JP2005015568A - 吸湿性組成物、吸湿性成形体及び吸湿性積層体 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた吸湿性を示し、かつ成形性に優れる吸湿性組成物及び成形体を提供する。
【解決手段】水不溶性熱可塑性樹脂と合成ゼオライトとを混練してなる組成物であって、水不溶性熱可塑性樹脂の少なくとも一部が40℃、90%RH、厚み100μmにおける水蒸気透過性が100g/(m2・24hr)以上である水蒸気透過性樹脂であることを特徴とする吸湿性組成物、該組成物を成形してなる成形体。
【選択図】 なし
【解決手段】水不溶性熱可塑性樹脂と合成ゼオライトとを混練してなる組成物であって、水不溶性熱可塑性樹脂の少なくとも一部が40℃、90%RH、厚み100μmにおける水蒸気透過性が100g/(m2・24hr)以上である水蒸気透過性樹脂であることを特徴とする吸湿性組成物、該組成物を成形してなる成形体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸湿性組成物ならびにそれを用いた吸湿性成形体及び吸湿性積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、医薬品、健康食品をはじめとした食品類、化粧品、半導体製品、機械部品などの包装において、吸湿に起因する酸化等による商品の劣化を防ぐ目的で、シリカゲル、塩化カルシウム、酸化カルシウム、ゼオライト等の乾燥剤が用いられている。
これらの乾燥剤は上記用途において粒状あるいは粉末状の乾燥剤を紙や不織布で包装したり、容器等に封入した状態で商品と共に包装されて用いられている。そのために、乾燥剤を包装している包装材の破損が生じたり、食品と共に包装されている場合に食品と間違えて乾燥剤を誤飲したりするなどの問題がしばしば発生する。
【0003】
このような問題を解決する方法としては、熱可塑性樹脂と乾燥剤微粒子の混合物を成形した成形品の提案がある。
例えば、特許文献1には、硫酸マグネシウムと熱可塑性樹脂とを加熱混練してなる高吸湿性の乾燥剤組成物が提案されている。同文献の実施例においては、熱可塑性樹脂として、ポリエチレン、エチレン−メチルメタクリレート共重合体等が用いられている。
また、特許文献2には、ベースポリマーと、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどの親水性物質と、乾燥剤とをブレンドした樹脂が記載されている。この樹脂では、この親水性物質が連通路を形成することによって、外部から乾燥剤への水蒸気の通り道が形成され、乾燥剤粉末並みの吸湿速度が得られている。
また、特許文献3には、粉末状の乾燥剤をポリエチレンやエチレン−メチルメタクリレート共重合体等の熱可塑性樹脂に混練した混練樹脂を射出成形した乾燥剤混入成形品(実施例)の提案がある。
【0004】
【特許文献1】
特公平7−53222号公報
【特許文献2】
米国特許第6080350号明細書
【特許文献3】
特開2002−2268715号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1で用いている硫酸マグネシウムを用いた乾燥剤は可逆性があり、除湿した空間の湿度がある程度以下になると、吸湿した乾燥剤から水分が放出され平衡状態となるため、商品がおかれる容器内を完全な乾燥状態にすることができないという問題があった。
また、熱可塑性樹脂として用いられているポリエチレン、エチレン−メチルメタクリレート共重合体等は水蒸気透過性が低く、そのため、樹脂と混練しない粉末の乾燥剤に比べて吸湿速度が非常に低くなり、乾燥に長時間を要し、内容品によっては、実用的でないという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載の樹脂は、親水性物質として用いている化合物がグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどであり、いずれも水溶性であるため、吸湿量が増えた時にこの親水性物質が溶出して商品を汚染したり、成形品が変質したりするなどの問題に加え、樹脂中の親水性物質の含有量が僅かでも食品包装用プラスチック規制(厚生省20号規制)の規制値を越えやすく、食品包装に適用し難いという問題があった。
【0007】
また、特許文献3の実施例に記載の樹脂も特許文献1に記載の樹脂と同様で、樹脂と混練しない粉末の乾燥剤に比べて吸湿速度が非常に低くなり、実用的な乾燥性能が得られない場合があるという問題があった。
特許文献3において、樹脂シート用の樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−メチルメタクリレート共重合体等種々の樹脂と共にアイオノマー[エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を金属カチオンでイオン架橋させた樹脂]や、エチレン酢酸ビニル共重合体も記載されている。しかし、ポリエチレンやポリプロピレンと並記されていることから、水蒸気透過率に配慮したものではなく、一般的なアイオノマーである。一般的なアイオノマーは金属カチオンとしてナトリウムや亜鉛を用いており、これらの金属カチオンを用いたアイオノマーは比較的水蒸気透過率が高いものの、100g/(m2・24hr)以上となることはない。
また、エチレン酢酸ビニル共重合体については酢酸ビニル含有量が記載されていないが、同様に水蒸気透過率については配慮されておらず、通常、食品包装材料に用いられているエチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量は10質量%以下であり、水蒸気透過率が100g/(m2・24hr)以上となることはない。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑み、吸湿速度が速く、低湿度下での更なる乾燥が可能で、さらに食品包装規格に適合し易く、成形可能な吸湿性組成物を得ることを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、乾燥剤として合成ゼオライトを用い、熱可塑性樹脂として、水蒸気透過性の高い樹脂を含む水不溶性の樹脂を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明の吸湿性組成物は、水不溶性熱可塑性樹脂と合成ゼオライトとを混練してなる組成物であって、前記水不溶性熱可塑性樹脂の少なくとも一部が、40℃、90%RH、厚み100μmにおける水蒸気透過率が100g/(m2・24hr)以上である水蒸気透過性樹脂であることを特徴とする。
また、本発明の成形体は、前記吸湿性組成物を成形してなることを特徴とする。
また、本発明の積層体は、前記吸湿性組成物からなる層と、防湿層を積層してなることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の吸湿性組成物は、水不溶性熱可塑性樹脂と合成ゼオライトとを混練してなる組成物である。
そして、合成ゼオライトが3〜4Åの細孔を有することが好ましく、合成ゼオライトが組成物全体の30〜80質量%を占めることがより好ましい。
また、本発明の吸湿性組成物は、水不溶性熱可塑性樹脂の少なくとも一部が、40℃、90%RH、厚み100μmにおける水蒸気透過率が100g/(m2・24hr)以上である水蒸気透過性樹脂であるであることが好ましい。
