JP3826975B2 - 脱酸素性多層体、これよりなる包装容器及び食品または医薬品の保存方法 - Google Patents
脱酸素性多層体、これよりなる包装容器及び食品または医薬品の保存方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温多湿条件に曝しても酸素バリア性の低下がなく、かつ容器成型加工性に優れたシート状またはフィルム状の脱酸素性多層体、これよりなる包装容器及びこの包装容器を用いた食品または医薬品の保存方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、脱酸素包装技術の一つとして、脱酸素剤組成物を配合した酸素吸収性樹脂層を配した多層材料で容器を構成し、容器のガスバリア性の向上を図ると共に容器自体に脱酸素機能を付与した包装容器の開発が行われている。脱酸素機能を備えた包装容器は、通常、脱酸素剤組成物を配合した酸素吸収性樹脂層を中間層とし、外側にガスバリア性の外層と内側に酸素透過性の内層とを備えた脱酸素性多層体で構成されるが、シートまたはフィルム状の脱酸素性多層体は、袋、カップ、トレイ、ボトル等の容器に成形加工の容易な多層樹脂積層構造体として開発されている。
【0003】
脱酸素性多層体としては、例えば、特開平2−72851号公報、特開平4−90848号公報等に開示される、脱酸素組成物を樹脂中に分散させた層を含む多層フィルムやシートが利用できる。また特公平4−60826号公報には、多層材料に配するガスバリア性の熱可塑性樹脂層に脱酸素剤を配合しておき、ガスバリア性樹脂中の脱酸素剤が加熱殺菌処理時に水分を得て触発され脱酸素機能を発揮することによって、脱酸素性多層容器のガスバリア性を高める技術が開示されている。また特開平8−72941号公報には脱酸素性多層容器の脱酸素性能の向上を図る技術が提案されている。また特開平7−309323号公報には、特定の融点、軟化点を有するプロピレン系樹脂とエチレンービニルアルコール共重合体を用いて容器成型時にエチレンービニルアルコール共重合体層に起因する内層の厚みムラを解消した脱酸素性多層容器が開示されている。
【0004】
脱酸素性多層容器の外層のガスバリア性樹脂層には、一般に酸素バリア性の優れるエチレンービニルアルコール共重合体(EVOH)が用いられてきた。さらに最近では、脱酸素性多層容器に関して外層のEVOHに起因する内層厚みムラを防止するために内層及び酸素吸収層の樹脂の融点、及びガスバリア層のビカット軟化点を規定する多層容器が使用されている。しかし、これらの構成を有する多層容器の成形においては、熱成形温度範囲が狭いという問題点がある。
さらにシート及びフィルム等の脱酸素性多層体を作製する際、酸素透過性樹脂からなる酸素透過層、酸素吸収性樹脂からなる酸素吸収層及びガスバリア性樹脂からなるガスバリア層の樹脂間の流動状態に大きな差があるため、厚みムラが発生し、外観良好なシート及びフィルムを得ることができなくなるという問題点もある。
【0005】
またガスバリア層にエチレン含有率が比較的低いエチレンービニルアルコール共重合体を用いた脱酸素性多層容器では、高温、高水蒸気圧のレトルト処理やボイル処理において、ガスバリア層の酸素バリア性が著しく低下し、容器外から器壁を通して侵入してくる酸素を十分除去することができないという問題が起きる。
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術の脱酸素性多層体の前記問題点を解決して、シート及びフィルム成形性が良好で、また容器成形加工性に優れ、しかも高温多湿条件に曝しても酸素バリア性が低下することがなく、耐熱性に優れたガスバリア性を備えた脱酸素性多層体、これよりなる包装容器及びこの包装容器を用いた食品または医薬品の保存方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、酸素透過性の熱可塑性樹脂からなる層(1)、ポリオレフィンに脱酸素剤組成物を配合した酸素吸収性樹脂組成物からなる層(2)、ビカット軟化点が150℃以下でありエチレン含有率が45〜50モル%のエチレンービニルアルコール共重合樹脂からなるガスバリア性の層(3)からなり、各層が順次積層されていることを特徴とするシート状またはフィルム状の脱酸素性多層体を用いることにより容易に解決できることを見い出した。
