JP3844021B2 - 脱酸素性多層構造体及び包装容器 - Google Patents

脱酸素性多層構造体及び包装容器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形加工の可能な酸素吸収性能に優れる脱酸素性多層構造体及びこれより成る包装容器に関する。本発明の包装容器を酸素の影響を受けやすい飲料・食品、医薬品等の収納に利用することで、包装容器の外部から侵入する酸素を遮断し、かつ予め不活性ガス置換等をしなくても密閉包装体内に残存する酸素を短期間で除去し、被包装物品の変質を防ぎ長期保存を可能とする。
【0002】
【従来の技術】
従来、食品、医薬品等の被保存物を収納する包装体内の酸素を除去し、被保存物の酸化劣化、変色、カビ・好気性菌繁殖等による変質、虫害等を防止する技術として、ガスバリア性袋内に被保存物と共に脱酸素剤を密封する方法が広く行われている。この方法には、通常、粉末又は粒状の脱酸素剤組成物を通気性を備えた小袋に充填した脱酸素剤が用いられる。しかし、小袋入り脱酸素剤が被保存物中に混在すると、誤って被保存物と共に調理されたり、食されたりする恐れがあり、また、使用者に異物感や抵抗感を与えることにもなる。更には、取り扱いを誤って小袋を破り、こぼれ出た脱酸素剤組成物が被保存物を汚染する恐れもある。このため、上記の様な問題の無い脱酸素包装技術として、近年、包装体自体に脱酸素性能を付与することが考えられている。
【0003】
この様な例として、例えば、特公昭62−1824号公報、特開昭57−146651号公報、特開平4−45152号公報、特開平4−90848号公報、特開平7−309323等に開示されているように、脱酸素剤組成物を樹脂中に分散させた層を含む多層構造のフィルムやシート等が存在する。更に特公平4−60826号公報には、ガスバリア性熱可塑性樹脂内に市販の脱酸素剤組成物を含んだ包装容器が開示されている。また、特公平4−62858号公報には、レトルト処理時の高温、高水蒸気圧によって初めて酸素捕捉機能を発現する材料を含む容器が開示されている。これら特公平4−60826号公報及び特公平4−62858号公報には、レトルト処理時にガスバリア性樹脂の酸素バリア性が低下することを抑制して、容器外部から酸素が漏れ込むことを防止する技術が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記の包装容器自体に酸素吸収性能を付与したものは、脱酸素剤組成物が樹脂中に分散しているため、その樹脂の性状が脱酸素剤組成物の酸素吸収速度、最大酸素吸収量に大きく影響を与える。これまでの包装容器自体に酸素吸収性能を付与したものは、樹脂を透過してくる酸素を脱酸素剤組成物が吸収することになるため、小袋入り脱酸素剤を用いる従来の方法に比べ、酸素吸収性能が著しく低く、包装体内に存在する酸素を短期間に効率良く除去することができないという問題があった。このような欠点を補うために、例えば、被保存物を脱酸素性能を備えた包装体に充填する際、包装体内の空間部の空気を不活性ガスで置換し、あらかじめ酸素濃度を低減させるような方法が併用されているが、不活性ガス置換には特別な設備を必要となるためコストがかかり、上記の問題は基本的には必ずしも解決されていない。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決課題とするものであり、不活性ガス置換のような特別な手段を必要とせず、従来の小袋入り脱酸素剤と同等の性能を有し、酸素を積極的に効率良く吸収する機能を備えた多層構造体及びこれよりなる包装容器を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の従来技術の問題点に鑑み、脱酸素剤組成物が分散された酸素吸収性樹脂の脱酸素性能の改良について鋭意研究を重ねた結果、熱可塑性エラストマー又はエチレンプロピレン共重合体を含み柔軟性と高い酸素透過係数を持った熱可塑性樹脂混合物に脱酸素剤組成物を分散した酸素吸収性樹脂が、従来の酸素吸収性樹脂と比較して著しく酸素吸収速度が速く、また数倍の最大酸素吸収量を有することを見い出した。更に、高い酸素透過性を有する熱可塑性樹脂から成る層、上記の酸素吸収性樹脂から成る層およびガスバリア層を積層した脱酸素性多層構造体や、これを成形して得られる包装容器が、小袋入り脱酸素剤と同等の、実用的な酸素吸収性能を発揮することを見い出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の脱酸素性多層構造体は、上記の課題を解決するための手段として、酸素透過度が800cc/m2 ・atm・day(23℃、50%RH)以上の熱可塑性樹脂層から成る層(1)、熱可塑性エラストマー又はエチレンプロピレン共重合体を含み、曲げ弾性率が600MPa以下、酸素透過係数が130cc・mm/m2 ・atm・day(23℃、50%RH)以上である熱可塑性樹脂混合物に脱酸素剤組成物を分散した酸素吸収性樹脂から成る層(2)、及びガスバリア性を備える層(3)から成ることを特徴とする。
【0008】
さらに本発明の脱酸素性多層構造体は、層(2)の熱可塑性樹脂混合物に含まれる熱可塑性エラストマー又はエチレンプロピレン共重合体が硬度95以下のスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー又はエチレンプロピレン共重合体のうち、少なくとも1種であることを特徴とする。