さらに、前記水蒸気透過性樹脂が、金属カチオンがカリウムイオンであるアイオノマーまたは酢酸ビニル含有量が20質量%以上であるエチレン酢酸ビニル共重合体、またはソフトセグメントがポリエーテルであるポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエステル系の熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
ここで、本明細書における水不溶性熱可塑性樹脂とは全く水に溶けないことを意味するものではなく、水に浸漬した時に実質的に水に溶解しない熱可塑性樹脂を意味するものである。
【0011】
本発明において、これらの特性を満足する水不溶性熱可塑性樹脂としては特に制限はなく、通常の水不溶性熱可塑性樹脂を適宜用いることができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;アイオノマー;エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体等のエチレン系共重合体;6ナイロンや66ナイロンや12ナイロンなどのポリアミド;ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルなどが挙げられる。
この水不溶性熱可塑性樹脂の融点は特に限定されるものではないが、易成形加工性の観点から、200℃以下であることが好ましい。
【0012】
本発明においては、前記水蒸気透過性樹脂の40℃、90%RH、厚み100μmにおける水蒸気透過率が100g/(m2・24hr)以上である必要がある。このように高い水蒸気透過性樹脂を含むことにより、樹脂中の水蒸気拡散速度が大きくなり、合成ゼオライトへの時間あたりの水蒸気輸送量が多くなり、吸湿性組成物がおかれている雰囲気中の除湿が速やかに行われるようになる。
このような水蒸気透過性樹脂としては、金属カチオンがカリウムイオンであるアイオノマー、酢酸ビニル含有量が20質量%以上であるエチレン酢酸ビニル共重合体、ソフトセグメントがポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリエーテルであるポリアミド系、ポリエステル系またはポリウレタン系熱可塑性エラストマー、またポリカプロラクトンなどが挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
そして、この水蒸気透過性熱可塑性樹脂のガラス転移温度は30℃以下であることが好ましい。その理由は定かではないが、ガラス転移温度以上になると、成形体の樹脂の分子が動きやすく、水蒸気の移動が容易になるため、本発明の成形体を用いて商品を保管した場合、特に常温で保管した場合に、吸湿効果が有効に発揮されると考えられる。
【0013】
本発明において、上記の水蒸気透過性樹脂の上記水不溶性熱可塑性樹脂中に占める量は20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。
水蒸気透過性樹脂の割合がある程度以上であると、上記水不溶性熱可塑性樹脂中に、水蒸気透過性樹脂からなる連通路が形成され、この連通路を通って、水蒸気が組成物表面から合成ゼオライトまで速やかに移動到達して除湿される。
本発明において、水不溶性熱可塑性樹脂は水蒸気透過性樹脂のみからなってもよいが、水蒸気透過性樹脂が含まれていればその他の成分として水蒸気透過率が40℃、90%RH、厚み100μmにおける水蒸気透過性が100g/(m2・24hr)未満の樹脂(以下、低水蒸気透過性樹脂という。)を用いてもよい。この低水蒸気透過性樹脂を、成形性、成形物強度、柔軟性等を重視して選択することにより、良好な成形体とすることができる。
【0014】
本発明においては、乾燥剤(吸湿剤)として、合成ゼオライトを用いる。
合成ゼオライトは細孔径が均一で、その細孔を通過できる大きさの分子しか吸着しないという分子ふるいとしての機能を有している。そのため、細孔径が3〜4Åのタイプを選択すれば水分子のみを吸着することが可能であり好ましい。ゼオライトとして、これより細孔径の大きいものを用いると、水蒸気のみならず、樹脂やその分解物質も吸着される可能性が高くなり、ゼオライトの吸湿性能を損なうおそれがある。これより細孔径の小さいものを用いると、水蒸気も吸着され難くなる。細孔径が3〜4Åのゼオライトは天然のゼオライトとしては存在せず、合成ゼオライトしかない。
また、本発明で用いる水蒸気透過性樹脂は極性を有しているものが好ましい。その理由は、ゼオライトと水蒸気透過性樹脂を含む水不溶性熱可塑性樹脂との混練により、ゼオライトが水蒸気透過性樹脂の極性部分と強い相互作用を持つので、個々のゼオライト粒子が個別に水蒸気透過性樹脂の中に分散されやすくなるからである。
そして、本発明においては、前述の相互作用により分離しにくくなったとしても、細孔径を3〜4Åとすることにより、この極性を有する高分子鎖が合成ゼオライトの細孔内部に吸着されることがない。そのため、合成ゼオライトの吸湿性能を損なうことがなく、吸湿性能を効率よく発揮することができる。
【0015】
合成ゼオライトの代わりに、例えばシリカゲルを用いた場合は、これを水不溶性熱可塑性樹脂と混練しても、シリカゲル本来の吸湿性能(吸湿速度および吸湿量)を得られないことが実験により確認できた。この原因は、シリカゲルの細孔の大きさがnmオーダーと、合成ゼオライトよりも大きく、細孔内表面が水不溶性熱可塑性樹脂で覆われる可能性があると考えられる。また、水分子を吸着するための粒子の表面の活性水酸基が、水不溶性熱可塑性樹脂との混練中に水蒸気透過性樹脂の極性部分と水素結合などにより強い相互作用を起こし、吸湿可能な部分が著しく減少すると考えられる。
実際に比較例として検討するに際し、本発明で用いる水不溶性熱可塑性樹脂とシリカゲルを混練する場合、混練時間が長くなるほど、吸湿性が大きく損なわれる傾向がみられた。
以上から、本発明において、合成ゼオライトに代えてシリカゲルを用いることは好ましくない。
【0016】
合成ゼオライトの粒子径は特に限定されない。粒子径が小さいほど、単位質量あたりの表面積が増えるので吸着速度は高まるが、吸着量は減少する。したがって、本発明の吸湿性組成物を用いて成形される成形体の厚み以下であれば問題はなく、目的とする成形体の厚み、吸湿量、吸湿速度を考慮して用いる合成ゼオライトの粒子径を選択すればよい。合成ゼオライトとしては粉末タイプであれば、広い範囲の成形体の形状に対応できるので好ましい。
【0017】
本発明において、混練物中の合成ゼオライトと水不溶性熱可塑性樹脂の合計に占める合成ゼオライトの配合量は30〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは40〜70質量%である。合成ゼオライトの量を30質量%以上とすることで、組成物に広い用途に亘って好ましい吸湿性能を付与することができる。また、80質量%以下とすることにより、熱可塑性樹脂不足による成形加工性の低下や成形品強度低下を招くことなく、成形加工性に優れ、広範な用途に実用性を有する成形品とすることができる。
【0018】
混練物には水不溶性熱可塑樹脂と合成ゼオライトの他に、吸湿性を損なわない範囲で、添加剤や顔料などの成分を加えることができる。添加剤としては、滑剤、酸化防止剤等を例示できる。
組成物の製造にあたっては、水不溶性熱可塑性樹脂をその溶融温度以上に加熱して合成ゼオライトあるいはさらに添加物や顔料と共に混練する。
水不溶性熱可塑性樹脂と合成ゼオライト等とを混合してから溶融して混練してもよく、溶融した水不溶性熱可塑性樹脂に合成ゼオライト等を添加して混練してもよい。
【0019】
本発明の吸湿性成形体は、上記の吸湿性組成物を成形してなるものである。