上記層(2)のポリオレフィンは、ビカット軟化点が110〜130℃でメルトフローレートが0.7〜2g/10分(JIS K7210;230℃、2.16kgf)のポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの混合樹脂であることが好ましい。
【0007】
本発明の脱酸素性多層体は、シート及びフィルム成形性に優れ、かつ容器への許容成形温度範囲が十分広く、しかも比較的低い温度域での容器成形が可能となり、さらに高温多湿条件に曝しても酸素バリア性が低下せず、耐熱性に優れたガスバリア性を備える。
【0008】
また本発明の包装容器は、上記脱酸素性多層体が使用され該多層体の層(1)を容器内側に配して成形されたものであり、容器外からの酸素の侵入を防ぐと共に容器内の酸素を除去する機能性の高い包装容器である。
【0009】
また本発明の包装容器に食品または医薬品を密封し80℃以上で加熱処理することにより食品または医薬品の長期保存を可能とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の脱酸素性多層体(以下、単に多層体と略すことがある)の層構成の具体例として、例えば、図1のごとく、層(1)10(酸素透過層)/層(2)20(酸素吸収層)/接着層31/層(3)30(ガスバリア層)/接着層32/保護層33からなる層構成で示される。この多層体は、主たる層である層(1)、層(2)及び層(3)のみから構成されるとは限らず、各層のいずれにも必要に応じて更に他の層を付加することができ、上記具体例は層(3)30(ガスバリア層)の両側に1乃至複数の他の層を付加した場合を示すものである。上記多層体を使用して成形した本発明の包装容器の主たる層である層(1)、層(2)及び層(3)の各層の機能について説明すると、層(3)30はガスバリア層であり、外部から酸素の侵入を阻止する役割を果たし、層(2)20は酸素吸収層であり、層(3)では完全には阻止し得なくて侵入する酸素は勿論のこと、容器内の酸素を吸収する役割を果たし、層(1)10は酸素透過層であり、層(2)の酸素吸収層と容器内収納物との直接接触を防ぐ隔離層の役割に加え、酸素吸収層がその酸素吸収機能を十分に発揮できるように容器内の酸素を迅速かつ効率よく透過する役割をも果たしている。
【0011】
以下、本発明の脱酸素性多層体について説明する。
層(3)のガスバリア性樹脂には、エチレンービニルアルコール共重合体が用いられ、そのエチレン含有率は45〜50%である。エチレン含有率が45%以下のものは、レトルト処理又はボイル処理等の加熱処理時に、高温多湿条件下で酸素バリア性が顕著に低下する問題があり、50%以上のものは、常温常湿での酸素バリア性が低い問題がある。
【0012】
本発明に用いられる上記EVOHは、JIS K7210に準拠する試験条件(温度190℃、荷重2.16kgf)におけるメルトフローレート(MFR)が1〜7g/10分であることが好ましい。MFRが前記範囲外のEVOHを用いると、脱酸素性多層体のシート及びフィルム成形に際して、安定した厚みの多層体が得られなくなる。
【0013】
さらに、脱酸素性多層体の熱成形加工性を良好なものとするために上記EVOHのビカット軟化点は150℃以下の必要がある。ガスバリア層にビカット軟化点が150℃以下のEVOHを用い、酸素吸収層にビカット軟化点が110〜130℃のポリオレフィンを用いることにより、多層体の容器への成形に際して各樹脂の伸びムラや厚みムラに起因する容器表面上の凹凸、或いは金型への転写不良等が防止され、広い熱成形温度範囲を有する多層体となる。