【0009】
さらに本発明の脱酸素性多層構造体は、層(2)の熱可塑性樹脂混合物が熱可塑性エラストマー又はエチレンプロピレン共重合体を10〜80重量%含有する熱可塑性樹脂混合物であることを特徴とする。
【0010】
さらに本発明の脱酸素性多層構造体は、脱酸素剤組成物が水分の供給を受けて酸素吸収反応を生起する還元性物質を主剤とする粒状脱酸素剤組成物であることを特徴とする。上記の粒状脱酸素剤組成物は、酸素吸収反応の主剤となる還元性物質の粒状物に主剤以外の成分をコーティングしたもの又は脱酸素剤組成物を造粒したものが好ましい。
【0011】
さらに本発明の脱酸素性多層構造体は、層(2)の酸素吸収性樹脂における脱酸素剤組成物の含有量が10〜70重量%であることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、包装体の少なくとも一部が本発明の脱酸素性多層構造体からなり、層(1)を内側とし、包装体内の酸素を吸収するようにしてなる包装容器に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明を図面に即して説明する。尚、本発明はこれらの図面によって限定されるものではない。以下、脱酸素性多層構造体を単に多層構造体ということがある。
【0014】
本発明の多層構造体は、図1に示すように、使用時には、層(1)は最内層、層(2)は中間層、層(3)は最外層となり、層(2)が水分の供給を受けて、主に層(1)を透過してくる酸素を吸収する。
【0015】
本発明の包装容器は、少なくとも一部が多層構造体から成り、層(1)を最内層として包装体が形成される。例えば、図2に示すように、本発明の多層構造体はトレイ状容器に形成される。この容器は、使用時には、被包装物を収納した後、バリア性のトップフィルムによってシールされる。また図3に示すように、被包装物を収納したバリア性トレイを、本発明の多層フィルムを用いてシールすることができる。また、本発明の多層構造体は、ガスバリア性フィルムや多層構造体同士を貼り合わせて袋状にすることもできる。
【0016】
本発明の脱酸素多層構造体及びこれから成る包装容器は、上記の構成をとることにより、従来の小袋入り脱酸素剤を用いた場合と同等の酸素吸収性能を備える。しかもその機能は高温処理等の特別な処理をしなくても十分に発揮される。もちろん、本発明の包装容器に被保存物を高温充填(ホットパック)したり、また充填後に加熱殺菌、レトルト処理する等の高温処理を行うことができる。このような高温処理によって環境温度が上がれば、層(1)、層(2)の酸素透過度が向上すると共に、脱酸素剤組成物の酸素吸収速度も速くなるために、より迅速な酸素吸収が行われることになる。
【0017】
以下に本発明を更に詳しく説明する。本発明の多層構造体においては、層(1)は、層(2)が被包装物と直接接触するのを確実に防ぐ隔離層の役割を果たすとともに、迅速かつ効率の良い酸素透過を行う性能が必要であり、酸素透過度ができるだけ大きいことが要求される。また層(3)は、外部からの酸素の侵入を防止する性能が必要であり、酸素透過度ができるだけ小さいことが要求される。尚、層(1)、層(3)は単層に限らず、例えば、接着剤層等を含めた多層としても良い。また、包装体の内側に更に内袋を設ける場合や、包装体の外側を更にフィルムやケースで包装する場合には、層(1)、及び層(3)の酸素透過度は、これらを考慮して決定する必要がある。
【0018】
層(1)は1層以上から成り、各層の膜厚や接着剤等の有無に関わらず、酸素透過度は、800cc/m2 ・atm・day以上であり、好ましくは1000cc/m2 ・atm・day以上である。酸素透過度が800cc/m2 ・atm・dayよりも低いと、層(1)の酸素透過が層(2)で起こる酸素吸収反応に対して律速となり、多層構造体自体の酸素吸収性能が低下するため好ましくない。尚、酸素透過度は層(1)と同じ樹脂構成と厚みを持つフィルムから表面積400cm2 の袋を作製し、250ccの窒素ガスを封入して、23℃、50%RH下にて6時間保存した後、袋内の酸素濃度をガスクロマトグラフィーにて測定して算出する。
【0019】
層(1)を構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィンやその変性物、シリコン樹脂とのグラフト重合物、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、これら熱可塑性樹脂の1種以上が用いられる。これらの中では、酸素透過性が高く低コストであることから、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィンが好ましく用いられる。層(1)の形態は上記樹脂の単層または多層のいずれかであっても良く、またこれらの樹脂からなる不織布や微細孔を形成した微多孔膜を使用しても良い。
【0020】
層(1)の膜厚は薄いほど通気性が向上するが、成形加工性、隠蔽性、層(2)と被保存物との隔離性を考慮すると、膜厚は10〜200μmとすることが好ましい。尚、層(1)には、例えば、隠蔽や着色のための顔料、ヒートシール性向上のための添加剤、充填剤、帯電防止剤、安定化剤等の各種の添加剤を配合することができる。
【0021】