成形方法は射出成形、押出成形、カレンダー成形など公知の成形方法を採用できる。成形体の形状としてはシート状、繊維状、網状、格子状、袋状、容器状、容器の蓋の形状、容器内蓋等種々の形状にすることができる。このような成形体とすることで、合成ゼオライトが熱可塑性樹脂から分離脱落することがないので、誤飲の問題や、乾燥剤粉末による商品の汚染などの問題を解消できる。
【0020】
本発明の吸湿成形体の一実施形態として、吸湿性組成物からなる層と、防湿層を積層してなる積層体がある。防湿層としては、40℃、90%RHにおける層全体の水蒸気透過性が吸湿性組成物からなる層よりも小さい層であり、樹脂層、金属箔、無機質層などを挙げることができる。これらは一種または二種以上が多層に積層されてもよい。積層方法としては、共押出、押出ラミネート、ドライラミネート、塗布、真空蒸着、スパッタリングなど公知の積層方法を採用できる。
この積層体を用い、吸湿性組成物の層を内側に、非透湿性樹脂の層を外側にして、箱、ボトル、底付き筒、袋体等の容器を形成すると、外部の水分は吸湿せず、容器内の水分のみを吸湿するので、容器内部を効率よく除湿できる。
【0021】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[材料]
熱可塑性樹脂としては以下のものを用いた。
ポリプロピレン:PM600A(商品名、サンアロマー社製)
メルトフローレイト(MFR):7.5g/10min(測定温度230℃)
融点:161℃
水蒸気透過度:<10g/(m2・24hr)
カリウムアイオノマー:SD100(商品名、三井・デュポンケミカル社製)
MFR:5.5g/10min(測定温度190℃)
融点:92℃
ガラス転移温度(Tg):7.8℃
水蒸気透過度:2669g/(m2・24hr)
エチレン酢酸ビニル共重合体:エバフレックスEV250
(商品名、三井・デュポンケミカル社製)
酢酸ビニル含有率28質量%
MFR:15g/10min(測定温度190℃)
融点:71℃
Tg:−20.2℃
水蒸気透過度:131g/(m2・24hr)
ポリアミド系エラストマー:PAE1200U2(商品名、宇部興産社製)
MFR:6〜20g/10min(測定温度190℃)
融点:154℃
Tg:18.6℃
水蒸気透過度:166g/(m2・24hr)
【0022】
水溶性化合物としては、以下のものを用いた。
ポリエチレングリコール:ポリエチレングリコール2,000(商品名、昭和化学社製)
また、合成ゼオライトおよびシリカゲルとしては以下のものを用いた。
合成ゼオライト:ゼオラムA−3 100#(商品名、東ソー社製)
細孔径:3Å
質量平均粒子径:14μm
シリカゲル:SYLYSIA740(商品名、富士シシリア化学社製)
細孔径:2.5nm
体積平均粒子径:5μm
【0023】
なお、熱可塑性樹脂のガラス転移温度はレオメトリックス社のRSA−IIで動的粘弾性を測定し、tanδのピーク温度を調べた。
透湿性は、40℃90%RHで15時間調整した後の測定試料をMOCON社のPARMATRAN−W TWINにセットし、試料全体の水蒸気透過度を測定した。
試料全体の水蒸気透過度測定後に、試料から水蒸気が透過した部分を切り取り、充分乾燥した後質量を測定した。試料の質量と樹脂の比重から厚さを求め、厚さ100μmあたりの水蒸気透過度を算出した。
MFRおよび融点は、カタログから引用した。
【0024】
[吸湿率の測定]
各実施例および参考例例2以外の各比較例、参考例で得たシートを80℃で48時間以上真空乾燥し、完全に水分を除去した。このシートを5cm×5cmにカットし、これをさらに3〜4mm角に細かく粒状にしたものを試料として、25℃、80%RHにおける24時間ごとの吸湿量変化を、吸湿前後の質量変化で求めた。
なお、24hrで10%以上、96hrで10%以上の以上を示すものが吸湿速度に優れるという点で実用性を有すると判断した。
【0025】
[除湿性評価]
25℃において、湿度センサを入れた内容積200mlの密封可能な容器内に5cm×5cmのシートを底部に、3cm×10cmのシート2枚を側面に配置し、相対湿度80%RHに調整し、密封した後、容器内を25℃に維持しつつ、容器内の相対湿度変化を経時で測定した。
【0026】
[蒸留水浸漬試験]
食品包装規格適合試験に準じて、過マンガン酸カリウム消費量試験及び蒸発物残留物試験を行った。すなわち、浸出溶媒として蒸留水を用い、60℃で、シートを表面積が100cm2になるようにカットして試験サンプルとした。この試験サンプルを200mlの割合の浸出溶媒に30分間浸漬した。
過マンガン酸カリウム消費量は得られた試験溶液100mlに容量で3倍希釈した硫酸5mlと0.01N過マンガン酸カリウム水溶液10mlを加え煮沸し、この時の過マンガン酸カリウムの消費量を規定の方法で調べた。
蒸発残留物は試験溶液の水分を蒸発させ、蒸発残渣の質量から求めた。
【0027】
[実施例1]
エチレン酢酸ビニル共重合体30gと、合成ゼオライト30gとを、東洋精機製作所製ラボプラストミルを用いて、200℃加熱下、回転数5rpmで5分間、次いで回転数50rpmで5分間(計10分間)混練して、吸湿性組成物を得た。
得られた組成物を東洋精機製作所製のミニテストプレスを用いて加熱加圧し、厚さ約1mmの熱プレスシートを作成した。この組成物は容易に成形することができた。
このシートの吸湿率を測定した。その結果を表1、図1、図3に示す。また、吸湿性評価も行った。その結果を図4に示す。
また、このシートの蒸留水浸漬試験を行った。その結果を表3に示す。
また、シート取扱い中に、合成ゼオライトがシートから剥がれ落ちるようなことはなく、商品と共に包装しても商品が汚染されるおそれのないものであった。
【0028】
[実施例2]
エチレン酢酸ビニル共重合体の代わりに同量のカリウムアイオノマーを用いた以外は実施例1と同様にして、吸湿性組成物を得、この組成物を用いて約1mm厚のシートを作成した。この組成物は容易に成形することができた。
このシートの吸湿率を測定した。その結果を表1、図1に示す。
また、シート取扱い中に、合成ゼオライトがシートから剥がれ落ちるようなことはなく、商品と共に包装しても商品が汚染されるおそれのないものであった。
【0029】
[実施例3]
エチレン酢酸ビニル共重合体の代わりに同量のポリアミド系熱可塑性エラストマーを用いた以外は実施例1と同様にして、吸湿性組成物を得、この組成物を用いて約1mm厚のシートを作成した。この組成物は容易に成形することができた。
このシートの吸湿率を測定した。その結果を表1、図1に示す。また、吸湿性評価も行った。その結果を図4に示す。
また、このシートを用いて実施例1で行ったと同様の蒸留水浸漬試験を行った。その結果を表3に示す。
また、シート取扱い中に、合成ゼオライトがシートから剥がれ落ちるようなことはなく、商品と共に包装しても商品が汚染されるおそれのないものであった。
【0030】
[実施例4]
表1に記載のエチレン酢酸ビニル共重合体を24g、合成ゼオライトを36g用いた以外は実施例1と同様にして、吸湿性組成物を得、この組成物を用いて約1mm厚のシートを作成した。この組成物は容易に成形することができた。
このシートの吸湿率を測定した。その結果を表1、図1に示す。
また、シート取扱い中に、合成ゼオライトがシートから剥がれ落ちるようなことはなく、商品と共に包装しても商品が汚染されるおそれのないものであった。
【0031】
[比較例1]
エチレン酢酸ビニル共重合体の代わりに同量のポリプロピレンを用いた以外は実施例1と同様にして、組成物を得、この組成物を用いて約1mm厚のシートを作成した。この組成物は容易に成形することができた。