【0014】
ガスバリア性樹脂からなるガスバリア層の厚みは必ずしも限定されないが、多層体をさらに成形加工して延伸する場合、その厚みが延伸によって薄くなることを考慮し、成形加工前のガスバリア性樹脂の層厚みは、延伸加工によってガスバリア性が損なわれない程度の厚みが必要である。ガスバリア層の酸素透過度は100cc/m2 ・day・atm(23℃ 100%RH)未満であることが好ましく、50cc/m2 ・day・atm(23℃ 100%RH)未満がより好ましい。
【0015】
層(3)はガスバリア性樹脂からなるガスバリア層であるが、必要に応じて該ガスバリア層の内外面に他の機能を有する樹脂又は樹脂以外の材料を積層して多層化し、ガスバリア層の機能を一層効果的なものにすることができる。例えば、前記ガスバリア性樹脂の層を保護するために、ガスバリア層の外側に他の樹脂からなる保護層が設けられる。ここにいう他の樹脂には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、これらの混合物若しくは変性樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル等が挙げられ、この保護層には、必要に応じて、顔料等の着色剤、充填剤、帯電防止剤、安定剤等の添加剤を適宜配合してもよい。また層(3)のガスバリア層と、上記他の樹脂からなる保護層又は層(2)との接着性向上のために、それぞれ接着剤層を設けることもできる。
【0016】
層(2)の酸素吸収性樹脂組成物は、ポリオレフィンに脱酸素剤組成物を混練、分散した樹脂組成物である。ここに脱酸素剤組成物は特に限定されず、公知の脱酸素剤組成物を用いることができ、例えば、鉄粉等の金属粉、鉄化合物などの還元性無機物質、多価フェノール類、多価アルコール類、アスコルビン酸又はその塩などの還元性有機物質または金属錯体等を酸素吸収反応の主剤とする脱酸素剤組成物が用いられる。これらの中でも、脱酸素性多層体を脱酸素性能に優れたものとするためには、鉄粉を主剤とする脱酸素剤組成物が好ましく、特に鉄粉とハロゲン化金属からなる脱酸素組成物が優れる。殊にハロゲン化金属で表面を被服した鉄粉が好適に用いられる。
【0017】
脱酸素剤組成物に用いられる鉄粉としては、熱可塑性樹脂中に分散可能で脱酸素反応を起こすことができるものであれば特に制限はなく、通常脱酸素剤として用いられる鉄粉が使用できる。鉄粉の大きさは平均粒径で200μm 以下が好ましく、50μm 以下が特に好ましい。平滑な酸素吸収層を形成するためには、鉄粉粒子の大きさは脱酸素性樹脂層の膜厚を越えることなく細かい方が好ましい。
【0018】
ハロゲン化金属としては、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物、臭化物、ヨウ化物が用いられ、リチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム等の塩化物が好ましく用いられる。ハロゲン化金属の配合量は、金属100重量部当たり好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。特にハロゲン化金属を鉄粉に付着させることによってハロゲン化金属の配合量を少なくすることができる。
【0019】
鉄粉主剤の脱酸素剤組成物は水分含有量を少なくすることが好ましく、脱酸素剤組成物の水分含有量は0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下である。該脱酸素剤組成物は、本発明の多層体を包装材料として使用するに際し、水分を得て酸素吸収機能を発揮する。また鉄粉主剤の脱酸素剤組成物は粒状物として用いられ、その大きさは平均粒径で5〜200μm が好ましく、5〜50μm がより好ましい。
【0020】