層(1)の形成は、共押し出し、ラミネート、内袋等により行うことができ、必要があれば、層(1)と層(2)とを接着剤層を介して接着しても良い。共押し出しの際には、層(2)と共に共押し出しすることが好ましく、層(2)と共押し出し可能な接着性を有し、かつ膜厚の薄い単層であることが望ましい。
【0022】
層(2)は、特定の熱可塑性樹脂混合物に脱酸素剤組成物を分散した酸素吸収性樹脂から成り、優れた酸素吸収性能を有する。層(2)の酸素吸収性樹脂を構成する熱可塑性樹脂混合物は、熱可塑性エラストマー又はエチレンプロピレン共重合体の1種以上を他の熱可塑性樹脂と組み合わせて用いる。この際、層(2)を構成する熱可塑性樹脂混合物の曲げ弾性率は600MPa以下で、かつ酸素透過係数が130cc・mm/m2 ・atm・day以上(23℃、50%RH)であることが必要であり、曲げ弾性率が500MPa以下、酸素透過係数が140cc・mm/m2 ・atm・day以上(23℃、50%RH)であればより好ましい。このような物性を有する混合樹脂中に脱酸素剤組成物を配合することによって、従来の小袋入り脱酸素剤と同等の実用的な酸素吸収速度と最大酸素吸収量を発現することができる。尚、曲げ弾性率はJIS K7203に従って測定される。また、酸素透過係数は、層(2)を構成する熱可塑性樹脂混合物の厚さ100μmのフィルムから表面積400cm2 の袋を作製し、前記の層(1)の酸素透過度測定法と同様な方法で測定される。
【0023】
本発明で用いられる熱可塑性エラストマー又はエチレンプロピレン共重合体は、硬度95以下のスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー又はエチレンプロピレン共重合体である。スチレン系エラストマーとは熱可塑性を発現するハードセグメントであるポリスチレンと、ゴム弾性を発現するソフトセグメントであるポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリオレフィン等、またはこれらを水添したエラストマーから成るものをいう。具体的には、旭化成工業(株)製、商品名:タフプレン、タフテック、日本合成ゴム(株)製、商品名:ダイナロン、三菱化学(株)製、商品名:ラバロン等が挙げられる。オレフィン系エラストマーとはポリプロピレンやポリエチレン等の熱可塑性を発現するポリオレフィンとエチレンプロピレン系ゴム等のエラストマーをブレンドしたものや、部分的に架橋させたもの、動的加硫により完全に架橋させたものをいう。具体的には、大日本プラスチックス(株)製、商品名:大プラMK−レジン、住友化学工業(株)製、商品名:住友TPE、三菱化学(株)製、商品名:サーモラン等が挙げられる。エチレンプロピレン共重合体は、非晶性もしくは低結晶性のエチレンーα−オレフィン共重合体やプロピレンーα−オレフィン共重合体であり、ゴム弾性を有するものをいう。具体的には、三井石油化学工業(株)製、商品名:タフマー等が挙げられる。
本発明では、上記に示した熱可塑性エラストマー又はエチレンプロピレン共重合体であれば、いずれを用いても構わないが、多層構造体を包装体として使用する際に、収納物によっては臭気の問題が生じる場合がある。この場合には、不飽和結合が水添された熱可塑性エラストマー又はエチレンプロピレン共重合体が好ましく用いられる。
【0024】
本発明で用いられる熱可塑性エラストマー又はエチレンプロピレン共重合体の硬度は95以下であることが必要であり、90以下であればより好ましい。尚、熱可塑性エラストマー又はエチレンプロピレン共重合体の硬度はJIS K301の方法で測定される硬度をいう。熱可塑性エラストマー又はエチレンプロピレン共重合体の硬度が95より大きいと、ポリオレフィン等との混合樹脂において所望する曲げ弾性率や酸素透過係数が得られない場合が多い。
【0025】
熱可塑性エラストマー又はエチレンプロピレン共重合体と混合される熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィンやその変性物、ポリスチレン、シリコン樹脂とのグラフト重合物、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、等が挙げられ、1種以上であっても良い。特にポリエチレンや、ポリプロピレン等のポリオレフィンが、上記熱可塑性エラストマー又はエチレンプロピレン共重合体との相溶性の良さから好ましく用いられる。
熱可塑性エラストマー又はエチレンプロピレン共重合体の熱可塑性樹脂混合物中の含有量は10〜80重量%が好ましい。更に好ましくは10〜70重量%である。前記物質の含有量が10%より低いと酸素吸収性能の改善効果が小さい。また80%より大きいと、酸素吸収樹脂層の押し出し性が悪化する場合が多く、外観良好な多層構造体を作製することが困難になる。
【0026】
層(2)の熱可塑性樹脂混合物に分散される脱酸素剤組成物としては、水分の供給を受けて脱酸素反応を生起する、いわゆる、水分依存型の脱酸素剤組成物が粒状物として用いられる。上記粒状脱酸素剤組成物として、脱酸素反応の主剤となる還元性物質に粒状物を選び、粒状の主剤の表面に触媒、助剤等の主剤以外の脱酸素剤組成物をコーティングしたもの、または主剤の還元性物質の他、全ての脱酸素剤組成物を混合後造粒したものが好適に用いられる。
【0027】