このシートの吸湿率を測定した。その結果を表1、図1に示す。また、吸湿性評価も行った。その結果を図4に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1において、各符号は以下の意味を示す。
EVA:エチレン酢酸ビニル共重合体
PAE:ポリアミド系熱可塑性エラストマー
PP:ポリプロピレン
【0034】
[実施例5]
エチレン酢酸ビニル共重合体6g、ポリプロピレン24g、合成ゼオライト30gを用いて、実施例1と同様にして、吸湿性組成物を得、この組成物を用いて約1mm厚のシートを作成した。この組成物は容易に成形することができた。
このシートの吸湿率を測定した。その結果を表2、図2に示す。
また、シート取扱い中に、合成ゼオライトがシートから剥がれ落ちるようなことはなく、商品と共に包装しても商品が汚染されるおそれのないものであった。
【0035】
[実施例6]
エチレン酢酸ビニル共重合体の代わりに同量のポリアミド系熱可塑性エラストマーを用いた以外は実施例5と同様にして、吸湿性組成物を得、この組成物を用いて約1mm厚のシートを作成した。この組成物は容易に成形することができた。
このシートの吸湿率を測定した。その結果を表2、図2に示す。
また、シート取扱い中に、合成ゼオライトがシートから剥がれ落ちるようなことはなく、商品と共に包装しても商品が汚染されるおそれのないものであった。
【0036】
[実施例7]
エチレン酢酸ビニル共重合体24g、ポリプロピレン6g、合成ゼオライト30gを用いて、実施例1と同様にして、吸湿性組成物を得、この組成物を用いて約1mm厚のシートを作成した。この組成物は容易に成形することができた。
このシートの吸湿率を測定した。その結果を表2、図2に示す。
また、このシートを用いて実施例1で行ったと同様の蒸留水浸漬試験を行った。その結果を表3に示す。
また、シート取扱い中に、合成ゼオライトがシートから剥がれ落ちるようなことはなく、商品と共に包装しても商品が汚染されるおそれのないものであった。
【0037】
[実施例8]
エチレン酢酸ビニル共重合体の代わりに同量のカリウムアイオノマーを用いた以外は実施例7と同様にして、吸湿性組成物を得、この組成物を用いて約1mm厚のシートを作成した。この組成物は容易に成形することができた。 このシートの吸湿率を測定した。その結果を表2、図2に示す。
また、シート取扱い中に、合成ゼオライトがシートから剥がれ落ちるようなことはなく、商品と共に包装しても商品が汚染されるおそれのないものであった。
【0038】
[比較例2]
熱可塑性樹脂の代わりに水溶性化合物としてポリエチレングリコール6g、ポリプロピレン24g、合成ゼオライト30gを用いて、実施例1と同様にして、吸湿性組成物を得、この組成物を用いて約1mm厚のシートを作成した。この組成物は容易に成形することができた。
このシートの吸湿率を測定した。その結果を表2、図2に示す。
また、このシートを用いて実施例1で行ったと同様の蒸留水浸漬試験を行った。その結果を表3に示す。ところ、浸漬水からポリエチレングリコールが検出され、蒸発残留物質の量が食品包装用プラスチックの規制(厚生省20号規制)に適合せず、食品包装に用いることができないことがわかった。
【0039】
[比較例3]
エチレン酢酸ビニル共重合体30gとシリカゲル30gを用いた以外は実施例1と同様にして吸湿性組成物を得、この組成物を用いて約1mm厚のシートを作成した。この組成物は容易に成形することができた。しかし混練中にシリカゲルの触媒作用によってエチレン酢酸ビニル共重合体が熱分解し、熱分解生成物の酢酸により高度の酢酸臭が発生し、得られたシートにも酢酸臭が感じられた。
このシートの吸湿率を測定した。その結果を表2、図3に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
表2において、表1に記載と同様の符号は表1における符号と同様の意味を有する。
PEG:ポリエチレングリコールを示す。
【0042】
【表3】
【0043】
ゼオライトの吸湿率は約25%である。従って、実施例1〜3、比較例1ではゼオライトが50質量%配合されているので、全てのゼオライトが吸湿すると12〜13%の吸湿率が得られるはずである。
実際、表1、図1から明らかなように、実施例1〜3では、24時間ですでに吸湿率が10%近くに達しており、水蒸気透過率の高い熱可塑性樹脂を用いているので、吸湿量、吸湿速度共に優れた吸湿性組成物が得られていることがわかる。
ゼオライトを60質量%まで増量した実施例4では実施例1に比べさらに吸湿量が増大していることがわかる。
【0044】
これに対して、熱可塑性樹脂として水蒸気をほとんど透過しないポリプロピレンを用いた比較例1では、著しく吸湿性能が劣ったものとなっていることがわかる。
【0045】
実施例5〜8は熱可塑性樹脂として水蒸気透過性樹脂と低水蒸気透過性樹脂であるポリプロピレンとのブレンドを用いた例である。表2、図2における、実施例5、6から明らかなように、水蒸気透過性樹脂とポリプロピレンのブレンド物を用いた場合は、水蒸気透過性樹脂が100%のものに比べると吸湿速度は若干低くなるが、水蒸気透過性樹脂が熱可塑性樹脂の20質量%以上あれば充分に広範な用途に実用性を有する。
【0046】
比較例2は水蒸気透過性熱可塑性樹脂の代わりにポリエチレングリコールを用いた例であり、優れた吸湿性を示すが、表3から明らかなように、過マンガン酸カリウム消費量も蒸発残挫物の量も多く、食品包装規格に適合しないことがわかる。これに対し、実施例1、3、7のシートはいずれも過マンガン酸カリウム消費量も蒸発残さも食品包装規格基準以下の値であり、食品包装に適していることがわかる。
【0047】
25℃、80%RHにおけるシリカゲルの吸湿率は約40%であり、比較例3の吸湿組成物では、シリカゲルがフルに吸湿すると約20%の吸湿率が得られるはずである。しかし、表2、図3から明らかなように比較例3のシートは10%以下の吸湿率しか得られておらず、ゼオライトを用いた時より吸湿率が低く、またシリカゲル含有量に対して得られる吸湿量が著しく低下し、所望の吸湿量を確保するのにゼオライトを用いたものに対してより多くの組成物が必要となり、コスト面で問題がある。この吸湿量の低下は、シリカゲルの水分吸着部分である細孔径が大きいため、細孔が樹脂に覆われて、吸着容量が大幅に減少したためと推測される。また、シリカゲルによって分解されたEVAから発生する酢酸臭があるため、食品包装に用いた場合、内容物に臭いが移ることが懸念され、使用が難しい。
【0048】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の吸湿性組成物は優れた吸湿性を示し、かつ成形性に優れるという効果を有する。また、この組成物を成形してなる成形体は、例えば、シートや容器等の形状に成形しておけば、乾燥剤を紙製あるいは不織布製の袋に入れた場合のように誤飲や乾燥剤のこぼれによる商品が汚染される心配がないという優れた効果を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜4、比較例1の吸湿率の経時変化を示す図である。
【図2】実施例5〜8、比較例2の吸湿率の経時変化を示す図である。
【図3】実施例1、比較例3の吸湿率の経時変化を示す図である。
【図4】実施例1〜3、比較例1の吸湿性評価結果を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸湿性組成物ならびにそれを用いた吸湿性成形体及び吸湿性積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、医薬品、健康食品をはじめとした食品類、化粧品、半導体製品、機械部品などの包装において、吸湿に起因する酸化等による商品の劣化を防ぐ目的で、シリカゲル、塩化カルシウム、酸化カルシウム、ゼオライト等の乾燥剤が用いられている。