脱酸素剤組成物を配合するポリオレフィンは、ビカット軟化点が110〜130℃でメルトフローレートが0.7〜2g/10分(JIS K7210;230℃、2.16kgf)のポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの混合樹脂であることが好ましい。
【0021】
ビカット軟化点が前記範囲外のポリオレフィンを用いると、多層体の容器成形加工において、広い熱成形温度範囲が得られなくなる。
また、メルトフローレート(MFR)が前記範囲外のポリオレフィンを用いると、シート又はフィルム状の多層体を作製する際、酸素透過性樹脂からなる層(1)及びガスバリア性樹脂からなる層(3)との樹脂間の流動状態に差が生じるため、シート又はフィルムの表面にフローマークが発生し、外観良好なシート又はフィルムが得られなくなる。
【0022】
酸素吸収性樹脂組成物における脱酸素剤組成物の配合率は2〜93重量%が好ましく、10〜70重量%がより好ましい。上記配合率が2重量%未満では、脱酸素性能が著しく低下し、また93重量%を越えると、脱酸素性多層体又はそれを使用した包装容器の成形加工性が悪くなるので好ましくない。また脱酸素剤組成物を配合した酸素吸収性樹脂組成物には、必要に応じて、有機系又は無機系染料や顔料等の着色剤、シラン系、チタネート系等の分散剤、ポリアクリル酸系等の吸水剤、シリカ、クレー等の充填剤、ゼオライト、活性炭等のガス吸着剤、アルカリ土類金属酸化物等の発泡防止剤等を添加することができる。酸素吸収性組成物からなる酸素吸収層の層厚みは10〜1000μm が好ましく、50〜500μm がより好ましい。
【0023】
層(1)の酸素透過性樹脂としては熱可塑性樹脂が用いられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン類、及びこれらの変性物、又はシリコン樹脂とのグラフト重合物、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、アイオノマー、エラストマー等が用いられる。層(1)に用いられる酸素透過性樹脂のメルトフローレートは0.3〜1.2g/10分(JIS K7210;230℃、2.16kgf)が好ましい。
また、層(1)の酸素透過性樹脂は層(2)の酸素吸収性樹脂と相溶性があることが好ましく、互いに相溶性のある樹脂を選ぶことにより、層(1)及び層(2)の各樹脂を共押出しして積層接着することが可能となる。また層(1)の樹脂層は、包装容器の最内層としてシーラント層の役割を果たすことが多く、ヒートシール可能な樹脂を選択することが好ましい。但し、内面側に更にヒートシール性の層を設けてもよい。なお、層(1)又はヒートシール性の樹脂には、必要に応じて顔料等の着色剤、充填剤、帯電防止剤、安定剤等の添加物を配合することができる。
【0024】
多層体を包装容器として用いる際には、層(1)は容器内収容物と酸素吸収層との隔離層の役割を果たすと共に、酸素を迅速かつ効率よく透過する機能が必要である。層(1)の酸素透過度は少なくとも100cc/m2 ・day・atm(23℃、100%RH)以上であることが好ましい。このため、層(1)の膜厚は、強度、加工性、コスト等が許す範囲でなるべく薄くし、酸素透過性を大きくすることが望ましい。また層(1)は前記役割から明らかなように、必ずしも無孔の樹脂層とは限らず、微多孔膜や不織布であってもよい。
【0025】
上記の各層は、各層材料の性状、加工目的、加工工程等に応じて、共押出し法、各種ラミネート法、各種コーティング法などの公知の方法を適宜組み合わせて積層することができる。例えば、各層に対応する押出機で樹脂を溶融混練した後、T−ダイ、サーキュラーダイ等の多層多重ダイスを通して同時溶融押出することによって多層フィルム又はシートを製造することができる。
【0026】