脱酸素剤組成物としては、鉄粉、アルミニウム粉及び珪素粉等の金属粉、第一鉄塩及び亜二チオン酸塩等の無機塩類、カテコール、グリセリン等の有機物等の還元性物質を主剤とするものが挙げられる。特に金属粉を主剤とする脱酸素剤組成物が好ましく、例えば、特許第1088514号に開示される方法で製造することができる金属粉の表面にハロゲン化金属を付着させたもの、または金属粉とハロゲン化金属、必要であればその他の添加物をバインダーとして造粒したものが好適に用いられる。
【0028】
金属粉主剤の脱酸素剤組成物においては、金属粉は鉄粉が好ましい。鉄粉は純度には特に制限は無く、一部が既に酸化していても、他金属との合金であっても良く、酸素吸収反応を起こすことができ、熱可塑性樹脂中に容易に分散可能なものであれば良い。好適な例としては、還元鉄粉、噴霧鉄粉、電解鉄粉等に代表される鉄粉や、鋳鉄製造時に飛び散った鉄粉(ダライ粉)、鋳鉄、鋼材等の各種鉄製品の粉砕物や、研削品等、微粒状或いは繊維状のものが好ましい。また、粒子状の金属鉄は、これを熱可塑性樹脂中に分散させて層(2)を構成するにあたり、その膜厚を薄くし、表面を平滑にする必要があることから、粒子の大きさは小さい方が良い。具体的には、平均粒径が50μm以下が特に好ましい。繊維状の金属鉄の場合にも、同様の理由から、その径、長さはできるだけ小さい方が良い。
【0029】
ハロゲン化金属は、金属鉄の酸素吸収反応に触媒的に作用するものである。ハロゲン化金属の金属種としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、銅、亜鉛、アルミニウム、スズ、鉄、コバルト、ニッケル等挙げられ、特にリチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、鉄が好ましい。ハロゲン化物としては、上記金属の塩化物、臭化物、ヨウ化物が好ましく、特に塩化物が好ましい。
【0030】
ハロゲン化金属の割合は、金属鉄100重量部あたり、0.1〜10重量部が好ましい。ハロゲン化金属の実質的に全量が金属鉄に付着して、熱可塑性樹脂混合物中に遊離しているハロゲン化金属がほとんど無く、ハロゲン化金属が有効に作用する際には、0.1〜5重量部で十分である。
【0031】
ハロゲン化金属は熱可塑性樹脂混合物中で金属鉄と容易に分離しない方法で添加することが望ましい。ハロゲン化金属を金属鉄に付着させる方法としては、例えば、ボールミル、スピードミル等を用いて粉砕かつ混合し、金属鉄表面の凹部にハロゲン化金属微粒子を埋め込む方法、バインダーを用いて金属鉄表面にハロゲン化金属微粒子を付着させる方法、またはハロゲン化金属水溶液と金属鉄とを混合乾燥して金属鉄表面にハロゲン化鉄微粒子を付着させる方法が特に好ましい。
【0032】
層(2)の熱可塑性樹脂混合物に分散させる粒状脱酸素剤組成物の水分含量は、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下である。また粒状脱酸素剤組成物の大きさは、平均粒径で5〜200μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。
【0033】
層(2)の酸素吸収性樹脂には、脱酸素剤組成物の他にも、必要に応じて、有機染料や無機染料、顔料等の着色剤、シラン系、チタネート系等の分散剤、ポリアクリル酸系化合物等の吸水剤、クレー、マイカ、シリカ、デンプン等の充填剤、ゼオライト、活性炭、脱臭剤等を添加することもできる。
【0034】
層(2)の酸素吸収性樹脂における脱酸素剤組成物の含有量は10〜70重量%が好ましく、20〜70重量%がより好ましい。脱酸素剤組成物の含有量は、上記の量に満たないと酸素吸収性能が低下し、また多くなり過ぎると加工性が悪くなるので、これらを考慮して上記の範囲内で適宜選ばれる。層(2)の膜厚は、1000μm以下、好ましくは500μm以下である。
【0035】
上記の構成を有する層(2)の酸素吸収性樹脂が優れた酸素吸収性能を発揮できる理由は、明確ではないが次のように推測される。層(2)の酸素吸収性樹脂を構成する熱可塑性樹脂混合物の酸素透過係数が高いほど、脱酸素剤組成物の酸素吸収速度は速くなるが、曲げ弾性率が高くて柔軟性に欠ける熱可塑性樹脂を用いた場合、酸素吸収反応に伴う脱酸素剤組成物での錆の成長が、曲げ弾性率が高く硬い樹脂によって阻害され、酸素吸収反応が途中で停止するため、実質的に吸収できる酸素量は脱酸素剤組成物が本来持っている能力に比べて著しく低下する。本発明では、酸素透過係数が高くかつ曲げ弾性率が低くて柔軟性に富む、熱可塑性エラストマー又はエチレンプロピレン共重合体を含む熱可塑性樹脂混合物を使用することで、酸素吸収反応に伴う脱酸素剤組成物での錆の成長の阻害が大幅に低減される。このため、本発明における多層構造体は、実用的な酸素吸収速度に加えて、優れた酸素吸収量が発揮される。
【0036】
層(3)は、ガスバリア性を備える層であり、その酸素透過度は100cc/m 2・atm・day(23℃、100%RH)未満であることが必要であり、50cc/m 2・atm・day(23℃、100%RH)以下が好ましい。層(3)の酸素透過度は、加工性、コスト等が許す範囲でなるべく小さくすることが望ましい。このようにすることで、本発明に係る多層構造体を用いて包装体を製造した際に、包装体の外部から侵入する酸素量を少なくすることができ、脱酸素剤組成物の使用量を低減することができる。また、包装体内物品の保存性をより優れたものにすることができる。