これらの乾燥剤は上記用途において粒状あるいは粉末状の乾燥剤を紙や不織布で包装したり、容器等に封入した状態で商品と共に包装されて用いられている。そのために、乾燥剤を包装している包装材の破損が生じたり、食品と共に包装されている場合に食品と間違えて乾燥剤を誤飲したりするなどの問題がしばしば発生する。
【0003】
このような問題を解決する方法としては、熱可塑性樹脂と乾燥剤微粒子の混合物を成形した成形品の提案がある。
例えば、特許文献1には、硫酸マグネシウムと熱可塑性樹脂とを加熱混練してなる高吸湿性の乾燥剤組成物が提案されている。同文献の実施例においては、熱可塑性樹脂として、ポリエチレン、エチレン−メチルメタクリレート共重合体等が用いられている。
また、特許文献2には、ベースポリマーと、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどの親水性物質と、乾燥剤とをブレンドした樹脂が記載されている。この樹脂では、この親水性物質が連通路を形成することによって、外部から乾燥剤への水蒸気の通り道が形成され、乾燥剤粉末並みの吸湿速度が得られている。
また、特許文献3には、粉末状の乾燥剤をポリエチレンやエチレン−メチルメタクリレート共重合体等の熱可塑性樹脂に混練した混練樹脂を射出成形した乾燥剤混入成形品(実施例)の提案がある。
【0004】
【特許文献1】
特公平7−53222号公報
【特許文献2】
米国特許第6080350号明細書
【特許文献3】
特開2002−2268715号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1で用いている硫酸マグネシウムを用いた乾燥剤は可逆性があり、除湿した空間の湿度がある程度以下になると、吸湿した乾燥剤から水分が放出され平衡状態となるため、商品がおかれる容器内を完全な乾燥状態にすることができないという問題があった。
また、熱可塑性樹脂として用いられているポリエチレン、エチレン−メチルメタクリレート共重合体等は水蒸気透過性が低く、そのため、樹脂と混練しない粉末の乾燥剤に比べて吸湿速度が非常に低くなり、乾燥に長時間を要し、内容品によっては、実用的でないという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載の樹脂は、親水性物質として用いている化合物がグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどであり、いずれも水溶性であるため、吸湿量が増えた時にこの親水性物質が溶出して商品を汚染したり、成形品が変質したりするなどの問題に加え、樹脂中の親水性物質の含有量が僅かでも食品包装用プラスチック規制(厚生省20号規制)の規制値を越えやすく、食品包装に適用し難いという問題があった。
【0007】
また、特許文献3の実施例に記載の樹脂も特許文献1に記載の樹脂と同様で、樹脂と混練しない粉末の乾燥剤に比べて吸湿速度が非常に低くなり、実用的な乾燥性能が得られない場合があるという問題があった。
特許文献3において、樹脂シート用の樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−メチルメタクリレート共重合体等種々の樹脂と共にアイオノマー[エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を金属カチオンでイオン架橋させた樹脂]や、エチレン酢酸ビニル共重合体も記載されている。しかし、ポリエチレンやポリプロピレンと並記されていることから、水蒸気透過率に配慮したものではなく、一般的なアイオノマーである。一般的なアイオノマーは金属カチオンとしてナトリウムや亜鉛を用いており、これらの金属カチオンを用いたアイオノマーは比較的水蒸気透過率が高いものの、100g/(m2・24hr)以上となることはない。
また、エチレン酢酸ビニル共重合体については酢酸ビニル含有量が記載されていないが、同様に水蒸気透過率については配慮されておらず、通常、食品包装材料に用いられているエチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量は10質量%以下であり、水蒸気透過率が100g/(m2・24hr)以上となることはない。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑み、吸湿速度が速く、低湿度下での更なる乾燥が可能で、さらに食品包装規格に適合し易く、成形可能な吸湿性組成物を得ることを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、乾燥剤として合成ゼオライトを用い、熱可塑性樹脂として、水蒸気透過性の高い樹脂を含む水不溶性の樹脂を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明の吸湿性組成物は、水不溶性熱可塑性樹脂と合成ゼオライトとを混練してなる組成物であって、前記水不溶性熱可塑性樹脂の少なくとも一部が、40℃、90%RH、厚み100μmにおける水蒸気透過率が100g/(m2・24hr)以上である水蒸気透過性樹脂であることを特徴とする。
また、本発明の成形体は、前記吸湿性組成物を成形してなることを特徴とする。
また、本発明の積層体は、前記吸湿性組成物からなる層と、防湿層を積層してなることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の吸湿性組成物は、水不溶性熱可塑性樹脂と合成ゼオライトとを混練してなる組成物である。
そして、合成ゼオライトが3〜4Åの細孔を有することが好ましく、合成ゼオライトが組成物全体の30〜80質量%を占めることがより好ましい。
また、本発明の吸湿性組成物は、水不溶性熱可塑性樹脂の少なくとも一部が、40℃、90%RH、厚み100μmにおける水蒸気透過率が100g/(m2・24hr)以上である水蒸気透過性樹脂であるであることが好ましい。
さらに、前記水蒸気透過性樹脂が、金属カチオンがカリウムイオンであるアイオノマーまたは酢酸ビニル含有量が20質量%以上であるエチレン酢酸ビニル共重合体、またはソフトセグメントがポリエーテルであるポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエステル系の熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
ここで、本明細書における水不溶性熱可塑性樹脂とは全く水に溶けないことを意味するものではなく、水に浸漬した時に実質的に水に溶解しない熱可塑性樹脂を意味するものである。
【0011】
本発明において、これらの特性を満足する水不溶性熱可塑性樹脂としては特に制限はなく、通常の水不溶性熱可塑性樹脂を適宜用いることができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;アイオノマー;エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体等のエチレン系共重合体;6ナイロンや66ナイロンや12ナイロンなどのポリアミド;ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルなどが挙げられる。