また、本発明に係る脱酸素性多層体は、上記の各種方法で得られたフラット状又は管状のシート又はフィルム(チューブ、パリソン等を含む)であるが、これらの材料を用い、真空成形、圧空成形、プラグアシスト成形等の成形方法により、所定の形状の容器に成形することができる。この場合、ガスバリア性樹脂にビカット軟化点150℃以下のEVOH、酸素吸収層にビカット軟化点110〜130℃のポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの混合樹脂を使用することにより、成形温度として160℃〜185℃の広い範囲を選ぶことができ、特に比較的低い温度域での成形加工が可能となる。容器成形のための加熱は、接触加熱、非接触加熱によって行うことができるが、接触加熱の方が、脱酸素性多層体内に発生する温度勾配を可及的に小さくすることができ、各層の伸びムラ等の容器の外観不良を少なくすることができる。
【0027】
本発明によれば、上記脱酸素性多層体を密封用包装容器の一部又は全部に使用することにより容器外から僅かに侵入する酸素の他、容器内の酸素を吸収して、容器内収納物の酸素による変質を防止することができる。即ち、フィルムやシート状の脱酸素性多層体を袋、カップ、トレイ、ボトル等の容器に加工して使用することにより、又容器の蓋、トップシールフィルムなどの部材として使用することにより、包装容器に脱酸素機能が付与される。
【0028】
一方、本発明の脱酸素性多層体からなる包装容器は、80℃以上、150℃以下の加熱処理を行うことができ、加熱殺菌を必要とする食品、医薬品の保存が可能となる。即ち、該包装容器は前記温度範囲の加熱処理等の高温多湿条件下においても容器外から侵入してくる酸素を効果的に遮断し、また容器内の酸素、及び容器外から侵入してくる僅かな酸素を吸収除去することにより、食品や医薬品の品質保持に顕著な効果を発揮する。なお、殺菌のための加熱時間には特に制限はないが、効果的な殺菌のためには4分以上、120分以下が好ましい。
【0029】
【実施例】
本発明を実施例に沿ってさらに詳しく説明する。なお、本発明は実施例に必ずしも限定されない。
実施例1
鉄粉(平均粒径35μm 、最大粒子径80μm )を加熱ジャケット付き真空混合乾燥機中に入れ、130℃、10mmHgの減圧下で加熱乾燥しつつ、鉄粉100重量部に対し、塩化カルシウム:水=1:1の割合で混合した混合水溶液3重量部を噴霧して、塩化カルシウムを鉄粉表面に付着させた粒状の脱酸素組成物を調製した。次に45mmφの同方向回転二軸押出機にてプロピレンーエチレンブロックコポリマー(住友化学(株)製、商品名;住友ノーブレンAS1717G、MFR;0.9g/10分(230℃・2.16kgf、JIS K7210)、ビカット軟化点148℃(JIS K7206))と低密度ポリエチレン(日本ポリケム(株)製、商品名;ノバテックLD LF240、MFR;0.7g/10分(190℃・2.16kgf、JIS K7210)、ビカット軟化点98℃(JIS K7206))とを混合比3:2(重量比)で混練、押し出して、プロピレンーエチレンブロックコポリマーと低密度ポリエチレンの混合物(MFR1.6g/10分(230℃・2.16kgf、JIS K7210)、ビカット軟化点112℃(JIS K7206))を得た。さらにこれらの混合物と前記脱酸素剤組成物とを同機にて混合比3:2(重量比)で混練、押し出して、ブロワ付きネットベルトで冷却後ペレタイザーを経て、酸素吸収性樹脂組成物からなるペレットを得た。
【0030】
次いで、第1〜第4押出機、フィードブロック、Tダイ、冷却ロールおよびシート引取機からなる4種6層多層シート成形装置を用い、各押出機から、第1押出機;酸化チタン14重量%含有プロピレンーエチレンブロックコポリマー(チッソ(株)製、商品名;チッソポリプロXF1936、MFR;0.4g/10分(230℃・2.16kgf、JIS K7210))、第2押出機;前記酸素吸収性樹脂組成物、第3押出機;エチレン含有率47%エチレンービニルアルコール共重合体((株)クラレ製、商品名;エバールEP−G156、MFR;6.4g/10分(190℃・2.16kgf、JIS K7210)、ビカット軟化点148℃(JIS K7206))、および第4押出機;無水マレイン酸変性ポリプロピレン、を押し出し、表1に示す多層構成のシートを得た。多層シートの層構成は、酸素透過層(層(1))/酸素吸収層(層(2))/接着層/ガスバリア層(層(3))/接着層/保護層からなり、酸素透過層および保護層には、酸素吸収層を隠蔽するために、白色顔料の酸化チタンを加えたプロピレンーエチレンブロック共重合体を用いた。