【0037】
層(3)を構成する材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン類、及びこれらの変性物、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、MXナイロン等の結晶性ポリアミド、非晶性ポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の合成樹脂、また、アルミ箔、アルミ蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルム等の無機酸化物蒸着フィルムが好ましく用いられる。層(3)は、単層または多層のいずれであっても良く、また、延伸加工したものを用いても良い。
【0038】
また層(3)には、充填剤、着色剤、帯電防止剤、安定剤等の添加剤を配合することもできる。層(3)や前記の層(1)を構成する樹脂に、特に染料や顔料等の着色剤を配合することは、層(2)を隠蔽して包装容器の美観を整えることになり、本発明の多層構造体や包装容器に商品価値を付与する上で重要である。
【0039】
層(3)の形成は共押し出し、ラミネート、熱収縮包装、ラップ包装、外装袋包装等により行うことができ、必要に応じ、層(3)と層(2)とを接着剤層を介して接着することができる。共押し出しの際には、層(2)、さらには層(1)と共に共押し出しすることができる。
【0040】
本発明の包装容器は、本発明の多層構造体を一旦作製した後、これ使って包装容器に成形加工することもできるし、また直接、多層構造体の各層を構成する材料や部材をもって多層構造体からなる包装容器に成形加工することもできる。いずれにしても多層構造体及び包装容器の形成には、従来の樹脂加工、包装容器加工等に適用される公知の方法を用いることができる。例えば、Tダイ、サーキュラーダイ等を用いる押し出し成形、射出成形等、ダイレクトブロー、延伸ブロー等の公知の加工成形技術により直接包装容器を形成することができる。また、これらの方法で得られたシート、フィルム、チューブ、パリソンを用い、真空成形、圧空成形、プラグアシスト成形、張出成形、ブロー成形等により、包装容器を形成することもできる。更に主要部分を成形後、他の成形品と組み合わせたり、熱ラミネート、ドライラミネート、エクストルージョンラミネート、ホットメルトラミネート等の各種ラミネートや、コーティング等の積層加工を行うこともできる。また、シュリンク包装、シュリンクラベル包装、ケース、袋等による外包装や内包装が適用できる。
【0041】
本発明に係る包装容器としては、例えば、トレイ、カップ、ケース、ボトル、チューブ、袋等が挙げられる。また、トレイ、カップ等のガスバリア性容器に本発明に係る脱酸素性多層フィルムをトップフィルムとして用いる形態をとることもできる。本発明の包装容器の使用形態では、包装容器外部からの酸素の侵入を防ぐために、最終的には包装容器を密閉する必要がある。この密閉方法としては、クロージャー類、トップフィルム、外装包装容器等の従来の技術が適用できる。
【0042】
【実施例】
(実施例1)
50重量%径が35μmの鉄粉を加熱ジャケット付き真空混合乾燥機中に入れ、130℃、10mmHgの減圧下で加熱乾燥しつつ、鉄粉100重量部に対し、塩化カルシウム:塩化ナトリウム:水=1:1:5(重量部)の割合で混合した混合水溶液を噴霧し、塩化カルシウムと塩化ナトリウムを鉄粉表面に付着させた粒状の脱酸素剤組成物を得た。
【0043】
次に、45mmφの同方向回転二軸押し出し機にて、スチレン系エラストマーの一種であるグレード名:ダイナロン1320P(水素添加スチレンブタジエン共重合体、硬度39、日本合成ゴム(株)製)を使用して、ダイナロン1320P:ポリプロピレン:脱酸素剤組成物=2:5:3の重量比で混合し、ブロワ付きネットベルトで冷却後ペレタイザーを経て、酸素吸収性樹脂ペレット1を得た。尚、酸素吸収性樹脂ペレット1に使用した混合樹脂であるダイナロン1320P:ポリプロピレン=2:5の混合樹脂の曲げ試験片と単層フィルム(厚み100μm)を別途に作製し、前述の方法により、曲げ弾性率、及び23℃、50%RHにおける酸素透過係数を測定したところ、混合樹脂の曲げ弾性率は220MPa、酸素透過係数は190cc・mm/m2 ・atm・dayであった。
【0044】
次に、第1〜第4押し出し機、フィードブロック、Tダイ、冷却ロール及びシート引き取り機からなる4種6層多層シート成形装置を用い、第1の押し出し機に白色顔料添加ポリプロピレンの混合ペレットを、第2の押し出し機に前記酸素吸収性樹脂ペレット1を、第3の押し出し機にエチレン−ビニルアルコール共重合体を、第4の押し出し機に無水マレイン酸変性ポリプロピレンを入れ、これらを各々の押し出し機から押し出して、図1に示すような多層構造体1を得た。この多層構造体1は、白色顔料添加ポリプロピレンからなる層(1)(60μm)と、前記酸素吸収性樹脂ペレット1からなる層(2)(150μm)と、無水マレイン酸変性ポリプロピレンからなる層31(20μm)、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる層32(30μm)、無水マレイン酸変性ポリプロピレンからなる層33(20μm)及び白色顔料添加ポリプロピレンからなる層34(320μm)から構成される層(3)とが、この順に積層されている。()内は設定した膜厚を示す。
