成物は、樹脂加工性に優れ、かつ異臭発生がなく香り保持性に優れ、しかも脱酸素性能に優れた樹脂組成物として、脱酸素性包装材料に加工して様々な形態で利用することができ、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の脱酸素性多層体の一例(片面吸収型)の断面図である。
【図2】 本発明の脱酸素性多層体の一例(両面吸収型)の断面図である。
【符号の説明】
1 :ガスバリア性隔離膜
2 :脱酸素性樹脂層
3 :通気性隔離層
3’:通気性隔離層
13:接着層
14:ガスバリア性層
15:接着層
16:補強層

Claims (5)

  1. 熱可塑性樹脂中に、水分を得て酸素吸収反応を生起する脱酸素剤,活性炭及びアルカリ土類金属酸化物を含有させてなる脱酸素性樹脂組成物。
  2. 脱酸素剤の含有率が脱酸素性樹脂組成物に基いて10〜80重量%であり、かつ該脱酸素剤100重量部に対して活性炭の含有率が0.1〜10重量部及びアルカリ土類金属酸化物の含有率が0.1〜10重量部である請求項1記載の脱酸素性樹脂組成物。
  3. 請求項1記載の脱酸素性樹脂組成物からなる脱酸素性シート又はフィルム。
  4. 請求項1記載の脱酸素性樹脂組成物からなる脱酸素性樹脂層の両面に隔離層を配し、この隔離層のうち少なくとも一面が通気性隔離層である脱酸素性多層体。
  5. 容器の一部又は全部が請求項4記載の脱酸素性多層体からなり、容器内部の酸素を吸収するようにしてなる包装容器。
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