共押し出しによるシート製造に問題はなく、外観が良好なシートが得られた。
【0031】
【表1】
【0032】
比較例1
実施例1の多層シート製造における、第3押出機のガスバリア性樹脂としてエチレン含有率が35%のエチレンービニルアルコール共重合体((株)クラレ製、商品名エバールT101、MFR1.7g/10分(190℃・2.16kgf、JIS K7210)、ビカット軟化点168℃(JIS K7206))を使用したこと以外は実施例1と同様にして多層シートを得た。
共押し出しによるシート製造に問題はなく、外観が良好なシートが得られた。
【0033】
実施例2
次に真空圧空成形機を用いて熱成形加工し、実施例1で得られた多層シートからトレイ状容器1(内容積350cc、表面積200cm2 )を得た。
成形加工時の加熱温度を160℃、165℃及び175℃と変えてプラグアシスト成形を行い、得られた容器について、外観、特に酸素吸収層及びガスバリア層の厚みムラに起因する表面凹凸の発生状況から成形加工性を評価した。なお評価基準はA;優、B;良、C;不可の3段階とした。結果を表2に示す。
【0034】
比較例2
比較例1で得られた多層シートを使用したこと以外は、実施例2と同様のテストを実施した。結果を表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
表2から明らかなように、ビカット軟化点が酸素吸収層樹脂112℃、ガスバリア層樹脂148℃である多層シートを成形加工した成形容器1(実施例2)の場合には、延伸性、深絞り性が良好で、さらに各樹脂の伸びムラが発生しないため、各成形温度において外観の良好な成形品を得ることができ、シートの容器加工成形性は極めて良好であった。一方、ガスバリア層樹脂のビカット軟化点が168℃と高い成形容器2(比較例2)の場合には、成形温度175℃において外観良好な成形品が得られたものの、加熱温度(成形温度)が低くなるにしたがってガスバリア層樹脂の加熱不足による、該層の伸びムラ、それに起因する金型転写不十分等が発生し、低温域での容器成形加工性に問題がある結果となった。
【0037】
実施例3
実施例2の成形温度160℃で得られたトレイ状成形容器1(ガスバリア層;エチレン含有率が47%のエチレンービニルアルコール共重合体)に油揚げ200gと煮汁120gを入れ、図2に示すように、容器開口部にPETフィルム(20μm )/アルミ箔(10μm )/無延伸ポリプロピレンフィルム(50μm 、ヒートシール層)からなるガスバリア性のアルミ箔積層フィルムをヒートシールしてトレイ状容器を密封した(ヘッドスペース空気量;約30cc)。この容器を121℃で30分間レトルト処理し、23℃で30日間保存した。この間密封容器内の酸素濃度をガスクロマトグラフを用いて経日的に測定するとともに、保存30日目には容器を開封して油揚げの保存状況を調べた。結果を表3に示す。
【0038】
比較例3
比較例2の成形温度175℃で得られたトレイ状容器2(ガスバリア層;エチレン含有率が35%のエチレンービニルアルコール共重合体)を用いて、実施例3と同様の方法で油揚げの保存試験を行った。結果を表3に示す。
【0039】
【表3】
【0040】
表3で明らかなように、実施例3の場合には、油揚げを密封した容器内の酸素濃度は7日目以降0.1%以下に保持され、油揚げは退色もなく風味も良好に保持されていた。一方、比較例3の場合には、密封容器内の酸素濃度は、7日目に5.2%、30日目に2.6%であり、容器内の酸素が十分吸収されずに残存し、このため、30日間保存した後の油揚げは、退色し風味も著しく損なわれていた。