【0045】
尚、層(1)に用いた白色顔料添加ポリプロピレンの単層フィルム(厚み60μm)を別途に作製し、23℃、50%RHにおける酸素透過度を測定したところ、1200cc/m2 ・atm・dayであった。
【0046】
次に、得られた多層構造体1を10cm×10cmの正方形に切断したものと、十分に水を含ませた吸水性樹脂約10gとを、アルミ箔積層フィルムから成る三方をヒートシールした袋に入れ、空気100ccを封入した後密閉した袋、及び空気2000ccを封入した後密閉した袋をそれぞれ調製した。これらの袋を23℃下にて保存し、空気量が100ccの袋では袋内の酸素濃度の経日変化を、また空気2000ccの袋では30日間保存した後のシートの酸素吸収量をガスクロマトグラフィーにて測定し算出した。結果を表1に示す。
【0047】
(実施例2)
混合比率をダイナロン1320P:ポリプロピレン:脱酸素剤組成物=5:2:3の重量比に変更したこと以外は実施例1と同様にして酸素吸収性樹脂ペレット2を得た。尚、酸素吸収性樹脂ペレット2に使用した混合樹脂であるダイナロン1320P:ポリプロピレン=5:2の混合樹脂の曲げ弾性率は100MPa以下であり、酸素透過係数は700cc・mm/m2 ・atm・dayであった。
【0048】
次に、酸素吸収性樹脂ペレット1の代わりに酸素吸収性樹脂ペレット2を用いたこと以外は実施例1と同様のシート成形を実施して、多層構造体2を得た。実施例1と同様にして測定した酸素吸収の測定結果を表1に示す。
【0049】
(実施例3)
実施例1で得られた脱酸素剤組成物を用いて、オレフィン系エラストマーの一種であるグレード名:大プラMKレジンMK−1(硬度78、大日本プラスチックス(株)製)を使用して、大プラMKレジンMK−1:ポリプロピレン:脱酸素剤組成物=5:2:3の重量比を有する酸素吸収性樹脂ペレット3を得た。尚、酸素吸収性樹脂ペレット3に使用した混合樹脂である大プラMKレジンMK−1:ポリプロピレン=5:2の混合樹脂の曲げ弾性率は300MPaであり、酸素透過係数は400cc・mm/m2 ・atm・dayであった。
【0050】
次に、酸素吸収性樹脂ペレット1の代わりに酸素吸収性樹脂ペレット3を用いたこと以外は実施例1と同様のシート成形を実施して、多層構造体3を得た。実施例1と同様にして測定した酸素吸収の測定結果を表1に示す。
【0051】
(実施例4)
実施例1で得られた脱酸素剤組成物を用いて、エチレンプロピレン共重合体の一種であるグレード名:タフマーP−0680(硬度63、三井石油化学工業(株)製)を使用して、タフマーP−0680:ポリプロピレン:脱酸素剤組成物=5:2:3の重量比を有する酸素吸収性樹脂ペレット4を得た。尚、酸素吸収性樹脂ペレット4に使用した混合樹脂であるタフマーP−0680:ポリプロピレン=5:2の混合樹脂の曲げ弾性率は300MPaであり、酸素透過係数は450cc・mm/m2 ・atm・dayであった。
【0052】
次に、酸素吸収性樹脂ペレット1の代わりに酸素吸収性樹脂ペレット4を用いたこと以外は実施例1と同様のシート成型を実施して、多層構造体4を得た。実施例1と同様にして測定した酸素吸収の測定結果を表1に示す。
【0053】
(実施例5)
白色顔料添加ポリプロピレン:TPX DX845(ポリメチルペンテン、三井石油化学工業(株)製)=7;3で混合したペレットを層(1)に用いたこと以外は、実施例1と同様にシート成形を行い、多層構造体5を得た。実施例1と同様にして測定した酸素吸収の測定結果を表1に示す。
尚、層(1)に用いた白色顔料添加ポリプロピレン;TPX DX845=7;3混合樹脂の単層フィルム(厚み60μm)を別途に作製し、23℃、50%RHにおける酸素透過度を測定したところ、2500cc/m2 ・atm・dayであった。
【0054】
(比較例1)
実施例1で得られた脱酸素剤組成物を用いて、ポリプロピレン:脱酸素剤組成物=7:3の重量比を有する酸素吸収性樹脂ペレット5を得た。尚、酸素吸収性樹脂ペレット5に使用した樹脂であるポリプロピレンの曲げ弾性率は1000MPaであり、酸素透過係数は80cc・mm/m2 ・atm・dayであった。
【0055】
次に、酸素吸収性樹脂ペレット1の代わりに酸素吸収性樹脂ペレット5を用いたこと以外は実施例1と同様のシート成形を実施して、多層構造体6を得た。実施例1と同様にして測定した酸素吸収の測定結果を表1に示す。
【0056】
(比較例2)
実施例1で得られた脱酸素剤組成物を用いて、ダイナロン1320P:ポリプロピレン:脱酸素剤組成物=5:65:30の重量比を有する酸素吸収性樹脂ペレット6を得た。尚、酸素吸収性樹脂ペレット6に使用した混合樹脂であるダイナロン1320P;ポリプロピレン=5;65の混合樹脂の曲げ弾性率は700MPaであり、酸素透過係数は110cc・mm/m2 ・atm・dayであった。
【0057】
次に、酸素吸収性樹脂ペレット1の代わりに酸素吸収性樹脂ペレット6を用いたこと以外は実施例1と同様のシート成形を実施して、多層構造体7を得た。実施例1と同様にして測定した酸素吸収の測定結果を表1に示す。
【0058】
(比較例3)
実施例1で得られた脱酸素剤組成物を用いて、TPX DX845:ポリプロピレン:脱酸素剤組成物=5:2:3の重量比を有する酸素吸収性樹脂ペレット7を得た。尚、酸素吸収性樹脂ペレット7に使用した混合樹脂であるTPX DX845:ポリプロピレン=5:2の混合樹脂の曲げ弾性率は1200MPaであり、酸素透過係数は530cc・mm/m2 ・atm・dayであった。