この水不溶性熱可塑性樹脂の融点は特に限定されるものではないが、易成形加工性の観点から、200℃以下であることが好ましい。
【0012】
本発明においては、前記水蒸気透過性樹脂の40℃、90%RH、厚み100μmにおける水蒸気透過率が100g/(m2・24hr)以上である必要がある。このように高い水蒸気透過性樹脂を含むことにより、樹脂中の水蒸気拡散速度が大きくなり、合成ゼオライトへの時間あたりの水蒸気輸送量が多くなり、吸湿性組成物がおかれている雰囲気中の除湿が速やかに行われるようになる。
このような水蒸気透過性樹脂としては、金属カチオンがカリウムイオンであるアイオノマー、酢酸ビニル含有量が20質量%以上であるエチレン酢酸ビニル共重合体、ソフトセグメントがポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリエーテルであるポリアミド系、ポリエステル系またはポリウレタン系熱可塑性エラストマー、またポリカプロラクトンなどが挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
そして、この水蒸気透過性熱可塑性樹脂のガラス転移温度は30℃以下であることが好ましい。その理由は定かではないが、ガラス転移温度以上になると、成形体の樹脂の分子が動きやすく、水蒸気の移動が容易になるため、本発明の成形体を用いて商品を保管した場合、特に常温で保管した場合に、吸湿効果が有効に発揮されると考えられる。
【0013】
本発明において、上記の水蒸気透過性樹脂の上記水不溶性熱可塑性樹脂中に占める量は20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。
水蒸気透過性樹脂の割合がある程度以上であると、上記水不溶性熱可塑性樹脂中に、水蒸気透過性樹脂からなる連通路が形成され、この連通路を通って、水蒸気が組成物表面から合成ゼオライトまで速やかに移動到達して除湿される。
本発明において、水不溶性熱可塑性樹脂は水蒸気透過性樹脂のみからなってもよいが、水蒸気透過性樹脂が含まれていればその他の成分として水蒸気透過率が40℃、90%RH、厚み100μmにおける水蒸気透過性が100g/(m2・24hr)未満の樹脂(以下、低水蒸気透過性樹脂という。)を用いてもよい。この低水蒸気透過性樹脂を、成形性、成形物強度、柔軟性等を重視して選択することにより、良好な成形体とすることができる。
【0014】
本発明においては、乾燥剤(吸湿剤)として、合成ゼオライトを用いる。
合成ゼオライトは細孔径が均一で、その細孔を通過できる大きさの分子しか吸着しないという分子ふるいとしての機能を有している。そのため、細孔径が3〜4Åのタイプを選択すれば水分子のみを吸着することが可能であり好ましい。ゼオライトとして、これより細孔径の大きいものを用いると、水蒸気のみならず、樹脂やその分解物質も吸着される可能性が高くなり、ゼオライトの吸湿性能を損なうおそれがある。これより細孔径の小さいものを用いると、水蒸気も吸着され難くなる。細孔径が3〜4Åのゼオライトは天然のゼオライトとしては存在せず、合成ゼオライトしかない。
また、本発明で用いる水蒸気透過性樹脂は極性を有しているものが好ましい。その理由は、ゼオライトと水蒸気透過性樹脂を含む水不溶性熱可塑性樹脂との混練により、ゼオライトが水蒸気透過性樹脂の極性部分と強い相互作用を持つので、個々のゼオライト粒子が個別に水蒸気透過性樹脂の中に分散されやすくなるからである。
そして、本発明においては、前述の相互作用により分離しにくくなったとしても、細孔径を3〜4Åとすることにより、この極性を有する高分子鎖が合成ゼオライトの細孔内部に吸着されることがない。そのため、合成ゼオライトの吸湿性能を損なうことがなく、吸湿性能を効率よく発揮することができる。
【0015】
合成ゼオライトの代わりに、例えばシリカゲルを用いた場合は、これを水不溶性熱可塑性樹脂と混練しても、シリカゲル本来の吸湿性能(吸湿速度および吸湿量)を得られないことが実験により確認できた。この原因は、シリカゲルの細孔の大きさがnmオーダーと、合成ゼオライトよりも大きく、細孔内表面が水不溶性熱可塑性樹脂で覆われる可能性があると考えられる。また、水分子を吸着するための粒子の表面の活性水酸基が、水不溶性熱可塑性樹脂との混練中に水蒸気透過性樹脂の極性部分と水素結合などにより強い相互作用を起こし、吸湿可能な部分が著しく減少すると考えられる。
実際に比較例として検討するに際し、本発明で用いる水不溶性熱可塑性樹脂とシリカゲルを混練する場合、混練時間が長くなるほど、吸湿性が大きく損なわれる傾向がみられた。
以上から、本発明において、合成ゼオライトに代えてシリカゲルを用いることは好ましくない。
【0016】
合成ゼオライトの粒子径は特に限定されない。粒子径が小さいほど、単位質量あたりの表面積が増えるので吸着速度は高まるが、吸着量は減少する。したがって、本発明の吸湿性組成物を用いて成形される成形体の厚み以下であれば問題はなく、目的とする成形体の厚み、吸湿量、吸湿速度を考慮して用いる合成ゼオライトの粒子径を選択すればよい。合成ゼオライトとしては粉末タイプであれば、広い範囲の成形体の形状に対応できるので好ましい。
【0017】
本発明において、混練物中の合成ゼオライトと水不溶性熱可塑性樹脂の合計に占める合成ゼオライトの配合量は30〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは40〜70質量%である。合成ゼオライトの量を30質量%以上とすることで、組成物に広い用途に亘って好ましい吸湿性能を付与することができる。また、80質量%以下とすることにより、熱可塑性樹脂不足による成形加工性の低下や成形品強度低下を招くことなく、成形加工性に優れ、広範な用途に実用性を有する成形品とすることができる。
【0018】
混練物には水不溶性熱可塑樹脂と合成ゼオライトの他に、吸湿性を損なわない範囲で、添加剤や顔料などの成分を加えることができる。添加剤としては、滑剤、酸化防止剤等を例示できる。
組成物の製造にあたっては、水不溶性熱可塑性樹脂をその溶融温度以上に加熱して合成ゼオライトあるいはさらに添加物や顔料と共に混練する。
水不溶性熱可塑性樹脂と合成ゼオライト等とを混合してから溶融して混練してもよく、溶融した水不溶性熱可塑性樹脂に合成ゼオライト等を添加して混練してもよい。
【0019】
本発明の吸湿性成形体は、上記の吸湿性組成物を成形してなるものである。
成形方法は射出成形、押出成形、カレンダー成形など公知の成形方法を採用できる。成形体の形状としてはシート状、繊維状、網状、格子状、袋状、容器状、容器の蓋の形状、容器内蓋等種々の形状にすることができる。このような成形体とすることで、合成ゼオライトが熱可塑性樹脂から分離脱落することがないので、誤飲の問題や、乾燥剤粉末による商品の汚染などの問題を解消できる。
【0020】
本発明の吸湿成形体の一実施形態として、吸湿性組成物からなる層と、防湿層を積層してなる積層体がある。防湿層としては、40℃、90%RHにおける層全体の水蒸気透過性が吸湿性組成物からなる層よりも小さい層であり、樹脂層、金属箔、無機質層などを挙げることができる。これらは一種または二種以上が多層に積層されてもよい。積層方法としては、共押出、押出ラミネート、ドライラミネート、塗布、真空蒸着、スパッタリングなど公知の積層方法を採用できる。
この積層体を用い、吸湿性組成物の層を内側に、非透湿性樹脂の層を外側にして、箱、ボトル、底付き筒、袋体等の容器を形成すると、外部の水分は吸湿せず、容器内の水分のみを吸湿するので、容器内部を効率よく除湿できる。
【0021】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[材料]