これらの差は、エチレン含有率によるものであり、エチレン含有率の低いエチレンービニルアルコール共重合体は、レトルト処理等の高温多湿条件下では酸素バリア性が著しく低下するためである。
【0041】
実施例4
実施例2の成形温度175℃で得られたトレイ状成形容器1に炊飯米300gを入れ、ガスバリア性フィルム(ポリ塩化ビニリデン被覆ポリプロピレン延伸フィルム(15μm )/無延伸ポリプロピレンフィルム(60μm 、ヒートシール側)のラミネートフィルム)をトップフィルムに用いて密封し(ヘッドスペース空気量;約50cc)、室温にて30日間保存した。この間、容器内部の酸素濃度の経日変化を調べた。保存30日後、トップフィルムに穴をあけ、そのまま電子レンジ(三菱電機(株)製、機種名;RR50、500W)にて3分間加熱した後、容器を開封して容器の内外表面の状態および炊飯米の風味を調べた。結果を表4に示す。
【0042】
【表4】
容器の脱酸素性能と炊飯米の保存状態は良好であり、またマイクロ波加熱しても容器の変形や表面状態の変化は全く認められなかった。
【0043】
【発明の効果】
本発明の脱酸素性多層体は、脱酸素性能に優れ、かつガスバリア性、特に高温多湿条件に曝しても酸素バリア性の低下しない点に優れ、しかもシート、フィルム成形および容器への成形加工等の樹脂加工性に優れた多層構造体である。本発明の脱酸素性多層体からなる包装容器は、加熱殺菌処理を行っても酸素バリア性が低下することなく、容器内の酸素を効率よく吸収し、収納物品の長期にわたる品質保持を可能にする。したがって本発明に係る包装容器は、特に湯殺菌、ボイル殺菌、レトルト殺菌等の加熱殺菌処理が可能な耐熱性脱酸素性容器として有用であり、多水分食品をはじめとする食品や輸液等の医薬品等の加熱殺菌処理を要する物品の包装容器として広く用いることができる。また、脱酸素樹脂層がマイクロ波耐性に優れているので、電子レンジでそのまま加熱して調理する食品の包装容器としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシート状脱酸素性多層体の1例を示す断面図
【図2】本発明の包装容器の1例を示す断面図
【符号の説明】
10 層(1);酸素透過層
20 層(2);酸素吸収層
30 層(3);ガスバリア層
31 接着層
32 接着層
33 保護層
1 本発明のシート状脱酸素性多層体を使用して成形した容器
2 ガスバリア性フィルム
3 食品
Claims (3)
- メルトフローレートが0.3〜1.2g / 10分のポリプロピレンからなる酸素透過性の層(1)、ビカット軟化点が110〜130℃でメルトフローレートが0.7〜2g/10分(JIS K7210;230℃、2.16kgf)のポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの混合樹脂であるポリオレフィンに脱酸素剤組成物を配合した酸素吸収性樹脂組成物からなる層(2)、ビカット軟化点が150℃以下でありエチレン含有率が45〜50モル%で、且つ、メルトフローレートが1〜7g/10分(JIS K7210:190℃、2.16kgf)のエチレンービニルアルコール共重合樹脂からなるガスバリア性の層(3)および酸素透過性の層と同一のポリプロピレンからなる保護層(4)からなり、各層が順次積層されていることを特徴とするシート状またはフィルム状の脱酸素性多層体。
- 請求項1記載の脱酸素性多層体が、容器壁面の少なくとも一部に、かつ層(1)を容器内方に配して使用されてなる包装容器。
- 請求項2記載の包装容器に食品または医薬品を密封し、80℃以上、150℃以下で4分以上、120分以下加熱処理することを特徴とする食品または医薬品の保存方法。
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