【0059】
次に、酸素吸収性樹脂ペレット1の代わりに酸素吸収性樹脂ペレット7を用いたこと以外は実施例1と同様のシート成形を実施して、多層構造体8を得た。実施例1と同様にして測定した酸素吸収の測定結果を表1に示す。
【0060】
(比較例4)
層(1)の厚みを120μmとしたこと以外は、実施例1と同様にシート成形を行い、多層構造体9を得た。実施例1と同様にして測定した酸素吸収の測定結果を表1に示す。
尚、層(1)に用いた白色顔料添加ポリプロピレンの単層フィルム(厚み120μm)を別途に作製し、23℃、50%RHにおける酸素透過度を測定したところ、700cc/m2 ・atm・dayであった。
【0061】
【表1】
Figure 0003844021
【0062】
表1に示すように、曲げ弾性率が600MPa以下で酸素透過係数が130cc・mm/m2 ・atm・day(23℃、50%RH)以上である熱可塑性樹脂混合物に脱酸素剤組成物を配合した実施例1〜5は、従来例である比較例1に比べて優れた酸素吸収速度を有し、かつ2〜3倍の酸素吸収能力がある。
スチレン系エラストマーであるダイナロン1320Pの添加量が少ない比較例2は、混合樹脂の物性改善効果が不十分なため酸素吸収性能も不十分であり、ポリメチルペンテンを添加した比較例3は、酸素透過係数は高いものの曲げ弾性率が高いために、酸素吸収性能が不十分である。また、比較例4は、層(1)の酸素透過度が低いために、酸素吸収性能が不十分である。
【0063】
(実施例6)
実施例1で得られた多層構造体1を、真空成形機を用いて層(1)を内側にして約180℃でプラグアシスト成形し、図2に示すような、トレイ状容器(縦150mm×横100mm×深さ30mm、内容積約350cc)を得た。
【0064】
次に、本実施例で得たトレイ状容器にゆでパスタ250gを入れ、カップシーラーを用いて、このトレイ状容器にトップフィルムをヒートシールして密封した。トップフィルムは、ポリプロピレン(30μm)/無水マレイン酸変性ポリプロピレン(5μm)/エチレン−ビニルアルコール共重合体(10μm)/無水マレイン酸変性ポリプロピレン(5μm)/ナイロン(20μm)で構成される5層構造を備えた、ガスバリア性を有するものであった。()内は膜厚を示す。
【0065】
次に、ゆでパスタを密封したトレイ状容器を室温で90日間保存し、ガスクロマトグラフィ−にて経日的に容器内の酸素濃度を測定すると共に、ゆでパスタの保存状況を調べた。また、ゆでパスタを密封したトレイ状容器のトップフィルムに小穴を開けてから、電子レンジ(三菱電機製、500W)にて5分間加熱し、マイクロ波耐性を調べた。結果を表2、表3に示す。
【0066】
(実施例7)
多層構造体1の代わりに実施例5で得られた多層構造体5を用いたこと以外は、実施例6と同様のテストを実施した。結果を表2、表3に示す。
【0067】
(比較例5)
多層構造体1の代わりに比較例1で得られた多層構造体6を用いたこと以外は、実施例6と同様のテストを実施した。結果を表2、表3に示す。
【0068】
(比較例6)
多層構造体1の代わりに比較例4で得られた多層構造体9を用いたこと以外は、実施例6と同様のテストを実施した。結果を表2、表3に示す。
【0069】
(比較例7)
層(2)を設けないこと以外は実施例1と同様にシート成形を行い、脱酸素機能を持たないシートを得た。このシートを用いてトレイ状容器を作製し、ゆでパスタと小袋入り脱酸素剤(三菱ガス化学(株)製、「エージレスFX」)を収容して、実施例6と同様の保存試験を実施した。結果を表2、表3に示す。
【0070】
【表2】
Figure 0003844021
【表3】
Figure 0003844021
【0071】
表2、表3に示すように、実施例6と実施例7では、4日以内乃至は2日以内に容器内酸素濃度が0.1%以下にまで低下し、ゆでパスタは90日間保存しても外観に変化が無く、風味も正常に保持されていた。また電子レンジにかけて加熱した場合にも、脱酸素性多層シートからなるトレイ容器には全く異常が見られなかった。
これに対して、比較例5と比較例6ではトレイの酸素吸収速度が遅いため、30日間の保存後には、ゆでパスタにカビの発生あるいは風味の低下が起こっていた。また、従来の小袋入り脱酸素剤を用いた比較例7では、酸素吸収速度が早くゆでパスタの風味保持については良好な結果が得られたが、電子レンジにかけて加熱した場合に脱酸素剤が破袋し、問題が残った。
【0072】
(実施例8)
押し出し機、フィードブロック、Tダイ、冷却ロール及びフィルム引き取り機からなるフィルム製造装置にてシート成型を行い、アルミ箔をガスバリア層とする多層構造体10を得た。この多層構造体は、白色顔料添加ポリプロピレンからなる層(1)(30μm)、実施例4で得られた酸素吸収性樹脂ペレット4からなる層(2)(60μm)、ポリプロピレンからなる層31(30μm)、アルミ箔からなる層32(10μm)、PETからなる層33(10μm)から構成される層(3)とが、この順に積層されている。()内は設定した膜厚を示す。
【0073】
尚、層(1)に相当するフィルム(厚み30μm)を別途に作製し、23℃、50%RHにおける酸素透過度を測定したところ、2700cc/m2 ・atm・dayであった。