熱可塑性樹脂としては以下のものを用いた。
ポリプロピレン:PM600A(商品名、サンアロマー社製)
メルトフローレイト(MFR):7.5g/10min(測定温度230℃)
融点:161℃
水蒸気透過度:<10g/(m2・24hr)
カリウムアイオノマー:SD100(商品名、三井・デュポンケミカル社製)
MFR:5.5g/10min(測定温度190℃)
融点:92℃
ガラス転移温度(Tg):7.8℃
水蒸気透過度:2669g/(m2・24hr)
エチレン酢酸ビニル共重合体:エバフレックスEV250
(商品名、三井・デュポンケミカル社製)
酢酸ビニル含有率28質量%
MFR:15g/10min(測定温度190℃)
融点:71℃
Tg:−20.2℃
水蒸気透過度:131g/(m2・24hr)
ポリアミド系エラストマー:PAE1200U2(商品名、宇部興産社製)
MFR:6〜20g/10min(測定温度190℃)
融点:154℃
Tg:18.6℃
水蒸気透過度:166g/(m2・24hr)
【0022】
水溶性化合物としては、以下のものを用いた。
ポリエチレングリコール:ポリエチレングリコール2,000(商品名、昭和化学社製)
また、合成ゼオライトおよびシリカゲルとしては以下のものを用いた。
合成ゼオライト:ゼオラムA−3 100#(商品名、東ソー社製)
細孔径:3Å
質量平均粒子径:14μm
シリカゲル:SYLYSIA740(商品名、富士シシリア化学社製)
細孔径:2.5nm
体積平均粒子径:5μm
【0023】
なお、熱可塑性樹脂のガラス転移温度はレオメトリックス社のRSA−IIで動的粘弾性を測定し、tanδのピーク温度を調べた。
透湿性は、40℃90%RHで15時間調整した後の測定試料をMOCON社のPARMATRAN−W TWINにセットし、試料全体の水蒸気透過度を測定した。
試料全体の水蒸気透過度測定後に、試料から水蒸気が透過した部分を切り取り、充分乾燥した後質量を測定した。試料の質量と樹脂の比重から厚さを求め、厚さ100μmあたりの水蒸気透過度を算出した。
MFRおよび融点は、カタログから引用した。
【0024】
[吸湿率の測定]
各実施例および参考例例2以外の各比較例、参考例で得たシートを80℃で48時間以上真空乾燥し、完全に水分を除去した。このシートを5cm×5cmにカットし、これをさらに3〜4mm角に細かく粒状にしたものを試料として、25℃、80%RHにおける24時間ごとの吸湿量変化を、吸湿前後の質量変化で求めた。
なお、24hrで10%以上、96hrで10%以上の以上を示すものが吸湿速度に優れるという点で実用性を有すると判断した。
【0025】
[除湿性評価]
25℃において、湿度センサを入れた内容積200mlの密封可能な容器内に5cm×5cmのシートを底部に、3cm×10cmのシート2枚を側面に配置し、相対湿度80%RHに調整し、密封した後、容器内を25℃に維持しつつ、容器内の相対湿度変化を経時で測定した。
【0026】
[蒸留水浸漬試験]
食品包装規格適合試験に準じて、過マンガン酸カリウム消費量試験及び蒸発物残留物試験を行った。すなわち、浸出溶媒として蒸留水を用い、60℃で、シートを表面積が100cm2になるようにカットして試験サンプルとした。この試験サンプルを200mlの割合の浸出溶媒に30分間浸漬した。
過マンガン酸カリウム消費量は得られた試験溶液100mlに容量で3倍希釈した硫酸5mlと0.01N過マンガン酸カリウム水溶液10mlを加え煮沸し、この時の過マンガン酸カリウムの消費量を規定の方法で調べた。
蒸発残留物は試験溶液の水分を蒸発させ、蒸発残渣の質量から求めた。
【0027】
[実施例1]
エチレン酢酸ビニル共重合体30gと、合成ゼオライト30gとを、東洋精機製作所製ラボプラストミルを用いて、200℃加熱下、回転数5rpmで5分間、次いで回転数50rpmで5分間(計10分間)混練して、吸湿性組成物を得た。
得られた組成物を東洋精機製作所製のミニテストプレスを用いて加熱加圧し、厚さ約1mmの熱プレスシートを作成した。この組成物は容易に成形することができた。
このシートの吸湿率を測定した。その結果を表1、図1、図3に示す。また、吸湿性評価も行った。その結果を図4に示す。
また、このシートの蒸留水浸漬試験を行った。その結果を表3に示す。
また、シート取扱い中に、合成ゼオライトがシートから剥がれ落ちるようなことはなく、商品と共に包装しても商品が汚染されるおそれのないものであった。
【0028】
[実施例2]
エチレン酢酸ビニル共重合体の代わりに同量のカリウムアイオノマーを用いた以外は実施例1と同様にして、吸湿性組成物を得、この組成物を用いて約1mm厚のシートを作成した。この組成物は容易に成形することができた。
このシートの吸湿率を測定した。その結果を表1、図1に示す。
また、シート取扱い中に、合成ゼオライトがシートから剥がれ落ちるようなことはなく、商品と共に包装しても商品が汚染されるおそれのないものであった。
【0029】
[実施例3]
エチレン酢酸ビニル共重合体の代わりに同量のポリアミド系熱可塑性エラストマーを用いた以外は実施例1と同様にして、吸湿性組成物を得、この組成物を用いて約1mm厚のシートを作成した。この組成物は容易に成形することができた。
このシートの吸湿率を測定した。その結果を表1、図1に示す。また、吸湿性評価も行った。その結果を図4に示す。
また、このシートを用いて実施例1で行ったと同様の蒸留水浸漬試験を行った。その結果を表3に示す。
また、シート取扱い中に、合成ゼオライトがシートから剥がれ落ちるようなことはなく、商品と共に包装しても商品が汚染されるおそれのないものであった。
【0030】
[実施例4]
表1に記載のエチレン酢酸ビニル共重合体を24g、合成ゼオライトを36g用いた以外は実施例1と同様にして、吸湿性組成物を得、この組成物を用いて約1mm厚のシートを作成した。この組成物は容易に成形することができた。
このシートの吸湿率を測定した。その結果を表1、図1に示す。
また、シート取扱い中に、合成ゼオライトがシートから剥がれ落ちるようなことはなく、商品と共に包装しても商品が汚染されるおそれのないものであった。
【0031】
[比較例1]
エチレン酢酸ビニル共重合体の代わりに同量のポリプロピレンを用いた以外は実施例1と同様にして、組成物を得、この組成物を用いて約1mm厚のシートを作成した。この組成物は容易に成形することができた。
このシートの吸湿率を測定した。その結果を表1、図1に示す。また、吸湿性評価も行った。その結果を図4に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1において、各符号は以下の意味を示す。
EVA:エチレン酢酸ビニル共重合体
PAE:ポリアミド系熱可塑性エラストマー
PP:ポリプロピレン
【0034】
[実施例5]
エチレン酢酸ビニル共重合体6g、ポリプロピレン24g、合成ゼオライト30gを用いて、実施例1と同様にして、吸湿性組成物を得、この組成物を用いて約1mm厚のシートを作成した。この組成物は容易に成形することができた。
このシートの吸湿率を測定した。その結果を表2、図2に示す。
また、シート取扱い中に、合成ゼオライトがシートから剥がれ落ちるようなことはなく、商品と共に包装しても商品が汚染されるおそれのないものであった。
【0035】
[実施例6]
エチレン酢酸ビニル共重合体の代わりに同量のポリアミド系熱可塑性エラストマーを用いた以外は実施例5と同様にして、吸湿性組成物を得、この組成物を用いて約1mm厚のシートを作成した。この組成物は容易に成形することができた。
このシートの吸湿率を測定した。その結果を表2、図2に示す。