【0074】
次にこの多層構造体を、層(1)を内側として、このフィルムにナイロンスーパーニール(15μm)/ポリプロピレン(60μm)の構成を有する2層構造を備えるフィルムを重ね合わせて三方をヒートシールし、脱酸素性袋(縦200mm×横150mm)を作製した。
【0075】
次に、本実施例で得た脱酸素性袋に、アミノ酸輸液をプラスチックバッグに封入したアミノ酸輸液バッグを収納し、袋をヒートシールして密封した。アミノ酸輸液バッグを封入した脱酸素性袋をエアースチーム式高温高圧殺菌装置にて120℃で30分間加熱処理を行った後、23℃で保存した。保存期間中アミノ酸輸液バッグを封入した脱酸素性袋内の酸素濃度を経時的に測定すると共に、7日目にアミノ酸輸液の色調の変化を調べた。結果を表4に示す。
【0076】
(比較例8)
酸素吸収性樹脂ペレット4の代わりに比較例1で得られた酸素吸収性樹脂ペレット5を使用したこと以外は、実施例8と同様にシート成型を実施して、多層構造体11を得た。得られた多層構造体を用いて、実施例8と同様のテストを実施した。結果を表4に示す。
【0077】
(比較例9)
多層構造体10の代わりに、PET(10μm)/Al(10μm)/PP(30μm)の構成を有するアルミニウム箔積層フィルムと小袋入り脱酸素剤(三菱ガス化学製、「エージレスFX」)用いたこと以外は、実施例8と同様のテストを実施した。結果を表4に示す。
【0078】
【表4】
Figure 0003844021
【0079】
表4に示すように、実施例8は、従来の小袋入り脱酸素剤を用いた場合(比較例9)と同様に容器内酸素濃度が保存2日後に0.1%以下にまで低下し、保存7日後のアミノ酸輸液の色調が良好に保持されていた。
一方、比較例8は酸素吸収速度が遅く、保存7日後のアミノ酸輸液の色調が褐色に変化していた。
【0080】
【発明の効果】
本発明の脱酸素性多層構造体及びこれより成る包装容器は、外部からの酸素の侵入を完全に遮断することができ、かつ、従来の小袋入り脱酸素剤を用いた場合と同様に酸素吸収性能に優れる。このため物品を包装するに際して、不活性ガス置換等の処理を併用する必要が無く、また小袋入り脱酸素剤を配した場合の異物感がない。また、本発明の脱酸素性多層構造体は内表面が無孔の樹脂膜より成るため耐液性に優れていて、高水分食品や飲料などの液状物質にも適用することができる。更には、マイクロ波耐性に優れるため、食品を収容したまま電子レンジにかけ加熱調理することができる。このように、本発明の脱酸素性多層構造体及びこれより成る包装容器は種々の優れた特徴を有するため、飲料・食品、医薬品等に限らず広い分野で酸素の影響を受けやすい物品の保存に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る脱酸素性多層構造体の一態様の断面図。
【図2】本発明に係る脱酸素性多層構造体からなるトレイ状容器の断面図。
【図3】食品を収容したガスバリア性のトレイ状容器を本発明に係る脱酸素性多層構造体でトップシールし密閉した包装体の断面図。
【符号の説明】
層(1) 酸素透過性の隔離層
層(2) 酸素吸収性樹脂層
層(3) ガスバリア層
層31 接着層
層32 ガスバリア性樹脂層
層33 接着層
層34 熱可塑性樹脂層
1 本発明に係る脱酸素性多層構造体からなるトレイ状容器
2 本発明に係る脱酸素性多層構造体からなるトップフィルム
3 ガスバリア性のトレイ状容器
4 食品

Claims (6)

  1. 酸素透過度が800cc/m・atm・day(23℃、50%RH)以上の熱可塑性樹脂層から成る層(1)、
    ( ) 硬度95以下である、熱可塑性エラストマー又はエチレンプロピレン共重合体10〜80重量%及び ( ) 熱可塑性エラストマー又はエチレンプロピレン共重合体以外の熱可塑性樹脂を含み、曲げ弾性率が600MPa以下で酸素透過係数が130cc・mm/m・atm・day(23℃、50%RH)以上である熱可塑性樹脂混合物に脱酸素剤組成物を分散した酸素吸収性樹脂から成る層(2)、及び
    ガスバリア性を備える層(3)
    から成ることを特徴とする脱酸素性多層構造体。
  2. 層(2)の熱可塑性樹脂混合物に含まれる( )熱可塑性エラストマー又はエチレンプロピレン共重合体がスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー及びエチレンプロピレン共重合体からなる群のうちの少なくとも1種である請求項1記載の脱酸素性多層構造体。
  3. 層(2)の( ) 熱可塑性エラストマー又はエチレンプロピレン共重合体以外の熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである請求項1記載の脱酸素性多層構造体。
  4. 脱酸素剤組成物が水分の供給を受けて酸素吸収反応を生起する還元性物質を主剤とする粒状脱酸素剤組成物である請求項1記載の脱酸素性多層構造体。
  5. 層(2)の酸素吸収性樹脂における脱酸素剤組成物の含有量が10〜70重量%である請求項1記載の脱酸素性多層構造体。
  6. 包装体の少なくとも一部が請求項15の任意の一項に記載の脱酸素性多層構造体から成り、層(1)を包装容器の内側とし、包装容器内の酸素を吸収するようにしてなる包装容器。
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