また、シート取扱い中に、合成ゼオライトがシートから剥がれ落ちるようなことはなく、商品と共に包装しても商品が汚染されるおそれのないものであった。
【0036】
[実施例7]
エチレン酢酸ビニル共重合体24g、ポリプロピレン6g、合成ゼオライト30gを用いて、実施例1と同様にして、吸湿性組成物を得、この組成物を用いて約1mm厚のシートを作成した。この組成物は容易に成形することができた。
このシートの吸湿率を測定した。その結果を表2、図2に示す。
また、このシートを用いて実施例1で行ったと同様の蒸留水浸漬試験を行った。その結果を表3に示す。
また、シート取扱い中に、合成ゼオライトがシートから剥がれ落ちるようなことはなく、商品と共に包装しても商品が汚染されるおそれのないものであった。
【0037】
[実施例8]
エチレン酢酸ビニル共重合体の代わりに同量のカリウムアイオノマーを用いた以外は実施例7と同様にして、吸湿性組成物を得、この組成物を用いて約1mm厚のシートを作成した。この組成物は容易に成形することができた。 このシートの吸湿率を測定した。その結果を表2、図2に示す。
また、シート取扱い中に、合成ゼオライトがシートから剥がれ落ちるようなことはなく、商品と共に包装しても商品が汚染されるおそれのないものであった。
【0038】
[比較例2]
熱可塑性樹脂の代わりに水溶性化合物としてポリエチレングリコール6g、ポリプロピレン24g、合成ゼオライト30gを用いて、実施例1と同様にして、吸湿性組成物を得、この組成物を用いて約1mm厚のシートを作成した。この組成物は容易に成形することができた。
このシートの吸湿率を測定した。その結果を表2、図2に示す。
また、このシートを用いて実施例1で行ったと同様の蒸留水浸漬試験を行った。その結果を表3に示す。ところ、浸漬水からポリエチレングリコールが検出され、蒸発残留物質の量が食品包装用プラスチックの規制(厚生省20号規制)に適合せず、食品包装に用いることができないことがわかった。
【0039】
[比較例3]
エチレン酢酸ビニル共重合体30gとシリカゲル30gを用いた以外は実施例1と同様にして吸湿性組成物を得、この組成物を用いて約1mm厚のシートを作成した。この組成物は容易に成形することができた。しかし混練中にシリカゲルの触媒作用によってエチレン酢酸ビニル共重合体が熱分解し、熱分解生成物の酢酸により高度の酢酸臭が発生し、得られたシートにも酢酸臭が感じられた。
このシートの吸湿率を測定した。その結果を表2、図3に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
表2において、表1に記載と同様の符号は表1における符号と同様の意味を有する。
PEG:ポリエチレングリコールを示す。
【0042】
【表3】
【0043】
ゼオライトの吸湿率は約25%である。従って、実施例1〜3、比較例1ではゼオライトが50質量%配合されているので、全てのゼオライトが吸湿すると12〜13%の吸湿率が得られるはずである。
実際、表1、図1から明らかなように、実施例1〜3では、24時間ですでに吸湿率が10%近くに達しており、水蒸気透過率の高い熱可塑性樹脂を用いているので、吸湿量、吸湿速度共に優れた吸湿性組成物が得られていることがわかる。
ゼオライトを60質量%まで増量した実施例4では実施例1に比べさらに吸湿量が増大していることがわかる。
【0044】
これに対して、熱可塑性樹脂として水蒸気をほとんど透過しないポリプロピレンを用いた比較例1では、著しく吸湿性能が劣ったものとなっていることがわかる。
【0045】
実施例5〜8は熱可塑性樹脂として水蒸気透過性樹脂と低水蒸気透過性樹脂であるポリプロピレンとのブレンドを用いた例である。表2、図2における、実施例5、6から明らかなように、水蒸気透過性樹脂とポリプロピレンのブレンド物を用いた場合は、水蒸気透過性樹脂が100%のものに比べると吸湿速度は若干低くなるが、水蒸気透過性樹脂が熱可塑性樹脂の20質量%以上あれば充分に広範な用途に実用性を有する。
【0046】
比較例2は水蒸気透過性熱可塑性樹脂の代わりにポリエチレングリコールを用いた例であり、優れた吸湿性を示すが、表3から明らかなように、過マンガン酸カリウム消費量も蒸発残挫物の量も多く、食品包装規格に適合しないことがわかる。これに対し、実施例1、3、7のシートはいずれも過マンガン酸カリウム消費量も蒸発残さも食品包装規格基準以下の値であり、食品包装に適していることがわかる。
【0047】
25℃、80%RHにおけるシリカゲルの吸湿率は約40%であり、比較例3の吸湿組成物では、シリカゲルがフルに吸湿すると約20%の吸湿率が得られるはずである。しかし、表2、図3から明らかなように比較例3のシートは10%以下の吸湿率しか得られておらず、ゼオライトを用いた時より吸湿率が低く、またシリカゲル含有量に対して得られる吸湿量が著しく低下し、所望の吸湿量を確保するのにゼオライトを用いたものに対してより多くの組成物が必要となり、コスト面で問題がある。この吸湿量の低下は、シリカゲルの水分吸着部分である細孔径が大きいため、細孔が樹脂に覆われて、吸着容量が大幅に減少したためと推測される。また、シリカゲルによって分解されたEVAから発生する酢酸臭があるため、食品包装に用いた場合、内容物に臭いが移ることが懸念され、使用が難しい。
【0048】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の吸湿性組成物は優れた吸湿性を示し、かつ成形性に優れるという効果を有する。また、この組成物を成形してなる成形体は、例えば、シートや容器等の形状に成形しておけば、乾燥剤を紙製あるいは不織布製の袋に入れた場合のように誤飲や乾燥剤のこぼれによる商品が汚染される心配がないという優れた効果を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜4、比較例1の吸湿率の経時変化を示す図である。
【図2】実施例5〜8、比較例2の吸湿率の経時変化を示す図である。
【図3】実施例1、比較例3の吸湿率の経時変化を示す図である。
【図4】実施例1〜3、比較例1の吸湿性評価結果を示す図である。
Claims (8)
- 水不溶性熱可塑性樹脂と合成ゼオライトとを混練してなる組成物であって、前記水不溶性熱可塑性樹脂の少なくとも一部が40℃、90%RH、厚み100μmにおける水蒸気透過率が100g/(m2・24hr)以上である水蒸気透過性樹脂であることを特徴とする吸湿性組成物。
- 前記合成ゼオライトが、径が3〜4Åの細孔を有する請求項1記載の吸湿性組成物。
- 前記合成ゼオライトが組成物全体の30〜80質量%を占める請求項1または2記載の吸湿性組成物。
- 前記水不溶性可塑性樹脂の20質量%以上が前記水蒸気透過性樹脂である請求項1ないし3のいずれかの項記載の吸湿性組成物。
- 前記水蒸気透過性樹脂が、金属カチオンがカリウムイオンであるアイオノマー、酢酸ビニル含有量が20質量%以上であるエチレン酢酸ビニル共重合体、またはソフトセグメントがポリエーテルであるポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエステル系の熱可塑性エラストマーである請求項1ないし4のいずれかの項記載の吸湿性組成物。
- 請求項1ないし5のいずれかの項記載の吸湿性組成物を成形してなる吸湿性成形体。
- 前記吸湿性成形体がフィルムまたはシート状である請求項6記載の吸湿性成形体。
- 請求項1ないし5のいずれかの項記載の吸湿性組成物からなる層と、防湿層とを積層してなる吸湿性積層体。
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